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積層体及びこれを用いたプリント配線板
説明

積層体及びこれを用いたプリント配線板

【課題】 回路パターンを良好なファインピッチで形成することができる積層体及びそれを用いたプリント配線板を提供する。
【解決手段】 表面処理層が形成されたメッキ銅層を含む積層体であって、
前記表面処理層が、Au、Pd及びPtの少なくともいずれか1種を含み、
前記表面処理層側の20nmの深さまでの表層の2価のCuの酸化物の原子数の割合である(2価のCuの酸化物の原子数)/{(1価のCuの酸化物の原子数)+(単体のCuの原子数)}(%)が80%以下である積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びこれを用いたプリント配線板に関し、特に、表面処理層が形成されたメッキ銅層を含む積層体及びこれを用いたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板はここ半世紀に亘って大きな進展を遂げ、今日ではほぼすべての電子機器に使用されるまでに至っている。近年の電子機器の小型化、高性能化ニーズの増大に伴い搭載部品の高密度実装化や信号の高周波化が進展し、プリント配線板に対して導体パターンの微細化(ファインピッチ化)や高周波対応等が求められている。
【0003】
プリント配線板は、銅基材に絶縁基板を接着させた後に、エッチングにより銅基材面に導体パターンを形成するという工程を経て製造されるのが一般的である。そのため、プリント配線板用の銅基材には良好なエッチング性が要求される。
【0004】
銅基材は、絶縁基板との非接着面に表面処理を施さないと、エッチング後の銅基材回路の銅部分が、銅基材の表面から下に向かって、すなわち絶縁基板に向かって、末広がりにエッチングされる(ダレを発生する)。通常は、回路側面の角度が小さい「ダレ」となり、特に大きな「ダレ」が発生した場合には、絶縁基板近傍で銅回路が短絡し、不良品となる場合もある。ここで、図2に、銅回路形成時に「ダレ」を生じて樹脂基板近傍で銅回路が短絡した例を示す回路表面の拡大写真を示す。
【0005】
このような「ダレ」は極力小さくすることが必要であるが、このような末広がりのエッチング不良を防止するために、エッチング時間を延長して、エッチングをより多くして、この「ダレ」を減少させることも考えられる。しかし、この場合は、すでに所定の幅寸法に至っている箇所があると、そこがさらにエッチングされることになるので、その銅箔部分の回路幅がそれだけ狭くなり、回路設計上目的とする均一な線幅(回路幅)が得られず、特にその部分(細線化された部分)で発熱し、場合によっては断線するという問題が発生する。電子回路のファインパターン化がさらに進行する中で、現在もなお、このようなエッチング不良による問題がより強く現れ、回路形成上で、大きな問題となっている。
【0006】
これらを改善する方法として、エッチング面側の銅箔に銅よりもエッチング速度が遅い金属又は合金層を形成した表面処理が特許文献1に開示されている。この場合の金属又は合金としては、Ni、Co及びこれらの合金である。回路設計に際しては、レジスト塗布側、すなわち銅箔の表面からエッチング液が浸透するので、レジスト直下にエッチング速度が遅い金属又は合金層があれば、その近傍の銅箔部分のエッチングが抑制され、他の銅箔部分のエッチングが進行するので、「ダレ」が減少し、より均一な幅の回路が形成できるという効果をもたらすという、従来技術と比較して急峻な回路形成が可能となり、大きな進歩があったと言える。
【0007】
また、特許文献2では、厚さ1000〜10000ÅのCu薄膜を形成し、該Cu薄膜の上に厚さ10〜300Åの銅よりもエッチング速度が遅いNi薄膜を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−176242号公報
【特許文献2】特開2000−269619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、回路の微細化、高密度化がさらに進行し、より急峻に傾斜する側面を有する回路が求められている。しかしながら、特許文献1に記載される技術ではこれらには対応できない。
【0010】
また、特許文献1に記載される表面処理層はソフトエッチングにより除去する必要がある。さらに、樹脂との非接着面表面処理銅箔は、積層体に加工される工程で、樹脂の貼付け等の高温処理が施される。これは表面処理層の酸化を引き起こし、結果として銅箔のエッチング性は劣化する。
【0011】
前者については、エッチング除去の時間をなるべく短縮し、きれいに除去するためには、表面処理層の厚さを極力薄くすることが必要であること、また後者の場合には、熱を受けるために、下地の銅層が酸化され(変色するので、通称「ヤケ」と言われている。)、レジストの塗布性(均一性、密着性)の不良やエッチング時の界面酸化物の過剰エッチングなどにより、パターンエッチングでのエッチング性、ショート、回路パターン幅の制御性等の不良が発生するという問題があるので、改良が必要か又は他の材料に置換することが要求されている。
【0012】
そこで、本発明は、回路パターンを良好なファインピッチで形成することができる積層体及びそれを用いたプリント配線板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、鋭意検討の結果、積層体の表層を加工して、20nmの深さまでの表層の2価のCuの酸化物の原子数の割合を所定値以下に制御することで、当該積層体に回路パターンを良好なファインピッチで形成し得ることを見出した。
【0014】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、表面処理層が形成されたメッキ銅層を含む積層体であって、前記表面処理層が、Au、Pd及びPtの少なくともいずれか1種を含み、前記表面処理層側の20nmの深さまでの表層の2価のCuの酸化物の原子数の割合である(2価のCuの酸化物の原子数)/{(1価のCuの酸化物の原子数)+(単体のCuの原子数)}(%)が80%以下である積層体である。
【0015】
本発明に係る積層体の一実施形態においては、絶縁基板、前記メッキ銅層及び前記表面処理層がこの順で形成されている。
【0016】
本発明に係る積層体の別の実施形態においては、絶縁基板、圧延銅箔、前記メッキ銅層及び前記表面処理層がこの順で形成されている。
【0017】
本発明に係る積層体の更に別の実施形態においては、銅基材、前記メッキ銅層及び前記表面処理層がこの順で形成されている。
【0018】
本発明に係る積層体の更に別の実施形態においては、前記表面処理層側の20nmの深さまでの表層の2価のCuの酸化物の原子数の割合である(2価のCuの酸化物の原子数)/{(1価のCuの酸化物の原子数)+(単体のCuの原子数)}(%)が50%以下である。
【0019】
本発明に係る積層体の更に別の実施形態においては、前記表面処理層におけるAuの被覆量が1000μg/dm2以下、Pdの被覆量が600μg/dm2以下、Ptの被覆量が1050μg/dm2以下である。
【0020】
本発明に係る積層体の更に別の実施形態においては、前記表面処理層におけるAuの被覆量が50〜1000μg/dm2、Pdの被覆量が30〜600μg/dm2、Ptの被覆量が50〜1050μg/dm2である。
【0021】
本発明に係る積層体の更に別の実施形態においては、前記表面処理層が、更にCo、Ni、Cr、Mo、Sn、V及びZnのいずれか1種以上を含む。
【0022】
本発明に係る積層体の更に別の実施形態においては、前記表面処理層の表面または前記メッキ銅層との間に、Ni、Cr、Sn、V及びZnのいずれか1種以上を含む層を備える。
【0023】
本発明に係る積層体の更に別の実施形態においては、30μmピッチ以下でエッチングファクターが4以上の回路が前記積層体の表面処理層形成側に形成されている。
【0024】
本発明は別の一側面において、前記表面処理層が形成されたメッキ銅層を含む積層体を準備する工程と、前記表面処理層の表面にレジストで回路パターンを形成する工程と、前記回路パターンを形成した積層体の表面処理層の表面を、塩化第二鉄系又は塩化第二銅系のエッチング液を用いてエッチングする工程とを含む本発明の積層体の加工方法である。
【0025】
本発明は更に別の一側面において、本発明の積層体を材料としたプリント配線板である。
【0026】
本発明に係るプリント配線板の一実施形態においては、フレキシブルプリント配線板である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、回路パターンを良好なファインピッチで形成することができる積層体及びそれを用いたプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】回路パターンの一部の表面写真、当該部分における回路パターンの幅方向の横断面の模式図、及び、該模式図を用いたエッチングファクター(EF)の計算方法の概略である。
【図2】銅回路形成時に「ダレ」を生じて樹脂基板近傍で銅回路が短絡した例を示す回路表面の拡大写真である。
【図3】Cu2p3(930−940eV程度)のピークに着目したCuO由来のCuのピークとCu2OまたはCu由来のCuのピークとの面積比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(積層体の構成)
本発明に係る積層体は、表面処理層が形成されたメッキ銅層を含む。積層体の構成は、例えば以下の(1)〜(3)の形態が挙げられる。
(1)絶縁基板、メッキ銅層及び表面処理層がこの順で形成された積層体
(2)絶縁基板、圧延銅箔、メッキ銅層及び表面処理層がこの順で形成された積層体
(3)銅基材、メッキ銅層及び表面処理層がこの順で形成された積層体
【0030】
ここで、「メッキ銅層」は、「電解メッキ銅層」、「無電解メッキ銅層」及び「電解銅箔」を含む。「電解メッキ銅層」は、銅イオンを含む電解溶液中で、被メッキ材を陰極として直流電解を行い、銅金属を陰極(被メッキ材)の表面に析出させて形成される層である。「無電解メッキ銅層」は、例えば、銅化合物と錯化剤とを含むアルカリ溶液に還元剤を加えて被メッキ材表面に銅金属を析出させて形成される層である。「電解銅箔」は、「電解メッキ銅層」の一形態であり、例えば、硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造される。
「圧延銅箔」は、圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。圧延銅箔基材の材料としてはプリント配線板の導体パターンとして通常使用されるタフピッチ銅や無酸素銅等の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金の箔であってもよい。
「銅基材」は、銅を主な材料とするもの全般が含まれ、具体的には、銅箔や銅層単独、或いはこれらを主な材料とする複合材料を示す。
なお、本明細書において用語「銅層」及び「銅箔」を単独で用いたときには銅合金層及び銅合金箔も含むものとする。
「絶縁基板」は、プリント配線板に適用可能な特性を有するものであれば特に制限を受けないが、例えば、リジッドPWB用に紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂等を使用し、FPC用にポリエステルフィルムやポリイミドフィルム等を使用する事ができる。
【0031】
上記(1)の形態の具体例としては、特に限定されないが、例えば、絶縁基板の両表面に銅層を形成又は銅箔を貼り合わせた後、プレスで貫通孔を形成し、続いて両表面の銅層又は銅箔の導通を確保するために、貫通孔壁面及び両表面の銅層又は銅箔に湿式メッキ(スルーホールメッキ)を施した積層体等が挙げられる。
上記(2)の形態の具体例としては、特に限定されないが、例えば、絶縁基板に圧延銅箔を貼り合わせた後、圧延銅箔をソフトエッチング等で減肉し、この上に電気メッキ又は無電解メッキでメッキ銅層を形成した後、表面処理層を形成した積層体等が挙げられる。
上記(3)の形態の具体例としては、特に限定されないが、例えば、圧延銅箔をソフトエッチング等で減肉し、この上に電気メッキ又は無電解メッキでメッキ銅層を形成した後、表面処理層を形成した積層体等が挙げられる。
【0032】
本発明に用いることのできるメッキ銅層の厚さについては特に制限はなく、例えば、プリント配線板用に適した厚さに適宜調節すればよい。例えば、5〜100μm程度とすることができる。但し、ファインパターン形成を目的とする場合には30μm以下、好ましくは20μm以下であり、典型的には5〜20μm程度である。
【0033】
本発明に使用するメッキ銅層は、特に限定されないが、例えば、粗化処理をしないものを用いても良い。従来は特殊めっきで表面にμmオーダーの凹凸を付けて表面粗化処理を施し、物理的なアンカー効果によって樹脂との接着性を持たせるケースが一般的であるが、一方でファインピッチや高周波電気特性は平滑な箔が良いとされ、粗化層では不利な方向に働くことがある。また、粗化処理をしないものであると、粗化処理工程が省略されるので、経済性・生産性向上の効果がある。
【0034】
(表面処理層の構成)
メッキ銅層の絶縁基板との接着面の反対側(回路形成予定面側)の表面の少なくとも一部には、Au、Pd及びPtのいずれか1種以上を微量で含む表面処理層が形成されている。このように、微量の貴金属を積層体の回路形成予定面に付着させると、形成された回路の裾引きが小さくなる。これにより、銅箔の厚みが薄くなくても裾引きが小さい回路を形成することが可能となるため、高密度実装基板の形成が可能となる。また、原料コストの観点から、更にCo、Ni、Cr、Mo、Sn、V及びZnのいずれか1種以上を含む合金や、これらの金属又は合金と貴金属との複層としてもよい。また、表面処理層の表面またはメッキ銅層との間に、Ni、Cr、Sn、V及びZnのいずれか1種以上を含む層を形成してもよい。このような層は、Cuが表面に拡散することによるメッキ銅層表面の酸化変色を防止する防錆層としての効果と、Cuが表面に拡散することを防止し、エッチング途中のレジスト剥離によるエッチング不良を防止するための下地層としての効果を有する。
【0035】
(表面処理層の同定)
表面処理層の同定はXPS、若しくはAES等表面分析装置にて表層からアルゴンスパッタし、深さ方向の化学分析を行い、夫々の検出ピークの存在によって同定することができる。
【0036】
(付着量)
表面処理層がAuで構成されている場合は、Auの付着量が1000μg/dm2以下であるのが好ましく、50〜1000μg/dm2であるのがより好ましい。表面処理層がPdで構成されている場合は、Pdの付着量が600μg/dm2以下であるのが好ましく、30〜600μg/dm2であるのがより好ましい。表面処理層がPtで構成されている場合は、Ptの付着量が1050μg/dm2以下であるのが好ましく、50〜1050μg/dm2であるのがより好ましい。表面処理層のAuの付着量が1000μg/dm2、表面処理層のPdの付着量が600μg/dm2、及び、表面処理層のPtの付着量が1050μg/dm2を超えると、それぞれ初期エッチング性に悪影響を及ぼす。表面処理層のAuの付着量が50μg/dm2未満、表面処理層のPdの付着量が30μg/dm2未満、及び、表面処理層のPtの付着量が50μg/dm2未満であると、それぞれ効果が十分でない可能性がある。
【0037】
(表層の2価のCuの酸化物の原子数の割合)
本発明者は、良好なファインピッチ回路を形成可能な積層体として、貴金属を含む表面処理層を形成した銅基材について検討をしていたところ、銅基材が銅層の場合と圧延銅箔の場合とでは、貴金属付着量が同じでもファインピッチ回路の形状に差異が生じ、圧延銅箔上に形成するほうがより良好なファインピッチ回路が形成されることを発見した。そして、このような差異の原因を検討した結果、表面処理層を形成する前の銅層及び圧延銅箔の各表層に存在する酸化銅の割合が異なることに着目した。より具体的には、本願発明のようにメッキ銅層表面に逆スパッタ処理を施した後、表面処理層を形成して積層体を作製した場合と、圧延銅箔表面に逆スパッタ処理を施した後、表面処理層を形成して積層体を作製した場合とでは、当該逆スパッタ処理の条件が同様であれば、前者の方が、積層体の表層の酸化銅の割合が10%程度多くなることに着目した。
このような知見に基づき、本発明に係る積層体は、表面処理層側の20nmの深さまでの表層の2価のCuの酸化物の原子数の割合である(2価のCuの酸化物の原子数)/{(1価のCuの酸化物の原子数)+(単体のCuの原子数)}(%)が80%以下に制御されている。ここで、上記のように2価の銅の酸化物の割合を規定しているのは、銅の酸化物は1価と2価が存在するが、1価の酸化物は化学的に不安定であり2価に変化しやすいためである。
このように、表面処理層側の20nmの深さまでの表層の2価のCuの酸化物の原子数の割合が80%以下であれば、貴金属による表面処理によって良好な層状の表面処理層が形成され、これによって良好なファインピッチ回路を形成することができる。一方、上記表面処理層側の20nmの深さまでの表層の2価のCuの酸化物の原子数の割合が80%超であれば、貴金属による表面処理によって良好な層状の表面処理層が形成されず、貴金属が粒子状となってしまい、良好なファインピッチ回路を形成することが困難となる。
また、表面処理層側の20nmの深さまでの表層の2価のCuの酸化物の原子数の割合は、好ましくは50%以下である。
【0038】
(積層体の製造方法)
本発明に係る積層体は、スパッタリング法により形成することができる。すなわち、スパッタリング法によってメッキ銅層の表面の少なくとも一部を、表面処理層により被覆する。具体的には、スパッタリング法によって、メッキ銅層のエッチング面側に銅よりもエッチングレートの低い単体金属又は合金からなる表面処理層を形成する。表面処理層は、スパッタリング法に限らず、例えば、電気めっき、無電解めっき等の湿式めっき法で形成してもよい。
【0039】
(プリント配線板の製造方法)
本発明に係るプリント配線板(PWB)を常法に従って製造することができる。以下に、プリント配線板の製造方法の例を示す。
【0040】
プリント配線板は、絶縁基板、積層体(メッキ銅層及び表面処理層)がこの順で形成されてなるが、形成順序は限定されない。すなわち、例えば、メッキ銅層上に表面処理層を形成して積層体を形成した後、この積層体を絶縁基板上に形成してもよい。また、絶縁基板上にメッキ銅層を形成した後、メッキ銅層上に表面処理層を形成してもよい。さらに、圧延銅箔を間に設ける形態では、絶縁基板上に圧延銅箔を形成した後、圧延銅箔上にメッキ銅層及び表面処理層を形成してもよく、圧延銅箔上にメッキ銅層及び表面処理層を形成したものを絶縁基板上に形成してもよい。
【0041】
より具体的な、上記積層体を絶縁基板に貼り合わせる方法としては、リジッドPWB用の場合、ガラス布などの基材に樹脂を含浸させ、樹脂を半硬化状態まで硬化させたプリプレグを用意する。積層体を表面処理層の反対側の面からプリプレグに重ねて加熱加圧させることにより行うことができる。
【0042】
フレキシブルプリント配線板(FPC)用の場合、ポリイミドフィルム又はポリエステルフィルムと積層体とをエポキシ系やアクリル系の接着剤を使って接着することができる(3層構造)。また、接着剤を使用しない方法(2層構造)としては、ポリイミドの前駆体であるポリイミドワニス(ポリアミック酸ワニス)を積層体に塗布し、加熱することでイミド化するキャスティング法や、ポリイミドフィルム上に熱可塑性のポリイミドを塗布し、その上に積層体を重ね合わせ、加熱加圧するラミネート法が挙げられる。キャスティング法においては、ポリイミドワニスを塗布する前に熱可塑性ポリイミド等のアンカーコート材を予め塗布しておくことも有効である。
【0043】
本発明に係る積層体は各種のプリント配線板(PWB)に使用可能であり、特に制限されるものではないが、例えば、導体パターンの層数の観点からは片面PWB、両面PWB、多層PWB(3層以上)に適用可能であり、絶縁基板材料の種類の観点からはリジッドPWB、フレキシブルPWB(FPC)、リジッド・フレックスPWBに適用可能である。
【0044】
また、上述のような上記積層体を絶縁基板に貼り合わせる方法以外では、絶縁基板上にスパッタリング、めっきでメッキ銅層を形成し、このメッキ銅層上に表面処理層を形成してメタライジング材を作製することができる。
【0045】
メッキ銅層上に表面処理層を設けて積層体を形成する際には、メッキ銅層の表面処理層形成側表面に逆スパッタ等で適宜必要な前処理を行う。この前処理の程度は、その後に形成する回路パターンのファインピッチ化に影響を与える。すなわち、逆スパッタ装置の出力や逆スパッタ時間等を調整することで逆スパッタ強度を上げて、メッキ銅層表面の酸化銅を十分に除去することで、良好な層状の表面処理層を形成することができ、これによって回路パターンの良好なファインピッチ化が可能となる。
【0046】
続いて、積層体の加工方法について説明する。まず、積層体の表面処理層表面にレジストを塗布し、マスクによりパターンを露光し、現像することによりレジストパターンを形成する。続いて、パターンを形成した積層体の表面処理層の表面を、塩化第二鉄系又は塩化第二銅系のエッチング液を用いてエッチングする。このエッチングでは、積層体にエッチング液を噴霧、またはエッチング液に浸漬して行うことができる。このとき、自然電位が高い(腐食されにくい)表面処理層側より、腐食されやすい回路の底部が優先的にエッチングされ、回路の上部(トップ部)の幅が表面処理を施さない場合よりも広く残り、エッチングファクターが高い回路を形成することができる。これにより銅の不必要部分が除去されて、次いでエッチングレジストを剥離・除去して回路パターンを露出することができる。
積層体に回路パターンを形成するために用いるエッチング液に対しては、表面処理層のエッチング速度は、銅よりも十分に小さいためエッチングファクターを改善する効果を有する。エッチング液は、塩化第二鉄系又は塩化第二銅系のエッチング液等を用いることができる。
また、表面処理層を形成する前に、あらかじめ銅箔基材表面に耐熱層を形成しておいてもよい。
【0047】
上述のように表面処理層側からエッチングされて形成されたプリント配線板の積層体表面の回路は、レジスト及び積層体の界面近傍のサイドエッチングが抑制されて、良好なファインピッチ回路に形成することができ、好ましくは、30μmピッチ以下でエッチングファクターが4以上の回路とすることができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例を示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
【0049】
(例1:実施例1〜25)
(メッキ銅層への表面処理層の形成)
実施例1〜25のメッキ銅層として、厚さ8μmのメタライジングCCL(JX日鉱日石金属製マキナス、銅層側Ra0.01μm、タイコート層の金属付着量Ni1780μg/dm2、Cr360μg/dm2)を用意した。
【0050】
メッキ銅層の表面に付着している薄い酸化膜を逆スパッタにより取り除き、Au、Pd、Pt、Co、Ni、Cr、Mo、Sn、V、Zn又はこれらの合金のターゲットを以下の装置及び条件でスパッタリングすることにより、メッキ銅層表面に表面処理層を形成した。スパッタリングに使用した各種金属の単体は純度が3Nのものを用いた。また、NiV(Vは7質量%)、NiZn(Znは20質量%)、NiSn(Snは20質量%)等を具体的な合金ターゲットとして用いた。
・装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバック社、型式MNS−6000)
・到達真空度:1.0×10-5Pa
・スパッタリング圧:0.2Pa
・逆スパッタ強度:電力(W)と時間(秒)との積を前処理強度(逆スパッタ強度)とした。また、25W×10秒=250W・秒を「逆スパッタ強度1」とした。
例えば、逆スパッタを50Wで60秒行った場合は、50W×60秒=3000W・秒となり、逆スパッタ強度は3000/250=12となる。
・スパッタリング電力:50W
・成膜速度:各ターゲットについて一定時間約0.2μm成膜し、3次元測定器で厚さを測定し、単位時間当たりのスパッタレートを算出した。
【0051】
<付着量の測定>
表面処理層のAu、Pd、Pt、Niの付着量測定は、王水で銅層の半分程度を溶解させ、その溶解液を希釈し、原子吸光分析法で行った。
【0052】
<XPSによる測定>
表層20nmまでの酸化銅の割合を算出した際のXPS稼動条件を以下に示す。
・装置:XPS測定装置(アルバックファイ社、型式5600MC)
・到達真空度:3.8×10-7Pa
・励起源:単色化 AlKα
・出力:210W
・検出面積:800μmφ
・入射角:15度
・取出角:75度
・中和条件なし
・スパッタ条件
イオン種:Ar+
加速電圧:3kV
掃引領域:3mm×3mm
レート:2.0nm/min(SiO2換算)
【0053】
Cu2p3(930−940eV程度)のピークに着目し、CuO由来のCuのピークとCu2OまたはCu由来のCuのピークを解析ソフトMultiPak(アルバックファイ社製)により分離する(図3)。面積比から、(2価のCuの酸化物の原子数)/{(1価のCuの酸化物の原子数)+(0価のCuの酸化物の原子数)}(%)を算出した。
【0054】
(エッチングによる回路形状)
銅箔の表面処理層が形成された面に感光性レジスト塗布及び露光工程により10本の18μm幅の回路を印刷し、銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を以下の条件で実施した。
【0055】
<エッチング条件>
エッチングは、下記の条件でスプレーエッチング装置を用いて行った。
・塩化第二銅水溶液(2.0mol/L)+塩酸(2.3mol/L)
・スプレー圧:0.2MPa
・液温:50℃
(30μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=18μm/12μm
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:12μm
・エッチング時間:20〜70秒
・エッチング終点の確認:時間を変えてエッチングを数水準行い、光学顕微鏡で回路間に銅が残存しなくなるのを確認し、これをエッチング時間とした。
エッチング後、45℃のNaOH水溶液(100g/L)に1分間浸漬させてレジストを剥離した。
【0056】
<エッチングファクターの測定条件>
エッチングファクターは、末広がりにエッチングされた場合(ダレが発生した場合)、回路が垂直にエッチングされたと仮定した場合の、銅層からの垂線と樹脂基板との交点からのダレの長さの距離をaとした場合において、このaと銅層の厚さbとの比:b/aを示すものであり、この数値が大きいほど、傾斜角は大きくなり、エッチング残渣が残らず、ダレが小さくなることを意味する。図1に、回路パターンの一部の表面写真と、当該部分における回路パターンの幅方向の横断面の模式図と、該模式図を用いたエッチングファクターの計算方法の概略とを示す。このaは回路上方からのSEM観察により測定し、エッチングファクター(EF=b/a)を算出した。このエッチングファクターを用いることにより、エッチング性の良否を簡単に判定できる。さらに、傾斜角θは上記手順で測定したa及び銅層の厚さbを用いてアークタンジェントを計算することにより算出した。これらの測定範囲は回路長600μmで、12点のエッチングファクター、その標準偏差及び傾斜角θの平均値を結果として採用した。
【0057】
(例2:実施例26)
実施例26として例1の手順で銅層の酸化物を取り除き、NiV層を形成した後に、Pd層をスパッタリングにより形成した。その後、エッチング性を評価した。
【0058】
(例3:比較例1)
比較例1(ブランク材)として、8μm厚のメタライジングCCL(JX日鉱日石金属製マキナス、銅層側Ra0.01μm、タイコート層の金属付着量Ni1780μg/dm2、Cr360μg/dm2)を準備した。次に、銅層に感光性レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅層の不要部分を除去するエッチング処理を実施した。
【0059】
(例4:比較例2〜4)
比較例2〜4として、8μm厚のメタライジングCCL(JX日鉱日石金属製マキナス、銅層側Ra0.01μm、タイコート層の金属付着量Ni1780μg/dm2、Cr360μg/dm2)を準備し、例1と同じ手順で銅層表面に種々の金属で構成された表面処理層をスパッタリングで形成し、エッチングで回路を形成した。
例1〜4の各測定条件及び測定結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
なお、回路の断面形状は、正確には斜辺が直線である台形ではない。表には実施例及び比較例の回路の傾斜角が記載されているが、これはあくまで図1に示した定義式によって算出した値である。
【0062】
(評価)
実施例1〜26は、いずれも表面処理層側の20nmの深さまでの表層の2価のCuの酸化物の原子数の割合である(2価のCuの酸化物の原子数)/{(1価のCuの酸化物の原子数)+(単体のCuの原子数)}(%)が80%以下であり、エッチングファクターが大きく、矩形方に近い断面の回路を形成することができた。
表面処理が施されていない比較例1は、裾引きが大きい回路となった。
比較例2〜4は、いずれも表面処理層側の20nmの深さまでの表層の2価のCuの酸化物の原子数の割合である(2価のCuの酸化物の原子数)/{(1価のCuの酸化物の原子数)+(単体のCuの原子数)}(%)が80%超であり、エッチングファクターが小さく、矩形方に近い断面の回路を形成することができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理層が形成されたメッキ銅層を含む積層体であって、
前記表面処理層が、Au、Pd及びPtの少なくともいずれか1種を含み、
前記表面処理層側の20nmの深さまでの表層の2価のCuの酸化物の原子数の割合である(2価のCuの酸化物の原子数)/{(1価のCuの酸化物の原子数)+(単体のCuの原子数)}(%)が80%以下である積層体。
【請求項2】
絶縁基板、前記メッキ銅層及び前記表面処理層がこの順で形成されている請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
絶縁基板、圧延銅箔、前記メッキ銅層及び前記表面処理層がこの順で形成されている請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
銅基材、前記メッキ銅層及び前記表面処理層がこの順で形成された請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記表面処理層側の20nmの深さまでの表層の2価のCuの酸化物の原子数の割合である(2価のCuの酸化物の原子数)/{(1価のCuの酸化物の原子数)+(単体のCuの原子数)}(%)が50%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記表面処理層におけるAuの被覆量が1000μg/dm2以下、Pdの被覆量が600μg/dm2以下、Ptの被覆量が1050μg/dm2以下である請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
前記表面処理層におけるAuの被覆量が50〜1000μg/dm2、Pdの被覆量が30〜600μg/dm2、Ptの被覆量が50〜1050μg/dm2である請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記表面処理層は、更にCo、Ni、Cr、Mo、Sn、V及びZnのいずれか1種以上を含む請求項1〜7のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
前記表面処理層の表面または前記メッキ銅層との間に、Ni、Cr、Sn、V及びZnのいずれか1種以上を含む層を備えた請求項1〜8のいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
30μmピッチ以下でエッチングファクターが4以上の回路が前記積層体の表面処理層形成側に形成されている請求項1〜9のいずれかに記載の積層体。
【請求項11】
前記表面処理層が形成されたメッキ銅層を含む積層体を準備する工程と、
前記表面処理層の表面にレジストで回路パターンを形成する工程と、
前記回路パターンを形成した積層体の表面処理層の表面を、塩化第二鉄系又は塩化第二銅系のエッチング液を用いてエッチングする工程と、
を含む請求項1〜10のいずれかに記載の積層体の加工方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の積層体を材料としたプリント配線板。
【請求項13】
フレキシブルプリント配線板である請求項12に記載のプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−235061(P2012−235061A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104424(P2011−104424)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】