説明

積層体およびその製造方法

【課題】光触媒活性の高いアナターゼ型酸化チタンの(101)面が高度に配向した被膜を基材上に設けた、建築部材、自動車部材、又は空気・水浄化用部材として極めて有用な新規な積層体およびその製造方法を提供する光触媒反応性の高い結晶面が高度に配向したアナターゼ酸化チタン被膜からなる積層体を提供する。
【解決手段】基材上に両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子を含む被膜を設けた積層体であって、前記被膜の結晶方向が厚み方向に対して(101)方向に配向している積層体。両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の面がアナターゼ型酸化チタンの(101)面である積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上にアナターゼ型酸化チタン微粒子を含む被膜を設けた、新規な積層体ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンは、その化学的安定性、無毒、豊富な地球資源から産業上の利用に適しており、顔料や化粧料等に広く用いられている。また、酸化チタンは特異な物理・化学特性から、光触媒、光電変換材料、磁気光学材料、透明導電材料等の各種分野から大きな注目を集めている。
ところで、酸化チタンの結晶多形として、ルチル型とアナターゼ型が良く知られているが、アナターゼ型酸化チタンの方が、電子の還元力が高く移動度も高いため、光触媒や色素増感型の太陽電池の用途において広く用いられている。こうした酸化チタンの応用に際しては、微粒子の合成や簡便なプロセスによる薄膜化、コーティング化が必要不可欠となる。
【0003】
また、酸化チタンの結晶性は、電子・正孔の寿命や移動度に影響を及ぼす重要な要素であり、中でも高結晶性の酸化チタン粒子において、従来の粒子よりも高活性であることが報告されている。例えば、非特許文献1に示すように、結晶性の高い酸化チタン微粒子において、光触媒活性が従来の粒子に比較して優位である例が報告されている。
【0004】
一方、性能を高めるため、粒子の結晶面の配向制御も重要となる。例えば、非特許文献2に示すように、アナターゼ型酸化チタンの結晶面のうち(001)面よりも(101)面に活性点となる電子のトラップサイトが多数存在することが報告されている。また、非特許文献3に示すように、アナターゼ型酸化チタンの(101)面はエネルギー的に安定である。
【0005】
(101)面が露出しているアナターゼ型酸化チタンとして、非特許文献4に両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン粒子が開示されている。この手法では、両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン粒子を得るための加熱処理が300℃にも達し、粒子の結晶成長が促進される上、反応の添加剤として、極性の高いラウリン酸を添加しているため、両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン粒子が接触した構造をとる。粒子同士が接触すると、溶媒への単分散や塗膜後の高度な結晶配向性は期待できない。
また、こうしたアナターゼ型酸化チタン粒子を薄膜化し、基材上に設けた積層体がこれまでに知られていない。
【0006】
【非特許文献1】H.Kominami et al. Catal. Today, 84, 181 (2003)
【非特許文献2】T.Ohno et al. New J. Chem. 26, 1167 (2002)
【非特許文献3】M.Lazzeri et al. Physical Review B, 63, 155409 (2001)
【非特許文献4】Y.W. Jun et al. J. Am. Chem. Soc. 125, 15981 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、光触媒活性の高いアナターゼ型酸化チタンの(101)面が高度に配向した被膜を基材上に設けた、建築部材、自動車部材、又は空気・水浄化用部材として極めて有用な新規な積層体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この出願によれば、以下の発明が提供される。
〈1〉基材上に両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子を含む被膜を設けた積層体であって、前記被膜の結晶方向が厚み方向に対して(101)方向に配向していることを特徴とする積層体。
〈2〉前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の面がアナターゼ型酸化チタンの(101)面であることを特徴とする〈1〉に記載の積層体。
〈3〉前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子が単結晶であることを特徴とする〈1〉又は〈2〉に記載の積層体。
〈4〉前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子に、窒素、硫黄、炭素、リン、ホウ素及びフッ素からなる群より選択される少なくとも一つのアニオンがドープされていることを特徴とする〈1〉〜〈3〉のいずれかに記載の積層体。
〈5〉前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の大きさが10nm〜200nmであることを特徴とする〈1〉〜〈4〉のいずかに記載の積層体。
〈6〉前記被膜の厚さが10nm〜10μmであることを特徴とする〈1〉〜〈5〉のいずれかに記載の積層体。
〈7〉前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子を含む被膜と基材の間に中間層が存在することを特徴とする〈1〉〜〈6〉のいずれかに記載の積層体。
〈8〉前記中間層の厚みが5nm〜5μmであることを特徴とする〈7〉に記載の積層体。
〈9〉前記被膜及び/又は中間層に、バンドギャップが3.0eV以下であって、伝導帯および荷電子帯のポテンシャルが酸化チタンよりも貴である、酸化チタン以外の無機化合物が存在することを特徴とする〈1〉〜〈8〉のいずれかに記載の積層体。
〈10〉前記無機化合物が酸化タングステンであることを特徴とする〈9〉に記載の積層体。
〈11〉前記被膜表面の水との接触角が、紫外線強度50μW/cmの白色蛍光灯の照射に応じて30分以内に5度以下まで低下することを特徴とする〈1〉〜〈10〉のいずれかに記載の積層体。
〈12〉前記被膜表面の水との接触角が、波長400〜500nmで強度0.2mW/cm2の可視光の照射に応じて5度以下まで低下することを特徴とする〈9〉〜〈11〉のいずれかに記載の積層体。
〈13〉前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン及び/又は酸化チタン以外の無機化合物を光励起するための光源が白色蛍光灯、白熱灯及びLEDから選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする〈1〉〜〈12〉のいずれかに記載の積層体。
〈14〉〈1〉〜〈13〉のいずれかに記載の積層体からなる、建築部材、自動車部材、又は空気・水浄化用部材。
〈15〉〈1〉〜〈14〉のいずれかに記載の積層体の製造方法であって、pHが4以下又は8以上に調整された両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の分散液を基材に塗布する工程を含むことを特徴とする〈1〉〜〈14〉のいずれかに記載の積層体の製造方法。
〈16〉前記分散液中の両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の濃度が10%以下であることを特徴とする〈15〉に記載の積層体の製造方法。
〈17〉前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子をチタン酸のナノチューブを水系媒体中で水熱処理することにより得ることを特徴とする〈15〉又は〈16〉に記載の積層体の製造方法。
〈18〉水系媒体に尿素及び/又はチオ尿素が含まれることを特徴とする〈17〉に記載の積層体の製造方法。
〈19〉前記水系媒体のpHが2以上であることを特徴とする〈17〉又は〈18〉に記載の積層体の製造方法。
〈20〉前記水熱処理の温度が150℃以上であることを特徴とする〈17〉〜〈19〉に記載の積層体の製造方法。
〈21〉pHが4以下又は8以上に調整された両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の分散液。
〈22〉前記分散液中の両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の濃度が10%以下であることを特徴とする〈21〉に記載の分散液。
〈23〉前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子がチタン酸のナノチューブを水系媒体中で水熱処理することにより得られたものであることを特徴とする〈21〉又は〈22〉に記載の分散液。
〈24〉水系媒体に尿素及び/又はチオ尿素が含まれることを特徴とする〈23〉に記載の分散液。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る積層体は、基材上に、安定で電子のトラップサイトが多数存在するアナターゼ型酸化チタンの(101)面を被膜の厚み方向に配向していることから、高度な光触媒活性を発現する。
特に、本発明の積層体においては、酸化チタン微粒子を含む被膜表面の水との接触角が紫外線強度50μW/cmの白色蛍光灯の照射に応じて30分以内に5度以下までに低下(親水化)することから、通常の多結晶型酸化チタン薄膜とは異なり、紫外線強度が低い白色光を用いても、その親水化反応は進行し、高度の親水化活性を発現する。
したがって、本発明の積層体は高度な光触媒活性を有し、例えば、建築部材、自動車部材、空気・水浄化用フィルター部材等へ応用することができる
たとえば、鏡、レンズ、板ガラス等の基材の表面に本発明に係る酸化チタン微粒子を含む被膜を形成させることで表面を高度に親水化することができ、曇りや水滴形成を防止する防曇効果を発揮することができる。
更に、本発明の積層体は、表面に付着した有機物を分解する効果により、表面が汚れるのを防止し、または表面を自己浄化(セルフクリーニング)し、若しくは容易に清掃する技術にも適用できる。本発明の積層体のセルフクリーニング効果により、メンテナンスコストを低減させたり、商品寿命を長期化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の積層体は基材上に両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子を含む被膜が設けられ、該被膜の結晶方向が厚み方向に対して(101)方向に配向していることを特徴とする。
ここで、両角錐体とは、ピラミッド状の角面体が2個、底面で接触した構造で、実質的に8つの面を有するものをいう。
本発明においては、前記8つの面は全て(101)面である。すなわち、アナターゼ型結晶は正方晶のため、(101)(−101)(011)(0−11)(10−1)(−10−1)(01−1)(0−1−1)の8つの面は全て等価である。
なお、本発明の両角錐体はピラミッド状の角面体が2個、底面で接触した構造を有していればよく、その頂点は先鋭であっても、面を形成していても構わない。例えば、両角錐体の(001)方向の頂点が面を形成している場合、この面は(001)面となり、粒子は10面体となるが、このような粒子も本発明に包含される。
【0011】
本発明においては、前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子からなる被膜は厚み方向に対して(101)方向に配向している。すなわち、基板に垂直な方向にアナターゼ型酸化チタンの(101)方向が配向している。前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の面は全て(101)面であり、前記粒子を高度に分散したコーティング液を用いて基板に塗布した場合、前記微粒子の面が基板に接触し、被膜の結晶方向が高度に配向する。
本発明における「(101)方向に配向している」とは、(101)方向が基板と必ずしも垂直でなくても構わない。結晶方向がランダムな多結晶と比較して、一定の方向性を有していれば良い。
【0012】
本発明の好ましい態様として、基板に対する配向の度合いは±10°以内である。基板に対する配向の度合いを±10°以内に納めるため、塗布工程で使用する分散液の好ましい固形分濃度は10%以下であり、より好ましくは1%以下である。
薄膜の配向性はX線回折のOut-of-PlaneないしIn-Plane測定によって測定することができる。Out-of-Plane測定で観察される回折ピークは基板に垂直な結晶軸であり、In-Plane測定で観察される回折ピークは基板に平行な結晶軸となる。
基板に対する配向の度合いは2θ/θの角度を(101)面に固定し、基板角度の傾きをスキャンすることによって測定することができる。また、本発明の積層体の被膜は、その結晶方向が面内方向にも配向していても構わない。
【0013】
前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子に粒界が存在していても構わないが、好ましくは単結晶である。すなわち、粒界は光触媒反応に関わる電子正孔対の移動を阻害するため、高度の光触媒活性を発現させるためには、本発明に係る微粒子は単結晶であることが好ましい。
【0014】
本発明の積層体に可視光での光触媒反応活性を持たせるため、前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子に窒素、リン、硫黄、炭素、ホウ素、フッ素からなる群より選択される少なくとも一つのアニオンをドープしても構わない。また、可視光を吸収することのできる白金錯体や硫化カドミウム、色素を複合しても構わない。
特に好ましい態様においては、本発明に係る酸化チタン微粒子に窒素ないし硫黄のいずれか一項、または両方をドープする。窒素ないし硫黄等のアニオンを導入することによる可視化は、たとえば、非特許文献(R. Asahi et al. Science, 293, 269 (2001))に開示され、その可視光応答性の発現機構は定かではないが、次のように予想される。
酸素よりも共有結合性の高い窒素や硫黄等のアニオンを導入した場合、価電子帯を形成する酸素の2p軌道よりも卑なポテンシャルに窒素ないし硫黄等のアニオンで形成される準位が出現する。この準位は酸化チタンの禁制帯(バンドギャップ)の中にあっても良いし、酸化チタンの酸素の2p軌道と混成しても構わない。このように窒素ないし硫黄、または両方を導入することによって新たに出現する準位により、可視光の吸収が可能となる。
【0015】
ただし、前記理論はあくまで推定の区域を出るものではなく、本発明はこの理論に限定されるものではない。窒素ないし硫黄を導入するサイトは、酸化チタン結晶の酸素位置に置換、格子間に割り込み、粒界部のうちいずれか一項で構わない。窒素、ないし硫黄以外のアニオンである炭素、ホウ素、フッ素、リンについても酸化チタンにドープすることで同様の効果が期待できる。
アニオンのドープ量やその状態はX線光電子分光法(XPS)によって測定することができる。本発明の酸化チタン微粒子への窒素ないし硫黄のドープ量は、好ましくはX線光電子分光法で測定した値で10%以下である。より好ましくは、前記ドープ量は1%以下である。ドープ量が多いと結晶が歪み、格子欠陥が生成して光触媒反応を阻害する。
【0016】
一方、本発明に係る両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子に窒素ないし硫黄等のアニオンをドープすると着色するので、粉末体であれば拡散反射法を用いた分光光度計で反射率を測定することができる。薄膜体であれば、分光光度計により透過率や反射率を測定することで可視光での光吸収を調べることができる。
【0017】
本発明に係る両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の大きさは10nm〜200nmである。これよりもサイズが大きいと表面積が小さくなり、光触媒などに応用した際の反応活性点が少なくなり、これよりもサイズが小さいと結晶性が悪くなる。
本発明に係る酸化チタン微粒子の更に好ましい態様においては、前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の大きさは、10nm〜60nmである。この範囲にすると高度な結晶性や溶媒への分散性が発現する。本発明に係る酸化チタン微粒子の形状測定は走査型電子顕微鏡(SEM)や原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定することができる。また、結晶方向の測定は透過型電子顕微鏡の格子像や電子線回折像より測定することができる。
【0018】
本発明の積層体において、前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子を含む被膜と基材の間に中間層を設けても構わない。中間層を設けることで、基板との密着強度を向上させたり、有機物の基材の光触媒作用による劣化を防ぐことができる。また、ガラス基材等のアルカリ成分は高温の焼成工程によって前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子に拡散する恐れがあり、アルカリ成分の拡散を防ぐため、アモルファスシリカ、アルミナ、ジルコニア等の不活性体を中間層として用いることができる。本発明の積層体に透明性を持たせる場合、前記中間層の厚みとして5nm〜5μmの範囲が好適である。
【0019】
本発明に係る被膜の機械的強度を高めるため、前記被膜にバインダー成分が含まれていても構わない。バインダー成分として、アモルファスシリカ、アルミナ、ジルコニア、アルカリシリケート等の無機物やフッ素樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等の有機物の少なくともいずれか一項を含んでいても構わない。
【0020】
本発明の積層体の光触媒特性を高めるため、好適な態様において、前記被膜及び中間層の少なくともいずれか一方に酸化チタン以外の無機化合物が含ませてもよい。この無機化合物はバンドギャップが3.0eV以下であって、その伝導帯、荷電子帯のポテンシャルが酸化チタンよりも貴(低い)であることが望ましい。バンドギャップが3.0eV以下であることによって、可視光を吸収することができる。また、荷電子帯のポテンシャルが酸化チタンよりも貴の場合、光励起によって無機化合物に生成した正孔が酸化チタン側へ供給され、酸化チタン表面での酸化分解活性や親水化能力が向上する。このような無機化合物として、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化バナジウム等が好適に使用できる。
【0021】
本発明の好ましい態様において、前記無機化合物として酸化タングステンを用いる。酸化タングステンはバンドギャップが2.8eVと酸化チタンより狭く可視光を吸収することができる。また、酸化タングステンの荷電子帯は深く、酸化チタンと接合した場合、光励起によって酸化タングステンに生成した正孔は酸化チタンに移動することが可能となる。このため、酸化チタンと酸化タングステンを接合した場合、それぞれを単独で用いるよりもより高度な光触媒活性を得ることができる。
【0022】
本発明に係る酸化チタン微粒子を光触媒等の電荷移動媒体として使用する場合、電荷分離を促進させるため、前記酸化チタン微粒子にPt, Pd, Ag, Cu, Au, Ni, Ru, Pbからなる郡から選択される少なくとも一つの金属を担持してもよい。前記金属を担持することによって光励起した電子正孔対が効率的に分離し、光電流が増大する。また、特にAgやCuを担持した場合、抗菌性や防藻性も発揮する。
【0023】
アナターゼ型酸化チタンの結晶面のうち(101)面は安定で電子のトラップサイトが多数存在するため、本発明の積層体は高度な光触媒活性を発現する。光触媒活性の指標として、例えば、被膜表面の水との接触角変化の測定を好適に使用することが出来る。
本発明の酸化チタン微粒子を含む被膜からなる積層体においては、被膜表面の水との接触角が紫外線強度50μW/cmの白色蛍光灯の照射に応じて30分以内に5度以下まで低下(親水化)することができる。
白色蛍光灯の光に含まれる紫外線は強度が低いため、通常の多結晶型酸化チタン薄膜では白色蛍光灯を照射してもその親水化反応は進行しにくいが、本発明の積層体の被膜表面は高度の親水化活性を発現する。
前記紫外線強度は、例えば、トプコン社製の紫外線強度計(UVR−2)等を用いて測定することができる。また、水との接触角の測定は、例えば、協和界面科学社製の接触角測定機(CA−X150)等の装置を好適に使用することが出来る。
【0024】
本発明の積層体に酸化タングステンが含まれる場合、酸化タングステンの可視光増感作用により、更に高度な親水化活性を発現する。酸化タングステンを含む中間層を設けた積層体においては、被膜表面の水との接触角を、波長400〜500nmで強度0.2mW/cm2の可視光の照射に応じて5度以下まで低下させることが可能である。前記可視光照度は、例えば、ウシオ電機社製のスペクトルラディオメーター(USR-40D)等を用いて測定することができる。また、水との接触角の測定は、例えば、協和界面科学社製の接触角測定機(CA−X150)等の装置を好適に使用することが出来る。可視光の照射は、例えば、キセノンランプ(林時計工業、LA-250Xe)を用い、各種色ガラスフィルター(例えば、旭テクノグラス社製、B-47、L-42、C-40C等)を介して照射することができる。
【0025】
本発明の積層体の被膜に含まれる両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子は、粒子の面が基材に密着するため、球状の粒子と比較して基材への接触面積が大きく付着力が強い。すなわち、両角錐体状の粒子が基材に対して配向し、付着力が強くなるため、耐久性の良好な被膜を提供することが出来る。
【0026】
前記基材として、例えば、ガラス、セラミックス等の無機多結晶体や単結晶基板、金属などの導電性基板、プラスチック、フィルムやそれらの組み合わせ、ないし、それらの積層体などが利用できる。また、色素増感型太陽電池として使用する場合、インジウム−スズ酸化物(ITO)やフッ素ドープした酸化スズ(FTO)等をコートしたガラス基材を好適に使用する。
【0027】
本発明の積層体における被膜の厚さは10nm〜10μmであることが好ましい。特に透明性を必要とする用途の場合、前記皮膜の厚さを10nm〜500nmにすると高い透明性を発現し、外装や内装建材に応用した際、意匠性を損ねることが無い。
【0028】
本発明に係る上記積層体は、好ましくは、pHが4以下又は8以上に調整された両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の分散液を基材に塗布する工程を含む方法により簡便に製造することができる。
【0029】
この両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の分散液は、前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子を水や有機溶媒へ分散させることにより得ることができる。
分散液をコーティング施工する際の人体への悪影響を低減するため、前記分散液の溶媒は水であることが好ましい。
また、酸化チタンの表面の等電点でのpHは6程度であるので、分散性を高めるため、前記分散液の溶媒のpHは4以下ないし8以上であることが好ましい。
【0030】
分散液中には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ成分や、硝酸、塩酸、硫酸、過塩素酸、フッ酸、臭素酸、沃素酸、亜硝酸、酢酸、蓚酸、リンゴ酸、硝酸、塩酸、硫酸などの酸成分が含まれていても構わない。高度な分散性を得るためのより具体的な態様として、溶媒として硝酸、塩酸が用いられ、酸濃度は0.01M以上、より好ましくは0.1M以上である。
【0031】
前記分散液の好ましい固形分濃度の範囲は10%以下である。この範囲であれば、分散性が高く、沈殿を生じることなく、室温で長期間安定である。また、固形分濃度の範囲を10%以下とすることで、基板に塗膜した際、粒子同士の凝集が抑制され、被膜の高度な結晶配向が得られる。
【0032】
前記分散液の分散性を高めるために、前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の表面に、更に、アルミニウム、ケイ素、チタニウム、ジルコニウム、スズ、アンチモン、亜鉛からなる群より選択される少なくとも一種の水酸化物、ないし、酸化物が被覆されていても良い。また、カルボン酸、アミン、ポリオール、シロキサン、シランカップリング剤等の有機物の少なくとも一種が修飾されていても構わない。更に、リンゴ酸ジイソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、ステアリン酸、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン等の有機物で表面処理しても構わない。表面修飾物は物理的に接触していても化学的に結合していても構わない。また、鉄などの遷移金属をドーピングしても構わない。
【0033】
本発明の分散液には更にバインダー成分が含まれていてもよい。バインダー成分を加えることで、塗膜の強度や基材との密着性を向上させることができる。バインダーとして、例えば、シロキサン結合を有する物質を好適に使用することができる。
【0034】
シロキサン結合は化学的な安定性や耐候性も高い。前記シロキサン結合を有する物質としては水ガラス等のアルカリシリケート、コロイダルシリカ、アルミノシリケート化合物を使用することもできる。
【0035】
アルミノシリケート化合物はシリケート化合物のSiの一部をAlで置換した化合物であって、更に電荷を補償するためにH+やLi+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Fr+などのアルカリ金属イオンやBe2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Ra2+などのアルカリ土類金属イオンが含有されていてもよい。前記シリケート結合を有する化合物のSiの一部をAlで置換した物や、ゼオライトなどを使用することができる。
【0036】
また、前記シロキサン結合を有する物質として、更に好ましい態様において、シリコーンエマルジョンを用いることができる。シリコーンエマルジョンとしては、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン;エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン;n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン;n−ヘキシルトリクロルシラン、n−ヘキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリイソプロポキシシラン、n−ヘキシルトリt−ブトキシシラン;n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン;n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン;フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン;テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン;トリクロルヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリイソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン;トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシシラン;β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランの部分加水分解物、脱水宿重合物を好適に使用することができる。
【0037】
前記分散液のバインダー成分として、フッ素樹脂エマルジョンを使用することもできる。フッ素樹脂を含む塗膜は化学的安定性が高く、また、耐候性も高く、柔軟性にも優れている。
【0038】
フッ素樹脂エマルジョンとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、パーフルオロシクロポリマー、ビニルエーテル−フルオロオレフィンコポリマー、ビニルエステル−フルオロオレフィンコポリマー、テトラフルオロエチレン−ビニルエーテルコポリマー、クロロトリフルオロエチレン−ビニルエーテルコポリマー、テトラフルオロエチレンウレタン架橋体、テトラフルオロエチレンエポキシ架橋体、テトラフルオロエチレンアクリル架橋体、テトラフルオロエチレンメラミン架橋体等フルオロ基を含有するポリマーのエマルジョン等から選択される少なくとも一つが好適に利用できる。
【0039】
本発明に係る両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子を製造する方法として、出発原料としてチタン酸のナノチューブを用い、尿素ないしチオ尿素の少なくとも一種を含む水溶液中で水熱反応させることによって好適に製造することができる。前記出発原料は、例えば、酸化チタン粒子を水酸化ナトリウム水溶液中において、水熱処理することによって得られる。前記出発原料はチタン酸のシートがスクロールした構造のナノチューブからなり、シートの層間にプロトンやナトリウムイオンが含まれていても構わない。
【0040】
本発明に係る両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子を製造するためのより好ましい方法として、前記チオ尿素を含んだ水溶液のpHを2以上、水熱処理温度を150℃以上とする。
pHが2以上であると、球状の微粒子の析出が抑制され、両角錐体状体を効率良く得ることができ、水熱処理温度が150℃以上であると、高度に結晶化した微粒子を得ることができる。
【0041】
前記水熱反応溶液にはチオ尿素が含まれるため、得られた両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子には窒素ないし硫黄がドープされている。また、ドープ量を高めるため、前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子に、更に、アンモニア、炭化水素、硫化水素等の還元性ガス中で熱処理しても良い。
【0042】
本発明に係る分散液を製造する方法としては、例えば、前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子を酸性水溶液に分散させる方法、もしくは、前記酸化チタン微粒子をアルカリ性の水溶液に分散させる方法が挙げられる。
前述したように、酸化チタンの表面の等電点でのpHは6程度であるので、分散性を高めるため、前記分散液の溶媒のpHは4以下又は8以上であることが好ましい。更に分散性を高めるため、分散液を攪拌、ないし、超音波処理をしてもかまわない。
【0043】
上記分散液の基材への塗布方法としては、スピンコート法、ローラ法、ディップ法、スプレー法、エアーナイフ法、ブレード法等を用いることができる。また、前記分散液と、カチオン性ポリマーを含む溶液に対し、基材を交互に浸漬することによって製造する方法も用いることができる。本発明の積層体において、前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子を含む被膜と基材の間に中間層を設ける場合、中間層をコーティングした後に、前記分散液を塗布することで好適に製造することができる。
【0044】
また、本発明の積層体の被膜において、その結晶方向を面内方向にも配向させるためには、LB法を好適に用いることができる。また、その結晶方向を面内方向にも配向させるため、あらかじめ基板に液晶分子などのポリマーを塗布する方法も好適に用いることができる。
【0045】
更に、本発明の積層体に含まれる酸化チタン微粒子の結晶性を高めたり、緻密性を上げるため、被膜を形成させた後に熱処理をしても構わない。熱処理温度としては、50℃〜600℃が好適である。
【0046】
本発明の積層体は高度な光触媒活性を有し、例えば、建築部材、自動車部材、空気・水浄化用フィルター部材等へ応用することができる。
鏡、レンズ、板ガラス等の基材の表面に本発明に係る酸化チタン微粒子を含む被膜を形成させることで表面を高度に親水化することができ、曇りや水滴形成を防止する防曇効果を発揮することができる。
【0047】
本発明の積層体は、表面に付着した有機物を分解する効果により、表面が汚れるのを防止し、または表面を自己浄化(セルフクリーニング)し、若しくは容易に清掃する技術にも適用できる。
このようなセルフクリーニング効果により、メンテナンスコストを低減させたり、商品寿命を長期化することができる。
【0048】
本発明の積層体に含まれる酸化チタン微粒子を励起するための光源として、例えば、ブラックライト、殺菌ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀−キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED(白色、青、緑、赤)、レーザー光、太陽光等が好適に使用できる。
本発明の積層体は、特に、白色蛍光灯、白熱灯、LED等の室内照明の照射でも高度に親水化するため、トイレ、バス、キッチンといった屋内への用途展開が可能である。
本発明の積層体が適用できる具体的な物品としては、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウェイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船、のような乗り物の窓に用いられるガラス;眼鏡レンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体製造用レンズのようなレンズ;浴室または洗面所用鏡、車両用バックミラー、歯科用歯鏡、道路鏡のような鏡;防護用またはスポーツ用ゴーグルまたはマスク、潜水用マスク、ヘルメットのシールド;冷凍食品陳列ケースのガラス;計測機器のカバーガラス、およびそれらの物品に貼付可能なフィルムなどが好適に利用できる。また、板ガラス、壁材、壁紙、タイル、屋根材等の建築材料を適用した場合、部材の自己浄化機能を発現することができる。
【0049】
また、本発明の積層体や分散液は大気浄化や水質浄化に使用することができる。例えば、水質浄化として応用する場合、本発明の分散液を水中に投入したり、本発明の積層体を水中に投入して水中の汚染物質を吸着、分解することができる。
基材としては、ガラス、セラミックス、金属等の基材や、多孔質の発泡体、ハニカム、ガラスやセラミックスの不織布、ガラス繊維、ガラスやシリカゲルなどのビーズ状物質等が好適に使用できる。
水中に存在する積層体に対し、酸化チタン微粒子の光励起をともなう光照射をおこなって水を浄化する。
【0050】
本発明の積層体に含まれる酸化チタン微粒子ないし無機化合物の少なくとも一方を光励起するための光源として、例えば、蛍光灯、ブラックライト、殺菌ランプ、白熱電球、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀−キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED(白色、青、緑、赤)、レーザー光、太陽光等が好適に使用できる。
【0051】
本発明の分散液に含まれる酸化チタン微粒子を懸濁させて使用する場合、水質を浄化した後に、遠心分離やろ過によって酸化チタン微粒子を回収しても構わない。また、磁石で回収するために本発明に係る酸化チタン微粒子に磁性材料を固定化しても構わない。
【0052】
また、他の水質浄化の具体的方法として、多孔質やハニカム等のフィルター状の基材に両角錐体状の酸化チタン微粒子を固定化し、被処理水をこのフィルターに流通させて処理しても構わない。この積層体に対し光照射をおこないながら被処理水を流通させても構わないし、被処理水を流通させた後に積層体に対して光照射をしても構わない。
【0053】
また、本発明の積層体は高効率な色素増感太陽電池、透明導電材料、誘電体、液晶、メモリ素子、光学薄膜、バイオセンサ電極、防錆材料、紫外線遮蔽材料、化粧料等、広範な用途へ応用することが可能である。
【実施例】
【0054】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの実施例になんら制限されるものではない。これに先だって、本発明の積層体を図により説明する。
図1(a)〜(d)に本発明の積層体の一例を示す。基材の上に被膜が形成されており、被膜には両角錐体状の酸化チタン微粒子を含んでなる。
図1(a)に示すように両角錐体状の酸化チタン微粒子が1層分の厚みであっても良いし、(b)に示すように2層分の厚みであっても良いし、それ以上の厚みであっても構わない。
両角錐体状の酸化チタン微粒子の(101)面が基材に密着するため、被膜は(101)面に配向する。また、(c)に示すように、被膜の中にバインダー成分が含まれていても良い。被膜と基材の密着性を高めたり、光触媒活性を更に高めるため、(d)に示すように、被膜と基材の間に中間層を設けても構わない。基材の形状は板ガラス等のような平面なものでも、フィルター等の複雑形状を有する基材も好適に使用することができる。以下に本発明の積層体の具体的な製造方法を記載するが、本発明はこれらの実施例になんら制限されるものではない。
また、図1(e)〜(g)にバンド構造を示す。(e)は従来の酸化チタン、(f)は本発明に係る窒素ないし硫黄がドープされた酸化チタン、(g)は本発明に係る窒素ないし硫黄がドープされた酸化チタンに更にバンドギャップが3.0eV以下、伝導帯、荷電子帯のポテンシャルが酸化チタンよりも貴である無機化合物が含まれる場合のバンド構造を示す。これらの材料を光触媒として機能させるためにはバンドギャップよりも高いエネルギーを持つ光照射が必要である。従来の酸化チタンの場合、バンドギャップは3.2eVで、光励起するためには380nm以下の波長を持つ紫外線の照射が必要となる。本発明に係る酸化チタンには窒素、硫黄、炭素、リン、ホウ素及びフッ素からなる群より選択される少なくとも一つのアニオンがドープされているため、波長が450nm程度の可視光を吸収することが可能となる。また、本発明に係る酸化チタンに更に酸化タングステンの様なバンドギャップが3.0eV以下、伝導帯、荷電子帯のポテンシャルが酸化チタンよりも低い無機化合物が含まれる場合、光励起によって無機化合物に生成した正孔が酸化チタン側へ供給され、酸化チタン表面での酸化分解活性や親水化能力が更に向上する。
【0055】
1.出発原料となるチタン酸のナノチューブの作製
酸化チタン粉末(Degussa社、P-25)1.0gを10M水酸化ナトリウム水溶液108gに投入し、10分間攪拌することにより白色懸濁液を得た。この白色懸濁液を容量100mlのフッ素樹脂製の耐圧反応容器に入れて密閉し、120℃で40時間保持した。反応終了後、室温まで自然放冷させ、白色沈殿物を含む溶液を回収した。洗浄工程として、この白色沈殿物を含む溶液から、上澄み液をまずスポイトにて除去した。残った白色沈殿物に0.1Mの硝酸水溶液を少量ずつ添加し、攪拌後、遠心分離によって上澄み液を除去した。前記硝酸水溶液の添加と遠心分離の工程を上澄み液のpHが7になるまで繰り返した。これらの中和操作の後、残った白色沈殿物を蒸留水で2回洗浄した。この沈殿物を乾燥して得られる白色粉末を走査型透過電子顕微鏡(日立製作所(株)、S-4800)で観察したところ、中空ファイバ(ナノチューブ)の集合体であり、各ファイバの中心部は直径3.5nmの中空構造になっていることを確認した。また、X線回折(XRD:リガク社製、Rint Ultima-X)で結晶構造を解析したところ、いずれもチタン酸構造であることがわかった。
【0056】
2.両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の分散液および積層体の作製
上記で得られたチタン酸構造のナノチューブの沈殿物を用い、表1に示すような配合比で溶媒と混合、攪拌し、容量100mlのフッ素樹脂製の耐圧反応容器にて180℃で40時間保持した。反応終了後、室温まで自然放冷後、淡黄色の沈殿物を含む溶液に対し、遠心分離機をおこなうことにより、溶媒と沈殿物を分離し、溶媒を除去した。#1については、淡黄色沈殿物0.3gに0.1Mの硝酸水溶液を30mL加えて超音波処理をおこない、1wt%の分散液を得た。この分散液のpHをpH試験紙で計測したところ1.8以下であった。
この分散液をスピンコート法によって基板にコーティングした。スピンコート法は回転速度2500rpmで20秒おこなった。基板は石英ガラス基板を用いた。薄膜、粉末とも大気中で400℃×1時間の加熱処理をおこなったものも作製した。
【0057】
【表1】

【0058】
3.比較例となるアナターゼ型多結晶薄膜を含む積層体の作製
石原産業社製のアナターゼ型酸化チタン粒子のコロイド溶液(STS-01)を純水で濃度1wt%まで希釈し、石英ガラス基材にスピンコート法でコーティングした。スピンコート法は回転速度2500rpmで20秒おこなった。前記石原産業社製のコロイド溶液に含まれるアナターゼ型酸化チタン粒子は球状の粒子で、1次粒径が7nm、2次粒径が20〜30nmである。
【0059】
4.両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子、前記微粒子を含む被膜を設けた積層体の構造観察
#1〜#3試料を乾燥させた粉末を走査型電子顕微鏡(SEM:日立製作所(株)、S-4800)で観察した結果を図2に示す。この結果、各サンプルとも、両角錐体状の微粒子が複数観察できた。#1試料の分散液をマイクログリッドに滴下したものを透過型電子顕微鏡(TEM:日立製作所(株)、H-9000NAR)で観察した結果を図2に示す。図3(a)が制限視野像、(b)が制限視野像の拡大図、(c)が電子線回折像である。制限視野像の拡大図の結果から格子縞が確認され、単結晶粒子であることがわかった。また、電子線回折像から、電子線はアナターゼ型酸化チタンの(100)方向と平行で、両角錐体状粒子の面が(101)面、長軸方向がアナターゼ型酸化チタンの(001)方向に対応していることがわかった。両角錐体状粒子の大きさは、30nm×50nmであった。
#1試料をガラス基材に塗布した薄膜状サンプルを走査型電子顕微鏡(SEM:日立製作所(株)、S-4800)で観察した結果を図4に示す。この結果、両角錐体状の微粒子が複数観察でき、基板に対して均一にコーティングされていることがわかった。また、基板上に粒子は1層ないし2層コーティングされていることから、被膜の膜厚は30nm〜120nmであることが予想される。
粉末状、並びに、薄膜状の#1試料に対し、Out-of-Plane法によるX線回折(XRD:リガク社製、Rint Ultima-X)をおこなった結果を図5に示す。Out-of-Plane法では、基板に垂直方向の結晶軸のみ回折される。この結果、粉末状のサンプルでは、アナターゼ型の酸化チタンの相のみが観察され、薄膜のOut-of-Plane測定では2θ角が25.5°の(101)面のみが観測された。これらの結果から、薄膜状のサンプルは基板に対してアナターゼ型酸化チタンの(101)面に強く配向していることがわかった。被膜に含まれる両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子は各面が(101)面で構成されているため、この結晶面が基板に付着し、被膜として高度の配向性を示したものと予想される。なお、薄膜サンプルに見られる20°〜30°のブロードなピークはガラス基材のハローによるものである。また、薄膜状の試料を大気中で400℃×1時間の熱処理したサンプルについても、熱処理前後で大きな構造変化は認められず、熱処理前のサンプルと同様に高度な(101)面の配向が観察された。
【0060】
5.積層体の被膜の光吸収特性、窒素ないし硫黄の組成分析
#1試料の薄膜化サンプルの透過率を分光光度計(島津製作所、UV-2100)で測定し、結果を図6に示す。比較例では可視光の吸収にともなう透過率の低下は見られない一方、#1試料の実施例において、可視光域の光吸収による透過率の低下が観測された。
次に、#1試料における窒素ないし硫黄のドープ量を調べるため、X線光電子分光装置(Physical Electronics社、Quantum 2000)を用いて窒素1s軌道、ないし、硫黄1s軌道を測定した。また、この結果を図7に示したが、#1試料には窒素と硫黄がドープされていることが明らかになった。特に、硫黄1sのピークは2種類存在し、少なくとも2種類の状態でドープされていることが明らかになった。また、それぞれの試料の構成元素を、チタン、酸素、炭素、窒素、硫黄としたときの窒素ないし硫黄の元素割合を図の中に示す。この結果、#1試料には窒素が0.62%、硫黄が0.36%ドープされていることがあきらかとなった。
【0061】
6.被膜表面の水接触角の測定
#1試料と比較例となるアナターゼ型酸化チタン粒子をガラス基材にコーティングした被膜と、それぞれの被膜を大気中で400℃×1時間の熱処理したサンプルに対し、10Wの白色蛍光灯(東芝製)を用いて光照射した際の水との接触角を評価した。紫外線照度は紫外線照度計(トプコン製、UVR-2)による計測値で、50μW/cm2となるように設定した。水との接触角は、接触角測定器(協和界面科学社製、CA-X150)で測定し、結果を図8に示す。この結果、本発明の被膜の方が比較例よりも高度に親水化し、白色蛍光灯の照射30分以内に、水との接触角が5°以下に高度に親水化した。
また、#1試料と比較例試料に対し、紫外線照度5μW/cm2の白色蛍光灯を照射した場合の水との接触角を図9に示した。この結果、比較例は全く親水化しないのに対し、本発明の被膜は紫外線照度5μW/cm2の白色蛍光灯の照射で5°以下まで高度に親水化した。
【0062】
7.出発原料を尿素とした場合の両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の合成
実施例1で得られたチタン酸構造のナノチューブの沈殿物0.33gを尿素5g、水50gと混合、攪拌し、容量100mlのフッ素樹脂製の耐圧反応容器にて180℃で40時間保持した。反応終了後、室温まで自然放冷後、沈殿物を含む溶液に対し、遠心分離機をおこなうことにより、溶媒と沈殿物を分離し、溶媒を除去した。得られた沈殿物を60℃で乾燥し、粉末を走査型電子顕微鏡(SEM:日立製作所(株)、S-4800)で観察した結果を図10に示す。この結果、両角錐体状の微粒子が複数観察できた。
【0063】
8.酸化タングステンからなる中間層を含む積層体の製造と、可視光での光誘起親水化特性
タングステン酸の粉末1.5gをアンモニア水28.5gに溶解し、タングステン酸アンモニウムの水溶液を合成した。この水溶液を石英ガラス基材に10秒間スピンコートした。スピンコートの回転数は1500rpmとした。スピンコート後、大気中で500℃、30分の加熱処理をおこない、酸化タングステン薄膜を得た。この酸化タングステン薄膜の上に、実施例2と同様に#1試料の両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子を含むコーティング液をスピンコートした。ここで得られた積層体を#4試料とする。
#4試料の表面、断面を走査型電子顕微鏡(SEM:日立製作所(株)、S-4800)で観察した結果を図11に示す。この結果、基材の上に酸化タングステン、更にその上に両角錐体状のアナターゼ型酸化チタンがコーティングされている様子が観察できた。
#4試料に対し、波長400〜500nmの可視光を照射した際の水との接触角を評価した。可視光の照射はキセノンランプ(林時計工業、LA-250Xe)を用い、3枚の色ガラスフィルター(旭テクノグラス、B-47、L-42、C-40C)を介して照射した。可視光の照度はスペクトルラディオメーター(ウシオ電機、USR-40D)を用いて測定し、積算照度で0.2mW/cm2となるように設定した。#4試料と実施例2で得た#1試料、更に、実施例3で作製した比較例となるサンプルの水との接触角変化を図12に示す。比較例は全く親水化しなかったが、#1試料は若干ではあるが接触角が減少した。一方、酸化タングステンからなる中間層を含む積層体においては可視光の照射によっても高度に親水化することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、結晶方向が(101)面に高度に配向したアナターゼ酸化チタン被膜からなる積層体を提供することができる。前記被膜に含まれる両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子は高度の結晶性をもち、可視光での光触媒反応を発現するため、優れた光触媒材料、高効率な色素増感型太陽電池、透明導電材料、誘電体、液晶、メモリ素子、光学薄膜、バイオセンサ電極、防錆材料、紫外線遮蔽材料、化粧料等、広範な用途へ応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の積層体の構造を示す図
【図2】本発明に係る酸化チタン微粒子のSEM像
【図3】本発明の積層体表面のSEM像
【図4】本発明に係る酸化チタン微粒子のTEM像
【図5】本発明に係る酸化チタン微粒子ならびに被膜のXRDパターン
【図6】本発明の積層体と比較例の積層体の透過率を対比したグラフ
【図7】本発明の積層体と比較例の積層体のX線光電子分光スペクトルを対比したグラフ
【図8】本発明の積層体表面と比較例の積層体表面の水との接触角を対比したグラフ
【図9】本発明の積層体表面と比較例の積層体表面の水との接触角を対比したグラフ
【図10】本発明に係る酸化チタン微粒子のSEM像
【図11】本発明の積層体表面と断面のSEM像
【図12】本発明の積層体表面と比較例の積層体表面の水との接触角を対比したグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子を含む被膜を設けた積層体であって、前記被膜の結晶方向が厚み方向に対して(101)方向に配向していることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の面がアナターゼ型酸化チタンの(101)面であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子が単結晶であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子に、窒素、硫黄、炭素、リン、ホウ素及びフッ素からなる群より選択される少なくとも一つのアニオンがドープされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の大きさが10nm〜200nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずかに記載の積層体。
【請求項6】
前記被膜の厚さが10nm〜10μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子を含む被膜と基材の間に中間層が存在することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
前記中間層の厚みが5nm〜5μmであることを特徴とする請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記被膜及び/又は中間層に、バンドギャップが3.0eV以下であって、伝導帯および荷電子帯のポテンシャルが酸化チタンよりも貴である、酸化チタン以外の無機化合物が存在することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
前記無機化合物が酸化タングステンであることを特徴とする請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
前記被膜表面の水との接触角が、紫外線強度50μW/cmの白色蛍光灯の照射に応じて30分以内に5度以下まで低下することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の積層体。
【請求項12】
前記被膜表面の水との接触角が、波長400〜500nmで強度0.2mW/cm2の可視光の照射に応じて5度以下まで低下することを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の積層体。
【請求項13】
前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン及び/又は酸化チタン以外の無機化合物を光励起するための光源が白色蛍光灯、白熱灯およびLEDから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の積層体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の積層体からなる、建築部材、自動車部材、又は空気・水浄化用部材。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の積層体の製造方法であって、pHが4以下又は8以上に調整された両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の分散液を基材に塗布する工程を含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【請求項16】
前記分散液中の両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の濃度が10%以下であることを特徴とする請求項15に記載の積層体の製造方法。
【請求項17】
前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子をチタン酸のナノチューブを水系媒体中で水熱処理することにより得ることを特徴とする請求項15又は16に記載の積層体の製造方法。
【請求項18】
水系媒体に尿素および/又はチオ尿素が含まれることを特徴とする請求項17に記載の積層体の製造方法。
【請求項19】
前記水系媒体のpHが2以上であることを特徴とする請求項17又は18に記載の積層体の製造方法。
【請求項20】
前記水熱処理の温度が150℃以上であることを特徴とする請求項17〜19に記載の積層体の製造方法。
【請求項21】
pHが4以下又は8以上に調整された両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の分散液。
【請求項22】
前記分散液中の両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子の濃度が10%以下であることを特徴とする請求項21に記載の分散液。
【請求項23】
前記両角錐体状のアナターゼ型酸化チタン微粒子がチタン酸のナノチューブを水系媒体中で水熱処理することにより得られたものであることを特徴とする請求項21又は22に記載の分散液。
【請求項24】
水系媒体に尿素及び/又はチオ尿素が含まれることを特徴とする請求項23に記載の分散液。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−12444(P2009−12444A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239653(P2007−239653)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】