説明

積層体およびその製造方法、ならびに表示装置

【課題】3D特性(クロストーク)の劣化を低減することの可能な積層体およびその製造方法、ならびにそのような積層体を備えた表示装置を提供する。
【解決手段】積層体は、基材と、基材の一方の面に直接接して設けられた反射防止層またはアンチグレア層と、基材の他方の面に直接、または第1接着層もしくは第1粘着層を介して接して設けられた位相差層とを備えたものである。位相差層は、遅相軸の向きが互いに異なる2種類以上の位相差領域を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、光の偏光状態を変化させる位相差層を含む積層体およびその製造方法に関する。さらに、本技術は、上述の積層体を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、偏光眼鏡を用いるタイプの立体映像表示装置として、左目用画素と右目用画素とで異なる偏光状態の光を射出させるものがある。このような表示装置では、視聴者が偏光眼鏡をかけた上で、左目用画素からの射出光を左目のみに入射させ、右目用画素からの射出光を右目のみに入射させることにより、立体映像の観察が可能である。
【0003】
例えば、特許文献1,2では、左目用画素と右目用画素とで異なる偏光状態の光を射出させるために、部分的に液晶セルが形成された位相差素子や、遅相軸の互いに異なる複数種類の位相差材料が配置された位相差素子を設けることが提案されている。また、例えば、特許文献3では、パターニングされた光配向膜上に液晶を塗布し、重合させることにより形成された位相差素子を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5676975号明細書
【特許文献2】米国特許第5327285号明細書
【特許文献3】米国特許第3881706号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の位相差素子は、立体映像表示装置の映像表示面に配置される。そのため、位相差素子が厚い場合に、視聴者が斜め方向から映像表示面を眺めたときには、表示パネル内の液晶セルと位相差素子との位置ずれが発生し、3D特性(クロストーク)が劣化する可能性がある。また、位相差素子の上には、映像品質を改善する際に、必要に応じて、アンチグレアフィルムや反射防止フィルムが設けられる。しかし、位相差素子が厚いと、位相差素子の上にアンチグレアフィルムや反射防止フィルムを設けることにより、逆に、3D特性(クロストーク)が顕著に劣化する場合がある。
【0006】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、3D特性(クロストーク)の劣化を低減することの可能な積層体およびその製造方法を提供することにある。第2の目的は、そのような積層体を備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の積層体は、基材と、基材の一方の面に直接接して設けられた反射防止層またはアンチグレア層と、基材の他方の面に直接、または第1接着層もしくは第1粘着層を介して接して設けられた位相差層とを備えたものである。位相差層は、遅相軸の向きが互いに異なる2種類以上の位相差領域を有している。
【0008】
本技術の表示装置は、映像信号に応じた映像を映像表示面に表示する表示パネルと、映像表示面に接して設けられた位相差素子とを備えたものである。位相差素子は、基材と、基材のうち表示パネルとは反対側の面に直接接して形成された反射防止層またはアンチグレア層と、基材のうち前記表示パネル側の面に直接、または第1接着層もしくは第1粘着層を介して接して形成された位相差層とを有している。位相差層は、遅相軸の向きが互いに異なる2種類以上の位相差領域を有している。位相差素子は、さらに、位相差層のうち表示パネル側の面に直接接して形成された第2接着層もしくは第2粘着層を有している。表示パネルは、第2接着層もしくは第2粘着層に直接接する偏光板を映像表示面に有している。
【0009】
本技術の積層体および表示装置では、位相差層を支持する基材として、反射防止層またはアンチグレア層を支持する基材が用いられている。これにより、位相差層を支持する基材を別個に設けた場合と比べて、積層体が薄くなっている。
【0010】
本技術の第1の積層体の製造方法は、以下の2つの工程を含むものである。
(A1)表面に配向機能を有する配向基材の表面に、配向性を有する材料を塗布することにより、遅相軸の向きが互いに異なる2種類以上の位相差領域を有する位相差層を配向基材の表面に有する第1積層体を形成する第1工程
(A2)第1積層体と、支持基材の表面に反射防止層またはアンチグレア層を有する第2積層体とを、位相差層および支持基材が互いに直接接するように重ね合わせたのち、位相差層を固化し、配向基材を剥離する第2工程
【0011】
本技術の第2の積層体の製造方法は、以下の2つの工程を含むものである。
(B1)表面に配向機能を有する配向基材の表面に、配向性を有する材料を塗布したのち、固化することにより、遅相軸の向きが互いに異なる2種類以上の位相差領域を有する位相差層を配向基材の表面に有する第1積層体を形成する第1工程
(B2)第1積層体と、支持基材の一方の面に反射防止層またはアンチグレア層を有するとともに支持基材の他方の面に接着層または粘着層を有する第2積層体とを、位相差層および接着層または粘着層が互いに直接接するように重ね合わせたのち、配向基材を剥離する第2工程
【0012】
本技術の第1および第2の積層体の製造方法では、配向基材が剥離される。これにより、配向基材が剥離されていない場合と比べて、積層体が薄くなっている。
【発明の効果】
【0013】
本技術の積層体および表示装置、ならびに第1および第2の積層体の製造方法によれば、基材を剥離したり、兼用したりすることにより、積層体を薄くしたので、3D特性(クロストーク)の劣化を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本技術の一実施の形態に係る表示装置の構成の一例を偏光眼鏡と共に表す斜視図である。
【図2】図1の表示装置の内部構成の一例を偏光眼鏡と共に表す図である。
【図3】図2の液晶表示パネルの構成の一例を表す断面図である。
【図4】図2の位相差素子の構成の一例を偏光板と共に表す断面図である。
【図5】図4の右目用位相差領域および左目用位相差領域の遅相軸の一例を他の光学部材の遅相軸または透過軸と共に表す概念図である。
【図6】図1の偏光眼鏡の右目用光学素子および左目用光学素子の構成の一例を表す斜視図である。
【図7】図1の表示装置の映像を右目で観察する際の遅相軸および透過軸の一例について説明するための概念図である。
【図8】図1の表示装置の映像を右目で観察する際の遅相軸および透過軸の他の例について説明するための概念図である。
【図9】図1の表示装置の映像を左目で観察する際の遅相軸および透過軸の一例について説明するための概念図である。
【図10】図1の表示装置の映像を左目で観察する際の遅相軸および透過軸の他の例について説明するための概念図である。
【図11】図1の表示装置の製造方法の一例について説明するための断面図である。
【図12】図11に続く工程の一例について説明するための断面図である。
【図13】図11に続く工程の他の例について説明するための断面図である。
【図14】図11、図12または図13に続く工程の一例について説明するための断面図である。
【図15】図14に続く工程の一例について説明するための断面図である。
【図16】図15に続く工程の一例について説明するための断面図である。
【図17】図16に続く工程の一例について説明するための断面図である。
【図18】図17に続く工程の一例について説明するための断面図である。
【図19】図18に続く工程の一例について説明するための断面図である。
【図20】図19に続く工程の一例について説明するための断面図である。
【図21】図1の表示装置の構成の第1変形例を表す断面図である。
【図22】図1の表示装置の構成の第2変形例を表す断面図である。
【図23】図22の表示装置の製造方法の一例について説明するための断面図である。
【図24】図23に続く工程の一例について説明するための断面図である。
【図25】図24に続く工程の一例について説明するための断面図である。
【図26】図25に続く工程の一例について説明するための断面図である。
【図27】図26に続く工程の一例について説明するための断面図である。
【図28】図1の表示装置の構成の第3変形例を表す断面図である。
【図29】図22の表示装置の製造方法の他の例について説明するための断面図である。
【図30】図29に続く工程の一例について説明するための断面図である。
【図31】図30に続く工程の一例について説明するための断面図である。
【図32】図22の表示装置の製造方法のその他の例について説明するための断面図である。
【図33】図32に続く工程の一例について説明するための断面図である。
【図34】図33に続く工程の一例について説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態
2.変形例
【0016】
<1.実施の形態>
[表示装置1の構成]
図1は、本技術の一実施の形態に係る表示装置1を、後述する偏光眼鏡2とともに斜視的に表したものである。図2は、図1の表示装置1の断面構成の一例を偏光眼鏡2とともに表したものである。表示装置1は、偏光眼鏡2を眼球の前に装着した観察者(図示せず)に対して立体映像を表示する偏光眼鏡方式の表示装置である。この表示装置1は、例えば、図2に示したように、バックライトユニット10、液晶表示パネル20および位相差素子30をこの順に積層して構成されたものである。表示装置1において、位相差素子30の表面が映像表示面1Aとなっており、観察者側に向けられている。
【0017】
なお、本実施の形態では、映像表示面1Aが垂直面(鉛直面)と平行となるように表示装置1が配置されている。映像表示面1Aは、例えば長方形状となっており、映像表示面1Aの長手方向が、例えば水平方向(図中のy軸方向)と平行となっている。観察者は偏光眼鏡2を眼球の前に装着した上で、映像表示面1Aを観察するものとする。偏光眼鏡2は円偏光タイプであり、表示装置1は円偏光眼鏡用の表示装置である。
【0018】
(バックライトユニット10)
バックライトユニット10は、例えば、反射板、光源および光学シート(いずれも図示せず)を有している。反射板は、光源からの射出光を光学シート側に戻すものであり、反射、散乱、拡散などの機能を有している。この反射板は、例えば、発泡PET(ポリエチレンテレフタレート)などによって構成されている。これにより、光源からの射出光を効率的に利用することができる。光源は、液晶表示パネル20を背後から照明するものであり、例えば、複数の線状光源が等間隔で並列配置されたり、複数の点状光源が2次元配列されたりしたものである。なお、線状光源としては、例えば、熱陰極管(HCFL;Hot Cathode Fluorescent Lamp)、冷陰極管(CCFL;Cold Cathode Fluorescent Lamp)などが挙げられる。また、点状光源としては、例えば、発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)などが挙げられる。光学シートは、光源からの光の面内輝度分布を均一化したり、光源からの光の発散角や偏光状態を所望の範囲内に調整したりするものであり、例えば、拡散板、拡散シート、プリズムシート、反射型偏光素子、位相差板などを含んで構成されている。また、光源は、エッジライト方式のものでもよく、その場合には、必要に応じて導光板や導光フィルムが用いられる。
【0019】
(液晶表示パネル20)
液晶表示パネル20は、複数の画素が行方向および列方向に2次元配列された透過型の表示パネルであり、映像信号に応じて各画素を駆動することによって画像を表示するものである。この液晶表示パネル20は、例えば、図2,図3に示したように、バックライトユニット1側から順に、偏光板21A、透明基板22、画素電極23、配向膜24、液晶層25、配向膜26、共通電極27、カラーフィルタ28、透明基板29および偏光板21Bを有している。
【0020】
ここで、偏光板21Aは、液晶表示パネル20の光入射側に配置された偏光板であり、偏光板21Bは液晶表示パネル20の光射出側に配置された偏光板である。偏光板21A,21Bは、光学シャッターの一種であり、ある一定の振動方向の光(偏光)のみを通過させる。偏光板21A,21Bはそれぞれ、例えば、偏光軸が互いに所定の角度だけ(例えば90度)異なるように配置されており、これによりバックライトユニット10からの射出光が液晶層を介して透過し、あるいは遮断されるようになっている。なお、偏光板は、板状に限定されない。
【0021】
偏光板21Aの透過軸の向きは、バックライトユニット10から射出された光を透過可能な範囲内に設定される。例えば、バックライトユニット10から射出される光の偏光軸が垂直方向となっている場合には、偏光板21Aの透過軸も垂直方向を向いており、バックライトユニット10から射出される光の偏光軸が水平方向となっている場合には、偏光板21Aの透過軸も水平方向を向いている。なお、バックライトユニット10から射出される光は直線偏光光である場合に限られるものではなく、円偏光や、楕円偏光、無偏光であってもよい。
【0022】
偏光板21Bの偏光軸の向きは、液晶表示パネル20を透過した光を透過可能な範囲内に設定される。例えば、偏光板21Aの偏光軸の向きが水平方向となっている場合には、偏光板21Bの偏光軸は偏光板21Aの偏光軸と直交する方向(垂直方向)を向いている。また、例えば、偏光板21Aの偏光軸の向きが垂直方向となっている場合には、偏光板21Bの偏光軸は偏光板21Aの偏光軸と直交する方向(水平方向)を向いている。なお、上記の偏光軸と、上記の透過軸とは互いに同義である。
【0023】
透明基板22,29は、一般に、可視光に対して透明な基板である。なお、バックライトユニット10側の透明基板22には、例えば、画素電極23に電気的に接続された駆動素子としてのTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)および配線などを含むアクティブ型の駆動回路が形成されている。画素電極23は、例えば酸化インジウムスズ(ITO;Indium Tin Oxide)からなり、画素ごとの電極として機能する。配向膜24,26は、例えばポリイミドなどの高分子材料からなり、液晶に対して配向処理を行う。液晶層25は、例えばVA(Vertical Alignment)モード、IPS(In-Plane Switching)モード、TN(Twisted Nematic)モードまたはSTN(Super Twisted Nematic)モードの液晶からなる。液晶層25は、図示しない駆動回路からの印加電圧により、バックライトユニット10からの射出光を画素ごとに透過または遮断する機能を有している。共通電極27は、例えばITOからなり、各画素電極23に対する共通の対向電極として機能する。カラーフィルタ28は、バックライトユニット10からの射出光を、例えば、赤(R)、緑(G)および青(B)の三原色にそれぞれ色分離するためのフィルタ部28Aを配列して形成されている。このカラーフィルタ28では、画素間の境界に対応する部分に、遮光機能を有するブラックマトリクス部28Bが設けられている。
【0024】
(位相差素子30)
次に、位相差素子30について説明する。図4(A)は、位相差素子30の断面構成の一例を表したものである。位相差素子30は、液晶表示パネル20の光射出側の表面(偏光板21B)に粘着層33を介して貼り付けられている。位相差素子30は、液晶表示パネル20の光射出側の表面(偏光板21B)に、粘着層33の代わりに接着層(図示せず)を介して貼り付けられていてもよい。なお、粘着層33は、文字通り粘着性を有するものであり、例えば、糊からなる。上記の接着層は、偏光板21Bと位相差素子30とを互いに接合した状態で固化したものであり、例えば、接着剤を乾燥させたものからなる。
【0025】
偏光板21Bは、実際には、例えば、図4(A)に示したように、透明基板29の表面に粘着層20Aを介して貼り付けられている。つまり、偏光板21Bは、粘着層20Aに直接接している。ここで、透明基板29の表面に貼り合わされた種々の光学部材の積層体の厚さが、表示装置1の3D特性(クロストーク)を規制するパラメータの1つとなっている。なお、クロストークとは、以下に示した式で定義されるものである。
【0026】
左目用画像光のクロストーク=(左目用画像光を、偏光眼鏡2の右目用光学素子41(後述)を介して見たときの輝度)/(左目用画像光を、偏光眼鏡2の左目用光学素子42(後述)を介して見たときの輝度)…(1)
右目用画像光のクロストーク=(右目用画像光を、偏光眼鏡2の左目用光学素子42を介して見たときの輝度)/(右目用画像光を、偏光眼鏡2の右目用光学素子41を介して見たときの輝度)…(2)
【0027】
偏光板21Bは、透明基板29の表面に、粘着層20Aの代わりに接着層(図示せず)を介して貼り付けられていてもよい。この場合、偏光板21Bは、接着層に直接接している。粘着層20Aは、文字通り粘着性を有するものであり、例えば、糊からなる。上記の接着層は、透明基板29と偏光板21Bとを互いに接合した状態で固化したものであり、例えば、接着剤を乾燥させたものからなる。
【0028】
位相差素子30は、液晶表示パネル20の偏光板21Bを透過した光の偏光状態を変化させるものである。位相差素子30は、例えば、図4(A)に示したように、液晶表示パネル20側から順に、粘着層33、位相差層31およびアンチグレアフィルム32を積層したものである。粘着層33は、偏光板21Bおよび位相差層31の双方に直接接している。位相差素子30は、粘着層33の代わりに、接着層(図示せず)を有していてもよい。位相差素子30が粘着層33の代わりに接着層を有している場合には、接着層が、偏光板21Bおよび位相差層31の双方に直接接している。なお、粘着層33は、文字通り粘着性を有するものであり、例えば、糊からなる。上記の接着層は、偏光板21Bと位相差層31とを互いに接合した状態で固化したものであり、例えば、接着剤を乾燥させたものからなる。位相差層31は、アンチグレアフィルム32のうち液晶表示パネル20側の面に直接接して形成されており、より具体的には、後述の基材32Aのうち液晶表示パネル20側の面に直接接して形成されている。なお、なお、図示しないが、後述する基材32Aおよびアンチグレア層32Bが位相差層31とは反対側から順に積層されている場合には、位相差層31は、アンチグレア層32Bのうち液晶表示パネル20側の面に直接接して形成されている。
【0029】
位相差層31は、光学異方性を有する薄い層である。この位相差層31は、例えば、図4(B)に示したように、遅相軸の向きが互いに異なる2種類の位相差領域(右目用位相差領域31A,左目用位相差領域31B)を有している。右目用位相差領域31Aおよび左目用位相差領域31Bは、共通する一の方向(水平方向)に延在する帯状の形状となっており、右目用位相差領域31Aおよび左目用位相差領域31Bの短手方向(垂直方向)に交互に配置されている。
【0030】
右目用位相差領域31Aは、例えば、図4、図5(A),(B)に示したように、偏光板21Bの偏光軸AX3と45°で交差する方向に遅相軸AX1を有している。一方、左目用位相差領域31Bは、例えば、図4、図5(A),(B)に示したように、偏光板21Bの偏光軸AX3と45°で交差する方向であって、かつ遅相軸AX1と直交する方向に遅相軸AX2を有している。遅相軸AX1,AX2はそれぞれ、例えば、図5(A),(B)に示したように、偏光板21Bの偏光軸AX3が垂直方向または水平方向を向いている場合には斜め45°方向を向いている。また、図示しないが、偏光板21Bの偏光軸AX3が斜め45°方向を向いている場合には、遅相軸AX1が例えば水平方向に延在しており、遅相軸AX2が例えば垂直方向を向いている。
【0031】
さらに、遅相軸AX1は、例えば、図5(A),(B)に示したように、後述する偏光眼鏡2の右目用位相差板41Aの遅相軸AX4の向きと同一の方向を向いており、後述する偏光眼鏡2の左目用位相差板42Aの遅相軸AX5の向きと異なる方向を向いている。一方、遅相軸AX2は、例えば、図5(A),(B)に示したように、遅相軸AX5の向きと同一の方向を向いており、遅相軸AX4の向きと異なる方向を向いている。
【0032】
位相差層31は、例えば、重合した高分子液晶材料を含んで構成されている。すなわち、位相差層31では、液晶分子の配向状態が固定されている。高分子液晶材料としては、相転移温度(液晶相−等方相)、液晶材料の屈折率波長分散特性、粘性特性、プロセス温度などに応じて選定された材料が用いられる。ただし、高分子液晶材料は、重合基としてアクリロイル基あるいはメタアクリロイル基を有していることが、透明性の観点から好ましい。また、高分子液晶材料として、重合性官能基と液晶骨格との間にメチレンスペーサのない材料を用いることが好ましい。プロセス時の配向処理温度を低くすることができるためである。位相差層31の厚みは、例えば、1μm〜2μmである。なお、位相差層31が、重合した高分子液晶材料を含んで構成されている場合に、位相差層31が、重合した高分子液晶材料だけで構成されている必要はなく、その一部に未重合の液晶性モノマーを含んでいてもよい。位相差層31に含まれる未重合の液晶性モノマーは、後述の配向処理(加熱処理)によって、その周囲に存在する液晶分子の配向方向と同様の方向に配向しており、高分子液晶材料の配向特性と同様の配向特性を有しているからである。
【0033】
位相差層31において、右目用位相差領域31Aおよび左目用位相差領域31Bの構成材料や厚みを調整することにより、右目用位相差領域31Aおよび左目用位相差領域31Bのリタデーション値が設定される。このリタデーション値は、粘着層20A,33およびアンチグレアフィルム32が位相差を有する場合には、これらの位相差をも考慮して設定されることが好ましい。なお、本実施の形態では、右目用位相差領域31Aおよび左目用位相差領域31Bは互いに同一の材料および厚みにより構成され、これにより、リタデーションの絶対値が互いに等しくなっている。
【0034】
次に、アンチグレアフィルム32について説明する。アンチグレアフィルム32は、太陽光や室内照明などの外光が映り込むことによる視認性の悪化を低減するために、画面表面で外光を拡散反射させるものである。アンチグレアフィルム32は、例えば、図4(A)に示したように、基材32Aと、アンチグレア層32Bとが位相差層31側から順に積層されたものである。
【0035】
なお、図示しないが、基材32Aおよびアンチグレア層32Bは、位相差層31とは反対側から順に積層されていてもよい。また、アンチグレアフィルム32は、図4(A)に示したような2層構造となっているものに限られるものではなく、例えば、上述のアンチグレア層32Bが省略されるとともに、基材32Aの上面に凹凸(例えばエンボス)が設けられたものであってもよい。また、アンチグレアフィルム32は、必要に応じて、ハードコート層を含んでいてもよい。
【0036】
基材32Aは、例えば、光学異方性の小さい、つまり複屈折の小さいものが好ましい。そのような特性を持つ透明樹脂フィルムとしては、例えば、TAC(トリアセチルセルロース)、COP(シクロオレフィンポリマー)、COC(シクロオレフィンコポリマー)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)などが挙げられる。
【0037】
アンチグレア層32Bは、基材32Aのうち液晶表示パネル20とは反対側の面に直接接して形成されている。なお、図示しないが、基材32Aおよびアンチグレア層32Bが位相差層31とは反対側から順に積層されている場合には、アンチグレア層32Bは、基材32Aのうち液晶表示パネル20側の面に直接接して形成されている。アンチグレア層32Bは、例えば、エネルギー硬化型の樹脂バインダーに、フィラーを分散させた混合液を基材32Aの表面に塗布し、それに対して熱や紫外線などのエネルギーを与えて硬化させたものである。アンチグレア層32Bの上面には、例えば、フィラーなどによって凹凸が形成されている。なお、アンチグレア層32Bの上面が、必ず凹凸形状となっている必要はない。
【0038】
[偏光眼鏡2の構成]
次に、図1、図2、図6を参照しつつ、偏光眼鏡2について説明する。偏光眼鏡2は、観察者(図示せず)の眼球の前に装着されるものであり、表示装置1の映像表示面1Aに映し出される映像を観察する際に観察者によって用いられるものである。この偏光眼鏡2は、例えば、円偏光眼鏡であり、例えば、図1、図2に示したように、右目用光学素子41、左目用光学素子42、およびフレーム43を有している。
【0039】
フレーム43は、右目用光学素子41および左目用光学素子42を支持するものである。フレーム43の形状は、特に限られるものではないが、例えば、図1、図2に示したように、観察者(図示せず)の鼻および耳にひっかける形状となっていてもよいし、図示しないが、観察者の鼻にだけひっかける形状となっていてもよい。また、フレーム43の形状は、例えば、図示しないが、観察者が手で握れる形状となっていてもよい。
【0040】
右目用光学素子41および左目用光学素子42は、表示装置1の映像表示面1Aと対向した状態で用いられる。右目用光学素子41および左目用光学素子42は、図1、図2に示したように、できるだけ一の水平面内に配置した状態で用いられることが好ましいが、多少傾いた平坦面内に配置した状態で用いられてもよい。
【0041】
右目用光学素子41は、例えば、図6に示したように、右目用位相差板41A、偏光板41B、および支持体41Cを有している。右目用位相差板41A、偏光板41B、および支持体41Cは、表示装置1の映像表示面1Aから射出された光Lが入射する側(表示装置1側)から順に配置されている。一方、左目用光学素子42は、例えば、図6に示したように、左目用位相差板42A、偏光板42B、および支持体42Cを有している。左目用位相差板42A、偏光板42B、および支持体42Cは、表示装置1の映像表示面1Aから射出された光Lが入射する側(表示装置1側)から順に配置されている。
【0042】
支持体41C,42Cは、必要に応じて省略することも可能である。また、右目用光学素子41および左目用光学素子42は、上で例示したもの以外の部材を有していてもよい。例えば、支持体41C,42Cの光射出側(観察者側)の面に、支持体41C,42Cが破損したときに破損片が観察者の眼球に飛散するのを防止する保護フィルム(図示せず)や保護のためのコーティング層(図示せず)が設けられていてもよい。
【0043】
支持体41Cは、例えば、右目用位相差板41Aおよび偏光板41Bを支持するものである。支持体41Cは、例えば、表示装置1の映像表示面1Aから射出された光Lに対して透明な樹脂、例えば、PC(ポリカーボネート)などからなる。また、支持体42Cは、例えば、左目用位相差板42Aおよび偏光板42Bを支持するものである。支持体42Cは、例えば、表示装置1の映像表示面1Aから射出された光Lに対して透明な樹脂、例えば、PC(ポリカーボネート)などからなる。
【0044】
偏光板41B,42Bは、ある一定の振動方向の光(偏光)のみを通過させるようになっている。例えば、図5(A),(B)に示したように、偏光板41B,42Bの偏光軸AX6,AX7はそれぞれ、表示装置1の偏光板21Bの偏光軸AX3と直交する方向を向いている。偏光軸AX6,AX7はそれぞれ、例えば、図5(A)に示したように、偏光板21Bの偏光軸AX3が垂直方向を向いている場合には水平方向を向いており、例えば、図5(B)に示したように、偏光板21Bの偏光軸AX3が水平方向を向いている場合には垂直方向を向いている。また、図示しないが、偏光板21Bの偏光軸AX3が斜め45°方向を向いている場合には、偏光軸AX6,AX7は、それと直交する方向(−45°)を向いている。
【0045】
右目用位相差板41Aおよび左目用位相差板42Aは、光学異方性を有する薄い層またはフィルムである。これらの位相差フィルムとしては、光学異方性の小さい、つまり複屈折の小さいものが好ましい。そのような特性を持つ樹脂フィルムとしては、例えば、COP(シクロオレフィンポリマー)、PC(ポリカーボネート)などが挙げられる。ここで、COPとしては、例えば、ゼオノアやゼオネックス(日本ゼオン(株)登録商標)、アートン(JSR株式(株)登録商標)などがある。
【0046】
右目用位相差板41Aの遅相軸AX4は、図5(A),(B)に示したように、偏光軸AX6と45°で交差する方向を向いている。また、左目用位相差板42Aの遅相軸AX5は、図5(A),(B)に示したように、偏光軸AX7と45°で交差する方向を向いており、かつ遅相軸AX4と直交する方向を向いている。遅相軸AX4,AX5はそれぞれ、例えば、図5(A),(B)に示したように、偏光軸AX6,AX7が水平方向または垂直方向を向いている場合には、水平方向および垂直方向のいずれの方向とも交差する方向を向いている。また、図示しないが、偏光軸AX6,AX7が斜め45°方向を向いている場合には、遅相軸AX4が例えば水平方向を向いており、遅相軸AX5が例えば垂直方向を向いている。
【0047】
また、遅相軸AX4は、右目用位相差領域31Aの遅相軸AX1の向きと同一の方向を向いており、左目用位相差領域31Bの遅相軸AX2の向きと異なる方向を向いている。一方、遅相軸AX5は、遅相軸AX2と同一の方向を向いており、遅相軸AX1の向きと異なる方向を向いている。
【0048】
(リタデーション)
次に、図7(A),(B)〜図10(A),(B)を参照して、偏光眼鏡2のリタデーションについて説明する。
【0049】
図7(A),(B)および図8(A),(B)は、位相差層31の右目用位相差領域31Aに入射した右目用画像光L1のみに着目し、偏光眼鏡2を介して、光L1が左右の目でどのように認識されるかを例示した概念図である。また、図9(A),(B)および図10(A),(B)は、位相差層31の左目用位相差領域31Bに入射した左目用画像光L2のみに着目し、偏光眼鏡2を介して、光L2が左右の目でどのように認識されるかを例示した概念図である。なお、実際には、右目用画像光L1および左目用画像光L2は、混在した状態で出力されるが、図7(A),(B)〜図10(A),(B)では、説明の便宜上、右目用画像光L1と左目用画像光L2を別個に分けて記述した。
【0050】
ところで、偏光眼鏡2を用いて表示装置1の映像表示面を観察した場合に、例えば、図7(A),(B)、図8(A),(B)に示したように、右目には右目用画素の画像が認識でき、左目には右目用画素の画像が認識できないようにすることが必要である。また、同時に、例えば、図9(A),(B)、図10(A),(B)に示したように、左目には左目用画素の画像が認識でき、右目には左目用画素の画像が認識できないようにすることが必要である。そのためには、以下に示したように、右目用位相差領域31Aおよび右目用位相差板41Aのリタデーションならびに左目用位相差領域31Bおよび左目用位相差板42Aのリタデーションを設定することが好ましい。
【0051】
具体的には、右目用位相差板41Aおよび左目用位相差板42Aのリタデーションのうち一方が+λ/4(λは波長)となっており、他方が−λ/4となっていることが好ましい。ここで、リタデーションの符号が逆になっているのは、それぞれの遅相軸の向きが90°異なることを示している。このとき、右目用位相差領域31Aのリタデーションは右目用位相差板41Aのリタデーションと同一となっていることが好ましく、左目用位相差領域31Bのリタデーションは左目用位相差板42Aのリタデーションと同一となっていることが好ましい。
【0052】
[表示装置1の製造方法]
次に、表示装置1の製造方法の一例について説明する。
【0053】
まず、表面に配向機能を有する配向基材110を製造する。例えば、溝の延在方向が互いに異なる2種類の溝領域が表面300Aに形成された原盤300を用意する(図11(A))。次に、この原盤300の表面300Aに、例えばUV硬化アクリル樹脂液を含むUV硬化樹脂層111を配置したのち、UV硬化樹脂層111を、例えばTACからなる基材112で封止する(図11(B))。なお、基材112として用いるTACは、UV吸収効果の無いものであることが好ましい。次に、UV硬化樹脂層111に紫外線を照射して、UV硬化樹脂層111を硬化させたのち、原盤300を剥離する。このようにして、配向基材110が形成される。
【0054】
なお、上記のようにして形成した配向基材110の表面の凹凸に倣って無配向性薄膜113を形成してもよい(図12)。無配向性薄膜113とは、薄膜の表面に位置する多数の分子が配向性を有していない、つまりランダムな方向を向いている薄膜のことを指している。無配向性薄膜113は、例えばUV硬化樹脂からなる。無配向性薄膜113は、例えば、塗布やスパッタなどの、分子に配向性が生じないような方法によって作成することが可能である。
【0055】
また、無配向性薄膜113を形成していない配向基材110の表面、または、無配向性薄膜113の表面に対して、コロナ処理(放電処理)を施してもよい(図13(A),(B))。例えば、面内に均一に放電処理を施すため、処理条件は、L/S=10m/s以上、0.5kW以上となっていることが好ましい。また、配向基材110が再利用品である場合で、既にコロナ処理がなされているときには、コロナ処理を再度行う必要はない。なお、基材フィルムの表面に光配向膜を形成することにより、配向基材110が形成されてもよい。
【0056】
次に、積層体120を製造する。まず、上記のようにして形成した配向基材110の表面に、液晶性モノマーを含む液晶層31Dを、例えばロールコータなどでコーティング(例えば塗布)して形成する(図14)。つまり、液晶層31Dは、配向性を有する材料で構成されている。このとき、液晶層31Dには、必要に応じて、液晶性モノマーを溶解させるための溶媒、重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤、レベリング剤などを用いることができる。
【0057】
続いて、配向基材110上の液晶層31Dの液晶性モノマーの配向処理(加熱処理)を行う。この加熱処理は、液晶性モノマーの相転移温度以上であって、特に溶媒を用いた場合には、この溶媒が乾燥する温度以上の温度で行うようにする。例えば、液晶層31Dを80℃の温度で30秒間加熱する。ここで、前工程における液晶性モノマーのコーティングによって、液晶性モノマーと配向基材110との界面にずり応力が働き、流れによる配向(流動配向)や力による配向(外力配向)が生じ、液晶分子が意図しない方向に配向してしまうことがある。上記加熱処理は、このような意図しない方向に配向してしまった液晶性モノマーの配向状態を一旦キャンセルするために行われる。これにより、液晶層31Dでは、溶媒が乾燥して液晶性モノマーのみとなり、その状態は等方相となる。
【0058】
この後、液晶層を相転移温度よりも少し低い温度まで徐冷する。例えば、液晶層31Dを30秒間除冷する。これにより、液晶性モノマーは、配向基材110の配向規制力によって配向する。例えば、液晶性モノマーが配向基材110の表面の微細溝の延在方向に沿って配向する。このようにして、積層体120が製造される。なお、このとき、液晶層31Dには、遅相軸の向きが互いに異なる2種類の位相差領域を有する位相差層が生成される。つまり、液晶層31Dは、未硬化状態ではあるものの、右目用位相差領域31Aおよび左目用位相差領域31Bを有する位相差層31と同一の機能を有している。
【0059】
次に、積層体140を製造する。まず、基材32Aの一方の表面にアンチグレア層32Bを有し、さらに、アンチグレア層32Bの表面に剥離フィルム30Aを有する積層体130を用意する(図15)。積層体130は、アンチグレアフィルムと呼ばれるものであり、一般に入手可能なものである。なお、剥離フィルム30Aは、アンチグレア層32Bを保護するものである。この積層体130において、基材32Aの裏面に対して、液晶層31Dとの密着性を向上させる表面改質を行ってもよい。この表面改質を行う方法としては、例えば、コロナ処理(放電処理)が挙げられる(図16)。コロナ処理の条件は、L/S=10m/s以上、0.5kW以上となっていることが好ましい。
【0060】
次に、積層体120と、積層体130とを、液晶層31Dおよび基材32Aが互いに直接接するように重ね合わせる(図17(A),(B))。続いて、液晶層31Dに対して、例えばUV光を照射することにより、液晶性モノマーを硬化(固化)させる(図18(A))。例えば、フュージョン社のUV照射器によって、配向基材110側から約500mJ/cm2のUV光を照射し、液晶層31Dの液晶性モノマーを硬化(固化)させる。これにより、液晶分子の配向状態が固定され、右目用位相差領域31Aおよび左目用位相差領域31Bを有する位相差層31が形成される(図18(B))。その後、配向基材110を剥離して、積層体130を形成する(図19)。続いて、積層体130の表面(位相差層31の表面)に、粘着層33および剥離フィルム30Bをこの順に形成する。以上により、基材32Aの一方の面に直接接して設けられたアンチグレア層32Bと、基材32Aの他方の面に直接接して設けられた位相差層31とを有し、さらに、アンチグレア層32Bのうち基材32Aに非接触の面に直接接して設けられた剥離フィルム30Aと、位相差層31のうち基材32Aに非接触の面に粘着層33を介して設けられた剥離フィルム30Bとを有する積層体140が完成する(図20)。なお、剥離フィルム30Bは、粘着層33を保護するものである。
【0061】
その後、剥離フィルム30Bを剥離して、粘着層33を露出させる。続いて、積層体140を、粘着層33を液晶表示パネル20に向けて、液晶表示パネル20に貼り合わせる。最後に、剥離フィルム30Aを剥離する。このようにして、表示装置1が完成する。
【0062】
[基本動作]
次に、本実施の形態の表示装置1において画像を表示する際の基本動作の一例について、図7(A),(B)〜図10(A),(B)を参照しつつ説明する。
【0063】
まず、バックライト10から照射された光が液晶表示パネル20に入射している状態で、映像信号として右目用画像および左目用画像を含む視差信号が液晶表示パネル20に入力される。すると、奇数行の画素から右目用画像光L1が出力され(図7(A),(B)または図8(A),(B))、偶数行の画素から左目用画像光L2が出力される(図9(A),(B)または図10(A),(B))。
【0064】
その後、右目用画像光L1および左目用画像光L2は、位相差素子30の右目用位相差領域31Aおよび左目用位相差領域31Bによって楕円偏光に変換されたのち、表示装置1の映像表示面1Aから外部に出力される。その後、表示装置1の外部に出力された光は、偏光眼鏡2に入射し、右目用位相差板41Aおよび左目用位相差板42Aによって楕円偏光から直線偏光に戻されたのち、偏光板41B,42Bに入射する。
【0065】
このとき、偏光板41B,42Bへの入射光のうち右目用画像光L1に対応する光の偏光軸は、偏光板41Bの偏光軸AX6と平行となっており、偏光板42Bの偏光軸AX7と直交している。従って、偏光板41B,42Bへの入射光のうち右目用画像光L1に対応する光は、偏光板41Bだけを透過して、観察者の右目に到達する(図7(A),(B)または図8(A),(B))。
【0066】
一方、偏光板41B,42Bへの入射光のうち左目用画像光L2に対応する光の偏光軸は、偏光板41Bの偏光軸AX6と直交しており、偏光板42Bの偏光軸AX7と平行となっている。従って、偏光板41B,42Bへの入射光のうち左目用画像光L2に対応する光は、偏光板42Bだけを透過して、観察者の左目に到達する(図9(A),(B)または図10(A),(B))。
【0067】
このようにして、右目用画像光L1に対応する光が観察者の右目に到達し、左目用画像光L2に対応する光が観察者の左目に到達した結果、観察者は表示装置1の映像表示面1Aに立体画像が表示されているかのように認識することができる。
【0068】
[効果]
次に、本実施の形態の表示装置1の効果について説明する。本実施の形態では、位相差層31を支持する基材として、アンチグレア層32Bを支持する基材32Aが用いられている。これにより、位相差層31を支持する基材を別個に設けた場合と比べて、積層体140および位相差素子30が薄くなっている。位相差層31を支持する基材が設けられていないのは、製造過程で、位相差層31を支持する基材(配向基材110)を剥離したからである。また、位相差層31を支持する基材が別個に設けられていないのは、配向基材110を剥離した際に、アンチグレア層32Bを支持する基材32Aが位相差層31を支持する基材として機能するからである。本実施の形態では、以上のようにして、位相差素子30を薄くしているので、3D特性(クロストーク)の劣化を低減することができる。
【0069】
また、本実施の形態では、積層体140を製造する過程で配向基材110が剥離される。従って、一旦、配向基材110を製造した後は、積層体140を製造する際に、配向基材110を繰り返し使用することが可能となる。これにより、配向基材110を逐一製造する場合と比べて、表示装置1の製造時間および製造コストを低減することができる。
【0070】
<2.変形例>
[第1変形例]
上記実施の形態において、例えば、図21に示したように、アンチグレア層32Bの代わりに、表面反射を軽減し、透過率を増加させる反射防止層32Cが設けられ、アンチグレアフィルム32の代わりに、反射防止フィルム33が設けられていてもよい。この場合、上記実施の形態の記載において、アンチグレア層32Bを、反射防止層32Cに読み替え、アンチグレアフィルム32を、反射防止フィルム33に読み替えればよい。なお、そのような読み替えを行うと、例えば、積層体140は、基材32Aの一方の面に直接接して設けられた反射防止層32Cと、基材32Aの他方の面に直接接して設けられた位相差層31とを有し、さらに、反射防止層32Cのうち基材32Aに非接触の面に直接接して設けられた剥離フィルム30Aと、位相差層31のうち基材32Aに非接触の面に粘着層33を介して設けられた剥離フィルム30Bとを有する構成となる。
【0071】
[第2変形例]
また、上記実施の形態およびその変形例において、例えば、図22に示したように、基材32Aと位相差層31との間に、粘着層34が挿入されていてもよい。なお、粘着層34の代わりに接着層(図示せず)が挿入されていてもよい。粘着層34は、文字通り粘着性を有するものであり、例えば、糊からなる。上記の接着層は、基材32Aと位相差層31とを互いに接合した状態で固化したものであり、例えば、接着剤を乾燥させたものからなる。
【0072】
ところで、基材32Aと位相差層31との間に粘着層34または接着層を挿入したことにより、上記実施の形態に記載した製造方法とは異なる方法を採ることが可能となる。そこで、以下に、基材32Aと位相差層31との間に粘着層34または接着層を挿入するときの製造方法の一例について説明する。
【0073】
まず、上記実施の形態と同様にして、配向基材110を製造する(図23(A))。つまり、配向基材110は、例えば、図11(C)、図12、図13(A)、または図13(B)に示した構成となっている。配向基材110は、基材フィルムの表面に光配向膜を形成することにより形成されたものであってもよい。
【0074】
次に、配向基材110の表面に、液晶層31Dを、例えばロールコータなどでコーティング(例えば塗布)して形成する(図23(B))。続いて、上記実施の形態と同様、液晶層31Dの液晶性モノマーの配向処理(加熱処理)を行った後、液晶層を相転移温度よりも少し低い温度まで徐冷する。次に、液晶層31Dに対して、例えばUV光を照射することにより、液晶性モノマーを硬化(固化)させる(図23(B))。例えば、フュージョン社のUV照射器によって、液晶層31D側から約500mJ/cm2のUV光を照射し、液晶層31Dの液晶性モノマーを硬化(固化)させる。これにより、液晶分子の配向状態が固定され、右目用位相差領域31Aおよび左目用位相差領域31Bを有する位相差層31が形成される(図23(C))。このようにして、配向基材110上に位相差層31を有する積層体150が完成する。
【0075】
次に、積層体160を製造する。まず、基材32Aの一方の表面にアンチグレア層32Bを有し、さらに、アンチグレア層32Bの表面に剥離フィルム30Aを有する積層体130を用意する(図15)。積層体130は、アンチグレアフィルムと呼ばれるものであり、一般に入手可能なものである。この積層体130において、基材32Aの裏面(アンチグレア層32Bの形成されていない側の表面)に対して、液晶層31Dとの密着性を向上させる表面改質を行ってもよい。この表面改質を行う方法としては、例えば、コロナ処理(放電処理)が挙げられる(図16)。次に、基材32Aの裏面に、粘着層34または接着層を形成し、積層体160を形成する(図24)。
【0076】
次に、積層体180を製造する。まず、積層体150と、積層体160とを、粘着層34または接着層および位相差層31が互いに直接接するように重ね合わせる(図25(A),(B))。次に、配向基材110を剥離して、積層体170を形成する(図26)。続いて、積層体170の表面(位相差層31の表面)に、粘着層33または接着層および剥離フィルム30Bをこの順に形成する。以上により、基材32Aの一方の面に直接接して設けられたアンチグレア層32Bと、基材32Aの他方の面に粘着層34または接着層を介して接して設けられた位相差層31とを有し、さらに、アンチグレア層32Bのうち基材32Aに非接触の面に直接接して設けられた剥離フィルム30Aと、位相差層31のうち基材32Aとは反対側の面に粘着層33を介して設けられた剥離フィルム30Bとを有する積層体180が完成する(図27)。
【0077】
その後、剥離フィルム30Bを剥離して、粘着層33または接着層を露出させる。続いて、積層体180を、粘着層33または接着層を液晶表示パネル20に向けて、液晶表示パネル20に貼り合わせる。最後に、剥離フィルム30Aを剥離する。このようにして、表示装置1が完成する。
【0078】
なお、本変形例において、例えば、図28に示したように、アンチグレア層32Bの代わりに、表面反射を軽減し、透過率を増加させる反射防止層32Cが設けられ、アンチグレアフィルム32の代わりに、反射防止フィルム33が設けられていてもよい。この場合、本変形例の記載において、アンチグレア層32Bを、反射防止層32Cに読み替え、アンチグレアフィルム32を、反射防止フィルム33に読み替えればよい。なお、そのような読み替えを行うと、例えば、積層体180は、基材32Aの一方の面に直接接して設けられた反射防止層32Cと、基材32Aの他方の面に粘着層34または接着層を介して接して設けられた位相差層31とを有し、さらに、反射防止層32Cのうち基材32Aに非接触の面に直接接して設けられた剥離フィルム30Aと、位相差層31のうち基材32Aとは反対側の面に粘着層33を介して設けられた剥離フィルム30Bとを有する構成となる。
【0079】
[第3変形例]
上記の第2変形例において、粘着層34または接着層が、UV硬化樹脂または熱硬化樹脂で構成されていてもよい。以下に、粘着層34または接着層が、UV硬化樹脂で構成されている場合の製造方法の一例について説明する。
【0080】
まず、上記の第2変形例と同様にして、積層体150を製造する。次に、積層体190を製造する。まず、基材32Aの一方の表面にアンチグレア層32Bを有し、さらに、アンチグレア層32Bの表面に剥離フィルム30Aを有する積層体130を用意する(図15)。積層体130は、アンチグレアフィルムと呼ばれるものであり、一般に入手可能なものである。この積層体130において、基材32Aの裏面(アンチグレア層32Bの形成されていない側の表面)に対して、UV硬化樹脂層30E(後述)との密着性を向上させる表面改質を行ってもよい。この表面改質を行う方法としては、例えば、コロナ処理(放電処理)が挙げられる(図16)。次に、基材32Aの裏面に、UV硬化樹脂層30Eを形成し、積層体190を形成する(図29)。
【0081】
次に、積層体180を製造する。まず、積層体150と、積層体190とを、UV硬化樹脂層30Eおよび位相差層31が互いに直接接するように重ね合わせる(図30(A),(B))。次に、UV硬化樹脂層30Eに対して、例えばUV光を照射することにより、UV硬化樹脂層30Eを硬化(固化)させる(図31(A))。例えば、フュージョン社のUV照射器によって、配向基材110側から約500mJ/cm2のUV光を照射し、UV硬化樹脂層30Eを硬化(固化)させる。これにより、UV硬化樹脂層30Eが粘着層34または接着層となる(図31(B))。その後、配向基材110を剥離して、積層体170を形成する(図26)。続いて、積層体170の表面(位相差層31の表面)に、粘着層33および剥離フィルム30Bをこの順に形成する。以上により、積層体180が完成する(図27)。なお、本製造方法において、アンチグレア層32Bの代わりに、反射防止層32Cを用いてもよい。その場合には、本製造方法の記載において、アンチグレア層32Bを、反射防止層32Cに読み替えればよい。
【0082】
次に、粘着層34または接着層が、熱硬化樹脂で構成されている場合の製造方法の一例について説明する。
【0083】
まず、上記の第2変形例と同様にして、積層体150を製造する。次に、積層体200を製造する。まず、基材32Aの一方の表面にアンチグレア層32Bを有し、さらに、アンチグレア層32Bの表面に剥離フィルム30Aを有する積層体130を用意する(図15)。積層体130は、アンチグレアフィルムと呼ばれるものであり、一般に入手可能なものである。この積層体130において、基材32Aの裏面(アンチグレア層32Bの形成されていない側の表面)に対して、熱硬化樹脂30Fとの密着性を向上させる表面改質を行ってもよい。この表面改質を行う方法としては、例えば、コロナ処理(放電処理)が挙げられる(図16)。次に、基材32Aの裏面に、熱硬化樹脂30Fを形成し、積層体200を形成する(図32)。
【0084】
次に、積層体180を製造する。まず、積層体150と、積層体200とを、熱硬化樹脂30Fおよび位相差層31が互いに直接接するように重ね合わせる(図33(A),(B))。次に、熱硬化樹脂30Fに対して、例えば熱を加えることにより、熱硬化樹脂30Fを硬化(固化)させる(図34(A))。例えば、80℃の温度で120秒間、熱硬化樹脂30Fを加熱する。これにより、熱硬化樹脂30Fが粘着層34または接着層となる(図34(B))。その後、配向基材110を剥離して、積層体170を形成する(図26)。続いて、積層体170の表面(位相差層31の表面)に、粘着層33および剥離フィルム30Bをこの順に形成する。以上により、積層体180が完成する(図27)。なお、本製造方法において、アンチグレア層32Bの代わりに、反射防止層32Cを用いてもよい。その場合には、本製造方法の記載において、アンチグレア層32Bを、反射防止層32Cに読み替えればよい。
【0085】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本技術を説明したが、本技術は実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。
【0086】
例えば、実施の形態等では、位相差層31は、遅相軸の向きが互いに異なる2種類の位相差領域を有していたが、遅相軸の向きが互いに異なる3種類以上の位相差領域を有していてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…表示装置、1A…映像表示面、2…偏光眼鏡、10…バックライトユニット、20…液晶表示パネル、20A,33,34…粘着層、21A,21B,41B,42B…偏光板、22,29…透明基板、23…画素電極、24,26…配向膜、25,31D…液晶層、27…共通電極、28…カラーフィルタ、28A…フィルタ部、28B…ブラックマトリクス部、30…位相差素子、30A,30B…剥離フィルム、30F…熱硬化樹脂層、31…位相差層、31A…右目用位相差領域、31B…左目用位相差領域、32…アンチグレアフィルム、32A,130…基材、32B…アンチグレア層、32C…反射防止層、33…反射防止フィルム、34A…右目用配向領域、34B…左目用配向領域、40…積層体、41…右目用光学素子、41A…右目用位相差板、41C,42C…支持体、42…左目用光学素子、42A…左目用位相差板、110…配向基材、111,30E…UV硬化樹脂層、112…基材、113…無配向性薄膜、120,130,140,150,160,170,180,190,200…積層体、300…原盤、300A…表面、AX1,AX2,AX4,AX5,AX6,AX7,AX8…遅相軸または偏光軸(透過軸)、Lb…境界線、L…映像光、L1…右目用画像光、L2…左目用画像光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の一方の面に直接接して設けられた反射防止層またはアンチグレア層と、
前記基材の他方の面に直接、または第1接着層もしくは第1粘着層を介して接して設けられ、かつ遅相軸の向きが互いに異なる2種類以上の位相差領域を有する位相差層と
を備えた
積層体。
【請求項2】
前記反射防止層または前記アンチグレア層のうち前記基材に非接触の面に直接接して設けられた第1剥離フィルムと、
前記位相差層のうち前記基材に非接触の面に、第2接着層または第2粘着層を介して設けられた第2剥離フィルムと
をさらに備えた
請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
映像信号に応じた映像を映像表示面に表示する表示パネルと、
前記映像表示面に接して設けられた位相差素子と
を備え、
前記位相差素子は、
基材と、
前記基材のうち前記表示パネルとは反対側の面に直接接して形成された反射防止層またはアンチグレア層と、
前記基材のうち前記表示パネル側の面に直接、または第1接着層もしくは第1粘着層を介して接して形成され、かつ遅相軸の向きが互いに異なる2種類以上の位相差領域を有する位相差層と、
前記位相差層のうち前記表示パネル側の面に直接接して形成された第2接着層もしくは第2粘着層と
を有し、
前記表示パネルは、前記第2接着層もしくは前記第2粘着層に直接接する偏光板を前記映像表示面に有する
表示装置。
【請求項4】
表面に配向機能を有する配向基材の表面に、配向性を有する材料を塗布することにより、遅相軸の向きが互いに異なる2種類以上の位相差領域を有する位相差層を前記配向基材の表面に有する第1積層体を形成する第1工程と、
前記第1積層体と、支持基材の表面に反射防止層またはアンチグレア層を有する第2積層体とを、前記位相差層および前記支持基材が互いに直接接するように重ね合わせたのち、前記位相差層を固化し、前記配向基材を剥離する第2工程と
を含む
積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第2工程において、前記支持基材の表面に対してコロナ処理を行うことにより密着性を向上させる表面改質を行ったのち、前記第1積層体と前記第2積層体とを重ね合わせる
請求項4に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
表面に配向機能を有する配向基材の表面に、配向性を有する材料を塗布したのち、固化することにより、遅相軸の向きが互いに異なる2種類以上の位相差領域を有する位相差層を前記配向基材の表面に有する第1積層体を形成する第1工程と、
前記第1積層体と、支持基材の一方の面に反射防止層またはアンチグレア層を有するとともに前記支持基材の他方の面に接着層または粘着層を有する第2積層体とを、前記位相差層および前記接着層または前記粘着層が互いに直接接するように重ね合わせたのち、前記配向基材を剥離する第2工程と
を含む
積層体の製造方法。
【請求項7】
前記第2工程において、前記第1積層体と前記第2積層体とを重ね合わせたのち、前記接着層または前記粘着層を固化した上で、前記配向基材を剥離する
請求項6に記載の積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2013−101262(P2013−101262A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245675(P2011−245675)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】