説明

積層体の製造方法

【課題】1層の液膜から2層以上の層を形成する製造方法において、「白化」「クラック」などの品位上の問題が発生することなく、面内均一な層構造を安定して連続塗布可能な積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】支持基材の片面に、第2層及び第1層をこの順に有する積層体の製造方法であって、第1層は粒子Aを含有し、第2層は粒子Bを含有し、支持基材の少なくとも片面に、粒子Aと粒子Bを含む塗料組成物を1回塗布して、1層の液膜を形成する工程(以降この工程を塗布工程とする)、及び該液膜を乾燥する工程(以降この工程を乾燥工程1とする)をこの順に有し、
乾燥工程1において、液膜表面での無指向性熱線式風速計による風速が1m/s以上、10m/s以下に保ちながら、支持基材側から加熱することを特徴とする、積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射防止フィルムの反射防止層や透明導電性フィルムの屈折率調整層などの積層膜を有する積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置にでは、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するため、光学干渉の原理を用いた反射防止フィルムが使用されている。(特許文献1)
また近年、携帯電話、携帯音楽端末などの各種モバイル機器に搭載される静電容量式のタッチパネルは、パターニングされた導体上に誘電体層を積層した構成を有し、指などでタッチすることにより人体の静電容量を介して接地されるものである。この透明導電層を有する部分と除去された部分での光学特性の差が大きいため、パターニングが強調され、液晶ディスプレイ等の表示体の前面に配置した際に視認性が低下するという問題があり、反射防止膜等で用いられている屈折率調整層を設け、光学干渉を利用した解決方法が提案されている。(特許文献2)
このような反射防止フィルムの反射防止層や透明導電性フィルムの屈折率調整層では屈折率の異なる層からなる積層膜を形成する必要があり、その方法として物理蒸着やスパッタリングのようなドライプロセスを用いる方法や、ウェットコーティングによる方法が用いられているが、どちらの方法も積層膜を形成する各層を複数回の工程により形成する必要があり、工程が煩雑になる。
【0003】
これに対し特許文献3、4には、1回の塗布によって屈折率が異なる2つの層、または塗布層中に粒子の偏在部を形成する反射防止フィルムおよびその製造方法が提案されている。
【0004】
特許文献3には「透明プラスチックフィルム基材上に、低屈折率微粒子と高屈折率微粒子とバインダーとを含有する硬化層が形成されてなり、該硬化層の表面側に低屈折率微粒子が偏在し、基材側に高屈折率微粒子が偏在していることを特徴とする光学フィルム」が記載されている。
【0005】
特許文献4には「バインダー樹脂中に低屈折率微粒子と中乃至高屈折率微粒子が分散されているコーティング組成物を用いてワンコートにて形成された塗膜を含む反射防止積層体であって、該低屈折率微粒子としてフッ素系化合物により処理されているシリカ微粒子が用いられることにより、比重の差により塗膜の上部乃至中間部において低屈折率微粒子が偏在し、且つ中間部乃至下部において中乃至高屈折率微粒子が偏在していることを特徴とする反射防止積層体」が記載されている。
【0006】
このような塗布製品の製造において、コーティング中や直後に液膜表面が乳白色や曇りを生じて乾燥塗膜が白くなり光沢が無くなることがあり、このような現象を塗膜の「白化」、または「ブラッシング」と呼ぶ。
【0007】
塗膜の白化の原因として、非特許文献1には「塗液膜から溶媒が蒸発して、塗液がその潜熱を奪われて冷却し、雰囲気の露点に達することにより、空気中の水が塗液膜中に凝縮して、樹脂や顔料の析出、沈殿を生じさせるか、ミクロボイドを形成する現象である」との記載があり、その対策として、特許文献5には「被塗物に揮発性有機溶剤が配合された塗料を塗装する方法であって、塗装時の塗料の温度における飽和水蒸気圧Pと、塗料を塗装して塗膜が形成される際の揮発性有機溶剤の蒸発による塗装20秒後における温度低下幅だけ塗装時の塗料の温度よりも低い温度における飽和水蒸気圧Pとを求め、前記PとPとの割合((P/P)×100)で表わされる相対湿度よりも低い湿度で塗装を行なうことを特徴とする塗料の塗装方法。」が提案されている。
【0008】
また、このような積層体を光学用途に使用する場合には、積層膜の特性(反射率、屈折率)を左右する層構造の面内での均一性や塗布面状の欠陥(塗布欠陥)に対する許容範囲は狭い。
塗布欠陥の防止方法として、特許文献6には「透明支持体上に、少なくとも1層のハードコート層と、最外に位置する低屈折率層それぞれの塗布液を塗布し、乾燥することで形成する反射防止フィルムの製造方法において、いずれのハードコート層および低屈折率層も、塗布液を塗布した後、10℃以上40℃以下に保たれた第一の乾燥部にて、塗布膜のセットを終了させることを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。」が提案されており、また、一般的なコーティングにおける欠陥の対策として非特許文献2に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−254324号公報
【特許文献2】特開2010−15861号公報
【特許文献3】特開2007−133236号公報
【特許文献4】特開2007−272132号公報
【特許文献5】特開平7−155683号公報
【特許文献6】特開2003−315505号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】加工技術研究会編「コーティング」株式会社加工技術研究会、2002年3月29日、P845
【非特許文献2】桐生春雄監修「コーティングにおける欠陥の発生原因と対策」株式会社科学技術総合研究所 1988年12月20日,P216
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が対象としている積層体の製造方法では、低コストでの製造を可能にするため簡略化された製造方法であると共に、良好な品位の製品を安定して製造可能なことが求められている。本発明者らが前述の1回の塗布により形成された1層の液膜から2層以上の層を形成する製造方法として、特許文献3〜4の方法を参考に一般的な連続塗布装置を用いて、反射防止フィルムとして積層体の連続塗布を試みたところ「白化」「クラック」がたびたび発生し、また光学特性をことがわかった。
【0012】
従って本発明が解決しようとする課題は、1層の液膜から2層以上の層を形成する製造方法において、「白化」「クラック」などの品位上の問題が発生することなく、面内均一な層構造を安定して連続塗布可能な積層体の製造方法を提供することにある。この対策として特許文献5、6、及び非特許文献1、2に記載の方法を用いて解決を試みたが、いずれの方法でも塗膜の白化を解決することができず、またいずれにおいても、後述する本発明の手法については着想に至っていない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
1)支持基材の片面に、第2層及び第1層をこの順に有する積層体の製造方法であって、
第1層は粒子Aを含有し、第2層は粒子Bを含有し、
粒子Aは、フッ素化合物Aにより表面処理された粒子であり、
支持基材の少なくとも片面に、粒子Aと粒子Bを含む塗料組成物を1回塗布して、1層の液膜を形成する工程(以降この工程を塗布工程とする)、及び該液膜を乾燥する工程(以降この工程を乾燥工程1とする)をこの順に有し、
乾燥工程1において、液膜表面での無指向性熱線式風速計による風速が1m/s以上、10m/s以下に保ちながら、支持基材側から加熱することを特徴とする、積層体の製造方法。
2)下記条件1〜3を全て満たすことを特徴とする、1)の積層体の製造方法。
【0014】
条件1:塗布工程後の液膜の固形分濃度が70%に達する前に、液膜温度を40℃以上70℃以下まで上げた後、液膜温度を40℃以上70℃以下に保つ。
【0015】
条件2:塗布工程後の液膜の固形分濃度が70%に達するまで、相対湿度を50%以下にする。
【0016】
条件3:塗布工程後の液膜の固形分濃度が70%に達するまで、乾燥速度を0.5g/(ms)以下にする。
3)前記乾燥工程1において、支持基材側からの加熱が、伝導伝熱方式または輻射伝熱方式によることを特徴とする、1)または2)のいずれかの積層体の製造方法。
4)前記乾燥工程1に続いて、乾燥速度0.07g/(ms)以下で、液膜を乾燥する工程を有することを特徴とする1)から3)のいずれかに記載の積層体の製造方法。
5)前記塗布工程において、塗布時の液膜厚みを2.5μm以上20μm以下とすることを特徴とする、1)から4)のいずれかの積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、「クラック」などの欠陥が少なく品位の優れた積層体が、簡略化された製造方法で「白化」など発生させることなく連続的に安定して製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1〜10、13〜26、比較例1〜3で用いる実験装置の概略図
【図2】実施例11で用いる実験装置の概略図
【図3】実施例12で用いる実験装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について具体的に述べる。本発明者らは、支持基材の少なくとも片面に、粒子Aと粒子Bを含む塗料組成物を1回塗布して、1層の液膜を形成する工程(以降この工程を塗布工程とする)、次いで該液膜を乾燥する工程(以降この工程を乾燥工程1とする)を行い、乾燥工程1において、液膜表面での無指向性熱線式風速計による風速が1m/s以上10m/s以下に保ちながら、支持基材側から加熱することが重要であることを見出した。
【0020】
ここで、「支持基材の少なくとも片面に、粒子Aと粒子Bを含む塗料組成物を1回塗布して、1層の液膜を形成する工程」とは、支持基材に対して1回の塗布工程にて1種類の塗料組成物からなる1層の液膜を形成することを指し、以下などを行わないことを指す。「1回の塗布工程にて複数層からなる液膜を同時に1回塗布する多層同時塗布」、「1回の塗布時に1層の液膜を複数回の塗布、乾燥工程を有する「連続逐次塗布」」、「1回の塗布時に1層の液膜を複数回塗布し、次いで乾燥する「ウェットオンウェット塗布」」。
【0021】
前記「液膜」とは、塗布工程にて支持基材上に塗布された塗料組成物の膜で、未乾燥状態のものを指す。一方「塗膜」は、塗布工程、及び、乾燥工程(乾燥工程1、必要に応じ乾燥工程2、硬化工程)を経て、支持基材上に形成された膜を指す。
【0022】
前記「熱線式風速計」とは一般的に用いられる風速計の1種で、通電状態にあるセンサーが風で冷却された時に生じる電気抵抗の変化を測定することにより、風速を計る方式であり、さらに「無指向性」熱線式風速計とは、前記原理に基づく風速計の風速測定部(プローブ)の水平方向の指向性との垂直方向の指向性がなく、全方位から流れ込む風の流れを計測するものを指す。さらに「液膜表面での風速」とは、乾燥工程1を行う乾燥装置内で前記風速測定部(プローブ)を液膜位置と同位置に設置して測定した風速を意味する。風速の測定方法の具体的な方法については後述する。
【0023】
ここで、無指向性熱線式風速計による風速はさらに2m/s以上、8m/s以下に保つことがより好ましく、4m/s以上、8m/s以下が特に好ましい。
【0024】
風速が1m/sより低いと、面内均一に乾燥が進行せず、熱対流に起因した乾燥のムラが発生し、塗膜にムラを生じる。10m/sより高いとクラック等の品位低下を起こす。
【0025】
また、前記「支持基材側から加熱する」とは、乾燥工程1にて積層体の塗膜がある側とは反対面、すなわち支持基材側から加熱することを指す。支持基材側から加熱を行わないと、自発的な層構造の形成が不十分になり、積層膜の透明性の低下、や反射防止フィルムなどで干渉効果が不十分になり、反射率が上昇する。粒子A、粒子Bの詳細については後述する。
【0026】
乾燥工程1において、支持基材側から加熱する際の方式は特に限定されず、熱風による「対流伝熱方式」、高温体との接触による「伝導伝熱方式」、そして高温体からの熱輻射による「輻射伝熱方式」のいずれでも良いが、伝導伝熱方式、輻射伝熱方式が好ましく、輻射伝熱方式が特に好ましい。
【0027】
ここで、対流伝熱による乾燥とは、加熱空気を熱風として用い、これを材料に直接接触させて行う乾燥方法で、材料と熱風の相対速度、および材料と熱風の温度差に起因する伝熱量によって制御するものである。
【0028】
伝導伝熱による乾燥とは、装置内に加熱面もしくは加熱部を設け、そこに接触する材料を熱伝導によって加熱する方法である。塗布装置においては、加熱ロール等に接触させることによる乾燥を示唆する。
【0029】
また輻射伝熱による乾燥とは、高温物体が放出する赤外線の放射エネルギーを熱源として利用する方法であり、材料に吸収された赤外線が材料内で熱に変わり材料を加熱するものである。赤外線源としては、赤外線ヒーターや赤外線ランプなどが用いられる。
【0030】
支持基材側から加熱する際の方式として伝導伝熱と輻射伝熱が好ましい理由は、対象物の温度(液膜温度)を乾燥速度に対してある程度独立して制御することが可能なためである。これは前述のように、本発明の積層体の製造方法においては、乾燥過程にて自発的に層構造を形成させる必要があるため、液膜温度をある一定値以上に高める必要があり、一方で自発的に層構造の形成にはある程度の時間を必要とするため、液膜温度と乾燥速度がある程度独立に制御できる方が、連続的に安定して製造するためには好ましいためである。そのため、伝導伝熱方式、輻射伝熱方式以外の方式で加熱を行うと、膜面温度が高いほうが好ましい自発的な層構造の形成と乾燥速度が低いほど好ましい面状欠陥の発生がトレードオフの関係になるため悪化する。
【0031】
また、本発明の積層体の製造方法では、次の3つの条件が全て満たされることが好ましい。
条件1:塗布工程後の液膜の固形分濃度が70%に達する前に、液膜温度を40℃以上70℃以下まで上げた後、液膜温度を40℃以上70℃以下に保つ。
条件2:塗布工程後の液膜の固形分濃度が70%に達するまで、相対湿度を50%以下にする。
条件3:塗布工程後の液膜の固形分濃度が70%に達するまで、乾燥速度を0.5g/(ms)以下にする。
ここで「塗布工程後」とは、支持基材上への液膜の形成以降を指し、一般的な連続塗布装置を用いる場合には、後述するダイコーター、グラビアコーター等の各種コーティング装置によって、液膜が形成された直後を起点とする。
【0032】
「液膜の固形分濃度」とは、乾燥過程のある時点での固形分濃度(%)を指す。「乾燥速度」とは乾燥過程にて単位時間、単位面積当たりの溶媒蒸発量(g/(ms))を表わしたものを指す。
【0033】
液膜の固形分濃度と乾燥速度の求め方は、乾燥過程での液膜厚みの変化を非接触測定で連続的に測定する方法(膜厚法)、塗布乾燥過程の質量変化を測定する方法(重量法)、揮発した溶媒成分を捕集し、ガスクロマトグラフィー等で定量する方法(溶媒定量法)なにより測定が可能であるが、実際の乾燥工程を用いて測定を行うには重量法、もしくは膜厚法が好ましい。液膜の固形分濃度と乾燥速度の求め方の詳細は後述する。
【0034】
「液膜温度」とは、乾燥過程での液膜の温度を指し、非接触式温度計等により直接測定することができる。測定方法については、後述する
塗布工程後、液膜の固形分濃度が70%に達するまでに液膜温度が40℃まで到達しない場合、もしくは液膜の固形分濃度が70%に達した以降で液膜温度を40℃以上に維持できない場合には、自発的な層構造の形成が不十分になり、2つの層間の界面に乱れが生じやすいため、塗膜中で光散乱をして塗膜の透明性が低下したり、積層体を反射防止フィルムに用いる場合には干渉効果が得られなくなるために反射率が高くなったりする。
【0035】
一方、液膜温度が70℃を超える場合には、前記した層間の界面が乱れに起因する問題の他に、塗膜表面にクラック状の欠陥を生じる場合がある。
【0036】
塗布工程後の液膜の固形分濃度が70%に達するまでの間に、相対湿度が50%を上回る場合には、塗膜内で疎水的な処理を行った粒子、つまり、フッ素化合物Aによる表面処理がなされている粒子Aが凝集して塗膜の白化、界面状態の乱れが発生しやすい。相対湿度が低い分には品質上問題が無いが、下限は防爆対策などの安全上の配慮から相対湿度5%程度までである。
【0037】
塗布工程後の液膜の固形分濃度が70%に達するまでの間に、乾燥速度を0.5g/(ms)よりも高くなる場合には、塗膜表面にクラック状の欠陥を生じる場合がある。乾燥速度は低い方が好ましいが、一般的な塗布装置を使用して生産する場合には、安全性の観点から給排気を必要とし、溶媒は常温、常圧でも蒸気圧を示すため乾燥は進行するので、通常は0.001g/(ms)以上になる。
【0038】
さらに、前記乾燥工程1に続いて乾燥速度0.07g/(ms)以下で、液膜を乾燥する工程(この工程を乾燥工程2とする)を用いることが好ましく、0.06g/(ms)以下がより好ましく、0.05g/(ms)以下が特に好ましい。乾燥速度の下限は、品質上は乾燥が進行する(つまり正の値)であれば、特に制限はないが、生産性を考慮すると、0.001g/(ms)以上であることが好ましい。
【0039】
乾燥速度が、0.07g/(ms)よりも大きいと、塗膜表面にクラック状の欠陥を生じる場合がある。
【0040】
以上に示す条件、即ち乾燥工程1における「液膜表面での無指向性熱線式風速計による風速」、「固形分濃度が70%に達する前の液膜温度」、「固形分濃度が70%に達するまでの相対湿度」「固形分濃度が70%に達するまでの乾燥速度」、および乾燥工程2における「乾燥速度」は、乾燥工程1、乾燥工程2の任意の点で測定して満たすことが必要である。
【0041】
前記、本発明の積層体の製造方法を達成する手段の1例として、図1〜図3を示す。
図1は前記乾燥工程1において、支持基材側からの加熱を輻射伝熱方式により行う例である。
図2は前記乾燥工程1において、支持基材側からの加熱を対流伝熱方式により行う例である。
図3は前記乾燥工程1において、支持基材側からの加熱を伝導伝熱方式により行う例である。
装置は汎用の塗布装置を用い「塗布工程」1、「乾燥工程1」2、「乾燥工程2」3、「硬化工程」4から構成される。
図1から3に示す装置は、「乾燥工程1」と「乾燥工程2」の両方が行える仕様となっている。この装置で「乾燥工程2」を行わずに「乾燥工程1」のみを実施する場合には、「乾燥工程2」の熱風の送風止めて乾燥させないことにより対応することができる。
「塗布工程」では設定した速度で支持基材を連続的に搬送し、ダイコーティング装置を用いて、一定の膜厚を連続塗布するものである。「乾燥工程1」は図1〜3に示すように2室から構成されているが、装置の構成、条件は2室で同一になっている。
【0042】
図1では、支持基材側に輻射伝熱方式による加熱を行うための遠赤外線ヒーター6を有する。
【0043】
図2では、支持基材側に対流伝熱方式による加熱を行うため、支持基材方向に送風可能なノズル5を有する。
図3では、支持基材側に伝導伝熱方式による加熱を行うための加熱ロール15を有する。
【0044】
また、前述の「液膜表面での無指向性熱線式風速計による風速」、「液膜の固形分濃度」、「液膜温度」、さらに「乾燥速度」の算出は、図1から図3の「乾燥工程1」、「乾燥工程2」に各種センサーを設けて測定することにより得られる。この測定場所、即ちセンサーの設置場所は「乾燥工程1」、「乾燥工程2」の任意の場所に設置することができ、後述の[液膜の固形分濃度と乾燥速度]の項に示す方法で算出することができる。
【0045】
また、前記塗布工程において、塗布時の液膜厚みには好ましい範囲があり、2.5μm以上20μm以下であることが好ましく、3μm以上18μm以下がより好ましく、3μm以上15μm以下が特に好ましい。塗布時の液膜厚みが2μmよりも小さい場合には、乾燥速度が速くなりすぎるため自発的な層構造の形成時間が短くなり、面内均一な層構造の形成が不十分になりやすく、またレベリングの不良によりムラが生じやすい。20μmよりも大きい場合には、乾燥進行の面内均一性が悪化する。この結果、面内均一な自発的な層構造の形成が不十分になって界面に乱れが生じるため、塗膜中で光散乱をして塗膜の透明性の低下や、反射防止フィルム等では干渉効果が得られなくなるために反射率の上昇などが起こったりし、さらに面状欠陥が発生しやすい。
【0046】
塗布時の液膜厚みは、ダイコート法などの前計量方式を用いる場合には、塗布幅(m)、体積流量(m/s)、塗布速度(m/s)から容易に計算にて求めることができ、グラビアコート法などの後計量方式では、非接触式の膜厚センサーを用いて塗布直後に液膜厚みを測定することができる。測定方法の詳細は後述する。以下発明を要素毎に説明する。
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法としては、支持基材の少なくとも片面に粒子Aと粒子Bを含む塗料組成物を1回塗布して、1層の液膜を形成する工程(塗布工程)、及び該液膜を乾燥する工程(乾燥工程1、必要に応じ乾燥工程2)をこの順に有し、乾燥工程1、必要に応じ乾燥工程2において前述の条件で乾燥することが重要である。
【0047】
まず、塗布工程ではディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書参照)などにより支持基材上に塗布する。
【0048】
これらの塗布方式のうち、グラビアコート法または、ダイコート法が塗布方法として好ましい。グラビアコート法は本発明の積層膜のような塗布量の少ない塗料組成物を均一な液膜厚みで塗布することに優れており、グラビアコート法の中でもダイレクトグラビア法で、グラビアロール直径の小さい小径グラビアロールを用いることが、メニスカス部の安定性確保の面からより好ましい。
【0049】
またダイコート法は塗布時の液膜が薄い場合には、ビード背圧の印加など工夫を要するが、前計量方式のためコーティングダイへの供給液量にて液膜厚みの制御が可能であり、また、原理的に塗料組成物の滞留部、蒸発部がないため、塗料組成物の安定性の面からも優れている。
【0050】
塗布液膜の厚みは前述の様に好ましい範囲がある。塗布液膜の厚みの測定方法は後述する。塗布液膜の厚みの制御は、上記塗布方式の条件設定や、塗料組成物の固形分濃度、粘度を調整することにより制御可能である。
【0051】
塗布工程に次いで、支持基材上に塗布された液膜を乾燥することが必要であり、前述のように2段階(乾燥工程1、乾燥工程2)以上の工程を行うことが好ましい。乾燥工程1、乾燥工程2における好ましい条件は前述の通りである。乾燥工程1、乾燥工程2の乾燥方式については、伝道伝熱、対流伝熱、輻射伝熱、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられ、前期条件を満たすことができれば特に限定しないが、乾燥工程1の支持基材側からの加熱は伝導伝熱か輻射伝熱が好ましく、輻射伝熱方式が特に好ましい。また、乾燥工程2は支持基材側または塗膜側からのいずれでもよく、加熱は対流伝熱方式が特に好ましい。
【0052】
風速については乾燥工程の送風機の風量、ダンパーの開度により調整可能であり、液膜温度は、ヒーター、熱交換器からの発熱量、風速、絶対湿度により調整可能であり、乾燥速度は、風速と液膜温度の制御に加えて、塗料組成物中の溶媒組成により調整可能である。
【0053】
さらに、乾燥工程後に形成された支持基材上の積層膜に対して、熱またはエネルギー線を照射する事によるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは130℃以上200℃以下である。
【0054】
また、エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)及び/又は紫外線(UV線)であることが好ましい。また紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、硬化が不十分となり、耐擦傷性が不十分となる場合がある。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100〜3000mW/cm、好ましくは200〜2000mW/cm、さらに好ましくは300〜1500mW/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが好ましく、紫外線の積算光量が100〜3000mJ/cm、好ましく200〜2000mJ/cm、さらに好ましくは300〜1500mJ/cmとなる条件で紫外線照射を行うことがより好ましい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。硬化を熱により行う場合、乾燥工程と硬化工程とを同時におこなってもよい。
【0055】
[積層体、積層膜]
本発明の対象物である積層体とは、支持基材の少なくとも片面に第1層及び第2層からなる積層膜が形成された部材を指し、積層膜が反射防止膜、屈折率調整膜の場合には、反射防止部材、屈折率調整部材と呼ばれ、さらに支持基材がプラスチックフィルムの場合には反射防止フィルム、屈折率調整フィルムと呼ばれる。
【0056】
ここで、本発明における「層」とは、前記積層体の積層膜の表面から深さ方向に向かって元素組成、含有物(粒子等)の形状、物理特性が不連続になる境界面を有することにより区別でき、有限の厚さを有する部位を指す。より具体的には、前記積層体を表面から深さ方向に各種組成/元素分析装置(IR、XPS,XRF、EDAX、SIMS等)、電子顕微鏡(透過型、走査型)または光学顕微鏡にて断面観察した際、前記不連続な境界面により区別され、それぞれが有限の厚さを有する部位を指す。
【0057】
本発明の製造方法にて得られる積層体を反射防止フィルム、もしくは屈折率調整フィルムとして使用する場合には、積層体を構成する各層の屈折率に差があり、第1層と第2層の間に明確な界面があることが好ましい。特に反射防止フィルムでは第1層の方が第2層よりも屈折率が低いことが好ましい。この「明確な界面」とは、1つの層と他の層とが区別可能な状態をいう。区別可能な界面とは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより判断することができる界面を表し、後述する方法に従い判断することができる。
【0058】
また、積層体を反射防止フィルム、もしくは屈折率調整フィルムなどの光透過性材料として用いる場合には、更に透明性が高いことが望ましい。透明性が低いと画像表示装置として用いた場合、画像彩度の低下などによる画質低下が生じるために好ましくない。
【0059】
本発明の積層体の透明性の評価にはヘイズ値を用いることができる。ヘイズはJIS−K 7136(2000)に規定された透明性材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。積層体のヘイズ値としては好ましくは1.5%以下であり、より好ましくは1.2%以下、更に好ましくは1.0%以下であり、値が小さいほど透明性の点で良好であるものの、0%とすることは困難であり、現実的な下限値は0.01%程度と思われる。
【0060】
[液膜の固形分濃度と乾燥速度]
膜厚法によって液膜の固形分濃度と乾燥速度を求める方法を述べる。まず、塗布からの時間tにおける液膜の固形分濃度(%)は数式1によって求められる。
【0061】
【数1】

【0062】
数式1で、xは塗布からの時間tにおける液膜の固形分濃度(%)、xは塗料組成物の固形分濃度(%)、Hは塗布直後の液膜厚み(m)、Hは時間tにおける液膜厚み(m)、dliqは塗布液の密度(kg/m)、dsolvは溶媒の密度(kg/m)を示す。
塗料組成物の固形分濃度x(%)の具体的な求め方は実施例の項で述べる。塗布液dliq(kg/m)、溶媒の密度dsolv(kg/m)はJIS K0061(2001年)に基づき、浮ひょうや振動式密度計等の各種液体密度測定器にて測定可能である。
【0063】
さらに乾燥過程での乾燥速度は、実験的には乾燥過程の特定の時間の間での単位面積当たりの溶媒の蒸発量に相当し、数式2によって求められる。
【0064】
【数2】

【0065】
数式2でVt21は時間1と時間2の間の乾燥速度(g/ms)、Ht1、t2は時間1と時間2における液膜厚み(m)、t、tは液膜厚みを測定した塗布時を規準とした時間(s)を示す。
【0066】
[粒子]
本発明の積層体の第1層が粒子Aを、第2層は粒子Bを含み、粒子Aと粒子Bは種類が異なることが重要である。ここで「粒子」とは有機化合物、無機化合物またはその複合体からなる粒子のいずれでも良いが、無機化合物による粒子(以降これを無機粒子と呼ぶ)が好ましい。さらに粒子は何らかの表面処理がなされていても良い。
【0067】
前記粒子の「種類」とは、粒子を構成する元素の種類によって決まる。(粒子Aとして用いられるフッ素処理粒子などの表面処理粒子においては、表面処理される前の粒子を構成する元素の種類によって決まる。)。例えば、酸化チタン(TiO)と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO2−x)とでは、粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の粒子である。また、同一の元素、例えばZn、Oのみからなる粒子(ZnO)であれば、その粒径が異なる粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素が全て同一である限りは)、これらは同一種類の粒子である。粒子A,粒子Bの詳細については後述する。
【0068】
[塗料組成物]
本発明の積層体の製造方法に好適に用いられる塗料組成物は、少なくとも粒子Aと粒子Bを含むことが必要であり、バインダー原料、有機溶媒、を含むことが好ましく、更に重合開始剤や硬化剤を含むことがより好ましく、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜含有させても良い。これらの詳細については後述する。
【0069】
[粒子A]
本発明の積層体の製造方法において、第1層は少なくとも1種類以上の粒子を含むことが重要で、第1層が有する粒子を粒子Aとする。また、粒子Aはフッ素化合物Aにより表面処理された粒子であることが必要である。粒子Aの種類(すなわち、表面処理される前の粒子を構成する元素の種類)は特に限定されないが、本発明の積層体の製造方法を、反射防止フィルム、もしくは透明導電性フィルムの屈折率調整層の製造に適用する場合には、粒子AはSi,Na,K,Ca,MgおよびAlから選択される半金属元素、または金属元素の酸化物、窒化物、ホウ素化物、フッ素化物が好ましく、シリカ粒子(SiO)、アルカリ金属フッ化物類(NaF,KF,NaAlFなど)、およびアルカリ土類金属フッ化物(CaF、MgFなど)がより好ましく、耐久性、屈折率、コストなどの点からシリカ粒子が特に好ましい。
【0070】
このシリカ粒子とは、ケイ素化合物又は有機珪素化合物の重合(縮合)体のいずれかからなる組成物を含む粒子を指し、一般例としてSiOなどのケイ素化合物から導出される粒子の総称である。粒子Aに好適な粒子の形状は、特に限定されないが、本発明の積層体の製造方法を反射防止フィルム、もしくは透明導電性フィルムの屈折率調整層の製造に適用する場合には、各層の屈折率や光学異方性の観点から球状粒子、多孔質、もしくは中空の球状粒子が好ましい。
【0071】
粒子の数平均粒子径(表面処理を施した粒子の場合には、表面処理前の数平均粒子径)は1nm以上200nmが好ましい。200nmよりも大きくなると、光散乱により良好な透明性が得られなくなり好ましくない。また、数平均粒子径が小さい分には特に影響はないが、現実的に安定して得られる粒子の数平均粒子径は1〜5nm程度が下限である。
【0072】
粒子Aの数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、第1層、第2層に対し、同画像から第1層に含まれる粒子100個について、その外径を画像処理ソフトによって計測し、その値を平均化することで求められる。
【0073】
ここで外径とは、粒子の最大の径(つまり粒子の長径であり、粒子中の最も長い径を示す)を表し、内部に空洞を有する粒子の場合も同様に、粒子の最大の径を表す。
次に前述のフッ素処理粒子を得るための表面処理について説明する。前述の粒子Aに対するフッ素表面処理とは、粒子Aを化学的に修飾して、粒子Aにフッ素化合物Aを導入する工程を指し、一段階で行われても良いし、多段階で行われても良い。また、複数の段階でフッ素化合物Aを用いても良いし、一つの段階のみでフッ素化合物Aを用いても良い。ここで導入とは、フッ素化合物Aが、粒子の表面に化学結合(共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、疎水結合等を含む)や吸着(物理吸着、化学吸着を含む)している状態を指す。
【0074】
このフッ素化合物Aは、次の一般式(I)で表される化合物である。
【0075】
フッ素化合物A: R−R−R 一般式(I)
ここで、Rは、フルオロアルキル基、フルオロオキシアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルカンジイル基、またはフルオロオキシアルカンジイル基。
【0076】
は、反応性部位。
【0077】
は、炭素数1から6のアルキレン基又はそれらから導出されるエステル構造。
【0078】
、R、Rは、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。
【0079】
ここで、フルオロアルキル基、フルオロオキシアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルカンジイル基、フルオロオキシアルカンジイル基とは、アルキル基、オキシアルキル基、アルケニル基、アルカンジイル基、オキシアルカンジイル基が持つ水素の一部、あるいは全てがフッ素に置き換わった置換基であり、いずれも主にフッ素原子と炭素原子から構成される置換基であり、構造中に分岐があってもよく、これらの部位が複数連結したダイマー、トリマー、オリゴマー、ポリマー構造を形成していてもよい。
【0080】
反応性部位とは、熱または光などの外部エネルギーにより他の成分と反応する部位をさす。このような反応性部位として、反応性の観点からアルコキシシリル基及びアルコキシシリル基が加水分解されたシラノール基や、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる、反応性、ハンドリング性の観点から、アルコキシシリル基、シリルエーテル基あるいはシラノール基や、エポキシ基、アクリロイル(メタクリロイル)基が好ましい。
【0081】
このフッ素化合物Aを導入する処理法の一つは、このフッ素化合物Aとして、前記一般式(I)にて、Rがアルコキシシリル基、シリルエーテル基、シリルエーテル基になったフルオロアルコキシシラン化合物を少なくとも1種類以上と、粒子A、もしくは粒子Aの粒子分散物と溶媒、触媒等とを共に撹拌、場合によっては加熱、または脱アルコール処理をし、粒子A表面の水酸基と縮合させることにより成される方法である。
【0082】
ここでいう粒子Aの粒子分散物とは、前記粒子Aが溶媒中に分散された状態のものを指し、ゾル、サスペンジョン、スラリー、コロイド溶液ともよばれることもあり、粒子、溶媒のほかに、分散剤、界面活性剤、表面処理剤等、安定化剤等を含んでもよい。粒子を微細に分散した状態で扱う観点から、分散物の状態で表面処理を行うことが好ましい。
【0083】
この場合のフッ素化合物Aの具体例としては、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリイソシアネートシラン、2−パーフルオロオクチルトリメトキシシラン、2−パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、2−パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、2−パーフルオロオクチルエチルトリクロロシラン、2−パーフルオロオクチルイソシアネートシラン等が挙げられる。
【0084】
フッ素化合物Aによる粒子Aの処理の別の方法には、粒子A、もしくは粒子Aの粒子分散物を化合物Dにて処理し、次いでフッ素化合物Aとつなぎ合わせる方法がある。
【0085】
この化合物Dは、分子内にフッ素は無いが、フッ素化合物Aと反応可能な反応性部位と、中空シリカ粒子などの粒子と反応可能な部位を少なくとも一カ所ずつ持っている化合物を指す。化合物Dにおける粒子と反応可能な部位としては、反応性の観点からアルコキシシリル基、シリルエーテル基、及びシラノール基であることが好ましい。これら化合物は一般的にシランカップリング剤と呼ばれ、例としては、グリシドキシアルコキシシラン類、アミノアルコキシシラン類、アクリロイルシラン類、メタクリロイルシラン類、ビニルシラン類、メルカプトシラン類、などを用いることができる。
【0086】
この方法は具体的には、シリカ粒子(特に中空シリカ粒子)などの粒子Aを、下記一般式(II)で示される化合物Dと前述の一般式(I)で示されるフッ素化合物Aで処理するものであり、より好ましくは、シリカ粒子(特に中空シリカ粒子)などの粒子Aを、下記一般式(II)で示される化合物Dで処理し、次いで前述の一般式(I)で示されるフッ素化合物Aで処理するものである。
【0087】
化合物D: R−R−SiRn2(OR3−n2 一般式(II)
は、反応性部位を示す。
【0088】
は、炭素数1から6のアルキレン基及びそれらから導出されるエステル構造を示す。
【0089】
、Rは、水素又は炭素数が1から4のアルキル基を示し、n2は0から2の整数を示す。
【0090】
、R、R、Rは、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。
【0091】
上記一般式中のより好ましい形態は、一般式(I)のRと一般式(II)のRで表される反応性部位が、反応性二重結合基の態様である。
【0092】
反応性二重結合基とは、光または熱などのエネルギーをうけて発生したラジカルなどにより化学反応する官能基であり、具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。つまり、反応性二重結合とは、反応性部位の一部である。
【0093】
この化合物Dの具体例としては、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシブチルトリメトキシシラン、アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、アクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン及びこれら化合物中のメトキシ基が他のアルコキシル基及び水酸基に置換された化合物を含むものなどが挙げられる。
【0094】
また、この場合のフッ素化合物Aの具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフロオロプロピルアクリレート、2−パーフルオロブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルアクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−3−メトキシブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1−トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレート、トリアクリロイル−ヘプタデカフルオロノネニル−ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0095】
分子中にフルオロアルキル基Rを有さない一般式(II)で表される化合物Dを用いることにより、簡便な反応条件で中空シリカなどの粒子A表面を修飾することが可能となるばかりではなく、シリカ粒子表面に反応性を制御しやすい官能基を導入することが可能となり、その結果、反応性二重結合基及びフルオロアルキル基Rを有するフッ素化合物Aを、シリカ粒子などの粒子A表面で反応させることが可能になる。
【0096】
[粒子B]
本発明の積層体の製造方法において、第2層は少なくとも1種類以上の粒子を含むことが重要で、第2層が有する粒子を粒子Bとする。粒子Bの種類は特に限定されないが、本発明の積層体の製造方法を反射防止フィルム、もしくは透明導電性フィルムの屈折率調整層の製造に適用する場合には、粒子Bは、粒子Aとは異なる種類の粒子が好ましく、金属元素、半金属元素の酸化物、窒化物、ホウ素化物であることがより好ましく、Ga、Zr,Ti,Al,In,Zn,Sb,Sn,およびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素Bの酸化物粒子であることがさらに好ましい。
【0097】
また粒子Bは本発明の製造方法が上記用途に使用される場合には、粒子Aよりも屈折率が高いことが好ましい。具体的には酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化アンチモン(Sb)、およびインジウムスズ酸化物から選ばれる少なくとも一つ、あるいはこれらの間の固溶体、および一部元素を置換、または一部元素が格子間に侵入、一部元素が欠損した固溶体、またはこれら無機化合物粒子が接合した粒子である。粒子Bは、特に好ましくはリン含有酸化スズ(PTO)、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、ガリウム含有酸化亜鉛(GZO)や酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)である。
【0098】
さらに本発明の積層体の製造方法を反射防止フィルム、もしくは透明導電性フィルムの屈折率調整層の製造に用い、かつ粒子Aがシリカ粒子の場合は、粒子Bが該シリカ粒子よりも屈折率が高いことが特に好ましい。このような屈折率が高い粒子としては、数平均粒子径が20nm以下で、かつ屈折率が1.60から2.80の無機化合物が好ましく用いられる。そのような無機化合物Bの具体例としては、アンチモン酸化物、アンチモン含有酸化亜鉛、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、リン含有酸化スズ(PTO)、ガリウム含有酸化亜鉛(GZO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、及び/または酸化チタン(TiO)が挙げられ、特に屈折率が高い酸化チタン、酸化ジルコニウムがより好ましい。
【0099】
〔塗料組成物のバインダー原料〕
本発明の積層体の製造方法においては、積層膜は1種類以上のバインダーを含むことが好ましい。そのため本発明の積層体の製造方法において用いられる塗料組成物は、1種類以上のバインダー原料を含むことが好ましい。ここで本発明において、塗料組成物中に含まれるバインダーを「バインダー原料」、積層体の積層膜中に含まれるバインダーを「バインダー」と表すが、バインダーとしては、バインダー原料がそのままバインダーとして存在する場合もある(つまり、塗料組成物のバインダー原料が、そのままの形で積層膜中のバインダーとして存在する態様も含む。)。
【0100】
バインダー原料としては特に限定するものではないが、製造性の観点より、熱及び/または活性エネルギー線などにより、硬化可能なバインダー原料であることが好ましく、バインダー原料は一種類であっても良いし、二種類以上を混合して用いても良い。また粒子を膜中に保持する観点より、分子中にアルコキシシランやアルコキシシランの加水分解物や反応性二重結合を有しているバインダー原料であることが好ましい。
【0101】
このようなバインダー原料として、成分中に多官能アクリレートを用いるのが好ましく、代表的なものを以下に例示する。1分子中に、3(より好ましくは4または5)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートおよびその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、市販されている多官能アクリル系組成物としては三菱レーヨン株式会社;(商品名”ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名”デナコール”シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名”NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名”UNIDIC”など)、東亞合成化学工業株式会社;(”アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(”ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名”KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名”ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0102】
[有機溶媒]
本発明の積層体の製造方法に用いる塗料組成物は、前述の粒子A,粒子B、バインダー原料に加えて、有機溶媒を含むことが好ましい。有機溶媒を含むことにより、塗布時に適度な流動性を与え、また粒子の運動性を確保できるため積層膜の自発的な層形成が容易となり、良好な特性を発現できるため好ましい。
【0103】
有機溶媒は、特に限定されるものではないが、通常、常圧での沸点が250℃以下の溶媒が好ましい。具体的には、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類、アミド類、含フッ素化合物類等が用いられる。これらは、1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0104】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール、フェニチルアルコール等を挙げることができる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。エーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどを挙げることができる。エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等を挙げることができる。芳香族類としては、例えば、トルエン、キシレン等を挙げることができる。アミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
【0105】
[塗料組成物のその他成分]
本発明の製造方法に用いる塗料組成物としては、更に重合開始剤や硬化剤を含むことが好ましい。重合開始剤及び硬化剤は、表面処理粒子とバインダー原料との反応を促進したり、バインダー間の反応を促進したりするために用いられる。
【0106】
該重合開始剤、硬化剤は種々のものを使用できる。また、複数の重合開始剤を同時に用いても良いし、単独で用いても良い。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用しても良い。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられるがこれらに限定されるものではないが、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましく、具体例としては、2.2−ジメトキシ−1.2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタン、1−シクロヒキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、などが挙げられる。
【0107】
なお、該重合開始剤、硬化剤、触媒の含有割合は、塗料組成物中のバインダー成分量100質量部に対して0.001質量部から30質量部が好ましく、より好ましくは0.05質量部から20質量部であり更に好ましくは0.1質量部から10質量部である。
【0108】
[支持基材]
積層膜をCRT画像表示面やレンズ表面に直接設ける場合を除き、積層体は支持基材を有することが重要である。ここで、支持基材とは塗料組成物が直接塗布される部材を指す。支持基材としては、ガラス板やプラスチックフィルムなどを単独で使用してもよく、ガラス板やプラスチックフィルムに何らかの機能層を設けたものを使用してもよく、ガラス板やプラスチックフィルムに各種の処理が施されたものを使用してもよい。支持基材の部材としては、ガラス板よりもプラスチックフィルムの方が好ましい。プラスチックフィルムの材料の例としては、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレートおよびポリエーテルケトンなどがある。これらの中でも特にトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0109】
各種の処理とは、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理等をいう。
【0110】
本発明の製造方法において、支持基材の塗料組成物を塗工する側の面の表面粗さは40nm以下であるのが好ましい。表面粗さは35nm以下がさらに好ましく、30nm以下が特に好ましい。
【0111】
機能層を有するガラス板やプラスチックフィルムを支持基材として用いた場合、支持基材の塗料組成物を塗工する側の面としてはガラス板またはプラスチックフィルムの表面であっても、機能層の表面であっても特に限定されない。ただし、積層体にハードコート性を付与するため、支持基材としてハードコート層を有するガラス板やプラスチックフィルムを用いる場合は、ハードコート層の表面に塗料組成物を塗工する。積層膜と支持基材との接着性を向上させるため、支持基材として易接着層を有するガラス板やプラスチックフィルムを用いる場合は、易接着層の表面に塗料組成物を塗工する。
【0112】
支持基材の光透過率は、積層体を反射防止フィルム、もしくは屈折率調整フィルムなどの光透過性材料として用いる場合には、80%以上100%以下であることが好ましい。光透過率は86%以上100%以下がさらに好ましい。光透過率とは、光を照射した際に試料を透過する光の割合のことであり、JIS K 7361−1(1997)に基づいて測定した値である。積層体の光透過率としては値が大きいほど良好であり、値が小さいとヘイズ値が上昇し、画像劣化が生じる可能性が高くなる。ヘイズは透明材料の濁りの指標であり、JIS K 7136(2000)に基づいて測定した値である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。ここで、支持基材が、ガラス板やプラスチックフィルムに各種機能層が設けられた支持基材であるときは、光線透過率は各種機能層を設けた状態での値である。また、支持基材が、ガラス板やプラスチックフィルムに各種処理が施された支持基材の場合は、光線透過率は各種処理が施された状態での値である。
【0113】
支持基材のヘイズは、積層体を反射防止フィルム、もしくは屈折率調整フィルムなどの光透過性材料として用いる場合には、0.01%以上2.0%以下であることが好ましい。ヘイズは0.05%以上1.0%以下がさらに好ましい。ここで、支持基材が、ガラス板やプラスチックフィルムに各種機能層が設けられた支持基材であるときは、ヘイズは各種機能層を設けた状態での値である。また、支持基材が、ガラス板やプラスチックフィルムに各種処理が施された支持基材の場合は、ヘイズは各種処理が施された状態での値である。
【0114】
支持基材の屈折率は、積層体を反射防止フィルム、もしくは屈折率調整フィルムなどの光透過性材料として用いる場合には、1.4〜1.7であることが好ましい。屈折率とは、光が空気中からある物質中に進む時、その界面で進行方向の角度を変える割合のことであり、JIS K 7142(1996)に基づいて測定した値である。ここで、支持基材が、ガラス板やプラスチックフィルムに各種機能層が設けられた支持基材であるときは、屈折率は、ガラス板部分、プラスチックフィルム部分または機能層部分の個々の屈折率ではなく、支持基材全体の平均の値である。支持基材が、ガラス板やプラスチックフィルムに各種処理が施された支持基材の場合は、屈折率は、各種処理が施された状態での支持基材全体の平均の値である。
【0115】
支持基材は、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を含んでもよい。赤外線吸収剤の含有量は、支持基材の全成分100質量%において0.01質量%以上20質量%以上であることが好ましい。より好ましくは0.05質量%以上10質量%以上である。滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に含有してもよい。不活性無機化合物の例には、SiO、TiO、BaSO、CaCO、タルクおよびカオリンが含まれる。更に、支持基材に、表面処理を実施してもよい。ここで、支持基材が、ガラス板やプラスチックフィルムに各種機能層が設けられた支持基材であるときは、赤外線吸収剤または紫外線吸収剤は、プラスチックフィルムに含んでもよいし、機能層部分に含んでもよい。
【0116】
[塗料組成物中の各成分の含有量]
本発明の製造方法に用いる塗料組成物は、粒子A/(粒子Bを含む他の粒子)(質量比率)が、1/30〜1/1であることが好ましい。粒子A/(粒子Bを含む他の粒子)=1/30〜1/1とすることで、得られる積層体の第1層の厚みと第2層の厚みの比を一定にすることができる。このため1回の塗布で第1層と第2層の厚みを同時に必要な厚みとすることが容易であるため好ましい。
【0117】
粒子A/(粒子Bを含む他の粒子)(質量比率)として、1/29〜1/5、さらに好ましくは1/26〜1/10、特に好ましくは1/23〜1/15である。
【0118】
また好ましくは、塗料組成物100質量%において、フッ素処理粒子Aを含む全ての粒子(ここでいう全ての粒子には、フッ素化合物Aによる表面処理によって、フッ素処理粒子A中の粒子と結合したフッ素化合物Aなど有機化合物も含めたフッ素処理粒子A全体の質量も含める。)の合計が0.2質量%以上40質量%以下、有機溶媒を40質量%以上98質量%以下、バインダー、開始剤、硬化剤、及び触媒などのその他の成分を0.1質量%以上20質量%以下を含む態様であり、より好ましくは、フッ素処理粒子Aを含む全ての粒子の合計が1質量%以上35質量%以下、有機溶媒を50質量%以上97質量%以下、その他の成分を1質量%以上15質量%以下含む態様である。
【0119】
さらに好ましい態様としては、2種類以上の粒子が金属酸化物粒子とフッ素処理シリカ粒子であり、これらの合計が本発明の塗料組成物100質量%において2質量%以上30質量%以下、有機溶媒が60質量%以上95質量%以下、その他の成分が2質量%以上10質量%以下の態様である。
【実施例】
【0120】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0121】
[第1層構成成分の調製]
[第1層構成成分(1)の調製]
粒子Aとして、コロイダルシリカをフッ素化合物により表面処理した粒子を用いた。具体的には、イソプロパノール(以下、IPAと略すことがある)分散コロイダルシリカ(扶桑化学製コロイダルシリカゾル:固形分濃度30質量%、数平均粒子径18nm)15gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.37gと10質量%蟻酸水溶液0.17gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで、フッ素化合物Aとして、HC=CH−COO−CH−(CFF 1.38g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.057gを加えた後、60分間90℃にて加熱撹拌した。その後、イソプロピルアルコールを加え希釈し、固形分3.5質量%の第1層構成成分(1)とした。
【0122】
[第1層構成成分(2)の調製]
第1層構成成分(1)に対し、粒子Aとしてコロイダルシリカに代えてIPA分散フッ化マグネシウム(CIKナノテック製:固形分濃度30%、数平均粒子径25nm)を用いた以外は同様にして、第1層構成成分(2)を得た。
【0123】
[第2層構成成分の調製]
[第2層構成成分(1)の調製]
下記材料を混合し、第2層構成成分(2)を得た。
粒子B:IPA分散二酸化チタン粒子 233質量部
(ELCOM 日揮触媒化成株式会社製: 固形分30質量%、数平均粒子径 8nm)
バインダー原料 30 質量部
(PET−30: 日本化薬株式会社製 固形分100質量%)
[第2層構成成分(2)の調製]
第2層構成成分(1)に対し、粒子BとしてIPA分散二酸化チタンに代えて、IPA分散酸化ジルコニウム(CIKナノテック製:固形分濃度30%、数平均粒子径19nm)を用いた以外は同様にして、第2層構成成分(2)調製した。
【0124】
[塗料組成物の調製]
[ハードコート塗料組成物1の調製]
下記材料を混合しハードコート塗料組成物1を得た。
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 30.0質量部
イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ社製) 1.5質量部
メチルイソブチルケトン 73.5質量部
[塗料組成物1の調製]
下記材料を混合し塗料組成物1を得た。
第1層構成成分(1) 42.6質量部
第2層構成成分(1) 41.3質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.24質量部
2−プロパノール 6.03質量部
R1820(ダイキン株式会社製:固形分100質量%) 3.0 質量部
[塗料組成物2の調製]
下記材料を混合し塗料組成物2を得た。
第1層構成成分(1) 65.9質量部
第2層構成成分(1) 12.9質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.073質量部
2−プロパノール 11.2質量部
[塗料組成物3の調製]
下記材料を混合し塗料組成物3を得た。
第1層構成成分(1) 44.7質量部
第2層構成成分(1) 8.8質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.050質量部
2−プロパノール 36.5質量部
[塗料組成物4の調製]
下記材料を混合し塗料組成物4を得た。
第1層構成成分(1) 25.2質量部
第2層構成成分(1) 24.4質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.139質量部
2−プロパノール 40.4質量部
R1820(ダイキン株式会社製:固形分100質量%) 3.0 質量部
[塗料組成物5の調製]
下記材料を混合し塗料組成物5を得た。
第1層構成成分(1) 20.9質量部
第2層構成成分(1) 20.3質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.115質量部
2−プロパノール 48.9質量部
R1820(ダイキン株式会社製:固形分100質量%) 3.0 質量部
[塗料組成物6の調製]
下記材料を混合し塗料組成物6を得た。
第1層構成成分(1) 47.6質量部
第2層構成成分(1) 6.6質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.037質量部
2−プロパノール 35.8質量部
[塗料組成物7の調製]
下記材料を混合し塗料組成物7を得た。
第1層構成成分(2) 42.6質量部
第2層構成成分(1) 41.3質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.24質量部
2−プロパノール 6.03質量部
R1820(ダイキン株式会社製:固形分100質量%) 3.0 質量部
[塗料組成物8の調製]
下記材料を混合し塗料組成物8を得た。
第1層構成成分(2) 42.6質量部
第2層構成成分(2) 41.3質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.24質量部
2−プロパノール 6.03質量部
R1820(ダイキン株式会社製:固形分100質量%) 3.0 質量部
[塗料組成物9の調製]
下記材料を混合し塗料組成物9を得た。
第1層構成成分(1) 42.6質量部
第2層構成成分(2) 41.3質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.24質量部
2−プロパノール 6.03質量部
R1820(ダイキン株式会社製:固形分100質量%) 3.0 質量部
[塗布液の固形分濃度、積層膜の密度]
塗布液の固形分濃度xは、塗布液を約20g精秤した値(x)と、これを80℃にて30分乾燥後、160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm、積算光量800mJ/cmの紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射して硬化させて得られた固形物の質量(x)から、数式3に従って求めた。
【0125】
【数3】

【0126】
[塗布液密度dliq、溶媒密度dsolvの測定]
塗布液密度dliq、溶媒密度dsolvは、25℃の環境下にて密度比重計(京都電子工業株式会社製、DA―130N)を用いて測定して求めた。
【0127】
[支持基材1の作成]
支持基材1として、PET樹脂フィルム上に易接着性塗料が塗布されているU46(東レ株式会社製)を用いた。
【0128】
[支持基材2の作成]
支持基材1の易接着塗料が塗布されている面上に、前述のハードコート組成物1をグラビアコーターで塗布後、下記に示す乾燥を行った。
熱風温度 70℃
熱風風速 3m/s
風向 塗布面に対して平行
乾燥時間 1.5分間
次いで160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm、積算光量800mJ/cmの紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射して硬化させ、これを支持基材2とした。
【0129】
[積層体の作製]
支持基材として前記支持基材1、支持基材2を用い、前記塗料組成物1〜9を表2〜5の条件でダイコーターを有する連続塗布装置を用いて塗布した。支持基材と塗料組成物の組み合わせを表2に示す。
積層体の作成の詳細について図1〜図3に示す装置概略図に基づいて説明する。装置は汎用の塗布装置を用い「塗布工程」1、「乾燥工程1」2、「乾燥工程2」3、「硬化工程」4から構成される。
「塗布工程」では設定した塗布速度で支持基材を連続的に搬送し、ダイコーティング装置を用いて、一定の液膜厚みでを連続塗布した。測定点7の位置で塗布直後の液膜のデータ(液膜厚みH、液膜温度)とその環境(雰囲気温度、相対湿度、液膜表面風速)を計測した。各データの計測方法の詳細は後述する。同様の測定を「乾燥工程1」の直前の測定点8の位置でも行った。各実施例、比較例での塗布条件と各データの計測値を表2に示す。
「乾燥工程1」は図1〜3に示すように2室から構成されているが装置の構成、条件は2室で同一である。
【0130】
図1から3に示す装置は、「乾燥工程1」と「乾燥工程2」の両方が行える仕様となっている。この装置では「乾燥工程2」を行わずに「乾燥工程1」のみを実施する場合には、「乾燥工程2」の熱風の送風を止めて乾燥させないことにより対応することができる。
【0131】
実施例1〜10、13〜26、比較例1〜3で用いる装置は図1に示す装置を用い、液膜側に支持基材の搬送方向と平行に熱風を送風可能なノズル5と、支持基材側に遠赤外線ヒーター6を有する。比較例3では支持基材側に遠赤外線ヒーター6を使用しないことにより、支持基材側からの加熱を行わなかった。
【0132】
実施例11については図2に示す装置を用い、遠赤外線ヒーターの代わりに支持基材側に支持基材方向に送風可能なノズル5を有し熱風を送風した。熱風の送風温度、風速は液膜側、支持基材側で同一である。
実施例12については図3の構成の装置を用い、遠赤外線ヒーターの代わりに支持基材側に加熱ロール15を有し、支持基材側から伝導伝熱により加熱した。
「乾燥工程1」では、測定点9〜測定点12の位置にて液膜のデータ(液膜厚みH、液膜温度)とその環境(相対湿度、液膜表面風速)を計測した。熱風の送風温度は乾燥装置に付属のセンサーの測定値を用いた。各実施例、比較例での「乾燥工程1」の条件と各データの計測値を表3、4に示す。
「乾燥工程2」は、液膜表面、および支持基材表面に垂直に熱風を送風可能なノズル5を有する。熱風の送風温度、風速は液膜側、支持基材側で同一である。実施例17については、前述の「乾燥工程2」を実施しなかった。「乾燥工程2」では、測定点13〜測定点14の位置にて液膜のデータ(液膜厚みH、液膜温度)とその環境(液膜表面風速)を計測した。熱風の送風温度は乾燥装置に付属のセンサーの測定値を用いた。
【0133】
図1〜3中に示す、液膜厚み(H、H)、膜面温度、雰囲気温度、熱風温度、相対湿度、風速の測定位置7〜14の位置は、7を基準(0m)とするとそれぞれ、8(2m)、9(4m)、10(6m)、11(8m)、12(10m)、13(12m)、14(14m)になる。
各実施例、比較例での「乾燥工程2」の条件と各データの計測値を表5に示す。
「硬化工程」は、「乾燥工程1」「乾燥工程2」に続いて行われ、UV照射装置を有し、下記の照射条件にて行った。
照射出力 600W/cm積算光量120mJ/cm
酸素濃度 0.1体積%。
【0134】
[製造工程条件の測定]
[塗布厚みH、液膜厚みのH測定]
塗布厚み、および液膜厚みの測定は、株式会社キーエンス製 マイクロヘッド型分光干渉レーザー変位計SI−F1000を使用した。測定は塗布工程の塗布直後、および乾燥工程1、乾燥工程2に前記レーザー変位計を設置し、センサーヘッドと塗布液膜の距離を連続的に測定することにより乾燥過程における液膜厚みを求めた。
【0135】
[液膜温度の測定]
液膜温度の測定は、Fluke社製非接触温度計Rayomatic14を使用した。測定は、塗布工程、乾燥工程1、乾燥工程2に前記非接触温度計を設置し、液膜温度を連続的に測定して求めた。
【0136】
[雰囲気温度、相対湿度の測定]
塗布工程の雰囲気温度と相対湿度、および乾燥工程1の相対湿度は、ヴァイサラ株式会社製温湿度変換器HMT360を用いて測定した。
【0137】
[無指向性熱線式風速計による液膜表面の風速の測定]
無指向性プローブを取り付けた風速変換機(日本カノマックス株式会社 風速変換機 MODEL6332+0965−00)を乾燥工程1、乾燥工程2の液膜表面位置に設置して測定した値を使用した。
なお、前述の塗布厚み、塗布からの時間tにおける液膜厚み、液膜温度、相対湿度、液膜表面風速の測定は、全ての計測器をデータロガーに接続して同時にデータを収集することにより同期させた。実施例では測定個所を少なくとも4個所設定した。
【0138】
[積層体の評価]
作製した積層体について次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表に示す。特に断りのない場合を除き、測定は各実施例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
【0139】
[第1層と第2層の厚み]
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、支持基材上の第1層と第2層の厚みを測定した。各層の厚みは、以下の方法に従い測定した。積層膜の断面の超薄切片をTEMにより20万倍の倍率で撮影した画像から、ソフトウェア(画像処理ソフトEasyAccess)にて各層の厚みを読み取った。合計で30点の層厚みを測定して平均値とした。
【0140】
[第1層と第2層とで形成される界面の状態]
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、積層膜中の第1層と第2層とで形成される界面の有無を判断した。界面の有無の判断は以下の方法に従い判断した。
積層膜の超薄切片に対し、TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像を、ソフトウェア(画像処理ソフトEasyAccess)にて、ホワイトバランスを最明部と最暗部が8bitのトーンカーブに収まるように調整した。さらに界面が明確に見分けられるようにコントラストを調節した。
界面の状態について下記のクラス分けを行い明確な界面があるとみなし、3を合格とした。
明確な境界を引くことができ、境界が平滑である
4点 明確な境界を引くことができるが、境界が微細に僅かに入り組んでいる
3点 明確な境界を引くことができるが、境界に凹凸状の部分がある
2点 明確な境界が引くことができる部分と、そうでない部分がある。
1点 明確な境界が引けない。
【0141】
[面状欠陥]
A4サイズの積層体20枚について目視で確認を行い、欠陥部の外接円の直径が0.5mm以上の欠陥を面状欠陥としてカウントし、1枚あたりの欠陥の個数を求め、下記のクラス分けを行い3点以上を合格とした。
5点 面状欠陥の数 1個未満
4点 面状欠陥の数 1個以上3個未満
3点 面状欠陥の数 3個以上5個未満
2点 面状欠陥の数 5個以上10個未満
1点 面状欠陥の数 10個以上。
【0142】
[透明性]
透明性はヘイズ値を測定することにより判定した。測定はJIS K 7136(2000)に基づき、日本電色工業(株)製 ヘイズメーターを用いて、反射防止部材サンプルの支持基材とは反対側(反射防止層側)から光を透過するように装置に置いて測定を行い、ヘイズ値が2.0%以下を合格とした。また、この評価で合格しているものを「白化」が起こっていないものとした。
【0143】
[ムラ]
ムラは次の2つの方法で確認し下記の判断基準で判断を行い、2つの評価方法での平均値の小数点以下1の位を四捨五入し、3を超えるものを合格とした。
評価方法1(透過光ムラ):フィルムサンプルの反塗布面側(支持基材側の面)から、LEDライトにて光を照射し、フィルムの透過光のムラを確認した。
評価方法2(反射光ムラ):フィルムサンプルの反塗布面側(支持基材側の面)を、つや消し黒のスプレー塗料にて均一に塗布し、この試料について、斜めより三波長蛍光灯(FL20SS・EX−N/18(松下電器産業製)の付いた電気スタンド)で試料面を照射し、その時に見える
ムラを確認した。
5点:ムラが無く、きれいに見える
3点:ムラが確認出来るが、使用上問題ないレベル
1点:ムラが確認出来、使用上問題となるレベル。
【0144】
[耐擦傷性]
反射防止部材の反射防止層側に250g/cm荷重となるスチールウール(#0000)を垂直にあて、1cmの長さを10往復した際に目視される傷の概算本数を記載し下記のクラス分けを行い、3点以上を合格とした。
5点: 0本
4点: 1本以上 5本未満
3点: 5本以上 10本未満
2点: 10本以上 20本未満
1点: 20本以上。
【0145】
表6に積層体の評価結果をまとめた。
評価項目において1項目でも合格とならないものについて、課題未達成と判断した。
表6に示すように本発明の実施例は、本発明が解決しようとする課題を達成している。
塗布工程後の液膜の固形分濃度が70%に達する前に、液膜温度を40℃に到達することができなかった実施例7は、界面の状態、透明性がやや劣るが許容できる範囲であった。
塗布工程後の液膜の固形分濃度が70%に達する前に、液膜温度が70℃を超える実施例10は、界面の状態、面状欠陥、ムラがやや劣るが許容できる範囲であった。
塗布工程後の液膜の固形分濃度が70%に達するまで相対湿度を50%以下にすることができなかった実施例11は、界面の状態、透明性がやや劣るが許容できる範囲であった。
塗布工程後の液膜の固形分濃度が70%に達するまでに乾燥速度が0.5g/msを超える実施例13は、面状欠陥がやや劣るが許容できる範囲であった。
支持基材側からの伝熱方式が本発明の好ましい方式とは異なり、熱風による対流伝熱方式である実施例15は、界面の状態、面状欠陥、透明性がやや劣るが許容できる範囲であった。
本発明の好ましい様態に対し乾燥工程2を行わない実施例17は、耐擦傷性がやや劣るが許容できる範囲であった。
乾燥工程2の乾燥速度が0.07を超える実施例19は、面状欠陥がやや劣るが許容できる範囲であった。
塗布工程での塗布時の液膜厚みが2.5μmよりも薄い実施例20は、界面の状態、ムラがやや劣るが、許容できる範囲であった。
塗布工程での塗布時の液膜厚みが20μmよりも厚い実施例23は、界面の状態、面状欠陥、ムラがやや劣るが、許容できる範囲であった。
【0146】
【表1】

【0147】
【表2】

【0148】
【表3】

【0149】
【表4】

【0150】
【表5】

【0151】
【表6】

【符号の説明】
【0152】
1 塗布工程
2 乾燥工程1
3 乾燥工程2
4 硬化工程
5 熱風送風用ノズル
6 遠赤外線ヒーター
7〜14 液膜厚み(H0、)、液膜温度、雰囲気温度、熱風温度、相対湿度、液膜表面風速の測定位置
15 加熱ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材の片面に、第2層及び第1層をこの順に有する積層体の製造方法であって、
第1層は粒子Aを含有し、第2層は粒子Bを含有し、
粒子Aは、フッ素化合物Aにより表面処理された粒子であり、
支持基材の少なくとも片面に、粒子Aと粒子Bを含む塗料組成物を1回塗布して、1層の液膜を形成する工程(以降この工程を塗布工程とする)、及び該液膜を乾燥する工程(以降この工程を乾燥工程1とする)をこの順に有し、
乾燥工程1において、液膜表面での無指向性熱線式風速計による風速を1m/s以上、10m/s以下に保ちながら、支持基材側から加熱することを特徴とする、積層体の製造方法。
【請求項2】
下記条件1〜3を全て満たすことを特徴とする、請求項1に記載の積層体の製造方法。
条件1:塗布工程後の液膜の固形分濃度が70%に達する前に、液膜温度を40℃以上70℃以下まで上げた後、液膜温度を40℃以上70℃以下に保つ。
条件2:塗布工程後の液膜の固形分濃度が70%に達するまで、相対湿度を50%以下にする。
条件3:塗布工程後の液膜の固形分濃度が70%に達するまで、乾燥速度を0.5g/(ms)以下にする。
【請求項3】
前記乾燥工程1において、支持基材側からの加熱が、伝導伝熱方式または輻射伝熱方式によることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥工程1に続いて、乾燥速度0.07g/(ms)以下で、液膜を乾燥する工程を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記塗布工程において、塗布時の液膜厚みを2.5μm以上20μm以下とすることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−81913(P2013−81913A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224511(P2011−224511)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】