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積層体およびその製造方法
説明

積層体およびその製造方法

【課題】金属蒸着基材の金属蒸着層上に、耐アルカリボイル性、耐酢酸レトルト性に優れる保護層を設けた積層体を提供する。
【解決手段】基材(a)、金属蒸着層(b)および保護層(c)がこの順序で積層されてなる積層体であり、保護層(c)がダイマー酸系ポリアミド樹脂を含有し、ダイマー酸系ポリアミド樹脂におけるジカルボン酸成分としてのダイマー酸含有量がジカルボン酸成分全体の50モル%以上であり、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の酸価が1〜20mgKOH/gであることを特徴とする積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に形成された金属蒸着層に保護コート層が積層された積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂などで形成された基材上に、アルミニウム、金、銀、白金などの金属を蒸着してなる金属蒸着基材は、自動車、家電、食品、衣類などに使用される各種の構造物などに広く用いられている。特にアルミニウムを蒸着した金属蒸着基材は、安価であるため、様々な用途に使用されている。
基材上の金属蒸着層には、その用途によって様々な耐性が要求されることがあり、金属蒸着層を保護するために、アクリル系樹脂、変性エポキシ樹脂、変性エポキシ・アミノ樹脂などを金属蒸着層面に塗布することが知られている(特許文献1)。しかしながら、金属蒸着層面にこれらの樹脂を保護コート層として塗布しても、特にアルミニウムを蒸着した層の上には、耐アルカリボイル性、耐酢酸レトルト性などの耐性を充分に発揮する塗膜を形成できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−324541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は上記の問題点を解決し、金属蒸着基材の金属蒸着層上に、耐アルカリボイル性、耐酢酸レトルト性に優れる保護層を設けた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のダイマー酸系ポリアミド樹脂を含有する樹脂層を金属蒸着層に積層することにより、金属蒸着層上に耐アルカリボイル性、耐酢酸レトルト性に優れる塗膜が形成できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)基材(a)、金属蒸着層(b)および保護層(c)がこの順序で積層されてなる積層体であり、保護層(c)がダイマー酸系ポリアミド樹脂を含有し、ダイマー酸系ポリアミド樹脂におけるジカルボン酸成分としてのダイマー酸含有量がジカルボン酸成分全体の50モル%以上であり、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の酸価が1〜20mgKOH/gであることを特徴とする積層体。
(2)基材(a)を構成する樹脂が、ポリエチレンテレフタレートまたはポリプロピレンであることを特徴とする(1)記載の積層体。
(3)金属蒸着層(b)を構成する金属が、アルミニウムであることを特徴とする(1)または(2)記載の積層体。
(4)保護層(c)が、さらにエポキシ化合物を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の積層体。
(5)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の積層体を製造する方法であって、基材(a)上に形成された金属蒸着層(b)の金属蒸着層面に、ジカルボン酸成分としてのダイマー酸含有量がジカルボン酸成分全体の50モル%以上であり、酸価が1〜20mgKOH/gであるダイマー酸系ポリアミド樹脂、塩基性化合物および水性媒体を含有する保護コート剤を塗布し、水性媒体を除去して保護層(c)を形成することを特徴とする積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の積層体を構成する保護層は、金属蒸着層との密着性に優れ、積層体中の金属蒸着層を耐アルカリボイル性、耐酢酸レトルト性よく保護することができる。さらに保護層は透明性が高いため、金属蒸着層面の金属光沢による意匠性を損なうことがない。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の積層体は、基材(a)、金属蒸着層(b)および保護層(c)がこの順序で積層されてなる積層体である。
【0008】
積層体における基材(a)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ABS等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂や、金属、紙、糸等を用いて形成されたものを用いることができる。中でも成形性と耐熱性の点から、基材(a)は、ポリエチレンテレフタレートまたはポリプロピレンを構成樹脂とし、これを用いて形成されたものであることが好ましく、また、フィルム状のものであることが好ましい。
基材(a)の厚さは特に限定されるものではないが、通常0.5〜1000μmであり、好ましくは1〜500μm、より好ましくは1〜100μm、特に好ましくは1〜50μmである。基材(a)が上記したような熱可塑性樹脂からなるフィルム状のものの場合、ヒートシール性を十分高めるためには、厚さは0.1μm以上であることが好ましく、0.1〜10μmであることがより好ましく、0.2〜8μmであることがさらに好ましく、0.3〜7μmであることが特に好ましい。
【0009】
金属蒸着層(b)を構成する金属としては、特に限定されないが、金、銀、銅、鉄、真鍮、アルミニウム、アルミナ、クロム、ニッケル、錫、ステンレスを例示することができる。成形性、価格面の点からアルミニウムを使用することが好ましい。また、2種類以上の金属を重ねて基材に蒸着してもよい。例えば、アルミニウム蒸着層の上にさらに銀を蒸着することによって、アルミニウムの抜けをより効果的に抑制することができる。
金属蒸着層(b)の厚さは特に限定されるものではないが、通常0.02〜0.1μmであり、好ましくは0.02〜0.09μm、より好ましくは0.03〜0.08μm、特に好ましくは0.03〜0.07μmである。
基材(a)上に金属蒸着層(b)を形成する蒸着方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0010】
本発明の積層体を構成する保護層(c)は、ダイマー酸系ポリアミド樹脂を含有する。ダイマー酸系ポリアミド樹脂は、主鎖にアミド結合を有するものであり、主にジカルボン酸成分とジアミン成分を用いた脱水縮合反応によって得られるものであって、ジカルボン酸成分としてダイマー酸をジカルボン酸成分全体の50モル%以上含むものである。ダイマー酸系ポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂として広く使用されているナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12などの樹脂に比べて、大きな炭化水素グループを有するために柔軟性を有している。
ここでダイマー酸とは、オレイン酸やリノール酸などの炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られるものであり、ダイマー酸成分の25質量%以下であれば、単量体であるモノマー酸(炭素数18)、三量体であるトリマー酸(炭素数54)、炭素数20〜54の他の重合脂肪酸を含んでもよく、さらに水素添加して不飽和度を低下させたものでもよい。ダイマー酸としては、例えば市販されているハリダイマーシリーズ(ハリマ化成社製)、プリポールシリーズ(クローダジャパン社製)、ツノダイムシリーズ(築野食品工業社製)などを用いることができる。
【0011】
本発明においてダイマー酸系ポリアミド樹脂は、上記のように、ジカルボン酸成分としてのダイマー酸含有量が、ジカルボン酸成分全体の50モル%以上であることが必要であり、60モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましい。ダイマー酸の含有量が50モル%未満であると、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の特性や効果を奏することが困難となる。
一方、ダイマー酸系ポリアミド樹脂のジカルボン酸成分として、ダイマー酸以外の成分を用いる場合は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ノナンジカルボン酸、フマル酸などを用いることが好ましく、これらを50モル%未満含有することにより、樹脂の軟化点などの制御が容易となる。
【0012】
また、ダイマー酸系ポリアミド樹脂のジアミン成分としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、m−キシレンジアミン、フェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピペラジンなどを用いることができ、中でもエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、m−キシレンジアミン、ピペラジンが好ましい。
【0013】
本発明において、ダイマー酸系ポリアミド樹脂は、酸価が1〜20mgKOH/gであることが必要であり、1〜15mgKOH/gであることが好ましく、3〜12mgKOH/gであることがより好ましく、3〜7mgKOH/gであることが最も好ましい。ダイマー酸系ポリアミド樹脂の酸価が1mgKOH/g未満では、保護層を形成する際に使用する安定な分散体を得ることが困難になり、一方、20mgKOH/gを超えると、本来のダイマー酸系ポリアミド樹脂の良好な特性であるアルカリや酸からの保護性能が低下することがある。
一方、樹脂のアミン価については、後述する保護コート剤の分散安定性を向上させる観点から、酸価より低く設定するのがよい。
ここで酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数で定義されるものであり、一方、アミン価とは、樹脂1g中のアミン成分とモル当量となる水酸化カリウムのミリグラム数で表されるものである。いずれも、JIS K 2501に記載の方法で測定されるものである。
上記酸価をはじめ、ダイマー酸系ポリアミド樹脂のアミン価や重合度は、樹脂を重合する際のジカルボン酸成分とジアミン成分の仕込み比によって、制御することが可能である。
【0014】
ダイマー酸系ポリアミド樹脂を含有する保護層(c)の厚さは特に限定されるものではないが、通常0.2〜1.0μmであり、好ましくは0.3〜0.8μm、より好ましくは0.3〜0.5μmである。保護層(c)の厚さが1.0μmを超えると、保護層の透明性が低下する傾向にあり、一方、0.2μm未満であると、保護層中に入りこんだ酸・アルカリが金属蒸着層(b)に到達しやすくなる傾向にあり、いずれも好ましくない。
【0015】
本発明において、保護層(c)は、さらに架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、ダイマー酸系ポリアミド樹脂同士を架橋できるものであればよく、例えば、ヒドラジド化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。中でも、耐アルカリボイル性をさらに向上させることができることから、エポキシ化合物を含有することが好ましい。
【0016】
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAβ−ジメチルグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラヒドロキシフェニルメタンテトラグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、クロル化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、エポキシウレタン樹脂等のグリシジルエーテル型;p−オキシ安息香酸グリシジルエーテル・エステル等のグリシジルエーテル・エステル型;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、アクリル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル型;グリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルアミノフェノール等のグリシジルアミン型;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキシ樹脂;3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシシクロヘキサン)カルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロペンタジエンオキサイド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、リモネンジオキサイド等の脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0017】
市販のエポキシ化合物としては、本発明に適した水系のものとして、例えば、長瀬ケムテック社製のデナコールシリーズ(EM−150、EM−101など)、旭電化工業社製のアデカレジンシリーズ等が挙げられ、UVインキ密着性や耐スクラッチ性向上の点から多官能エポキシ樹脂エマルションである旭電化社製のアデカレジンEM−0517、EM−0526、EM−11−50B、EM−051Rなどが好ましい。
【0018】
本発明の積層体を製造する方法としては、基材(a)上に形成された金属蒸着層(b)の金属蒸着層面に、ダイマー酸系ポリアミド樹脂と、塩基性化合物と、水性媒体とを含有する保護コート剤を塗布し、水性媒体を除去して保護層(c)の塗膜を形成する方法が挙げられる。本発明において保護コート剤は、水性媒体中にダイマー酸系ポリアミド樹脂が溶解した水性溶液や、分散した水性分散体である。
【0019】
保護コート剤に含有されるダイマー酸系ポリアミド樹脂は、前述したジカルボン酸成分としてのダイマー酸含有量がジカルボン酸成分全体の50モル%以上であり、酸価が1〜20mgKOH/gのダイマー酸系ポリアミド樹脂である。
ダイマー酸の含有量が50モル%未満であると、得られる積層体において、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の特性や効果を奏することが困難となり、酸価が20mgKOH/gを超えると、得られる積層体において、本来のダイマー酸系ポリアミド樹脂の良好な特性であるアルカリや酸からの保護性能が低下することがある。
一方、酸価が1mgKOH/g未満では、塩基性化合物や水性媒体を含有する保護コート剤において、ダイマー酸系ポリアミドを安定に分散させることが困難となる。
【0020】
保護コート剤におけるダイマー酸系ポリアミド樹脂の含有量(固形分濃度)は、3〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。保護コート剤中のダイマー酸系ポリアミド樹脂の含有量が上記範囲より少ない場合は、乾燥工程によって塗膜を形成する際に時間を要する場合があり、また厚い塗膜を得ることが困難になる。一方、保護コート剤中のダイマー酸系ポリアミド樹脂の含有量が上記範囲より多い場合は、分散体の保存安定性が低下しやすくなる。
【0021】
本発明において、保護コート剤は塩基性化合物を含有することが必要である。塩基性化合物を含有することによって、酸価が1〜20mgKOH/gであるダイマー酸系ポリアミド樹脂のカルボキシル基が中和され、中和によって生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって微粒子間の凝集を防ぐことができ、水性媒体中にダイマー酸系ポリアミド樹脂を、安定に分散させることができる。
【0022】
保護コート剤に含有される上記塩基性化合物は、保護コート剤を塗布して得られる保護層(c)には含有されないことが好ましいことから、常圧時の沸点が185℃未満であることが好ましい。常圧時の沸点が185℃を超えると、保護コート剤を塗布して塗膜を形成する際に、乾燥によって塩基性化合物を揮発させることが困難になり、衛生面や塗膜特性に悪影響を及ぼす場合がある。
常圧時の沸点が185℃未満である塩基性化合物としては、アンモニア、有機アミン化合物などのアミン類などが挙げられる。有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。常圧時の沸点が185℃未満の塩基性化合物として、中でもトリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンが好ましい。
【0023】
保護コート剤における塩基性化合物の含有量は、ダイマー酸系ポリアミド樹脂中のカルボキシル基に対して0.5〜3.0倍当量であることが好ましく、0.8〜2.5倍当量がより好ましく、1.01〜2.0倍当量が特に好ましい。塩基性化合物の含有量が0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、3.0倍当量を超えると、塗膜形成時の乾燥時間を長くする必要があり、塗膜が着色する場合がある。
【0024】
保護コート剤は、上記ダイマー酸系ポリアミド樹脂と塩基性化合物に加え、水性媒体を含有する。本発明において、水性媒体とは、水、または水と有機溶媒との混合液をいう。本発明においては、環境への影響、作業者や作業環境への安全性を考慮して、水性媒体を用いるものである。
【0025】
ダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性化を促進し、分散粒子径を小さくするために、水性媒体としては、水と有機溶媒との混合液を用いることが好ましい。使用する有機溶媒の量は、水性媒体中の40質量%以下が好ましく、1〜40質量%であることがより好ましく、2〜35質量%がさらに好ましく、3〜30質量%が特に好ましい。有機溶媒の量が40質量%を超える場合には、実質的に水性媒体とはみなせなくなり、使用する有機溶媒によっては水性分散体の安定性が低下してしまう場合がある。なお、水性化の際に添加した有機溶媒は、ストリッピングと呼ばれる脱溶剤操作で系外へ留去させて適度に減量してもよく、有機溶媒量を低くしても、特に性能面での影響はない。
【0026】
水性媒体に使用する有機溶媒の沸点は30〜250℃が好ましく、50〜200℃が特に好ましい。有機溶媒の沸点が30℃未満の場合は、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化の効率が十分に高まらない場合がある。沸点が250℃を超えると、塗布した後に塗膜から乾燥によって有機溶媒を飛散させることが困難であり、耐アルカリボイル性、耐酢酸レトルト性が低下する場合がある。
【0027】
上記の有機溶媒の中でも、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性化促進に効果が高く、しかも水性媒体中から有機溶媒を除去し易いという点から、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、低温乾燥性の点からエタノール、n−プロパノール、イソプロパノールが特に好ましい。有機溶媒は2種以上を混合して使用してもよい。
【0028】
このように、保護コート剤は、水性媒体中にダイマー酸系ポリアミド樹脂が安定して分散されており、ダイマー酸系ポリアミド樹脂粒子の数平均粒子径は、0.5μm以下であり、好ましくは0.4μm以下であり、より好ましくは0.2μm以下、最も好ましくは0.1μm以下である。保護コート剤においてダイマー酸系ポリアミド樹脂粒子の数平均粒子径が0.5μmを超えると、分散安定性や希釈安定性が低下し、さらに塗膜にした際に緻密な膜になり難い。ここで、ダイマー酸系ポリアミド樹脂粒子の数平均粒子径は、動的光散乱法によって測定されるものであり、日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340)を用いて測定する。
【0029】
本発明において保護コート剤は、常圧時の沸点が185℃以上もしくは不揮発性の水性化助剤を含有しない。ここで、常圧時の沸点が185℃以上もしくは不揮発性の水性化助剤とは、乳化剤成分あるいは保護コロイド作用を有する化合物などを指す。つまり、本発明のポリアミド樹脂水性分散体は、これら乳化剤成分あるいは保護コロイド作用を有する化合物を含有することなく、安定な水性分散体となり得ることを意味する。
【0030】
乳化剤成分としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0031】
保護コロイド作用を有する化合物としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常は5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物が挙げられる。
【0032】
なお、本発明において保護コート剤は、常圧時の沸点が185℃以上もしくは不揮発性の水性化助剤を含有しないものであるが、これは、常圧時の沸点が185℃以上もしくは不揮発性の水性化助剤を含有しなくとも安定なダイマー酸系ポリアミド樹脂水性分散体が得られるということである。したがって、ポリアミド樹脂水性分散体を構成成分の一部とする塗剤を得る際に、目的に応じて、上述したような水性化助剤を添加することを妨げるものではない。
【0033】
本発明において、保護コート剤は、必要に応じて、架橋剤、ブロッキング防止剤、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤等の各種薬剤を含有していてもよい。前述のように、架橋剤としては、ダイマー酸系ポリアミド樹脂同士を架橋できるものであればよく、例えば、ヒドラジド化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。中でも、耐アルカリボイル性をさらに向上させることができることから、エポキシ化合物を含有することが好ましい。エポキシ化合物の具体例としては、前記したものが挙げられる。
【0034】
さらに、保護コート剤は、必要に応じて、他の重合体を含有していてもよい。例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、スチレン−マレイン酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、フェノール樹脂が挙げられ、2種以上使用してもよい。添加時期は特に限定されず、たとえば、上記重合体の液状物を適宜添加すればよい。
【0035】
次に、保護コート剤の製造方法を説明する。
保護コート剤の製造方法としては、ダイマー酸系ポリアミド樹脂を水性媒体中に均一に分散または溶解することができる方法であれば、特に限定されるものではない。たとえば、ダイマー酸系ポリアミド樹脂を水性分散体とする方法としては、樹脂成分、水性媒体、塩基性化合物とともに加熱、攪拌する方法が挙げられる。
また、工程後や工程中に、水や有機溶媒を留去したり、水や有機溶媒により希釈することによって任意に濃度調整を行うことができる。
【0036】
本発明の積層体の製造方法としては、上記したように保護コート剤を金属蒸着層(b)の金属蒸着層面に塗布し、その後保護コート剤中の水性媒体を除去して、保護層(c)を形成する方法を採用することが好ましい。
保護コート剤を金属蒸着層(b)の金属蒸着層面に塗布する方法は特に限定されず、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が採用できる。
保護コート剤の塗布量は、目的とする保護層(c)の厚さに応じて適宜調整される。
保護コート剤中の水性媒体を除去するための方法としては、塗布した金属蒸着層面の塗膜を乾燥させる方法が好ましく、温度100〜180℃、時間10秒〜10分の条件で乾燥させることが好ましい。
【0037】
本発明の積層体は、バリアフィルムやめっき調鏡面シート、金銀糸、反射板、反射ワッペンなどとして使用することができる。めっき調鏡面シートは、その金属調の意匠性により、様々な用途に好適に使用できる。たとえば、エンブレム、フロントグリル、ドアノブ、スイッチ、ボタン類のような自動車用内外装部品、看板、展示材、パーティションのような建材、コンピュータ、楽器、家電、ゲーム機などの本体やカバーなどが挙げられる。反射板、反射ワッペンは、道路標識や高輝度反射ベストなどの衣服などに用いられる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。なお、各種の特性値、評価方法については以下のように測定または評価を行った。
【0039】
1.保護コート剤の特性
(1)ポリアミド樹脂の特性値
〔酸価、アミン価〕
JIS K 2501に記載の方法により測定した。
〔軟化点温度〕
樹脂10mgをサンプルとし、顕微鏡用加熱(冷却)装置ヒートステージ(リンカム社製、Heating−Freezing ATAGE TH−600型)を備えた顕微鏡を用いて、昇温速度20℃/分の条件で測定を行い、樹脂が溶融した温度を軟化点とした。
〔溶融粘度〕
ブルックフィールド溶融粘度計DV−II+PRO型にて、樹脂温度200℃、ずり速度1.25/秒で測定した。溶融開始後、約25分間回転させ、粘度がほぼ経過時間で安定した時点での溶融粘度の値を読み取った。
(2)水性分散体の固形分濃度
得られた水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
【0040】
2.積層体の特性
(1)テープ剥離性
得られた積層体フィルムを室温で1日放置後、塗膜面にセロハンテープ(ニチバン社製TF−12)を貼り付け、テープを一気に剥がした場合の剥がれの程度を目視にて、下記の3段階で評価した。
○:全く剥がれなし。
△:一部、剥がれた。
×:全て剥がれた。
(2)塗膜の透明性
得られた積層体フィルムの塗膜の状態を目視にて下記の3段階で評価した。
○:塗膜は透明であり、塗膜を通して蒸着面が鏡面状に見える。
△:部分的に塗膜が白濁している。
×:塗膜は白濁しており、塗膜を通して蒸着面が曇って見える。
(3)耐アルカリボイル性
得られた積層体フィルムを98℃の5%水酸化ナトリウム水溶液中に3時間または6時間浸漬し、金属蒸着層上の塗膜の状態を目視にて下記の3段階で評価した。
○:変化なし。
△:塗膜の一部に剥がれが見られるか又は白色になっている。
×:塗膜のすべてが剥がれるか又は白色になっている。
(4)耐酢酸レトルト性
得られた積層フィルムと1%酢酸水溶液とを密閉金属容器に入れて130℃のオイルバスに1時間浸漬し、金属蒸着層上の塗膜の状態を目視にて下記の3段階で評価した。
○:変化なし。
△:塗膜の一部に剥がれが見られるか又は白色になっている。
×:塗膜のすべてが剥がれるか又は白色になっている。
【0041】
ダイマー酸系ポリアミド樹脂として、以下のP−1、P−2を用いた。
なお、P−1、P−2製造時には、ダイマー酸原料として、築野食品工業社製「ツノダイム395(商品名)」(ダイマー酸を94質量%、モノマー酸を3質量%、トリマー酸を3質量%含有)を用いた。
【0042】
〔ダイマー酸系ポリアミド樹脂P−1〕
ジカルボン酸成分として、ダイマー酸を100モル%含有し、ジアミン成分としてエチレンジアミンを100モル%含有し、酸価が15.0mgKOH/g、アミン価が0.3mgKOH/g、軟化点が110℃、200℃における溶融粘度が1,100mPa・sであるポリアミド樹脂。
〔ダイマー酸系ポリアミド樹脂P−2〕
ジカルボン酸成分として、ダイマー酸を90モル%、アゼライン酸を10モル%含有し、ジアミン成分としてピペラジンを70モル%、エチレンジアミンを30モル%含有し、酸価が5.0mgKOH/g、アミン価が0.1mgKOH/g、軟化点が140℃、200℃における溶融粘度が23,000mPa・sであるポリアミド樹脂。
【0043】
実施例1
撹拌機およびヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に、75.0gのダイマー酸系ポリアミド樹脂P−1、37.5gのイソプロパノール(IPA)、37.5gのテトラヒドロフラン(THF)、7.2g のN,N−ジメチルエタノールアミン(DMEA)および217.8gの蒸留水を仕込んだ。回転速度を300rpmで撹拌しながら、系内を加熱し、120℃で60分間加熱攪拌を行った。その後、撹拌しながら室温付近(約30℃)まで冷却し、100gの蒸留水を追加した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)でごくわずかに加圧しながらろ過した。得られた水性分散体を1Lナスフラスコに入れ、80℃に加熱した湯浴につけながらエバポレーターを用いて減圧し、IPA、THF、水の混合媒体約100gを留去し、乳白色の均一水性分散体からなる保護コート剤A−1を得た。
金属蒸着基材として、基材(a)にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、金属蒸着層(b)にアルミニウムを用いたアルミニウム蒸着PETフィルム(尾池工業社製、エコモールド、厚み12μm)を用いた。
そして、アルミニウム蒸着PETフィルムのアルミニウム蒸着面に、得られた保護コート剤A−1を乾燥後の塗膜の厚みが0.4μmになるようにマイヤーバーを用いて塗布した後、100℃で2分間乾燥させて水性媒体を除去し、塗膜(保護層(c))の厚みが0.4μmである積層体フィルムを得た。得られた積層体フィルムについて各性能を評価した。
【0044】
実施例2
撹拌機およびヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に、75.0gのダイマー酸系ポリアミド樹脂P−2、75.0gのIPA、75.0gのTHF、6.0gのDMEA、7.5gのトルエンおよび136.5gの蒸留水を仕込んだ。回転速度を300rpmで撹拌しながら、系内を加熱し、130℃で60分間加熱攪拌を行った。その後、撹拌しながら室温付近(約30℃)まで冷却し、230gの蒸留水を追加した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)でごくわずかに加圧しながらろ過した。得られた水性分散体を1Lナスフラスコに入れ、80℃に加熱した湯浴につけながらエバポレーターを用いて減圧し、IPA、THF、トルエン、水の混合媒体約230gを留去し、乳白色の均一な水性分散体からなる保護コート剤A−2を得た。
保護コート剤A−1の代わりにA−2を用いた以外は、実施例1と同様にして積層体フィルムを得た。得られた積層体フィルムについて各性能を評価した。
【0045】
実施例3
実施例1で得られた保護コート剤A−1に、エポキシ化合物水性分散体(アデカ社製 アデカレジンEM−0517、固形分濃度:50質量%)を、ダイマー酸系ポリアミド樹脂100質量部に対して、エポキシ化合物が10質量部になるように加えて保護コート剤A−3を得た。
保護コート剤A−1の代わりにA−3を用いた以外は、実施例1と同様にして積層体フィルムを得た。得られた積層体フィルムについて各性能を評価した。
【0046】
比較例1
保護コート剤A−1の代わりにアクリルエマルション(DSM社製 ネオクリルXK−12、固形分濃度45%)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層体フィルムを得た。得られた積層体フィルムについて各性能を評価した。
【0047】
比較例2
保護コート剤A−1の代わりにウレタンエマルション(DSM社製 ネオレッズR−9603、固形分濃度34%)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層体フィルムを得た。得られた積層体フィルムについて各性能を評価した。
【0048】
実施例1〜3、比較例1、2で得られた積層体フィルムの評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から明らかなように、実施例1〜3で得られた積層体フィルムは、テープ剥離性、塗膜の透明性、耐アルカリボイル性、耐酢酸レトルト性に優れるものであった。また、保護層にエポキシ樹脂を含有させることによって、耐アルカリボイル性がさらに向上した。
一方、比較例1、2は、保護層に本発明で規定する樹脂以外の樹脂を使用したため、テープ剥離性、塗膜の透明性は良好であったものの、耐アルカリボイル性、耐酢酸レトルト性が不十分であった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(a)、金属蒸着層(b)および保護層(c)がこの順序で積層されてなる積層体であり、保護層(c)がダイマー酸系ポリアミド樹脂を含有し、ダイマー酸系ポリアミド樹脂におけるジカルボン酸成分としてのダイマー酸含有量がジカルボン酸成分全体の50モル%以上であり、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の酸価が1〜20mgKOH/gであることを特徴とする積層体。
【請求項2】
基材(a)を構成する樹脂が、ポリエチレンテレフタレートまたはポリプロピレンであることを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項3】
金属蒸着層(b)を構成する金属が、アルミニウムであることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項4】
保護層(c)が、さらにエポキシ化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の積層体を製造する方法であって、基材(a)上に形成された金属蒸着層(b)の金属蒸着層面に、ジカルボン酸成分としてのダイマー酸含有量がジカルボン酸成分全体の50モル%以上であり、酸価が1〜20mgKOH/gであるダイマー酸系ポリアミド樹脂、塩基性化合物および水性媒体を含有する保護コート剤を塗布し、水性媒体を除去して保護層(c)を形成することを特徴とする積層体の製造方法。



【公開番号】特開2012−210744(P2012−210744A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76953(P2011−76953)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】