説明

積層体、成型素子、および光学素子

【課題】不透過性の基体を有し、かつ、形状層表面の凹凸形状に不整合性のない積層体を提供する。
【解決手段】積層体は、基体1と、基体1上に形成された、凹凸形状の表面を有する形状層とを備える。形状層は、エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなり、形状層の表面には、所定の凹凸パターンを有する単位領域が凹凸形状の不整合を生じることなく連続して形成されている。基体1は、エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線に対して不透過性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、成型素子、および光学素子に関する。詳しくは、基体上に形状層を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基体上に凹凸形状を付与する方法として、熱可塑性材料を用いる方法(以下熱転写方式と称する。)、および光硬化性材料を用いる方法(以下光転写方式と称する。)が用いられている(例えば特許文献1、2参照)。熱転写方式では、ガラス転移温度以上まで加熱した状態の基体に対して原盤をプレスし、冷却した後に、原盤を基体から剥離することにより、基体上に凹凸形状を有する積層体を得ることができる。光転写方式では、基体を加熱する必要がなく、基体上に塗布された未硬化の光硬化性材料に対して原盤を押し当て、原盤または基体を通して光照射を行い、光硬化性材料を硬化させることにより、基体上に凹凸形状を有する積層体を得ることができる。
【0003】
光硬化方式は、熱転写方式よりもスループットを向上できるという利点を有しているため、近年特に注目されている。光転写方式では、一般的に金属原盤またはガラス原盤が用いられる。金属原盤の作製技術としては、平坦または回転周期的な原盤を作製する技術が報告されているが、原盤側から光を照射できないため、光硬化性材料の硬化に寄与する波長の光を透過する基体だけが使用可能であり、光を透過しない基体(不透過性の基体)は使用することができない。
【0004】
ガラス原盤では、原盤側から光を照射できるため、光硬化性材料の硬化に寄与する波長の光を透過しない基体を使用して、凹凸形状を有した積層体を得ることが可能である。従来のガラス原盤の作製技術では、数インチサイズの円盤状または板状の大きさが限られた原盤しか作製することができないため、原盤の成形面の面積以上の大きいサイズの積層体を作製する場合には、ステップ&リピート方式が採用される。しかし、ステップ&リピート方式では、各ステップにて転写した転写領域の境界部において凹凸形状の不整合が生じてしまう。かかる境界部の不整合は、積層体の種類によっては、積層体の特性の低下を招くことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−26873号公報
【0006】
【特許文献2】特開2006−216836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、不透過性の基体を有し、かつ、形状層表面の凹凸形状に不整合性のない積層体、成型素子、および光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
基体と、
基体上に形成された、凹凸形状の表面を有する形状層と、
を備え、
形状層は、エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなり、
形状層の表面には、所定の凹凸パターンを有する単位領域が凹凸形状の不整合を生じることなく連続して形成され、
基体は、エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線に対して不透過性を有する積層体である。
【0009】
第2の発明は、
第1の面と、該第1の面とは反対側の第2の面とを有する基体と、
基体の第1の面に形成された第1の形状層と、
基体の第2の面に形成された第2の形状層と
を備え、
第1の形状層は、エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなり、
第1の形状層および第2の形状層のうち少なくとも第2の形状層は、エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線に対して不透過性を有し、
第1の形状層の表面には、所定の凹凸パターンを有する単位領域が凹凸形状の不整合を生じることなく連続して形成される積層体である。
【0010】
本発明において、エネルギー線硬化性樹脂組成物とは、エネルギー線硬化性樹脂組成物を主成分として含む組成物のことをいう。エネルギー線硬化性樹脂組成物以外の配合成分としては、例えば、熱硬化性樹脂、シリコーン樹脂、有機微粒子、無機微粒子、導電性高分子、金属粉、顔料などの種々の材料を用いることがきるが、これらに限定されるものではなく、所望とする積層体の特性に応じて種々の材料を用いることができる。
また、エネルギー線に対して不透過性とは、エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させることが困難となる程度の不透過性を意味する。
【0011】
単位領域は、回転原盤の回転面を1回転することにより形成される転写領域であることが好ましい。回転原盤としては、ロール原盤またはベルト原盤を用いることが好ましいが、凹凸形状が設けられた回転面を有していればよく、これらに限定されるものではない。
【0012】
構造体の配列は、規則配列、不規則配列、およびそれらの組み合わせであることが好ましい。構造体の配列は、1次元配列または2次元配列であることが好ましい。基体の形状としては、2つの主面を有するフィルム状または板状などの形状、3つ以上の主面を有する多面体形状、球面および自由曲面などの曲面を有する曲面形状、平面および球面を有する多面体形状を用いることが好ましい。これらの基体の有する複数の主面のうちの少なくとも1つに形状層を形成することが好ましい。基体が、少なくとも1つの平面または曲面を有し、平面または曲面に形状層が形成されることが好ましい。
【0013】
本発明では、単位領域間において不整合を生じることなく、形状層の凹凸形状を繋げているので、単位領域間の不整合に起因する積層体の特性劣化や形状乱れなどがない。したがって、優れた特性や外観を有する積層体を得ることができる。凹凸形状がレンズやサブ波長構造体のパターンなどである場合には、単位領域間においても優れた光学特性を得ることができる。凹凸形状が所定の模様などが繰り替えされるデザインである場合には、不整合部分のない、模様などのデザインを得ることができる。また、基体として、エネルギー線に対して不透過性を有するものを用いることができるので、基体として様々なものを用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、形状層表面の凹凸形状に不整合性がないので、優れた特性や外観を有する積層体が得られる。また、基体として様々なものを用いることができるので、積層体を種々の成型素子や光学素子などに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る積層体の構成の一例を示す平面図である。図1Bは、図1Aに示した積層体の一部を拡大して表す斜視図である。図1Cは、図1Aに示した積層体の一部を拡大して表す平面図である。図1Dは、図1Cに示した積層体のトラック延在方向の断面図である。
【図2】図2A〜図2Eは、本発明の第1の実施形態に係る積層体に備えられた基体の第1〜第5の例を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施形態に係る転写装置の構成の一例を示す概略図である。
【図4】図4は、ロール原盤の構成の一例を示す斜視図である。図4Bは、図4Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す平面図である。
【図5】図5は、ロール原盤露光装置の構成の一例を示す概略図である。
【図6】図6A〜図6Dは、本発明の第1の実施形態に係る積層体の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図7】図7A〜図7Eは、本発明の第1の実施形態に係る積層体の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図8】図8は、本発明の第2の実施形態に係る転写装置の構成の一例を示す概略図である。
【図9】図9は、本発明の第3の実施形態に係る転写装置の構成の一例を示す概略図である。
【図10】図10は、本発明の第4の実施形態に係る積層体の構成の一例を示す平面図である。
【図11】図11Aは、本発明の第5の実施形態に係る積層体の構成の一例を示す断面図である。図11Bは、図11Aに示した積層体の一部を拡大して表す平面図である。図11Cは、図11Bに示した積層体の断面図である。
【図12】図12は、本発明の第6の実施形態に係る積層体の構成の一例示す斜視図である。
【図13】図13A〜図13Eは、本発明の第7の実施形態に係る積層体に備えられた基体の第1〜第5の例を示す断面図である。
【図14】図14A、図14Bは、本発明の第8の実施形態に係る積層体に備えられた基体の第1、第2の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(基体の一主面に複数の構造体が2次元配列された積層体の例)
2.第2の実施形態(積層体をステージにより搬送する転写装置の例)
3.第3の実施形態(円環状のベルト原盤を備えた転写装置の例)
4.第4の実施形態(基体の一主面に複数の構造体が蛇行配列された積層体の例)
5.第5の実施形態(基体の一主面に複数の構造体がランダム配列させた積層体の例)
6.第6の実施形態(基体の一主面に複数の構造体が1次元配列させた積層体の例)
7.第7の実施形態(基体の両主面に複数の構造体が2次元配列させた例)
8.第8の実施形態(不透過性を有する複数の構造体が2次元配列された積層体の例)
【0017】
<1.第1の実施形態>
[積層体の構成]
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る積層体の構成の一例を示す断面図である。図1Bは、図1Aに示した積層体の一部を拡大して表す斜視図である。図1Cは、図1Aに示した積層体の一部を拡大して表す平面図である。図1Dは、図1Cに示した積層体のトラック延在方向の断面図である。積層体は、第1の主面および第2の主面を有する基体1と、これらの主面の一方に形成された、凹凸形状を有する形状層2とを備える。以下では、形状層2が形成される第1の面を表面と称し、それとは反対側の第2の面を裏面と称する。
【0018】
積層体は、シボ表面加工体、デザイン体、機械素子および医療素子などの成型素子、反射防止素子、偏光素子、周期光学素子、回折素子、結像素子および導波素子などの光学素子に対して適用して好適なものである。具体的には、積層体は、NDフィルタ、シャープカットフィルタおよび干渉フィルタなどの各種光量調整フィルタ、偏光板、携帯電話および自動車のインストルメントパネルの前面板、携帯電話などのシボ加工、樹脂成形品、ガラス成形品に適用して好適なものである。
【0019】
積層体は、例えば、帯状の形状を有し、ロール状に巻回されて、いわゆる原反とされる。積層体は、可撓性を有していることが好ましい。これにより、帯状の積層体をロール状に巻回して原反とすることができ、搬送性や取り扱い性などが向上するからである。
【0020】
図1Aに示すように、積層体は、例えば、少なくとも1周期以上の転写領域(単位領域)TEを有している。ここで、1周期の転写領域TEは、後述するロール原盤を1回転することにより転写される領域である。すなわち、1周期の転写領域TEの長さは、ロール原盤の周面の長さに相当する。隣接する2つの転写領域TEの境界部において、形状層2の凹凸形状に不整合性が存在しなく、2つの転写領域TEがシームレスに接続されていることが好ましい。これにより、優れた特性や外観を有する積層体が得られるからである。ここで、不整合性とは、構造体21による凹凸形状等の物理的な構成が不連続であることを意味する。不整合性の具体例としては、例えば、転写領域TEが有する所定の凹凸パターンの周期性の乱れ、または隣接する単位領域間の重なり、隙間、もしくは未転写部などが挙げられる。
【0021】
(基体)
基体1の材料は特に限定はされものではなく用途によって適宜選択可能であり、例えば石英、メチルメタクリレート(共)重合体、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマーなどのプラスチック、ガラス、金属、セラミックス、磁性体、半導体を用いることができる。基体2の形状としては、例えば、シート状、プレート状、ブロック状を挙げることができるが、特にこれらの形状に限定されるものではない。ここで、シートにはフィルムが含まれるものと定義する。基体1は、全体として帯状の形状を有し、基体1の長手方向に向かって、単位領域としての転写領域TEが連続して形成されていることが好ましい。基体1の表面および裏面の形状としては、例えば平面および曲面のいずれも用いることができ、表面および裏面をいずれも平面または曲面とすることも、表面および裏面のうち一方を平面とし、他方を曲面とすることも可能である。
【0022】
基体1は、形状層2を形成するためのエネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化するためのエネルギー線に対して不透過性を有している。本明細書中にて、エネルギー線とは、形状層2を形成するためのエネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化するためエネルギー線を示すものとする。基体1の表面に対して、例えば、印刷、塗布、真空成膜などにより装飾層または機能層を形成するようにしてもよい。
【0023】
基体2は、単層構造または積層構造を有している。ここで、積層構造は、2以上の層を積層してなる積層構造であり、積層構造中の少なくとも1層は、エネルギー線に対して不透過性を有する不透過層である。積層体を形成する方法としては、例えば、融着や表面処理などにより層間を直接的に貼合する方法、接着層や粘着層などの貼合層を介して層間を貼合する方法が挙げられるが、特に限定されるものではない。貼合層が、エネルギー線を吸収する顔料などの材料を含むようにしてもよい。また、基体2を積層構造とする場合、エネルギー線に対して不透過性を有する不透過層と、エネルギー線に対して透過性を有する透過層とを組み合わせるようにしてもよい。また、基体が2以上の不透過層を備える場合には、それらが互いに異なる吸収特性を有していてもよい。
【0024】
透過層の材料としては、例えば、アクリル樹脂コーティング材等の透明な有機膜や、透明な金属膜、無機膜、金属化合物膜またはそれらの積層体を用いることができるが、特に限定されるものではない。不透過層の材料としては、例えば、顔料を含んだアクリル樹脂コーティング材等の有機膜や、金属膜、金属化合物膜またはそれらの積層体を用いることができるが、特に限定されるものではない。顔料としては、例えば、カーボンブラックなどの光吸収性を有する材料を用いることができる。
【0025】
図2A〜図2Eは、基体の第1〜第5の例を示す断面図である。
【0026】
(第1の例)
図2Aに示すように、基体1は、単層の構造を有し、基体全体がエネルギー線に対して不透過性を有する不透過層である。
【0027】
(第2の例)
図2Bに示すように、基体1は、2層構造を有し、エネルギー線に対して不透過性を有する不透過層11aと、エネルギー線に対して透過性を有する透過層11bとを備える。不透過層11aが裏面側に配置され、透過層11bが表面側に配置される。
【0028】
(第3の例)
図2Cに示すように、基体1は、2層構造を有し、エネルギー線に対して不透過性を有する不透過層11aと、エネルギー線に対して透過性を有する透過層11bとを備える。不透過層11aが表面側に配置され、透過層11bが裏面側に配置される。
【0029】
(第4の例)
図2Dに示すように、基体1は、3層構造を有し、エネルギー線に対して透過性を有する透過層11bと、この透過層11bの両主面に形成された、エネルギー線に対して不透過性を有する不透過層11a、11aとを備える。一方の不透過層11aが裏面側に配置され、他方の不透過層11aが表面側に配置される。
【0030】
(第5の例)
図2Eに示すように、基体1は、3層構造を有し、エネルギー線に対して不透過性を有する不透過層11aと、この不透過層11aの両主面に形成された、エネルギー線に対して透過性を有する透過層11b、11bとを備える。一方の透過層11bが裏面側に配置され、他方の透過層11bが表面側に配置される。
【0031】
(形状層)
形状層2は、所定の凹凸パターンを有する転写領域TEが連続して形成された表面を有する。形状層2は、例えば、複数の構造体21が2次元配列されてなる層であり、必要に応じて複数の構造体21と基体1との間に基底層22を備えるようにしてもよい。基底層22は、構造体3の底面側に構造体3と一体成形された層であり、構造体3と同様のエネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる。基底層22の厚さは、特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜選択することができる。複数の構造体21が、例えば、基体2の表面において複数列のトラックTをなすように配列されている。複数例のトラックをなすように配列された複数の構造体21が、例えば、四方格子状または六方格子状などの規則的な所定の配置パターンをなすようにしてもよい。構造体21の高さが基体1の表面において規則的または不規則的に変化するようにしてもよい。
【0032】
構造体21は、基体1の表面に対して凸状または凹状の形状を有し、基体1の表面に凸状および凹状の構造体21が両方存在していてもよい。構造体21の具体的な形状としては、例えば、錐体状、柱状、針状、半球状、半楕円球状、多角形状などが挙げられるが、これらの形状に限定されるものではなく、他の形状を採用するようにしてもよい。錐体状としては、例えば、頂部が尖った錐体形状、頂部が平坦な錐体形状、頂部に凸状または凹状の曲面を有する錐体形状が挙げられるが、これらの形状に限定されるものではない。また、錐体状の錐面を凹状または凸状に湾曲させるようにしてもよい。後述するロール原盤露光装置(図5参照)を用いてロール原盤を作製する場合には、構造体21の形状として、頂部に凸状の曲面を有する楕円錐形状、または頂部が平坦な楕円錐台形状を採用し、それらの底面を形成する楕円形の長軸方向をトラックの延在方向と一致させることが好ましい。
【0033】
構造体3のピッチは、積層体の種類によって適宜選択される。例えば、積層体が、光の反射防止を目的とするサブ波長構造体などの光学素子である場合には、構造体3は、反射の低減を目的とする光の波長帯域以下の短い配置ピッチ、例えば可視光の波長と同程度の配置ピッチで周期的に2次元配置される。反射の低減を目的とする光の波長帯域は、例えば、紫外光の波長帯域、可視光の波長帯域または赤外光の波長帯域である。ここで、紫外光の波長帯域とは10nm〜400nmの波長帯域、可視光の波長帯域とは400nm〜830nmの波長帯域、赤外光の波長帯域とは830nm〜1mmの波長帯域をいう。
【0034】
形状層2は、エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化することにより形成される。形状層2は、基体1上に塗布されたエネルギー線硬化性樹脂組成物を、基体1とは反対の側から重合などの硬化反応を進行させることにより形成されていることが好ましい。これにより、基体1としてエネルギー線に対して不透過性を有するものを用いることができるからである。転写領域TE間は、エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化度に不整合を生じることなく繋がっていることが好ましい。エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化度の不整合は、例えば、重合度の差である。
【0035】
エネルギー線硬化性樹脂組成物は、エネルギー線を照射することによって硬化させることができる樹脂組成物である。エネルギー線とは、電子線、紫外線、赤外線、レーザー光線、可視光線、電離放射線(X線、α線、β線、γ線など)、マイクロ波、高周波などのラジカル、カチオン、アニオンなどの重合反応の引き金と成りうるエネルギー線を示す。エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、他の樹脂と混合して用いるようにしてもよく、例えば熱硬化性樹脂などの他の硬化性樹脂と混合して用いてもよい。また、エネルギー線硬化性樹脂組成物は、有機無機ハイブリッド材料であってもよい。また、2種以上のエネルギー線硬化性樹脂組成物を混合して用いるようにしてもよい。エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、紫外線により硬化する紫外線硬化樹脂を用いることが好ましい。
【0036】
紫外線硬化樹脂は、例えば、単官能モノマー、二官能モノマー、多官能モノマー、開始剤などからなり、具体的には、以下に示す材料を単独または、複数混合したものである。
単官能モノマーとしては、例えば、カルボン酸類(アクリル酸)、ヒドロキシ類(2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート)、アルキル、脂環類(イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート)、その他機能性モノマー(2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレンクリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−(パーフルオロオクチル)エチル アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−パーフルオロオクチルー2−ヒドロキシプロピル アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル アクリレート、2−(パーフルオロー3−メチルブチル)エチル アクリレート)、2,4,6−トリブロモフェノールアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノールメタクリレート、2−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エチルアクリレート)、2−エチルヘキシルアクリレートなどを挙げることができる。
【0037】
二官能モノマーとしては、例えば、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリメチロールプロパン ジアリルエーテル、ウレタンアクリレートなどを挙げることができる。
【0038】
多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどを挙げることができる。
【0039】
開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどを挙げることができる。
【0040】
また、エネルギー線硬化性樹脂組成物が、必要に応じてフィラー、機能性添加剤、溶剤、無機材料、顔料、帯電防止剤、増感色素などを含んでいてもよい。フィラーとしては、例えば、無機微粒子および有機微粒子のいずれも用いることができる。無機微粒子としては、例えば、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Al23などの金属酸化物微粒子を挙げることができる。機能性添加剤としては、例えば、レベリング剤、表面調整剤、吸収剤、消泡剤などを挙げることができる。
【0041】
[転写装置の構成]
図3は、本発明の第1の実施形態に係る転写装置の構成の一例を示す概略図である。この転写装置は、ロール原盤101と、基体供給ロール111と、巻き取りロール112と、ガイドロール113、114と、ニップロール115、剥離ロール116と、塗布装置117と、光源110とを備える。
【0042】
基体供給ロール111には、シート状などの基体1がロール状に巻かれ、ガイドロール113を介して基体1を連続的に送出できるように配置されている。巻き取りロール112は、この転写装置により凹凸形状が転写された形状層2を有する積層体を巻き取りできるように配置されている。ガイドロール113、114は、帯状の基体1および帯状の積層体を搬送できるように、この転写置内の搬送路に配置されている。ニップロール115は、基体供給ロール111から送出され、エネルギー線硬化性樹脂組成物が塗布された基体1を、ロール原盤101とニップできるように配置されている。ロール原盤110は、形状層2を形成するための転写面を有し、その内部には1個または複数個のエネルギー線源110を備える。ロール原盤110の詳細について後述する。剥離ロール116は、エネルギー線硬化性樹脂組成物118を硬化することにより得られた形状層2を、ロール原盤110の転写面から剥離可能に配置されている。
【0043】
基体供給ロール111、巻き取りロール112、ガイドロール113、114、ニップロール115、および剥離ロール116の材質は特に限定されるものではなく、所望とするロール特性に応じてステンレスなどの金属、ゴム、シリコーンなどを適宜選択して用いることができる。塗布装置117としては、例えば、コーターなどの塗布手段を備える装置を用いることができる。コーターとしては、例えば、塗布するエネルギー線硬化性樹脂組成物の物性などを考慮して、グラビア、ワイヤバー、およびダイなどのコーターを適宜使用することができる。
【0044】
[ロール原盤の構成]
図4Aは、ロール原盤の構成の一例を示す斜視図である。図4Bは、図4Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す平面図である。ロール原盤101は、例えば、円筒状の形状を有する原盤であり、その表面に形成された転写面Spと、それとは反対の内側に形成された内周面である裏面Siとを有する。ロール原盤101の内部には、例えば、裏面Siにより形成される円柱状の空洞部が形成されており、この空洞部に1個または複数個のエネルギー線源110が備えられる。転写面Spには、例えば、凹状または凸状の複数の構造体102が形成され、これらの構造体102の形状を基体1上に塗布されたエネルギー線硬化性樹脂組成物に対して転写することにより、積層体の形状層2が形成される。すなわち、転写面Spには、積層体の形状層2の有する凹凸形状を反転したパターンが形成されている。
【0045】
ロール原盤101は、エネルギー線源110から放射されたエネルギー線に対して透過性を有し、エネルギー線源110から放射されて裏面Siに入射したエネルギー線を転写面Spから放出可能に構成されている。この転写面Spから放出されたエネルギー線により、基体1上に塗布されたエネルギー線硬化性樹脂組成物118が硬化される。ロール原盤101の材料は、エネルギー線に対して透過性を有するものであればよく特に限定されるものではない。紫外線に対して透過性を有する材料としては、ガラス、石英、透明樹脂、有機無機ハイブリッド材料などを用いることが好ましい。透明樹脂としては、例えば、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)などが挙げられる。有機無機ハイブリッド材料としては、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などが挙げられる。ロール原盤101の転写面Spおよび裏面Siの少なくとも一方に、透明性を有する金属膜、金属化合物膜または有機膜を形成するようにしてもよい。
【0046】
1個または複数個のエネルギー線源110は、基体1上に塗布されたエネルギー線硬化性樹脂組成物118に向けてエネルギー線を照射可能にロール原盤101の空洞部内に支持されている。ロール原盤101が複数個のエネルギー線源110を備える場合には、これらのエネルギー線源110は、1列または2列以上の列をなすように配置されることが好ましい。エネルギー線源としては、電子線、紫外線、赤外線、レーザー光線、可視光線、電離放射線(X線、α線、β線、γ線など)、マイクロ波、または高周波などエネルギー線を放出可能なものであればよく、特に限定されるものではない。エネルギー線源の形態としては、例えば、点状光源、線状光源を用いることができるが、特に限定されるものではなく、点状光源と線状光源とを組み合わせて用いるようにしてもよい。エネルギー線源として点状光源を用いる場合には、複数の点状光源を直線状に配列するなどして線状光源を構成することが好ましい。線状光源は、ロール原盤101の回転軸と平行に配置することが好ましい。紫外線を放出するエネルギー線源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ショートアーク放電ランプ、紫外線発光ダイオード、半導体レーザー、蛍光灯、有機エレクトロルミネッセンス、無機エレクトロルミネッセンス、発光ダイオード、光ファイバなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。また、ロール原盤101の内部にスリットをさらに設け、このスリットを介してエネルギー線源110から放射されたエネルギー線がエネルギー線硬化性樹脂組成物118に対して照射されるようにしてもよい。このとき、エネルギー線硬化性樹脂組成物118はエネルギー線を吸収することにより発生する熱によって硬化させても良い。
【0047】
[ロール原盤露光装置の構成]
図5は、ロール原盤を作製するためのロール原盤露光装置の構成の一例を示す概略図である。このロール原盤露光装置は、光学ディスク記録装置をベースとして構成されている。
【0048】
レーザー光源21は、記録媒体としてのロール原盤101の表面に着膜されたレジストを露光するための光源であり、例えば波長λ=266nmの記録用のレーザー光104を発振するものである。レーザー光源21から出射されたレーザー光104は、平行ビームのまま直進し、電気光学素子(EOM:Electro Optical Modulator)22へ入射する。電気光学素子22を透過したレーザー光104は、ミラー23で反射され、変調光学系25に導かれる。
【0049】
ミラー23は、偏光ビームスプリッタで構成されており、一方の偏光成分を反射し他方の偏光成分を透過する機能をもつ。ミラー23を透過した偏光成分はフォトダイオード24で受光され、その受光信号に基づいて電気光学素子22を制御してレーザー光104の位相変調を行う。
【0050】
変調光学系25において、レーザー光104は、集光レンズ26により、ガラス(SiO2)などからなる音響光学素子(AOM:Acoust-Optic Modulator)27に集光される。レーザー光104は、音響光学素子27により強度変調され発散した後、レンズ28によって平行ビーム化される。変調光学系25から出射されたレーザー光104は、ミラー31によって反射され、移動光学テーブル32上に水平かつ平行に導かれる。
【0051】
移動光学テーブル32は、ビームエキスパンダ33、および対物レンズ34を備えている。移動光学テーブル32に導かれたレーザー光104は、ビームエキスパンダ33により所望のビーム形状に整形された後、対物レンズ34を介して、ロール原盤101上のレジスト層へ照射される。ロール原盤101は、スピンドルモータ35に接続されたターンテーブル36の上に載置されている。そして、ロール原盤101を回転させるとともに、レーザー光104をロール原盤101の高さ方向に移動させながら、レジスト層へレーザー光104を間欠的に照射することにより、レジスト層の露光工程が行われる。形成された潜像は、円周方向に長軸を有する略楕円形になる。レーザー光104の移動は、移動光学テーブル32の矢印R方向への移動によって行われる。
【0052】
露光装置は、例えば、図1Cに示した六方格子または準六方格子などの2次元パターンに対応する潜像をレジスト層に形成するための制御機構37を備えている。制御機構37は、フォマッター29とドライバ30とを備える。フォマッター29は、極性反転部を備え、この極性反転部が、レジスト層に対するレーザー光104の照射タイミングを制御する。ドライバ30は、極性反転部の出力を受けて、音響光学素子27を制御する。
【0053】
このロール原盤露光装置では、2次元パターンが空間的にリンクするように1トラック毎に極性反転フォマッター信号と記録装置の回転コントロラーを同期させ信号を発生し、音響光学素子27により強度変調している。角速度一定(CAV)で適切な回転数と適切な変調周波数と適切な送りピッチでパターニングすることにより、六方格子または準六方格子パターンを記録することができる。例えば、円周方向の周期を315nm、円周方向に対して約60度方向(約−60度方向)の周期を300nmにするには、送りピッチを251nmにすればよい(ピタゴラスの法則)。極性反転フォマッター信号の周波数はロールの回転数(例えば1800rpm、900rpm、450rpm、225rpm)により変化させる。例えば、ロールの回転数1800rpm、900rpm、450rpm、225rpmそれぞれに対向する極性反転フォマッター信号の周波数は、37.70MHz、18.85MHz、9.34MHz、4、71MHzとなる。所望の記録領域に空間周波数(円周315nm周期、円周方向約60度方向(約−60度方向)300nm周期)が一様な準六方格子パターンは、遠紫外線レーザー光を移動光学テーブル32上のビームエキスパンダ(BEX)33により5倍のビーム径に拡大し、開口数(NA)0.9の対物レンズ34を介してロール原盤101上のレジスト層に照射し、微細な潜像を形成することにより得られる。
【0054】
[積層体の製造方法]
図6A〜図7Eは、本発明の第1の実施形態に係る積層体の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【0055】
(レジスト成膜工程)
まず、図6Aに示すように、円筒状のロール原盤101を準備する。次に、図6Bに示すように、ロール原盤101の表面にレジスト層103を形成する。レジスト層103の材料としては、例えば、有機系レジスト、および無機系レジストのいずれを用いてもよい。有機系レジストとしては、例えば、ノボラック系レジスト、化学増幅型レジストなどを用いることができる。また、無機系レジストとしては、例えば、1種または2種以上の遷移金属からなる金属化合物を用いることができる。
【0056】
(露光工程)
次に、図6Cに示すように、ロール原盤101の表面に形成されたレジスト層103に、レーザー光(露光ビーム)104を照射する。具体的には、図5に示したロール原盤露光装置のターンテーブル36上に載置し、ロール原盤101を回転させると共に、レーザー光(露光ビーム)104をレジスト層103に照射する。このとき、レーザー光104をロール原盤101の高さ方向(円柱状または円筒状のロール原盤101の中心軸に平行な方向)に移動させながら、レーザー光104を間欠的に照射することで、レジスト層103を全面にわたって露光する。これにより、レーザー光104の軌跡に応じた潜像105が、可視光波長と同程度のピッチでレジスト層103の全面にわたって形成される。
【0057】
潜像105は、例えば、原盤表面において複数列のトラックをなすように配置されるとともに、六方格子パターンまたは準六方格子パターンを形成する。潜像105は、例えば、トラックの延在方向に長軸方向を有する楕円形状である。
【0058】
(現像工程)
次に、ロール原盤101を回転させながら、レジスト層103上に現像液を滴下して、図6Dに示すように、レジスト層103を現像処理する。図示するように、レジスト層103をポジ型のレジストにより形成した場合には、レーザー光104で露光した露光部は、非露光部と比較して現像液に対する溶解速度が増すので、潜像(露光部)105に応じたパターンがレジスト層103に形成される。
【0059】
(エッチング工程)
次に、ロール原盤101の上に形成されたレジスト層103のパターン(レジストパターン)をマスクとして、ロール原盤101の表面をエッチング処理する。これにより、図7Aに示すように、トラックの延在方向に長軸方向をもつ楕円錐形状または楕円錐台形状の凹部、すなわち構造体102を得ることができる。エッチングとしては、例えばドライエッチングやウエットエッチングを用いることができる。
【0060】
(線源配置工程)
次に、図7Bに示すように、ロール原盤101内の収容空間(空洞部)に、1または複数のエネルギー線源110を配置する。エネルギー線源110は、ロール原盤101の幅方向Dwまたは回転軸lの軸方向と平行に配置することが好ましい。
【0061】
(転写工程)
次に、必要に応じて、エネルギー線硬化性樹脂組成物118が塗布される基体1の表面に対して、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、UV処理、オゾン処理、ブラスト処理などの表面処理を施す。次に、図7Cに示すように、長尺の基体1またはロール原盤101上にエネルギー線硬化性樹脂組成物118を塗布または印刷する。塗布方法は特に限定されるものではないが、例えば、基体上または原盤上へのポッティング、スピンコート法、グラビアコート法、ダイコート法、バーコート法などを用いることができる。印刷方法としては、例えば、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、凹版印刷法、ゴム版印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。次に、必要に応じて、溶剤除去やプリベークなどの加熱処理を行う。
【0062】
次に、図7Dに示すように、ロール原盤101を回転させながら、その転写面Spをエネルギー線硬化性樹脂組成物118に密着させるとともに、ロール原盤101内のエネルギー線源110から出射されたエネルギー線を、ロール原盤101の転写面Spの側からエネルギー線硬化性樹脂組成物118に対して照射する。これにより、エネルギー線硬化性樹脂組成物118が硬化し、形状層2が形成される。具体的には、エネルギー線硬化性樹脂組成物118の硬化反応が、ロール原盤101の転写面Sp側から基体1の表面側に向けて順次進行し、塗布または印刷されたエネルギー線硬化性樹脂組成物118の全体が硬化することで、形状層2が形成される。基底層22の有無、または基底層22の厚さは、例えば、基体1の表面に対するロール原盤101の圧力を調整することにより選択可能である。次に、基体1上に形成された形状層2をロール原盤101の転写面Spから剥離する。これにより、図7Eに示すように、基体1の表面に形状層2が形成された積層体が得られる。この転写工程では、上述のようにして、帯状を有する基体1の長手方向をロール原盤101の回転進行方向として凹凸形状が転写される。
【0063】
ここで、図3に示す転写装置を用いた転写工程について具体的に説明する。
まず、基体供給ロール111から長尺の基体1を送出し、送出された基体1は、塗布装置117の下を通過する。次に、塗布装置117の下を通過する基体1上に、塗布装置117によりエネルギー線硬化性樹脂組成物118を塗布する。次に、エネルギー線硬化性樹脂組成物118が塗布された基体1をガイドロール113を経てロール原盤101に向けて搬送する。
【0064】
次に、基体1とエネルギー線硬化性樹脂組成物118との間に気泡が入らないように、搬入された基体1をロール原盤101とニップロール115とにより挟み合わる。その後、エネルギー線硬化性樹脂組成物118をロール原盤101の転写面Spに密着させながら、基体1をロール原盤101の転写面Spに沿わせて搬送するとともに、1または複数のエネルギー線源110から放射されたエネルギー線を、ロール原盤101の転写面Spを介してエネルギー線硬化性樹脂組成物118に対して照射する。これにより、エネルギー線硬化性樹脂組成物118が硬化し、形状層2が形成さる。次に、剥離ロール116により、ロール原盤101の転写面Spから形状層2が剥離されて、長尺の積層体が得られる。次に、得られた積層体を、ガイドロール114を介して巻き取り112に向けて搬送し、長尺の積層体を巻き取りロール112により巻き取る。これにより、長尺の積層体が巻回された原反が得られる。
【0065】
<2.第2の実施形態>
図8は、本発明の第2の実施形態に係る転写装置の構成の一例を示す概略図である。この転写装置は、ロール原盤101と、塗布装置117と、搬送ステージ121とを備える。第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の箇所には同一の符号を付して説明を省略する。搬送ステージ121は、この搬送ステージ121上に載置された基体1を矢印aの方向に向けて搬送可能に構成されている。
【0066】
次に、上述の構成を有する転写装置の動作の一例について説明する。
まず、塗布装置117の下を通過する基体1上に、塗布装置117によりエネルギー線硬化性樹脂組成物118を塗布する。次に、エネルギー線硬化性樹脂組成物118が塗布された基体1をロール原盤101に向けて搬送する。次に、エネルギー線硬化性樹脂組成物118をロール原盤101の転写面Spに密着させながら搬送するとともに、ロール原盤101内に設けられた1または複数のエネルギー線源110から放射されたエネルギー線を、ロール原盤101の転写面Spを介してエネルギー線硬化性樹脂組成物118に対して照射する。これにより、エネルギー線硬化性樹脂組成物118が硬化し、形状層2が形成さる。次に、搬送ステージを矢印aの方向に搬送することにより、ロール原盤101の転写面Spから形状層2を剥離する。これにより、長尺の積層体が得られる。次に、必要に応じて、得られた積層体を所定の大きさまたは形状に裁断する。以上により、目的とする積層体が得られる。
【0067】
<3.第3の実施形態>
図9は、本発明の第3の実施形態に係る転写装置の構成の一例を示す概略図である。この転写装置は、ロール131、132、134、135と、ベルト原盤であるエンボスベルト133と、平坦ベルト136と、1個または複数個のエネルギー線源110と、塗布装置117とを備える。第3の実施形態において、第1の実施形態と同一の箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
エンボスベルト133は、ベルト原盤の一例であり、環状の形状を有し、その外周面には複数の構造体102が、例えば2次元配列されている。エンボスベルト133は、エネルギー線に対して透過性を有している。平坦ベルト136は、環状の形状を有し、その外周面は平坦面とされている。エンボスベルト133と平坦ベルト136との間には、基体2の厚さ程度の間隙が形成され、これらのベルトの間を、エネルギー線硬化性樹脂組成物118が塗布された基体1が走行可能となっている。
【0069】
ロール131とロール132とは離間して配置され、これらのロール131とロール132とにより、エンボスベルト133がその内周面により支持されて、エンボスベルト133が細長い長円形状などに形状保持されている。エンボスベルト133の内側に配置されたロール131とロール132とを回転駆動させることにより、エンボスベルト133が回転走行されるようになっている。
【0070】
ロール134およびロール135はそれぞれ、ロール131およびロール132に対向して配置されている。これらのロール134とロール135とにより、平坦ベルト136がその内周面により支持されて、平坦ベルト136が細長い長円形状などに形状保持されている。平坦ベルト136の内側に配置されたロール134とロール135とを回転駆動させることにより、平坦ベルト136が回転走行されるようになっている。
【0071】
エンボスベルト133の内側には、1または複数のエネルギー線源110が配置されている。1または複数のエネルギー線源110は、エンボスベルト133と平坦ベルト136との間を走行する基体1に対して、エネルギー線を照射可能に保持されている。線状光源などのエネルギー線源110は、エンボスベルト133の幅方向と平行に配置することが好ましい。エネルギー線源110の配置位置はエンボスベルト133の内周面により形成される空間内であればよく特に限定されるものではない。例えば、ロール131およびロール132の少なくとも一方の内部に配置するようにしてもよい。この場合、ロール131およびロール132をエネルギー線に対して透過性を有する材料により形成することが好ましい。
【0072】
次に、上述の構成を有する転写装置の動作の一例について説明する。
まず、塗布装置117の下を通過する基体1上に、塗布装置117によりエネルギー線硬化性樹脂組成物118を塗布する。次に、回転するエンボスベルト133と平坦ベルト136との間の間隙に、ロール131、134の側からエネルギー線硬化性樹脂組成物118が塗布された基材11を搬入する。これにより、エンボスベルト133の転写面とエネルギー線硬化性樹脂組成物118とが密着する。次に、この密着状態を維持しながら、エネルギー線源110から放射されたエネルギー線を、エンボスベルト133を介してエネルギー線硬化性樹脂組成物118に対して照射する。これにより、エネルギー線硬化性樹脂組成物118が硬化され、基体1上に形状層2が形成される。次に、エンボスベルト133を形状層2から剥離する。これにより、目的とする積層体が得られる。
【0073】
<4.第4の実施形態>
図10Aは、本発明の第4の実施形態に係る積層体の構成の一例を示す平面図である。図10Bは、図10Aに示した積層体の一部を拡大して表す平面図である。第4の実施形態に係る積層体は、構造体3を蛇行するトラック(以下ウォブルトラックと称する。)上に配列している点において、第1の実施形態に係る積層体とは異なっている。基体2上における各トラックのウォブルは、同期していることが好ましい。すなわち、ウォブルは、シンクロナイズドウォブルであることが好ましい。このようにウォブルを同期させることで、六方格子または準六方格子などの単位格子形状を保持し、充填率を高く保つことができる。ウォブルトラックの波形としては、例えば、サイン波、三角波などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。ウォブルトラックの波形は、周期的な波形に限定されるものではなく、非周期的な波形としてもよい。
この第4の実施形態において、上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
【0074】
<5.第5の実施形態>
図11Aは、本発明の第5の実施形態に係る積層体の構成の一例を示す断面図である。図11Bは、図11Aに示した積層体の一部を拡大して表す平面図である。図11Cは、図11Bに示した積層体の断面図である。第4の実施形態に係る積層体は、複数の構造体21がランダム(不規則)に2次元配列されている点において、第1の実施形態とは異なっている。また、構造体21の大きさおよび/または高さもランダムに変化させるようにしてもよい。
この第5の実施形態において、上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
【0075】
<6.第6の実施形態>
図12は、本発明の第6の実施形態に係る積層体の構成の一例示す斜視図である。図12に示すように、第6の実施形態に係る積層体は、基体表面にて一方向に延在された柱状の構造体21を有し、この構造体21が基体1上に1次元配列されている点において、第1の実施形態のものとは異なっている。
【0076】
構造体21の断面形状は、例えば三角形状、頂部に曲率Rが付された三角形状、多角形状、半円形状、半楕円形状、放物線状、トロイダル形状などを挙げることができるが、特に限定されるものではない。また、構造体21をウォブルさせながら一方向に延在させるようにしてもよい。
この第6の実施形態において、上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
【0077】
<7.第7の実施形態>
図13A〜図13Eは、本発明の第7の実施形態に係る積層体に備えられた基体の第1〜第5の例を示す断面図である。第7の実施形態に係る積層体は、基体1の両主面に複数の構造体21が2次元配列されている点において、第1の実施形態に係る積層体とは異なっている。具体的には、第1〜第5の例の積層体はそれぞれ、基体1の両主面に複数の構造体21が2次元配列されている点以外のことは、上述の第1の実施形態に係る積層体の第1〜第5の例と同様である(図2参照)。
この第7の実施形態において、上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
【0078】
<8.第8の実施形態>
図14Aは、本発明の第8の実施形態に係る積層体に備えられた基体の第1の例を示す断面図である。図14Bは、本発明の第8の実施形態に係る積層体に備えられた基体の第2の例を示す断面図である。第8の実施形態に係る積層体は、構造体21がエネルギー線に対して不透過性を有している点において、第1の実施形態または第7の実施形態に係る積層体とは異なっている。このような不透過性を有する構造体21は、例えば、エネルギー線を吸収する顔料などの材料をエネルギー線硬化性樹脂組成物に添加することにより形成することが可能である。
この第8の実施形態において、上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
【0079】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0080】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、工程、方法、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、工程、方法、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0081】
また、上述の実施形態の各構成、工程、方法、形状、材料および数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 基体
2 構造体
11a 不透過層
11b 透過層
21 構造体
22 基底層
101 ロール原盤
102 構造体
110 エネルギー線源
118 エネルギー線硬化性樹脂組成物
133 エンボスベルト
136 平坦ベルト
Sp 成形面
Si 裏面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
上記基体上に形成された、凹凸形状の表面を有する形状層と、
を備え、
上記形状層は、エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなり、
上記形状層の表面には、所定の凹凸パターンを有する単位領域が上記凹凸形状の不整合を生じることなく連続して形成され、
上記基体は、上記エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線に対して不透過性を有する積層体。
【請求項2】
上記基体は、帯状の形状を有し、
上記基体の長手方向に向かって、上記単位領域が連続して形成されている請求項1記載の積層体。
【請求項3】
上記凹凸形状の不整合が、上記所定の凹凸パターンの周期性の乱れである請求項1記載の積層体。
【請求項4】
上記凹凸形状の不整合が、隣接する単位領域間の重なり、隙間、または、未転写部である請求項1記載の積層体。
【請求項5】
上記単位領域間は、上記エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化度に不整合を生じることなく繋がっている請求項1記載の積層体。
【請求項6】
上記エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化度の不整合が、重合度の差である請求項5記載の積層体。
【請求項7】
上記形状層は、上記基体上に塗布されたエネルギー線硬化性樹脂組成物を、上記基体とは反対の側から硬化反応を進行させることにより形成されている請求項1記載の積層体。
【請求項8】
上記単位領域は、回転原盤の回転面を1回転することにより形成される転写領域である請求項1記載の積層体。
【請求項9】
上記凹凸パターンは、凸状または凹状の複数の構造体を1次元配列または2次元配列することにより形成されている請求項1記載の積層体。
【請求項10】
上記複数の構造体は、規則的または不規則的に配置されている請求項9記載の積層体。
【請求項11】
上記複数の構造体が、サブ波長構造体である請求項9記載の積層体。
【請求項12】
上記基体が、少なくとも1つの平面または曲面を有し、
上記平面または曲面に上記形状層が形成されている請求項1記載の積層体。
【請求項13】
第1の面と、該第1の面とは反対側の第2の面とを有する基体と、
上記基体の第1の面に形成された第1の形状層と、
上記基体の第2の面に形成された第2の形状層と
を備え、
上記第1の形状層は、エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなり、
上記第1の形状層および上記第2の形状層のうち少なくとも第2の形状層は、上記エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線に対して不透過性を有し、
上記第1の形状層の表面には、所定の凹凸パターンを有する単位領域が上記凹凸形状の不整合を生じることなく連続して形成される積層体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の積層体を備える成型素子。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の積層体を備える光学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−86515(P2012−86515A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237331(P2010−237331)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】