説明

積層体、フォトクロミックレンズ、及びその製造方法

【課題】優れた密着性、フォトクロミック性を示すフォトクロミックレンズを提供する。
【解決手段】互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム3の間に、フォトクロミック化合物含有ポリウレタン樹脂層を有するフォトクロミック積層体4と、少なくとも一方の前記光学シート又は光学フィルム(A2)上に形成される塗膜層5と、前記塗膜層上に形成される合成樹脂層6とを有するフォトクロミックレンズ1であって、該塗膜層が、プロペニルエーテル基含有化合物を含む光硬化性組成物、エン/チオール系の光硬化性組成物、及びオキセタン化合物を含む光硬化性組成物から選ばれる硬化性組成物の硬化体よりなる塗膜層を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射により吸収スペクトルが可逆的に変化する現象、すなわちフォトクロミズムを付与した新規なフォトクロミックレンズに関する。具体的には、フォトクロミック特性、密着性に優れた、特定の塗膜層を介してフォトクロミック積層体と合成樹脂とが接合された新規なフォトクロミックレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼鏡レンズにおいては、防眩性を有するサングラスの需要が急速に高まっている。このサングラスの母材としては、ガラス製レンズに比べて軽量であること、および割れ難さの点で安全性が高いことから、プラスチック製レンズが使用されている。そして、このようなプラスチック製サングラスには、フォトクロミック化合物を含有させることによって、周囲の明るさに応じて透過率が変化して防眩性を調節できる、フォトクロミックレンズが適用されている。
【0003】
このようなプラスチック製のフォトクロミックレンズは、様々な方法で製造されている。具体的には、プラスチックレンズの表面にフォトクロミック化合物を含むコーティング組成物を塗布する方法、プラスチックレンズの材質自体にフォトクロミック化合物を混合し、レンズを形成する方法などが挙げられる。
【0004】
また、母材となるプラスチック材料の特性を損なうことなく、安価にフォトクロミック特性を付与できる方法として、フォトクロミック積層体を使用する方法が検討されている。このフォトクロミック積層体は、先ず、フォトクロミック化合物を接着性ポリウレタン樹脂中に分散させて接着シートを形成する。次いで、該接着シートに、ポリカーボネート樹脂のような光学シートを積層して製造することができる。
【0005】
このフォトクロミック積層体を使用したフォトクロミックレンズの製造方法としては、該積層体に、レンズ用の熱可塑性樹脂を射出成型により積層する方法が知られている。また、機能性のレンズを容易に製造できるという点で、重合してレンズ用の熱硬化性樹脂となる組成物(以下、「レンズ形成用モノマー組成物」とする場合もある)を使用する方法も知られている。この方法は、レンズ形成用モノマー組成物中に該積層体を埋設(浸漬)し、該レンズ形成用モノマー組成物を重合してフォトクロミックレンズを製造する方法である。このレンズ形成用モノマー組成物を使用する方法は、比較的低温でフォトクロミックレンズを製造することができる。また、モノマーの種類を変えることによって、様々な機能をレンズに付与することができる。そのため、多くの検討がなされている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0006】
しかしながら、従来のこれらの方法では、以下の点で改善の余地があった。例えば、特許文献1、及び2に記載された方法では、母材となる熱硬化性樹脂(合成樹脂層)と光学シートとの密着性、及び光学シートとフォトクロミック層(接着シート)との密着性が十分でない場合があった。そのため、フォトクロミックレンズ製造後に、各層が剥離する場合があった。さらに、使用する光学シートの材質によっては耐薬品性が十分ではないため、レンズ形成用モノマー組成物を重合して熱硬化性樹脂(母材:合成樹脂層)とする際、白化や黄変といった外観不良が生じる場合があった。
【0007】
このような問題を解決するため、特許文献3には、塗膜層を表面に有するフォトクロミック積層体を使用する方法が示されている。該方法では、この塗膜層上に、レンズ形成用モノマー組成物の重合(硬化)体よりなる熱可塑性樹脂(合成樹脂層)を形成している。そして、特許文献3には、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートからなる塗膜層が例示されている。
【0008】
しかしながら、この塗膜層を設けたフォトクロミックレンズにおいても、熱硬化性樹脂(合成樹脂層)や光学シートの種類によっては、熱硬化性樹脂(合成樹脂層)と光学シートとの密着性が改善されない場合があった。密着性が十分ではない場合、特に、フォトクロミック積層体の端面が熱硬化性樹脂(合成樹脂層)の端面と同一面上に存在すると、フォトクロミックレンズ自体が剥離するおそれがあった。
【0009】
上述の通り、フォトクロミック積層体を使用したこれまでの方法では、複数形成された層のいずれかの界面が剥離する問題を十分に解消できなかった。フォトクロミックレンズは、日常生活で使用するにあたり、高湿度下に放置されたり、温水と接触する場合がある。このような状況下におかれても、フォトクロミックレンズは、各層間の界面において、高い密着性が保持されなければならない。そのため、高いフォトクロミック特性を維持したまま、例えば、熱水と接触させた後であっても、各層間の密着性が高く、剥離の問題がないフォトクロミックレンズの開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭61−236521号公報
【特許文献2】特開2005−181426号公報
【特許文献3】特開2005−215640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、母材となる熱可塑樹脂あるいは熱硬化性樹脂である合成樹脂層と、光学シートあるいは光学フィルムとの密着性に優れるフォトクロミックレンズを提供することにある。さらには、前記密着性の特性に加え、透明性、フォトクロミック特性に優れたフォトクロミックレンズを提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、光学シート又は光学フィルムと、フォトクロミック化合物を含有するポリウレタン樹脂層との密着性をより向上したフォトクロミック積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。そして、フォトクロミックレンズにおいて、光学シート又は光学フィルム上に形成され、それを介して母材となる合成樹脂層と接合する塗膜層について、様々な材料を検討した。その結果、該塗膜層として、特定のモノマーを含む光硬化性組成物からなる硬化体を使用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、
互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン樹脂層(A1)を有するフォトクロミック積層体(A)と、
少なくとも一方の前記光学シート又は光学フィルム(A2)上に形成される塗膜層(B)と、
前記塗膜層(B)上に形成される合成樹脂層(C)と
を有するフォトクロミックレンズであって、
前記塗膜層(B)が、プロペニルエーテル基含有化合物を含む光硬化性組成物、ポリエン化合物及びチオール化合物を含むエン/チオール系の光硬化性組成物、並びにオキセタン化合物を含む光硬化性組成物から選ばれる硬化性組成物の硬化体からなることを特徴とするフォトクロミックレンズである。
【0015】
前記フォトクロミックレンズは、前記ポリウレタン樹脂層(A1)と前記光学シート又は光学フィルム(A2)との間に、さらに、前記塗膜層(B)を有することが好ましい。
【0016】
また、他の発明は、前記フォトクロミックレンズを製造する方法であって、プロペニルエーテル基含有化合物を含む光硬化性組成物、ポリエン化合物及びチオール化合物を含むエン/チオール系の光硬化性組成物、並びにオキセタン化合物を含む光硬化性組成物から選ばれる硬化性組成物を、光学シート又は光学フィルム(A2)上に塗布し、光硬化させることにより、前記硬化性組成物の硬化体よりなる塗膜層(B)を形成する工程を含むことを特徴とするフォトクロミックレンズの製造方法である。
【0017】
さらに、他の発明は、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン樹脂層(A1)を有するフォトクロミック積層体(A)の少なくとも一方の該光学シート又は光学フィルム(A2)上に、
プロペニルエーテル基含有化合物を含む光硬化性組成物、ポリエン化合物及びチオール化合物を含むエン/チオール系の光硬化性組成物、並びにオキセタン化合物を含む光硬化性組成物から選ばれる硬化性組成物の硬化体からなる塗膜層(B)を有する積層体である。
【0018】
この積層体は、前記光学シート又は光学フィルム(A2)と前記ポリウレタン樹脂層(A1)との間に、さらに、前記塗膜層(B)を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフォトクロミックレンズは、特定の光硬化モノマーを含む硬化性組成物の硬化体からなる塗膜層(B)を設けることにより、母材となる合成樹脂層(C)と、光学シート又は光学フィルム(A2)との密着性を向上させることができる。さらには、光学シート又は光学フィルム(A2)と、フォトクロミック化合物を含有するポリウレタン樹脂層(A1)との間に、該塗膜層を設けることにより、両者の密着性をより向上させることができる。そのため、本発明のフォトクロミックレンズは、優れたフォトクロミック特性を有し、長期間使用できる。
【0020】
さらに、熱硬化性樹脂(母材)となるレンズ形成用モノマー組成物中に、該塗膜層を有するフォトクロミック積層体(積層体)を埋設(浸漬)してフォトクロミックレンズを製造する場合には、該フォトクロミック積層体は、耐溶剤性に優れるため、レンズ形成用モノマー組成物中に光学シート又は光学フィルムが溶出することを防止できる。そのため、白濁などが生じない、透明なフォトクロミックレンズを得ることができる。また、該塗膜層を有するフォトクロミック積層体(積層体)は、耐溶剤性に優れるため、有機溶媒を用いてフォトクロミックレンズを製造することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のフォトクロミックレンズの一態様を示す。
【図2】本発明のフォトクロミックレンズの他の態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のフォトクロミックレンズは、
互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン樹脂層(A1)を有するフォトクロミック積層体(A)と、
該光学シート又は光学フィルム(A2)の少なくとも一方の面上に合成樹脂層(C)を有するフォトクロミックレンズである。そして、 該光学シート又は光学フィルム(A2)と合成樹脂層(C)との間に、特定の光硬化性組成物の硬化体からなる塗膜層(B)を有することを特徴とするフォトクロミックレンズである。
【0023】
以下、これらのフォトクロミック積層体(A)、塗膜層(B)、合成樹脂層(C)について説明する。
【0024】
フォトクロミック積層体(A)
フォトクロミック積層体は、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン樹脂層(A1)を有するものである。本発明において、このフォトクロミック積層体(A)における密着性とは、1)母材となる合成樹脂層(C)と光学シート又は光学フィルム(A2)との密着性、さらには、2)ポリウレタン樹脂層(A1)と光学シート又は光学フィルム(A2)との密着性の両者を意味する。先ず、フォトクロミック積層体(A)を構成する、ポリウレタン樹脂層(A1)について説明する。
【0025】
フォトクロミック化合物を含むポリウレタン樹脂層(A1)
(ポリウレタン樹脂層(A1)を構成するポリウレタン樹脂)
フォトクロミック化合物を含むポリウレタン樹脂層(A1)に使用される該ポリウレタン樹脂は、光学シート又は光学フィルム(A2)同士を接合する接着剤の役割を果たす。そのため、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に存在し、両者を接合できる樹脂であれば、特に制限されるない。このポリウレタン樹脂は、熱硬化性ポリウレタン、または熱可塑性ポリウレタンであってもよい。
【0026】
該ポリウレタン樹脂は、公知の方法で製造することができる。中でも、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、及び鎖延長剤から合成されるポリマーであることが好ましい。以下、これら各成分について説明する。
【0027】
(ポリイソシアネート化合物)
該ポリウレタン樹脂に使用されるポリイソシアネート化合物としては、耐候性の観点から脂肪族ポリイソシアネート化合物、または脂環式ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。具体的には、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート化合物、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート化合物を挙げることができ、特にイソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0028】
(ポリオール化合物)
該ポリウレタン樹脂に使用されるポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオールなどのポリオール化合物を使用することできる。中でも、耐熱性、密着性、耐候性、耐加水分解性などの観点から、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールを使用することが好ましい。該ポリオール化合物の数平均分子量は、400〜3000であることが好ましい。中でも、得られるポリウレタン樹脂層の耐熱性、フォトクロミック特性(発色濃度、退色速度、耐候性など)、特にフォトクロミック化合物の耐候性の観点から、数平均分子量は400〜2500であることが好ましく、400〜1500であることがより好ましい。
【0029】
(鎖延長剤)
該ポリウレタン樹脂に使用される鎖延長剤としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基と反応しうる官能基を有する分子量50〜300の化合物である。具体的には、ジアミン化合物、トリアミン化合物、アミノアルコール化合物、アミノカルボン酸化合物、アミノチオール化合物、ジオール化合物、及びトリオール化合物を使用できる。特に、密着性、耐熱性、及びフォトクロミック特性の観点から、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ピペラジン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミンなどのジアミン化合物を使用することが好ましい。
【0030】
(ポリウレタン樹脂を構成するその他の成分)
上述のポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、及び鎖延長剤から得られるポリウレタン樹脂の末端は、イソシアネート基であってもよいし、該イソシアネート基を反応停止剤によりキャップしていてもよい。該反応停止剤は、1つのイソシアネート基と反応しうる基と、その他、様々な機能を発揮できる基、構造を有する化合物を使用することができる。具体的には、4−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンのようなイソシアネート基と反応する基を有する化合物を反応停止剤として使用することができる。
【0031】
(ポリウレタン樹脂の製造方法)
該ポリウレタン樹脂は、前記成分を用い、公知の方法で製造することができる。具体的には、所謂ワンショット法又はプレポリマー法を採用することができる。例えば、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物と反応させ、次いで、鎖延長剤を反応させ、必要に応じて、反応停止剤を反応させる方法を採用することができる。これら成分の反応条件は、公知の条件を採用することができる。また、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)のような有機溶媒中で反応を実施することができる。精製方法等も、公知の方法を採用することができる。
【0032】
このようにして得られたポリウレタン樹脂は、次に説明するフォトクロミック化合物と混合されて、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン樹脂層(A1)を形成する。この際、粘度調節のために、テトラヒドロフランやプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの有機溶媒を使用することができる。
【0033】
(フォトクロミック化合物)
次に、このポリウレタン樹脂中に混合され、ポリウレタン樹脂層(A1)に含まれるフォトクロミック化合物について説明する。
【0034】
フォトクロミック化合物としては、クロメン化合物、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物などの公知のフォトクロミック化合物を何ら制限なく使用することが出来る。これらは、単独使用でもよく、2種類以上を併用しても良い。
【0035】
上記のフルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物およびクロメン化合物としては、例えば特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号パンフレット、WO96/14596号パンフレットなどに記載されている化合物を挙げることができる。
【0036】
特に、クロメン化合物としては上記特許文献に記載されたもの以外にも、優れたフォトクロミック性を有するクロメン化合物が知られている。具体的には、特開2001−031670号、特開2001−011067号、特開2001−011066号、特開2000−344761号、特開2000−327675号、特開2000−256347号、特開2000−229976号、特開2000−229975号、特開2000−229974号、特開2000−229973号、特開2000−229972号、特開2000−219678号、特開2000−219686号、特開平11−322739号、特開平11−286484号、特開平11−279171号、特開平09−218301号、特開平09−124645号、特開平08−295690号、特開平08−176139号、特開平08−157467号、米国特許5645767号公報、米国特許5658501号公報、米国特許5961892号公報、米国特許6296785号公報、日本国特許第4424981号公報、日本国特許第4424962号公報、WO2009/136668号パンフレット、WO2008/023828号パンフレット、日本国特許第4369754号公報、日本国特許第4301621号公報、日本国特許第4256985号公報、WO2007/086532号パンフレット、特開平2009−120536号、特開2009−67754号、特開2009−67680号、特開2009−57300号、日本国特許4195615号公報、日本国特許4158881号公報、日本国特許4157245号公報、日本国特許4157239号公報、日本国特許4157227号公報、日本国特許4118458号公報、特開2008−74832号、日本国特許3982770号公報、日本国特許3801386号公報、WO2005/028465号パンフレット、WO2003/042203号パンフレット、特開2005−289812号、特開2005−289807号、特開2005−112772号、日本国特許3522189号公報、WO2002/090342号パンフレット、日本国特許第3471073号公報、特開2003−277381号、WO2001/060811号パンフレット、WO00/71544号パンフレット等に開示されている。
【0037】
これらフォトクロミック化合物の中でも、発色濃度、初期着色、耐久性、退色速度などのフォトクロミック特性の観点から、インデノナフト「2,1−f」ナフト「2,1−b」ピラン骨格を有するクロメン化合物を1種類以上用いることがより好ましい。
【0038】
フォトクロミック化合物を含むポリウレタン樹脂層(A1)の製造方法
本発明において、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン樹脂層(A1)は、前記方法で得られるポリウレタン樹脂、及びフォトクロミック化合物とを含むフォトクロミック組成物を用いて形成できる。
【0039】
このフォトクロミック組成物は、特に制限されるものではないが、ポリウレタン樹脂100質量部当たり、フォトクロミック化合物を1質量部以上10質量部以下含むことが好ましい。そのため、ポリウレタン接着層(A1)は、ポリウレタン樹脂100質量部当たり、フォトクロミック化合物を1質量部以上10質量部以下含むことが好ましい。
【0040】
また、形成されるポリウレタン樹脂層(A1)耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や製膜性のために、該フォトクロミック組成物に公知の添加剤を配合することもできる。具体的な添加剤を例示すると、界面活性剤、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェーノール酸化防止剤、フェノール系ラジカル補足剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等を挙げることができる。これら添加剤としては、公知の化合物が何ら制限なく使用され、これらは2種以上を混合して使用してもよい。上記添加剤の配合量は、ポリウレタン樹脂100質量部に対し、合計で0.001〜10質量部の範囲が好ましい。
【0041】
さらに、該フォトクロミック組成物には、ポリウレタン樹脂層(A1)と光学シートの密着性を向上させる目的で、粘着剤を配合することもできる。具体的な粘着剤としては、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、フェノール樹脂、水添テルペン樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などが挙げられる。
【0042】
また、該フォトクロミック組成物には、ポリウレタン樹脂層(A1)の耐熱性の向上、及びレンズ形成用モノマー組成物への溶解性を低減させる目的で、無機酸化物微粒子、及び有機/無機複合材料などを配合することもできる。無機酸化物微粒子としては、メタノール、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの等の有機溶剤に分散したシリカゾル、複合酸化物ゾルなどの金属酸化物ゾルが挙げられる。有機/無機ハイブリッド材料としては、シリカ/メラミンハイブッリド材料、シリカ/ウレタンハイブリッド材料、シリカ/アクリルハイブリッド材料、シリカ/エポキシ樹脂ハイブリッド材料等が挙げられる。
【0043】
このフォトクロミック組成物から該ポリウレタン樹脂層(A1)を形成すればよい。該ポリウレタン樹脂層(A1)を形成する方法は、下記のフォトクロミック積層体(A)の製造方法で説明する。
【0044】
本発明において、該ポリウレタン樹脂層(A1)の厚さは、特に制限されるものではないが、フォトクロミック積層体(A)とした際に、フォトクロミック化合物の発色濃度、耐候性および接着強度などの観点から、5〜100μm、特に10〜50μmとすることが好ましい。
【0045】
該ポリウレタン樹脂層(A1)の両面には、光学シート又は光学フィルム(A2)が積層される。次に、光学シート又は光学フィルム(A2)について説明する。
【0046】
光学シート又は光学フィルム(A2)
光学シート又は光学フィルム(A2)は、光透過性を有するシート又はフィルムが使用される。原料としてはポリカーボネート樹脂、ポリカーボネートアロイ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリレート樹脂、アリル樹脂、ポリスルフォン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂等が挙げられる。また、偏光フィルム(例えば、ポリビニルアルコール製の偏光フィルムをトリアセチルセルロース樹脂フィルムではさんだもの)も、光学フィルム(シート)として使用できる。該偏光フィルムを用いることにより、偏光フォトクロミックレンズを得ることができる。
【0047】
以上のような原料の中でも、密着性、光学特性、及び機械強度などの観点から、ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。好ましいポリカーボネート樹脂としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンや2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジハロゲノフェニル) アルカンで代表されるビスフェノール化合物から周知の方法で製造された重合体が挙げられる。また、該重合体には、脂肪酸ジオールに由来する構造単位が含まれるエステル結合を有していてもよい。特に、好ましいポリカーボネート樹脂としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される樹脂である。また、このポリカーボネート樹脂の分子量についても、特に制限はないが、賦型性や機械的強度の観点から粘度平均分子量で17,000〜40,000、より好ましくは20,000〜30,000である。
【0048】
また、光学シート又は光学フィルム(A2)は、公知の手法で改質したものを使用することもできる。例えば、ポリウレタン樹脂層(A1)との密着性をさらに向上させるため、表面を改質したものを使用することができる。改質の手法としては、特に限定されないが、プラズマ放電処理、コロナ処理、火炎処理、酸、アルカリ薬液等による化学的処理などを挙げることができる。
【0049】
また、本発明において、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)は、同一の樹脂からなるシート又はフィルムであってもよいし、異なる樹脂からなるシート又はフィルムであってもよい。特に、上記偏光フィルムを使用する際は、対向するもう一方の光学シート又は光学フィルムは、他の種類の透明性を有する光学シート又は光学フィルムであることが好ましい。
【0050】
本発明で使用される光学シート又は光学フィルム(A2)の厚さは、通常、50μm〜1mmであり、特に0.1mm〜0.5mmであることが好ましい。50μmより薄い場合には、レンズ形成用モノマー組成物中に、フォトクロミック積層体(A1)を埋設(浸漬)し、該組成物を硬化させる際に、光学シート又はフィルムに歪が生じるおそれがある。その一方で、光学シート又は光学フィルム(A2)の厚さが1mmを超える場合、得られるフォトクロミックレンズが厚くなり、メガネ用途に不向きになるおそれがある。また、曲面加工が困難となる場合がある。
【0051】
この光学シート又は光学フィルム(A2)には、合成樹脂層(C)が接する面に塗膜層(B)を積層する。また、必要に応じて、前記ポリウレタン樹脂層(A1)が接する面に塗膜層(B)を積層してもよい。次に、この光学シート又は光学フィルム(A2)を有するフォトクロミック積層体(A)の製造方法について説明する。
【0052】
フォトクロミック積層体(A)の製造方法
本発明で使用するフォトクロミック積層体(A)は、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン樹脂層(A1)を有してなる。このフォトクロ積層体(A)は、例えば、下記のような手順・条件により製造できる。具体的には、該ポリウレタン樹脂層(A)において説明したフォトクロミック組成物を使用してやればよい。例えば、光学シート又は光学フィルム(A2)上に直接、該フォトクロミック組成物を層状に積層してポリウレタン樹脂層(A1)を形成し、さらに、該ポリウレタン樹脂層(A1)の表面に、別の光学シート又は光学フィルム(A2)を積層してやればよい。
【0053】
また、有機溶媒を含むフォトクロミック組成物を使用した場合は、光学シート又は光学フィルム(A2)上に塗布し、有機溶媒を乾燥して該ポリウレタン樹脂層(A1)を形成し、さらに、該ポリウレタン樹脂層(A1)の表面に、別の光学シート又は光学フィルム(A2)を積層してやればよい。
【0054】
その他、有機溶媒に溶解しやすい、例えば、ポリカーボネート製の光学シート又は光学フィルム(A2)を使用する場合には、以下の方法を採用することもできる。先ず、耐溶剤性の高い平滑な基材上に、有機溶媒を含むフォトクロミック組成物を塗布した後、有機溶媒を乾燥し、該基材上から該ポリウレタン樹脂層(A1)を分離し、得られたポリウレタン樹脂層(A1)の両面に光学シート又は光学フィルム(A2)を積層する方法である。この場合、耐溶剤性の高い平滑な基材として、該ポリウレタン樹脂層(A1)と接する光学シート又は光学フィルム(A2)上に、予め塗膜層(B)を積層したものも使用できる。下記に詳述する塗膜層(B)は、耐溶剤性に優れる。そのため、例えば、耐溶剤性の低いポリカーボネート製の光学シート又は光学フィルムの上に塗膜層(B)を積層したものは、そのまま該基材として使用することができる。塗膜層(B)を有するポリカーボネート製光学シートを光学シート又は光学フィルム(A2)を該基材として使用することにより、フォトクロミック積層体(A)の製造工程を簡略化することができる。
【0055】
以上のいずれかの方法を採用することにより、ポリウレタン樹脂層(A1)を形成し、フォトクロミック積層体(A)を製造できる。該ポリウレタン樹脂層(A1)は、主成分であるポリウレタン樹脂が接着剤として機能するため、上記方法で得られた後、そのまま、使用することもできる。ただし、該ポリウレタン樹脂層(A1)の両面に、光学シート又は光学フィルム(A2)を積層した後、以下の方法により、その状態を安定化させて使用することが好ましい。具体的には、接合(積層)したばかりのフォトクロミック積層体(A)を20℃以上60℃以下の温度で12時間以上静置しておくことが好ましい。静置する時間の上限は、特に制限されるものではないが、50時間もあれば十分である。さらに、この静置したフォトクロミック積層体(A)を80℃以上130℃以下の温度下、30分間以上3時間以下放置しておくことが好ましい(以下、加熱処理とする)。この加熱処理して得られた積層体は、その状態が非常に安定なものとなる。
【0056】
本発明は、このような方法により得られたフォトクロミック積層体(A)の少なくとも一方の面上に、合成樹脂層(C)を有するフォトクロミックレンズであって、該フォトクロミック積層体(A)と合成樹脂層(C)との間に、
プロペニルエーテル基含有化合物を含む光硬化性組成物、ポリエン化合物及びチオール化合物を含むエン/チオール系の光硬化性組成物、エポキシ化合物を含む光硬化性組成物、並びにオキセタン化合物を含む光硬化性組成物から選ばれる硬化性組成物の硬化体よりなる塗膜層(B)を有することを特徴とする。次に、この塗膜層(B)について説明する。
【0057】
塗膜層(B)
本発明のフォトクロミックレンズにおいて、塗膜層(B)は、必ず、光学シート又は光学フィルム(A2)と下記に詳述する合成樹脂層(C)との間に介在するものである。そして、この塗膜層(B)は、プロペニルエーテル基含有化合物を含む光硬化性組成物、ポリエン化合物及びチオール化合物を含むエン/チオール系の光硬化性組成物、並びにオキセタン化合物を含む光硬化性組成物から選ばれる硬化性組成物の硬化体からなることを特徴とする。この塗膜層(B)を形成することにより、各種光学シート又は光学フィルム(A2)への密着性を向上させることができるため、優れた密着性を有するフォトクロミックレンズを得ることができる。
【0058】
前記光硬化性組成物は、空気による硬化阻害を受けにくく、硬化時の体積収縮率が小さい。そのため、該硬化性組成物からなる塗膜層を形成することにより、各種光学シート又は光学フィルム(A2)と合成樹脂層(C)との密着性を向上させることができるものと考えられる。
【0059】
次に、この塗膜層(B)を形成する硬化性組成物について説明する。
【0060】
(硬化性組成物)
(プロペニルエーテル基含有化合物を含む光硬化性組成物)
本発明において、プロペニルエーテル基含有化合物とは、一般式(1)で表されるプロペニルエーテル基を有する化合物である。
【0061】
【化1】

【0062】
分子内に含まれるプロペニルエーテル基の数は、特に制限はないが、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個である。
【0063】
プロペニルエーテル基含有化合物を具体的に例示すれば、メチルプロペニルエーテル、エチルプロペニルエーテル、イソプロピルプロペニルエーテル、イソブチルプロペニルエーテル、n−ブチルプロペニルエーテル、t−ブチルプロペニルエーテル、シクロヘキシルプロペニルエーテル、イソオクチルプロペニルエーテル、n−ヘキサデシルプロペニルエーテル、ネオペンチルプロペニルエーテル、ベンジルプロペニルエーテル、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンジプロペニルエーテル、エチレングリコールジプロペニルエーテル、プロピレングリコールジプロペニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジプロペニルエーテル、テトラメチレングリコールジプロペニルエーテル、ポリエチレングリコール(数平均分子量150〜4,000)ジプロペニルエーテル、ポリプロピレングリコール(数平均分子量180〜5,000)ジプロペニルエーテル、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量200〜5,000)ジプロペニルエーテル、ネオペンチルグリコールジプロペニルエーテル並びにビスフェノールAのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド(1〜20モル)付加物のジプロペニルエーテル、トリメチロールプロパントリプロペニルエーテル、ペンタエリスリトールトリプロペニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラプロペニルエーテル、ソルビトールテトラプロペニルエーテル、ソルビトールペンタプロペニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタプロペニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサプロペニルエーテル、トリメチロールプロパントリエトキシプロペニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエトキシプロペニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタエトキシプロペニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサエトキシプロペニルエーテルなどが挙げられる。上記以外にも、前記一般式(1)で示されるプロペニルエーテル基を末端に有する(ポリ)エーテルオリゴマー、(ポリ)エステルオリゴマー、(ポリ)ウレタンオリゴマーなども使用することもできる。
【0064】
これらのプロペニルエーテル基含有化合物は、単独で使用してもよいし、必要に応じて2種類以上を混合して使用することもできる。
【0065】
本発明においては、以上のようなプロぺニルエーテル基含有化合物を含む光硬化性組成物を使用して、塗膜層(B)を形成することができる。該光硬化性組成物には、前記プロぺニルエーテル基含有化合物の他、光重合開始剤を配合することが好ましい。次に、光重合開始剤について説明する。
【0066】
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、公知のものを使用することができる。具体的には、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,6−ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド等のモノアシルフォスフィンオキシド系化合物;ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6―トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6―トリメトキシベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキシド系化合物;ベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアンスラキノン、4’,4”−ジエチルイソフタロフェノン、9,10−フェナンスレンキノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2(O−エトキシカルボニル)オキシム、ベンゾフェノン、オルソベンゾイル安息香酸メチル、オルソベンゾイル安息香酸、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン等を挙げることができる。
【0067】
これらの光重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類などによって異なるが、
プロぺニルエーテル基含有化合物100質量部に対して0.001〜10質量部、好ましくは0.01〜2質量部の範囲で用いることが好適である。該光重合開始剤は、単独で使用しても良いし、複数を混合して用いても良い。
【0068】
プロペニルエーテル基含有化合物を含む硬化性組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲でその他の添加剤、有機溶媒等を配合することもできる。
【0069】
(ポリエン化合物及びチオール化合物を含むエン/チオール系光硬化性組成物)
本発明において、ポリエン化合物とは、多官能性の炭素−炭素不飽和結合を有する化合物である。また、チオール化合物とは、該ポリエン化合物と光照射時に反応する硫黄原子を分子内に有する化合物である。特に、チオール化合物は、分子内にメルカプト基を有する化合物であることが好ましい。これら化合物を含むエン/チオール系光硬化性組成物を使用することにより、ポリエン化合物とチオール化合物との付加反応(光マイケル付加反応)により硬化体が形成される。そのため、酸素による重合阻害が少なく、表面硬化性に優れた硬化体(塗膜層)を形成できる。
【0070】
(ポリエン化合物)
ポリエン化合物は、多官能性の炭素−炭素不飽和結合を有する化合物である。該ポリエン化合物としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などを分子内に1個以上、好ましくは2個以上6個以下有する化合物を挙げることができる。中でも、本発明においては光学シートへの密着性の観点から、アリル基などを分子内に1個以上有する化合物(アリル化合物)、特にアリル基などを分子内に2個以上6個以下有する化合物を好適に用いることができる。
【0071】
具体的なポリエン化合物としては、ジアリリデンペンタエリスリトール、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、フマル酸ジアリル、グリセリンジアリルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジアリルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジアリルエーテル、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック又はランダムコポリマーであるグリコールのジアリルエーテル、エチレンオキサイドとテトラハイドロフランのブロック又はランダムコポリマーであるグリコールのジアリルエーテル、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルシアヌレートモノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリアリルトリメリテート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、テトラアリルピロメリテート、ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール1モルに対しエチレンオキサイドを付加して得られるポリオールのポリアリルエーテル、エポキシオリゴマーのポリアリルエーテル、ウレタンオリゴマーのポリアリルエーテル、メラミンオリゴマーのポリアリルエーテル、アリルグリシジルエーテルのエポキシ基を多価カルボン酸又はその酸無水物と反応させた化合物などのアリル化合物、さらには液状で側鎖のビニル基が70%以上水添された1,2−ポリブタジエンオリゴマーの両末端に存在する水酸基を、ジイソシアナート化合物などを介して、アリルアルコール、アリルメルカプタン等と反応させることによって得られるアリル化合物が挙げられる。
【0072】
また、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタンオリゴマーテトラ(メタ)アクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエステルオリゴマーヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、分子量2500〜3500の4官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB80等)、分子量6000〜8000の4官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB450等)、分子量45000〜55000の6官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB1830等)、分子量10000の4官能ポリエステルオリゴマー(第一工業製薬社、GX8488B等)、トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、分子量1560の9官能ウレタンオリゴマー(新中村化学社製UA−32P)、分子量2300の15官能ウレタンオリゴマー(新中村化学社製U−15HA)、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノニレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノニルアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチルエーテルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレン(メタ)アクリレート、メチルエーテルポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、オクチルフェニルエーテルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルエーテルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチルエーテルポリエチレンチオグリコール(メタ)アクリレート、パーフルオロヘプチルエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル化合物が挙げられる。
【0073】
また、スチレン、α−メチルスチレン、メチルビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン、α−クロロスチレン、クロロビニルベンゼン、ビニルベンジルクロライド、パラジビニルベンゼン、メタジビニルベンゼンなどのビニル化合物を挙げることができる。
(チオール化合物)
チオール化合物は、前記ポリエン化合物と反応する硫黄原子を分子内に有する化合物である。中でも、分子内にメルカプト基を2〜6個有するチオール化合物が好ましい。このようなポリチオール化合物としては、分子内にメルカプト基を2〜6個有するものであればよい。
【0074】
具体的には、炭素数2〜20程度のアルカンジチオールなどの脂肪族ポリチオール化合物、キシリレンジチオールなどの芳香族ポリチオール化合物、アルコール類のハロヒドリン付加物のハロゲン原子をメルカプト基で置換してなるポリチオール化合物、ポリエポキシド化合物の硫化水素反応生成物からなるポリチオール化合物が挙げられる。また、分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコール類と、チオグリコール酸、β−メルカプトプロピオン酸、又はβ−メルカプトブタン酸とのエステル化物からなるポリチオール化合物などを挙げることができる。
【0075】
中でも、反応性がよく、かつ化学構造の制御が容易な、分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコールと、チオグリコール酸、β−メルカプトプロピオン酸、又はβ−メルカプトブタン酸とのエステル化物、特にβ−メルカプトプロピオン酸とのエステル化物、及びβ−メルカプトブタン酸とのエステル化物からなるポリチオール化合物が好適である。
【0076】
なお、前記の分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコール類としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6 −ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,12−ドデカンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、水添ビスフェノールA などの炭素数2〜20アルカンジオールが挙げられる。また、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールエチレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールプロピレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物などポリ(オキシアルキレン)グリコールが挙げられる。その他、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどを挙げることができる。
【0077】
具体的なポリチオール化合物としては、エチレングリコールジ(チオグリコレート)、エチレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、トリメチレングリコールジ(チオグリコレート)、トリメチレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、トリメチレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、プロピレングリコールジ(チオグリコレート)、プロピレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、1,3−ブタンジオールジ(チオグリコレート) 、1,3−ブタンジオールジ(β−メルカプトプロピオネート)、1,3−ブタンジオールジ(β−メルカプトブタネート)、1,4−ブタンジオールジ(チオグリコレート)、1,4−ブタンジオールジ(β−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールジ(β−メルカプトブタネート)、ネオペンチルグリコールジ(チオグリコレート)、ネオペンチルグリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、ネオペンチルグリコールジ(β−メルカプトブタネート)、1,6−ヘキサンジオールジ(チオグリコレート)、1,6−ヘキサンジオールジ(β−メルカプトプロピオネート)、1,6−ヘキサンジオールジ(β−メルカプトブタネート)、1,8−オクタンジオールジ(チオグリコレート)、1,8−オクタンジオールジ(β−メルカプトプロピオネート)、1,8−オクタンジオールジ(β−メルカプトブタネート)、1,9−ノナンジオールジ(チオグリコレート)、1,9−ノナンジオールジ(β−メルカプトプロピオネート)、1,9−ノナンジオールジ(β−メルカプトブタネート)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジ(チオグリコレート)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジ(β−メルカプトプロピオネート)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジ(β−メルカプトブタネート)、ジエチレングリコールジ(チオグリコレート)、ジエチレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、トリエチレングリコールジ(チオグリコレート)トリエチレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、トリエチレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、ポリエチレングリコールジ(チオグリコレート)、ポリエチレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、ポリエチレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、ジプロピレングリコールジ(チオグリコレート)、ジプロピレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、ジプロピレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、トリプロピレングリコールジ(チオグリコレート)、トリプロピレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、トリプロピレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、ポリプロピレングリコールジ(チオグリコレート)、ポリプロピレングリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、ポリプロピレングリコールジ(β−メルカプトブタネート)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジ(チオグリコレート)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジ(β−メルカプトプロピオネート)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジ(β−メルカプトブタネート)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールエチレンオキサイド付加物のジ(チオグリコレート)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールエチレンオキサイド付加物のジ(β−メルカプトプロピオネート)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールエチレンオキサイド付加物のジ(β−メルカプトブタネート)、水添ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のジ(チオグリコレート)、水添ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のジ(β−メルカプトプロピオネート)、水添ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のジ(β−メルカプトブタネート)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールプロピレンオキサイド付加物のジ(チオグリコレート)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールプロピレンオキサイド付加物のジ(β−メルカプトプロピオネート)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールプロピレンオキサイド付加物の(β−メルカプトブタネート)、水添ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のジ(チオグリコレート)、水添ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のジ(β−メルカプトプロピオネート)、水添ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のジ(β−メルカプトブタネート)、グリセロールトリ(チオグリコレート)、グリセロールトリ(β−メルカプトプロピオネート)、グリセロールトリ(β−メルカプトブタネート)、ジグリセロールテトラ(チオグリコレート)、ジグリセロールテトラ(β−メルカプトプロピオネート)、ジグリセロールテトラ(β−メルカプトブタネート)、トリメチロールプロパントリ(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリ(β−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ(β−メルカプトブタネート 、ジトリメチロールプロパンテトラ(チオグリコレート)、ジトリメチロールプロパンテトラ(β−メルカプトプロピオネート)、ジトリメチロールプロパンテトラ(β−メルカプトブタネート)、ペンタエリスリトールテトラ(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラ(β−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(β−メルカプトブタネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ( チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(β−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(β−メルカプトブタネート)、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリス(β−メルカプトプロピオネート)など挙げることができる。
【0078】
(ポリエン化合物とチオール化合物の配合割合)
前記ポリエン化合物とポリチオール化合物との配合比が、ポリエン化合物の炭素−炭素二重結合とチオール化合物のチオール基とが、モル比で3:1〜1:3となるように配合するのが好ましく、特にモル比で1:1となるように配合することが好ましい。
【0079】
本発明においては、以上のようなエン/チオール系の光硬化性組成物を使用して、塗膜層(B)を形成することができる。該光硬化性組成物には、前記ポリエン化合物、チオール化合物の他、光重合開始剤(光カチオン発生剤)を配合することが好ましい。次に、光カチオン発生剤について説明する。
【0080】
光カチオン発生剤
光カチオン発生剤は、公知の光カチオン発生剤を使用することができる。該光カチオン発生剤としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩またはヨードニウム塩等のオニウム塩を用いることができ、特に、芳香族オニウム塩を用いることが好ましい。その他、フェロセン誘導体等の鉄−アレーン錯体や、アリールシラノール−アルミニウム錯体等も好ましく用いることができる。
【0081】
該光カチオン発生剤の具体例としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−ジフェニル−スルフォニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロフォスフェート、ビス[4−ジフェニル−スルフォニオ)フェニル]スルフィド‐ビス‐ヘキサフルオロアンチモネート、(2、4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe−ヘキサフルオロホスフェート等を挙げることができる。市販品の例としては、(株)ADEKA製の「SP−150」、「SP−170」;チバガイギー社製の「Irgacure261」、「Irgacure264」;ユニオンカーバイド社製の「UVR−6974」、「UVR−6990」;米国ダウケミカル社製の「サイラキュアUVI−6970」、「サイラキュアUVI−6974」、「サイラキュアUVI−6990」;日本曹達製の「CI−2481」、「CI−2624」などを挙げることができる。
【0082】
これらの光カチオン発生剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類などによって異なるが、ポリエン化合物及びチオール化合物の合計量100質量部に対して0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いることが好適である。該光カチオン発生剤は、単独で使用しても良いし、複数を混合して用いても良い。また、プロぺニルエーテル基含有化合物を含む硬化性組成物で説明した光重合開始剤を併用することもできる。
【0083】
(オキセタン化合物を含む光硬化性組成物)
オキセタン化合物は、オキタセン基を有する化合物である。中でも、分子内に2つのオキセタン基を有する化合物が好ましい。具体例としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0084】
以上のオキタセン化合物を含む光硬化性組成物を使用することができるが、この光硬化性組成物には、エン/チオール系の光硬化性組成物で説明した光カチオン発生剤を配合することもできる。光カチオン発生剤の配合量は、オキタセン化合物が十分に重合する有効な量であればよい。通常は、オキタセン化合物100質量部に対して、0.01〜5.0である。
【0085】
光硬化性組成物に配合できるその他の成分
以上のプロぺニルエーテル基含有化合物を含む光硬化性組成物、エン/チオール系の光硬化性組成物、及びオキタセン化合物を含む光硬化性組成物(以上、まとめて単に「光硬化性組成物」とする場合もある)には、上記成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で公知の添加剤を配合することもできる。具体的には、界面活性剤、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェーノール酸化防止剤、フェノール系ラジカル補足剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料等を配合することもできる。また、均一な塗膜層を形成するため、有機溶媒を配合することもできる。これらその他成分の配合量は、通常、モノマーとなる化合物100質量部に対して、5質量部以下である。
【0086】
(塗膜層(B)の形成方法)
本発明において、塗膜層(B)は、光学シート又は光学フィルム(A2)上に形成される。そのため、フォトクロミック積層体(A)を製造する前に、予め、光学シート又は光学フィルム(A2)上に塗膜層(B)を形成してもよい。また、フォトクロミック積層体(A)を形成した後、該フォトクロミック積層体(A)の合成樹脂層(C)を形成する面上に、塗膜層(B)を形成することもできる。以下、光学シート又は光学フィルム(A2)上に、塗膜層(B)を形成する場合の例を説明する。
【0087】
塗膜層(B)を形成する方法は、公知の方法を採用することができる。例えば、光学シート又は光学フィルム(A2)の片面、もしくは両面に、前記光硬化性組成物を、塗布し、光硬化することにより、該光硬化性組成物の硬化体からなる塗膜層(B)を形成することができる。
【0088】
該光硬化性組成物を塗布する方法は、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ディップースピンコート法、ドライラミネート法、フローコート法、バーコーター法などの公知の方法が何ら制限なく用いられる。該光硬化性組成物の硬化は、メタルハライド、高圧水銀ランプ、または無電極ランプ等の光源を用いた、光照射を実施すればよい。光照射を行う雰囲気は、不活性ガス中、または空気中でもよい。さらに、光照射後に、加熱処理などを実施しても構わない。
【0089】
上記方法により形成される該塗膜層(B)の膜厚は、合成樹脂層(C)を構成するレンズ形成用モノマー組成物に対する耐溶解性、さらには合成樹脂層(C)、またはポリウレタン樹脂層(A1)(光学シート又は光学フィルム(A2)の両面に塗膜層(B)を積層した場合)との密着性の観点から、0.1〜20μmが好ましく、より好ましくは0.2〜10μmであり、最も好ましくは0.3〜5μmである。
【0090】
なお、前記の通り、この塗膜層(B)は、予め光学シート又は光学フィルム(A2)の表面に設けることもできるし、フォトクロミック積層体(A)を製造した後、該積層体の表面に設けることもできる。該ポリウレタン樹脂層(A1)と光学シート又は光学フィルム(A2)との間に介在させる場合には、予め、光学シート又は光学フィルムの両面に塗膜層(B)を形成しておくことが好ましい。
【0091】
次に、この塗膜層(B)の上に形成される合成樹脂層(C)について説明する。
【0092】
(合成樹脂層(C))
合成樹脂層(C)は、通常のプラスチックレンズ材料となる熱可塑性樹脂、又はレンズ形成用モノマー組成物を硬化させた熱硬化性樹脂から形成することができる。中でも、塗膜層(B)を形成することの効果がより顕著に発揮されるのは、レンズ形成用モノマー組成物を硬化させた熱硬化性樹脂より合成樹脂層(C)を形成する場合である。レンズ形成用モノマー組成物としては、具体的には、(メタ)アクリレート系モノマー組成物、アリル系モノマー組成物、チオウレタン系モノマー組成物、ウレタン系モノマー組成物、チオエポキシ系モノマー組成物などの熱硬化性樹脂を形成しうるレンズ形成用モノマー組成物を挙げるとができる。
【0093】
(レンズ形成用モノマー組成物)
(メタ)アクリレート系モノマー組成物
(メタ)アクリレートモノマー組成物としては、下記に例示されるような(メタ)アクリレートモノマーを含んでなる組成物であり、さらには他の(メタ)アクリレートモノマー、や他の重合性モノマーを混合しても構わない。具体的な(メタ)アクリレートモノマーを例示すれば、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタンオリゴマーテトラ(メタ)アクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエステルオリゴマーヘキサ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、平均分子量776の2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量475のメチルエーテルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチルメタアクリレート等の少なくとも一つの(メタ)アクリレート基を分子中に有する(メタ)アクリレートモノマーなどを挙げることができる。
【0094】
(アリル系モノマー組成物)
アリル系モノマー組成物としては、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート等のアリル基を有するアリルモノマーを含んでなる組成物が挙げられる。
【0095】
(チオウレタン系モノマー組成物)
チオウレタン系モノマー組成物は、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物の混合物からなる。ポリイソシアネート化合物としては、前記ポリウレタン樹脂(A1)のポリイソシアネート化合物で例示したイソシアネート化合物に加えて、2,5−ジイソシアナートメチル−1,4−ジチアン、2,5−ビス(4−イソシアナート−2−チアブチル)−1, 4−ジチアン、2,5−ビス(3−イソシアナートメチル−4−イソシアナート−2−チアブチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(3−イソシアナート−2−チアプロピル)−1,4−ジチアン、1,3,5 − トリイソシアナートシクロヘキサン、1, 3,5−トリス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアネートメチルチオ)メタン、1,5−ジイソシアネート−2−イソシアネートメチル−3−チアペンタン、1,2,3−トリス(イソシアネートエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(イソシアネートメチルチオ)プロパン、1,1,6,6−テトラキス(イソシアネートメチル)−2,5−ジチアヘキサン、1,1,5,5 −テトラキス(イソシアネートメチル)−2,4−ジチアペンタン、1,2−ビス(イソシアネートメチルチオ)エタン、1,5−ジイソシアネート−3−イソシアネートメチル−2,4−ジチアペンタン、1,5−ジイソシアネート−3−イソシアネートメチル−2,4−ジチアペンタン等のポリイソシアネート類、これらのポリイソシアネート類のビュレット型反応によるニ量体、これらのポリイソシアネート類の環化三量体およびこれらのポリイソシアネート類とアルコールもしくはチオールの付加物等が挙げられる。これら、ポリイソシアネート化合物は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。
【0096】
ポリチオール化合物の具体例としては、1,2−ジメルカプトエタン、1,2−ジメルカプトプロパン、2,2−ジメルカプトプロパン、1,3−ジメルカプトプロパン、1,2,3−トリメルカプトプロパン、1,4−ジメルカプトブタン、1,6−ジメルカプトヘキサン、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メルカプトメチル−1,3−ジメルカプトプロパン、2− メルカプトメチル−1,4−ジメルカプトブタン、2−(2−メルカプトエチルチオ)−1,3−ジメルカプトプロパン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、2,4−ビス(メルカプトメチル)−1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、4,8−ビス(メルカプトメチル)−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ビス(メルカプトメチル)−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ビス(メルカプトメチル)−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、1,2,7−トリメルカプト−4,6−ジチアヘプタン、1,2,9−トリメルカプト−4,6,8−トリチアノナン、1,2,8,9−テトラメルカプト−4,6−ジチアノナン、1,2,10,11−テトラメルカプト−4,6,8−トリチアウンデカン、1,2,12,13−テトラメルカプト− 4,6,8,10−テトラチアトリデカン、1,1,1−トリス(メルカプトメチル)プロパン、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、テトラキス(4−メルカプト−2 −チアブチル)メタン、テトラキス(7−メルカプト−2,5−ジチアヘプチル)メタン、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート) 、1,1−ジメルカプトシクロヘキサン、1,4−ジメルカプトシクロヘキサン、1,3−ジメルカプトシクロヘキサン、1,2−ジメルカプトシクロヘキサン、1,4−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2−メルカプトエチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1−チアン、2,5−ビス(2−メルカプトエチル)−1−チアン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(4−メルカプトフェニル)エーテル、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−メルカプトフェニル)プロパン、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)スルフィド、ビス(4−メルカプトメチルフェ
ニル)エーテル、2,2−ビス(4−メルカプトメチルフェニル)プロパン、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3,4−チオフェンジチオール、1,2 −ジメルカプト−3−プロパノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、グリセリルジチオグリコーレート、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ) エタン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、3−メルカプトメチル−1,5−ジメルカプト−2,4−ジチアペンタン等のポリチオール類を挙げることができる。これらは単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。
【0097】
(ウレタン系モノマー組成物)
ウレタン系モノマー組成物としては、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、及びジアミン硬化剤を含んでなる混合物を好適に用いることができる。
【0098】
ポリイソシアネート化合物としては、前記ポリウレタン樹脂(A1)のポリイソシアネート化合物で例示したイソシアネート化合物を使用できる。
【0099】
ポリオール化合物としては、前記ポリウレタン樹脂(A1)のポリオール化合物で例示したポリオール化合物を使用できる。
【0100】
ジアミン化合物としては、2,4−ジアミノ−3,5−ジエチル−トルエン、2,6−ジアミノ−3,5−ジエチル−トルエンおよびそれらの混合物、4,4’−メチレンビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルメタン、ビス−4−(4−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、ビス−4−(3−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、及び市販品としてLonza Ltd.社製「Lonzacure」シリーズなどの芳香族ジアミン化合物;前記ポリウレタン樹脂(A1)の鎖延長剤で例示したジアミン化合物に加えて、市販品としてHuntsman社製「JEFFAMINE」シリーズなどを挙げることができる。
【0101】
(チオエポキシ系モノマー組成物)
チオエポキシ系モノマー組成物としては、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−3−(β−エピチオプロピルチオメチル)ブタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)ペンタン、1,6−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕エタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−[〔2−(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオエチル〕チオ]エタン等の鎖状有機化合物等;テトラキス(β−エピチオプロピルチオメチル)メタン、1,1,1−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2,2−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,5ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,9−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)−5−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,7−ジチアノナン、1,10−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,6−ビス〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕−3,6,9−トリチアデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の分岐状有機化合物およびこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物等;1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕スルフィド、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオエチルチオメチル)−1,4−ジチアン等の環状脂肪族有機化合物およびこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物;1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフォン、4,4'−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族有機化合物およびこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
以上のようなレンズ形成用モノマー組成物には、必要に応じて、適当量の熱重合開始剤、光重合開始剤などの重合開始剤を添加してもよい。
【0103】
(合成樹脂層(C)の形成方法(フォトクロミックレンズの製造方法))
フォトクロミック積層体(A)の光学シート又は光学フィルムの塗膜層(B)上に、合成樹脂層(C)を形成(積層)する方法としては、以下の方法が挙げられる。具体的には、最表面に塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A)を、プラスチックレンズ製造の際に使用されるガラスモールドや金型の中に設置し、そこに該合成樹脂層(C)を形成するレンズ形成用モノマー組成物を充填する方法である。
【0104】
合成樹脂層(C)として、前述の熱硬化性樹脂を採用する場合には、一般的に使用されているガラスモールドを用い、該ガラスモールド内にレンズ形成用モノマー組成物を充填後に熱硬化(注型重合)することで、フォトクロミックレンズを成型することができる。さらに、熱硬化と併せるか、または単独で光照射によって重合を実施することができる。重合時間は、適宜決定してやればよい。
【0105】
前述のような注型重合を実施するための操作は、以下の方法が挙げられる。例えば、ガラスモールドの一方にレンズ形成用モノマー組成物を充填しておいて、その上に、表面に塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A)を浮かべる。次いで、ガスケットやテープを介して他方のガラスモールドをセットした後、ガラスモールド内にレンズ形成用モノマー組成物を更に注入して重合する方法である。また、ガラスモールドを固定化しているガスケットやテープ、またはその他の手段により該フォトクロミック積層体(A)をガラスモールド内において支持する。次いで、レンズ形成用モノマー組成物を該ガラスモールド内に充填して重合する方法が挙げられる。さらに、ガラスモールドの一方にフォトクロミック積層体(A)を密着させておき、密着させた反対側の塗膜層(B)上に、レンズ形成用モノマー組成物を充填して重合する方法が挙げられる。
【0106】
また、本発明において、合成樹脂層(C)は、前記レンズ形成用モノマー組成物を使用する以外に、熱可塑性樹脂からも構成することができる。合成樹脂として、熱可塑性樹脂を採用する場合には、射出成型法を採用できる。具体的には、塗膜層(B)を最表面に有するフォトクロミック積層体(A)を、金型の片方の内壁に密着させておくか、金型の中間近傍に固定化した後に、熱可塑性樹脂を金型内部に射出することにより、本発明のフォトクロミックレンズを得ることができる。
【0107】
フォトクロミックレンズを製造する際、塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A)の大きさ、及び形状は、必要に応じて適宜決定することができる。即ち、最終的に得られるフォトクロミックレンズの全体に亘る形状のものであってもよいし、或いはレンズの一部を覆うようなものであってもよい。その中でも、フォトクロミック積層体(A)の側面を、前記ガラスモールドや金型の外部にはみ出すような大きさとすることが好ましい。このような大きさとすることにより、ポリウレタン樹脂層(A1)からのフォトクロミック化合物、またはポリウレタン樹脂自体の溶出を抑制できる。
【0108】
以上のような方法により、フォトクロミックレンズを製造することができる。図1、図2に本発明のフォトクロミックレンズの構成例を示した。フォトクロミックレンズ1は、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン樹脂層(A1)2の両面に、光学シート又は光学フィルム(A2)3を有するフォトクロミック積層体(A)4である。そして、この光学シート又は光学フィルム(A2)3の上に、塗膜層(B)5を有し、さらに、この塗膜層(B)5上に、合成樹脂層(C)6を積層してなるものがフォトクロミックレンズ1である(図1)。
【0109】
また、本発明のフォトクロミックレンズ1は、図2に示すように、ポリウレタン樹脂層2と光学シート又は光学フィルム3との間に、塗膜層5を形成することもできる。この塗膜層5を形成することにより、生産性や、フォトクロミック積層体4自体の密着性高めることができる。
【0110】
なお、図1、2には、フォトクロミック積層体4の両表面上に、塗膜層5を有する形態を示したが、一方の面にのみ塗膜層5を有するものであってもよい。
【実施例】
【0111】
以下に例示するいくつかの実施例によって、本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に、本発明を説明するためのものであり、本発明の精神及び範囲は、これら実施例に限定されるものではない。
【0112】
(塗膜層(B)を形成するための成分(光硬化性組成物に使用する成分))
(光硬化性モノマー)
(ポリエン化合物)
M1:ポリエチレングリコールジアリルエーテル(数平均分子量500)。
M2:ポリエチレングリコールジアリルエーテル(数平均分子量800)。
M3:ポリプロピレングリコールジアリルエーテル(数平均分子量3000)。
M4:トリメチロールプロパントリアリルエーテル
M5:ポリエチレングリコールジメタクリレート(数平均分子量550)。
M6:ウレタンオリゴマーヘキサメタアクリレート(分子量1019、新中村化学工業製「U−6HA」)。
M7:トリメチロールプロパントリアクリレート。
M8:1,6−ヘキサンジオールジメタアクリレート。
【0113】
(チオール化合物)
M9:ジペンタエリスリトールヘキサ(β−メルカプトプロピオネート)。
M10:トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリス(β−メルカプトプロピオネート)。
【0114】
(プロぺニルエーテル基含有化合物)
M11:ポリエチレングリコールジプロペニルエーテル(数平均分子量630)。
M12:トリメチロールプロパントリプロペニルエーテル。
M13:2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル
(オキセタン化合物)
M14:ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル。
M15:1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン。
【0115】
(光重合開始剤、光カチオン発生剤)
P1:ベンゾインエチルエーテル。
P2:UVR−6974(ユニオン・カーバイド社製、P−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート及びビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート混合物)。
【0116】
ポリウレタン樹脂層(A1)形成用組成物(フォトクロミック組成物)の調製方法
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量800のポリカーボネートジオール(1,5−ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール)252g、イソホロンジイソシアネート100gを仕込み、窒素雰囲気下、70℃で6時間反応させ、プレポリマーを得た。その後、テトラヒドロフラン(THF)1000mlを加えた後、窒素雰囲気下でイソホロンジアミン19gを滴下しながら加え、滴下終了後25℃で1時間反応させた。
【0117】
次いで、上記溶液に窒素雰囲気下にて、4−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン8gを加え、25℃にて1時間反応させることによりポリウレタン樹脂を得た。
【0118】
上記溶液に、下記に示すフォトクロミック化合物(PC1)18.5gを混合、溶解することで、フォトクロミック組成物を得た。
【0119】
【化2】

【0120】
A2:光学シート又は光学フィルム
・POLYCA;ポリカーボネート製シート(厚み 0.4mm)。
・PET;ポリエチレンテレフタレート製シート(厚み 0.3mm)。
・TAC;トリアセチルセルロース製シート(厚み 0.3mm)。
【0121】
レンズ形成用モノマー組成物、及びそれを用いたフォトクロミックレンズの作製方法
各々作製した、塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A)を、直径65mmの円形に裁断し、ガスケットを有するガラスモールド内(0.00D、レンズ径70mm、肉厚3.0mmに設定)に設置した。このガラスモールド内に、下記に記載するレンズ形成用モノマー組成物を注入し、下記条件により硬化させた。その後、外周を玉摺機にて研磨することにより、直径60mmのフォトクロミックレンズを得た。なお、比較例1〜3は、塗膜層(B)を有していないフォトクロミック積層体(A)を使用した。
【0122】
〔アリル系モノマー組成物、及びそれを用いたフォトクロミックレンズの製造方法〕
レンズ形成用モノマー組成物として、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(重合開始剤)3質量部、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート100質量部を準備した。
【0123】
次いで、前記ガラスモールド内に設置した塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A)の上下に、前記レンズ形成用モノマー組成物を注入し、空気炉中で30〜90℃まで20時間かけて徐々に昇温し、90℃で1時間保持して重合を行った。重合終了後、ガスケットとモールドを取り外したのち、120℃で2時間熱処理を実施した。
【0124】
〔アクリル系モノマー組成物、及びそれを用いたフォトクロミックレンズの製造方法〕
ラジカル重合性単量体であるトリメチロールプロパントリメタクリレート 20質量部、平均分子量522のポリエチレングリコールジアクリレート 40質量部、ウレタンアクリレート(ダイセル化学工業製EBECRYL4858) 40質量部の混合物を準備した。
【0125】
さらに、該ラジカル重合性単量体100質量部に対し、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシネオデカネート1.0質量部を撹拌混合し、レンズ形成用モノマー組成物とした。
【0126】
次いで、前記ガラスモールド内に設置した塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A)の上下に、前記レンズ形成用モノマー組成物を注入し、重合は空気炉を用い、33℃から90℃まで17時間かけて徐々に昇温した後、90℃で2時間保持した。重合終了後、ガスケットとモールドを取り外したのち、オーブンに入れ110℃で3時間加熱した。
【0127】
〔チオウレタン系モノマー組成物、及びそれを用いたフォトクロミックレンズの製造方法〕
レンズ形成用モノマー組成物として、ジシクロヘキシルメタン−4 ,4 ’−ジイソシアネート43.5質量部、イソホロンジイソシアネート43.5質量部、1,2−ビス〔(2−メルカプトエチル)チオ〕−3−メルカプトプロパン63.0質量部、及び重合開始剤としてジブチルチンジラウレート0.1質量部の混合物を準備した。
【0128】
次いで、前記ガラスモールド内に設置した塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体の上下に、前記合成樹脂組成物を注入し、重合は空気炉を用い、35℃から130℃まで12時間かけて徐々に昇温した後、130℃で0.5時間保持した。重合終了後、ガスケットとモールドを取り外したのち、オーブンに入れ130℃で3時間加熱した。
【0129】
〔チオエポキシ系モノマー組成物、及びそれを用いたフォトクロミックレンズの製造方法〕
レンズ形成用モノマー組成物として、ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン95質量部、2−メルカプトエタノール5質量部、及び重合触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド0 . 1 重量部の混合物を準備した。
【0130】
次いで、前記ガラスモールド内に設置した塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体の上下に、前記合成樹脂組成物を注入し、重合は空気炉を用い、20℃から90℃まで20時間かけて徐々に昇温した後、90℃で1時間保持した。重合終了後、ガスケットとモールドを取り外したのち、オーブンに入れ90℃で1時間加熱した。
【0131】
〔ウレタン系モノマー組成物、及びそれを用いたフォトクロミックレンズの製造方法〕
レンズ形成用モノマー組成物として、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールからなる数平均分子量1000のポリエステルポリオール 100質量部と4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物78質量部、及び芳香族ジアミン硬化剤としての2,4−ジアミノ−3,5−ジエチル−トルエン/2,6−ジアミノ−3,5−ジエチル−トルエン17質量部を準備した。
【0132】
まず、上記ポリエステルポリオールと4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物との混合物を、乾燥窒素下で140℃にて10分間加熱し、プレポリマーを生成させた。このプレポリマーを70℃まで冷却し、24時間放置した。ここに、芳香族ジアミン硬化剤を混合し、前記ガラスモールド内に設置した塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A)の上下に注入し、120℃で10時間にわたり硬化させた。重合終了後、ガスケットとモールドを取り外したのち、オーブンに入れ110℃で1時間加熱した。
【0133】
実施例1
(塗膜層(B)の形成)
ポリエチレングリコールジプロペニルエーテル(数平均分子量630、M11)70g、トリメチロールプロパントリプロペニルエーテル(M12)15g、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル(M13)15g、及び光重合開始剤として、UVR−6974(P2)1gを、攪拌混合して塗膜層を形成するための光硬化性組成物を得た。この光硬化性組成物を、厚さ0.4mmのポリカーボネート製シート(光学シート又は光学フィルム(A2):POLYCA)の一方の面に塗布し、フュージョンUVシステムズ社製F3000SQ(Dバルブ)を用い、窒素フロー下において2分間光硬化させることにより、膜厚5μmの塗膜層を有する光学シートを得た。
【0134】
フォトクロミック積層体(A)の作製
ポリウレタン樹脂層(A1)形成用組成物の前記調製方法で得られたフォトクロミック組成物を、PET製フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製ピューレックスフィルム、シリコン塗膜付)に塗布し、50℃で30分乾燥させた。その後、該PET製フィルムを剥離して、厚み約40μmのポリウレタン樹脂層(A1)を得た。次いで、前記方法により塗膜層(B)を形成した2枚のPOLYCAシート(ポリカーボネート製シート)で、得られたポリウレタン樹脂層(A1)を挟み、40℃で24時間静置した後、さらに110℃で60分加熱処理した。そして、目的のフォトクロミック特性を有するフォトクロミック積層体(A:(S1))を得た。得られたフォトクロミック積層体(A:(S1))は、ポリウレタン樹脂層(A1)と接していない面にのみ塗膜層(B)を有していた。この積層体の構成を表1に示した。
【0135】
フォトクロミックレンズの作製
上記のアリル系モノマー組成物を用いて、上記の方法に従いフォトクロミックレンズを作製した。
【0136】
得られたフォトクロミックレンズを評価したところ、フォトクロミック特性としての発色濃度は1.1であり、退色速度は40秒であり、耐久性は98%であった。また、該フォトクロミックレンズの各層間のハガレ、及び色調を目視により評価行ったが、初期、耐候性試験後、煮沸試験1時間後、2時間後、及び3時間後のいずれにおいても不良は見られなかった。なお、これらの評価は以下のようにして行った。
【0137】
フォトクロミック特性
得られたフォトクロミックレンズを試料とし、これに、(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して23℃、積層体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm2、245nm=24μW/cm2で120秒間照射して発色させ、フォトクロミックレンズのフォトクロミック特性を測定した。
【0138】
1)最大吸収波長(λmax):(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディレクターMCPD1000)により求めた発色後の最大吸収波長である。該最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
【0139】
2)発色濃度〔ε(120)−ε(0)〕:前記最大吸収波長における、120秒間照射した後の吸光度ε(120)と最大吸収波長における未照射時の吸光度ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れていると言える。
【0140】
3)退色速度〔t1/2(sec.)〕:120秒間照射後、光の照射をとめたときに、試料の前記最大波長における吸光度が〔ε(120)−ε(0)〕の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
【0141】
4)耐久性(%)=〔(A48/A0)×100〕:光照射による発色の耐久性を評価するために次の劣化促進試験を行った。すなわち、得られた積層体をスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により48時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A0)および試験後の発色濃度(A48)を測定し、〔(A48)/A0〕×100〕の値を残存率(%)とし、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
【0142】
目視評価
下記2点の観点から、目視評価を実施した。
【0143】
〔ハガレ〕
得られたフォトクロミックレンズは、複数の界面を有しており、各層間の密着性評価を目視により実施した。この密着性評価、1)初期、2)前述の劣化促進試験(48時間)後、さらに3)蒸留水による煮沸試験(1時間、2時間、及び3時間)後に実施した。評価基準は、下記の通りである。
0;各層間でハガレが全く見られない。
1;塗膜層と合成樹脂層間の少なくとも一部でハガレが見られる。
2;光学シートとポリウレタン樹脂層間の少なくとも一部でハガレが見られる。
【0144】
〔色調〕
得られたフォトクロミックレンズの色調を、集光機を用いた目視評価により実施した。評価基準は、下記の通りである。
0;白濁や、黄変等の色調不良が見られず、透明性が高い。
1;集光機を当てることにより、わずかに白濁などの色調不良を確認することができるが、実用上問題ないレベル。
2;集光機を当てなくとも、白濁などの色調不良を確認することができる。
【0145】
以上の結果を表2に示した。
【0146】
実施例2〜15
塗膜層(B)の形成
表3に示す光硬化性組成物、及び光学シート(A2)を用いた以外は、実施例1記載の方法と同様にして、光学シート(A2)表面(片面、または両面)に、塗膜層(B)を形成させた。表1の塗膜層の積層面の欄において、片面と記載したものは、光学シートの合成樹脂層が積層される面にのみ塗膜層を設けたものを指す。また、両面と記載したものは、光学シートの両面に塗膜層を設けたものを指す。
【0147】
フォトクロミック積層体(A)の作製
実施例1と同様にしてポリウレタン樹脂層(A1)を作製し、次いで、上記で得た塗膜層(B)を有する光学シートを用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミック積層体(A:(S2)〜(S11))を得た。表2にその結果を示す。
【0148】
フォトクロミックレンズの作製
表1に示す塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A)、及び合成樹脂層(C)を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミックレンズを作製した。また、得られたフォトクロミックレンズの評価結果を表2に示す。
【0149】
なお、各合成樹脂層を得るための硬化条件等に関しては、前述の「レンズ形成用モノマー組成物、及びそれを用いたフォトクロミックレンズの作製方法」に従って実施した。
【0150】
比較例1〜3
フォトクロミック積層体(A)の作製
実施例1と同様にしてポリウレタン樹脂層(A1)を作製し、表1に示す光学シートを用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミック積層体(A:(S12)〜(S14))を得た。得られたフォトクロミック積層体(A:(S12)〜(S14))は、塗膜層(B)を有していない。表3にその結果を示す。
【0151】
フォトクロミックレンズの作製
表1に示すフォトクロミック積層体(A)、及び合成樹脂層(C)を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミックレンズを作製した。また、得られたフォトクロミックレンズの評価結果を表3に示す。
【0152】
なお、各合成樹脂層を得るための硬化条件等に関しては、前述の「レンズ形成用モノマー組成物、及びそれを用いたフォトクロミックレンズの作製方法」に従って実施した。
【0153】
【表1】

【0154】
【表2】

【0155】
【表3】

【0156】
上記実施例1〜15から明らかなように、本発明の塗膜層を有するフォトクロミックレンズは、優れたフォトクロミック特性、密着性を有するフォトクロミックレンズが得られることが分かる。
【0157】
一方、比較例1〜3のように、塗膜層のない光学シートを用いた場合には、フォトクロミック特性には問題がないものの、密着性が不十分であった。
【符号の説明】
【0158】
1 フォトクロミックレンズ
2 フォトクロミック化合物を含むポリウレタン樹脂層(A1)
3 光学シート又は光学フィルム(A2)
4 フォトクロミック積層体(A)
5 塗膜層(B)
6 合成樹脂層(C)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン樹脂層(A1)を有するフォトクロミック積層体(A)と、
少なくとも一方の前記光学シート又は光学フィルム(A2)上に形成される塗膜層(B)と、
前記塗膜層(B)上に形成される合成樹脂層(C)と
を有するフォトクロミックレンズであって、
前記塗膜層(B)が、プロペニルエーテル基含有化合物を含む光硬化性組成物、ポリエン化合物及びチオール化合物とを含むエン/チオール系の光硬化性組成物、並びにオキセタン化合物を含む光硬化性組成物から選ばれる硬化性組成物の硬化体からなることを特徴とするフォトクロミックレンズ。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂層(A1)と前記光学シート又は光学フィルム(A2)との間に、さらに、前記塗膜層(B)を有することを特徴とする請求項1に記載のフォトクロミックレンズ。
【請求項3】
請求項1に記載のフォトクロミックレンズを製造する方法であって、
プロペニルエーテル基含有化合物を含む光硬化性組成物、ポリエン化合物及びチオール化合物を含むエン/チオール系の光硬化性組成物、並びにオキセタン化合物を含む光硬化性組成物から選ばれる硬化性組成物を、光学シート又は光学フィルム(A2)上に塗布し、光硬化させることにより、前記硬化性組成物の硬化体よりなる塗膜層(B)を形成する工程を含むことを特徴とするフォトクロミックレンズの製造方法。
【請求項4】
互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン樹脂層(A1)を有するフォトクロミック積層体(A)の少なくとも一方の該光学シート又は光学フィルム(A2)上に、
プロペニルエーテル基含有化合物を含む光硬化性組成物、ポリエン化合物及びチオール化合物を含むエン/チオール系の光硬化性組成物、並びにオキセタン化合物を含む光硬化性組成物から選ばれる硬化性組成物の硬化体からなる塗膜層(B)を有する積層体。
【請求項5】
請求項4に記載の積層体において、前記光学シート又は光学フィルム(A2)と前記ポリウレタン樹脂層(A1)との間に、さらに、前記塗膜層(B)を有する積層体。

【図1】
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【図2】
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