説明

積層体およびその製造方法

【課題】ポリシラザンからなり、耐擦傷性、透明性、基材との密着性に優れるとともに、上高屈折率膜およびその製造方法を提供する。
【解決手段】基材12と、前記基材12上に形成されたシリコン含有膜16と、を備える積層体であって、前記シリコン含有膜16は、珪素原子と窒素原子、または珪素原子と窒素原子と酸素原子とからなる窒素高濃度領域18を有し、前記窒素高濃度領域は、基材12上に形成されたと遷移金属化合物を混合した膜14に酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下でエネルギー線照射を行い、当該膜の少なくとも一部を変性することにより形成される、積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酸素や水蒸気などのガスを遮断する透明ガスバリア材料は、従来からの主たる用途である食品、医薬品などの包装材料用途だけでなく、液晶ディスプレイのようなフラットパネルディスプレイ(FPD)や太陽電池用の部材(基板、バックシートなど)、電子ペーパーや有機エレクトロルミネッセント(有機EL)素子用のフレキシブル基板や封止膜などにも用いられるようになってきている。これらの用途においては、非常に高いガスバリア性が求められている。
【0003】
現在、一部の用途において採用されている透明ガスバリア材料は、プラズマCVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などのドライ法と、ゾルゲル法などに代表されるウェット法により製造されている。両方法は、いずれもガスバリア性を示す珪素の酸化物(シリカ)をプラスチック基材に堆積させる手法である。ドライ法とは異なり、ウェット法は大型の設備は必要とせず、さらに基材の表面粗さに影響されず、ピンホールもできないので、再現性良く均一なガスバリア膜を得る手法して注目されている。
【0004】
このようなウェット法によるガスバリア性フィルムの作製方法の一つとして、非特許文献1のように基材に塗工したポリシラザン膜をシリカ転化させるという方法が知られている。ポリシラザンは、酸素または水蒸気の存在下における加熱処理(150〜450℃)によって、酸化もしくは加水分解、脱水重縮合を経て酸化珪素(シリカ)へと転化することが広く知られている。しかし、この方法ではシリカ形成に長時間を要するという問題点、および基材が高温に曝されて基材の劣化を免れ得ないという問題点があった。
【0005】
一方、特許文献1および特許文献2には、基材にポリシラザンを含有する塗布液を塗布してポリシラザン膜を形成し、次いで、好適なプラズマガス種として空気または酸素ガスを用いた、一般的にプラズマ酸化法と呼ばれるプラズマによる酸化処理をポリシラザン膜に施す方法が開示されている。この方法によって、ポリシラザン膜を低温かつ比較的短時間でシリカ転化させることができると記載されている。
【0006】
続いて、光学材料について述べる。
光学材料の一つ、プラスチック製メガネレンズなどには、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂やポリチオウレタン樹脂などの高屈折率樹脂が用いられている。この高屈折率樹脂は、耐擦傷性が低く、表面に傷が付き易いという欠点を有している。そのため、その表面にハードコートおよび高屈折率を兼ね備えた膜を設ける方法が行われている。また、同様の理由から、ワープロ、コンピュータ、テレビなどの各種ディスプレイ、液晶表示装置に用いる偏光板の表面、カメラ用ファインダーのレンズなどの光学レンズ、各種計器のカバー、自動車、電車などの窓ガラスの表面にもハードコートおよび高屈折率を兼ね備えた膜が必要とされている。このようなハードコート膜には、高屈折率を付与するため、超微粒子を添加したシリカゾルおよび有機珪素化合物を用いたコーティング液が主に使用されている。
【0007】
しかしながら、このようなコーティング液では、干渉縞の発生を抑制するため、基材とコーティング膜との屈折率を合わせる必要がある。その場合、基材の種類に応じて多くの添加微粒子の中から最適なものを選択する必要があった。また、耐擦傷性に改良の余地があり、耐擦傷性を付与するためには数μm以上の膜厚が必要であった。
【0008】
一方、特許文献3には、ペルヒドロポリシラザンまたはその変性物を基材に塗布した後、真空下に600℃以上の温度で焼成する、窒化珪素薄膜の形成方法が記載されている。このようにして形成された窒化珪素薄膜は、耐摩耗性、耐熱性、耐蝕性、耐薬品性に優れ、さらに高屈折率を有すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−269690号公報
【特許文献2】特開2007−237588号公報
【特許文献3】特開平10−194873号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「塗装と塗料」、569巻、11号、27〜33ページ(1997年)
【非特許文献2】「Thin Solid Films」、515巻、3480〜3487ページ、著者: F.Rebib等(2007年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1のガスバリア性フィルムの無機高分子層とは、基材と金属蒸着層の中間層として、金属蒸着層の接着性、基材の化学的安定性を付与するための層であり、ポリシラザン層単独でガスバリア性を付与する発明ではない。また、特許文献1の実施例に記載のように空気をプラズマ種として用いた、一般的にコロナ処理と呼ばれる手法の場合、得られる無機高分子層は十分なガスバリア性は発現しなかった。さらに、耐擦傷性が良好ではないという問題点もあった。
【0012】
また、特許文献2の発明は、ポリシラザン膜にプラズマ処理することによってガスバリア性フィルムを作製する方法である。しかしながら、特許文献2の発明もまたは、前述のような酸素プラズマ処理によって酸化珪素(シリカ)膜を作製する技術に関する。FPDや太陽電池用部材、有機EL素子用のフレキシブル基板・封止膜といった用途において要求されるガスバリア性能は、酸化珪素(シリカ)膜単体では実現が困難なレベルであった。そのため、特にこれらの用途に用いるには、ガスバリア性に改良の余地があった。
このように、特許文献1、2に記載のガスバリア性フィルムには、酸素および水蒸気に対するガスバリア性、耐擦傷性に依然として解決すべき課題があった。
【0013】
また、光学材料における特許文献3記載の方法は、ポリシラザン膜を600℃以上の高温で焼成する必要がある。そのため、窒化珪素膜を光学部材の表面に設ける場合に光学部材自体が高温に曝されるため、同文献に記載の方法は精密性が要求される光学用途へは応用できなかった。一方、600℃未満の温度でポリシラザン膜を加熱した場合、低屈折率のシリカに転化してしまい、高屈折率膜は得られない
【発明の開示】
【0014】
本発明によると、基材と、該基材上に形成されたシリコン含有膜と、を備える積層体であって、該シリコン含有膜は、珪素原子と窒素原子、または珪素原子と窒素原子と酸素原子とからなる窒素高濃度領域を有し、該窒素高濃度領域は、基材上に形成された遷移金属化合物を含有するポリシラザン膜に酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下でエネルギー線照射を行い、当該膜の少なくとも一部を変性することにより形成される、積層体が提供される。
【0015】
本発明の一実施形態によると、上記積層体において、上記窒素高濃度領域は、X線光電子分光法により測定した、下記式で表される全原子に対する窒素原子の組成比が、0.1以上、1以下の範囲である;
式:窒素原子の組成比/(酸素原子の組成比+窒素原子の組成比)。
【0016】
本発明の一実施形態によると、上記積層体において、上記窒素高濃度領域は、X線光電子分光法により測定した、下記式で表される全原子に対する窒素原子の組成比が、0.1以上、0.5以下の範囲である;
式:窒素原子の組成比/(珪素原子の組成比+酸素原子の組成比+窒素原子の組成比)。
【0017】
本発明の一実施形態によると、上記積層体において、上記窒素高濃度領域は、上記シリコン含有膜の全面に亘って形成されている。
【0018】
本発明の一実施形態によると、上記積層体において、上記窒素高濃度領域は、0.001μm以上0.2μm以下の厚みを有する。
【0019】
本発明の一実施形態によると、上記積層体において、上記シリコン含有膜における、X線光電子分光法により測定した全原子に対する窒素原子の組成比は、上記シリコン含有膜の上面側が他方の面側よりも高い。
【0020】
本発明の一実施形態によると、エネルギー線は230nm以下の光である。
【0021】
本発明の一実施形態によると、上記積層体において、上記エネルギー線照射は、プラズマ照射または紫外線照射により行われる。
【0022】
本発明の一実施形態によると、上記積層体において、上記プラズマ照射または紫外線照射は、ガス種として不活性ガス、希ガスまたは還元ガスを用いる。
【0023】
本発明の一実施形態によると、上記積層体において、上記ガス種として窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、水素ガスまたはこれらの混合ガスが用いられる。
【0024】
本発明の一実施形態によると、上記積層体において、上記プラズマ照射または紫外線照射は、真空下で行われる。
【0025】
本発明の一実施形態によると、上記積層体において、上記プラズマ照射または紫外線照射は、常圧下で行われる。
【0026】
本発明の一実施形態によると、上記積層体において、上記ポリシラザン膜は、ペルヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザン、およびこれらの誘導体よりなる群から選択される1種以上である。
本発明の一実施形態によると、前記遷移金属化合物は、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、鉄、オスミニウム、コバルト、パラジウム、ニッケル、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、スカンジウム、イットリア、ランタン、レニウムを含む化合物またはこれらの混合物である。
【0027】
本発明の一実施形態によると、前記遷移金属化合物は、遷移金属のハロゲン化物もしくは錯体もしくは遷移金属塩もしくは遷移金属酸化物である。
【0028】
本発明の一実施形態によると、前記ハロゲン化物のハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素である。
【0029】
本発明の一実施形態によると、前記錯体としては、オレフィン錯体、環状オレフィン錯体、ビニルシロキサン錯体、ホスフィン錯体、ホスファイト錯体、一酸化炭素錯体である。
【0030】
本発明の一実施形態によると、前記遷移金属塩はテトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、テトラキス(ペルフルオルフェニル)ホウ酸塩、過塩素酸塩及びトリフルオルメチルスルホン酸塩である。
【0031】
本発明の一実施形態によると、上記積層体において、上記窒素高濃度領域は、窒化珪素および/または酸窒化珪素を含む。
本発明の一実施形態によると、上記積層体は、0.02μm以上2μm以下の厚みを有する。
【0032】
本発明の一実施形態によると、上記積層体は光学部材である。
【0033】
本発明の一実施形態によると、上記積層体はガスバリア性フィルムである。
【0034】
また、本発明によると、基材上に遷移金属化合物を添加したポリシラザン含有液を塗布し塗膜を形成する工程と、該塗膜を低水分濃度雰囲気下において乾燥し、ポリシラザン膜を形成する工程と、該ポリシラザン膜に酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下でエネルギー線照射を行い当該膜の少なくとも一部を変性し、珪素原子と窒素原子、または珪素原子と窒素原子と酸素原子とからなる窒素高濃度領域を含むシリコン含有膜を形成する工程と、を含む、積層体の製造方法が提供される。
【0035】
本発明の一実施形態によると、上記方法において、上記窒素高濃度領域は、X線光電子分光法により測定した、下記式で表される全原子に対する窒素原子の組成比が、0.1以上、1以下の範囲である;
式:窒素原子の組成比/(酸素原子の組成比+窒素原子の組成比)。
【0036】
本発明の一実施形態によると、上記方法において、上記窒素高濃度領域は、X線光電子分光法により測定した、珪素原子、酸素原子と窒素原子の総和に対する窒素原子の組成比が、0.1以上、0.5以下の範囲である;
式:窒素原子の組成比/(珪素原子の組成比+酸素原子の組成比+窒素原子の組成比)。
【0037】
本発明の一実施形態によると、上記方法において、上記シリコン含有膜を形成する上記工程におけるエネルギー線照射は、プラズマ照射または紫外線照射である。
【0038】
本発明の一実施形態によると、上記方法において、上記プラズマ照射または紫外線照射は、ガス種として不活性ガス、希ガスまたは還元ガスを用いる。
【0039】
本発明の一実施形態によると、上記方法において、上記ガス種として窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、水素ガスまたはこれらの混合ガスが用いられる。
【0040】
本発明の一実施形態によると、上記方法において、上記プラズマ照射または紫外線照射は、真空下で行われる。
【0041】
本発明の一実施形態によると、上記方法において、上記プラズマ照射または紫外線照射は、常圧下で行われる。
【0042】
本発明の一実施形態によると、上記方法において、上記ポリシラザン膜は、ペルヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザン、およびこれらの誘導体よりなる群から選択される1種以上である。
【0043】
本発明によると、基材と、前記基材上に形成されたシリコン含有膜と、を備えたガスバリア性積層体であって、該シリコン含有膜は、窒素高濃度領域を有し、該窒素高濃度領域は、少なくともケイ素原子と窒素原子、またはケイ素原子と窒素原子と酸素原子とからなり、X線光電子分光法により測定した全原子に対する窒素原子の組成比が、下記式において0.1以上、1以下の範囲にあることを特徴とする、ガスバリア性積層体が提供される;
式:窒素原子の組成比/(酸素原子の組成比+窒素原子の組成比)。
【0044】
本発明によると、基材上に形成された遷移金属化合物を添加したポリシラザン膜にエネルギー線を照射し、当該膜の少なくとも一部を変性することにより形成された窒素高濃度領域の屈折率が1.55以上の領域を備えることを特徴とする高屈折率膜が提供される。
【0045】
本発明の積層体は、遷移金属化合物を添加したポリシラザン膜にエネルギー線を照射し、当該膜の少なくとも一部を変性することにより形成された珪素原子と窒素原子、または珪素原子と窒素原子と酸素原子とからなる窒素高濃度領域を備えているため、高屈折率を有するとともに、耐擦傷性、透明性、基材との密着性に優れる。さらに、本発明の積層体は、生産性に優れるとともに、上記特性の安定性に優れる高屈折率膜として使用できる。
【0046】
また、本発明の積層体は、従来技術のようなガスバリア性フィルムと比較して、水蒸気バリア性や酸素バリア性等のガスバリア性や耐擦傷性に優れる。
【0047】
また、本発明の積層体の製造方法によれば、光学部材の精密性に対する影響が少ないので、光学用途に適した積層体を製造することができる。さらに、本発明の積層体の製造方法は、簡便な方法であり生産性に優れるとともに、屈折率の制御性にも優れる。
また、本発明の積層体は、ポリシラザンに遷移金属化合物を添加したことによって、未添加のものと比較して、短時間での反応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明に係る積層体の製造方法を示す工程断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る積層体の他の態様を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明に係る積層体の他の態様を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0050】
本実施形態の積層体10は、図1(b)に示すように基材12と、基材12上に形成されたシリコン含有膜16と、を備える。シリコン含有膜16は、珪素原子と窒素原子、または珪素原子と窒素原子と酸素原子とからなる窒素高濃度領域18を有する。窒素高濃度領域18は、基材12上に形成されたポリシラザン膜14にエネルギー線を照射し(図1(a))、ポリシラザン膜14の少なくとも一部を変性することにより形成される。
【0051】
以下、本発明の積層体10の各構成要素について説明する。
(基材)
基材12として使用できる材料としては、シリコン等の金属基板、ガラス基板、セラミックス基板、樹脂フィルム等が挙げられる。本実施形態において、基材12として樹脂フィルムを用いる。
【0052】
樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン;アペル(登録商標)等の環状オレフィンポリマー;ポリビニルアルコール;エチレン−ビニルアルコール共重合体;ポリスチレン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン−6、ナイロン−11等のポリアミド;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリイミド;ポリエーテルスルフォン;ポリアクリル;ポリアリレート;トリアセチルセルロース等が挙げられ、これらは単独でか、または2種以上組み合わせて用いることができる。
また、基材12の厚みは、用途により適宜選択することができる。
【0053】
(シリコン含有膜)
シリコン含有膜16は、基材12上に形成された遷移金属化合物を添加したポリシラザン膜14に酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下でエネルギー照射を行い、このポリシラザン膜14の少なくとも一部を変性して、窒素高濃度領域18を形成することにより得られる。したがって、シリコン含有膜16は、その上面16aの近傍に窒素高濃度領域18を有する(図1(b))。本実施形態において「上面16aの近傍」とは、シリコン含有膜16の上面16aから下方向に深さ50nmの領域、好ましくは上面16aから下方向に深さ30nmの領域を意味する。
【0054】
ここで、本明細書中における窒素高濃度領域とは、以下式で表される窒素原子の組成比が、0.1以上0.5以下である領域をいう;
窒素原子の組成比/(珪素原子の組成比+酸素原子の組成比+窒素原子の組成比)。
窒素高濃度領域18は、好ましくは、0.001μm以上0.2μm以下、より好ましくは、0.01μm以上0.1μm以下の厚みを有する。
【0055】
また、窒素高濃度領域18を有するシリコン含有膜16は、好ましくは、0.002μm以上2.0μm以下、より好ましくは0.05μm以上1.0μm以下の厚みを有する。
【0056】
本発明のシリコン含有膜16は、遷移金属化合物を添加したポリシラザン膜14に酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下でエネルギー線照射することにより形成される窒素高濃度領域18を有する。シリコン含有膜16中の窒素高濃度領域18以外の部分は、エネルギー線照射後、前記樹脂基材側から透過してきた水蒸気と反応し、酸化珪素に変化し得る。
すなわち、シリコン含有膜16は、窒素高濃度領域18と酸化珪素領域とから構成される。この窒素高濃度領域/酸化珪素/樹脂基材の構成により、シリコン含有膜16の、酸素バリア性、水蒸気バリア性等のガスバリア性やハードコート性などの機械特性は、SiOやSi34などの単層膜に比べ優れる。
【0057】
シリコン含有膜16は、好ましくは、SiO、SiNH、SiO等から構成される。
なお、本実施形態においてはシリコン含有膜16の膜厚が0.3μmであり、窒素高濃度領域18がシリコン含有膜16の上面16aの近傍全体に亘って形成された例によって説明するが、窒素高濃度領域18がシリコン含有膜16の上面近傍の一部に形成されていてもよい。
【0058】
また、シリコン含有膜16の膜全体に亘って窒素高濃度領域18が形成されていてもよい。この場合、シリコン含有膜16の組成は窒素高濃度領域18と同様なものとなる。
【0059】
窒素高濃度領域18は、少なくとも珪素原子と窒素原子とからなるか、または少なくとも珪素原子と窒素原子と酸素原子とからなる。本実施形態において、窒素高濃度領域18は、Si、SiO等から構成される。
【0060】
また、窒素高濃度領域18の、X線光電子分光法により測定した全原子に対する窒素原子の組成比は、下記式において0.1以上、1以下、好ましくは0.14以上、1以下の範囲にある。
式:窒素原子の組成比/(酸素原子の組成比+窒素原子の組成比)。
【0061】
または、窒素高濃度領域18は、X線光電子分光法により測定した、珪素原子、酸素原子と窒素原子の総和に対する窒素原子の組成比が、下記式において0.1以上、0.5以下、好ましくは0.1以上、0.4以下である。
式:窒素原子の組成比/(珪素原子の組成比+酸素原子の組成比+窒素原子の組成比)
このような組成の窒素高濃度領域18を有する積層体10は、酸素バリア性、水蒸気バリア性等のガスバリア性、耐擦傷性等の機械特性に特に優れる。つまり、このような組成の窒素高濃度領域18を有することにより、積層体10はバリア性向上と機械特性向上のバランスに優れる。
【0062】
また、ガスバリア性を向上させる観点から、シリコン含有膜16における、X線光電子分光法により測定した全原子に対する窒素原子の組成比は、前記シリコン含有膜の上面16a側が他方の面側よりも高いことが好ましい。
なお、シリコン含有膜16と窒素高濃度領域18との間において徐々に原子組成が変化している。このように連続的に組成が変化しているので、バリア性が向上するとともに機械特性も向上する。
【0063】
<積層体の製造方法>
本実施形態の積層体10の製造方法は、以下の工程を含む。以下、図面を用いて説明する。
(a)基材12上に遷移金属化合物を添加したポリシラザン含有液を塗布し、塗膜を形成する工程。
(b)塗膜を低酸素・低水分濃度雰囲気下において乾燥し、ポリシラザン膜14を形成する工程。
(c)ポリシラザン膜14に酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下でエネルギー線照射を行い、ポリシラザン膜14の少なくとも一部を変性し、窒素高濃度領域18を含むシリコン含有膜16を形成する工程(図1(a)、(b))。
【0064】
[工程(a)]
工程(a)においては、基材12上に遷移金属化合物を添加したポリシラザンを含む塗膜を形成する。
塗膜を形成する方法としては特に限定されないが、湿式法で形成することが好ましく、具体的にはポリシラザン含有液を塗布する方法が挙げられる。
【0065】
ポリシラザンとしては、ペルヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザン、およびこれらの誘導体より選択される一種または二種以上組み合わせて用いることができる。誘導体としては、水素の一部又は全部がアルキル基等の有機基または酸素原子等で置換されたペルヒドロポリシラザンまたはオルガノポリシラザンを挙げることができる。
【0066】
本実施形態においては、HSi(NHSiHNHSiHで示されるペルヒドロポリシラザンを用いることが好ましいが、水素の一部又は全部がアルキル基等の有機基で置換されたオルガノポリシラザンでもよい。また、単一の組成で用いても良いし、二成分以上を混合して使用してもかまわない。
遷移金属化合物とは、ポリシラザンのSi-H結合に作用し、同結合状態を活性にすることで、ポリシラザンのエネルギー線照射による反応を容易にすることができる。結果的に、遷移金属化合物の添加によって、短時間の照射で高い効果が期待できる。
【0067】
以上の遷移金属化合物の遷移金属種としては、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、鉄(Fe)、オスミニウム(Os)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、スカンジウム(Sc)、イットリア(Y)、ランタン(La)、レニウム(Re)を含む化合物またはこれらの混合物である。
前記の遷移金属化合物としては、前記遷移金属化合物は、ハロゲン化遷移金属もしくは錯体もしくは遷移金属塩もしくは遷移金属酸化物が用いられる。
【0068】
ハロゲン化物は、前記遷移金属と塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、フッ素(F)が結合した化合物のことである。
以上の遷移金属のハロゲン化物すべて有効に用いることができるが、より好ましくは、クロロ白金酸(HPtCl.nHO )、PtCl、PtCl、PtCl(NH、Na(PtCl).nHO、[PtCl(cyclohexene)2](μ−Cl)、RhCl3、Tris(dibutylsulfide)RhCl、(NH[RhCl] 、RhI、(NHRhCl、RuCl3、[Ru(p−cymeme)Cl2、[Ru(benzene) Cl、(NH2RuCl、(NH34[RuCl4(HO)](μ−N)、Ni(triphenylphosphine)Br、Mn(CO)Br、IrCl3、(NH2IrCl、FeCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4 、OsCl、(NHOsCl、W(cyclopentadiene)Cl、これらの混合物が挙げられる。
【0069】
前記錯体としては、オレフィン錯体、環状オレフィン錯体、ビニルシロキサン錯体、ホスフィン錯体、ホスファイト錯体、一酸化炭素錯体(CO)、アミン錯体、ニトリル錯体である。従来、主としてSiH基とビニル基などを持つ有機物との反応の触媒などとして使用されるものであり、Si-H結合の解離を容易にすることが知られている。本発明の技術において、添加により、ポリシラザンのエネルギー線照射による反応を容易にできる。以上に類する遷移金属錯体であれば用いることができるが、より好ましくは、Pt−1,3−divinyl−1,1,3,3−tetramethyldisiloxane(Pt[CH=CH(metyl)Si]O)、Pt(CO)(CH=CH(metyl)SiO)、Pt[CH=CH(metyl)SiO]、Pt(triphenylphosphine)Cl 、Rh(cyclooctadiene)Cl、[Rh(cyclooctadiene)](μ−Cl)、Rh(acethylacetonato)(CO)2、Rh(triphenylphosphine)3Cl、Rh(triphenylphosphine)Cl、[(Bicyclo[2.2.1]hepta−2,5−diene)RhCl]、Rh(acethylacetonato)(CO)(triphenylphosphine)、Rh(acethylacetonato)(cyclooctadiene)、Rh(CO)(triphenylphosphine)Cl、RhH(CO)(triphenylphosphine)3、[RhCl(pentametylcyclopentadienyl)](μ−Cl)、Rh(CO)16、Ru(triphenylphosphine)3Cl、 [RuCl(CO)]、[Benzylidene−bis(tricyclophosophine)]RuCl、Ru(CO)12、[(2−Methylallyl)PdCl]、NaHRu(CO)11
(Triphenylphosphine)RuH(CO)、Ru(cyclooctadiene)Cl]n、(Acenaphthylene)Ru(CO)、[RuCl(p−cymeme)](μ−Cl)、(Pentametylcyclopentadiene)Ru(cyclooctadiene)Cl、Cr(CO)、Zr(cyclopentadiene)Cl、Zr(cyclopentadiene)Cl、Zr(cyclopentadiene)HCl、(Pentametylcyclopentadiene)ZrCl、Mo(CO)、Mo(cyclopentadiene)Cl
Mo(cyclopentadiene)Cl4、[(Pentametylcyclopentadiene)Mo(CO)]、Nb(cyclopentadiene)Cl4、Nb(cyclopentadiene)Cl、Nb(triphenylphosphine)、Pd(triphenylphosphine)Cl、Pd(triphenylphosphine)4、(Pentametylcyclopentadiene)HfCl、Hf(cyclopentadiene)Cl、(Pentametylcyclopentadiene)HfCl3、Ir(CO)(triphenylphosphine)Cl、Ir4(CO)12、IrH(triphenylphosphine)Cl、[IrCl(pentametylcyclopentadiene)](μ−Cl)、[Ir(cyclooctadiene)](μ−Cl)、(Pentametylcyclopentadiene)TaCl、(Pentametylcyclopentadiene)Co、[(Pentametylcyclopentadiene)Co(CO)、La(cyclooctadiene)、Ni(triphenylphosphine)Cl、Ni(triphenylphosphine)(CO)、Ni(cyclopentadien)、Mn(CO)10、Mn(cyclopentadien)(CO)、Mn(cyclopentadien)、Mn(pentametylcyclopentadiene)、Ti(benzene)Cl、Fe(CO)、Fe(CO)、[Fe(cyclopentadien)(CO)、Os(CO)12、Re(CO)10、Re(CO)Cl、Re(CO)Br、Re(cyclopentadien)(CO)、W(CO)、W(cyclopentadien)(CO)3、Sc(cyclopentadien)、V(CO)、V(cyclopentadien)(CO)4、Y[N,N−bis(trimetylsilyl)amide]、Y(cyclopentadien)、これらの混合物などが挙げられる。
【0070】
前記遷移金属塩は、テトラフルオロホウ酸(BF)塩、ヘキサフルオロリン酸(PF)塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、テトラキス(ペルフルオルフェニル)ホウ酸塩、過塩素酸塩及びトリフルオルメチルスルホン酸(CFSO)塩である。以上に類する遷移金属塩であれば用いることができるが、より好ましくは、Rh(cyclooctadiene)2BF4、 Pentametylcyclopentadienyltris(acetonitrile)RuPF、(Pentametylcyclopentadiene)CoPF、La(CFSO、Sc(CFSO
、これらの混合物などが挙げられる。
【0071】
前記遷移金属酸化物は、上記遷移金属に酸素原子のみが一つ以上結合した化合物のことである。
【0072】
遷移金属化合物/ポリシラザン重量比は好ましくは0.0001〜1.0、より好ましくは0.001〜0.5、更により好ましくは0.01〜0.2である。
【0073】
溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン等の芳香族化合物;n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−ノナン、i−ノナン、n−デカン、i−デカン等の飽和炭化水素化合物;エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、p−メンタン、デカヒドロナフタレン、ジペンテン;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、MTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)、テトラヒドロキシフラン等のエーテル類;MIBK(メチルイソブチルケトン)等のケトン類、塩化メチレン、四塩化炭素等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし混合して用いてもよい。
【0074】
ポリシラザン含有液を基材へ塗布する方法としては、公知の塗布方法が適用でき、特に限定されるものではないが、例えば、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ディップコート法等が挙げられる。
【0075】
本実施形態の方法によれば、特許文献3に記載の方法のように、ポリシラザン膜を高温で焼成する必要がないため、基材自体が高温に曝されることがない。そのため、本実施形態のシリコン含有膜16を、精密性が要求される光学部材の表面に直接設けることができる。なお、シリコン含有膜16を基材12表面に形成し、その後、基材12から剥がして用いることもできる。
【0076】
基材12として樹脂フィルムを用いた場合、ポリシラザン含有液を塗工する前に、樹脂フィルムの表面を紫外線オゾン処理、コロナ処理、アーク処理、または、プラズマ処理等の表面処理を施すこともできる。例えば、樹脂フィルムとしてポリオレフィンまたは環状オレフィンポリマーからなるフィルムを用いた場合、これらの表面処理により、ポリシラザン膜との密着性が向上する。
【0077】
[工程(b)]
工程(b)においては、工程(a)で形成されたポリシラザンを含む塗膜を、低酸素・低水分濃度雰囲気下において乾燥し、ポリシラザン膜14を形成する。
【0078】
工程(b)の乾燥処理は、酸素濃度が20%(200,000ppm)以下、好ましくは2%(20,000ppm)、さらに好ましくは0.5%(5,000ppm)以下の範囲であり、相対湿度が70%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下の範囲である、低酸素・低水分濃度雰囲気下で行われることが好ましい。なお、酸素濃度の数値範囲と、相対湿度の数値範囲とは適宜組み合わせることができる。
【0079】
このような低水蒸気濃度雰囲気下において乾燥処理を行うことにより、ポリシラザン膜14が酸化珪素(シリカ)に変化するのを、より効果的に抑制することができ、シリコン含有膜16のガスバリア性および屈折率を効果的に制御することができる。
【0080】
工程(b)の乾燥処理は、窒素、アルゴンガス等の不活性ガスもしくはドライAir、が充満された、オーブン内において行うことができ、乾燥条件は、ポリシラザン膜14の膜厚によって異なるが、本実施形態においては50〜120℃で1〜10分間である。
【0081】
前記の低酸素・水蒸気濃度雰囲気下の乾燥処理を行った場合、溶媒中の溶存酸素および水分により、シリコン含有膜に珪素原子と窒素原子と酸素原子とからなる窒素高濃度領域の形成に必要な酸素原子が導入される。X線光電子分光の元素組成比分析よる、シリコン含有膜における全原子に対する酸素原子割合は60atom%以下、好ましくは、0〜40atom%、さらに好ましくは0〜30atom%である。なお、シリコン含有膜16および窒素高濃度領域18が酸素原子を含まない場合、溶媒中の溶存酸素および水分を取り除くことが必要である。
【0082】
[工程(c)]
工程(c)においては、ポリシラザン膜14に、酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下でエネルギー線照射を行い、ポリシラザン膜14の少なくとも一部を変性し、窒素高濃度領域18を含むシリコン含有膜16を形成する。エネルギー線照射としては、プラズマ処理または紫外線処理を挙げることができ、これらを組み合わせて処理することもできる。
エネルギー線照射としては、ポリシラザンの吸収波長域である230nm以下の光波長を持つことが好ましい。更に好ましくは30〜230nmの光波長のエネルギー線である。
【0083】
本明細書中において「酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気」とは、酸素および/または水蒸気が全く存在しないか、あるいは酸素濃度10%(100000ppm)以下、好ましくは、酸素濃度5%(50000ppm)以下、さらに好ましくは、酸素濃度1%(10000ppm)以下、さらに好ましくは、酸素濃度0.1%(1000ppm)以下、さらに好ましくは、0.01%(100ppm)以下であるか、相対湿度10%以下、好ましくは相対湿度5%以下、さらに好ましくは、相対湿度1%以下、さらに好ましくは、相対湿度0.1% 以下である雰囲気をいう。また、水蒸気濃度(室温23℃における水蒸気分圧/大気圧)では、2800ppm以下、さらに好ましくは1400ppm、さらに好ましくは280ppm、さらに好ましくは28ppm以下である雰囲気をいう。
【0084】
エネルギー照射は、真空〜大気圧の圧力範囲で行うことができる。
工程(c)において、基材12上に形成されたポリシラザン膜14にエネルギー線照射を行うため、基材12の特性に対する影響が少ない。基材12として光学部材を用いた場合であっても、その精密性に対する影響が少ないので、光学用途に適した高屈折率膜として使用可能なシリコン含有膜16を製造することができる。さらに、このような工程を含む製造方法は、簡便な方法であり、生産性にも優れる。
【0085】
(プラズマ処理)
プラズマ処理としては、大気圧プラズマ処理または真空プラズマ処理が挙げられる。
プラズマ処理は、前記のように減圧によって酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気にした後、下記のガス種を装置内に導入することで行われる。プラズマによって励起されたガス種はエネルギーを放出して失活するが、その際、ガス種の種類とそのガス圧に依存して、種々の波長の紫外線を放出する。本発明で用いる波長230nm以下の紫外線を発するプラズマのガス種は、主としてN2、He、Ne、Arから選ばれる1種以上のガスが用いられる。これらのガス原子の発する主要なVUVの波長は、N2の場合で120nm、Heの場合で58.4nm、Neの場合で73.6nm及び74.4nm、Arの場合で104.8nm及び106.7nmである事が知られている。
【0086】
プラズマ処理は、酸素または水蒸気を実質的に含まない真空下で実施することができる。本明細書中において「真空」とは、100Pa以下の圧力、好ましくは、10Pa以下の圧力をいう。装置内の真空状態は、装置内の圧力を、真空ポンプを用いて大気圧(101325Pa)から圧力100Pa以下、好ましくは10Pa以下まで減圧した後、以下に記載のガスを100Pa以下の圧力まで導入することにより得られる。
【0087】
真空下における酸素濃度および水蒸気濃度は、一般的に、酸素分圧および水蒸気分圧で
評価される。
真空プラズマ処理は、上記の真空下、酸素分圧10Pa以下(酸素濃度0.001%(10ppm))以下、好ましくは、酸素分圧2Pa以下(酸素濃度0.0002%(2ppm))以下、水蒸気濃度10ppm以下、好ましくは1ppm以下で行われる。
【0088】
または、プラズマ処理は、好ましくは、酸素および/または水蒸気の非存在下、常圧で行われる。または大気圧プラズマ処理は、酸素濃度10%(100000ppm)以下、好ましくは、酸素濃度5%(50000ppm)以下、さらに好ましくは、酸素濃度1%(10000ppm)以下、さらに好ましくは、酸素濃度0.1%(1000ppm)以下、さらに好ましくは、0.01%(100ppm)以下であるか、相対湿度10%以下、好ましくは相対湿度5%以下、さらに好ましくは、相対湿度1%以下、さらに好ましくは、相対湿度0.1% 以下である雰囲気をいう。また、水蒸気濃度(室温23℃における水蒸気分圧/大気圧)では、2800ppm以下、さらに好ましくは1400ppm、さらに好ましくは280ppm、さらに好ましくは28ppm以下の低酸素・低水蒸気濃度雰囲気下において行うことができる。
プラズマ処理はまた、好ましくは、不活性ガスまたは希ガスまたは還元ガス雰囲気下(常圧)において行われる。
【0089】
上記条件を満たさない雰囲気でプラズマ処理を行った場合、本実施形態の窒素高濃度領域18は形成されず、酸化珪素(シリカ)やシラノール基が生成するので、十分な水蒸気バリア性が得られない場合がある。
【0090】
また、上記条件を満たさない雰囲気でプラズマ処理を行った場合、1.45程度の低屈折率の酸化珪素(シリカ)が多量に生成するため、所望の屈折率を有するシリコン含有膜16が得られない場合がある。
【0091】
プラズマ処理に用いるガスとしては、シリコン含有膜16の窒素高濃度領域18を形成する観点から、不活性ガスである窒素ガス、希ガスであるアルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガス等、還元ガスである水素ガス、アンモニアガス等が挙げられる。さらに好ましいガスとしては、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス、水素ガス、またはこれらの混合ガスが挙げられる。
【0092】
大気圧プラズマ処理としては、二つの電極間にガスを通し、このガスをプラズマ化してから基材に照射する方式や、二つの電極間に照射するポリシラザン膜14付き基材12を配置し、そこへガスを通してプラズマ化する方式などが挙げられる。大気圧プラズマ処理におけるガス流量は、処理雰囲気中の酸素・水蒸気ガス濃度を下げるために、流量が多いほど好ましく、好ましくは0.01〜1000L/min、より好ましくは0.1〜500L/minである。
【0093】
大気圧プラズマ処理において、印加する電力(W)は、電極の単位面積(cm)あたり、好ましくは0.0001W/cm〜100W/cm、より好ましくは0.001W/cm〜50W/cmである。大気圧プラズマ処理における、ポリシラザン膜14付き基材12の移動速度は、好ましくは0.001〜1000m/minであり、より好ましくは0.001〜500m/minである。処理温度は、室温〜200℃である。
【0094】
真空プラズマには、真空の密閉系内に公知の電極または導波管を配置し、直流、交流、ラジオ波あるいはマイクロ波等の電力を、電極または導波管を介して印加することにより任意のプラズマを発生させることができる。プラズマ処理時に印加する電力(W)は、電極の単位面積(cm)あたり、好ましくは0.0001W/cm〜100W/cm、より好ましくは0.001W/cm〜50W/cmである。
真空プラズマ処理の真空度は、好ましくは1Pa〜1000Pa、より好ましくは1Pa〜500Paである。真空プラズマ処理の温度は、好ましくは室温〜500℃であり、基材への影響を考えると、より好ましくは室温〜200℃である。真空プラズマ処理の時間は、好ましくは1秒〜60分、より好ましくは60秒〜20分である。
【0095】
(紫外線処理)
紫外線処理は、大気圧下または真空下で行うことができる。200nm以下の光波長を発生させるランプとしては、アルゴン及びキセノン、Ar+F2混合ガス、F、Kr+Cl混合ガスによるエキシマー発光を利用したものである。アルゴンエキシマー発光は126nm、キセノンエキシマー発光は172nm、Ar+F混合ガスは193nm、Fは157nm、Kr+Cl混合ガスは222nm,の光が発生する。これらランプもしくはレーザーを用いて酸素および水蒸気を実質的に含まない雰囲気下、大気圧下または真空下で行うことができる。または、紫外線処理は、酸素濃度10%(100000ppm)以下、好ましくは、酸素濃度5%(50000ppm)以下、さらに好ましくは、酸素濃度1%(10000ppm)以下、さらに好ましくは、酸素濃度0.1%(1000ppm)以下、さらに好ましくは、0.01%(100ppm)以下であるか、相対湿度10%以下、好ましくは相対湿度5%以下、さらに好ましくは、相対湿度1%以下、さらに好ましくは、相対湿度0.1% 以下である雰囲気をいう。また、水蒸気濃度(室温23℃における水蒸気分圧/大気圧)では、2800ppm以下、さらに好ましくは1400ppm、さらに好ましくは280ppm、さらに好ましくは28ppm以下の低酸素・低水蒸気濃度雰囲気下において行うことができる。
【0096】
上記条件を満たさない雰囲気下で紫外線処理を行った場合、窒素高濃度領域18は形成されず、酸化珪素(シリカ)やシラノール基が生成するため、十分な水蒸気バリア性が得られない場合がある。
上記条件を満たさない雰囲気で紫外線処理を行った場合、1.45程度の低屈折率の酸化珪素(シリカ)が多量に生成するため、所望の屈折率を有するシリコン含有膜が得られない場合がある。
【0097】
本実施形態のシリコン含有膜16の屈折率は、紫外線照射における、露光量、酸素および水蒸気濃度、処理時間を変えることによって、1.55〜2.1の範囲で任意に制御することが可能である。
【0098】
以上の工程を行うことにより、本実施形態の積層体10を製造することができる。なお、本実施形態においては、シリコン含有膜16に対しさらに以下の処理を行ってもよい。
【0099】
プラズマ処理または紫外線処理により変性されたシリコン含有膜16に対し、さらに活性エネルギー線の照射または加熱処理を施すことで、シリコン含有膜16における窒素高濃度領域18を増加させることができる。
【0100】
活性エネルギー線としては、マイクロ波、赤外線、紫外線、電子線などが挙げられ、好ましくは赤外線、紫外線、電子線である。
【0101】
紫外線の発生方法としては、前記と同様、低圧水銀ランプ、エキシマランプ、UV光レーザー、等を使用する方法が挙げられる。
【0102】
赤外線の発生方法としては、例えば、赤外線ラジエタや赤外線セラミクスヒータを使用する方法が挙げられる。また、赤外線ラジエタを使用する場合には、赤外線の使用波長に応じて、波長1.3μmに強度ピークを有する近赤外線ラジエタ、波長2.5μmに強度ピークを有する中赤外線ラジエタ、波長4.5μmに強度ピークを有する遠赤外線ラジエタを使用することができる。
【0103】
活性エネルギー線の照射には、スペクトルが単一である赤外レーザーを使用することが好ましい。赤外レーザーの具体例として、HF、DF、HCl、DCl、HBr、DBrなどの気体化学レーザー、CO気体レーザー、NO気体レーザー、CO気体レーザー励起遠赤外レーザー(NH、CF、等)、Pb(Cd)S、PbS(Se)、Pb(Sn)Te、Pb(Sn)Se、等の化合物半導体レーザー(照射波長2.5〜20μm)、が挙げられる。
【0104】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
たとえば、シリコン含有膜16の上面16a近傍の一部に窒素高濃度領域18を有していてもよく、シリコン含有膜16の膜全体が窒素高濃度領域18となっていてもよい。
【0105】
また、図2の積層体10aのように、シリコン含有膜16の上面16a上に蒸着膜20を備えていてもよい。さらに別の態様として、図3に示す積層体10bのように、基材12とシリコン含有膜16との間に、蒸着膜20を備えていてもよい。
蒸着膜20は、物理的蒸着法(PVD法)および化学的蒸着法(CVD法)の内の少なくとも一つの蒸着法により得られる。
【0106】
本実施形態の窒素高濃度領域18を有するシリコン含有膜16の表面は熱安定性および平滑性に優れるので、蒸着膜20の作製時に問題となる基材表面の凹凸や熱伸縮の影響が小さく、緻密な蒸着膜20を形成することができる。
【0107】
また、樹脂フィルム(基材12)と窒素高濃度領域18を有するシリコン含有膜16との間に蒸着膜20を形成させた場合、シリコン含有膜16が蒸着膜20のピンホールなどの欠陥部位を補填することができるので、本実施形態のシリコン含有膜16もしくは蒸着膜20単体よりもさらに高いガスバリア性を発現することができる。
【0108】
本実施形態において用いられる蒸着膜20は、無機化合物からなる。具体的には、Si、Ta、Nb、Al、In、W、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、Ca、Na、B、Pb、Mg、P、Ba、Ge、Li、K、Zrから選ばれる1種以上の金属の酸化物または窒化物または酸化窒化物を主成分として含む。
【0109】
蒸着膜層の形成方法は、物理的蒸着法(PVD法)、低温プラズマ気相成長法(CVD法)、イオンプレーティング、スパッタリングなどの手段で実現される。蒸着膜20の好ましい膜厚としては、1〜1000nmの範囲内、特に10〜100nmの範囲内であることが好ましい。
【0110】
上述した本実施形態の方法によって形成されるシリコン含有膜16は、窒素高濃度領域18を有する。窒素高濃度領域18は高屈折率を有し、その屈折率が1.55以上、好ましくは1.55〜2.1、さらに好ましくは1.58〜2.1である。本実施形態のシリコン含有膜は、膜全体が窒素高濃度領域18により構成されているので、シリコン含有膜16の屈折率が上記範囲にある。
本実施形態のシリコン含有膜16は、高屈折率を有し、さらに比較的薄いコート膜厚でも十分な耐擦傷性が発現する。さらに、透明性、基材との密着性にも優れる。
【0111】
したがって、本実施形態のシリコン含有膜16は、例えばワープロ、コンピュータ、テレビなどの各種ディスプレイ、液晶表示装置に用いる偏光板、透明なプラスチック類からなるサングラスのレンズ、度付きメガネのレンズ、コンタクトレンズ、フォトクロレンズ、カメラ用ファインダーのレンズなどの光学レンズ、各種計器のカバー、自動車、電車などの窓ガラス等の光学部材の表面に形成されるハードコート材、反射防止用コート材としても好適に使用できる。
【0112】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の実施例1〜20および比較例1〜16では、ガスバリア性積層体として使用する場合の本発明の積層体について説明する。
【0114】
なお、実施例1、2、11、14、17、18および比較例9、11、13では、積層体中の厚さ0.005〜0.2μm以下の窒素高濃度領域のIRスペクトルを精度良く測定するために、IRスペクトル測定用の基材として、樹脂基材ではなく、シリコン基板を用いている。
【0115】
<実施例1>
ポリシラザン/キシレン溶液(NN110A−20、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)に、ロジウム化合物のトリス(ジブチルスルフィド)ロジウムクロライド[Tris(dibutylsulfide)RhCl,Gelest,Inc.製]をポリシラザンに対して0.1wt%になるように添加し、更に脱水キシレンを添加し、2wt%のキシレン(脱水)溶液を調製した。
【0116】
これをシリコン基板(厚さ530μm、信越化学工業株式会社製)にスピンコート(10s、3000rpm)し、窒素雰囲気下、80℃で10分間乾燥して、厚さ0.025μmのポリシラザン膜を作製した。
このポリシラザン膜に下記条件にて真空プラズマ処理を施した。
【0117】
真空プラズマ処理装置:ユーテック株式会社製
ガス:Ar
光波長: 104.8、106.7nm
ガス流量:50mL/min
圧力:19Pa
温度:室温
電極単位面積あたりの印加電力:1.3W/cm2
周波数:13.56MHz
処理時間:30秒
【0118】
<実施例2>
実施例1と同様にロジウム化合物を添加した2wt%のポリシラザン/キシレン(脱水)溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ50μm、「A4100」、東洋紡績株式会社製)にバーコートし、実施例1と同様の条件にて乾燥して厚さ0.3μmのポリシラザン膜を作製した。
続いて、実施例1と同様の条件にて真空プラズマ処理を施した。
【0119】
<実施例3>
実施例1と同様にロジウム化合物を添加した2wt%のポリシラザン/キシレン(脱水)溶液をシリコン基板(厚さ530μm、信越化学工業製)にスピンコート(10s、3000rpm)し、実施例1と同様の条件にて乾燥して厚さ0.025μmのポリシラザン膜を作製した。
さらに、上記の膜に、窒素雰囲気下で、エキシマランプ(「UEP20B」、「UER−172B」、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線(光波長:172nm)を2分間照射した。
【0120】
<実施例4>
実施例1と同様にロジウム化合物を添加した2wt%のポリシラザン/キシレン(脱水)溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ50μm、「A4100」、東洋紡績株式会社製)にバーコートし、実施例1と同様の条件にて乾燥して厚さ0.3μmのポリシラザン膜を作製した。続いて、実施例3と同様の条件にて紫外線(光波長:172nm)を2分間照射した。
【0121】
<比較例1>
遷移金属化合物を添加しなかった2wt%のポリシラザン/キシレン(脱水)溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ50μm、「A4100」、東洋紡績株式会社製)にバーコートし、実施例1と同様の条件にて乾燥して厚さ0.3μmのポリシラザン膜を作製した。
続いて、実施例1と同様の条件にて真空プラズマ処理を施した。
【0122】
<比較例2>
遷移金属化合物を添加しなかった2wt%のポリシラザン/キシレン(脱水)溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ50μm、「A4100」、東洋紡績株式会社製)にバーコートし、実施例1と同様の条件にて乾燥して厚さ0.3μmのポリシラザン膜を作製した。
続いて、実施例3と同様の条件にて紫外線(光波長:172nm)を2分間照射した。
【0123】
<膜構造解析・元素組成比の測定1>
X線光電子分光(XPS)装置(「ESCALAB220iXL」、VG社製)を用い、膜深さ方向の膜構成元素の組成比を測定した。(X線源 Al−Kα、アルゴンスパッタ SiO換算0.05nm/スパッタ秒)
【0124】
<水蒸気透過率測定>
40℃90%RH雰囲気下で、等圧法−赤外線センサー法を用いた水蒸気透過度測定装置(「PERMATRAN3 /31」、MOCON社製)を用いて測定した。本装置の検出下限値は、0.01g/m・dayである。
【0125】
<酸素透過率測定>
23℃90%RH雰囲気下で、等圧法−電解電極法を用いた酸素透過度測定装置(「OX−TRAN2/21」、MOCON社製)を用いて測定した。本装置の検出下限値は、0.01cc/m・day,atmである。
【0126】
<酸素濃度測定>
使用した装置の出口ガスの酸素濃度を、酸素センサー(JKO−O2LJDII、ジコー株式会社製)を用いて測定した。結果を、酸素濃度(%)として表2に示す。
【0127】
<水蒸気濃度測定>
使用した装置の出口ガスの水蒸気濃度(相対湿度)を、温湿度計(TESTO625、テストー株式会社製)を用いて測定した。結果を、水蒸気濃度(%RH)として表2に示す。
【0128】
前記の膜におけるXPSによる膜深さ約15nmにおける元素組成比より求めた、酸素原子と窒素原子との割合[N/(O+N)比]、珪素原子と酸素原子と窒素原子との割合[N/(Si+O+N)比]を表1に示す。表1のように実施例2、4では0.5以上となり、またN/(Si+O+N)比は0.1以上となった。
【0129】
実施例2、4のように遷移金属化合物の添加した場合、短時間のプラズマ及び紫外線照射によって、表2のように高い酸素・水蒸気バリア性が発現することが分かった。一方、比較例1、2の遷移金属化合物の未添加の場合、同時間の処理では十分なバリア性は得られないことが分かった。
【0130】
実施例1は屈折率(at 590nm)が1.72、実施例3は1.68となり高屈折率を示した。
【0131】
【表1】

【0132】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に形成されたシリコン含有膜と、を備える積層体であって、
前記シリコン含有膜は、珪素原子と窒素原子、または珪素原子と窒素原子と酸素原子とからなる窒素高濃度領域を有し、
前記窒素高濃度領域は、基材上に形成された遷移金属化合物を含有するポリシラザン膜に酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下でエネルギー線照射を行い、当該膜の少なくとも一部を変性することにより形成される、
積層体。
【請求項2】
前記窒素高濃度領域は、X線光電子分光法により測定した、下記式で表される全原子に対する窒素原子の組成比が、0.1以上、1以下の範囲である、請求項1に記載の積層体;
式:窒素原子の組成比/(酸素原子の組成比+窒素原子の組成比)。
【請求項3】
前記窒素高濃度領域は、X線光電子分光法により測定した、下記式で表される珪素原子、酸素原子と窒素原子の総和に対する窒素原子の組成比が、0.1以上、0.5以下の範囲である、請求項1に記載の積層体;
式:窒素原子の組成比/(珪素原子の組成比+酸素原子の組成比+窒素原子の組成比)。
【請求項4】
前記窒素高濃度領域は、前記シリコン含有膜の全面に亘って形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記窒素高濃度領域は、0.001μm以上0.2μm以下の厚みを有する、請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記シリコン含有膜における、X線光電子分光法により測定した全原子に対する窒素原子の組成比は、前記シリコン含有膜の上面側が他方の面側よりも高い、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記エネルギー線は波長230nm以下の光である、請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
前記エネルギー線照射は、プラズマ照射または紫外線照射により行われる、請求項1〜7のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
前記プラズマ照射または紫外線照射は、照射ガスとして不活性ガス、希ガスまたは還元ガスを用いる、請求項1〜8のいずれかにに記載の積層体。
【請求項10】
前記ガス種として窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、水素ガスまたはこれらの混合ガスが用いられる、請求項1〜9のいずれかにに記載の積層体。
【請求項11】
前記プラズマ照射または紫外線照射は、真空下で行われる、請求項1〜10のいずれかに記載の積層体。
【請求項12】
前記プラズマ照射または紫外線照射は、常圧下で行われる、請求項1〜11のいずれかに記載の積層体。
【請求項13】
前記ポリシラザン膜は、ペルヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザン、およびこれらの誘導体よりなる群から選択される1種以上である、請求項1〜12のいずれかに記載の積層体。
【請求項14】
前記遷移金属化合物は、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、鉄、オスミニウム、コバルト、パラジウム、ニッケル、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、スカンジウム、イットリア、ランタン、レニウムを含む化合物またはこれらの混合物である、請求項1〜13のいずれかに記載の積層体。
【請求項15】
前記遷移金属化合物は、遷移金属のハロゲン化物もしくは錯体もしくは遷移金属塩もしくは遷移金属酸化物である、請求項1〜14のいずれかに記載の積層体。
【請求項16】
前記ハロゲン化物のハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素である、請求項15に記載の積層体。
【請求項17】
前記錯体としては、オレフィン錯体、環状オレフィン錯体、ビニルシロキサン錯体、ホスフィン錯体、ホスファイト錯体、一酸化炭素錯体、アミン錯体、ニトリル錯体である、請求項15に記載の積層体。
【請求項18】
前記遷移金属塩はテトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、テトラキス(ペルフルオルフェニル)ホウ酸塩、過塩素酸塩及びトリフルオルメチルスルホン酸塩である、請求項15に記載の積層体。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の積層体を含んでなる光学部材。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれかに記載の積層体を含んでなるガスバリア性フィルム。
【請求項21】
基材上に遷移金属化合物を添加したポリシラザン含有液を塗布し塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を低水分濃度雰囲気下において乾燥し、ポリシラザン膜を形成する工程と、
前記ポリシラザン膜に酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下でエネルギー線照射を行い当該膜の少なくとも一部を変性し、珪素原子と窒素原子、または珪素原子と窒素原子と酸素原子とからなる窒素高濃度領域を含むシリコン含有膜を形成する工程と、を含む、
積層体の製造方法。
【請求項22】
前記窒素高濃度領域は、X線光電子分光法により測定した、下記式で表される全原子に対する窒素原子の組成比が、0.1以上、1以下の範囲である、請求項21に記載の方法;
式:窒素原子の組成比/(酸素原子の組成比+窒素原子の組成比)。
【請求項23】
前記窒素高濃度領域は、X線光電子分光法により測定した、下記式で表される珪素原子、酸素原子と窒素原子の総和に対する窒素原子の組成比が、0.1以上、0.5以下の範囲である、請求項21ないし22に記載の方法;
式:窒素原子の組成比/(珪素原子の組成比+酸素原子の組成比+窒素原子の組成比)。
【請求項24】
前記エネルギー線は230nm以下の光である、請求項21〜23のいずれかに記載の積層体。
【請求項25】
前記シリコン含有膜を形成する前記工程におけるエネルギー線照射は、プラズマ照射または紫外線照射である、請求項21〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記プラズマ照射または紫外線照射は、ガス種として不活性ガス、希ガスまたは還元ガスの存在下で行う、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ガス種として窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、水素ガスまたはこれらの混合ガスが用いられる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記プラズマ照射または紫外線照射は、真空下で行われる、請求項21〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記プラズマ照射または紫外線照射は、常圧下で行われる、請求項21〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記ポリシラザン膜は、ペルヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザン、およびこれらの誘導体よりなる群から選択される1種以上である、請求項21〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記遷移金属化合物は、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、鉄、オスミニウム、コバルト、パラジウム、ニッケル、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、スカンジウム、イットリア、ランタン、レニウムを含む化合物またはこれらの混合物である、請求項21〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記遷移金属化合物は、ハロゲン化物もしくは錯体もしくは遷移金属塩もしくは遷移金属酸化物である、請求項21〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記ハロゲン化物のハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記錯体としては、オレフィン錯体、環状オレフィン錯体 、ビニルシロキサン錯体、ホスフィン錯体、ホスファイト錯体、一酸化炭素錯体、アミン錯体、ニトリル錯体である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記遷移金属塩はテトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、テトラキス(ペルフルオルフェニル)ホウ酸塩、過塩素酸塩及びトリフルオルメチルスルホン酸塩である、請求項32に記載の方法。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−148416(P2012−148416A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6645(P2011−6645)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】