説明

積層体及びその製造方法

【目的】 耐水性で、かつ、高湿度条件下での酸素ガスバリヤー性に優れたフィルム層を有する多層の積層体及びその製造方法の提供。
【構成】 熱可塑性樹脂から形成された層(B)の上に、ポリ(メタ)アクリル酸及びポリ(メタ)アクリル酸の部分中和物からなる群より選ばれる少なくとも一種のポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと糖類とを重量比95:5〜20:80の範囲内で含有する溶液を塗工し、乾燥して皮膜を形成させた後、該皮膜を100℃(373K)以上の温度で熱処理することにより、温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過係数が5.00×10-3ml(STP)・cm/m2・h・atm{Pa}以下のガスバリヤー性フィルム(A)を形成させる工程を含む少なくとも隣接した(A)及び(B)の2層の積層構造を有する積層体の製造方法及その積層体。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ガスバリヤー性に優れた積層体とその製造方法に関し、さらに詳しくは、ポリ(メタ)アクリル酸及び/またはその部分中和物と糖類を含む混合物から形成された耐水性とガスバリヤー性に優れたフィルムをガスバリヤー性層として含む多層の積層体及びその製造方法に関する。本発明の積層体は、ガスバリヤー性層が耐水性(水や沸騰水に不溶性)及び酸素ガスバリヤー性に優れており、しかも他の層により耐熱性、耐湿性、機械的強度、シール性などが付与されているため、酸化等の酸素による品質の劣化を受け易い、水分や油分を多量に含んだ食品等の包装材料の用途に好適である。
【0002】
【従来の技術】包装材料には、一般に、内容物の品質劣化を防ぐ機能が要求されるが、特に内容物が酸化劣化しやすい食品包装材料などの分野では、優れた酸素ガスバリヤー性を有することが求められる。現在、包装材料分野において、酸素ガスバリヤー性に優れたフィルムとして、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体の部分けん化物(EVOH)フィルム、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルムなどが汎用されている。これらの中でも、PVDCフィルムは、PVAフィルムやEVOHフィルムと違って、ガスバリヤー性の湿度依存性がほとんどないという特徴を有しているが、焼却時に塩素ガスを発生するため、環境上の問題がある。また、PVAフィルムは、乾燥状態での酸素ガスバリヤー性が一般の合成樹脂中で最も優れているが、高湿度条件下では吸湿により、この酸素ガスバリヤー性が著しく低下し、しかも沸騰水に溶解するという欠点を有している。
【0003】ポリ(メタ)アクリル酸またはその部分中和物は、水溶性の高分子であり、その溶液から流延法により製膜が可能である。ポリ(メタ)アクリル酸のフィルムは、乾燥条件下での酸素ガスバリヤー性に優れている。しかしながら、このフィルムは、親水性が強いため、高湿度条件下では、酸素ガスバリヤー性が著しく損なわれ、しかも水に容易に溶解してしまう。米国特許第2,169,250号には、PVA水溶液中でメタクリル酸モノマーを重合させ、得られたPVAとポリメタクリル酸との混合物をガラス板上に流延し、水を蒸発させた後、140℃で5分間加熱してPVAとポリメタクリル酸とを反応させて水不溶化フィルムを得たことが記載されている(実施例I)。しかし、このような熱処理条件では、水不溶化することはできても、高湿度条件下でのガスバリヤー性に優れたフィルムを得ることはできない。
【0004】一方、澱粉類は、ポリ(メタ)アクリル酸と同様に親水性の高分子であり、水溶解性が良好なものは、その水溶液から流延法により容易にフィルムを製膜することができる。澱粉類のフィルムは、耐油性や酸素ガスバリヤー性に優れているが、親水性が強いため、高湿度条件下では、酸素ガスバリヤー性が著しく損なわれ、機械的強度や耐水性にも劣るという欠点を有している。最近、澱粉類と、ポリエチレン、PVA、EVOHなどの各種熱可塑性樹脂との混合物からフィルムやシートを製造する方法が提案されている(例えば、特開平4−90339号、特開平4−100913号、特開平4−114044号、特開平4−114043号、特開平4−132748号、特開平5−93092号、特開平5−92507号)。しかし、これらのフィルムやシートは、耐水性または高湿度条件下での酸素ガスバリヤー性が不十分なものである。
【0005】本発明者らは、耐水性及び高湿度条件下での酸素ガスバリヤー性に優れたフィルムを作成するために検討を重ねた結果、ポリ(メタ)アクリル酸及び/またはその部分中和物と澱粉類などの糖類との混合物からフィルムを形成し、これを特定の条件下で熱処理することにより、それぞれの単体フィルムの場合と比較して、乾燥条件下ではもとより、高湿度条件下でも顕著に改善された酸素ガスバリヤー性を有するフィルムが得られることを見いだした(特願平6−194940号)。しかし、このようにして得られたフィルム単体では、包装材料として要求されるシール性や機械的強度、耐湿性などが十分ではないため、更なる改良が求められていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、耐水性で、かつ、高湿度条件下での酸素ガスバリヤー性に優れたフィルムをガスバリヤー性層として含有する多層の積層体を提供することにある。より具体的に、本発明の目的は、ポリ(メタ)アクリル酸及び/またはその部分中和物と澱粉類などの糖類との混合物から形成された耐水性で酸素ガスバリヤー性に優れたフィルムをガスバリヤー性層として含有する多層の積層体を提供することにある。
【0007】本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、ポリ(メタ)アクリル酸及び/またはその部分中和物と糖類との混合物から製膜され、かつ、特定の条件で熱処理することにより形成された耐水性で酸素ガスバリヤー性に優れたフィルムをガスバリヤー性層とし、これに隣接して熱可塑性樹脂からなる層を設けた少なくとも2層の積層構造を有する積層体が上記目的に適していることを見いだした。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】かくして、本発明によれば、ポリ(メタ)アクリル酸及びポリ(メタ)アクリル酸の部分中和物からなる群より選ばれる少なくとも一種のポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと糖類とを重量比95:5〜20:80の範囲内で含有する混合物から形成されたフィルムであって、温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過係数が5.00×10-3ml(STP)・cm/m2・h・atm{Pa}以下のガスバリヤー性フィルム(A)が、熱可塑性樹脂から形成された層(B)に隣接して積層された少なくとも2層の積層構造を有する積層体が提供される。
【0009】また、本発明によれば、熱可塑性樹脂から形成された層(B)の上に、ポリ(メタ)アクリル酸及びポリ(メタ)アクリル酸の部分中和物からなる群より選ばれる少なくとも一種のポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと糖類とを重量比95:5〜20:80の範囲内で含有する溶液を塗工し、乾燥して皮膜を形成させた後、該皮膜を100℃(373K)以上の温度で熱処理することにより、温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過係数が5.00×10-3ml(STP)・cm/m2・h・atm{Pa}以下のガスバリヤー性フィルム(A)を形成させる工程を含む少なくとも隣接した(A)及び(B)の2層の積層構造を有する積層体の製造方法が提供される。
【0010】以下、本発明について詳述する。
ガスバリヤー性フィルム本発明では、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと糖類とを重量比95:5〜20:80の範囲内で含有する混合物から形成されたフィルムであって、温度30℃、相対湿度80%(80%RH)の条件下で測定した酸素(酸素ガス)透過係数が5.00×10-3ml(STP)・cm/m2・h・atm{Pa}以下のガスバリヤー性フィルムを積層体のガスバリヤー性層として使用する。
【0011】本発明で使用するポリ(メタ)アクリル酸は、カルボキシル基を2個以上含有する化合物であって、具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体、あるいはこれらの2種以上の混合物などである。好適なものとして、アクリル酸またはメタクリル酸のホモポリマーや両者のコポリマーを挙げることができる。ポリ(メタ)アクリル酸の数平均分子量は、特に限定されないが、2,000〜250,000の範囲が好ましい。
【0012】ポリ(メタ)アクリル酸の部分中和物は、ポリ(メタ)アクリル酸のカルボキシル基をアルカリで部分的に中和する(即ち、カルボン酸塩とする)ことにより得ることができる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウムなどが挙げられる。部分中和物は、通常、ポリ(メタ)アクリル酸の水溶液にアルカリを添加することにより得ることができる。この部分中和物は、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩などである。
【0013】ポリ(メタ)アクリル酸とアルカリの量比を調節することにより、所望の中和度とすることができる。ポリ(メタ)アクリル酸の部分中和物の中和度は、得られるフィルムの酸素ガスバリヤー性の程度を基準として、選択することが好ましい。この中和度が0〜20%の場合には、熱処理条件及び両成分の混合割合を選択することにより、ガスバリヤー性に優れたフィルムを得ることができる。しかし、中和度が20%を越える場合には、ガスバリヤー性が低下する傾向を示す。したがって、ガスバリヤー性の観点からは、ポリ(メタ)アクリル酸の部分中和物の中和度は、通常、20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは5〜15%とすることが望ましい。なお、中和度は、下記の式により求めることができる。
中和度=(X/Y)×100X:部分中和されたポリ(メタ)アクリル酸1g中の中和されたカルボキシル基のモル数である。
Y:部分中和する前のポリ(メタ)アクリル酸1g中のカルボキシル基のモル数である。
【0014】糖 類本発明では、糖類(糖質類ともいう)として、単糖類、オリゴ糖類、及び多糖類を使用する。これらの糖類には、糖アルコールや各種置換体・誘導体なども包含される。これらの糖類は、水に溶解性のものが好ましい。
【0015】<単糖類>単糖類とは、糖類のうちで加水分解によってそれ以上簡単な分子にならない基本物質で、オリゴ糖類や多糖類の構成単位となるものである。単糖類は、通常、一般式Cn2nnで表されるが、そのうち、炭素数(n)が2、3、4、5、6、7、8、9及び10であるものを、それぞれジオース、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、オクトース、ノノース、及びデコースと呼ぶ。
【0016】単糖類は、アルデヒド基を持つものをアルドース、ケトン基を持つものをケトースと分類する。n=3以上のものは、不斉炭素原子を持ち、不斉炭素の数に応じて立体異性体が多数あり得るが、天然に知られているものはその一部である。天然に存在するものは、ペントースとヘキソースが多い。本発明で使用する単糖類としては、n=5以上の鎖式多価アルコールのアルデヒドであるアルドースが、天然に多量に存在するために好ましい。このような単糖類としては、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、キシロースなどが挙げられるが、その中でも、グルコースとガラクトースがより好ましい。単糖類は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】<糖アルコール>糖アルコールとは、アルドースまたはケトースを還元して得られるポリヒドロキシアルカンである。本発明で使用する糖アルコールとしては、鎖式多価アルコールが好ましい。このような糖アルコールは、一般式Cn2n+1nで表すことができる。nが3、4、5、6、7、8、9及び10の場合、それぞれトリトール、テトリトール、ペンチトール、ヘキシトール、ヘプチトール、オクチトール、ノニトール、及びデシトールと呼ぶ。それぞれの糖アルコールには、不斉炭素原子の数に応じて立体異性体が多数存在する。本発明では、n=3〜6の糖アルコールを用いることが好ましい。糖アルコールの具体例としては、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、キシリトール、エリトリトール、グリセリンなどを挙げることができる。糖アルコールは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】<オリゴ糖類>2個以上10個ぐらいまでの単糖がグリコシド結合によって結ばれた構造をもつものをオリゴ糖(少糖)という。単糖の数によって、二糖、三糖、四糖、五糖などに分類される。具体例としては、スクロース、ラクトース、トレハロース、セロビオース、マルトース、ラフィノース、スタキオースなどが挙げられる。また、これらのオリゴ糖の末端をアルコール化したもの(末端アルコール化オリゴ糖、例えば、マルチトールなど)も使用できる。
【0019】<多糖類>多糖類とは、単糖類がポリグリコシル化した高分子化合物(重合度10以上)の総称であり、構成糖の種類が1種の場合をホモ多糖(ホモグリカン)、2種以上のものをヘテロ多糖(ヘテログリカン)という。多糖類は、動物・植物・微生物界に、貯蔵多糖(澱粉類など)、構造多糖(セルロースなど)、機能多糖(ヘパリンなど)として広く存在する。天然多糖類は、主にアルドヘキソース及びアルドペントースを構成単位とし、それらが、グリコシド結合で直鎖状、分岐状または環状に繋がった高分子化合物である。アルドペントース及びアルドヘキソースは、C1位のアルデヒドとC5位のアルコールとの間で、分子内ヘミアセタール結合によりピラノース環と呼ばれる6員環構造を形成する。天然多糖類分子中のアルドヘキソース及びアルドペントースは、主にこのピラノース環構造をとっている。
【0020】天然多糖類の構成単位であるアルドヘキソース及びアルドペントースには、中性単糖の他、中性単糖の硫酸エステル、りん酸エステル、その他有機酸エステルやメチルエーテル、第一アルコール基だけをカルボキシル基に酸化したウロン酸、アルドヘキソースのC2位の水酸基がアミノ基に置換されたヘキソサミンやその誘導体としてN−アセチルヘキソサミン、C3位とC6位の水酸基間でエーテルを形成した3,6無水化アルドヘキソース等が含まれる。天然多糖類は、動植物界に広く分布し、植物中には、高等植物や海藻類の細胞壁構成成分及び細胞壁構成に関与しないもの、微生物類の細胞構成成分として存在する。高等植物や海藻類の細胞壁構成に関与しないものとしては、細胞液に含まれる粘質物や澱粉等の貯蔵物質がある。動物中では、グリコーゲン等の貯蔵物質やヘパリンやコンドロイチン硫酸等の粘液の構成成分として存在する。
【0021】天然多糖類をその構成成分によって分類すると、中性多糖、酸性多糖、塩基性多糖に分類される。中性多糖には、ホモ多糖として、マンナンやグルカンがある。また、ヘテロ多糖としては、ヘキソースのみからなるものがコンニャクやグァラン等に含まれており、ペントースのみからなるものがキシランやアラボキシラン等に含まれている。一方、ヘキソースとペントースを含むものとしてはタマリンドやナシカズラ等が知られている。酸性多糖としては、ウロン酸のみを含むもの、ガラツロン酸と中性糖を含むものとしてトロロアオイやペクチン等が、グルクロン酸と中性糖を含むものとしてカミツレ、クサスギカズラ等があり、その他に中性糖の硫酸エステル、りん酸エステル、有機酸エステル、メチルエーテルや3,6無水物を含む酸性多糖がある。塩基性多糖としては、グルコサミンやガラクトサミンを構成単糖として含むものがある。
【0022】本発明で使用する多糖類には、これら天然多糖類の他に、これらの多糖類を有機酸や無機酸、さらにはそれらの多糖類の加水分解酵素を触媒として、固相、液相または固液混合相にて、必要に応じて熱を加えることにより、加水分解して得られたもの、天然多糖類及びそれらに前述の加水分解処理をほどこしたものに、さらに加工処理を加えたものも含まれる。
【0023】天然多糖類やそれらの加水分解物に対する加工処理としては、以下のようなものが例示される。
■無機酸や有機酸によるエステル化処理やアリルエーテル化、メチルエーテル化、カルボキシメチルエーテル化等のエーテル化処理。
■カチオン化処理:例えば、天然多糖類やそれらの加水分解物と、2−ジエチルアミノエチルクロライドや2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドとを反応させる方法が挙げられる。
■架橋処理:例えば、ホルムアルデヒド、エピクロルヒドリン、りん酸、アクロレイン等を用いて架橋する方法が挙げられる。
■グラフト化処理:例えば、天然多糖類やそれらの加水分解物に、各種モノマーをグラフト重合させる方法が挙げられる。モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、t−ブチルビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、アクリロニトリル、スチレン、無水マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0024】これら天然多糖類及びその加水分解生成物ならびにそれらの加工処理生成物の中でも、水に可溶なものが好ましい。また、水に可溶な天然多糖類及びその加水分解生成物ならびにそれらの加工処理生成物の中でも、その構成単糖がグルコースであるホモ多糖類がより好ましい。グルコースのホモ多糖類としては、例えば澱粉類、セルロース類、デキストラン、プルラン、水溶性のキチン類、キトサン類等がある。
【0025】本発明では、前記天然多糖類及びその加水分解生成物ならびにそれらの加工処理生成物の代わりに、それらの糖アルコールを用いることができる。ここでいう天然多糖類及びその加水分解生成物ならびにそれらの加工処理生成物の糖アルコールとは、それらの還元性末端のC1位のカルボニル基を還元してアルコールにしたものをいう。それ以外にも、本発明では、糖の分子鎖が環状につながったシクロデキストリン等の糖類も用いることができる。本発明で使用する多糖類は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】<澱粉類>澱粉類は、前記多糖類に包含されるが、本発明で使用される澱粉類について、以下により詳細に説明する。本発明で使用する澱粉類としては、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチトウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉などの生澱粉(未変性澱粉)のほか、各種の加工澱粉がある。
【0027】加工澱粉としては、例えば、■アルファー化澱粉、分離精製アミロース、分離精製アミロペクチン、湿熱処理澱粉などの物理的変性澱粉、■加水分解デキストリン、酵素分解デキストリン、アミロースなどの酵素変性澱粉、■酸処理澱粉、次亜塩素酸酸化澱粉、ジアルデヒド澱粉などの化学分解変性澱粉、■エステル化澱粉(酢酸エステル化澱粉、こはく酸エステル化澱粉、硝酸エステル化澱粉、りん酸エステル化澱粉、尿素りん酸エステル化澱粉、キサントゲン酸エステル化澱粉、アセト酢酸エステル化澱粉等)、エーテル化澱粉(アリルエーテル化澱粉、メチルエーテル化澱粉、カルボキシメチルエーテル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、ヒドロキシプロピルエーテル化澱粉等)、カチオン化澱粉(澱粉と2−ジエチルアミノエチルクロライドとの反応物、澱粉と2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドとの反応物等)、架橋澱粉(ホルムアルデヒド架橋澱粉、エピクロルヒドリン架橋澱粉、りん酸架橋澱粉、アクロレイン架橋澱粉等)などの化学変性澱粉、■各種澱粉類にモノマーをグラフト重合したグラフト化澱粉〔モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、t−ブチルビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、アクリロニトリル、スチレン、無水マレイン酸、イタコン酸等がある。〕などが挙げられる。これらの澱粉類の中でも、水に可溶性の加工澱粉が好ましい。澱粉類は、含水物であってもよい。また、これらの澱粉類は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】ガスバリヤー性フィルム(A)ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと糖類との混合物を得るには、各成分を水に溶解させる方法、各成分の水溶液を混合する方法、糖類水溶液中で(メタ)アクリル酸モノマーを重合させた後、所望によりアルカリで中和する方法、などが採用される。ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと糖類とは、水溶液にした場合、均一な混合溶液が得られる。水以外に、アルコールなどの溶剤、あるいは水とアルコールなどとの混合溶剤を用いてもよい。
【0029】これらの混合物からフィルムを形成する方法は、特に限定されないが、例えば、混合物の水溶液をガラス板やプラスチックフィルム等の支持体上に流延法などにより塗工し、乾燥して皮膜を形成させる方法、あるいは混合物の高濃度の水溶解液をエキストルーダーにより吐出圧力をかけながら細隙から膜状に流延する方法などにより塗工し、含水フィルムを回転ドラムまたはベルト上で乾燥する方法(押出法)などがある。これらの製膜法の中でも、特に、溶液流延法(キャスト法)は、透明性に優れた乾燥皮膜を容易に得ることができるため好ましい。
【0030】溶液流延法を採用する場合には、固形分濃度は、通常、1〜30重量%、好ましくは5〜30重量%程度とする。水溶液または水溶解液を作成する場合、所望によりアルコールなど水以外の溶剤や柔軟剤等を適宜添加してもよい。また、予め、可塑剤や熱安定剤等を少なくとも一方の成分に配合しておくこともできる。フィルムの厚みは、使用目的に応じて適宜定めることができ、特に限定されないが、通常、0.1〜500μm、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは0.5〜50μm程度である。
【0031】ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと糖類との混合比(重量比)は、酸素ガスバリヤー性の観点から、95:5〜20:80であり、好ましくは90:10〜40:60、より好ましくは85:15〜50:50である。この範囲内において、高湿度条件下でも優れた酸素ガスバリヤー性を有するフィルムが得られる。ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと糖類との混合物から耐水性及び酸素ガスバリヤー性に優れたフィルムを得るには、混合物の溶液を用いて製膜した後、乾燥皮膜を特定の条件で熱処理することが必要である。酸素透過度が小さなフィルムを作成するには、熱処理温度が高い場合には、比較的短時間でよいが、熱処理温度が低くなるほど長時間を必要とする。高湿度条件下でも実用性のあるガスバリヤー性フィルムとしては、フィルム厚3μm、30℃、80%RHでの酸素透過度が400ml(STP)/m2・day・atm{Pa}以下であることが望ましい。この酸素透過度は、酸素透過係数5.00×10-3ml(STP)・cm/m2・h・atm{Pa}以下に対応する。
【0032】熱処理温度、熱処理時間、及び酸素透過度に関する実験データを整理すると、前記以下の酸素透過係数をポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと糖類との混合物フィルムにより達成するには、乾熱雰囲気中、熱処理温度と熱処理時間が下記の関係式(1)及び(2)を満足する条件で乾燥皮膜を熱処理することが必要であることが判明した。このような熱処理により、乾燥皮膜は、水及び沸騰水に対して不溶性となり、耐水性が付与される。
(1)logt≧−0.0622×T+28.48(2)373≦T≦623〔式中、tは、熱処理時間(分)で、Tは、熱処理温度(K)である。〕この熱処理は、例えば、フィルムまたは支持体とフィルムの積層物を所定温度に保持したオーブン中に所定時間入れることにより行うことができる。また、所定温度に保持したオーブン中を所定時間内で通過させることにより、連続的にフィルムの熱処理を行ってもよい。
【0033】本発明において、30℃、80%RHの条件下(フィルム厚み3μm)で測定した酸素透過度が100ml(STP)/m2・day・atm{Pa}以下となる好ましい酸素ガスバリヤー性を達成するためには、上記関係式(1)にかえて下記の関係式(3)を満足させる熱処理条件を採用すればよい。Tは、上記関係式(2)を満足するものとする。
(3)logt≧−0.0631×T+29.32熱処理条件(3)によって、酸素透過係数(30℃、80%RH)が1.25×10-3ml(STP)・cm/m2・h・atm{Pa}以下の耐水性ガスバリヤー性フィルムを得ることができる。
【0034】30℃、80%RHの条件下(フィルム厚み3μm)で測定した酸素透過度が10ml(STP)/m2・day・atm{Pa}以下となる酸素ガスバリヤー性を達成するためには、前記関係式(1)にかえて下記の関係式(4)を満足させる熱処理条件を採用すればよい。Tは、上記関係式(2)を満足するものとする。
(4)logt≧−0.0645×T+30.71熱処理条件(4)によって、酸素透過係数(30℃、80%RH)が1.25×10-4ml(STP)・cm/m2・h・atm{Pa}以下の耐水性ガスバリヤー性フィルムを得ることができる。
【0035】30℃、80%RHの条件下(フィルム厚み3μm)で測定した酸素透過度が1ml(STP)/m2・day・atm{Pa}以下となる酸素ガスバリヤー性を達成するためには、前記関係式(1)にかえて下記の関係式(5)を満足させる熱処理条件を採用すればよい。Tは、上記関係式(2)を満足するものとする。
(5)logt≧−0.0659×T+32.11熱処理条件(5)によって、酸素透過係数(30℃、80%RH)が1.25×10-5ml(STP)・cm/m2・h・atm{Pa}以下の耐水性ガスバリヤー性フィルムを得ることができる。
【0036】熱処理手段としては、オーブンなどの乾熱雰囲気だけではなく、例えば、熱ロールまたは熱ロール群と接触させる方法なども採用できる。乾燥皮膜を熱ロールと接触させる場合、乾熱雰囲気下におけるのと比較して、より短時間で効率よく熱処理を行うことができる。熱ロールを使用して熱処理を行う場合、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと糖類との混合物から形成した乾燥皮膜を、下記の関係式(a)及び(b)を満足する条件で熱処理することにより、酸素透過係数(30℃、80%RH)が1.25×10-3ml(STP)・cm/m2・h・atm{Pa}以下の耐水性ガスバリヤー性フィルムを得ることができる。
(a)logt≧−0.0041×T+0.20(b)373≦T≦623〔式中、tは、熱処理時間(分)で、Tは、熱処理温度(K)である。〕
【0037】酸素透過係数(30℃、80%RH)が1.25×10-4ml(STP)・cm/m2・h・atm{Pa}以下の耐水性ガスバリヤー性フィルムを得るためには、上記関係式(a)にかえて、下記の関係式(c)を満足させる条件で熱処理すればよい。Tは、上記関係式(b)を満足するものとする。
(c)logt≧−0.0344×T+15.9酸素透過係数(30℃、80%RH)が1.25×10-5ml(STP)・cm/m2・h・atm{Pa}以下の耐水性ガスバリヤー性フィルムを得るためには、上記関係式(a)にかえて、下記の関係式(d)を満足させる条件で熱処理すればよい。Tは、上記関係式(b)を満足するものとする。
(d)logt≧−0.0648×T+31.6酸素透過係数〔ml(STP)・cm/m2・h・atm{Pa}〕は、フィルム厚さ3μmでの酸素透過度〔ml(STP)/m2・day・atm{Pa}〕に、1.25×10-5・cmを乗ずることにより求めることができる。
【0038】いずれの熱処理法においても、熱処理温度(T)は、373〜623K(100〜350℃)の範囲から選択される。この熱処理温度が低い範囲では、高度のガスバリヤー性フィルムを得るには、非常に長時間の熱処理時間を必要とし、生産性が低下する。熱処理温度が高くなるほど、短い熱処理時間で高度のガスバリヤー性を得ることができるが、高過ぎると変色や分解のおそれがある。そこで、熱処理温度(T)の上限は、好ましくは573K(300℃)である。また、熱処理温度(T)の下限は、好ましくは433K(160℃)である。熱処理時間の下限は、所定の熱処理温度において、好ましくは酸素透過係数(30℃、80%RH)が5.00×10-3ml(STP)・cm/m2・h・atm{Pa}以下の耐水性ガスバリヤー性フィルムが得られる時間とするが、熱処理時間の上限は、フィルムの変色や分解が生じない範囲内とする。
【0039】乾熱雰囲気下における熱処理条件は、好ましくは433〜523K(160〜250℃)で4時間〜1分間、より好ましくは453〜523K(180〜250℃)で2時間〜1分間、最も好ましくは473〜523K(200〜250℃)で30〜1分間である。熱ロールなどの加熱体との接触下における熱処理条件は、好ましくは433〜523K(160〜250℃)で180〜3秒間、より好ましくは453〜523K(180〜250℃)で120〜3秒間、最も好ましくは473〜523K(200〜250℃)で60〜3秒間である。
【0040】いずれの熱処理条件においても、熱処理温度が低い場合には、長い熱処理時間で熱処理を行い、熱処理温度を高くするにしたがって熱処理時間を短縮する。そして、所望の酸素ガスバリヤー性と耐水性が達成され、一方では、所定の熱処理温度でフィルムの変色や分解を生じない処理時間を採用する。生産性の観点からは、前記の熱処理条件の範囲内において、比較的高温の熱処理温度で、短時間の熱処理時間を採用することが望ましい。本発明の熱処理条件を採用すれば、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと糖類との混合物から、高湿度条件下でも高度の酸素ガスバリヤー性を有するフィルムを得ることができ、しかも、このフィルムは、熱処理によって耐水性が付与されており、水及び沸騰水に対して不溶性となる。
【0041】積層体及びその製造方法本発明の積層体は、前記ガスバリヤー性フィルム(A)が、熱可塑性樹脂から形成された層(B)に隣接して積層された少なくとも2層の積層構造を有するものである。熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6・66共重合体、ナイロン6・12共重合体などのポリアミド、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸塩共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体などのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイドなどを挙げることができる。
【0042】ガスバリヤー性フィルム(A)に、これら各種熱可塑性樹脂の層(フィルムやシートなど)を積層することにより、ガスバリヤー性に優れていると共に、耐熱性、耐薬品性、耐油性、機械的強度、シール性、耐候性、耐湿性、ガスバリヤー性フィルムの保護、二次加工における機械適性の付与などの様々な性能や機能が付与されたガスバリヤー性積層体を得ることができる。例えば、ポリオレフィンなどのヒートシール性を有する熱可塑性樹脂フィルムと積層すると、ガスバリヤー性とヒートシール性を兼ね備えた積層体を得ることができる。また、耐熱性フィルムと積層すると、耐熱性や強靭性などが付与された積層体を得ることができる。
【0043】ガスバリヤー性フィルム(A)と熱可塑性樹脂から形成された層(B)とを積層するには、接着剤層を介しまたは介することなく、コーティング法、ドライラミネート法、押出コーティング法など公知の積層法を採用することができる。コーティング法(流延法を含む)では、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと糖類の混合物溶液を、例えば、エアーナイフコーター、キスロールコーター、メタリングバーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディップコーター、ダイコーターなどの装置、あるいは、それらを組み合わせた装置を用いて、熱可塑性樹脂の層上に、所望の厚さにコーティング(塗工)し、次いで、アーチドライヤー、ストレートバスドライヤー、タワードライヤー、ドラムドライヤーなどの装置、あるいは、それらを組み合わせた装置を用いて、熱風の吹付けや赤外線照射などにより水分を蒸発させて乾燥させ、皮膜を形成させる。しかる後、皮膜を熱処理する。
【0044】ドライラミネート法では、ガスバリヤー性フィルムと熱可塑性樹脂から形成されたフィルムまたはシートとを貼り合わせる。押出コーティング法では、ガスバリヤー性フィルム上に、熱可塑性樹脂を溶融押出して、層を形成する。ただし、ガスバリヤー性フィルム(A)の層は、通常、溶液流延法によって、混合物の溶液を支持体上に流延し、乾燥させて皮膜を形成させた後、高温で熱処理すること、また、該ガスバリヤー性フィルム(A)単体では、強靭性が不十分であることなどを勘案すると、延伸PETフィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルムなどの耐熱性フィルムを支持体として使用し、その上に、溶液流延法及びその後の熱処理によって、ガスバリヤー性フィルム(A)を形成することが好ましい。耐熱性フィルムの中でも、特に、PETやナイロン6などの融点またはビカット軟化点が180℃以上の熱可塑性樹脂から形成された耐熱性フィルムは、熱処理時の寸法安定性が良好であり、ガスバリヤー性フィルム(A)と耐熱性フィルムとが密着した積層体が得られるなどの点から、好ましいものである。なお、融点は、JIS K7121により、また、ビカット軟化点は、JIS K7206により、それそれ測定することができる。
【0045】本発明の積層体は、ガスバリヤー性フィルム(A)と熱可塑性樹脂の層(B)との2層構造のものに限定されず、所望により更に他の層が積層されていてもよい。例えば、ガラス板、プラスチック板などが挙げられる。また、ガスバリヤー性フィルム(A)を同一または異なる熱可塑性樹脂の層でサンドイッチ状に積層することにより、ガスバリヤー性の湿度依存性や機械的強度、耐湿性などが改良された積層体を得ることができる。さらに、光沢、防曇性、紫外線遮断性などの機能を付与するために、各種フィルムやコーティング層などを設けてもよい。
【0046】ガスバリヤー性フィルムと耐熱性フィルムとの積層体であって、耐熱性フィルムのシール性が不十分な場合、シール性を有する熱可塑性樹脂の層を更に積層して、積層体にシール性を付与することができる。一般に、包装材料のシール法としては、ヒートシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シールなどの方法がある。したがって、シール性層は、適用するシール法にそれぞれ適した熱可塑性樹脂により形成することが望ましい。
【0047】包装材料では、一般に、ヒートシール法が汎用されているが、ヒートシール可能なシール層としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸塩共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン、ナイロン6・66共重合体、ナイロン6・12共重合体などのナイロン共重合体等から形成された層が挙げられる。
【0048】シール方法として、高周波シール法も好んで用いられているが、高周波シールが可能なシール層としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン6、ナイロン66などが挙げられる。シール性を有する熱可塑性樹脂は、目的に応じて適宜選択することができ、融点またはビカット軟化点が180℃未満の熱可塑性樹脂を使用するものでは、通常、2kg・f以上(15mm幅)のシール強度を有するものが得られやすいなどの点で、好ましいものである。
【0049】ガスバリヤー性フィルムと耐熱性フィルムとの積層体に、更にシール性層を積層する場合には、シール性層は、接着剤層を介しまたは介することなく、ガスバリヤー性フィルムまたは耐熱性フィルムに隣接して積層する。シール性層が積層されていない側の面に、所望により更に他の層を積層してもよい。各層間の接着性が不十分な場合には、接着剤層を設けるが、そのための接着剤としては、一般に各種フィルムのドライラミネート等に使用されているウレタン系、アクリル系、ポリエステル系などの各種接着剤を挙げることができる。
【0050】本発明の各層には、所望により、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、顔料、充填剤、帯電防止剤などの各種添加剤を添加することができる。本発明の積層体において、ガスバリヤー性フィルム(A)の厚みは、前記したとおりである。熱可塑性樹脂から形成された層(B)の厚みは、特に限定されないが、機械的強度、柔軟性、経済性などの観点から、通常、5〜1000μm、好ましくは10〜100μmである。熱可塑性樹脂から形成された層(B)がシール層となる場合、あるいは熱可塑性樹脂から形成された層(B)とは別にシール層を配置する場合には、その厚みは、特に限定されないが、シール強度、柔軟性、経済性などの観点から、通常、5〜1000μm、好ましくは10〜100μmである。
【0051】本発明の積層体の積層構造は、前記したとおりであるが、代表的なものとしては、■ガスバリヤー性フィルム/熱可塑性樹脂の層、■耐熱性フィルム/ガスバリヤー性フィルム/シール性層、■シール性層/耐熱性フィルム/ガスバリヤー性フィルム等を挙げることができるが、これのみに限定されるものではない。所望により、さらに付加的な層を設けたり、ガスバリヤー性フィルム/熱可塑性樹脂の層を2つ以上含む多層積層体としてもよい。
【0052】本発明の積層体の製造方法は、既に述べたとおりであるが、特に好ましい態様としては、熱可塑性樹脂から形成された層(B)の上に、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと糖類とを、重量比95:5〜20:80の範囲内で含有する溶液を塗工し、乾燥して皮膜を形成させた後、乾燥皮膜を100℃(373K)以上の温度で熱処理することにより、温度30℃、80%RHの条件下で測定した酸素透過係数が5.00×10-3ml(STP)・cm/m2・h・atm{Pa}以下のガスバリヤー性フィルム(A)を形成させる工程を含む少なくとも隣接した(A)及び(B)の2層の積層構造を有するガスバリヤー性積層体の製造方法を挙げることができる。
【0053】熱処理条件は、前記したとおりである。また、熱処理を迅速に行うために、熱可塑性樹脂から形成された層(B)として耐熱性フィルムを用いることが好ましい。このようにして得られたガスバリヤー性フィルム(A)と熱可塑性樹脂から形成された層(B)とからなる積層体には、層(B)にシール性がないか不十分な場合、シール性を有する層を更に積層する工程により、3層構造の積層体を製造することができる。シール性層は、接着剤層を介しまたは介することなく、ガスバリヤー性フィルム(A)または層(B)に隣接して、ドライラミネート法などにより積層する。勿論、シール性層と共に、あるいはシール性層に替えて、他の層を積層してもよい。
【0054】
【実施例】以下に、参考例、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0055】[参考例1]この参考例1では、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと糖類との混合割合が、熱処理フィルムのガスバリヤー性に及ぼす影響について示す。ポリアクリル酸(PAA)として和光純薬工業(株)製のポリアクリル酸(30℃で8,000〜12,000センチポイズ、数平均分子量150,000)の25重量%水溶液を用い、水で希釈して10重量%水溶液を調製した。この10重量%PAA水溶液に、PAAのカルボキシル基のモル数に対して、計算量の水酸化ナトリウムを添加し、溶解せしめることによって、中和度(DN)が10%の部分中和物(PAANa)水溶液を調製した。一方、糖類として、和光純薬工業(株)製の可溶性澱粉(馬鈴薯澱粉を酸により加水分解処理し、水溶性にしたもの)を用い、この10重量%水溶液を調製した。
【0056】上記のPAANa水溶液と可溶性澱粉水溶液を、表1に示すような種々の重量比(固形分比)になるように混合し、混合物の水溶液(濃度10重量%)を調製した。これらの水溶液を、それぞれ延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み16μmの延伸PETフィルム;融点264℃)上に、卓上コーター(RKPrint−Coat Instruments社製K303PROOFER)を用い、メイヤバーでコーティングを行った。次いで、ドライヤーを用いて水を蒸発させ、厚み3μmの乾燥皮膜を得た。この乾燥皮膜が形成された延伸PETフィルムを厚紙にビニルテープで固定し、オーブン中で200℃で15分間熱処理した。各熱処理フィルム(厚み3μm)について、30℃、80%RHの条件下で測定した酸素透過度を表1に示す。PAA、PAANa及び可溶性澱粉を、それぞれ単独で用いて得られた熱処理フィルム、及びPAANaと可溶性澱粉との混合物フィルムであって、熱処理を行わなかったフィルムの酸素透過度についても、併せて表1に示す。また、表1の結果を図1にグラフ化して示す。
【0057】<酸素透過度の測定>コーティングフィルムの酸素透過度の測定は、Modern Control社製の酸素透過試験器OX−TRAN 2/20を用いて、延伸PETフィルム及びフィルムが形成された延伸PETフィルム(積層物)の酸素透過度を測定し、以下の計算式によりコート層(フィルム)の酸素透過度Pfilmを算出した。
1/Ptotal=1/Pfilm+1/PPETtotal:フィルムが積層された延伸PETフィルムの酸素透過度Pfilm:フィルムの酸素透過度PPET:延伸PETフィルムの酸素透過度
【0058】
【表1】


【0059】表1から、PAANa:澱粉=95:5〜20:80、好ましくは90:10〜40:60、より好ましくは85:15〜50:50の重量比の範囲内において、高湿度条件下でも優れたガスバリヤー性を有するフィルムが得られることがわかる。これらの熱処理フィルムは、いずれも沸騰水(95℃)に10分間浸漬したが、不溶であった。これに対して、PAA単独、PAANa単独、及び可溶性澱粉単独の各熱処理フィルムは、酸素透過度が非常に高い。また、PAANaと可溶性澱粉との混合物フィルムであっても熱処理を行っていないものは、非常に高い酸素透過度を示している。これらのフィルムは、いずれも沸騰水に溶解した。
【0060】[参考例2]この参考例2では、熱処理条件(熱処理温度と熱処理時間)が熱処理フィルムのガスバリヤー性に対して及ぼす影響について示す。ポリアクリル酸の部分中和物(PAANa、DN=10%)と可溶性澱粉とを重量比70:30で含有する水溶液(濃度10重量%)を用い、参考例1と同様にして、延伸PETフィルム上にコーティングフィルムを形成し、表2に示す熱処理時間と熱処理温度で熱処理した後、フィルム厚3μm、30℃、80%RHでの酸素透過度を測定した。結果を表2に示す。また、表2のデータをグラフ化して図2に示す。
【0061】
【表2】


【0062】表2のデータから、常法により、酸素透過度(P)と熱処理時間(t、分)との関係について、各熱処理温度毎にlogPとlogtとの一次回帰直線を作成し、その結果を図2に示した。次に、各熱処理温度において、酸素透過度(30℃、80%RH)が10、100、及び400ml(STP)/m2・day・atm{Pa}になる熱処理時間logtを計算し、さらに、この計算結果に基づいて、熱処理温度(T)とlogtとの関係について、一次回帰直線を作成した。
【0063】このようにして得られた回帰分析の結果から、酸素透過度(30℃、80%RH)が400ml(STP)/m2・day・atm{Pa}以下となる熱処理条件を求めたところ、次式が得られた。
(1)logt≧−0.0622×T+28.48〔式中、tは、熱処理時間(分)で、Tは、熱処理温度(K)である。〕熱処理温度(T)の範囲は、フィルムの着色やポリマー成分の分解・溶融などを考慮すると、373≦T≦623となる。この熱処理条件を採用すると、本発明のフィルムの30℃、80%RHの条件下で測定した酸素透過係数が5.00×10-3ml(STP)・cm/m2・h・atm{Pa}以下のガスバリヤー性が改善されたフィルムとなる。
【0064】[参考例3]この参考例3は、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーの中和度がガスバリヤー性に対して及ぼす影響について示す。中和度の異なるポリアクリル酸の部分中和物(PAANa、DN=0〜50%)と可溶性澱粉とを重量比70:30で含有する水溶液(濃度10重量%)を用い、参考例1と同様にして、延伸PETフィルム上にコーティングフィルムを形成し、200℃で15分間の熱処理を行った後、フィルム厚3μm、30℃、80%RHでの酸素透過度を測定した。結果を表3に示す。
【0065】
【表3】


【0066】表3に示す結果から、中和度が20%以下のポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーを使用することが、酸素ガスバリヤー性に優れたフィルムを得る上で好ましいことが分かる。
【0067】[実施例1〜7、比較例1〜2]ポリアクリル酸(PAA)として和光純薬工業(株)製のポリアクリル酸(30℃で8,000〜12,000センチポイズ、数平均分子量150,000)の25重量%水溶液を用いた。PAAを水酸化ナトリウム(NaOH)で中和度10%に部分中和したPAANa(DN=10%)を調製した。糖類として、和光純薬工業(株)製の可溶性澱粉(馬鈴薯澱粉を酸により加水分解処理し、水溶性にしたもの)を用い、この10重量%水溶液を調製した。
【0068】次いで、PAANa:澱粉=70:30(重量比)の混合物の水溶液(濃度10重量%)を調製した。この水溶液を延伸PETフィルム(融点264℃)または延伸ナイロン6(ONy)フィルム(融点220℃)上にメイヤバーを用いてコーティングし、次いで、ドライヤーを用いて水を蒸発させて、厚み3μmの乾燥皮膜を得た。この乾燥皮膜が形成された延伸PETフィルム及び乾燥皮膜が形成されたONyフィルムをオーブン中で熱処理した。また、PAA:澱粉=70:30(重量比)の混合物の水溶液を調製し、前記と同様にして、延伸PETフィルム上に乾燥皮膜を作成し、熱処理を行った。
【0069】さらに、ポリメタクリル酸(PMAA)として、日本純薬工業(株)社製のポリメタクリル酸(AC−30H;数平均分子量50,000)20重量%水溶液を用い、NaOHで中和度10%のPMAA部分中和物(PMAANa)を調製した。その後、PMAANa:澱粉=70:30(重量比)の混合物の水溶液(濃度10重量%)を作成し、これをONyフィルム上にコーティング後、水を蒸発させて厚み3μmの乾燥皮膜を得て、熱処理を行った。
【0070】得られた2層構造の積層体の一部について、さらに直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(融点121℃)または無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(融点165℃)を接着剤(東洋モートン社製アドコート335A、硬化剤=CAT−10)層を介してドライラミネートした。接着剤の厚みは、3μmであった。また、比較のため、前記PAANaと澱粉の混合物水溶液をガラス板上に流延して、乾燥皮膜を作成し、次いで熱処理した後、熱処理皮膜を剥して単体フィルムとしたものを作成した。各積層体の積層構成、熱処理条件、30℃、80%RHの条件下で測定した酸素透過度、ゲルボテスト後の酸素透過度、及びシール強度を表4に示す。
【0071】<シール強度>富士インパルス社製脱気シーラーV−300装置を用いて、ヒートシールを行った。シール面は、第3層(実施例1〜3、6〜7)または第1層(実施例4〜5、比較例1〜2)とした。シール強度は、東洋ボールドウイン社製テンシロンRTM100を用いて、15mm幅に切り取ったフィルムの引張強度の測定を行った。引張速度は500mm/分とした。
<耐屈曲疲労性:ゲルボテスト後の酸素透過度>理学工業(株)製ゲルボフレックステスターを用いて、25℃、50%RHで試料片を10回屈曲した後の酸素透過度を測定した。
【0072】
【表4】


(*1)単位:ml(STP)/m2・day・atm{Pa}
(*2)単位:kg・f(15mm幅)
【0073】ガスバリヤー性フィルムの片面または両面にPET、ONy、CPP、LLDPE等を積層した本発明の積層フィルムは、10回屈曲させるゲルボテスト後でも、高い酸素ガスバリヤー性を有していた。積層フィルム、特にポリオレフィンをラミネートしたフィルム(実施例1〜3、6〜7)は、ヒートシール性が良好であり、包装用フィルムとして適切な性能を有していた。これに対して、ガスバリヤー性フィルムの層をヒートシールした場合は、シールができなかった。また、このガスバリヤーフィルム単層(比較例2)は、脆いため、ゲルボテスト時にフィルムが破れてしまった。
【0074】[実施例8〜39]PAAとして和光純薬工業(株)製のポリアクリル酸(30℃で8,000〜12,000センチポイズ、数平均分子量150,000)の25重量%水溶液を用いた。PAAを水酸化ナトリウム(NaOH)で中和度10%に部分中和したPAANa(DN=10%)を調製した。糖類として、下記の単糖類、糖アルコール、及び多糖類を用い、それらの10重量%水溶液を調製した。ただし、アルギン酸ナトリウム、アガロース(電気泳動用)、ペクチン(りんご製)、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩の場合には、10重量%水溶液では粘度が高くなり過ぎるため、各2重量%水溶液を調製した。
■単糖類グルコース、ガラクトース〔以上、和光純薬工業(株)製〕
■糖アルコールソルビトール、マルチトール、グリセリン、エリトリトール〔以上、和光純薬工業(株)製〕
■多糖類プルラン、キトサン(水溶性)、アルギン酸ナトリウム、デキストラン〔数平均分子量(Mw)=60,000〜90,000〕、アガロース(電気泳動用)、ペクチン(りんご製)、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMCNa)、ポリ−β−シクロデキストリン(ポリβ−CD)〔以上、和光純薬工業(株)製〕;ガラクタン(Aldrich Chemical CompanyInc.製);アミロペクチン(Fluka Chemie AG製)
【0075】PAANa:糖類=70:30(重量比)の混合物水溶液(濃度10重量%、ただし、アルギン酸ナトリウム、アガロース、ペクチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩の場合は、濃度2重量%)を調製した。この水溶液を厚みが各12μmの延伸PETフィルム(融点264℃)または延伸ナイロン6(ONy)フィルム(融点220℃)上に、メイヤバーを用いてコーティングし、次いで、ドライヤーを用いて水を蒸発させて、厚み3μmの乾燥皮膜を得た。乾燥皮膜が形成された延伸PETフィルムまたは延伸ナイロン6フィルムをオーブン中で、200℃で15分間熱処理を行った。これらの熱処理後の皮膜(熱処理フィルム)は、沸騰水(95℃)に10分間浸漬したところ、いずれも不溶性であった。
【0076】こうして得られた熱処理フィルム/延伸PETフィルムからなる2層構造の積層体の熱処理フィルム面に、厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(融点121℃)を接着剤(東洋モートン社製アドコートAD335A、硬化剤=CAT−10)を介してドライラミネートした。接着剤の厚みは、3μmであった。得られた各積層体の酸素透過度(30℃、80%RH)、ゲルボテスト後の酸素透過度(30℃、80%RH)、及びシール強度を測定した。これらの測定結果を、各積層体の積層構成と共に、表5に示す。
【0077】同様に、熱処理フィルム/延伸ナイロン6フィルムからなる2層構造の積層体の熱処理フィルム面に、厚み50μmの無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(融点165℃)を接着剤(東洋モートン社製アドコートAD335A、硬化剤=CAT−10)を介してドライラミネートした。接着剤の厚みは、3μmであった。得られた各積層体の酸素透過度(30℃、80%RH)、ゲルボテスト後の酸素透過度(30℃、80%RH)、及びシール強度を測定した。これらの測定結果を、各積層体の積層構成と共に、表6に示す。
【0078】
【表5】


(*1)単位:ml(STP)/m2・day・atm{Pa}
(*2)単位:kg・f(15mm幅)
【0079】
【表6】


(*1)単位:ml(STP)/m2・day・atm{Pa}
(*2)単位:kg・f(15mm幅)
【0080】[実施例40]ポリアクリル酸(PAA)として和光純薬工業(株)製のポリアクリル酸(30℃で8,000〜12,000センチポイズ、数平均分子量150,000)の25重量%水溶液を用いた。PAAを水酸化ナトリウム(NaOH)で中和度10%に部分中和したPAANa(DN=10%)を調製した。糖類として、和光純薬工業(株)製の可溶性澱粉(馬鈴薯澱粉を酸により加水分解処理し、水溶性にしたもの)を用い、この10重量%水溶液を調製した。
【0081】次いで、PAANa:澱粉=70:30(重量比)の混合物の水溶液(濃度10重量%)を調製した。この水溶液を厚みが12μmの延伸PETフィルム(融点264℃)上にメイヤバーを用いてコーティングし、次いで、ドライヤーを用いて水を蒸発させて、厚み3μmの乾燥皮膜を得た。この乾燥皮膜が形成された延伸PETフィルムを、表面温度230℃の熱ロールに37秒間接触させることにより、熱処理を行った。熱処理後に得られた皮膜(熱処理フィルム)は、沸騰水(95℃)に10分間浸漬したが、不溶性であった。
【0082】得られた2層構造の積層体の熱処理フィルム面に、厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(融点121℃)を接着剤(東洋モートン社製アドコート335A、硬化剤=CAT−10)層を介してドライラミネートした。接着剤の厚みは、3μmであった。このようにして得られた積層体は、酸素透過度(30℃、80%RH)が0.2ml(STP)/m2・day・atm{Pa}、ゲルボテスト後の酸素透過度(30℃、80%RH)が1.0ml(STP)/m2・day・atm{Pa}、及びシール強度が4.4kg・f(15mm幅)であった。
【0083】
【発明の効果】本発明によれば、耐水性でかつ高湿度条件下でも酸素ガスバリヤー性に優れたフィルムをガスバリヤー性層として含有するガスバリヤー性積層体及びその製造方法が提供される。本発明で使用するガスバリヤー性フィルムは、優れたガスバリヤー性を有しており、ガスバリヤー性の湿度依存性も小さく、耐水性も良好である。このガスバリヤー性フィルムを含む積層体は、ガスバリヤー性と共にシール性や強靭性などを備えており、酸素ガスによって変質しやすい物品、例えば、畜肉、ハム、ソーセージなどの肉製品、ジュース、サイダー等の飲料、輸液などの医療品等の包装材料に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、PAA部分中和物と可溶性澱粉との混合割合を変化させて得られた熱処理フィルムについて、PAA部分中和物と可溶性澱粉との重量比と酸素透過度との関係を示すグラフである。
【図2】図2は、熱処理温度を変化させて得たPAA部分中和物と可溶性澱粉との混合物からなる熱処理フィルムについて、熱処理温度、熱処理時間及び酸素透過度の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリ(メタ)アクリル酸及びポリ(メタ)アクリル酸の部分中和物からなる群より選ばれる少なくとも一種のポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと糖類とを重量比95:5〜20:80の範囲内で含有する混合物から形成されたフィルムであって、温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過係数が5.00×10-3ml(STP)・cm/m2・h・atm{Pa}以下のガスバリヤー性フィルム(A)が、熱可塑性樹脂から形成された層(B)に隣接して積層された少なくとも2層の積層構造を有する積層体。
【請求項2】 熱可塑性樹脂から形成された層(B)が、融点またはビカット軟化点が180℃以上の熱可塑性樹脂から形成された耐熱性フィルムである請求項1記載の積層体。
【請求項3】 融点またはビカット軟化点が180℃未満の熱可塑性樹脂で形成されたシール性層(C)が、ガスバリヤー性フィルム(A)または耐熱性フィルム(B)に隣接して更に積層された構造を有する請求項2記載の積層体。
【請求項4】 熱可塑性樹脂から形成された層(B)の上に、ポリ(メタ)アクリル酸及びポリ(メタ)アクリル酸の部分中和物からなる群より選ばれる少なくとも一種のポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと糖類とを重量比95:5〜20:80の範囲内で含有する溶液を塗工し、乾燥して皮膜を形成させた後、該皮膜を100℃(373K)以上の温度で熱処理することにより、温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過係数が5.00×10-3ml(STP)・cm/m2・h・atm{Pa}以下のガスバリヤー性フィルム(A)を形成させる工程を含む少なくとも隣接した(A)及び(B)の2層の積層構造を有する積層体の製造方法。
【請求項5】 前記熱処理を下記関係式(1)及び(2)で規定する熱処理温度と熱処理時間の関係を満足する条件下で、乾熱雰囲気中で熱処理する請求項4記載の積層体の製造方法。
(1)logt≧−0.0622×T+28.48(2)373≦T≦623〔式中、tは、熱処理時間(分)で、Tは、熱処理温度(K)である。〕
【請求項6】 前記熱処理を下記関係式(a)及び(b)で規定する熱処理温度と熱処理時間の関係を満足する条件下で、熱ロールと接触させて行う請求項4記載の積層体の製造方法。
(a)logt≧−0.0041×T+0.20(b)373≦T≦623〔式中、tは、熱処理時間(分)で、Tは、熱処理温度(K)である。〕
【請求項7】 熱可塑性樹脂から形成された層(B)が、融点またはビカット軟化点が180℃以上の熱可塑性樹脂から形成された耐熱性フィルムである請求項4ないし6のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】 融点またはビカット軟化点が180℃未満の熱可塑性樹脂で形成されたシール性層(C)を、ガスバリヤー性フィルム(A)または耐熱性フィルム(B)に隣接して更に積層する工程を含む請求項7記載の積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平7−251485
【公開日】平成7年(1995)10月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−334405
【出願日】平成6年(1994)12月19日
【出願人】(000001100)呉羽化学工業株式会社 (477)