説明

積層体およびその製造方法

【課題】温度変化のある製造プロセスにその後通過させる場合および、使用中に温度を加える事がある場合でも、伸び縮みが少ない為、電気回路、半導体素子に応力が加わる事が少なく、このため、反りも生じにくいことからが安定な電気配線および電気素子をつくることができ、絶縁性で可撓性、耐熱性を兼ね備えた薄いフィルムに回路などを形成した電子デバイス作成用の積層体および積層体回路板を提供する。
【解決手段】芳香族テトラカルボン酸類とベンゾオキサゾール構造(骨格)を有する芳香族ジアミン類との反応によって得られるポリイミドが、ポリイミドフィルム層および電気回路による凹凸を概略埋め込んでおり、この積層体の線膨張係数が、直交する2方向で測っていずれも−3pm/℃〜+10ppm/℃であり、電気回路加工をしたポリイミドフィルム層の電気回路が在る側を、有機アルカリ溶液処理をした後に、ポリアミック酸ワニスを塗布して、焼成によってポリイミド層とすることで作成した積層体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス作成などに使用される積層体であって、線膨張係数が低めの特定範囲にある、耐熱性と絶縁性に優れた薄いポリイミドフィルム層の上に電気回路および、半導体素子を形成した後その面をそれとほぼ同程度の線膨張係数を有するポリイミド層を積層された寸法安定性と耐熱性と絶縁性に優れた積層体およびこれを利用した、半導体素子が形成された半導体付加積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、−269℃〜300℃までの広い温度範囲での物性変化が極めて少ないために、電気および電子分野での応用、用途が拡大している。電気分野では、例えば車両用モーターや産業用モーター等のコイル絶縁、航空機電線および超導電線の絶縁等に使用されている。一方、電子分野では、例えばフレキシブルプリント基板や、半導体実装用フィルムキャリヤーのベースフィルム等に利用されている。このようにポリイミドフィルムは、種々の機能性ポリマーフィルムの中でも極めて信頼性の高いものとして、電気および電子分野で広く利用されている。
【0003】
また、情報通信機器(放送機器、移動体無線、携帯通信機器等)、レーダーや高速情報処理装置などといった電子部品の基材の材料として、従来、セラミックが用いられていた。セラミックからなる基材は耐熱性を有し、近年における情報通信機器の信号帯域の高周波数化(GHz帯に達する)にも対応し得る。しかし、セラミックはフレキシブルでなく、薄くできないので使用できる分野が限定される。
そのため、有機材料からなるフィルムを電子部品の基材として用いる検討がなされ、ポリイミドからなるフィルム、ポリテトラフルオロエチレンからなるフィルムが提案されている。ポリイミドからなるフィルムは耐熱性に優れ、また、強靭であるのでフィルムを薄くできるという長所を備えている。
これらのポリイミドフィルムは、一般的に線膨張係数(CTE)が銅配線と合わせてあり、20から15ppmm/℃程度であり、もともと変化零をめざしているわけではない為、今日のように微細な配線加工が求められてくると、温度変化による寸法変化が著しくて微細な配線をもつ回路の製造に適さない点等が問題となりつつある。 また、更に電気回路のみではなく、Siなどの半導体素子を作成する場合には、これらSiなどの半導体素子の温度変化による寸法変化と比べると大きく温度変化による寸法変化を起こす為、Siなどの半導体素子への応力が発生し、信頼性を低下させる原因となり、使用できる分野が限定される。このように、耐熱性、高機械的物性、フレキシブル性とSi並みの低CTEを具備した基材用として十分な物性のフィルムは未だ得られていない。
耐熱性、高機械的物性、フレキシブル性とSi並みの低CTEを具備したポリイミドフィルムとして、ベンゾオキサゾール環を主鎖に有するポリイミドからなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムが提案されている(特許文献1参照)。このポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを誘電層とするプリント配線板も提案されている(特許文献2、特許文献3参照)。
これらのベンゾオキサゾール環を主鎖に有するポリイミドからなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを例示として、いくつかの低CTEのポリイミドフィルムでは、引張破断強度、引張弾性率で改良され、線膨張係数において満足し得る範囲のものとなっているが、その優れた機械的物性の反面で、これとあわせて使うカバー層として通常の20ppm/℃以上のワニスと組み合わせる場合、却ってポリイミドベンゾオキサゾールフィルムをはじめとするいくつかの低CTEのポリイミドフィルムと通常の20ppm/℃以上のワニスのCTEのミスマッチから、当初考えていた、ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムをはじめとするいくつかの低CTEのポリイミドフィルムの良好な特性を活かせてはいなかった。
【0004】
これらのポリイミドフィルム上に熱可塑性樹脂などの接着剤層を設け他の構造補強物を設ける試みもなされているが、構造上の改良においては満足し得ても、これら熱可塑性樹脂の耐熱性の低さは折角のポリイミドフィルムの耐熱性を台無しにする傾向を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−056992号公報
【特許文献2】特表平11−504369号公報
【特許文献3】特表平11−505184号公報
【特許文献4】特開平5−283858号公報
【特許文献5】特開2008−34430号公報
【0006】
半導体薄膜のなかでもSiについては、線膨張係数が3ppm/℃程度であり、この薄膜を基板上に堆積させる場合、基板と薄膜の間の線膨張係数の差が大きいと、薄膜中に応力が溜まり、性能の劣化や、薄膜の反り、剥がれをもたらす原因となる。特に薄膜作成フ゜ロセス中に高温が加わる場合、温度変化の間に、基板と薄膜の間の線膨張係数の差に起因する応力が大きくなることになる。
低温ポリシリコン薄膜トランジスタの作成においては、脱水素化工程において、450℃2時間といった処理も必要な場合がある。 また、水素化アモルファスシリコン薄膜作成には200℃から300℃程度の温度を基板に加える事がありえる。このときに、熱可塑性樹脂で性能を満足するものではない。
接着性を向上させる手段として、アルカリ処理を挙げられることはこれまでもあったが(特許文献4参照)、無機のアルカリ処理では、塩を形成する為、金属イオンがポリイミドフィルム中に残ることになりその後の加熱などで、悪影響をおよぼし、却ってこの処理によって脆弱になる事があった。特に表面を化学的に十分改質する事が困難である3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を主成分とする芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とから得られる芳香族ポリイミドおよび、芳香族テトラカルボン酸類とベンゾオキサゾール構造(骨格)を有する芳香族ジアミン類との反応によって得られるポリイミドフィルムにおいては、アルカリ処理全般では加熱後、加熱加湿後の接着力の維持は困難であった。
また、無機アルカリKOHによる改質処理でポリイミド分子中のイミド環の加水分解が行なわれ、ポリイミド表面の改質層には、カルボキシル基にカリウムイオンが配位したカルボン酸カリウム塩を形成その後に金属イオンを吸着させる方法も提案されるが(特許文献5参照)、これらは、あくまでも金属層を形成する手段であり、ポリイミド上にポリイミドを密着する方法とは容易に変換しうるものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
温度変化のある製造プロセスにその後通過させる場合および、使用中に温度を加える事がある場合でも、伸び縮みが少ない為、電気回路、半導体素子に応力が加わる事が少なく、このため、反りも生じにくいことからが安定な電気配線および電気素子をつくることができ、絶縁性で可撓性、耐熱性を兼ね備えた薄いフィルムに回路などを形成した電子デバイス作成用の積層体および積層体回路板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリイミド層(A)とポリイミド層(B)との間に少なくとも電気回路を有する積層体であって、該ポリイミド層(A)が芳香族テトラカルボン酸類とベンゾオキサゾール構造(骨格)を有する芳香族ジアミン類との反応によって得られるポリイミドからなり、該積層体の線膨張係数が、直交する2方向で測っていずれも−3pm/℃〜+10ppm/℃であり、電気回路加工をしたポリイミド層(B)の電気回路が在る側を、アルカリ処理全般ではなく、特に有機アルカリ溶液処理をした後に、ポリアミック酸ワニスを塗布して、焼成によってポリイミド層とすることを特徴とする耐熱性と絶縁性に優れた積層体とが、電子デバイス作成などに使用される際に極めて有意であることを見出した。
すなわち本発明は以下の構成からなる。
1.ポリイミド層(A)とポリイミド層(B)との間に少なくとも電気回路を有する積層体であって、該ポリイミド層(A)および、該ポリイミド層(B)が少なくとも各一層以上あり、該ポリイミド層(A)が芳香族テトラカルボン酸類とベンゾオキサゾール構造(骨格)を有する芳香族ジアミン類との反応によって得られるポリイミドからなり、該積層体の線膨張係数が、直交する2方向で測っていずれも−3pm/℃〜+10ppm/℃であり、該電気回路が該ポリイミド層(A)と接する面側に、有機アルカリ溶液処理が施されている積層体。
2.前記ポリイミド層(B)が芳香族テトラカルボン酸類とベンゾオキサゾール構造(骨格)を有する芳香族ジアミン類との反応によって得られるポリイミドからなる1.の積層体。
3.前記ポリイミド層(B)が3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン類との反応によって得られるポリイミドからなる1.の積層体。
4.1.〜3.のいずれの該積層体の電気回路が電気回路配線のみからなる積層体。
5.1.〜3.のいずれかの該積層体の該ポリイミド層(A)とポリイミド層(B)との間に電気回路を含む半導体素子が形成されてなる積層体。
6.該半導体素子が薄膜トランジスター、センサー、太陽電池或は論理回路を含む、5.の積層体。
7.有機アルカリ溶液処理がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドのジメチルスルホキシド溶液による処理である、1.〜5.のいずれかの積層体。
8.前記ポリイミド層(B)からなるフィルムの少なくとも片面上に電気回路配線のみ、或は半導体層も付加された電気回路配線を形成し、次いで少なくとも該電気回路が形成された面側のみ或は両面に有機アルカリ溶液処理を施し、次いで該有機アルカリ溶液処理面された少なくとも該電気回路が形成された面上にポリアミック酸溶液を塗布後、乾燥し次いで熱処理をして前記ポリイミド層(A)を形成する、1.〜7.の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリイミド層(A)とポリイミド層(B)との間に少なくとも電気回路を有する積層体であって、該ポリイミド層(A)および、該ポリイミド層(B)が少なくとも各一層以上あり、該ポリイミド層(A)が芳香族テトラカルボン酸類とベンゾオキサゾール構造(骨格)を有する芳香族ジアミン類との反応によって得られるポリイミドからなり、該積層体の線膨張係数が、直交する2方向で測っていずれも−3pm/℃〜+10ppm/℃であり、該電気回路が該ポリイミド層(A)と接する面側に、有機アルカリ溶液処理が施されている積層体は、ポリイミド層上のデバイス作成した後に、温度が変化する環境におかれても、伸び縮みが少ない為、電気回路、半導体素子に応力が加わる事が少なく、このため、反りも生じにくいことからが安定な電気配線および電気素子をつくることができ、絶縁性で可撓性、耐熱性を兼ね備えた薄いポリイミドフィルムに回路などを形成した電子デバイス作成などに極めて有意義である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ポリイミドフィルム層の上に電気回路を作成した場合のポリイミド層とポリイミドフィルム層積層体例の断面図
【図2】ポリイミドフィルム層の上に電気回路および半導体素子を作成した場合のポリイミド層とポリイミドフィルム層積層体例の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の積層体におけるポリイミド層(A)とは、ポリイミドの塗膜であり、ポリイミドの種類は、芳香族テトラカルボン酸類とベンゾオキサゾール構造(骨格)を有する芳香族ジアミン類との反応によって得られるポリイミドの塗膜の線膨張係数(フィルムの長さ方向と幅方向でいずれも)が−3ppm/℃〜+10ppm/℃となるポリイミドであれば特に限定されないが、芳香族テトラカルボン酸類(無水物、酸、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)と芳香族ジアミン類(アミン、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)とを反応させて得られるポリアミド酸溶液を塗工、乾燥、熱処理(イミド化)してフィルム塗膜となす方法で得られるポリイミド塗膜である。これらの溶液に用いられる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0012】
本発明の積層体におけるポリイミド層(B)とは、自己支持性のポリイミドフィルムでありることが好ましく、ポリイミドの種類は、芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類との反応によって得られるポリイミドのフィルムの線膨張係数(フィルムの長さ方向と幅方向でいずれも)が−3ppm/℃〜+20ppm/℃となるポリイミドであれば特に限定されないが、芳香族テトラカルボン酸類(無水物、酸、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)と芳香族ジアミン類(アミン、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)とを反応させて得られるポリアミド酸溶液を流延、乾燥、熱処理(イミド化)してフィルムとなす方法で得られるポリイミドフィルムであることが好ましい。これらの溶液に用いられる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
本発明におけるポリイミド層(B)は、下記の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙げられる。
A.ピロメリット酸残基を有する芳香族テトラカルボン酸類、ベンゾオキサゾール構造(骨格)を有する芳香族ジアミン類との組み合わせ。
B.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
【0013】
本発明に用いるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類の分子構造は特に限定されるものではなく、具体的には以下のものが挙げられる。
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

【0019】
【化6】

【0020】
【化7】

【0021】
【化8】

【0022】
【化9】

【0023】
【化10】

【0024】
【化11】

【0025】
【化12】

【0026】
【化13】

【0027】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましく、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールがより好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明においては、全ジアミンの30モル%以下であれば下記に例示されるジアミン類を一種または二種以上を併用しても構わない。そのようなジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル、1、3−(3−アミノプロピル)―1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンおよび上記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0029】
<芳香族テトラカルボン酸無水物類>
本発明で用いられる芳香族テトラカルボン酸無水物類としては、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0030】
【化14】

【0031】
【化15】

【0032】
【化16】

【0033】
【化17】

【0034】
【化18】

【0035】
【化19】

【0036】
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0037】
芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とを反応(重合)させてポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの重量が、通常5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%となるような量が挙げられる。
【0038】
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/または混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の重量は、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、前記ポリイミド層を得るためのものでは、凹凸の埋め込み性から、0.1〜1000Pa・sであり、より好ましくは0.5〜500Pa・sであり、前記ポリイミドフィルム層を得るためのものでは、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
【0039】
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸溶液を製造するのに有効である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
重合反応により得られるポリアミド酸溶液から、ポリイミドフィルムを形成するためには、ポリアミド酸溶液を支持体上に塗布して乾燥することによりグリーンフィルム(自己支持性の前駆体フィルム)を得て、次いで、グリーンフィルムを熱処理に供することでイミド化反応させる方法が挙げられる。支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
【0040】
本発明におけるポリイミドフィルム層においては、そのポリイミド中に滑剤を添加・含有せしめて、層(フィルム)表面に微細な凹凸を付与し層(フィルム)の接着性などを改善することが好ましい。滑剤としては、無機や有機の0.03μm〜0.8μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。
これらの微粒子はポリイミドフィルムに対して好ましくは、0.20〜2.0質量%の範囲で含有させることが必要である。微粒子の含有量が0.20質量%未満であるときは、接着性の向上がそれほどなく好ましくない。一方2.0質量%を超えると表面凹凸が大きくなり過ぎ接着性の向上が見られても平滑性の低下を招くなどによる課題を残し好ましくない。
電気回路の配線幅が微細になってきた場合、滑材の粒子径は配線幅に比べ十分小さい事が望ましい。このため、電気回路を形成する側のポリイミドフィルム層厚さ方向少なくとも3μmの部分には20nm以上長径を持つ粒子は入っていないものも望まれる。このことにより、電気回路層と接している側の高分子層は平滑となり、平滑な電気回路層との原子レベルで見た接触確率が上がり、接着に好適となる。また好ましくは、電気回路層と接している側の高分子層の5μm以上の部分が20nm以上長径を持つ粒子は入っていない事が好ましい。
【0041】
本発明におけるポリイミドフィルム層の厚さは、特に限定されるものではないが、1μm〜50μmが好ましく、更に好ましくは、39μm〜3μmである。これらのフィルムの厚さ斑も20%以下であることが好ましい。1μm以下では、厚さの制御が困難であり、取り扱いが困難となる。50μm以上では、フィルムの作成が困難であり、フィルムの折れ曲がりなどがおきやすい。
本発明における30から300℃の間の平均の線膨張係数は、−3ppm/℃〜+20ppm/℃であり、好ましくは、1ppm/℃〜+16ppm/℃である。この範囲から外れると、無機基板との線膨張係数の大きさの差が大きくなる為、熱を加えるプロセス中にフィルムと無機層が剥がれ易くなり、使用困難である。また、問題とする本発明におけるポリイミドフィルム層の線膨張係数は30から200℃の間の平均の値を用いているが、用途によって、注目する温度範囲は変わり、高温でのプロセスを考慮して、30℃から400℃の範囲を調べる場合、100℃から400℃の範囲の場合もあり、リフロープロセスを念頭において、50℃から280℃の範囲を調べる場合、使用温度範囲として、−50℃から150℃の範囲を重視する場合もありえる。
【0042】
本発明における積層体の製造方法は、前記ポリイミド層(B)からなるフィルムの片面上に電気回路配線を形成し、次いで該電気回路が形成された面側に有機アルカリ溶液処理を施し、次いで該有機アルカリ溶液処理面上にポリアミック酸溶液を塗布後、乾燥し次いで熱処理をして前記ポリイミド層(A)を形成することが好ましい製造方法である。
【0043】
本発明においては、ポリイミド層(A)が電気回路による凹凸を概略埋め込んでいてもよい。
「電気回路による凹凸を概略埋め込む」とは、薄膜加工、孔あけなどの機械加工によってできた、或は、ポリイミドフィルム層作成時にあらかじめ作っていた凹凸が、0.01μmから10μmあっても、薄い部分でも1μm以上のポリイミド層によって覆われていることをいう。
【0044】
本発明における有機アルカリ溶液処理とは、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、アミン類から選択される有機化合物の有機溶媒溶液、または水溶液中に電気回路を有するポリイミド層(B)を浸漬する処理が挙げられる。浸漬の変形として、有機アルカリ溶液をコーティングしても良い。これらの有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。これらの溶媒は、単独あるいは混合して更には水とも混合して使用することができる。望ましくは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドのジメチルスルホキシド溶液が上げられる。溶媒の使用量は、アミン類を溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの重量が、通常0.01〜40重量%、好ましくは0.5〜10重量%となるような量が挙げられる。処理温度としては、室温付近で行なえる。処理時間としては、0.1minから20minより望ましくは、0.3minから5min程度が上げられる。これより長いと、プロセスコストが上昇し、これより短い場合、時間コントロールが、難しくなる。また、有機溶媒を使わない、水溶液やエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール溶液などを利用することもできるが、この場合、バッチ処理で数時間から数十時間液に浸漬する処理とすることで同様の効果を得られる。
この処理を行わず、ポリイミド層(B)にポリアミック酸溶液を塗布後、乾燥し次いで熱処理をして前記ポリイミド層(A)を形成した場合、ポリイミド層(A)とポリイミド層(B)の180度剥離強度は1N/cm以下となり、容易に剥離するが、上記処理を行うことによって5N/cm以上の180度剥離強度が得られ、この剥離強度は、PCT処理を行うことによっての低減も少なく、PCT処理後も4N/cm以上の180度剥離強度が得られる。ポリイミド層(B)にプラズマ処理を行った後に、リアミック酸溶液を塗布後、乾燥し次いで熱処理をして前記ポリイミド層(A)を形成した場合、初期の180度剥離強度は5N/cm以上となるが、このサンプルのPCT処理後の180度剥離強度は、1N/cm以下となる。180度剥離強度1N/cm以下では容易に剥離し、実用上問題がある。4N/cm以上あれば通常の取り扱い上問題がない。またこの処理を適正に行えば10N/cm以上の180度剥離強度も得られ、この場合殆どの電気回路用途で全く問題なく使用する事が出来る。この有機アルカリ処理と併用して、補助的に別の表面処理としてプラズマ処理、UV処理、シランカップリング剤処理、グラフト化処理などを行っても良い。
【0045】
本発明におけるプラズマ処理は、特に限定されるものではないが、真空中でのRFプラズマ処理、マイクロ波プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理などがあり、フッ素を含むガス処理、イオン源を使ったイオン打ち込み処理、PBII法を使った処理、フレーム処理、イトロ処理なども含める。これらの中でも真空中でのRFプラズマ処理、マイクロ波プラズマ処理、大気圧プラズマ処理が好ましい。
【0046】
本発明におけるシランカップリング剤の処理方法としては、シランカップリング剤の溶液を無機層に塗布乾燥し熱処理する方法、シランカップリング剤の溶液中にフィルム状ポリイミド層(B)を浸漬した後に乾燥し熱処理する方法、ポリイミド層(B)のフィルム作成時に添加し、フィルム作成と同時にカップリング剤処理する方法を例示出来る。また、処理中のpHが性能に大きく影響する事が知られており、適宜pHを調整すればよい。
【0047】
記シランカップリング剤処理を行う場合、ポリイミド層(A)とポリイミド層(B)との間には接着剤層が介在しないことが好ましい。ここで本発明でいう接着剤層はSiの成分重量比10%未満のものをさし、シランカップリング剤層とは、シランカップリング剤に由来するSiを10重量%以上多く含むものをさす。シランカップリング剤層を用いることで中間層を薄くできるので加熱中の脱ガス成分が少なく、ウェットプロセスにおいても溶出しにくく、仮に溶出が起きても微量にとどまるという効果が出る。
ただし、シランカップリング剤に由来する層は、耐熱性がある酸化ケイ素成分が多く、400度程度の温度での耐熱性があり、このシランカップリング剤由来する層は0.4μm未満、通常作成すると、0.2μm以下程度となり、使用する範囲として100nm以下(0.1μm以下)望ましくは、50nm以下、更に望ましくは10nmである。極力シランカップリング剤が少ないことを望むプロセスでは、5nm以下でも使用可能である。1nm以下では、剥離強度が低下或は、部分的に付かない部分が出る恐れがあるため、1nm以上であることが望ましい。
【0048】
本発明における線膨張係数は、30から300℃の間で測った平均値をCTEとして算出している。金属やセラミックスではこの温度範囲で変化がない事が多いが、ポリイミドフィルム層ではこの温度範囲で、CTEが変化する事があるが、測定下限を0℃、30℃、50℃といったものに置き換えてもよく、測定上限を200℃、300℃、400℃に置き換えることも可能である。
【0049】
本発明の積層体中のポリイミドフィルム層の膜厚方向に貫通する非ポリイミド部分としては、特に限定はされるものではないが、好ましくは、Cu,Al,Ag,Auなどの金属を主たる成分としている金属で充填されているもの、機械式のドリルやレーザー穴あけによって形成された空孔、および、空孔の壁面に、金属膜がスパッタリング、無電解めっきシード層形成、などにより形成されているものが挙げられる。
【0050】
本発明における電気回路とは、銅、Al、Ni、Au、Ag、Cr、Mo、Tiなどを主成分とする。金属配線のことを言う。望ましくは銅配線にポリイミドフィルムとの間にバリア層として、NiCr合金やTi合金が入っている物が挙げられる。
【0051】
本発明における半導体素子とは、薄膜トランジスター、センサー、太陽電池或は論理回路、MEMS素子、発光素子、受光素子、アクチュエーター素子、および、市販の半導体素子チップを貼り付けるものも含む。
【0052】
本発明の好ましい実施態様である本発明のフィルムを基板として使用する太陽電池は、上述した積層体のポリイミドフィルム層上に半導体からなる光電変換層を含む積層体が形成されてなる。この場合ポリイミドフィルム層は可視光を透過するものが望ましい。前記積層体は、太陽光のエネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換層を必須の構成として有し、通常、得られた電気エネルギーを取出すための電極層などをさらに有するものである。
以下、フィルム状太陽電池を構成するよう形成される上記積層体の典型例として、光電変換層を一対の電極層で挟んでなる積層構造を説明する。しかし光電変換層を何層か積み重ねた構成なども、PVD,CVDでの作製ならば、本発明の太陽電池といえる。本発明で形成される積層構造は以下に記載される態様に限定されず、従来技術の太陽電池が有する積層体の構成を適宜参照してよく、保護層や公知補助手段を付加してもよいものである。
上記一対の電極層における一方の電極層(以下、裏面電極層とも記載する)は、好ましくは、フィルム基材の一主面上に形成される。裏面電極層は自体公知の方法、例えばCVD(ケミカル・ベ−パ−・デポジション)法やスパッタ法によって、導電性無機材料を積層することによって得られる。導電性無機材料としては、Al、Au、Ag、Cu、Ni、ステンレス鋼などの金属薄膜や、In23、SnO2、ZnO、Cd2SnO4、ITO(In23 にSnを添加したもの)などの酸化物半導体系の導電材料などが挙げられる。裏面電極層の厚さは特に限定はなく、通常、30〜1000nm程度である。好ましくは、裏面電極層は金属薄膜である。また、一部の電極引き出しで、Agペーストといった真空を利用しない膜形成を使用しても、本発明の太陽電池といえる。
【0053】
太陽光のエネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換層は、半導体からなる層であり、I族元素とIII族元素とVI族元素とからなる化合物半導体薄膜(カルコパイライト構造半導体薄膜)であるCuInSe2(CIS)膜、またはこれにGaを固溶したCu(In,Ga)Se(CIGS)膜(以下、両者をまとめてCIS系膜ともいう)、シリコン系半導体からなる層である。シリコン系半導体には、薄膜シリコン層、無定形シリコン層、多結晶シリコン層などが挙げられる。光電変換層は、異なる半導体からなる複数の層を有する積層体であってもよい。また、色素を用いた光電変換層であっても良い。
薄膜シリコン層は、プラズマCVD法、熱CVD法、スパッタリング法、クラスタイオンビーム法、蒸着法などによって得られるシリコン層である。
無定形シリコン層は、実質的に結晶性をもたないシリコンからなる層である。実質的に結晶性をもたないことは、X線を照射しても回折ピークを与えないことによって確かめることができる。無定形シリコン層を得る手段は公知であり、そのような手段には、例えば、プラズマCVD法や熱CVD法などが含まれる。
多結晶シリコン層は、シリコンからなる微小結晶の集合体からなる層である。上述の無定形シリコン層とは、X線の照射により回折ピークを与えることによって区別される。多結晶シリコン層を得る手段は公知であり、そのような手段には、無定形シリコンを熱処理する手段などが含まれる。
本発明で用いる光電変換層は、シリコン系半導体層に限られず、例えば、厚膜半導体層であってもよい。厚膜半導体層とは酸化チタン、酸化亜鉛、ヨウ化銅などのペーストから形成される半導体層である。
半導体材料を光電変換層として構成する手段は公知の方法を適宜参照してよい。例えば、200〜500℃の温度下で、SiHにフォスフィン(PH)を添加したガス中で高周波プラズマ放電を行うことで約20nmのa−Si(n層)を形成し、続いてSiHガスのみで約500nmのa−Si(i層)を形成し、続いてSiHにジボラン(B)を添加して、約10nmのp−Si(p層)を形成することができる。
【0054】
光電変換層を挟む一対の電極層のうち、フィルム基材とは反対側に設けられる電極層(以下、集電電極層ともいう)は、導電フィラーとバインダー樹脂を含む導電性ペーストを固めてなる電極層であったり、透明電極層であったりしてもよい。透明電極層としては、In、SnO、ZnO、CdSnO、ITO(InにSnを添加したもの)などの酸化物半導体系の材料を好ましく用いることができる。
かくして、本発明の好適な態様例である、透明電極/p型a−Si/i型a−Si/n型a−Si/金属電極/ポリイミドフィルム層の順で積層されてなるフィルム状太陽電池が得られる。
また、p層をa−Si、n層を多結晶シリコンとして、両者の間に薄いアンド−プa−Si層を挿入した構造にしてもよい。特に、a−Si/多結晶シリコン系のハイブリッド型にすると、太陽光スペクトルに対する感度が改善される。
太陽電池の作成においては、上記構成に加えて、反射防止層、表面保護層などを付加せしめてもよい。
【0055】
本発明の薄膜トランジスター(TFT)としては、トランジスターを構成する半導体層および素子を構成する絶縁膜、電極、保護絶縁膜などが、薄膜を堆積させて作製されているものをいう。通常シリコンウェハーのシリコンを半導体層として使用するものとは、区別する。通常薄膜を真空蒸着などのPVD(物理的蒸着)、プラズマCVDなどのCVD(化学的蒸着)といった、真空を利用する手法によって作製する。このため、シリコンウェハーのように単結晶ではないものを含む。Siを使っても、微結晶シリコンTFT、高温ポリシリコンTFT、低温ポリシリコンTFT、そして酸化物半導体TFT、有機半導体TFTなどを含む。
【0056】
本発明のMEMS素子としては、MEMS技術を利用して作成した物をさし、インクシ゛ェットプリンターヘッド、走査型プローブ顕微鏡用プローブ、 LSIフ゜ローバー用コンタクタ、マスクレス露光用光空間変調器、 光集積化素子、 赤外線センサー、 流量センサー、加速度センサー、MEMSジャイロセンサー、RF MEMS スイッチ、 体内、体外血圧センサーそして、グレーティングライトバルブ、デジタルマイクロミラーデバイスなどを使ったビデオプロジェクター、などを含む。
【0057】
本発明のセンサーとしては、ストレインゲージ(ひずみゲージ) , ロードセル, 半導体圧力センサー , 光センサー , 光電素子 , フォトダイオード , 磁気センサー , 接触式温度センサー , サーミスタ温度センサー , 抵抗測温体温度センサー , 熱電対温度センサー , 非接触式温度センサー , 放射温度計 , マイクロフォン , イオン濃度センサー , ガス濃度センサー , 変位 センサー, ポテンショメータ , 差動トランス変位 センサー , 回転角センサー , リニアエンコーダ , タコジェネレータ , ロータリエンコーダ , 光位置センサー (PSD) , 超音波距離計 , 静電容量変位計 , レーザードップラー振動速度計 , レーザドップラー流速計 , ジャイロセンサー , 加速度センサー, 地震センサー, 一次元画像, リニアイメージセンサー, 二次元画像, CCDイメージセンサー, CMOSイメージセンサー, 液, 漏液センサー(リークセンサー), 液検知センサー(レベルセンサー), 硬度センサー, 電場センサー, 電流センサー, 電圧センサー, 電力センサー, 赤外線センサー, 放射線センサー, 湿度センサー, においセンサー, 流量センサー, 傾斜センサー, 振動センサー, 時間センサーおよび、これらのセンサーを複合した複合センサーや、これらのセンサーで検出した値から何らかの計算式に基づき別の物理量や感性値などを出力するセンサーなどがを含む
【0058】
本発明の論理回路としては、NAND、ORを基本とした論理回路および、クロックにより、同期が取られたものも含む。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0060】
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、N,N−ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、測定した。)
2.ポリアミド酸溶液の溶液粘度
ブルックフィールド粘度計により25℃で測定した。
3.ポリイミドフィルム層などの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
4.ポリイミドフィルム層の引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度
測定対象のポリイミドフィルム層を、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(R) 機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度を測定した。
【0061】
5.180度剥離強度
JIS C6471 の180度剥離法に従って、試料の剥離強度は下記条件で180度剥離試験を行うことで求めた。剥離強度測定用サンプルは、パターンをつける前のポリイミドフィルム1〜5にポリイミド層を実施例1と同様にしてつけたもので測定した。具体的にはポリイミド層を付けた後にニッカン工業製SAFWと更にその上に、大き目のフィルム1を100℃にてロールラミネート後に、160℃1時間のプレスを行い、室温冷却の後にSAFWを挟んだ両側のフィルム1とフィルム1ポリイミド層積層体とをフィルム1が180度折れ曲がる側として、N=5の測定を行い平均値を測定値とした。
装置名 ; 島津製作所社製 オートグラフAG−IS
測定温度 ; 室温
剥離速度 ; 50mm/min
雰囲気 ; 大気
測定サンプル幅 ; 1cm
【0062】
6.線膨張係数(CTE)
測定対象のポリイミドフィルム層を、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)において、下記条件にて伸縮率を測定し、30℃〜45℃、45℃〜60℃、…と15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。
機器名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
荷重 ; 35g/mm
ワニスX,Y,Z膜CTEの測定はSiウェハー上にスピンコートにてワニスX,Y,Z膜を作成して、剥がしたものを使い測定した。なおこのときの乾燥条件は実施例1と同じである。また、100℃20分の乾燥後にワニスY,Z膜は剥がした。ワニスX膜は焼成完了後に剥がした。
積層体CTEの測定は、電気配線の無い部分を選んで測定した。
【0063】
〔製造例1〕
(ポリアミド酸溶液Aの作成)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後、ピロメリット酸二無水物217質量部、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(DMAC−ST30、日産化学工業製)をシリカが表1記載量になるように加え、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液Aが得られた。
【0064】
〔製造例2〕
(ポリアミド酸溶液Bの作成)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、テトラカルボン酸二無水物として3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物398質量部、パラフェニレンジアミン147質量部を4600質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(DMAC−ST30、日産化学工業製)をシリカが表1記載量になるように加え、温度を20℃以下に保ちながら同様に反応させてポリアミド酸溶液Bを得られた。
【0065】
〔製造例3〕
(ポリアミド酸溶液Cの作成)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ピロメリット酸無水物、4,4'ジアミノジフェニルエーテルを当量で入れ、N、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(DMAC−ST30、日産化学工業製)をシリカが表1記載量になるよう加え、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液Cが得られた。
【0066】
【表1】

【0067】
〔製造例4〕
(ポリアミド酸溶液Dの作成)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール22.53質量部、N―メチルー2−ピロリドン176.44質量部を導入し、完全に溶解させた後、ピロメリット酸二無水物19.62質量部、マレイン酸無水物1.96質量部を導入し、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、黄色で粘調なポリアミド酸溶液Dが得られた。ワニスXと呼ぶ。物性測定結果を表2に記載する。
【0068】
〔製造例5〕
(ポリアミド酸溶液Eの作成)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル20.02質量部、N―メチルー2−ピロリドン166.40質量部を導入し、完全に溶解させた後、ピロメリット酸二無水物19.62質量部、マレイン酸無水物1.96質量部を導入し、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、黄色で粘調なポリアミド酸溶液Eが得られた。ワニスYと呼ぶ。測定結果を表2に記載する。
【0069】
〔製造例6〕
(ポリアミド酸溶液Fの作成)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール20.27質量部、1、3−(3−アミノプロピル)―1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン2.63質量部、N―メチルー2−ピロリドン178.16質量部を導入し、完全に溶解させた後、ピロメリット酸二無水物20.07質量部、マレイン酸無水物1.57質量部を導入し、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、黄色で粘調なポリアミド酸溶液Fが得られた。ワニスZと呼ぶ。測定結果を表2に記載する。
【0070】
【表2】

【0071】
〔ポリイミドフィルムの作成1〜4〕
製造例で得たポリアミド酸溶液を、ダイコーターを用いて鏡面仕上げしたステンレススチール製の無端連続ベルト上に塗布し(塗工幅1240mm)、90〜115℃にて10分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して両端をカットし、それぞれのグリーンフィルムを得た。
得られたこれらのグリーンフィルムを、ピンシートが並んだ際にピン間隔が一定となるようにピンを配置したピンシートを有するピンテンターに通し、フィルム端部をピンにさしこむ事により把持し、フィルムが破断しないように、かつ不必要なタルミ生じないようにピンシート間隔を調整し、最終ピンシート間隔が1140mm、となるように搬送し、第1段が170℃で2分、第2段として230℃で2分、第3段485℃で6分の条件で加熱を施して、イミド化反応を進行させた。その後、2分間で室温にまで冷却し、フィルムの両端部の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、褐色を呈するフィルム1〜フィルム4のそれぞれのポリイミドフィルムを得た。得られた各ポリイミドフィルムの特性などの測定結果を表3に記載する。
【0072】
【表3】

【0073】
《 配線パターン作成例1》
フィルム1をA4サイズに切断後にあらかじめ、CO2レーザーを電流値12A、周波数200Hz、ON時間24μsec、ショット回数4回にて、照射して、Φ80μmの穴を開けた。
この後に、開口部を有するステンレス製の枠を被せてスパッタリング装置内の基板ホルダーに固定した。基板ホルダーと、フィルム1は密着するように固定する。基板ホルダー内に冷媒を流すことによってフィルムの温度を設定できる。基板温度を2℃に設定した。次いでフィルム表面のプラズマ処理を行った。プラズマ処理条件はアルゴンガス中で、周波数13.56MHz、出力200W、ガス圧1×10−3Torrの条件であり、処理時の温度は2℃、処理時間は2分間であった。次いで、周波数13.56MHz、出力450W、ガス圧3×10−3Torrの条件、ニッケル−クロム(クロム10wt%)合金のターゲットを用い、アルゴン雰囲気下にてDCマグネトロンスパッタリング法により、1nm/秒のレートで厚さ7nmのニッケル−クロム合金被膜(下地層)を形成し、次いで、基板の温度を2℃に設定するよう、基板のスパッタ面の裏面を2℃に温度コントロールした冷媒を中に流した、基板ホルダーのSUSプレートと接する状態でスパッタリングを行った。10nm/秒のレートで銅を蒸着し、厚さ0.25μmの銅薄膜を形成させた。各フィルムからの下地金属薄膜形成フィルムを得た。銅およびNiCr層の厚さは蛍光X線法によって確認した。各フィルムからの下地金属薄膜形成フィルムをCu製の枠に固定し、硫酸銅めっき浴をもちいて、表記載厚さの厚付銅層を形成した。電解めっき条件は電解めっき液(硫酸銅80g/l、硫酸210g/l、HCl、光沢剤少量)に浸漬、電気を1.5Adm2流した。これにより厚さ4μmの厚付け銅メッキ層(厚付け層)を形成し引き続き120℃で10分間熱処理乾燥し、金属化ポリイミドフィルムを得た。
得られた金属化ポリイミドフィルムを使用し、フォトレジスト:FR−200、シプレー社製を塗布・乾燥後にガラスフォトマスクで密着露光し、さらに1.2質量%KOH水溶液にて現像した。次に、HClと過酸化水素を含む塩化第二銅のエッチングラインで、40℃、2kgf/cm2のスプレー圧でエッチングし、ライン/スペース=50μm/50μmのライン列をテストパターンとして形成を行った。光学顕微鏡で観察して、だれ、パターン残りの無い良好なパターンが得られた。これをパターンフィルム1と呼ぶ。
【0074】
《 配線パターン作成例2から4》
フィルム1をフィルム2〜4にした以外は配線パターン作成例1と同じようにしてパターンフィルム2〜4を得た。
【0075】
《配線パターン作成例5》
配線パターン作成例1と全く同じにしてパターンフィルムを作成した後に、100mmX100mmに切断した。これを真空プラズマCVD装置中に、銅配線がある側を薄膜堆積させる向きとして、100mmX100mmのフィルム1に同じ外形100mmX100mmで中央部に30mmX30mmの切り抜き部分を作ったSUS板を重ねて、ガラス板にカプトンテープにて貼り付けたものを導入した。
構成は以下のとうりとなる。薄膜堆積側:外形100mmX100mmで中央部に30mmX30mmの切り抜き部分を作ったSUS板/銅配線側:100mmX100mmに切断した配線パターン作成1と同じもの/ガラス板基板温度170℃にして反応ガスをSiH4を42sccmに対して、H2を14sccm導入して、真空プラズマCVD装置中の圧力を0.15Torrとして、放電を行ない、イントリンシックSi薄膜500nm厚を作成した。薄膜を、大気中に取り出しても、ガラスから剥がしても、反り、剥がれのない薄膜を得られていた。これをパターンフィルム5とする。
【0076】
《 実施例1》
TMAH(2.5wt%)、水(7.5wt%)、 DMSO(90wt%)混合溶液200ccを作成し、パッドに入れ、この中にA4サイズのパターンフィルム1を3分浸漬後に取り出して、液を切ってから、メチルアルコールを入れたパッドに1分浸漬、取り出して液を切ってから、純水を入れたパッドに1分浸漬した後に乾燥させた。このフィルムの銅配線のある側を上にしてガラス板にカプトンテープで固定後に、アプリケーターを使って焼成した後に5μm厚となるように、厚さを調整してワニスXを塗布した。今回アプリケーターギャップは50μmであった。その後にガラス板と共に、マッフル炉に100℃20分入れ乾燥させる。これを取り出し、ガラス板からこのフィルムを取り外し、次に金属枠に固定して、再度マッフル炉にいれて、室温から350℃に80分かけ昇温後に350℃で1時間保持した。 この後にマッフル炉から取り出し、金属枠をはずして積層体を作成した。評価結果などを表4に示す。
【0077】
《実施例2》
ポリイミドフィルム層をパターンフィルム2にした以外は実施例1と同じようにして実施した。評価結果などを表4に示す。
【0078】
《実施例3》
ポリイミド層をZにした以外は実施例1と同じようにして実施した。評価結果などを表4に示す。
【0079】
《実施例4》
ポリイミドフィルム層をパターンフィルム3にした以外は実施例1と同じようにして実施した。評価結果などを表4に示す。
【0080】
《実施例5》
ポリイミドフィルム層をパターンフィルム3にして、 ポリイミド層をZにした以外は実施例1と同じようにして実施した。評価結果などを表4に示す。
【0081】
《実施例6》
ポリイミドフィルム層をパターンフィルム5にして、 ポリイミド層をZにした以外は実施例1と同じようにして実施した。評価結果などを表4に示す。
【0082】
【表4】

【0083】
《比較例1》
パターンフィルム1の銅配線のある側を上にしてガラス板にカプトンテープで固定後に、アプリケーターを使って焼成した後に5μm厚となるように、厚さを調整してワニスXを塗布した。今回アプリケーターギャップは50μmであった。その後にガラス板と共に、マッフル炉に100℃20分入れ乾燥させる。これを取り出し、ガラス板からこのフィルムを取り外し、次に金属枠に固定して、再度マッフル炉にいれて、室温から350℃に80分かけ昇温後に350℃で1時間保持した。 この後にマッフル炉から取り出し、金属枠をはずして積層体を作成した。
【0084】
《比較例2》
使用するワニスをZにした以外は比較例1と同様にして実施した。評価結果などを表5に示す。
【0085】
《比較例3》
使用するワニスをYにした以外は実施例1と同様にして実施した。評価結果などを表5に示す。大きく反りがでたため、表に示す物性以上に使用は困難であった。
【0086】
《比較例4》
使用するパターンフィルムをパターンフィルム4にした以外は実施例1と同様にして実施した。評価結果などを表5に示す。大きく反りがでたため、表に示す物性以上に使用は困難であった。
【0087】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のポリイミド層とポリイミドフィルム層との間に少なくとも電気回路を有する積層体であって、該ポリイミド層および、該ポリイミドフィルム層が少なくとも各一層以上あり、該ポリイミド層が芳香族テトラカルボン酸類とベンゾオキサゾール構造(骨格)を有する芳香族ジアミン類との反応によって得られるポリイミドであり、該ポリイミド層は、該ポリイミドフィルム層および該電気回路による凹凸を概略埋め込んでおり、該積層体の線膨張係数が、直交する2方向で測っていずれも−3pm/℃〜+10ppm/℃であり、電気回路加工をしたポリイミドフィルム層の電気回路が在る側を、有機アルカリ溶液処理をした後に、ポリアミック酸ワニスを塗布して、焼成によってポリイミド層とすることを特徴とする電気配線および電気素子形成用積層体は、極小極薄の半導体素子、電気回路などに有効に使用でき、極薄の絶縁性、耐熱性、寸法安定性に優れたポリイミドフィルム上に、精度よく電気回路や半導体素子が形成ができ、それ故に、アモルファスSi薄膜太陽電池、SeやCIGS系化合物半導体薄膜太陽電池基板およびこれらを使った太陽電池、また、薄型化が進む単結晶および多結晶Siによる太陽電池としての利用、アモルファスシリコンや低温ポリシリコンによる薄膜トランジスターにより駆動および、その他の演算を行なう表示デバイス基板、およびこれらを利用した表示デバイス、薄膜デバイス、薄膜センサー、或は論理回、半導体チップを付け加えることで出来る複合デバイスなどに有効に使用できる。
これらの極小極薄のセンサーなどのデバイス構造体の製造にとってきわめて有意義であり、産業界への寄与は大きい。
【符号の説明】
【0089】
(図1)
1:ポリイミド層
2:電気回路部
3:ポリイミドフィルム層
(図2)
1:ポリイミド層
2:電気回路部
3:ポリイミドフィルム層
4:半導体素子
5:貫通電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド層(A)とポリイミド層(B)との間に少なくとも電気回路を有する積層体であって、該ポリイミド層(A)および、該ポリイミド層(B)が少なくとも各一層以上あり、該ポリイミド層(A)が芳香族テトラカルボン酸類とベンゾオキサゾール構造(骨格)を有する芳香族ジアミン類との反応によって得られるポリイミドからなり、該積層体の線膨張係数が、直交する2方向で測っていずれも−3pm/℃〜+10ppm/℃であり、該電気回路が該ポリイミド層(A)と接する面側に、有機アルカリ溶液処理が施されていることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記ポリイミド層(B)が芳香族テトラカルボン酸類とベンゾオキサゾール構造(骨格)を有する芳香族ジアミン類との反応によって得られるポリイミドからなることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記ポリイミド層(B)が3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン類との反応によって得られるポリイミドからなることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の該積層体の電気回路が電気回路配線のみからなる積層体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の該積層体の該ポリイミド層(A)とポリイミド層(B)との間に電気回路を含む半導体素子が形成されてなる積層体。
【請求項6】
該半導体素子が薄膜トランジスター、センサー、太陽電池或は論理回路を含むことを特徴とする請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
有機アルカリ溶液処理がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドのジメチルスルホキシド溶液による処理であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
前記ポリイミド層(B)からなるフィルムの少なくとも片面上に電気回路配線のみ、或は半導体層も付加された電気回路配線を形成し、次いで少なくとも該電気回路が形成された面側のみ或は両面に有機アルカリ溶液処理を施し、次いで該有機アルカリ溶液処理面された少なくとも該電気回路が形成された面上にポリアミック酸溶液を塗布後、乾燥し次いで熱処理をして前記ポリイミド層(A)を形成する請求項1〜7に記載の積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−245676(P2011−245676A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119207(P2010−119207)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】