説明

積層体、積層体の製造方法及び離型剤

【課題】積層体の微細構造形成層に形成される微細構造が、より細かくそして深い構造になっても「版取られ」不良の発生しない離型性を持ち、しかも反射層や接着層などの層間剥離も起こらない密着性を持った積層体及びその積層体を製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも基材、剥離層、微細構造形成層がこの順で積層され、前記微細構造形成層には、微細構造が形成されており、前記微細構造形成層は微細構造を形成するための、微細構造が形成されたエンボス版に対して離型性を示す離型剤を含有しており、前記離型剤が、前記微細構造形成層の主成分に対して親和性が高いアンカーセグメントと親和性が低い離型セグメントとが加水分解されやすい化学結合により結合したブロックコポリマーからなることを特徴とする積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣、パスポート、商品券、BPステッカーなどに貼付する転写箔およびステッカーに用いられるホログラム、回折構造形成体などの微細構造をその一部に有する転写箔であり、特にその一部を構成する微細構造形成層がそこへ微細構造を形成するための微細構造版に対して、取られにくくすると共に、極僅かな負荷によって安定した転写を可能とすることを特徴とした積層体及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、その一部に微細構造を有する転写箔は、例えば、基材に剥離層と微細構造形成層となる薄膜とを順次コーティングした後、前記薄膜に微細構造版を加熱した状態で押し付け、更に反射層や接着層等を設けることより製造されている。この際、微細構造版から微細構造形成層となる薄膜に加える温度は、微細構造形成層を構成する樹脂の軟化点付近であるため、樹脂にタックが出やすく、微細構造形成層の一部が剥離層と共に剥がれて微細構造版に付着し、微細構造が所定のように形成できないことがよくあった。
【0003】
このような現象を回避するため、微細構造形成層を電子線硬化樹脂や紫外線硬化樹脂で構成することにより、微細構造版を使用した加熱方式によらずに微細構造を複製する方法およびが提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、微細構造を有する転写箔の製造においては、転写しようとする部分の適正な剥離における負荷が軽く、バリの出にくいものが一般的には性能が良いとされる。しかし、上述したような微細構造を有する転写箔、すなわち基材に剥離層と微細構造形成層となる薄膜とを順次コーティングした後、加熱した微細構造版を微細構造形成層となる薄膜に押しつけることにより微細構造形成層が形成される転写箔においては、転写性を向上すべく基材と剥離層との界面における軽剥離化を図ろうとすると、上記の如く、微細構造形成層の一部が微細回折構造版に付着してしまう、いわゆる「版取られ」の現象が顕著になってしまうという問題がある。
【0005】
上記「版取られ」を解決するために、微細構造形成層中に離型剤を、また離型性を付与する離型セグメントと微細構造形成層からの脱離を防ぐアンカーセグメントからなるブロックコポリマーからなる離型剤を微細構造形成層中に含有させる提案がなされている(特許文献2)
しかしながら、転写箔およびステッカーに更なる偽造防止機能が求められるようになり、形成される微細構造が、更に細かく深い構造になっており、現状の離型性では性能が十分とは言えない状態である。一方、離型性を強くすると、反射層や接着層などのリコート密着性が確保し辛くなる。そのような理由から安定した成形性と、転写箔の密着性とを両立させた材料構成および製造方法が求められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−106193号公報
【特許文献2】特開2004−258455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、積層体の微細構造形成層に形成される微細構造が、より細かく、そして深い構造になっても「版取られ」不良の
発生しない離型性を持ち、しかも反射層や接着層などの層間剥離も起こらない密着性を持った積層体及びその積層体を製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、少なくとも基材、剥離層、微細構造形成層がこの順で積層され、
前記微細構造形成層には、微細構造が形成されており、
前記微細構造形成層は微細構造を形成するための、微細構造が形成されたエンボス版に対して離型性を示す離型剤を含有しており、
前記離型剤が、前記微細構造形成層の主成分に対して親和性が高いアンカーセグメントと親和性が低い離型セグメントとが加水分解されやすい化学結合により結合したブロックコポリマーからなることを特徴とする積層体。である。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記アンカーセグメントが、前記微細構造を形成する主成分と化学的に結合する官能基を持つことを特徴とする請求項1に記載の積層体である。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記離型セグメントがフッ素若しくはシリコンを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体である。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、前記加水分解されやすい化学結合が、エステル結合であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載の積層体である。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、基材上に剥離層、微細構造形成層を積層し、該微細構造形成層表面に、微細構造が形成されたエンボス版を密着させ、熱プレスを行うことにより、微細構造を前記微細構造形成層表面に転写成形し、更に反射層、接着層を順次積層する積層体の製造方法において、
前記微細構造形成層が、微細構造形成層の主成分に対して親和性が高いアンカーセグメントと親和性が低い離型セグメントとが加水分解されやすい化学結合により結合したブロックコポリマーからなる離型剤を添加したものであり、
前記微細構造の少なくとも一部の領域を加水分解により、微細構造形成層から離型セグメントを脱離させる工程を含むことを特徴とする積層体の製造方法である。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、前記微細構造形成層の少なくとも1部の領域の離型剤を部分的に加水分解し、前記微細構造形成層の離型セグメントを脱離させたことを特徴とする請求項5に記載の積層体の製造方法である。
【0014】
また、請求項7に記載の発明は、微細構造が形成され側の前記微細構造形成層表面に形成された反射層を、少なくとも1部を残し、部分的に除去されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の積層体の製造方法である。
【0015】
また、請求項8に記載の発明は、前記微細構造が微細構造形成層表面に転写成形された積層体に、反射層を積層し、更にマスク層をパターン状に形成する工程と、マスク層をパターン状に形成した後、塩基性溶液若しくは酸性溶液からなる浸漬液に浸漬することにより、前記マスク層が形成されていない部分の反射層を除去する工程を含むことを特徴とする請求項5〜7いずれか一項に記載の積層体の製造方法である。
【0016】
また、請求項9に記載の発明は、前記微細構造が微細構造形成層表面に積層形成された反射層の少なくとも一部の領域を除去する工程と、前記微細構造形成層の一部の領域を加水分解により離型セグメントを脱離する工程を、塩基性溶液若しくは酸性溶液からなる浸
漬液に浸漬することにより、同時に行うことを特徴とする請求項5〜8いずれか一項に記載の積層体の製造方法である。
【0017】
また、請求項10に記載の発明は、基材上に、剥離層、微細構造形成層が積層され積層体に、微細構造が形成されたエンボス版を圧着させて、前記微細構造形成層表面に微細構造を転写成形する微細構造形成層に添加される離型剤であって、前記微細構造形成層の主成分に対して親和性が高いアンカーセグメントと親和性が低い離型セグメントとが加水分解されやすい化学結合により結合したブロックコポリマーからなることを特徴とする離型剤である。
【0018】
また、請求項11に記載の発明は、前記アンカーセグメントが、前記微細構造を形成する主成分と化学的に結合する官能基を持つことを特徴とする請求項10に記載の離型剤である。
【0019】
また、請求項12に記載の発明は、前記離型セグメントがフッ素若しくはシリコンを含むことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の離型剤である。
【0020】
また、請求項13に記載の発明は、前記加水分解されやすい化学結合が、エステル結合であることを特徴とする請求項10〜12いずれか一項に記載の離型剤である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る微細構造を有する積層体は、その一部を構成する微細構造形成層は、微細な凹凸を形成するためのエンボス版に対して離型性を示す離型剤を含有しているため、熱圧をかけて押圧するエンボス版に層の一部が取られにくくなり、エンボス時の離型性と積層体の層間の密着性の両立が可能で、層間剥離トラブルの心配が無く、極僅かな負荷によって安定した転写が可能となり、かつ転写された部分において所期の回折現象を的確に発現しうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の積層体の構成を示した断面概念図である。
【図2】本発明の積層体の微細構造形成方法を示した断面概念図である。
【図3】エンボス工程における「版取られ」を示した断面概念図である。
【図4】本発明の積層体における離型メカニズムを示した概念図である。
【図5】本発明の積層体における加水分解後の密着メカニズムを示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1は微細構造を有する微細構造が形成された積層体10の概略の断面構造を示している。この微細構造を有する微細構造が形成された積層体10は、基材1上に剥離層2と微細構造形成層3と反射層5と接着層7とがこの順で積層されており、反射層5は加水分解処理後、微細構造形成層3の表面に形成されるエンボスパターン4の表面に形成されている。
【0024】
図2は微細構造が形成された積層体の、製造工程を示しており、基材1上に剥離層2と微細構造形成層3を積層し、エンボス版20を熱圧着あるいはUV硬化によって微細構造を微細構造形成層3にエンボス成形する。微細構造表面を加水分解した後、反射層5を設け、次にパターン状にマスク層6を形成した後、塩基性溶液若しくは酸性溶液からなるエッチング液に浸漬することにより、マスク層を設けていない部分の反射層5を除去され、反射層5はパターン状に設けられ、続いて接着層7を積層する。
【0025】
図3はエンボス工程における版取られ部30を示した断面概念図であり、微細構造形成
層に、エンボス版20を加熱した状態で押しつけると、エンボス版20に微細構造形成層3が融着し、エンボス版20を剥がす時に、微細構造形成層3が一部が破壊し、基材1から剥がれて、エンボス版20に付着してしまい、微細構造が形成された積層体10には、版取られ部30がまだらにできてしまう。また「版取られ」が生じた版は、付着した微細構造形成層3により使用できなくなる。
【0026】
転写時には反射層5と微細構造形成層3と剥離層2の一部とが一体的に剥離し、この順序で被転写体上に接着層7により一体的に接着・固定されるようになっている。微細構造形成層3にはホログラムや回折格子等の微細構造が形成されているので、この微細構造を有する転写箔などの微細構造が形成された積層体10を使用した転写により、被転写体上では所望の回折現象が転写部分において観察されるようになっている。
【0027】
微細構造が形成された積層体10を構成する基材1としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、又はポリプロピレン等の樹脂フィルム、更にはこれらの積層体等を用いることができる。この基材1の上には剥離層2を積層するが、転写時の剥離強度を調整するため、剥離層2を形成する面に離型処理を施しておいても良い。
【0028】
一方、剥離層2は、転写時においてその一部においてが安定した剥離(転写)がなされると共に、被転写部分の最表面に位置してその表面を保護する機能を有する必要がある。したがってこの剥離層2は、これらの機能を満たす材料、例えばアクリル樹脂、メラミン樹脂、またはスチレン樹脂等を用い、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、ロールコーティング等の塗工方法や印刷方法等により設ける。
【0029】
他方、微細構造形成層3は、前述したように、ホログラムや回折格子等の回折構造が形成してある層である。この微細構造は、微細構造形成層3となる薄膜に微細な凹凸が形成してあるエンボス版を加熱した状態で押しつけて形成されるものである。したがって、この微細構造形成層3構成する材料としては、エンボス版により型取りがし易く、かつ転写時の熱圧で一旦形成した微細構造が崩れにくい材料で設ける。
【0030】
微細構造型性層3は、UV樹脂の場合や熱硬化樹脂の場合があり、UV樹脂としてはアクリル樹脂や不飽和ポリエステルのラジカル重合させたものが好適であり、熱硬化樹脂としてはイソシアネートによるアクリルポリオール若しくはポリエステルポリオールを硬化させたものが好適である。(これらの要求を満足する材料としては、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ニトロセルロース、又は塩酢ビ樹脂等を挙げることができる。)
前記微細構造型性層3には離型剤が添加されており、アンカーセグメントと離型セグメントは加水分解されやすい化学結合で結合させておく。離型剤のアンカーセグメントは、前記の硬化に必要な官能基を持たせることで安定化させることが可能である。加水分解を受けるやすい結合としては、エステル(カルボン酸+アルコール)、アミド(カルボン酸+アミン)、チオエステル(カルボン酸+チオール)などを挙げることができる。
【0031】
加水分解は、空気中の水分や酸性、中性、塩基性の水溶液に浸漬して実施でき、鹸化処理においても同様の効果が得られる。また加水分解処理の前に、濡れ性を向上させ効率よく処理をすすめるためにコロナ処理などを実施してもよい。
【0032】
この微細構造形成層3は、このような材料によりなる薄膜を基材1上に形成した後、薄膜をその軟化点付近まで加熱した状態で微細な凹凸が形成してあるエンボス版20を押しつけて得られるものである。この時、従来方法では軟化点付近まで加熱した薄膜は、タックが現れはじめ、エンボス版20にその一部が貼りつきやすくなる。特に、転写時にあまり負荷をかけずに転写が行えるよう、剥離剤により剥離層2の剥離強度を低減させてある微細構造が形成された積層体10においては、剥離層2と微細構造形成層3とが一緒に基
材1側から剥がれてしまい、エンボス版20に付着してしまうという不具合を起こしやすくなるという問題があった。
【0033】
本発明の微細構造が形成された積層体10では、離型剤が微細構造形成層3の主成分に対して親和性が高いアンカーセグメントと親和性が低い離型セグメントとが加水分解されやすい化学結合により結合したブロックコポリマーからなる。すなわち微細構造をプレス成型する際には、離型性が働き、エンボス版20に貼りつかないが、微細構造成形後に加水分解処理により、離型性が無くなるため、その後に積層される反射層5との密着に対して問題が生じることは無い。エンボス時には、離型セグメントが微細構造形成層3の表面に存在し、剥離抵抗力が低く、スタンパーの離型がスムーズで、反射層やアンカーをコーティングする前に、加水分解処理により離型セグメントを脱離するため、離型性が無くなり反射層や接着層の密着性が確保できる。
【0034】
図4は、本発明の積層体がエンボス時に「版取られ」を起こさない離型セグメント11形成メカニズムを示しており、微細構造を形成する主成分である主剤13と離型セグメント11が化学的に結合し、親和性が高いアンカーセグメント12と親和性が低い離型セグメント11とが加水分解されやすい化学結合により結合ししている。
【0035】
図5は、加水分解によって、化学結合により結合していた親和性が高いアンカーセグメント12と親和性が低い離型セグメント11とが分かれ、離型セグメント11が微細構造形成層3から無くなり、離形性が失われ密着性が生まれることを示している。
【0036】
前記マスク層6を設けていない部分の反射層5を除去する工程において、酸性あるいは塩基性の水溶液にて処理を行うが、この時、微細構造成形層3の表面は加水分解反応が進み、マスク層6によりカバーされた部分は、加水分解反応は起きないが、反射層と微細構造形成層との密着性が良好の場合には、反射層形成前の加水分解の工程を省略することも可能である。
【0037】
反射層5は、金属若しくは高屈折率セラミックスにより形成される層である。金属系の材料としては、アルミニウム、すず、銀、銅、ニッケル、金等の金属の他にインコネル、青銅、アルミ青銅等の合金を用いることができる。また、セラミックス系の材料としては、TiO、ZnS、Feの等の高屈折率材料を用いることができる。反射層5は、これらの材料を蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の薄膜形成方法により、10nmから100nm程度の厚さで微細構造形成層3上に設ければよい。この反射層5は、微細構造形成層3に対して必ずしも全面に設ける必要は無く、デザインや使用形態等を考慮してその一部に設けても良い。
【0038】
接着層7は、転写の際に、転写箔を構成する反射層5と微細構造形成構造層3並びに剥離層2の一部とを一体的に被転写体上に転移させた時に固着させるために設ける層であるが、例えば転写時に加えられる熱により粘着性が現れる感熱接着剤を用いて構成すればよい。この接着層7は、所定の接着剤を用い、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、ロールコーティング等の塗工方法や印刷方法等により反射層5上に積層して設ければよい。
【0039】
以上のような構成の、回折構造を有する転写箔を用い、アップダウン式のホットスタンプやロール転写型の転写機により、被転写体上に転写を行うこと、極僅かな負荷で被転写体上に転写を行うことができる。従って、転写部分においては、その一部に有する回折構造に係る回折現象が明瞭に観察することができるようになる。
<実施の形態例1>
以下、本発明の施の形態例を説明する。エンボス版20の原版は、ガラスに塗布したポ
ジレジストを塗布してガラス乾板を作製した。ガラス乾板のレジスト表面に電子線で描画して方向の異なる格子偏光子を描画して、前記描画したガラス乾板を現像し、間隔300nm、深さ400nmの微細構造を形成した。次に微細構造表面にスパッタリングにより導通加工し、メッキによりエンボス版を得た。エンボス版は表面処理を行った後、メッキにより複版が可能である。
【0040】
まず、厚さが16μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材の一方の面に、アクリル系樹脂からなる剥離層をグラビアコーティング法により2μmの厚さで設け、更に加水分解を受ける離型剤を添加したUV硬化型微細構造形成層3を2μmの厚みでグラビアコーティング法を用いて塗工形成した。
【0041】
重合によりPMMAとなるメタクリル酸モノマー及びオリゴマーに、不飽和ポリエステル樹脂を加え、更にラジカル重合開始剤(イルガキュア184:チバジャパン)1〜3%、離型剤を0.1〜3%添加加え、溶剤により粘度の調整を行いUV硬化型微細構造形成層3とする。この時溶剤に替え反応性希釈剤を添加しても良い。
【0042】
離型剤としては、FC(CF)n‐O‐(アクリレート基若しくはメタクリレート基)が、加水分解(+HO)により、FC(CF)nOHとアクリル酸若しくはメタクリル酸(実際には主剤と反応してポリマーとなっている)となる。ここで、n=0〜20であり、より好ましくは4〜8である。
【0043】
メタクリル酸モノマー、オリゴマーに、不飽和ポリエステル混合樹脂: 100部
ラジカル重合開始剤:イルガキュア184(チバ・ジャパン) 1部
離型剤 :FC(CFOCOC 0.5部
溶剤(MEK/トルエン)
からなる樹脂溶液を塗布乾燥してUV硬化型微細構造形成層を得た。アンカーセグメントは主剤と結合して残り、エンボス後離型セグメントは加水分解して離脱する。
【0044】
表面に微細構造が形成されたニッケルからなるエンボス版20を用いて200℃で型押しし、基材側から紫外線を照射して硬化し、微細構造をUV硬化型微細構造形成層3に形成した。表面の微細構造面を、水に浸漬させて加水分解した後、微細構造形成層3上にアルミニウムからなる反射層5を蒸着により厚さ50nmの厚さで設け、更に塩酢ビ樹脂からなるマスクインキをグラビア印刷法にて1μm厚に印刷して形成した。乾燥エージング後、NaOH溶液でマスク層が形成されていない部分をパターンエッチングし、更にシリカフィラーを分散した塩酢ビ樹脂を、グラビアコーティング法で2μm厚に塗工しての接着層7を積層した。
<実施の形態例2>
熱硬化型微細構造形成層として、ウレタン系樹脂が好適であり、クリルポリオールに硬化剤(デュラネート24A100:旭化成)、ポリエステルポリオールに硬化剤(デュラネート24A100:旭化成)を添加した塗工材が挙げられる。これら未反応の材料の固形分に対して、本件離型剤を0.1〜3%添加する。
【0045】
加水分解によりFC(CF)nCO−O−(アクリルポリオールセグメント)が、FC(CF)nOHとアクリルポリオール基(実際には主剤と架橋している)となる。ここで、n=0〜20であり、より好ましくは4〜8である。
【0046】
樹脂組成としては、
アクリルポリオール : エリーテルUE3228(ユニチカ) 100部
硬化剤 : デュラネート24A100(旭化成) 2.55部
離型剤 : FC(CFOCOC

溶剤(MEK/トルエン)
上記塗液をグラビアコーターで1μmの膜厚で塗布し、120℃で10秒間乾燥後、50℃で7日間エージングし硬化を促進した。
【0047】
表面に微細構造が形成されたニッケルからなるエンボス版を用いて200℃で圧力をかけて型押しし、冷却しながら型から外した。微細構造形成層3上にアルミニウムからなる反射層5を蒸着により厚さ50nmの厚さで設け、更に塩酢ビ樹脂からなるマスクインキをグラビア印刷法にて1μm厚にで印刷して形成した。乾燥エージング後、NaOH溶液により、マスク層が形成されていない部分をパターンエッチングすると同時に加水分解処理を行い、更にシリカフィラーを分散した塩酢ビ樹脂を、グラビアコーティング法で2μm厚に塗工しての接着層7を積層した。
【0048】
実施の形態例1、2とも、表面温度200℃のゴムロールを用いて、100g/mの用紙に、ロール転写し、転写物を得た。
【0049】
エンボス時のスタンパーからの離型性と、アンカー密着性を両立した転写箔が作製できた。転写後、粘着テープによる密着試験を実施した。実施の形態例1のUV硬化型微細構造形成層を用いたものは、加水分解を行わない時には70%以上の面積が剥離したが、加水分解を行うことにより微細構造形成層の間で剥離することは無かった。
【符号の説明】
【0050】
1・・・基材
2・・・剥離層
3・・・微細構造形成層
4・・・エンボスパターン
5・・・反射層
6・・・マスク層
7・・・接着層
10・・・微細構造が形成された積層体
11・・・離型セグメント
12・・・アンカーセグメント
13・・・主剤
20・・・エンボス版
30・・・版取られ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材、剥離層、微細構造形成層がこの順で積層され、
前記微細構造形成層には、微細構造が形成されており、
前記微細構造形成層は微細構造を形成するための、微細構造が形成されたエンボス版に対して離型性を示す離型剤を含有しており、
前記離型剤が、前記微細構造形成層の主成分に対して親和性が高いアンカーセグメントと親和性が低い離型セグメントとが加水分解されやすい化学結合により結合したブロックコポリマーからなることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記アンカーセグメントが、前記微細構造を形成する主成分と化学的に結合する官能基を持つことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記離型セグメントがフッ素若しくはシリコンを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記加水分解されやすい化学結合が、エステル結合であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
基材上に剥離層、微細構造形成層を積層し、該微細構造形成層表面に、微細構造が形成されたエンボス版を密着させ、熱プレスを行うことにより、微細構造を前記微細構造形成層表面に転写成形し、更に反射層、接着層を順次積層する積層体の製造方法において、
前記微細構造形成層が、微細構造形成層の主成分に対して親和性が高いアンカーセグメントと親和性が低い離型セグメントとが加水分解されやすい化学結合により結合したブロックコポリマーからなる離型剤を添加したものであり、
前記微細構造の少なくとも一部の領域を加水分解により、微細構造形成層から離型セグメントを脱離させる工程を含むことを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項6】
前記微細構造形成層の少なくとも1部の領域の離型剤を部分的に加水分解し、前記微細構造形成層の離型セグメントを脱離させたことを特徴とする請求項5に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
微細構造が形成され側の前記微細構造形成層表面に形成された反射層を、少なくとも1部を残し、部分的に除去されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記微細構造が微細構造形成層表面に転写成形された積層体に、反射層を積層し、更にマスク層をパターン状に形成する工程と、マスク層をパターン状に形成した後、塩基性溶液若しくは酸性溶液からなる浸漬液に浸漬することにより、前記マスク層が形成されていない部分の反射層を除去する工程を含むことを特徴とする請求項5〜7いずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記微細構造が微細構造形成層表面に積層形成された反射層の少なくとも一部の領域を除去する工程と、前記微細構造形成層の一部の領域を加水分解により離型セグメントを脱離する工程を、塩基性溶液若しくは酸性溶液からなる浸漬液に浸漬することにより、同時に行うことを特徴とする請求項5〜8いずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
基材上に、剥離層、微細構造形成層が積層され積層体に、微細構造が形成されたエンボス版を圧着させて、前記微細構造形成層表面に微細構造を転写成形する微細構造形成層に添加される離型剤であって、前記微細構造形成層の主成分に対して親和性が高いアンカー
セグメントと親和性が低い離型セグメントとが加水分解されやすい化学結合により結合したブロックコポリマーからなることを特徴とする離型剤。
【請求項11】
前記アンカーセグメントが、前記微細構造を形成する主成分と化学的に結合する官能基を持つことを特徴とする請求項10に記載の離型剤。
【請求項12】
前記離型セグメントがフッ素若しくはシリコンを含むことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の離型剤。
【請求項13】
前記加水分解されやすい化学結合が、エステル結合であることを特徴とする請求項10〜12いずれか一項に記載の及び離型剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−31957(P2013−31957A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169097(P2011−169097)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】