説明

積層体、それを用いた定着部材、定着装置及び画像形成装置

【課題】基体上に順次設ける耐熱性ゴム層とフッ素系樹脂層との間にフッ素樹脂を主成分とする接着樹脂層(プライマー層)を介在させる構成において、更に、耐熱性、非粘着性及び柔軟性を有する積層体を提供すること、また、該積層体を用いた定着部材、該定着部材を用いた定着装置及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】基体上1に、耐熱性ゴムからなる第1の層2、フッ素樹脂を主成分とする接着樹脂からなる第2の層3、及びフッ素系樹脂からなる第3の層4が順次設けられた積層体であって、前記第2の層は接着樹脂中にピリジニウム系イオン液体、イミダゾリウム系イオン液体、脂環式イオン液体、及び脂肪族アミン系イオン液体のうちの少なくとも1種を配合して得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、非粘着性及び柔軟性を有する積層体に関し、特に複写機、プリンタ、ファクシミリ等、画像形成装置に用いるフッ素系樹脂層を表面に有する積層体、並びにその積層体を用いた定着部材、その定着部材を用いた定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、上記した画像形成装置に対する省エネルギー化や高速化の市場要求が非常に強くなってきている。これらの要求性能を達成するためには、画像形成装置に用いる定着装置の熱効率の改善が重要である。
【0003】
かかる画像形成装置では、電子写真記録、静電記録、磁気記録等の画像形成プロセスにより、画像転写方式もしくは直接方式で、記録用シート、印刷紙、感光紙あるいは静電記録紙などの記録材上に未定着トナー画像を形成し、その後、定着装置で未定着トナー画像が定着されている。この場合、未定着トナー画像を定着させるための定着装置としては、熱ローラ方式、フィルム加熱方式、ベルト定着方式等の接触加熱方式の定着装置が広く採用されている。
【0004】
また、これら画像形成装置に用いられる定着部材(ローラ形状やベルト形状)には、高熱効率、オイルレスでのトナー離型性、柔軟性、弾力性などが必要とされ、これらの要求を満たすため、積層体により構成した部材が使用されている。
【0005】
その積層体の構成として、例えば、基体上に、第1の層(耐熱合成ゴムからなる弾性層)と、第2の層(第1の層と第3の層を接合するフッ素樹脂を主成分とする接着層:プライマー層)、第3の層(フッ素樹脂からなる離型層)を設けたものが知られている。
【0006】
上記の第1の層(弾性層)を構成する材料としては、耐熱性ゴム、中でも耐熱性合成ゴムであるシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴムなどが使用されている。また第3の層(離型層)を構成する材料としては四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、及び、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂(FEP)などが使用されている。
【0007】
この第3の層(離型層)を設ける場合、第1の層(弾性層)の表面にプライマー層を形成し、更にその上に上述したようなフッ素樹脂の分散塗料や粉体塗料、もしくはフッ素樹脂チューブを積層し、これらフッ素樹脂の融点以上の温度で加熱して層形成することが知られている。
【0008】
しかし、上記第3の層のフッ素樹脂の融点は非常に高温であり、第1の層の弾性層に用いる耐熱性合成ゴムにとって過酷な温度である。このため、高温加熱して定着部材を作製すると、耐熱合成ゴムが熱劣化し、定着部材の性能を左右する第3の層の離型層の剥がれや、第1の層の弾性層にクラックや界面硬度変化などの問題を引き起こすことがあった。なお、弾性層にクラックや界面硬度の変化を引き起こすと定着部材の表面性が損なわれ、画像汚れ、画像ムラ、光沢ムラ、画像定着不良等の不具合の発生を生じたりする。
【0009】
そこで、上記問題を解決するための対策として、第1の層(弾性層)の耐熱合成ゴムに酸化スズ及び酸化チタンから選ばれる少なくとも一つを含有(耐熱合成ゴムにSnO、TiOを添加)させる手法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。また、他の手法として、第3の層(離型層)を形成するために用いるフッ素樹脂にリン酸基を含有させて、焼成温度を耐熱合成ゴムが耐えうる温度まで下げる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
しかしながら、上記特許文献1のように、無機充填剤の添加による耐熱性向上の手法では、耐熱合成ゴムの粘度上昇を引き起こし、定着部材を塗工加工により製作する際の加工性が必ずしも充分であるとは言えなかった。また、離型層としてフッ素樹脂を弾性層上に直接塗工し焼成するため、耐熱合成ゴムの熱劣化の抑制が充分とは言い難く、接着強度を低下させることがあった。また、上記特許文献2の、離型層を形成するためのフッ素樹脂にリン酸基を含有させて焼成温度を下げる手法においては、焼成温度は300℃という高温処理であるため、耐熱合成ゴムの劣化を必ずしも充分に抑制できるものとは言い難かった。
【0011】
さらに、そのほかの手法として、離型層形成時の熱による弾性層の劣化を低減するために、上記弾性層と離型層の間に、フッ素樹脂を主成分とし、炭素クラスターを含む中間層を設けるもの(特許文献3参照)、また、基体上に、耐熱性ゴムからなる第1の層、フッ素樹脂を主成分とする接着樹脂と有機磁性体を含有してなる第2の層、フッ素系樹脂からなる第3の層を設けた積層体(特許文献4参照)が提案されている。
【0012】
【特許文献1】特開2004−163715号公報
【特許文献2】特開2005−212318号公報
【特許文献3】特開2007−179009号公報
【特許文献4】特開2007−148192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、基体上に順次設ける耐熱性ゴム層とフッ素系樹脂層との間にフッ素樹脂を主成分とする接着樹脂層(プライマー層)を介在させる構成において、更に、耐熱性、非粘着性及び柔軟性を有する積層体を提供すること、また、該積層体を用いた定着部材、該定着部材を用いた定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、基体上に、耐熱性ゴムからなる第1の層、フッ素樹脂を主成分とする接着樹脂からなる第2の層、及びフッ素系樹脂からなる第3の層が順次設けられた積層体であって、前記第2の層は前記接着樹脂中に、イオン液体を配合して得られることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の積層体において、前記第2の層は前記接着樹脂中に、前記イオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子を配合して得られることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の積層体において、前記第2の層は前記接着樹脂中に、前記イオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子と少なくとも板状構造を有する無機材料とを配合して得られることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の積層体において、前記イオン液体がピリジニウム系イオン液体、イミダゾリウム系イオン液体、脂環式イオン液体、及び脂肪族アミン系イオン液体のうちの少なくとも1種であることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明は、像担持体上から転写された記録材上のトナー像を定着させるためのローラ形状もしくはベルト形状を有する定着部材であって、請求項1ないし4のいずれかに記載の積層体からなることを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明は、像担持体上から転写された記録材上のトナー像を定着させるための定着部材を備えた定着装置であって、前記定着部材が、請求項5に記載の定着部材であることを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の発明は、少なくとも像担持体、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段、定着手段、及びクリーニング手段を有する画像形成装置であって、前記定着手段が、請求項6に記載の定着装置により構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、耐熱性ゴムからなる第1の層の上に、第2の層の作用により表面性が良好で、耐熱性、非粘着性及び柔軟性を有するフッ素系樹脂からなる第3の層(離型層)を備えた積層体を提供することができる。また、かかる積層体を有する定着部材、定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、上述のように、基体上に、耐熱性ゴムからなる第1の層、フッ素樹脂を主成分とする接着樹脂からなる第2の層、及びフッ素系樹脂からなる第3の層が順次設けられた積層体であって、前記第2の層は接着樹脂中に、ピリジニウム系イオン液体、イミダゾリウム系イオン液体、脂環式イオン液体、及び脂肪族アミン系イオン液体のうちの少なくとも1種が配合されて形成されることによって、耐熱性ゴムからなる第1の層の上に、第2の層の作用により表面性が良好で、耐熱性、非粘着性及び柔軟性を有するフッ素系樹脂からなる第3の層(離型層)を備えた積層体を得たものである。
【0023】
図1は本発明における積層体の構成例を示す概略断面図である。図1の構成では、基体1上に、耐熱性ゴムからなる第1の層(弾性層)2、フッ素樹脂を主成分とする接着樹脂とイオン液体を含有する第2の層(プライマー層)3、フッ素系樹脂からなる第3の層(離型層)4が順次設けられている。
【0024】
すなわち、第2の層3は加熱乾燥前では層中にイオン液体を含有しており、これによって、積層体作製時の塗工性を良好に維持しつつ、第3の層形成時の高温度による加熱加工時における第1の層2を形成する耐熱性ゴム接着界面の熱硬化劣化を抑制し、接着性を良好とすることが可能となり、加えて経時熱劣化を抑制し、耐熱性、非粘着性及び柔軟性を有するフッ素樹脂層を表面に備えた積層体が得られる。
【0025】
本発明における積層体は、シート形状、ローラ形状、あるいはベルト形状であっても構わない。そして、後述のように画像形成装置における定着装置の定着部材のほか、加圧部材や搬送部材(搬送ベルトやローラ)として有用であるばかりではなく、画像形成装置以外の用途、例えば、汚れ防止、離型性、耐熱性などが必要とされる部材としても使用可能である。
【0026】
ここで、イオン液体とは、イオンのみ(アニオン、カチオン)から構成される「塩」であり、特に液体化合物を指す(イオン液体、東レリサーチ編、東レリサーチ(2007)、イオン性液体―開発の最前線と未来―、大野弘幸編、シーエムシー出版(2003)参照)。
本発明においては、上記イオン液体のうちのピリジニウム系イオン液体、イミダゾリウム系イオン液体、脂環式イオン液体、脂肪族アミン系イオン液体の使用が好ましい。具体的な物質名は後記する。
【0027】
本発明者らは、これらイオン液体のうちの少なくとも1種を上記第2の層のプライマー中に配合しておくと高温度による加熱加工時において、弾性層接着界面の熱硬化劣化の抑制、接着強度の向上、更には経時熱劣化の抑制に効果があることを知った。
上記イオン液体は、フッ素樹脂およびプライマーの加熱加工温度以上の高耐熱性を持つ材料である。また耐熱ゴム、特にイオン性結合であるシロキサン結合を持つシリコーンゴムやフルオロシリコーンゴム等の接着界面層の熱硬化劣化に対して有効である。これは高温度による加熱加工時のこれらゴムの酸化硬化劣化(側鎖の酸化架橋などで硬化する)を該イオン液体のイオン性によるシロキサン結合の主鎖を断裂することによってゴムの硬化劣化を抑制しており、このような架橋反応バランスにより硬度制御をしていると推測される。
【0028】
本発明で使用される具体的なイオン液体を例示すると、まず、ピリジニウム系イオン液体としては、1―エチルピリジニウムブロマイド、1―エチルピリジニウムクロライド、1―ブチルピリジニウムブロマイド、1―ブチルピリジニウムクロライド、1―ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1―ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1―ブチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1―ヘキサピリジニウムブロマイド、1―ヘキサピリジニウムクロライド、1―ヘキサピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1―ヘキサピリジニウムテトラフロオロボレート、1―ヘキサピリジニウムトリフルオロメタンスルホネートなどが挙げられる。
【0029】
イミダゾリウム系イオン液体としては、1−エチルー3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−エチルー3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチルー3−メチルイミダゾリウム(L)−ラクテート、1−エチルー3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−エチルー3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチルー3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチルー3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチルー3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル1−ヘキシルー3−メチルイミダゾリウムー3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチルー3−メチルイミダゾリウム(L)−ラクテート、1−ヘキシルー3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−ヘキシルー3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ヘキシルー3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ヘキシルー3−メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−ヘキシルー3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−オクチルー3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−オクチルー3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−デシルー3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ドデシルー3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−テトラデシルー3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ヘキサデシルー3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−オクタデシルー3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチルー2,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1−エチルー2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチルー2、3−ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1−ブチルー2、3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチルー2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−ブチルー2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ヘキシルー2,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1−ヘキシルー2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−ヘキシルー2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−ヘキシルー2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−アリルー3−エチルイミダゾリウムブロマイド、1−アリルー3−エチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−アリルー3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−アリルー3−ブチルイミダゾリウムブロマイド、1−アリルー3−ブチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−アリルー3−ブチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,3−ジアリルイミダゾリウムブロマイド、1,3−ジアリルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1,3−ジアリルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、などが挙げられる。
【0030】
脂環式アミン系イオン液体としては、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムブロマイド、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムクロライド、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムテトラフルオロボレート、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムブロマイド、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムクロライド、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムテトラフルオロボレート、N−メチルーN−プロピルピロリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムブロマイド、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムクロライド、N−メチルーN−ブチルピロリジニウムテトラフルオロボレート、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、などが挙げられる。
【0031】
脂肪族アミン系イオン液体としては、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムブロマイド、N,N,N−トリメチルーN−プロピルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリメチルーN−プロピルアンモニウムテトラフルオロボレート、N,N,N−トリメチルーN−プロピルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、N,N,N−トリメチルーN−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、などが挙げられる。これらイオン液体は、関東化学株式会社などから入手することが可能である。
【0032】
他に1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−プロピルー2,3,5−トリメチルピラゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチルー2,3,5−トリメチルピラゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、なども挙げることができる。
【0033】
特に1―ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1―ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1―ヘキサピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1―ヘキサピリジニウムテトラフロオロボレート、1―ヘキサピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,3−ジアリルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムテトラフルオロボレート、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムテトラフルオロボレート、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムテトラフルオロボレート、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、等のイオン液体は疎水性が高く、プライマー分散液に添加して好適に使用することが出来る。
【0034】
また、本発明に使用されるイオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子としては、例えばH.Sawada etal,Colloid Poly.Sci.,284,551(2006)等に記載されている合成方法に準拠して作製されたナノ粒子であり、平均粒径10〜100nm程度の粒子径のものが好適に用いられる。これらは、フッ素系ナノ粒子中にイオン液体を取り込んだナノ粒子材料である。このナノ粒子はナノ粒子にも関わらず分散安定性が高く、第2の層プライマー層に均一に分散することが可能となり、更にイオン液体の保持能が高く、フッ素樹脂との馴染みも良く、接着界面層に均一に分散でき、ムラなく耐熱性の向上が図れ、より接着性向上に有効である。
【0035】
また、これらフッ素系高分子ナノ粒子に保持されるイオン液体としては、前記のピリジニウム系イオン液体、イミダゾリウム系イオン液体、脂環式アミン系イオン液体、脂肪族アミン系イオン液体などが好ましく、また2種以上混合して使用しても構わない。イオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子は1種または2種以上のナノ粒子を組み合わせて用いることもできる。
【0036】
上記イオン液体を用いることによって、加熱加工工程における耐熱ゴム材料の熱硬化劣化を抑制し、層間剥がれを抑制する効果が充分に発揮される。これによって、弾性層にクラックや表層硬度変化を引き起こすことなく表面性の良好な、積層体層間の接着力の優れた積層体が提供される。
【0037】
また、本発明に使用される板状構造を有する無機材料は、一般に形状が板状のものである。ここで板状とは、相対する2面(卓面)が、特に発達した構造のものを言う。
【0038】
本発明において、板状構造を有する無機材料を用いることによって、層間にイオン液体やイオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子から出る加工後の余分なイオン液体を吸着・保持し、プライマーから染み出さないようにすることが出来る。余分なイオン液体があると経時でフッ素樹脂からなる第3の層表面に染み出したり、第1の層の耐熱性ゴムに影響を及ぼしたりして、外観や画像に影響が出る可能性があり、それらを抑制することが出来る。
【0039】
特に、余剰イオン液体を吸着・保持することによって、シリコーンゴムやフルオロシリコーンゴム等のシロキサン結合を持つ弾性層の場合、経時においてプライマー層中の余剰イオン液体によって、シロキサン結合が断裂することにより、弾性層の軟化が促進され、外観や画像品質低下を引き起すような経時の劣化を抑制するものと考えられる。
【0040】
本発明で使用される板状構造の無機材料としては、特にフィラーとして汎用のタルク、天然マイカ、合成マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、天然ハイドロタルサイト、合成タルサイト、水酸化マグネシウム、板状水酸化アルミニウム、板状酸化鉄、板状炭酸カルシウム、黒鉛、BN等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルサイトなどは難燃効果も付与でき、好ましい。
【0041】
本発明に使用される板状無機材料として他に、インターカレーション用無機材料も使用出来る。インターカレーション用無機材料は一般に層状構造を有する無機結晶で、層状構造を保持したままあるいは層状構造を崩して、層間域に外部から異質の分子、イオン、クラスターを容易に挿入できるものを言う。
【0042】
本発明で使用されるインターカレーション用無機材料としては、
グラファイト、金属カルコゲン化合物(MX(ただし、MはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo又はWであり、XはS又はSeである。)、MPX(ただし、MはMg,V,Mn,Fe,Co,Ni,Zn,Cd又はInであり、XはS又はSeである。)、
金属酸化物・金属オキシハロゲン化物(MoO,Mo1852,V,LiNbO,LiV,MOXO(ただし、MはTi,V,Cr,Feであり、XはP又はAsである。),MOX(ただし、MはTi,V,Cr又はFeであり、XはCl又はBrである。)、LnOCl(LnはYb,Er又はTmである。)、ニオブ酸塩(KCaNan−3Nb3n+1(ただし、3≦n<7である。)、チタン酸塩(KTi又はKTiNbO))、
金属リン酸塩(M(HPO(ただし、MはTi,Zr,Ce又はSnである。)、Zr(ROPO(ただし、Rは水素、フェニル基又はメチル基である。))、
粘土鉱物・ケイ酸塩(スメクタイト族:モンモリロナイト、サポナイトなど カオリン族;カオリナイトなど マガディアイト カネマイト マイカ:膨潤性合成フッ素マイカなど。)、
複水酸化物(M2+1−x3+(OH)(An−x/n・zHO(ただし、M2+はMg又はZn、M3+はAl又はFe、An−はn価の陰イオン、0<x<1、zは層間水で、任意の数になる。)
等々が挙げられるが、これらに限定されるものではない。」
【0043】
板状構造の無機材料の平均粒径は0.01〜100μmが好ましく、更に好適には0.1〜1μmである。0.01μm未満ではイオン性成分の吸着・保持効果が抑制され、100μmを超えると粗さからくる最表層への粗さに影響を与え、画像品質に問題が出る。
【0044】
本発明においては、上述した板状構造の無機材料と共に、例えば、シリカ、酸化錫、酸化錫、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、カーボンブラック、酸化セリウム及び水酸化セリウム等の板状構造以外の充填剤を添加しても良い。
【0045】
次に、上述の積層体を用いる本発明の定着部材の構成について説明する。
図2(a)は、ローラ形状の定着部材の構成例を示し、(b)はベルト形状の定着部材の構成例を示す概略断面図である。
【0046】
図2(a)において、(A)は定着部材の一例であるローラである。ローラ(A)は、基体(A1)上に、耐熱性合成ゴム等の耐熱性弾性体(ゴム)(以降、「耐熱性合成ゴム」と称することがある。)で構成される第1の層(弾性層)(A2)、第2の層であるプライマー層(A3)、及び第3の層であるフッ素系樹脂で構成される離型層(A4)とを順次備えている。そして、前記プライマー層(A3)は、イオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子、またはイオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子及び板状構造を有する無機材料が配合されて得られるものである。
【0047】
図2(b)において、(B)は定着部材である無端ベルトである。定着部材の無端ベルト(B)は、基体(B1)上に、耐熱性合成ゴムで構成される第1の層の弾性層(B2)、第2の層のプライマー層(B3)、及び第3の層のフッ素系樹脂で構成される離型層(B4)を順次備えている。そして、前記プライマー層(B3)は、イオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子、またはイオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子及び板状構造を有する無機充填剤が配合されて得られるものである。なお、基体(A1)と弾性層(A2)との間、または基体(B1)と弾性層(B2)との間に接着強度を高めるためにシリコーン系プライマーを使用してもよい。
【0048】
図2(a)及び図2(b)に示す定着部材は、それぞれ耐熱性の基体(A1)または(B1)の表面に前記した耐熱性合成ゴムをコーティングし乾燥して弾性層(A2)または(B2)を設け、更にその上面にコーティングにより、プライマー層(A3)または(B3)を設け、その上にフッ素系樹脂をコーティングし焼成して離型層(A4)または(B4)を設けて作製することができる。
【0049】
また上記した弾性層(A2)または(B2)の作製方法としては、シリコーンプライマー等で基体表面を改質し、耐熱合成ゴム材料をスプレー塗装やブレードコート、ディッピング等によって塗布し、その後、ゴムを加硫して弾性層とすることができる。
【0050】
また、プライマー層(A3)または(B3)の作製方法としては、フッ素樹脂を主成分とするプライマー分散液(水系フッ素樹脂ディスパージョンなど)に、イオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子、またはこれに更に板状構造の無機材料を混合させたプライマー液を弾性層表面上に、スプレー塗布などにより塗布後、乾燥してプライマー層を形成することができる。
【0051】
更に離型層(A4)または(B4)の作製方法としては、前記弾性層上のプライマー層上にフッ素系樹脂分散液(水系フッ素樹脂ディスパージョンなど)を、前記した弾性層と同様に、スプレー塗装、ブレードコート、またはディピングなどによる塗装や、フッ素樹脂系粉体塗料を静電塗装、流動浸漬、または回転ライニング法などによってフッ素系樹脂塗布膜を形成後、形成されたフッ素系樹脂を焼成して離型層とすることができる。
【0052】
前述のように、プライマー層(A3)または(B3)が、イオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子またはイオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子及び板状構造を有する無機材料を用いると、弾性層と離型層の界面及び接着層の耐熱性を向上させ、フッ素樹脂焼成時の熱による弾性層を構成する耐熱性合成ゴムの硬化劣化及びそれに起因する接着強度の低下をより抑制することができる。また特に使用時である定着装置稼動の高温経時において、板状構造を有する無機材料を併用して用いると弾性層接着界面劣化と接着層劣化を抑制することができ、離型層剥がれや弾性層の表面硬度変化やクラックが抑制される。
【0053】
上記本発明の実施形態に係る定着部材は、オイルレスでのトナー離型性があり、柔軟性、弾力性等を有し、定着性能及び耐久性が優れ、画像汚れ、画像ムラ、光沢ムラ、画像定着不良等が発生せず、高品質定着を実現することができる。
【0054】
以上述べたような本発明の実施形態に係る定着部材は、画像形成装置の定着装置に配備されることが好ましく、このような画像形成装置における画像形成プロセスにおいて転写体上のトナー像を定着させる役割を担うので、耐熱劣化に強く、経時変化にも強いため、画像形成装置は耐環境特性により優れ、信頼性に優れたものとなる。
【0055】
本発明の実施形態に係る積層体を用いてローラ形状もしくはベルト形状の定着部材とすると、オイルレスでのトナー離型性、柔軟性、弾力性などの要求を達成することができ、画像汚れ、画像ムラ、光沢ムラ、画像定着不良等の発生のない高品質の画像が定着できる。すなわち、定着性能及び耐久性に優れる。従って、定着手段として上記定着装置が配備された画像形成装置は、常に安定した高品質の画像が形成され、長期に亘ってもこのような性能が低下することが少ない。
【0056】
以下、図を参照して画像形成装置及び定着装置について説明する。図3は、本発明における電子写真方式の画像形成装置(例えば、複写機やレーザプリンタ等を含む)を説明するための概略構成図である。
【0057】
図3において、画像形成装置(100)は、静電潜像が形成される感光体ドラム(101)、感光体ドラム(101)に接触して帯電処理を行なう帯電ローラ(102)、レーザビーム等の露光手段(103)、感光体ドラム(101)上に形成された静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ(104)、帯電ローラ(102)にDC電圧を印加するためのパワーパック(105)、感光体ドラム(101)上のトナー像を記録紙(107)に転写処理する転写ローラ(106)、転写処理後の感光体ドラム(101)をクリーニングするためのクリーニング装置(108)、感光体ドラム(101)の表面電位を測定する表面電位計(109)、並びに定着ローラ(111)及び加圧ローラ(112)からなる定着装置(110)などを含んで構成されている。
【0058】
この電子写真方式を用いる画像形成装置(100)では、回転する感光体ドラム(101)の感光体層を帯電ローラ(102)を用いて一様に帯電させた後にレーザビーム等の露光手段(103)で露光して静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーによって現像してトナー像とし、このトナー像を記録紙(107)上に転写する。そして、この記録紙(107)を、定着ローラ(111)及び加圧ローラ(112)からなる定着装置(110)に通過させ、記録紙(107)上に付着しているトナーを定着ローラ(111)の熱により軟化させつつ加圧して記録紙(107)上にトナー像が定着するように構成されている。
【0059】
この場合の定着ローラ(111)として、本発明の積層体からなる定着部材が好適に用いられる。図3の構成では定着部材は、いわゆるローラ形状であるが、定着部材がベルト形状であってもよいことは、言を待たない。このようなベルト方式の定着装置について以下に説明する。
【0060】
図4はベルト方式の定着装置を説明するための概略構成図である。
図4に示した定着装置(117)は、加熱ローラ(115)と、加熱ローラ(115)に平行配置される定着ローラ(114)と、前記加熱ローラ(115)と定着ローラ(114)とによって掛け回される、回転可能に設けた定着ベルト(113)と、前記ベルト(113)を介して定着ローラ(114)に圧接すると共に、前記ベルト(113)との間で定着ニップ部を形成する加圧ローラ(116)から構成されている。この場合のベルト(113)として、本発明の積層体からなる定着部材が好適に用いられる。
【0061】
図4に示すようなベルト方式の定着装置(117)は、加熱ローラ(115)で加熱された定着ベルト(113)と加圧ローラ(116)との間に記録紙(107)を通過させることにより、記録紙(107)の上に付着しているトナーを定着ベルト(113)の熱により軟化させつつ加圧ローラ(116)で加圧して記録紙上に定着させるようになっている。
【0062】
上記本発明の積層体により構成した定着部材について詳しく説明する。
図1に示したように、積層体からなる定着部材の構成は、基体(1)と、この基体の上に第1の層として耐熱性ゴム(耐熱合成ゴム)からなる弾性層(2)と、第2の層として、第1の層と第3の層を接合するフッ素樹脂を主成分とする接着樹脂とイオン性液体を用いて得られるプライマー層(3)と、この第2の層の上に第3の層としてフッ素樹脂からなる離型層(4)を設けた構成になっている。本明細書中、「第1の層」を「弾性層」、「第2の層」を「プライマー層」、及び「第3の層」を「離型層」と表現することがある。
【0063】
本発明の定着部材を構成するプライマー層としては、フッ素系樹脂を主成分とするフッ素樹脂系プライマーを用いていれば特に限定されない。ここで、フッ素樹脂系プライマーは、官能基を有するフッ素樹脂からなり、弾性層を形成する材料の種類、その表面の性質、及びフッ素樹脂系プライマーを介して形成する離型層(フッ素樹脂、いわゆるトップコートの種類)などにより適宜選択される。
【0064】
フッ素樹脂系プライマーは、その上に被覆する離型層のフッ素樹脂の構造と類似の構造を有し、この構造に官能基を含んでいる構造体を用いているものが好ましい。このように類似構造のフッ素樹脂を1種または2種以上組み合わせることによって、フッ素樹脂系プライマーに用いられるフッ素樹脂とその上に被覆されるフッ素樹脂との相性が分子論的に近いものであるので、いわゆるなじみやすい性質を有しているため良好なものとなる。
これにより、フッ素樹脂系プライマー層と弾性層の表面との接着性だけではなく、フッ素樹脂系プライマー層と離型層との層間接着強度も良好なものとなる。
【0065】
また、このようなフッ素樹脂系プライマーを用いて得られた積層体を用いれば、高温での使用においても、例えば、他の樹脂成分からなるプライマーを用いた場合に問題となるような、重合体の熱収縮率の違いなどによる層間剥離やクラック、ピンホールなどを起こし難い。
また、塗膜の最表面に官能基を含まないフッ素樹脂を用いて離型層を形成し、優れた耐熱性、耐薬品性、非粘着性、及び低摩擦性をより効果的に発揮することができる。
なお、フッ素樹脂系プライマーで得られるプライマー層の層厚は0.01〜5μmであることが好ましい。この範囲の厚さにしないと、接着強度が低下したり、プライマー自身にクラックや凝集破壊が起きるおそれがあり、所望の性能が得られない場合がある。
【0066】
また、プライマー層におけるイオン液体の添加量は、プライマー層の全量に対し、通常0.001〜1重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%の割合で添加される。0.001重量%未満では耐熱硬化劣化の抑制効果を充分に発揮できず、接着剥がれが起き、好ましくない。また、1重量%を超えると弾性層接着界面の軟化劣化が促進され、ゴム強度低下及びゴムの凝集破壊が生じやすくなり、接着強度低下があり、好ましくない。また、第3の層のフッ素樹脂の成膜性や塗膜強度の低下等を生じ、耐久性を低下させる可能性もある。このようにイオン性液体はプライマー層に分散され、弾性層接着界面の熱硬化劣化抑制、接着強度低下抑制等の効果を発揮することとなる。
【0067】
また、イオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子の添加量は、プライマー層の全量に対し、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜1重量%の割合で添加される。0.01重量%未満では所望の耐熱性が得られず、耐熱硬化劣化の抑制効果を充分に発揮できず、接着強度低下が起きる場合がある。また、10重量%を超えると、プライマー層の成膜性が低下し、得られるプライマー層にクラックや凝集破壊が生じる場合もある。また更に弾性層接着界面の軟化劣化が促進されたり、ゴム強度低下及びゴムの凝集破壊が生じやすくなり、接着強度低下する場合もあり、好ましくない。また、第3の層のフッ素樹脂の成膜性や塗膜強度の低下等を生じ、耐久性を低下させる可能性もある。このようにイオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子はプライマー層に均一に分散され、弾性層接着界面の熱硬化劣化抑制、接着強度低下抑制等の効果を発揮することとなる。
【0068】
また、イオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子と共に使用される無機充填剤の添加量は、プライマー層材料に対して0.1〜30重量%の範囲が好ましく、更に好ましくは、1〜10重量%である。この無機充填剤の添加量は、プライマー層材料とのマッチング、塗膜条件等などに応じて変化させる。該添加量が0.1重量%未満では余剰イオン成分の吸着効果が低く、30重量%を超えるとプライマー層の成膜性や接着強度の低下等を生じることがある。
【0069】
図2に示す弾性層(A2)または(B2)を構成する耐熱性ゴムとしては、好ましくは、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム等の耐熱性合成ゴムであるが、耐熱性ゴム(いわゆる耐熱性弾性体)であれば特にこれらに限定されるものではない。また特に、弾性層(A2)または(B2)を構成する耐熱性合成ゴムがシリコーンゴム、フロロシリコーンゴムなどの耐熱性合成ゴムであると、定着時の温度(約200℃)において耐熱性を有しているので、定着部材の表面の柔軟性が表層にそのまま反映され、安定して良好な定着画像品質が得られる。
【0070】
また、離型層(A4)または(B4)を構成するフッ素系樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン−ポリエチレンフルオロビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などから選ばれるフッ素系樹脂、またはそれらのフッ素樹脂の混合物、またはそれらのフッ素樹脂を耐熱性の樹脂に分散させたものが挙げられるが、フッ素系樹脂であればよく、特にこれらに限定されるものではない。離型層(A4)または(B4)がフッ素系樹脂で構成されることでトナーのオイルレス離型性が発現することになる。なお、本発明における離型層(A4)または(B4)の膜厚が厚いと光沢ムラが発生し易くなるので層構成に応じて適宜厚さを設定することが好ましい。
【0071】
図2の加熱定着部材(A)における基体(A1)は、好ましくはアルミニウム、ステンレススチール、真鍮等の金属材料で構成されるローラ状の基体である。また、加熱定着部材(B)における基体(B1)は、ステンレススチール、ニッケル等の金属材料で構成される無端ベルト、ポリイミド、ポリアミドイミド、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂材料で構成される無端ベルト、あるいは、これらの積層無端ベルトである。なお、定着部材がローラ形状、ベルト形状(無端ベルト)であるものについて記載したが、目的、用途に応じて上記材料から構成される(積層構成も含む)シート形状であるものを用いることもできる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されて解釈されるものではない。
まず、実施例と比較例において用いるフッ素系樹脂含有プライマー(接着樹脂)について以下に例示する。
【0073】
〔調製例1〕
プライマー分散液(水性フッ素樹脂ディスパージョン)
攪拌機、バルブ、圧力ゲージ、温度計を備えた3リットルガラスライニング製オートクレーブに純水1500ml、パーフルオロオクタン酸アンモニウム9.0gを入れ、窒素ガスで充分置換した後、真空にし、エタンガス20mlを仕込んだ。
【0074】
次いで、ヒドロキシル基を有する含フッ素エチレン性単量体として、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン−1−オール)3.8g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)18gを、窒素ガスを用いて圧入し、系内の温度を70℃に保った。攪拌を行ないながらテトラフルオロエチレンガスを内圧が8.5kgf/cmGとなるように圧入した。次いで、過硫酸アンモニウム0.15gを水5.0gに溶かした溶液を、窒素を用いて圧入して反応を開始した。
【0075】
重合反応の進行に伴って圧力が低下するので、7.5kgf/cmGまで低下した時点で、テトラフルオロエチレンガス8.5kgf/cmGまで再加圧し、降圧、昇圧を繰り返した。テトラフルオロエチレンの供給を続けながら、重合開始からテトラフルオロエチレンガスが約40g消費されるごとに、前記ヒドロキシル基を有する含フッ素エチレン性単量体1.9gを計3回(計5.7g)圧入して重合を継続し、重合開始よりテトラフルオロエチレンが約160g消費された時点で供給を止めてオートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して、青みがかった半透明の水性フッ素樹脂ディスパージョン1702gを得た。得られた水性フッ素樹脂ディスパージョン中のフッ素樹脂の固形分濃度は10.9重量%であり、動的光散乱法で測定した粒子径は70.7nmであった。
【0076】
更に、この水性フッ素樹脂ディスパージョンを界面活性剤により濃縮して、固形分濃度を15重量%とした。この水性フッ素樹脂ディスパージョン100重量部(固形分濃度15重量%)と、界面活性剤を濃縮時に使用した量と併せて1.0重量部、増粘剤:メチルセルロース水溶液(メチルセルロース4.8重量%)4.0重量部を均一混合し、SUS網(300メッシュ)で濾過して、プライマー分散液とした。
【0077】
〔調製例2〕
イオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子の調製
フルオロアルキル両末端封止N,N−ジメチルアクリルアミドオリゴマー(H.Sawada etal.,Eur Polym.J.36;231(2000)に従って合成した)<Rf−(CH2CHC(=O)NMe2)n−Rf、ここで、Rfは CF(CF3)OC3F7、Meはメチル基、n=36〜45である。>5gを溶解したメタノール溶液200mlとテトラエトキシシラン(TEOS)4.7g、シリカナノ粒子メタノール溶液(30wt%)33.3g(平均粒径:11nm/メタノール シリカソル(TR);日産化学社製)、25%アンモニア溶液5ml、イオン液体として1−ブチルー3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート 3ml(関東化学社製)を2時間室温にて混合攪拌した。溶媒を留去後、得られた粗生成物にメタノール250mlを添加し、室温で攪拌後、30分遠心分離し、減圧乾燥し、イオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子(平均粒径:42nm)13.0gを得た。
【0078】
〔調製例3〕
イオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子の調製
イオン液体として、N−メチルーN−ブチルピロリジニウムテトラフルオロボレート5ml(日本カーリット社製)を使用し、調製例2と同様に、イオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子(平均粒径:31nm)12.8gを得た。
【0079】
<実施例1>
以下の工程を順次経て、実施例1の積層体を作製した。
〈a−1〉工程:40μm厚のシート状のステンレススチール(SUS)製基体上にプライマー(東レダウコーニングシリコーン社製、DY39−051)を塗布し乾燥してシリコーンプライマー層を形成した。
〈b−1〉工程:形成したシリコーンプライマー層の上に耐熱性シリコーン樹脂(東レダウコーニングシリコーン社製、DY35−4039)の溶液を塗布して300μmの塗布層を形成し、シリコーンゴムを120℃×15分間の1次加硫後、200℃×4時間の2次加硫を経て弾性層を形成した。
〈c−1〉工程:形成した弾性層の上に、調整例1で調整したプライマー分散液(水性フッ素樹脂ディスパージョン)に調製例2で調製したイオン性液体:1−ブチルー3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(関東化学社製)0.015重量部を混合させたプライマー液をスプレー塗装して厚さ2μmのプライマー層を形成した。
〈d−1〉工程:形成したプライマー層の上に、PFA(三井・デュポンフロロケミカル社製、PFA340−J)を20μmの膜厚になるように粉体塗布してフッ素樹脂塗布層を形成し、この塗布層を340℃で30分間焼成して離型層を形成した。
【0080】
<実施例2>
実施例1の〈c−1〉工程において用いたイオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子(調製例2)0.15重量部を混合させたプライマー液をスプレー塗装して厚さ2μmのプライマー層を形成した。
【0081】
<実施例3>
実施例1の〈c−1〉工程において用いた、イオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子(調製例2)0.2重量部と板状構造無機材料:合成ハイドロタルサイト(DHT−4A(協和化学工業製)1重量部を混合させたプライマー液をスプレー塗装して厚さ2μmのプライマー層を形成した。
【0082】
<比較例1>
実施例1の〈c−1〉工程において用いたイオン液体を含まず、調製例1で調製したプライマー分散液(水性フッ素樹脂ディスパージョン)のみのプライマーを用いた以外は、実施例1と同様の工程を順次経て比較例1の積層体を作製した。
【0083】
上記のようにして作製した実施例1〜実施例3、及び比較例1の積層体を用いて、次の条件で剥離試験を行ない接着性の評価を行なった。結果を下記表1に示す。
【0084】
<剥離試験法>
試験巾10mm、引張り速度約50mm/minで、90度剥離試験を行なった。剥離場所がフッ素樹脂層(離型層)とプライマー、あるいはゴム層とプライマーの間のものを×とし、ゴム層での破壊より強い接着強度が出たものを○とし、特に接着強度が0.5N/cm以上のものを◎として表1に示した。
【0085】
【表1】

【0086】
実施例1〜3の積層体における各層間の剥離強度は高く、ゴム層で破壊するほどの接着強度を示し、積層体形成工程での焼成による劣化は認められなかった。
一方、比較例1については、プライマー層とゴム層間で剥離することが観察され、接着力不足であることが認められた。このことから、積層体形成工程での焼成によりゴム層が硬化劣化し、層界面間で剥がれたものと考えられる。
【0087】
<実施例4>
以下の工程を順次経て、実施例4の定着ローラを作製した。
〈a−2〉工程:直径40mmのアルミニウムで構成される芯金上にプライマー(東レダウコーニングシリコーン社製、DY39−051)を塗布し乾燥してシリコーンプライマー層を形成した。
〈b−2〉工程:形成したシリコーンプライマー層の上に耐熱性シリコーン樹脂(東レダウコーニングシリコーン社製、DY35−4039)溶液を250μmの塗布層を形成し、シリコーンゴムを120℃で15分間の1次加硫後、200℃で4時間の2次加硫を経て弾性層を形成した。
〈c−2〉工程:形成した弾性層の上に、調製例1で調製したプライマー分散液(水性フッ素樹脂ディスパージョン)に調製例3で調製したイオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子0.15重量部を混合させたプライマー液をスプレー塗装して厚さ2μmのプライマー層を形成した。
〈d−2〉工程:形成したプライマー層の上に、プライマー層の上にPFA分散液(三井・デュポンフロロケミカル社製、PFA945HP−Plus)をスプレー塗装して30μm厚の塗布層を形成し、この塗布層を340℃で30分間焼成して離型層を形成した。
【0088】
<実施例5>
実施例4の〈c−2〉工程において用いたイオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子(調製例3)0.1重量部に加えて板状構造無機材料:合成ハイドロタルサイト(DHT−4A(協和化学工業製)1重量部を混合させたプライマー液を用いた以外は、実施例4と同様の工程を順次経て実施例5の定着ローラを作製した。
【0089】
<比較例2>
実施例4の〈c−2〉工程において用いたイオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子(調製例3)を含まず、調製例1で調製したプライマー分散液(水性フッ素樹脂ディスパージョン)のみのプライマーを用いた以外は、実施例4と同様の工程を順次経て比較例2の定着ローラを作製した。
【0090】
<実施例6>
以下の工程を順次経て、実施例6の定着ベルトを作製した。
〈a−3〉工程:直径60mm、幅400mm、厚さ0.1mmのポリイミド樹脂製シームレスベルトの表面にシリコーンゴム用プライマー(東レダウコーニング社製、DY39−067)をスプレー塗装して厚さ1μmのシリコーンプライマー層を形成した。
〈b−3〉工程:このシリコーンプライマー層の上に耐熱性シリコーンゴム(東レダウコーニング社製、DY35−2083)のトルエン溶液をスプレー塗装して200μmの塗布層を形成し、シリコーンゴムを120℃で15分間の1次加硫後、200℃×4時間
の2次加硫を経て弾性層を形成した。
〈c−3〉工程:形成した弾性層の上に、調製例1で調製したプライマー分散液(水性フッ素樹脂ディスパージョン)に調製例2で調製したイオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子0.1重量部を混合させたプライマーをスプレー塗装して厚さ2μmのプライマー層を形成した。
〈d−3〉工程:形成したプライマー層の上にPFA分散液(三井・デュポンフロロケミカル社製、PFA945HP−Plus)をスプレー塗装して30μm厚の塗布層を形成し、この塗布層を340℃で30分間焼成して離型層を形成した。
【0091】
<実施例7>
実施例6の〈c−3〉工程において用いたイオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子(調製例2)0.1重量部に加えて板状構造無機材料:合成ハイドロタルサイト(DHT−4A(協和化学工業製))1重量部を混合させたプライマーを用いた以外は、実施例6と同様の工程を順次経て実施例7の定着ベルトを作製した。
【0092】
<比較例3>
実施例6の〈c−3〉工程において用いたイオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子(調製例2)を含まず、調製例1で調製したプライマー分散液(水性フッ素樹脂ディスパージョン)のみのプライマーを用いた以外は、実施例6と同様の工程を順次経て比較例3の定着ベルトを作製した。
【0093】
なお、実施例及び比較例で用いたPFA系フッ素樹脂のほかに、PFA940HP−puls(三井・デュポンフロロケミカル社製)、PFA440HP−J(三井・デュポンフロロケミカル社製)、PFA441HP−J(三井・デュポンフロロケミカル社製)、PFA940HP−puls(三井・デュポンフロロケミカル社製)、PFA950HP−puls(三井・デュポンフロロケミカル社製)等も用いることができる。
【0094】
上記のようにして作製した実施例4〜7、及び比較例2、3で作製した定着部材(定着ローラ及び定着ベルト)について次の評価を行なった。
「部材作製後の外観」を目視により観察した。次いで、それぞれの定着部材を用いて複写を行ない、複写枚数が「1枚」、「10万枚」及び「20万枚」に達した時点での「画質(ベタ地)」を観察し、かつ、定着部材(定着ローラ及び定着ベルト)の表面における「複写後の外観」について異常の有無を目視により確認し、下記評価基準により評価した。評価結果を下記表2に示す。
【0095】
<目視観察による評価基準>
◎:実用上、劣化が認められないレベル
○:実用上、問題とならないレベル
△:若干の異変や劣化が認められるレベル
×:著しい異変や劣化が認められるレベル
【0096】
ここでいう画質の劣化とは、ゆず肌や光沢ムラのことを意味する。これは定着部材の弾性層が劣化することで、部材表面の平滑性が失われ、あるいは定着時の圧力が不均一になったことに起因するものである。
【0097】
【表2】

【0098】
実施例4〜7については、定着部材作製後(1枚)、10万枚、及び20万枚の複写を終えても、画質及び定着ベルトに特に異常は見られなかった。一方、比較例2、3については、10万枚の複写を終えた時点で定着ベルト表面に多少のクラック、及び弾性層の硬化劣化による画質の劣化が見られたが、部品は破損していなかったので評価を継続した。
【0099】
しかし、20万枚の複写を終えた時点では、画質が著しく劣化し、定着ベルトを観察するとクラックが発生・成長・層間剥がれが生じており、定着部材として満足に機能しないレベルまで劣化・破損していた。なお、クラックが発生した場合には、クラックが発生した部分にトナーが残留するので、画像汚れや表面不均一による画像定着不良などの不具合が発生することとなる。
【0100】
<実施例8>
本発明の積層体からなる定着部材を備えた定着装置を組み込んで画像形成装置を構成した。図5は、本発明における定着装置を組み込んだ画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図中(1)は像担持体、(2)は帯電手段、(3)はレーザ書き込みユニット、(4)は現像装置、(5)は転写ローラ、(6)はクリーニング装置である。また図中(7)は給紙部、(8)は給紙ローラ、(9)はレジストローラ対、(10)は定着装置、(11)は排紙部、(12)は画像形成装置を示す。なお、定着装置(10)の定着ベルトは、例えば、実施例6、7のようなベルト構成からできている。
【0101】
像担持体(1)は、図示しない駆動手段により図中矢印方向に回転駆動され、帯電手段(2)によりその表面を一様に帯電させ、ついでレーザ書き込みユニット(3)からの露光により表面に潜像を形成する。この潜像は、現像装置(4)によって可視像化し、給紙部(7)から給紙ローラ(8)やレジストローラ対(9)等を介して供給する紙等の転写体(P)に転写ローラ(5)によってトナー像を転写する。
【0102】
トナー像転写後に像担持体(1)表面上に残留するトナーはクリーニング装置(6)によって除去する。画像を転写された転写体(P)は、定着装置(10)へ導入し、加熱、加圧によってトナー像を定着させ、その後、排紙部(11)へと排出される。
【0103】
上記構成の画像形成装置を用いて複写した結果、オイルレスでも画像汚れ、画像ムラ、光沢ムラ、画像定着不良等の発生のない高品質の画像が形成された。なお、本発明の画像形成装置は図5に示す構成に限定されない。
【0104】
前述のように本発明の積層体を用いれば、第2の層(フッ素樹脂系プライマー層)にイオン性液体を含有して用いているので、何ら熱的な悪影響を与えずに第1の層(弾性層)を形成しつつ、第3の層(離型層)界面との接着性向上が図られ、経時接着性も向上できるため、耐熱性、非粘着性、柔軟性に優れた定着部材を得ることができる。
このような定着部材を画像装置に配備すれば、耐熱合成ゴムの劣化による弾性層のクラック発生や層間剥がれに起因する画像汚れ、部材破壊、表面不均一による画像定着不良等の不具合の発生を初期及び経時で防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施形態に係る積層体の構成例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るローラ形状及びベルト形状の定着部材の構成例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電子写真方式の画像形成装置の概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係るベルト方式の定着装置の概略構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係るベルト方式の定着装置を組み込んだ画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0106】
(図1,図2について)
1、A1、B1 基体
2、A2、B2 第1の層(弾性層)
3、A3、B3 第2の層(プライマー層)
4、A4、B4 第3の層(離型層)
(図3〜図5について)
1 像担持体
2 帯電手段
3 レーザ書き込みユニット
4 現像装置(現像ローラ)
5 転写ローラ
6、108 クリーニング装置
7 給紙部
8 給紙ローラ
9 レジストローラ対
10、110、117 定着装置
11 排紙部
12、100 画像形成装置
101 感光体ドラム
102 帯電ローラ
103 露光手段
104 現像ローラ
105 パワーパック
106 転写ローラ
107 記録紙
109 表面電位計
111 定着ローラ
112 加圧ローラ
113 定着ベルト
114 定着ローラ
115 加熱ローラ
116 加圧ローラ
A 定着部材(ローラ)
B 定着部材(無端ベルト)
P 転写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に、耐熱性ゴムからなる第1の層、フッ素樹脂を主成分とする接着樹脂からなる第2の層、及びフッ素系樹脂からなる第3の層が順次設けられた積層体であって、前記第2の層は前記接着樹脂中に、イオン液体を配合して得られることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記第2の層は前記接着樹脂中に、前記イオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子を配合して得られることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第2の層は前記接着樹脂中に、前記イオン液体を保持したフッ素系高分子ナノ粒子と少なくとも板状構造を有する無機材料とを配合して得られることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記イオン液体が、ピリジニウム系イオン液体、イミダゾリウム系イオン液体、脂環式イオン液体、及び脂肪族アミン系イオン液体のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
像担持体上から転写された記録材上のトナー像を定着させるためのローラ形状もしくはベルト形状を有する定着部材であって、請求項1ないし4のいずれかに記載の積層体からなることを特徴とする定着部材。
【請求項6】
像担持体上から転写された記録材上のトナー像を定着させるための定着部材を備えた定着装置であって、前記定着部材が、請求項5に記載の定着部材であることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
少なくとも像担持体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、定着手段、及びクリーニング手段を有する画像形成装置であって、前記定着手段が、請求項6に記載の定着装置により構成されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−186786(P2009−186786A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27113(P2008−27113)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】