説明

積層ポリエステルフィルム

【課題】 焼却時に環境問題を生じることがなく、基材の色調による影響を受けることもなく、クリアなハードコート表面から見たときに干渉ムラが目立たずに、高意匠の表面あるいは絵柄模様の現出外観に優れる化粧板または化粧シート用積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 基材の表面に少なくともフィルム層とハードコート層を順次に配置してなる化粧板または化粧シートの前記フィルム層に使用されるポリエステルフィルムであって、当該ポリエステルフィルムの透過濃度が0.1〜5.0であり、ハードコート層を配置する少なくとも片面に、イソシアネート化合物、ナフタレン骨格を含有するポリエステル樹脂、および金属酸化物を含有する塗布液から形成されたプライマー層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板または化粧シート用ポリエステルフィルムに関するものである。ここで言う化粧板とは、基材の表面に少なくともフィルム層とハードコート層を順次に配置してなり、必要に応じて、前記フィルム層とハードコート層の間に絵柄印刷層を配置してなる、通常単独商品として取り扱われる建築材料(表面材料)を指し、化粧シートとは、各種の家具、建材、住宅機器などの各種商品の基材の表面に貼合されかつその表面にハードコート層または絵柄印刷層、ハードコート層を順次配置して使用される装飾材料(表面材料)を指す。したがって、化粧板の基板表面に配置されるフィルム層と絵柄印刷層、ハードコート層とは、化粧板または化粧シートを構成する要素である。
【背景技術】
【0002】
化粧板の基材と柄印刷層との間に使用されるシートおよび化粧シートに使用されるシート(フィルム)としては、塩化ビニル樹脂シートが最も一般的である。しかしながら、塩化ビニル樹脂シートを使用した場合、当該シートに配合された可塑剤が貼り合わせ面の接着剤層に移行して接着不良の原因となり、また、塩化ビニル樹脂シートの熱寸法安定性が悪いため、熱による伸縮が生じてシワの発生原因になる等の問題がある。さらに、近年、焼却時の環境問題から、塩化ビニル樹脂シートを使用しない化粧板および化粧シートの要望が強まっている。
【0003】
ところで、前述のとおり、化粧板および化粧シートは、表面材として使用されるため、通常、表面には高意匠の絵柄模様が施される。そのため、絵柄のコントラストや陰影の微妙なコントラストを出すために色調管理が極めて重要である。すなわち、化粧板の基材や化粧シートが貼合される基材には合板(パーティクルボード)や鋼板など多岐に渡る材料が使用されるが、これら基材の色調は、例えば、材料が同じであっても多種多様に異なっているのが通例である。
【0004】
したがって、化粧シートを構成するシートの隠蔽度が悪い場合は、基材の色調が化粧板や化粧シートの表面の色調に影響を与えて意匠性が損なわれる。そこで、化粧シートのシートとしては、様々な色調を有する基材に広く適用できるようにするため、隠蔽性を有するシート(フィルム)が望まれる。
【0005】
一方、ポリエチレンテレフタレートに代表される二軸配向ポリエステルフィルムは、その優れた特性故に多くの分野で使用されている。特許文献1には化粧板の表面部材としてポリエステルフィルムを使用することが提案されている。また、特許文献2には、基材と絵柄印刷層との間にポリエステルフィルムを使用することが提案されている。
【0006】
ところで、ポリエステルフィルムは、塩化ビニル樹脂フィルムまたはシートと比較した場合、一般的に各種の材料との接着性に劣る。したがって、塩化ビニル樹脂フィルムまたはシートの代わりにポリエステルフィルムを使用した場合は、例えば、ハードコート層、絵柄印刷層との接着性が低下する。化粧板は、各種家具類、ドア等の表面加飾に使用される。したがって、フィルムと基材との剥離が生じると顕著に外観を損ねるため、このような剥離を避けねばならない。
【0007】
ポリエステルフィルムとハードコート層との密着性を向上させるために、中間層として易接着のプライマー層が設けられる場合が一般的である。そのため、ポリエステルフィルム、易接着のプライマー層、ハードコート層の3層の屈折率を考慮しないと干渉ムラが発生してしまう。
【0008】
また、クリアなハードコート層表面から見たときに、特に絵柄の無い部分で干渉ムラが目立ち、外観を損なうことが問題となる。そこで、クリアなハードコート表面から見たときにもかかる干渉ムラが目立たずに外観の優れたフィルムが強く要望されている。
【0009】
干渉ムラのあるフィルムを化粧板または化粧シートに使用すると、外観印象の悪いものになってしまい、高意匠の表面あるいは絵柄模様の現出外観に劣り好ましくない。そのため干渉ムラ対策をすることが求められている。一般的には、干渉ムラを軽減させるためのプライマー層の屈折率は、基材のポリエステルフィルムの屈折率とハードコート層の屈折率の相乗平均付近と考えられ、この辺りの屈折率に調整することが理想的である。二軸延伸ポリエステルフィルムの屈折率が高いため、一般的にはプライマー層の屈折率を高く設計する必要がある。
【0010】
プライマー層の屈折率を高くして、干渉ムラを改善した例としては、例えば、プライマー層中に屈折率が高い金属酸化物と高分子バインダーを組み合わせてプライマー層中の屈折率を上げる方法がある(特許文献3)。また別の例としては、金属キレート化合物と樹脂を組み合わせる方法もある。この場合は、水溶液中での金属キレートの不安定さから、組み合わせによっては塗布液の安定性が十分でない場合があり、長時間の生産を行う場合、液交換作業の増加を招く可能性がある(特許文献4)。これらの方法で干渉ムラを改善するためには、プライマー層が溶剤で溶解されて、プライマー層の厚み変わることによる干渉ムラの発生を抑制するために、プライマー層上に形成するハードコート層等の表面機能層の形成で使用する溶剤を選択する必要がある場合があった。そのため、例えば、生産性を向上させるために使用する速乾性溶剤、面状を良化させるために使用するレベリング剤、表面機能層に使用する樹脂の溶解性を向上させるための各種の溶剤等を問題なく使用できるプライマー層が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−17005号公報
【特許文献2】特開平10−128934公報
【特許文献3】特開2004−54161号公報
【特許文献4】特開2005−97571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、焼却時に環境問題を生じることがなく、基材の色調による影響を受けることもなく、クリアなハードコート表面から見たときに干渉ムラが目立たずに、高意匠の表面あるいは絵柄模様の現出外観に優れる化粧板または化粧シート用積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の要旨は、基材の表面に少なくともフィルム層とハードコート層を順次に配置してなる化粧板または化粧シートの前記フィルム層に使用されるポリエステルフィルムであって、当該ポリエステルフィルムの透過濃度が0.1〜5.0であり、ハードコート層を配置する少なくとも片面に、イソシアネート化合物、ナフタレン骨格を含有するポリエステル樹脂および金属酸化物を含有する塗布液から形成されたプライマー層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、焼却時に環境問題を生じることがなく、基材の色調による影響を受けることもなく、高意匠の絵柄模様の現出が可能で、かつ基材との接着性および印刷層の印刷性と密着性に優れ、実使用時の干渉ムラが抑制され外観に優れる化粧板または化粧シート用ポリエステルフィルムが提供することができ、本発明の工業的価値は非常に大きい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明で言うポリエステルとは、ジカルボン酸とジオールまたはヒドロキシカルボン酸から重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを指す。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられ、ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等が挙げられ、ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などが挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2、6ナフタレート等が例示される。
本発明で使用するポリエステルは、ホモポリマーであってもよく、また、第3成分を共重合させたコポリマーでもよい。
【0017】
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合してもよい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。
さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0018】
使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。
これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0019】
また、粒子の平均粒径は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.01〜2μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、易滑性を十分に付与できなかったり、粒子が凝集して、分散性が不十分となり、フィルムの透明性を低下させたりする場合がある。一方、3μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において種々の表面機能層を塗設させる場合等に不具合が生じる場合がある。
【0020】
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常0.0001〜5重量%、好ましくは0.0003〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.0001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0021】
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
【0022】
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0023】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0024】
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜300μm、好ましくは25〜250μmの範囲である。
【0025】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0026】
また、本発明においては積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0027】
本発明における化粧シートは、前述のように、様々な色調を有する基材に広く適用される。したがって、本発明のポリエステルフィルムは、基材の色調によって化粧シートの色調が変化してその高度な意匠性が損なわれることがないように、隠蔽性を有することが重要である。そこで、本発明においては、ポリエステルフィルムの透過濃度は0.1〜5.0の範囲である必要がある。上記の透過濃度は、好ましくは0.2〜4.0、さらに好ましくは0.5〜3.0、最もこの好ましくは1.0〜3.0の範囲である。
【0028】
上記の透過濃度で示される隠蔽性は、一般的には、フィルム中に無機または有機の粒子を含有させることによって得られる。粒子としては、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、二酸化珪素、カーボンブラック、酸化鉄、酸化クロム等が例示されるが、本願発明で規定する透過濃度を満足し得る限り、使用される粒子の種類は上記の例に限定されない。
【0029】
また、隠蔽性を付与する方法としては、ポリエステルフィルム中に独立小気泡を含有させる方法も好ましく採用し得る。具体的には、ポリエステルと非相溶性であるポリオレフィンをポリエステルに少量添加して延伸および熱固定を行う方法、ポリエステルフィルムに不活性ガスを含有させる方法などが例示される。
【0030】
ポリエステルフィルムの透過濃度が0.1より小さい場合は、ポリエステルフィルムが貼着される基材の色調が化粧シート表面の絵柄模様の色調に影響を与えて本発明の目的を達成することができない。ポリエステルフィルムの透過濃度が5.0より大きくするためには、通常フィルムへの添加物を多くする必要があり、このためフィルム製造時にフィルム破断が多発したり、ポリエステルフィルムの機械的強度が低下したりするという問題がある。
【0031】
本発明のポリエステルフィルムは、その表面に儲けられたクリアなハードコート層の表面からの干渉ムラが目立たずに意匠性に優れた化粧板または化粧シートを得ることができる。
【0032】
本発明のポリエステルフィルムにより、基材の色調の影響を受けることなく、高意匠の表面絵柄を化粧シートに現出することができる。したがって、本発明のポリエステルフィルムに絵柄模様が印刷された化粧シートを基材表面に貼着することにより、いわゆる単層表刷りを達成することが可能となる。また、上記の化粧シートは、建材、家具、住宅機器、自動車内装などに好適である。さらに、単層表刷りにおいては、ポリエステルフィルムの上に隠蔽化印刷を施した後、その上に絵柄印刷を行ってもよいし、絵柄印刷の後に意匠上必要な箇所にエンボス加工を行ってトップコートを施してもよい。
【0033】
本発明のポリエステルフィルムは、隠蔽性に優れるため、1層のみからなるポリエステルフィルムで単層表刷りを構成することも可能であるが、2層以上のポリエステルフィルムを使用してもよい。例えば、ハードコート層の配置する側の表層のポリエステル層に透明性の層と隠蔽性を付与する層とを順次積層することで、表面のクリア間の高いフィルムを得たり、合板などの基材に本発明のポリエステルフィルムを複数枚貼着した多層構成にしたりすることにより、表面のエンボス加工が容易とすることができる。
【0034】
一方、化粧シートの寸法安定性が悪い場合は、印刷工程でシワが発生したり、印刷時の位置合わせ精度が低下するため絵柄模様の意匠性が損ねられたりする等の問題が発生することがある。本発明においては、ポリエステルフィルムの180℃で5分間熱処理後の熱収縮率を縦横共に−5.0%〜+7.0%の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは−3.0%〜+5.0%の範囲である。特に縦方向の熱収縮率が−2.0%〜+4.0%の範囲かつ横方向の熱収縮率が−1.0%〜+1.0%の範囲とすることが好ましい。
熱収縮率が−5.0%より大きい場合は、化粧シートの表面が膨れ上がり外観が大きく損なわれることがある。熱収縮率が+7%を超える場合は、化粧シートが建材や家具などから剥離したり、絵柄模様が歪んだりする等の問題を生じることがある。なお、収縮率が負の値であることは、熱処理後にフィルムが伸張することを表す。
【0035】
本発明のフィルムの色調は、印刷される色に合わせて選択することができる。例えば木質系の材料として使用する場合は、木肌の色調に合わせ、白色系の材料とする場合には白色フィルムとして、黒色系の材料とする場合に黒色フィルムとしてポリエステルフィルム自身の色調を合わせるのが好ましい。
【0036】
本発明のフィルムは、帯電による印刷工程でのはじきやムラの発生を防止すること、火花発生による引火の危険を防止すること、また化粧シート、化粧板としたときの取り扱い性向上や汚れ防止等の効果を得るため、帯電防止剤をフィルム層、あるいはフィルム層表面のプライマー層に含み、表面固有抵抗を1×10Ω〜1×1012Ωの範囲としてもよい。表面固有抵抗値が1×10Ω未満の場合、もはや効果が飽和しており、これ以上の向上は見られないことに加え、帯電防止剤が多量に必要となってプライマー層の耐久性が不足し、化粧シートあるいは化粧板としたときの耐久性が不足したり、特殊な帯電防止剤の使用により印刷層の色目に悪影響を及ぼしたり、またフィルム自身の色調が所望のものにならないなどの問題が発生することがある。
【0037】
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するプライマー層の形成について説明する。プライマー層に関しては、ポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよく、両者を併用してもよい。
製膜と同時に塗布が可能であるため、製造が安価に対応可能であり、プライマー層の厚みを延伸倍率により変化させることができるという点でインラインコーティングが好ましく用いられる。
【0038】
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上にプライマー層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共にプライマー層を高温で処理することができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0039】
本発明においては、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ナフタレン骨格を含有するポリエステル樹脂、金属酸化物、およびイソシアネート化合物を含有する塗布液から形成されたプライマー層を有することを必須の要件とするものである。
【0040】
本発明におけるナフタレン骨格を含有するポリエステル樹脂は、主にプライマー層の屈折率の調整、およびハードコート層等の表面機能層との密着性を改善するために使用するものである。
【0041】
ナフタレン骨格をポリエステル樹脂に組み込む方法としては、例えば、ナフタレン環に置換基として水酸基を2つあるいはそれ以上導入してジオール成分あるいは多価水酸基成分とするか、あるいはカルボン酸基を2つあるいはそれ以上導入してジカルボン酸成分あるいは多価カルボン酸成分として作成する方法がある。ポリエステル樹脂の安定性の観点から、ナフタレン環にカルボン酸基を導入し、酸成分とすることが好ましい。カルボン酸基を導入したナフタレン骨格としては、代表的なものとして、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、および2,7−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。この中でも2,6−ナフタレンジカルボン酸が特に好ましい。
【0042】
また、ナフタレン骨格を含有するポリエステル樹脂の構成成分として、ナフタレン骨格を有しない、例えば、下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物を併用してもよい。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができ、多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオ−ル、2−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、p−キシリレングリコ−ル、ビスフェノ−ルA−エチレングリコ−ル付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコ−ル、ジメチロ−ルプロピオン酸、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジメチロ−ルエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロ−ルプロピオン酸カリウムなどが挙げられる。
【0043】
本発明における金属酸化物は、主にプライマー層の屈折率調整のために使用するものである。特にプライマー層中に使用する樹脂の屈折率が低いために、高い屈折率を有する金属酸化物を使用することが好ましく、屈折率として1.7以上のものを使用することが好ましい。金属酸化物の具体例としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化亜鉛、アンチモンチンオキサイド、インジウムチンオキサイド等が挙げられ、これらを単独で使用してもよいし、2種類以上使用してもよい。これらの中でも酸化ジルコニウムや酸化チタンがより好適に用いられ、特に、耐候性の観点から酸化ジルコニウムがより好適に用いられる。
【0044】
金属酸化物は、使用形態によっては密着性や塗布液の安定性が低下する懸念があるため、粒子の状態で使用することが好ましく、また、その平均粒径は透明性と塗布液の安定性の観点から、好ましくは0.001〜0.1μmの範囲であり、その中でも粒径が小さいものが透明性を保持したまま、プライマー層の屈折率の調整をより容易に行えるので好ましい。ただし、後述するように、易滑性等の取り扱い性も付与する目的で使用する場合は、透明性を損なわない範囲で、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲の粒子を少量使用することも可能である。
【0045】
本発明におけるイソシアネート化合物は、主にハードコート層等の表面機能層との密着性を向上させ、さらには、プライマー層を強固にし、表面機能層を形成するときに使用する各種溶剤に対する耐久性を向上させるために使用するものである。また、本発明においては、屈折率の調整が重要であり、それゆえ、脂肪族や脂環族イソシアネート化合物より屈折率が高く設計可能な芳香族イソシアネート化合物が好ましい。
【0046】
イソシアネート化合物とは、イソシアネートあるいは、ブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体、およびそれらのイソシアネート基がプライマー層形成時に反応した結果、生成する化合物のことである。イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が好ましく挙げられ、その中でも特に密着性の観点からトリレンジイソシアネートが好ましい。
【0047】
ブロックイソシアネートの状態で使用する場合、そのブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール、エチルフェノールなどのフェノール系化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノールなどのアルコール系化合物、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物、ε‐カプロラクタム、δ‐バレロラクタムなどのラクタム系化合物、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミンなどのアミン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミドの酸アミド化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上の併用であってもよい。
【0048】
また、上述したイソシアネートあるいは、ブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体は単体で用いてもよいし、各種ポリマーとの混合物や結合物として用いてもよい。
【0049】
本発明における積層ポリエステルフィルムにおいて、塗布面状の向上、塗布面上にハードコート層等の種々の表面機能層が積層されたときの干渉ムラの低減、透明性や密着性の向上等のために各種のポリマーを併用することも可能である。
【0050】
ポリマーの具体例としては、ナフタレン骨格を含有しないポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でもハードコート層等の表面機能層との密着性向上の観点から、ナフタレン骨格を含有しないポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が好ましい。
【0051】
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、イソシアネート化合物以外の架橋剤を併用していてもよい。架橋剤としては、種々公知の樹脂が使用できるが、例えば、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物等が挙げられる。
【0052】
また、本発明は、プライマー層中に、プライマー層の固着性、滑り性改良を目的として上述の金属酸化物以外の粒子を含有することが好ましい。特にポリエステルフィルム中に粒子を含有しない設計の場合は、フィルムの易滑性等の取り扱い性を改善するために、プライマー層に上述した金属酸化物の粒子の粒径よりも大きい粒子を含有する設計にすることが好ましい。当該目的で使用する、プライマー層中に含有する粒子の平均粒径はフィルムの透明性の観点から好ましくは1.0μm以下の範囲であり、さらに好ましくは0.05〜0.7μmの範囲、特に好ましくは0.1〜0.5μmの範囲である。粒子の具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、有機粒子等が挙げられ、特に分散性の観点からシリカがより好ましい。
【0053】
本発明の主旨を損なわない範囲において、フィルムへの濡れ性を向上させ、塗布液を均一にコートするために、公知のアニオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤を適量添加することも可能である。よりフィルムへの濡れ性を向上させるために、フッ素系界面活性剤がより好適に使用される。
【0054】
フッ素系界面活性剤とは、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された炭化水素鎖を持つ化合物を指す。また、水系塗布液を使用する場合は、フッ素系界面活性剤は、ある程度の水溶性または水分散性を有することが好ましく、例えば、フッ素置換された炭化水素鎖以外に親水性基を有する化合物が挙げられる。親水性基としては、例えば、スルホン酸、カルボン酸、リン酸等のアミンまたは金属塩、3級アミンのハロゲン化塩、水酸基、またはエーテル基等が挙げられる。
【0055】
アニオン性のフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル(C〜C12)スルホン酸のリチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、およびアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C〜C20)カルボン酸のカリウム塩、ナトリウム塩、およびアンモニウム塩、パーフルオロアルキルジカルボン酸カリウム塩、パーフルオロアルキル燐酸塩等が挙げられる。また、ノニオン性のフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホン酸アミド、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、パーフルオロアルキルアルコキシレート等が挙げられる。
【0056】
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、プライマー層には必要に応じて消泡剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等が含有されてもよい。
【0057】
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するプライマー層を形成する塗布液に用いられうるナフタレン骨格を含有するポリエステル樹脂は、その化合物中でナフタレン環の占める割合は、好ましくは5〜80重量%の範囲であり、より好ましくは10〜60重量%の範囲である。また、プライマー層全体に占めるナフタレン骨格を含有するポリエステル樹脂の割合は、塗布液の不揮発成分中に通常5〜90重量%の範囲、好ましくは10〜85重量%の範囲、さらに好ましくは15〜80重量%の範囲である。これらの範囲で使用することにより、プライマー層の屈折率の調整が容易となり、ハードコート層等の表面機能層を形成後の干渉ムラの軽減がしやすくなる。なお、ナフタレン環の割合は、例えば、適当な溶剤または温水でプライマー層を溶解抽出し、クロマトグラフィーで分取し、NMRやIRで構造を解析、さらに熱分解GC−MS(ガスクロマトグラフィー質量分析)や光学的な分析等で解析することにより求めることができる。
【0058】
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するプライマー層を形成する塗布液に用いられる金属酸化物の割合は、塗布液の不揮発成分中に通常3〜70重量%の範囲、好ましくは5〜50重量%の範囲、さらに好ましくは5〜40重量%の範囲、特に好ましくは6〜30重量%の範囲である。金属酸化物の量が3重量%未満の場合はプライマー層の屈折率を十分に高くすることができないことにより、干渉ムラが軽減されない場合があり、70重量%を超える場合は、プライマー層の透明性が悪化する場合や密着性が低下する場合がある。
【0059】
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するプライマー層を形成する塗布液に用いられる芳香族イソシアネート化合物由来の化合物の割合は、塗布液の不揮発成分中に通常1〜50重量%の範囲、より好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは10〜30重量%の範囲である。1重量%未満の場合、ハードコート層等の表面機能層との密着性が低下する可能性や、プライマー層が弱いことにより、耐湿熱性が低下する可能性が懸念され、50重量%を超える場合、プライマー層の屈折率が低くなることにより、ハードコート層等の表面機能層形成後の干渉ムラにより、視認性がよくない場合がある。
【0060】
本発明において、プライマー層を形成する塗布液中に含有しうる、フィルムの易滑性等の取り扱い性を改善するために使用する粒子の割合は、塗布液の不揮発成分中に好ましくは0.1〜5重量%の範囲、より好ましくは0.3〜3重量%の範囲、さらに好ましくは0.4〜2重量%の範囲である。少ない場合は、プライマー層を形成する塗布液中に含有する金属酸化物の粒子の効果、あるいはフィルム中に粒子を含有させることにより取り扱い性を改善する必要があり、一方、多い場合はフィルムの透明性が悪化する。
【0061】
本発明のフィルムのプライマー層を形成する塗布液は、イソシアネート化合物、ナフタレン骨格を含有するポリエステル樹脂、および金属酸化物を含有するが、かかるプライマー層は例えば、ナフタレン骨格を含有するポリエステル樹脂および金属酸化物等のバインダー樹脂とイソシアネート化合物を含有する塗布液をフィルムに塗布、乾燥、硬化することで得ることができる。なお塗布液中にはバインダーポリマー等他の成分を含有していても構わない。
【0062】
得られたプライマー層は、イソシアネート化合物の加熱条件により適当な割合で反応していると考えられる。各成分化合物が完全に反応していない場合は、各成分の未反応物と反応生成物との双方が任意の割合で含まれることとなる。
【0063】
これら熱反応性化合物の併用はプライマー層の強度を増したり、耐水性などを向上させたりするために用いられることがあるが、強い塗布層は通常は接着性が劣る場合がある。
しかし、本発明においてはイソシアネート化合物を用いることで極めて優れた接着性を得ることができる。
【0064】
本発明のポリエステルフィルムにおいて、上述したプライマー層を設けた面と反対側の面にもプライマー層2を設けることも可能である。例えば、ハードコート層等の表面機能層を形成する反対側にマイクロレンズ層、プリズム層、スティッキング防止層、光拡散層、ハードコート層、粘着層、印刷層等の機能層を形成する場合に、当該機能層との密着性を向上させることが可能である。反対側の面に形成するプライマー層2の成分としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等のバインダーポリマー、オキサゾリン系化合物、エポキシ系化合物、メラミン系化合物、イソシアネート系化合物等の架橋剤等が挙げられ、これらの材料を単独で用いてもよいし、複数種を併用して用いてもよい。また、上述してきたようなナフタレン骨格を含有するポリエステル樹脂、金属酸化物、および芳香族イソシアネート化合物由来の化合物を含有するプライマー層2(ポリエステルフィルムに両面同一のプライマー層)であってもよい。
【0065】
プライマー層中の成分の分析は、例えば、TOF−SIMS、ESCA、蛍光X線等の分析によって行うことができる。
【0066】
インラインコーティングによってプライマー層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、不揮発成分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
【0067】
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、ポリエステルフィルム上に設けられるプライマー層の膜厚は、通常0.04〜0.20μm、好ましくは0.07〜0.15μmの範囲である。膜厚が上記範囲より外れる場合は、表面機能層を積層後の干渉ムラにより、視認性が悪化する場合がある。
【0068】
本発明において、プライマー層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0069】
本発明において、ポリエステルフィルム上にプライマー層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングによりプライマー層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0070】
一方、インラインコーティングによりプライマー層を設ける場合、通常、70〜280℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0071】
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0072】
本発明におけるプライマー層は干渉ムラの発生を抑制するために、屈折率の調整がされたものであり、その屈折率は基材のポリエステルフィルムとハードコート層等の表面機能層の相乗平均付近に設計したものである。プライマー層の屈折率とプライマー層の反射率は密接な関係がある。本発明の絶対反射率は、横軸に波長、縦軸に反射率を示すグラフを描き、反射率の極小値が波長400〜800nmの範囲に1つであることが好ましく、その極小値は4.0%以上であることが好ましい。本発明の絶対反射率の範囲においては、その極小値が同じ波長に現れるならば、極小値の反射率は、屈折率が高い場合は高い値となり、屈折率が低い場合は低い値となる。
【0073】
本発明における絶対反射率は、波長400〜800nmの範囲に極小値が1つ存在することが好ましく、より好ましくは波長500〜700nmの範囲に極小値が1つ存在するものである。また、その極小値の値が、好ましくは4.0〜6.5%、より好ましくは4.5〜6.2%の範囲である。波長400〜800nmの範囲にある極小値が1つではない場合、また、極小値の絶対反射率が上記の値を外れる場合は、ハードコート層等の表面機能層を形成後に干渉ムラが発生し、フィルムの視認性が低下する場合がある。
【0074】
本発明のポリエステルフィルムには、プライマー層の上にハードコート層等の表面機能層を設けるのが一般的である。ハードコート層に使用される材料としては、特に限定されないが、例えば、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、テトラエトキシシラン等の反応性珪素化合物等の硬化物が挙げられる。これらのうち生産性および硬度の両立の観点より、紫外線硬化性の多官能(メタ)アクリレートを含む組成物の重合硬化物であることが特に好ましい。
【0075】
紫外線硬化性の多官能(メタ)アクリレートを含む組成物としては特に限定されるものでない。例えば、公知の紫外線硬化性の多官能(メタ)アクリレートを一種類以上混合したもの、紫外線硬化性ハードコート材として市販されているもの、或いはこれら以外に本実施形態の目的を損なわない範囲において、その他の成分をさらに添加したものを用いることができる。
【0076】
紫外線硬化性の多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ) アクリレート、1,6−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ヘキサン等の多官能アルコールの(メタ)アクリル誘導体や、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、そしてポリウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0077】
紫外線硬化性の多官能(メタ)アクリレートを含む組成物に含まれるその他の成分は特に限定されるものではない。例えば、無機または有機の微粒子、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤およびレベリング剤等が挙げられる。また、ウェットコーティング法において成膜後乾燥させる場合には、任意の量の溶媒を添加することができる。
【0078】
ハードコート層の形成方法は、有機材料を用いた場合にはロールコート法、ダイコート法等の一般的なウェットコート法が採用される。形成されたハードコート層には必要に応じて加熱や紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射を施し、硬化反応を行うことができる。
【0079】
本発明の化粧板または化粧シート用ポリエステルフィルムと基材との貼り合わせには、任意の接着剤を使用することができる。接着剤としては、例えば、ユリア樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、α−オレフィン樹脂接着剤、水性高分子とイソシアネートの混合物による接着剤、エポキシ系接着剤、溶液型酢酸ビニル樹脂系接着剤、エマルジョン型酢酸ビニル樹脂系接着剤、アクリルエマルジョン系接着剤、ホットメルト接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、SBR系接着剤、変性ゴムエマルジョン系接着剤、エチレン共重合樹脂系接着剤、レゾルシン系接着剤、天然ゴム系接着剤、セルロース系接着剤、でんぷん質糊料、デキストリン等が挙げられる。
【0080】
基材が木材の場合は、ユリア樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、α−オレフィン樹脂接着剤、水性高分子とイソシアネートの混合物による接着剤、エマルジョン型酢酸ビニル樹脂系接着剤、アクリルエマルジョン系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、変性ゴムエマルジョン系接着剤、セルロース系接着剤が主に使用される。
【0081】
ユリア樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、三井東圧化学社製「ユーロイド310」、「ユーロイド320」、「ユーロイド701」、「ユーロイド755」、「ユーロイド730」等が挙げられる。メラミン樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、三井東圧化学社製「ユーロイド350」、「ユーロイド775」、「ユーロイド781」、「ストラクトボンドC−1」、「ストラクトボンドC−10」(以上、メラミン・尿素樹脂)、三井東圧化学社製「ユーロイド883」、「ユーロイド811」(以上、メラミン・フェノール樹脂)等が挙げられる。
【0082】
フェノール樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、三井東圧化学社製「ユーロイドPL−261」、「ユーロイドPL−281」、「ユーロイドPL−211」、「ユーロイドPL−222」、コニシ社製「PR22」等が挙げられる。α−オレフィン樹脂接着剤の市販品としては、例えば、コニシ社製「SH2」、「SH3」、「SH5W」、「SH6」、「SH20」、「SH20L2」等が挙げられる。水性高分子とイソシアネートの混合物による接着剤の市販品としては、例えば、コニシ社製「CU1」、「CU5」、「CU51」等が挙げられる。
【0083】
エポキシ系接着剤の市販品としては、例えば、積水化学工業社製「エスダイン3008」、「エスダイン3200」、「エスダイン3710」、「エスダイン3730」、「エスダイン3740」、「エスダイン3750」、「エスダイン3600」、「エスダイン3611」、「エスダイン3450」等が挙げられる。溶剤型酢酸ビニル樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、積水化学工業社製「エスダイン1011」、「エスダイン1013」、「エスダイン1015」、「エスダイン1020」、「エスダイン1057」等が挙げられる。
【0084】
エマルジョン型酢酸ビニル樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、セメダイン社製「656」、「605」、「EM−65」、「EM−90」、「602(T)」、積水化学工業社製「エスダイン5100」、「エスダイン5165」、「エスダイン5200」、「エスダイン5300」、「エスダイン5301」、「エスダイン5320」、「エスダイン5400」、「エスダイン5403」、「エスダイン5405」、「エスダイン5406」、「エスダイン5408」、「エスダイン5410」、「エスダイン5440」、「エスダイン5500」、「エスダイン5700」、「エスダイン5800」、「エスダイン5803」、「エスダイン5815」、コニシ社製「CH2」、「CH2W」、「CH3」、「CH5」、「CH18」、「CH20」、「CH7」、「CH7L」、「CH27」、「CH1000」、「CH63」、「CH65」、「CH131」、「CH133」、「CH115」、「CX10」、「CX55」、「CH1500」、「CH1600」、「CH3000L」、「CH72」、「CH73」、「CH74」、「CH77」、「CH107硬化剤付」、「PTS(A/B)」、「CH7000/PTS7000」等が挙げられる。
【0085】
アクリルエマルジョン系接着剤の市販品としては、例えば、セメダイン社製「EM−315」、「EM−370A・B」、「モルコーン685」、「EM−326」、「679」、「EM−702改」、コニシ社製「CEL10」、「CEL20」、「CEL22」、「CEL25N」、「CEL60」、「CEL63」、「CVC33」、「CVC36」、「CVC36F」、「CV3105シリーズ」、「SP65」、「SP85」、「SP200」、「SP210」、「SP220」、「SP281」、「SP285」、「SP290」、「SP291」、「SP3055」、「CN520」、「CZ100」、「CZ220」、「CE780」、「CE801」、「ネダボンドA」、「ネダボンドW1000」等が挙げられる。
【0086】
クロロプレンゴム系接着剤の市販品としては、例えば、積水化学工業社製「エスダイン276AL」、「エスダイン276FS」、「エスダイン276M」、「エスダインSG202D」、「エスダイン278」、「エスダインSG2005E」、コニシ社製「G10」、「G11」、「G12」、「スーパーGエース」、「G17」、「G18」、「G19」、「G5000」、「G5800」、「GS5」、「GU55ブルー」、「GU68Fグリーン」、「G77」、「G78」、「ネダボンドG」、「スーパーGスプレー」、「GW150」等が挙げられる。
【0087】
変性ゴムエマルジョン系接着剤の市販品としては、例えば、セメダイン社製「CL−5N」、「CL−7N」、コニシ社製「FL200」、「FL105S」、「HB2」、「HB10」等が挙げられる。レゾルシン系接着剤の市販品としては、例えば、コニシ社製「KR15」等、セルロース系接着剤の市販品としては、例えば、コニシ社製「工作用ボンド(K)」等が挙げられる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定方法および評価方法は次のとおりである。なお、特記しない限り、実施例および比較例中の「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を意味する。
【0089】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定方法
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0090】
(2)平均粒径の測定方法
TEM(日立製作所社製 H−7650、加速電圧100V)を使用してプライマー層を観察し、粒子10個の粒径の平均値を平均粒径とした。
【0091】
(3)プライマー層の膜厚測定方法
プライマー層の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuOで染色し、プライマー層断面をTEM(日立製作所社製 H−7650、加速電圧100V)を用いて測定した。
【0092】
(4)ポリエステルフィルムにおけるプライマー層表面からの絶対反射率の評価方法
あらかじめ、ポリエステルフィルムの測定裏面に黒テープ(ニチバン社製ビニールテープVT―50)を貼り、分光光度計(日本分光社製 紫外可視分光光度計 V−570 および自動絶対反射率測定装置 AM−500N)を使用して同期モード、入射角5°、N偏光、レスポンス Fast、データ取区間隔1.0nm、バンド幅10nm、走査速度1000m/minでプライマー層面を波長範囲300〜800nmの絶対反射率を測定し、その極小値における波長(ボトム波長)と反射率を評価した。
【0093】
(5)隠蔽度(透過濃度)
マクベス濃度計(TD−904型)を使用し、Gフィルター下の透過光濃度を測定した。この値が大きいほど隠蔽力が高いことを示す。
【0094】
(6)化粧板適性:印刷色変化
表面が黒色の平面基材である合板に化粧シートを貼着して化粧板となし、化粧シートの表面に印刷された絵柄模様の色調変化を観察し、意匠性が保たれている場合を○、色調の変化が著しくて意匠性が低下した場合を×、その中間を△とした。
【0095】
(7)干渉ムラの評価方法
ポリエステルフィルムのプライマー層側に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート72重量部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート18重量部、五酸化アンチモン10重量部、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ社製)1重量部、メチルエチルケトン200重量部の混合塗液を乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、紫外線を照射して硬化させハードコート層を形成した。得られたフィルムを3波長光域型蛍光灯下で目視にて、干渉ムラを観察し、干渉ムラが確認できないものを◎、薄くまばらな干渉ムラが確認されるものを○、薄いが線状の干渉ムラが確認できるものを△、明瞭な干渉ムラが確認されるものを×とした。
【0096】
(8)ハードコート層密着性の評価方法
より厳しい密着性の評価を行うために、上記(5)の評価で使用したハードコート液から五酸化アンチモンを除いた材料で検討した。すなわち、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート80重量部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート20重量部、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ社製)5重量部、メチルエチルケトン200重量部の混合塗液を乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、紫外線を照射して硬化させハードコート層を形成した。得られたフィルムに対して、80℃、90%RHの環境下で100時間後、10×10のクロスカットをして、その上に18mm幅のテープ(ニチバン社製セロテープ(登録商標)CT−18)を貼り付け、180度の剥離角度で急激にはがした後の剥離面を観察し、剥離面積が3%未満ならば◎、3%以上10%未満なら○、10%以上50%未満なら△、50%以上ならば×とした。
【0097】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とし、4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。
次にこの反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加した後、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、常法に従い4時間重縮合反応を行った。すなわち、反応温度を230℃から徐々に上げて最終的に280℃とし、一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、固有粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させチップ化してポリエステル(A)を得た。得られたポリエステル(A)の固有粘度は0.63であった。
【0098】
<ポリエステル(B)の製造方法>
上記のポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加後、平均粒径1.6μmのエチレングリコールに分散させたシリカ粒子を0.2重量部、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、固有粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(B)を得た。得られたポリエステル(B)の固有粘度は0.65であった。
【0099】
<ポリエステル(C)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸カルシウム・一水塩0.07重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、4時間半後に230℃と、実質的にエステル交換反応を終了させた。
次にこの反応混合物に正燐酸0.04重量部を添加した後、三酸化アンチモン0.035重量部を加えて、常法に従い4時間重縮合反応を行った。すなわち、反応温度を徐々に上げて最終的に280℃とし、一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.05mmHgとした。反応開始約4時間後、反応を停止し、常法に従いチップ化してポリエステル(C)を得た。得られたポリエステル(C)の固有粘度は0.75であった。
【0100】
<ポリエステル(D)の製造方法>
上記のポリエステル(C)40重量部とルチル型二酸化チタン60重量部とを定法に従い二軸押出機中で溶融混合した後にチップ化してマスターバッチポリエステル(D)を得た。
【0101】
<ポリエステル(E)の製造方法>
上記のポリエステル(C)40重量部とルチル型二酸化チタン60重量部に加えて、黄色顔料としてアンスラキノン3.5重量部、カーボンブラック0.1重量部、酸化鉄2.0重量部使用し、常法に従い二軸押出機中で溶融混合した後にチップ化してマスターバッチポリエステル(E)を得た。
【0102】
プライマー層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・ナフタレン骨格を含有するポリエステル樹脂:(IA)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)2,6−ナフタレンジカルボン酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=92/8//80/20(mol%)
・ナフタレン骨格を含有するポリエステル樹脂:(IB)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)2,6−ナフタレンジカルボン酸/テレフタル酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=78/15/7//90/10(mol%)
【0103】
・金属酸化物:(IIA)平均粒径70nmの酸化ジルコニウム粒子
・金属酸化物:(IIB)平均粒径15nmの酸化ジルコニウム粒子
・金属酸化物:(IIC)平均粒径15nmの酸化チタン粒子
・芳香族イソシアネート化合物:(III)
メチルエチルケトン溶媒中で、アジピン酸/イソフタル酸//1,6−ヘキサンジオール=50/50//100(モル%)のポリエステルポリオール(平均分子量1700)100重量部、1,4−ブタンジオール9重量部、トリメチロールプロパン8重量部に、トリレンジイソシアネート80重量部を添加して、反応を行った後、ジメチロールプロピオン酸12重量部、ポリエチレングリコール(平均分子量600)16重量部、アミン触媒を添加し、75℃で反応を行った。次に55℃にてメチルエチルケトンオキシム16重量部を添加し、ブロックイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとした。さらに、トリエチルアミン7.2重量部、水450重量部を混合し、トリエチレンテトラミン2.9重量部を添加し、反応させ、メチルエチルケトン溶媒を除去し得られたブロック芳香族イソシアネート化合物。
【0104】
・ポリエステル樹脂:(IV)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4−ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
・ヘキサメトキシメチルメラミン(V)
・粒子:(VIA)平均粒径0.45μmのシリカ粒子
・粒子:(VIB)平均粒径0.30μmのシリカ粒子
・粒子:(VIC)平均粒径0.16μmのシリカ粒子
【0105】
実施例1:
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料を最外層原料とし、ポリエステル(C),(D)をそれぞれ88%、12%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=6/38/6の吐出量)の層構成で共押出し、冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度83℃で縦方向に3.0倍延伸した後、この縦延伸フィルムの両面に、下記表1に示す塗布液1を塗布し、テンターに導き、横方向に125℃で3.2倍延伸し、215℃で熱処理を行い、膜厚(乾燥後)が0.10μmのプライマー層を有する厚さ50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムにハードコート層を積層後のフィルムには明瞭な干渉ムラはなく、また密着性も良好であった、このフィルムの特性を下記表2に示す。
【0106】
実施例2〜18:
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表2に示すとおり、高い反射率を有し、干渉ムラレベルも良好で、密着性も良好なものであった。
【0107】
実施例19:
実施例1において、最外層の原料をポリエステル(A)単独とする以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表2に示すとおり、高い反射率を有し、ハードコート層を積層後の干渉ムラレベルも良好で、密着性も良好なものであった。
【0108】
実施例20:
実施例19において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表2に示すとおり、高い反射率を有し、ハードコート層を積層後の干渉ムラレベルも良好で、密着性も良好なものであった。
【0109】
実施例21
実施例1において、ポリエステル(D)の替わりに、ポリエステル(E)を使用した以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表2に示すとおり、高い反射率を有し、ハードコート層を積層後の干渉ムラレベルも良好で、密着性も良好なものであった。
【0110】
比較例1〜5:
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すとおり、明瞭な干渉ムラが観察できる場合、密着性が劣る場合が見られた。
【0111】
比較例6
実施例1において、ポリエステル(C),(D)をそれぞれ99%、1%の割合で混合した混合原料を原料とした以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表2に示すとおり、高い反射率を有し、ハードコート層を積層後の干渉ムラレベルも良好で、密着性も良好なものであったが、印刷色変化が大きく化粧板適性は不十分だった。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明のフィルムは、例えば、干渉ムラが気にならない化粧板や化粧シート用のフィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に少なくともフィルム層とハードコート層を順次に配置してなる化粧板または化粧シートの前記フィルム層に使用されるポリエステルフィルムであって、当該ポリエステルフィルムの透過濃度が0.1〜5.0であり、ハードコート層を配置する少なくとも片面に、イソシアネート化合物、ナフタレン骨格を含有するポリエステル樹脂、および金属酸化物を含有する塗布液から形成されたプライマー層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2012−232582(P2012−232582A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−92523(P2012−92523)
【出願日】平成24年4月14日(2012.4.14)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】