説明

積層ポリエステルフィルム

【課題】 高度な透明性と高度な導電性とを有し、例えば、タッチパネルの電極フィルム等に用いられる導電性フィルムや、液晶テレビ、プラズマディスプレイパネルや液晶テレビなどのフラットパネルディスプレイに用いられる電磁波シールドフィルム用等の導電性フィルムを提供する。
【解決手段】 金属酸化物を含有する塗布液を塗布して形成された塗布層をポリエステルフィルムの少なくとも片面に有し、当該塗布層上に網目状の金属導電層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ポリエステルフィルムに関するものであり、例えば、タッチパネルの電極フィルム等に用いられる導電性フィルムや液晶テレビ、プラズマディスプレイパネルや液晶テレビなどのフラットパネルディスプレイに用いられる電磁波シールドフィルム用等の積層ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電性フィルムは、タッチパネル、電子ペーパー、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、電磁波シールドフィルムなどに用いられている。
【0003】
現在、導電性フィルムとして、ITO(酸化インジウムスズ)が主流であるが、ITOフィルムには、レアメタルであるインジウムの供給不安やそれに伴う高コスト化などの問題がある。また、ITOフィルムは曲げによってクラックが入り、導電性が著しく低下するという問題点もある。
【0004】
上記問題点を解決するために、各種の方法が検討されている。例えば、銅箔をメッシュ状にエッチングすることで、導電性部分が銅であるメッシュ状導電性フィルム(特許文献1)や、ポリチオフェン系導電性ポリマーを塗布した導電性フィルム(特許文献2)、金属微粒子をスクリーン印刷などによりパターン化して設けた導電性フィルム(特許文献3、4)が提案されている。
【0005】
しかし、前述した従来の技術には次のような問題点がある。すなわち、特許文献1に記載の銅箔をエッチングする方法は、一般的に収率が悪く、各工程の製品ロスが発生しやすい。特許文献2に記載の導電性ポリマーをコーティングして導電性層を得る方法では、導電性レベルとしては不十分な点がある。特許文献3、4に記載の金属微粒子をパターン化して導電性層を得る方法では、塗布した金属微粒子の大部分がエッチング工程などで除去されるため、金属微粒子のロスが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-210988号公報
【特許文献2】特開2006−28214号公報
【特許文献3】特開2004-79243号公報
【特許文献4】特開2009−275227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、高度な透明性と高度な導電性とを有し、例えば、タッチパネルの電極フィルム等に用いられる導電性フィルムや、液晶テレビ、プラズマディスプレイパネルや液晶テレビなどのフラットパネルディスプレイに用いられる電磁波シールドフィルム用等の導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなる積層ポリエステルフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、金属酸化物を含有する塗布液を塗布して形成された塗布層をポリエステルフィルムの少なくとも片面に有し、当該塗布層上に網目状の金属導電層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層ポリエステルフィルムによれば、金属微粒子を含有する塗布液を塗布した際に、ランダムな網目状を形成し、透明性および導電性に優れた積層ポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
【0012】
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0013】
ポリエステルの重合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等が挙げられる。
【0014】
本発明のポリエステルフィルム中には液晶ディスプレイの液晶等が紫外線により劣化することを防止するために、紫外線吸収剤を含有させてもよい。紫外線吸収剤は、紫外線吸収能を有する化合物で、ポリエステルフィルムの製造工程で付加される熱に耐えうるものであれば特に限定されない。
【0015】
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤があるが、透明性の観点からは有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などが挙げられる。耐久性の観点からは環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系がより好ましい。また、紫外線吸収剤を2種類以上併用して用いることも可能である。
【0016】
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することも可能である。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0017】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0018】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜5μm、好ましくは0.1〜3μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、易滑性を十分に付与できなかったり、粒子が凝集して、分散性が不十分となり、フィルムの透明性を低下させたりする場合がある。一方、5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において導電層等、各種の表面機能層を形成させる場合等に不具合が生じる場合がある。
【0019】
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、5重量%以下、好ましくは0.0005〜2重量%の範囲である。粒子含有量が5重量%を超える場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0020】
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
【0021】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0022】
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜350μm、好ましくは50〜250μmの範囲である。
【0023】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を乾燥したペレットを、単軸押出機を用いて、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0024】
また、本発明においては積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0025】
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。製膜と同時に塗布が可能であるため、製造が安価に対応可能であることから、インラインコーティングが好ましく用いられる。
【0026】
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に、延伸後のポリエステルフィルムの熱処理工程で、塗布層を高温で処理することができるため、塗布層上に形成され得る各種の表面機能層との密着性や耐湿熱性等の性能を向上させることができる。また、延伸前にコーティングを行う場合は、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜で均一な塗工を行うことができる。すなわち、インラインコーティング、特に延伸前のコーティングにより、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造することができる。
【0027】
本発明においては、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、金属酸化物を含有する塗布液を塗布して形成された塗布層を有し、当該塗布層上に、金属の網目状導電層を有することを必須の要件とするものである。
本発明における塗布層は、金属の導電層を形成した際に、網目構造を形成させることができるものであり、透明性および導電性を両立することが可能となる。
【0028】
本発明における金属酸化物とは、金属元素が酸素と結合している化合物の総称であり、例えば、酸化亜鉛、ジルコニア、チタニア、アルミナ、酸化セリウムなどが挙げられ、好ましくは酸化亜鉛、ジルコニア、チタニア、より好ましくは酸化亜鉛である。
本発明における金属酸化物の大きさは、特に限定されるものではないが、数平均粒子径が0.001μm〜3μmであることが好ましく、より好ましくは0.001〜1μmであり、さらに好ましくは0.002〜0.2μmである。数平均粒子径が0.001μmより小さい場合には、導電層を塗布した際に、網目構造が形成されない場合があり、3μmより大きい場合には、透明性が悪化する場合がある。
【0029】
本発明における積層ポリエステルフィルムにおいて、塗布層上に金属の網目状導電層が形成されたときの密着性の向上や透明性の向上、塗布面状を良化させる等のために任意のポリマーを併用することが好ましい。
【0030】
ポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。上記中でも特に塗布面状や密着性の向上という観点からポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコールを併用することが好ましく、その中でもポリエステル樹脂および/またはポリビニルアルコールを併用することがさらに好ましい。
【0031】
ポリエステル樹脂とは、主な構成成分として例えば、下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物からなる。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、および2,7−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができ、多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオ−ル、2−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、p−キシリレングリコ−ル、ビスフェノ−ルA−エチレングリコ−ル付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコ−ル、ジメチロ−ルプロピオン酸、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジメチロ−ルエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロ−ルプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
【0032】
アクリル樹脂とは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーに代表されるような、炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。
【0033】
上記炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有ビニル系モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビニリデンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
【0034】
ウレタン樹脂とは、分子内にウレタン構造を有する高分子化合物のことである。通常ウレタン樹脂はポリオールとイソシアネートの反応により作成される。ポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられ、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
ポリカーボネートポリオール類は、多価アルコール類とカーボネート化合物とから、脱アルコール反応によって得られる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン等が挙げられる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられ、これらの反応から得られるポリカーボネート系ポリオール類としては、例えば、ポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
【0035】
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等)の反応から得られるものが挙げられる。
【0036】
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0037】
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。
【0038】
ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用しても良く、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基またはアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
【0039】
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。また、アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1 ,8−オクタンジアミン、1 ,9−ノナンジアミン、1 ,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロビリチンシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1 ,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
【0040】
ポリビニルアルコールとは、ポリビニルアルコール部位を有する化合物であり、例えば、ポリビニルアルコールに対し、部分的にアセタール化やブチラール化等された変性化合物も含め、従来公知のポリビニルアルコールを使用することができる。ポリビニルアルコールの重合度は特に限定されるものではないが、通常100以上、好ましくは300〜40000の範囲のものが用いられる。重合度が100未満の場合、塗布層の耐水性が低下する場合がある。また、ポリビニルアルコールのケン化度は特に限定されるものではないが、70モル%以上、好ましくは70〜99.9モル%の範囲であるポリ酢酸ビニルケン化物が実用上用いられる。
【0041】
さらに塗布層中には本発明の主旨を損なわない範囲において、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド系化合物、イソシアネート系化合物等の架橋剤を併用することも可能である。
【0042】
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、等のα,β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
【0043】
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことである。例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
【0044】
エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を有する化合物であり、例えば、エピクロロヒドリンとエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等がある。ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0045】
カルボジイミド系化合物とは、カルボジイミド構造を有する化合物のことであり、分子内にカルボジイミド構造を1つ以上有する化合物であるが、より良好な密着性等のために、分子内に2つ以上有するポリカルボジイミド系化合物がより好ましい。
【0046】
カルボジイミド系化合物は従来公知の技術で合成することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0047】
さらに本発明の効果を消失させない範囲において、ポリカルボジイミド系化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加して用いてもよい。
【0048】
イソシアネート系化合物とは、イソシアネート、あるいはブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体構造を有する化合物のことである。イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート等が例示される。また、これらイソシアネートのビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物、カルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げられる。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。上記イソシアネートの中でも、紫外線による黄変を避けるために、芳香族イソシアネートよりも脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートがより好ましい。
【0049】
ブロックイソシアネートの状態で使用する場合、そのブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール、エチルフェノールなどのフェノール系化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノールなどのアルコール系化合物、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物、ε‐カプロラクタム、δ‐バレロラクタムなどのラクタム系化合物、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミンなどのアミン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミドの酸アミド化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上の併用であってもよい。
【0050】
また、本発明におけるイソシアネート系化合物は単体で用いてもよいし、各種ポリマーとの混合物や結合物として用いてもよい。イソシアネート系化合物の分散性や架橋性を向上させるという意味において、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂との混合物や結合物を使用することが好ましい。
【0051】
これらの架橋剤の中でも、特にオキサゾリン化合物を併用することにより、接着性や耐湿熱性の向上が期待できる。また、これら架橋剤は、インラインコーティングへの適用等を配慮した場合、水溶性または水分散性を有することが好ましい。
【0052】
なお、これら架橋剤は、乾燥過程や、製膜過程において、反応させて塗布層の性能を向上させる設計で用いている。できあがった塗布層中には、これら架橋剤の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
【0053】
また、塗布層の滑り性改良やブロッキング改良のために、金属酸化物以外の粒子を含有することも可能である。用いる粒子としては、例えば、シリカ等の非金属の無機粒子、あるいは架橋高分子粒子等の有機粒子等を挙げることができる。
【0054】
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、塗布層には必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等が含有されてもよい。
【0055】
本発明のフィルムにおける塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、金属酸化物は、通常0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜25重量%、より好ましくは1〜20重量%の範囲である。0.1重量%より少ない場合は、導電層を塗布した際に、網目構造が形成されなかったり、網目が途切れたりする可能性があり、30重量%より多い場合は、塗膜が脆くなったり、透明性が低下する可能性がある。
【0056】
本発明のポリエステルフィルムにおいて、上述した塗布層を設けた面と反対側の面にも塗布層を設けることも可能である。例えば、導電層等の表面機能層を形成する反対側にマイクロレンズ層、プリズム層、スティッキング防止層、光拡散層、ハードコート、導電層等の機能層を形成する場合に、当該機能層との密着性を向上させることが可能となる。反対側の面に形成する塗布層の成分としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等のポリマー、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物等の架橋剤等が挙げられ、これらの材料を単独で用いてもよいし、複数種を併用して用いてもよい。また、上述してきたような金属酸化物を含有する塗布層(ポリエステルフィルムに両面同一の塗布層)であってもよい。
【0057】
塗布層中の成分の分析は、例えば、TOF−SIMS等の表面分析によって行うことができる。
【0058】
インラインコーティングによって塗布層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
【0059】
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の膜厚は、通常0.002〜1g/m、より好ましくは0.01〜0.5g/m、さらに好ましくは0.02〜0.2g/mの範囲である。膜厚が0.002g/m未満の場合は十分な密着性が得られない可能性があり、1g/mを超える場合は、外観や透明性、フィルムのブロッキング性が悪化する可能性がある。
【0060】
本発明において、塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0061】
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0062】
一方、インラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、70〜280℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0063】
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0064】
本発明のポリエステルフィルムは、塗布層上に、金属の網目状導電層を有することを必須の要件とするものである。導電層に使用される材料としては、特に限定されないが、例えば、金属微粒子、金属箔、金属酸化物等が挙げられる。これらのうち導電性および生産性の両立の観点より、金属微粒子を含有する組成物であることが特に好ましい。
【0065】
金属微粒子に用いられる金属としては特に限定されず、白金、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、ビスマス、コバルト、鉄、アルミニウム、亜鉛、錫などが挙げられる。金属は1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その中でも、導電性に優れるという点で、銀を用いることが好ましい。
金属微粒子の調整法としては、例えば、液層中で金属イオンを還元して金属原子とし、原子クラスターを経てナノ粒子へ成長させる化学的方法や、バルク金属を不活性ガス中で蒸発させて微粒子となった金属をコールドトラップで捕捉する手法や、ポリマー薄膜上に真空蒸着させて得られた金属薄膜を加熱して金属薄膜を壊し、固相状態でポリマー中に金属ナノ粒子を分散させる物理的手法などを用いることができる。
【0066】
金属微粒子の大きさは特に限定されるものではないが、数平均粒子径が0.001〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.001〜2μmであり、さらに好ましくは0.002〜1.5μmである。数平均粒子径が0.001μmより小さい場合には、金属微粒子同士の連続的な接触が途切れる場合が多くなり、その結果、十分な導電性が得られない場合がある。数平均粒子径が5μmよりも大きい場合には、後述する焼成後の処理での導電性を高める効果が得られなくなり、十分な導電性が得られない場合がある。導電層を形成し得る組成物中の金属微粒子の粒径分布は大きくても、小さくてもよく、粒径が不揃いであっても、均一であってもよい。
【0067】
ポリエステルフィルム上に導電層を積層する方法は、特に制限されないが、金属微粒子を含有する組成物を塗布することで、微粒子が部分的に凝集して、網目線を形成する現象、いわゆる自己組織化現象を利用して網目状の導電層を形成させる手法が好ましい。このような手法を用いると、網目がランダムになりやすく、さらに線幅が細くなりやすく、透明性を損なわないので、自己組織化する金属微粒子溶液が好ましい。
【0068】
ここで、自己組織化する金属微粒子溶液とは、ポリエステルフィルム上に当該溶液を塗布して放置しておくと、自然にポリエステルフィルム上に網目状の構造を形成することのできる溶液である。自己組織化する金属微粒子溶液を用いて網目状の構造を形成させる場合、例えば、金属微粒子と、分散剤などの有機成分とからなる粒子を主成分とする溶液、すなわち金属コロイド溶液などを用いることができる。金属コロイド溶液の溶媒としては、水または各種の有機溶媒を用いることができる。
【0069】
金属コロイド溶液には、金属微粒子、分散剤以外に、他の各種添加剤、例えば、界面活性剤、保護樹脂、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、有機または非金属の無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤などが含有されてもよい。
【0070】
導電層の形成方法は、金属微粒子を用いた場合にはバーコート法、ダイコート法等の一般的なウェットコート法が採用される。形成された導電層には必要に応じて加熱を施し、焼成することができる。さらに焼成された導電層が積層されたポリエステルフィルムを有機溶剤や酸などで処理を施し、導電性を上げることができる。
【0071】
本発明のポリエステルフィルムにおいては、塗布層上に、金属の網目状導電層を積層することによって、透明で、導電性のあるフィルムを得ることができる。本発明におけるポリエステルフィルムの全光線透過率は好ましくは60%以上であり、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは70%以上である。光線透過率が60%より小さいと、導電性フィルムの透明性の点で問題が生じる場合がある。
本発明における積層ポリエステルフィルムの導電性に関しては、表面抵抗が300Ω以下であることが好ましく、より好ましくは100Ω以下、さらに好ましくは50Ω以下である。表面抵抗が300Ω以下であると、導電性フィルムとして通電して用いる際に、抵抗による負荷が小さくなるため、発熱が抑えられることや、低電圧で用いることができるなどの点から、好ましい。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
【0073】
(1)ポリエステルの極限粘度の測定方法
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0074】
(2)塗布層中の粒子の平均粒径の測定方法
TEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H−7650、加速電圧100V)を使用して塗布層を観察し、粒子10個の粒径の平均値を平均粒径とした。
【0075】
(3)金属微粒子の数平均粒子径
導電層形成溶液の金属微粒子をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H−7650、加速電圧100V)で観察し、金属微粒子10個の粒径の平均値を平数平均粒径とした。
【0076】
《導電層形成溶液》
導電層形成溶液として、下記組成からなる銀微粒子溶液を用いた。
平均粒径0.08μmの銀微粒子/BYK−410(ビックケミー株式会社製)/SPAN−60/シクロヘキサノン/アニリン/トルエン/ヘキサデカノール/ヘキサメチロールメラミン/蒸留水=5.0/0.3/0.2/4.6/56.0/0.8/0.1/33.0(重量%)
【0077】
(4)表面観察
ポリエステルフィルムの塗膜形成面に(4)に記載の導電層形成溶液を#24メイヤーバーを用いて塗布した後、150℃で2分間乾燥することにより導電性フィルムを得た。
得られた導電性フィルムの導電層を、SEM(株式会社堀場製作所製 S3400N)を用いて観察し、網目の形状を観察し、ランダムな網目構造が形成されていれば◎、網目構造が形成されているが、一部に網目の欠陥があれば○、一部が網目構造を形成していれば△、網目構造を形成していなければ×とした。
【0078】
(5)導電性測定
(4)に記載の方法により得られた導電性フィルムの導電性は、表面抵抗により測定した。表面抵抗の測定は、常態(23℃、相対湿度65%)において24時間放置後、その雰囲気下で、JIS−K−7194に準拠した形で、ロレスターEP(三菱化学株式会社製、型番:MCP−T360)を用いて実施した。なお、本測定器は1×10 Ω以下が測定可能である。表面抵抗が300Ω以下であれば導電性は十分である。
【0079】
(6)全光線透過率
全光線透過率は、常態(23℃、相対湿度65%)において、(4)に記載の方法により得られた導電性フィルムを2時間放置した後、その雰囲気下で、JIS−K−7136に準拠した形で、村上色彩科学株式会社製ヘーズメーター「HM−150」を用いて測定した。4回測定した平均値を該導電性フィルムの全光線透過率とした。全光線透過率が60%以上であれば透明性は十分である。なお、導電層を積層した面側より光が入るように導電性フィルムを設置して測定した。
【0080】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加した後、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A)の極限粘度は0.63であった。
【0081】
<ポリエステル(B)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加後、平均粒子径1.6μmのエチレングリコールに分散させたシリカ粒子を0.2重量部、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、極限粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(B)を得た。得られたポリエステル(B)は、極限粘度0.65であった。
【0082】
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・金属酸化物粒子:平均粒径0.04μmの酸化亜鉛ゾル(IA)
・金属酸化物粒子:平均粒径0.02μmのジルコニアゾル(IB)
・金属酸化物粒子:平均粒径0.02μmのチタニアゾル(IC)
・ポリエステル樹脂:(IIA)下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4−ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
・ポリエステル樹脂:(IIB)下記方法で得られたポリエステル樹脂の水分散体
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)2,6−ナフタレンジカルボン酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=92/8//80/20(mol%)
・オキサゾリン化合物:(III)
オキサゾリン基含有アクリルポリマー エポクロスWS−500(株式会社日本触媒製)
・エポキシ化合物:(IV)ポリグリセロールポリグリシジルエーテルである、デナコールEX−521(ナガセケムテックス株式会社製)
・非金属酸化物粒子:(V)平均粒径0.07μmのシリカゾル
【0083】
実施例1:
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:18:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、下記表1に示す塗布液1を塗布し、テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、塗布量(乾燥後)が下記表2に示す塗布層を有する厚さ125μmのポリエステルフィルムを得た。
【0084】
得られたポリエステルフィルムの塗布面に導電層形成溶液を#24メイヤーバーを用いて塗布した。続いて、150℃で2分間乾燥して、導電層をランダムな網目状に積層したポリエステルフィルムを得た。次に25℃のアセトンに30秒浸漬した後、室温で30秒間乾燥させた。続いて、1M(mol/L)の塩酸に1分間浸漬した後、フィルムを水洗いした。その後、150℃で1分間乾燥し、水分を飛ばして導電性フィルムを得た。表面抵抗は8Ωであった。得られたポリエステルフィルムに関して表面観察および全光線透過率測定をしたところ、いずれの評価でも良好であった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
【0085】
実施例2〜5:
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表2に示すとおりであり、導電層がランダムな網目状に積層し、良好な表面抵抗であった。
【0086】
比較例1:
実施例1において、塗布層を設けないこと以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すとおりであり、導電層がランダムな網目形状を形成せずに積層し、透明性が劣るフィルムとなった。
【0087】
比較例2〜3:
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すとおりであり、導電層がランダムな網目形状を形成せずに積層し、透明性が劣るフィルムとなった。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、例えば、タッチパネルの透明導電電極、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、電磁波シールドフィルムなどの透明性と導電性を必要とする用途に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物を含有する塗布液を塗布して形成された塗布層をポリエステルフィルムの少なくとも片面に有し、当該塗布層上に網目状の金属導電層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2013−82125(P2013−82125A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223508(P2011−223508)
【出願日】平成23年10月8日(2011.10.8)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】