説明

積層ポリエステルフィルム

【課題】 紫外線をカットし、優れた帯電防止性、易接着性及び接着耐候性を併せ持つ塗布層を有するポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有する積層ポリエステルフィルムであり、当該塗布層が、帯電防止剤、イソシアネート系反応基とウレタン結合とを有する化合物、末端にイソシアネート系反応基を持たないウレタン樹脂、および1種以上の架橋剤を含有する塗布液から形成されてなり、380nmの光線透過率が5%以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ポリエステルフィルムに関するものであり、さらに詳しくは、紫外線をカットし、優れた帯電防止性能と易接着性能を兼ね備えた装飾フィルム用ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、透明性、寸法安定性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、ガスバリヤー性、耐薬品性などに優れ、包装材料、製版材料、表示材料、転写材料、建材、窓貼り材料などを始め、メンブレンスイッチや、フラットディスプレイ等に用いられる反射防止フィルム、拡散シート、プリズムシート等の光学フィルム、透明タッチパネルなどに使用されている。しかし、かかる用途においてポリエステルフィルム上に他の材料を塗布積層する場合に、使用される材料によっては接着性が悪いという欠点がある。 二軸延伸ポリエステルフィルムの接着性を改良する方法の一つとして、ポリエステルフィルムの表面に各種樹脂を塗布し、易接着性能を持つ塗布層を設ける方法が知られている(特許文献1〜2)。
【0003】
しかしながら、このような既存の易接着性の塗布層では、上塗り層の種類によっては、その接着性が依然として十分ではない場合がある。例えば上塗り剤として、いわゆる無溶剤型UV硬化塗料が使用される場合、無溶剤型の上塗り剤は溶剤系の上塗り剤に比べて易接着層への浸透、膨潤効果が低いため、接着性が不十分となりやすい。
【0004】
これらの課題には、例えば特定の組成の易接着層を設ける事により、より優れた接着性を付与する方法が提案され、改善がなされてきている(特許文献3〜5)。
【0005】
しかし最近、ポリエステルフィルムを基材とした装飾フィルム用では、コンビニや薬局などの店頭POP用に長期間屋外で使用される際には、接着性だけではなく、長期間にわたり、接着性耐候性能が求められている。
【0006】
装飾フィルムは、ポリエステルフィルム基材の片面に微粘着層、その反対面に印刷層やハードコート層を設けた構成で広く使われており、微粘着層としては、のり残りやのり剤の滲み出しがなく、貼ったり剥がしたりが何回も可能なシリコーン系の微粘着層を設けることが知られているが、装飾フィルムを屋外や直射日光の当たる屋内でのウィンドウディスプレイ等用の装飾フィルムにおいて、再剥離すると粘着層の跡が残る問題がある。特に被着体がガラスの場合、顕著な問題となる(特許文献6)。
【0007】
また、ポリエステルフィルムは摩擦や剥離等の際に帯電しやすく、シリコーン塗工液を塗布する際に、基材の帯電起因の塗布ムラが生じる問題が発生するため、ポリエステルフィルムには接着性だけでなく帯電防止性能の付与も求められている。
【0008】
そのため、上記のような接着耐候性および帯電防止性を有する塗布層が必要とされているが、従来のどの易接着塗布層および帯電防止性を有する易接着塗布層も、依然として十分な効果は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平2002−53687号公報
【特許文献2】特開平11−286092号公報
【特許文献3】特開2009−220376号公報
【特許文献4】特開2009−221359号公報
【特許文献5】特開2010−13550号公報
【特許文献6】特開2007−254565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は紫外線をカットし、優れた帯電防止性、易接着性および接着耐候性を併せ持つ塗布層を有するポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題に関して鋭意検討を重ねた結果、特定のポリエステルフィルムに、特定の種類の化合物を含有する塗布層を設けることにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有する積層ポリエステルフィルムであり、当該塗布層が、帯電防止剤、イソシアネート系反応基とウレタン結合とを有する化合物、末端にイソシアネート系反応基を持たないウレタン樹脂、および1種以上の架橋剤を含有する塗布液から形成されてなり、380nmの光線透過率が5%以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、紫外線カット性に優れ、上塗り剤に対して、帯電防止性、易接着性および接着耐候性の優れた塗布層を有するポリエステルフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において使用する基材フィルムは、ポリエステルからなるものである。かかるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸のようなジカルボン酸またはそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのようなグリコールとを溶融重縮合させて製造されるポリエステルである。これらの酸成分とグリコール成分とからなるポリエステルは、通常行われている方法を任意に使用して製造することができる。 例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとの間でエステル交換反応をさせるか、あるいは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化させるかして、実質的に芳香族ジカルボン酸のビスグリコールエステル、またはその低重合体を形成させ、次いでこれを減圧下、加熱して重縮合させる方法が採用される。その目的に応じ、脂肪族ジカルボン酸を共重合しても構わない。
【0015】
本発明のポリエステルとしては、代表的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられるが、その他に上記の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよく、必要に応じて他の成分や添加剤を含有していてもよい。
【0016】
本発明におけるポリエステルフィルムには、フィルムの走行性を確保したり、キズが入ることを防いだりする等の目的で粒子を含有させることができる。このような粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、さらに、ポリエステル製造工程時の析出粒子等を用いることができる。
【0017】
本発明のフィルムは、内部ヘーズが通常1.5%以下、好ましくは1.0%以下である。内部ヘーズが1.5%を超える場合は、透明性が劣る傾向があるため、視認性が損なわれることがある。
【0018】
用いる粒子の粒径や含有量はフィルムの用途や目的に応じて選択されるが、平均粒径に関しては、通常は0.01〜5.0μmの範囲である。平均粒径が5.0μmを超えるとフィルムの表面粗度が粗くなりすぎたり、粒子がフィルム表面から脱落しやすくなったりする。平均粒径が0.01μm未満では、表面粗度が小さすぎて、十分な易滑性が得られない場合がある。粒子含有量については、内部ヘーズが1.5%以下であればその範囲内で調整可能である。
【0019】
なお、フィルムの透明性、平滑性などを特に確保したい場合には、実質的に粒子を含有しない構成とすることもできる。また、適宜、各種安定剤、潤滑剤、帯電防止剤等をフィルム中に加えることもできる。
【0020】
本発明のフィルムの製膜方法としては、通常知られている製膜法を採用でき、特に制限はない。例えば、まず溶融押出によって得られたシートを、ロール延伸法により、70〜145℃で2〜6倍に延伸して、一軸延伸ポリエステルフィルムを得、次いで、テンター内で先の延伸方向とは直角方向に80〜160℃で2〜6倍に延伸し、さらに、150〜250℃で1〜600秒間熱処理を行うことでフィルムが得られる。さらにこの際、熱処理のゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。
【0021】
本発明におけるポリエステルフィルムは、単層または多層構造である。多層構造の場合は、表層と内層、あるいは両表層や各層を目的に応じ異なるポリエステルとすることができる。
【0022】
本発明のポリエステルフィルムは少なくとも片面に塗布層を有するが、フィルムの反対面に同様のあるいは他の塗布層や機能層を設けていても、本発明の概念に当然含まれるものである。
【0023】
本発明のフィルムは、紫外線吸収剤を通常0.20〜10.0重量%、好ましくは0.30〜1.8重量%の範囲で含有するものである。紫外線吸収剤が0.10重量%未満の場合は、紫外線によりポリエステルフィルムが劣化することがあり、10.0重量%を超える量の紫外線吸収剤を含有させた場合、表面に紫外線吸収剤がブリードアウトし、接着性低下等、表面機能性の悪化を招くおそれがある。
【0024】
本発明のフィルムは、波長380nmの光線透過率が5.0%以下、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下である。波長380nmの光線透過率が5.0%より大きくなると、ポリエステルフィルムを透過する紫外線によって、微粘着層が劣化するのを防ぐのに十分ではなく、長期間窓等に貼り付けた場合、再剥離すると粘着層の跡が残り問題となる。
【0025】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、1,3,5−トリアジン系化合物、ベンゾオキサジノン系化合物等を挙げることができ、これら1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、色調を考慮した場合、黄色味が付きにくいベンゾオキサジノン系化合物が好適に用いられる。
【0026】
紫外線吸収剤として用いるベンゾオキサジン系化合物の例としては、2,2−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン]が挙げられる。
【0027】
本発明において塗布層は、公知の様々な塗布方法により設けてもよいが、フィルムの製膜中に塗布層を設ける、いわゆるインラインコーティング、特に塗布後に延伸を行う塗布延伸法により設けることが望ましい。
【0028】
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出ししてから二軸延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸シート、その後に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルムの何れかにコーティングする。特に塗布延伸法としては、一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。
【0029】
かかる方法によれば、製膜と塗布層塗設を同時に行うことができるため、製造コスト上のメリットがあり、コーティング後に延伸を行うために、薄膜で均一なコーティングとなるために接着性能が安定する。また、二軸延伸される前のポリエステルフィルム上を、まず易接着樹脂層で被覆し、その後フィルムと塗布層を同時に延伸することで、基材フィルムと塗布層が強固に密着することになる。
【0030】
また、ポリエステルフィルムの二軸延伸は、テンターによりフィルム端部を把持しつつ横方向に延伸することで、フィルムが長手/横手方向に拘束されており、熱固定において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。それゆえ、コーティング後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、塗布層の造膜性が向上し、また塗布層とポリエステルフィルムが強固に密着する。易接着性ポリエステルフィルムとして、塗布層の均一性、造膜性の向上および塗布層とフィルムの密着は好ましい特性を生む場合が多い。
【0031】
この場合、用いる塗布液は、取扱い上、作業環境上、安全上の理由から水溶液または水分散液であることが望ましいが、水を主たる媒体としていれば、有機溶剤を含有していてもよい。
【0032】
次に、本発明においてフィルムに設ける塗布層について述べる。
【0033】
本発明において塗布層を設けるための塗布液中には、帯電防止剤(A)、イソシアネート系反応基とウレタン結合を有する化合物(B)、末端にイソシアネート系反応基を持たないウレタン樹脂(C)、および1種以上の架橋剤(D)を含有する。
【0034】
本発明における帯電防止剤(A)は、帯電防止性を付与し得る化合物であれば、特に限定されるものではないが、例えば、金属化合物や電子伝導ポリマー、電荷移動錯体化合物、導電性カーボン、高分子量のイオン性化合物などが挙げられる。特には、高分子量のイオン性化合物が、接着性および帯電防止性能の観点から好適に用いられる。
【0035】
高分子量のイオン性化合物としては、アニオン性化合物、カチオン性化合物などが挙げられるが、特にカチオン性化合物が、接着性および帯電防止性能の観点から好ましい。
高分子量のカチオン性化合物としては、例えば、分子内に4級アンモニウム塩を含有する化合物が用いられるが、主鎖構造に4級アンモニウム塩を含有する化合物が熱安定性の観点から特に好ましい。
【0036】
塗布層中に占める、帯電防止剤(A)の含有量は、限定されるものではなく、目的とする特性の出る範囲で適宜選択できるが、接着性および帯電防止性を鑑みると帯電防止剤(A)は塗布液中5〜60重量%が好ましく、10〜50重量%がより好ましい。
【0037】
本発明において、イソシアネート系反応基とウレタン結合を有する化合物(B)とは、分子中にイソシアネート系反応基およびウレタン結合を少なくとも1つ含む化合物のことである。
【0038】
例えば、水酸基含有化合物とジイソシアネートを反応させた化合物、水酸基含有化合物とポリイソシアネートを反応させた化合物、ポリオールとポリイソシアネートを反応させた化合物などで、水酸基と反応していないイソシアネート基が末端に存在するような化合物が挙げられる。
【0039】
なお、この末端イソシアネートをブロック剤で保護した、いわゆるブロックイソシアネートとすることもできる。本発明においては、液安定性等の観点から、ブロックイソシアネートとしたものを化合物(B)として用いる形態が好ましい。
かかる化合物(B)としては、ポリオールに過剰ポリイソシアネートを反応させて生成した、末端にイソシアネート基を有するウレタン樹脂であっても構わず、この樹脂の合成には後述のウレタン樹脂(C)の合成に使用する原料成分を用いることが可能である。
【0040】
また、本発明では、例えば特開2008−45072号公報に記載のあるような方法により生成する、コアシェル構造を有する化合物を化合物(B)として使用することもできる。すなわち、例えば化合物(B)をコアとして、その外側が他の樹脂により覆われた様な、コアシェル構造をもつ樹脂エマルジョン粒子を本発明の化合物(B)として使用でき、このような形態の樹脂は塗布液の安定性や、得られる塗布層の接着性の観点から好ましい。また、このシェル部の樹脂に、後述するウレタン樹脂を用いて、本発明におけるウレタン樹脂(C)としてもよい。
【0041】
本発明において化合物(B)のイソシアネート基をブロックしてブロックイソシアネートの形態で使用する場合、使用するブロック剤は特に制限されず、公知のものから適宜1種以上を選択して使用することができる。当ブロック剤としては、例えば、フェノール系、アルコール系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、ラクタム系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系化合物などが使用できる。
【0042】
より具体的には例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノールなどのフェノール系化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノールなどのアルコール系化合物、マロン酸ジメチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミドなどの酸アミド系化合物、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタムなどのラクタム系化合物;コハク酸イミド、マレイン酸イミドなどの酸イミド系化合物、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシムなどのオキシム系化合物、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミンなどのアミン系化合物、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0043】
本発明における化合物(A)は、特に接着耐候性の観点から樹脂の構造中にテトラメチレン〜デカメチレン構造(炭素数4〜10)を有していることが好ましい。なお、ここで言うテトラメチレン〜デカメチレン構造は、側鎖にメチル基を導入したものなど、テトラメチレン〜デカメチレン構造に変性を加えた誘導体であってもかまわない。
【0044】
本発明において、化合物(B)は、単独で用いてもよいし、複数種組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本発明において、末端にイソシアネート系反応基を持たないウレタン樹脂(C)(以下、単にウレタン樹脂と言うことがある)は、公知の水性ウレタン樹脂の合成法により、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを用いて合成された樹脂であり、合成した樹脂のイオン性はカチオン・アニオン・ノニオン性のいずれであっても使用することができるが、末端にはイソシアネート系の反応基は有さない。
【0046】
本発明のかかるウレタン樹脂の合成における、ポリイソシアネートの成分にはポリウレタン樹脂の原材料としての通常のものが用いられて、特に規定はされないが、コーティング被膜の紫外線による黄変を避けるために、芳香族ジイソシアネートよりも脂肪族または脂環族ジイソシアネートが好ましい。
【0047】
具体的な例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが例示され、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリメチルキシリレンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートがある。これらのジイソシアネートは、1種単独または2種以上の混合で使用される。
【0048】
さらには、ヘキサメチレンジイソシアネートと炭素数1〜6のモノオールから得られるアロファネート変性ポリイソシアネートなどのような、これらのアダクト変性体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビュレット変性体、ウレトジオン変性体、ウレトイミン変性体、イソシアヌレート変性体なども使用できる。
【0049】
なお、芳香族ジイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,2´−ジフェニルプロパン−4,4´−ジイソシアネート、3,3´−ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネートなどが例示される。
【0050】
かかるウレタン樹脂の合成におけるポリオールには、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリアルキレンポリオール、ポリオレフィンポリオールなどが使用され、これらポリオールを併用してもよい。また、ポリオール成分としては、通常、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量で、300〜5000であることが好ましい。
【0051】
本発明におけるウレタン樹脂(C)の合成には、通常鎖延長剤が使用され、用いる鎖延長剤も特に制限されないが、ジアミンまたはポリアミン等のアミン化合物が、ジオール化合物を鎖延長剤とするよりも、容易に高架橋するため、耐水性や耐溶剤性および耐汚染性などの物性において有利である。
【0052】
これらのアミン化合物の具体例は、ジアミンではエチレンジアミン、イソホロンジアミンなどが例示され、ポリアミンでは、H2N−(C2H4NH)n−C2H4NH2(n=1〜8)で表される、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどが例示される。
【0053】
本発明におけるウレタン樹脂(C)において、本発明における接着耐候性能を特によく発現させるためにはウレタン樹脂(C)の構造中に、テトラメチレン〜デカメチレン構造を有していることが望ましい。
テトラメチレン〜デカメチレン構造をもつウレタン樹脂(C)は、例えば、ポリイソシアネート成分やポリオール成分、鎖延長剤等にテトラメチレン〜デカメチレン構造を有する物を構成成分の一部として使用することで得られる。特に優れた特性のウレタン樹脂を得るためには、テトラメチレン〜デカメチレン構造を有するポリオールを使用することが工業的に容易である。また、このテトラメチレン〜デカメチレン構造を有するポリオールには、側鎖に例えば、メチル基を導入したものなど、テトラメチレン〜デカメチレン構造に変性を加えた誘導体であっても構わない。
【0054】
本発明におけるウレタン樹脂(C)は、ガラス転移点(以下、Tgと記載することがある)が10℃以下であることが好ましく、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−10℃以下の樹脂を使用すると接着耐候性の効果が得やすく、Tgが10℃より高いものは、易接着性が不十分となることがある。ここで言うTgの測定は、ウレタン樹脂(C)の乾燥皮膜を作成し、動的粘弾性測定を行い、E’’が最大となる温度を指す。
【0055】
本発明において、化合物(B)およびウレタン樹脂(C)は、溶剤を媒体とするものであってもよいが、好ましくは水を媒体とするものである。ポリウレタンを水に分散または溶解させるには、乳化剤を用いる強制乳化型、ポリウレタン樹脂中に親水性基やイオン基を導入する自己乳化型あるいは水溶型等がある。特に、ポリウレタン樹脂の骨格中にエチレンオキシド鎖等のノニオン性親水基を導入する、もしくは骨格中にイオン基を導入しアイオノマー化する、自己乳化タイプが液の貯蔵安定性や得られる塗布層の耐水性、接着性に優れており好ましい。
【0056】
イオン基を導入する場合、導入するイオン基としては、カルボキシル基、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、4級アンモニウム等、種々のものが挙げられるが、カルボキシル基および4級アンモニウムが好ましい。
【0057】
ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法が取り得る。例えば、プレポリマー合成時に、カルボキシル基を持つ樹脂を共重合成分として用いたり、ポリオールやポリイソシアネート、鎖延長剤などの一成分としてカルボキシル基を持つ成分を用いたりすることができる。特に、カルボキシル基含有ジオールを用いて、この成分の仕込み量によって所望の量のカルボキシル基を導入する方法が好ましい。
【0058】
例えば、ウレタン樹脂の重合に用いるジオールに対して、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)ブタン酸等を共重合させることができる。
【0059】
なおカルボキシル基は中和剤により中和されていても構わない。中和剤としては、通常のものが任意に使用される。例えば、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリンなどの有機アミン類が好ましく使用され、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリ類やアンモニアも例示される。乾燥後の耐候性や耐水性を向上させるためには、熱によって容易に解離する揮発性の高いものまたはポリイソシアネート硬化剤と反応するアミノアルコールがより好ましい。
【0060】
かかるポリウレタン樹脂は、塗布後の乾燥工程において中和剤が外れたカルボキシル基を、他の架橋剤による架橋反応点として用いることができる。これにより、塗布前の液の状態での安定性に優れる上、得られる塗布層の耐久性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等をさらに改善することが可能となる。
【0061】
4級アンモニウムを導入し、ウレタン樹脂にカチオン性を付与する場合は、ウレタンプレポリマーを合成する段階において、3級アミノ基を導入し、その3級アミノ基を酸で中和または4級化剤で4級化させ、水に分散させる事でカチオン性水系ウレタン樹脂を得る。
【0062】
3級アミノ基を導入する例としては、3級アミノ基をもつ鎖延長剤を使用する事などがあげられ、この様な鎖延長剤の例としては、具体的にはN−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン、N−メチルジアミノエチルアミン、N−エチルジアミノエチルアミン等のN−アルキルジアミノアルキルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0063】
塗布層中に占める、化合物(B)および(C)の含有量は、特に限定されるものではなく、目的とする特性の出る範囲で適宜選択できるが、量が少量過ぎると、その効果が得られにくい。
【0064】
そのため化合物(B)は、5〜90重量%が好ましく、より好ましくは5〜70重量%、特に好ましくは5〜50重量%とすると効果が高い。また、ウレタン樹脂(C)は、10〜90重量%が好ましく、より好ましくは20〜60重量%、特に好ましくは20〜50重量%とすると効果が高い。
【0065】
本発明における架橋剤(D)には、例えば、上記(B)とは異なる種類のイソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、カルボジイミド化合物、アルコキシシラン化合物、シランカップリング剤、有機金属錯体などの公知の架橋剤の内、少なくとも1種以上を用いるが、接着耐候性の観点から、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、カルボジイミド化合物の中から少なくとも1種以上を用いることが好ましい。
【0066】
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にはオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。
付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。
【0067】
これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等のア(メタ)クリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、等のα,β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる
エポキシ化合物としては、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等が挙げられ、ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトール、ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0068】
メラミン化合物は、特に限定されないが、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、あるいはこれらの混合物などを用いることができる。
【0069】
また、メラミン化合物としては、単量体、2量体以上の多量体からなる縮合物、あるいはこれらの混合物などを用いることができる。エーテル化に使用する低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、およびイソブタノールなどを用いることができる。官能基とは、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基などのアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、および完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などである カルボジイミド化合物とは、分子中に2個以上のカルボジイミド基を有するものを指し、例えば、特開平10−316930号公報や特開平11−140164号公報に示されるように、有機ポリイソシアネート、特に好ましくは有機ジイソシアネートを主たる合成原料として製造される。
【0070】
本発明において、塗布液中の架橋剤(D)の量は限定されるものではないが、10〜80重量%であるのが好ましく、より好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。この範囲を外れると、接着耐候性が低下するという問題が生じる傾向がある。
【0071】
本発明では、ブロッキングを防止するために、塗布層全体の3重量%以上の粒子を含有すると好適である。含有量がこの比率以下だと、ブロッキングを防止する効果が不十分となりやすい。また含有量があまりに多すぎると、ブロッキングの防止効果は高いものの、塗布層の透明性が低下したり、塗布層の連続性が損なわれ塗膜強度が低下したりすることがあり、また易接着性が低下することがある。具体的には、15重量%以下、さらには10重量%以下が好適である。この手法によることで、易接着性能と耐ブロッキング性能を両立することが可能となる。
【0072】
粒子としては例えば、シリカやアルミナ、酸化金属等の無機粒子、あるいは架橋高分子粒子等の有機粒子等を用いることができる。特に、塗布層への分散性や得られる塗膜の透明性の観点からは、シリカ粒子が好適である。
【0073】
粒子の粒径は、小さすぎるとブロッキング防止の効果が得られにくく、大きすぎると塗膜からの脱落などが起きやすい。平均粒径として、塗布層の厚さの1/2〜10倍程度が好ましい。さらに、粒径が大きすぎると、塗布層の透明性が劣ることがあるので、平均粒径として、300nm以下、さらには150nm以下であることが好ましい。ここで述べる粒子の平均粒径は、粒子の分散液をマイクロトラックUPA(日機装社製)にて、個数平均の50%平均径を測定することで得られる。
【0074】
本発明において、易接着性の塗布層を設けるための塗布液中には、必要に応じて上記述べた成分以外を含むことができる。例えば、界面活性剤、その他のバインダー、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等である。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0075】
本発明において、ポリエステルフィルムに塗布層を設ける方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、カレンダコーター、押出コーター、バーコーター等のような技術が挙げられる。
【0076】
なお、塗布剤のフィルムへの塗布性、接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理やコロナ放電処理、プラズマ処理等を施してもよい。
【0077】
ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の塗工量は、最終的な被膜としてみた際に、通常0.002〜1.0g/m、好ましくは0.005〜0.5g/m、さらに好ましくは0.01〜0.2g/mである。塗工量が0.002g/m未満の場合は十分な接着性能が得られない恐れがあり、1.0g/mを超える塗布層は、外観・透明性の悪化や、フィルムのブロッキング、コストアップを招きやすい。
【0078】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、好ましくは、表面固有抵抗が1×1012Ω以下、より好ましくは1×1010Ω以下である。ここで言う表面固有抵抗は、例えばJIS:C−2318などに記載されている方法により測定することが可能である。
【実施例】
【0079】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法は下記のとおりである。
【0080】
(1)内部ヘーズ
JIS−K−7136に準じ、村上色彩技術研究所製ヘーズメーター「HM−150」により、試料フィルムの内部ヘーズを測定した。なお、エタノールを粗面補償溶媒として石英セルにて測定した。
【0081】
(2)380nm光線透過率
島津製作所社製 分光光度計UV3100により、スキャン速度を低速、サンプリングピッチを2nm、波長300〜700nm領域で連続的に光線透過率を測定し、380nm波長での光線透過率を検出した。
【0082】
(3)接着性
ポリエステルフィルムの塗布層上に、下記に示すとおりのハードコート組成物を硬化後の厚さが3μmになるように塗布し、ウシオ電機社製紫外線照射装置UVC−402を用いて、高圧水銀灯により、160W/cm、照射距離100mm、コンベア速度3m/分で紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化樹脂組成物の硬化を行い、<ポリエステルフィルム/易接着性塗布層/ハードコート層>という構成の積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの活性エネルギー線硬化樹脂層に、1インチ幅に碁盤目が100個になるようクロスカットを入れ、セロテープ(登録商標)による急速剥離テストを実施し、剥離面積によりその密着性を評価した。判定基準は以下のとおりである。
5:0≦碁盤目剥離個数≦10
4:11≦碁盤目剥離個数≦20
3:21≦碁盤目剥離個数≦40
2:41≦碁盤目剥離個数≦80
1:81≦碁盤目剥離個数
【0083】
・ハードコート組成物:カヤラッドDPHA(日本化薬社製)70重量部と、カヤラッド R128H(日本化薬社製)30重量部、IRGACURE651(チバスペシャルティケミカルズ社製)5重量部からなる組成物。
【0084】
(4)接着耐候性
(1)と同ようにして得た積層フィルムのポリエステルフィルム面をガラス板に張り付け、そのガラス板を沸騰水の入った容器に活性エネルギー線硬化樹脂層が下になるように被せ、活性エネルギー線硬化樹脂層を蒸気に5分間さらして湿熱負荷を与え、その後、UVC−402を用いて高圧水銀灯により160W/cm、照射距離100mm、コンベア速度1m/分で紫外線を照射した。この操作を交互に7セット行った後、得られた積層フィルムの活性エネルギー線硬化樹脂層に、1インチ幅に碁盤目が100個になるようクロスカットを入れ、セロテープ(登録商標)による急速剥離テストを実施し、剥離面積によりその接着性を評価した。判定基準は(1)と同様である。
【0085】
(5)表面固有抵抗(Ω/□)
日本ヒューレット・パッカード社製 高抵抗測定器:HP4339Bおよび測定電極:HP16008Bを使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後、表面固有抵抗値を測定した。なお、表面固有抵抗が1×1012Ω以下であれば良好な帯電防止性能があると言え、1×1010Ω以下であれば十分な帯電防止性能があると言える。
【0086】
(6)粘着層の耐光性試験
微粘着層を設けたフィルム面の反対面にUV光が当たるようサンプルをセットした後、キセノンランプで200時間照射した後、サンプルのエッジ部を指で擦りシリコーン層の剥がれ具合を下記の基準で評価した。評価結果は、表2の通りであった。
○:全く剥がれない
×:部分的に剥がれる
【0087】
(7)装飾フィルムとしての総合評価
○:接着性、接着耐候性、帯電防止性、粘着層の耐光性いずれも良好であり、
装飾フィルム用として好適である
×:接着性、接着耐候性、帯電防止性、粘着層の耐光性のいずれかの特性が劣っており、保護フィルム用として不適当である
【0088】
実施例、比較例中で使用したポリエステル原料は次のとおりである。
(ポリエステル1):実質的に粒子を含有しない、極限粘度0.66のポリエチレンテレフタレート
(ポリエステル2):平均粒径2.5μmの非晶質シリカを0.2重量部含有する、極限粘度0.66のポリエチレンテレフタレート
(ポリエステル3):(ポリエステル1)をベント付き二軸押出機に供して、紫外線吸収剤として2,2−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン](CYTEC社製 CYASORB UV−3638 分子量 369 ベンゾオキサジン系)を10重量%濃度となるように供給して溶融混練りした極限粘度は、0.59のポリエチレンテレフタレート
【0089】
また、塗布組成物としては以下を用いた。ただし、文中「部」とあるのは、樹脂固形分での重量比を表す。
(AS1):下記式1の構成単位と、下記式2の構成単位と、下記式3の構成単位を重量比率で80/10/10の比率で共重合した、数平均分子量21000の高分子化合物。
【0090】
【化1】

【0091】
【化2】

【0092】
【化3】

【0093】
(AS2):ポリ(トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート)モノメチル硫酸塩のホモポリマー 数平均分子量約30000の高分子化合物。
(UA)
:ヘキサメチレンジイソシアネート3量体312.5部、数平均分子量が700のメトキシポリエチレングリコール55.4部、からなる、分子内にウレタン結合と末端イソシアネート基を含有し、イソシアネート基をメチルエチルケトンオキシムでブロックイソシアネートとした化合物
ただし表面はイソホロンジイソシアネート80部、ヘキサメチレンジイソシアネート3量体20.2部、数平均分子量が1000のポリヘキサメチレンカーボネート229部、トリメチロールプロパン2.6部、ジメチロールプロピオン酸16.1部、からなりトリエチルアミンで中和し、ジエチレントリアミンで鎖延長したウレタン樹脂で被覆されたコアシェル構造となっている。
【0094】
(UB1): 4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート78.7部、数平均分子量が1000の末端OH変性ポリヘキサメチレンカーボネートを570部、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン15.5部、からなるプレポリマーをジメチル硫酸と反応させ得られる、Tgが−20℃のポリウレタン樹脂の水分散体
(A1):アクリル樹脂。プライマル HA−16(ロームアンドハースジャパン社製)(F1):平均粒径0.07μmのシリカゾル水分散体
(C1):オキサゾリン基がアクリル系樹脂にブランチされたポリマー型架橋剤。エポクロスWS−500(日本触媒社製)
(C2):グリシジルエーテルを有する多官能エポキシ化合物。デナコールEX−521(ナガセケムテックス社製)
(C3):メトキシメチロールメラミンである。ベッカミンJ−101(大日本インキ化学工業社製)
(C4):カルボジイミド化合物水溶液。カルボジライトSV−02(日清紡社製)。
【0095】
実施例1:
上記ポリエステル1とポリエステル2をそれぞれ85%、15%の割合で混合した混合原料をA層の原料とし、ポリエステル1とポリエステル3を95%、5%割合で混合し混合原料をB層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、A層を最外層(表層)、B層を中間層として、40℃に冷却したキャスティングドラム上に、2種3層(ABA)で、厚み構成比がA:B:A=3:94:3になるように共押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの両面に、横延伸乾燥後の塗布量が0.03g/mとなるよう塗布液P1(下記表1参照)を塗布した後、テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、230℃で熱処理を行った後、フィルムをロール上に巻き上げ両面に塗布層を有する厚さ100μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表2に示す。
【0096】
実施例2〜6、比較例1〜6:
表1に示したP2〜P12の塗布液を塗布すること以外は実施例1と同様の方法により、実施例2〜6、比較例1〜6の積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの
【0097】
特性を下記表2に示す。
実施例7:
上記ポリエステル1とポリエステル2を重量比でそれぞれ60%、40%の割合で混合した混合原料をA層の原料とすること以外は実施例1と同様の方法により、積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を下表2に示す。
【0098】
比較例7:
B層の原料を上記ポリエステル1 100%とした以外は、実施例1と同様の方法により、積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を下表2に示す。次に、このフィルムの片面に、微粘着層としてシリコーン塗工液(末端基のみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシリコーン(信越化学工業製「X−62−1347」)100部(固形分重量部)に対し、白金触媒(信越化学工業製「CAT−PL−56」)2部(固形分重量部)を、バーコーターを用いて塗工し、150℃、2分間塗膜を乾燥・硬化させ、厚み25μmの微粘着層を設けた。このようにして得られたフィルムは、表2に示したように優れた特性を持つので、実際に携帯電話の表示画面に貼り付けて保護フィルムとして用いた時の視認性は、比較例7以外はいずれも良好で好適に使用できた。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明のフィルムは、紫外線カット性に優れると同時に優れた帯電防止性と易接着性および接着耐候性を必要とする屋外用途における積層ポリエステルフィルムとして、好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有する積層ポリエステルフィルムであり、当該塗布層が、帯電防止剤、イソシアネート系反応基とウレタン結合とを有する化合物、末端にイソシアネート系反応基を持たないウレタン樹脂、および1種以上の架橋剤を含有する塗布液から形成されてなり、380nmの光線透過率が5%以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
請求項1記載の積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面に微粘着層を有することを特徴とする装飾フィルム用ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2012−232489(P2012−232489A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102615(P2011−102615)
【出願日】平成23年4月30日(2011.4.30)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】