説明

積層体

【目的】 医療用や工業用の粘着フィルム、看板や各種部品等への貼り付けを目的とするステッカーやマーキングフィルム等の装飾用フィルム及び住宅等の建築物の内外装材や、家具什器類や家電製品等の表面化粧材用として使用される化粧シートに好適に用いられる、熱接着により被着体に容易かつ強固に接着することができる積層体の提供。
【構成】 少なくとも、ポリオレフィン樹脂層A、接着性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂層B及びポリカーボネートポリウレタン樹脂を主成分とするポリウレタン樹脂層Cをこの順に有する積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用や工業用の粘着フィルム(テープ)、看板や各種部品等への貼り付けを目的とするステッカーやマーキングフィルム等の装飾用粘着フィルム(テープ)及び住宅等の建築物の内外装材や、家具什器類や家電製品等の化粧材用として使用される化粧シートに用いられる、ポリオレフィン樹脂積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療用や工業用の粘着フィルム(テープ)、看板や各種部品等への貼り付けを目的とするステッカーやマーキングフィルム等の装飾用粘着フィルム(テープ)及び住宅等の建築物の内外装材や、家具什器類や家電製品等の表面化粧材用として使用される化粧シートに用いられるラミネート用のフィルムとしては、着色性、熱ラミネート加工性、エンボス加工性、印刷適正等に優れることからポリ塩化ビニル樹脂フィルムが多用されていたが、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムは、焼却・廃棄に際し塩化水素ガス等が発生する危険性があるため、簡単な焼却設備では処理することができず、更に、焼却設備の耐久性を低下させるという問題があるために、近年ポリオレフィン樹脂等の他材料による置き換えが進んでいる。
【0003】
ポリオレフィン樹脂フィルムのラミネート加工としては、接着剤を用いたドライラミネート加工が行なわれている。しかしながらこの方法ではドライラミネート用の接着剤の養生に長時間を要する等生産性が悪いという問題があり、また、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムのラミネート加工に一般的に用いられている熱ラミネート加工では充分な接着性が得られないという問題があった。
【0004】
これを解決すべく種々の検討がなされており、例えば、熱ラミネート加工での接着性を向上させるために、ラミネートフィルムとしてエチレン系アイオノマー樹脂やエチレンとCH=C(R)−COOR(式中、Rは水素またはメチル基を表し、Rは水素または炭素原子数1〜10個のアルキル基を表す)で表わされる単量体との共重合体等の樹脂を含有する層とポリオレフィン樹脂層との積層体が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、このようなポリオレフィン樹脂積層体を用いても十分な接着強度と生産性を両立するにはいたっておらず、更なる改良、特に低温での熱ラミネート加工における接着力の向上が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開2003−340991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の技術における問題点を解決するためになされたものであり、特に熱ラミネート加工に適するポリオレフィン樹脂積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、
<1>少なくとも、ポリオレフィン樹脂層A、接着性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂層B及びポリカーボネートポリウレタン樹脂を主成分とするポリウレタン樹脂層Cをこの順に有する積層体、
<2>接着性ポリオレフィン樹脂が、
(1)エチレン系アイオノマー樹脂、
(2)エチレンと一般式CH=C(R)−COOR(式中、Rは水素またはメチル基を表し、Rは水素または炭素原子数1〜10個のアルキル基を表す)で表わされる単量体の共重合体、
(3)エチレンと無水マレイン酸の共重合体及び
(4)無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂
からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする<1>に記載の積層体、
【0008】
<3>接着性ポリオレフィン樹脂が、エチレンと一般式CH=C(R)−COOR(式中、Rは水素またはメチル基を表し、Rは水素または炭素原子数1〜10個のアルキル基を表す)で表わされる単量体と無水マレイン酸の共重合体及び無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする<1>に記載の積層体、
<4>ポリウレタン樹脂層Cが、ポリカーボネートポリウレタン樹脂と、
(x)脂肪族ジイソシアネートのアダクト体、脂環族ジイソシアネートのアダクト体及び芳香族ジイソシアネートのアダクト体並びに
(y)イソシアヌレート重合体
からなる群から選ばれる少なくとも1種とを反応させて得られる反応物からなる<1>〜<3>のいずれかに記載の積層体、
<5>ポリカーボネートポリウレタン樹脂が、ポリカーボネートジオールと脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種を反応させて得られる反応物であって分子末端に水酸基を有する重量平均分子量が15,000〜150,000のポリカーボネートポリウレタン樹脂を主成分とする<1>〜<4>のいずれか一項に記載の積層体、
<6><1>〜<5>のいずれかに記載の積層体のポリウレタン樹脂層C側に印刷層D及び基材層Eをこの順に設けてなる積層体、
<7>印刷層Dが、ポリエステルポリウレタン樹脂を含む<6>に記載の積層体及び
<8>ポリエステルポリウレタン樹脂が、イソホロンジイソシアネートとポリカプロラクトンポリオールを反応させて得られる反応物を主成分とする<7>に記載の積層体に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱接着可能な積層体は、従来ポリオレフィン樹脂フィルムの非ポリオレフィン樹脂被着体への接着に用いていたドライラミネート法を用いる必要が無く、熱接着により容易かつ強固に被着体に積層することができる。しかも従来の熱接着より低温での熱接着が可能なため、生産性もおとさずに十分な接着力が得られ、医療用や工業用の粘着フィルム(テープ)、看板や各種部品等への貼り付けを目的とするステッカーやマーキングフィルム等の装飾用フィルム(テープ)及び住宅等の建築物の内外装材や、家具什器類や家電製品等の表面化粧材用として使用される化粧シートに好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の積層体は、ポリオレフィン樹脂層A(以下、「層A」という)、接着性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂層B(以下、「層B」という)及びポリカーボネートポリウレタン樹脂を主成分とするポリウレタン樹脂層C(以下、「層C」という)をこの順に有する、熱接着が可能な積層体である。また該積層体の層Aの外側表面に更に、ポリオレフィン樹脂層が積層されていてもよい。層Aの外側に設けられるポリオレフィン樹脂層は、層Aと同一組成のものであってもよいが、層Aとは異なる組成を有するポリオレフィン樹脂層であることが好ましい。
【0011】
本発明において層Aに用いられるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、これらの混合物及びこれらと他の樹脂の混合物等が挙げられる。
【0012】
ポリエチレン樹脂としては、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体(低密度ポリエチレン(LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られたエチレン−α−オレフィン共重合体(メタロセン系ポリエチレン)等)及びこれらの混合物等が例示できる。
【0013】
ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、共重合体及びこれらの混合物等が例示できる。該共重合体としてはプロピレンとエチレンまたは他のα−オレフィンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)、またはブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト重合体等が挙げられる。
【0014】
プロピレンと共重合可能な他のα−オレフィンとしては、炭素原子数が4〜12のものが好ましく、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン等が挙げられ、その1種または2種以上の混合物が用いられる。通常、α−オレフィン(エチレンを含む)の混合割合はプロピレンに対して1〜10重量%、特に2〜6重量%とするのが好ましい。
【0015】
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えばイソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−ブタジエンゴム、プロピレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム及びアクリロニトリル−イソプレンゴム等のジエン系ゴム(エラストマー)、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン非共役ジエンゴム、結晶融解熱(ΔH)が100g/J以下である低結晶性プロピレン単独重合体(出光石油化学(株)製 出光TPO、宇部興産(株)製 CAP、宇部レキセン社製 UT2115等)、多段重合法によって得られるポリオレフィン樹脂(サンアロマー(株)製 キャタロイ、三菱化学(株)製 ゼラス、(株)トクヤマ製 P.E.R.等)、上記ゴム(成分)とポリエチレン樹脂及び/またはポリプロピレン樹脂との混合物を動的架橋して得られるポリオレフィン樹脂(三菱化学(株)製 サーモラン、アドバンスド エラストマー システムズ(株)製 サントプレーン、三井化学(株)製 ミラストマー)等が挙げられる。
【0016】
なお、上記の結晶融解熱(ΔH)とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、樹脂を一度融解点以上にして溶融した後、10℃/分の速度で冷却した時のDSCチャート上の結晶ピーク面積より計算した値のことである。また、上記の多段重合法によって得られるポリオレフィン樹脂とは、反応器中で(i)ハードセグメントと、(ii)ソフトセグメントとが2段階以上で多段重合されてなる共重合体である。(i)ハードセグメントとしては、プロピレン単独重合体ブロック、あるいはプロピレンとα−オレフィンとの共重合体ブロック、例えば、プロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/エチレン/1−ブテン等の2元または3元共重合体ブロックが挙げられる。 また、(ii)ソフトセグメントとしては、エチレン単独重合体ブロック、あるいはエチレンとα−オレフィンとの共重合体ブロック、例えば、エチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/プロピレン/1−ブテン等の2元または3元共重合体ブロックが挙げられる。
【0017】
混合する他の樹脂としては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)やスチレン−ブタジエンブロック共重合体等のスチレン−ブタジエン系熱可塑性エラストマー及びスチレン−イソプレンゴム等のスチレン系熱可塑性エラストマー(これらの水素添加物を含む)が挙げられる。
これら他の樹脂は、ポリオレフィン樹脂100〜40重量部に対し0〜60重量部配合することができる。ポリオレフィン樹脂としては特にポリプロピレン樹脂を主成分としたものが好ましく、ポリプロピレン樹脂50〜100重量部に対しポリプロピレン樹脂以外の樹脂を50〜0重量部含有するものが好ましい。
【0018】
層Aは前述のポリオレフィン樹脂を、好ましくは50〜100重量%、更に好ましくは60〜100重量%含有する。
【0019】
層Bに用いられる接着性ポリオレフィン樹脂としては、
(1)エチレン系アイオノマー樹脂、
(2)エチレンと一般式CH=C(R)−COOR(式中、Rは水素またはメチル基を表し、Rは水素または炭素原子数1〜10個のアルキル基を表す)で表わされる単量体の共重合体、
(3)エチレンと無水マレイン酸の共重合体及び
(4)無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂
からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とするものが好ましく、特に50〜100重量%含有するものが好ましい。
【0020】
エチレン系アイオノマー樹脂としては、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の一部が金属イオンにより中和されているもの、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸・α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部が金属イオンにより中和されているものが好ましい。中和前の上記共重合体中のエチレン単位(共重合体中のエチレン由来の単位、すなわち「−CH−CH−」を指す。以下同様。)の占める割合は、好ましくは75〜99.5モル%、より好ましくは88〜98モル%であり、α,β−不飽和カルボン酸単位の占める割合は、好ましくは0.5〜15モル%、より好ましくは1〜6モル%であり、かつα,β−不飽和カルボン酸エステル単位の割合は、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜6モル%である。上記共重合体中のα,β−不飽和カルボン酸単位の割合が0.5モル%未満では、得られるエチレン系アイオノマー樹脂の接着性が損なわれる恐れがあり、15モル%より多くなると、得られるエチレン系アイオノマー樹脂の耐熱性が低下する恐れがある。α,β−不飽和カルボン酸エステル単位が存在することにより、得られるエチレン系アイオノマー樹脂に柔軟性を付与することができるので好ましいが、10モル%を超えると得られるエチレン系アイオノマー樹脂の耐熱性が低下する恐れがある。
【0021】
上記共重合体を構成するα,β−不飽和カルボン酸としては、好ましくは炭素原子数3〜8のものが使われ、より好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、フタル酸が使用される。α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては好ましくは炭素原子数4〜8のものが使用され、より好ましくはアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸ブチル、フタル酸ジメチル等が使われる。
【0022】
上記共重合体中のカルボキシル基のうち、金属イオンにより中和されるカルボキシル基の割合は、共重合体中の全カルボキシル基中の好ましくは5〜80%、より好ましくは10〜75%である。該金属イオンとしては、1〜3価の原子価を有する金属イオン、特に元素周期表における1、2、3、4または7族の1〜3価の原子価を有する金属イオンが挙げられる。このようなものとしては例えば、Na+、K+、Li+、Cs+、Ag+、Hg+、Cu+、Be++、Mg++、Ca++、Sr++、Ba++、Cu++、Cd++、Hg++、Sn++、Pb++、Fe++、Co++、Ni++、Zn++、Al+++、Sc+++、Fe+++、Yt+++等が上げられる。これらの金属イオンは2種以上の混合物でも良く、アンモニウムイオンと混合して用いてもよい。これらの中で特にZn++、Na+が好ましい。
【0023】
エチレンと一般式CH=C(R)−COORで表わされる単量体の共重合体としては、エチレンとCH=C(R)−COORで表わされる単量体の2元共重合体や、エチレンとCH=C(R)−COORで表わされる単量体と他の単量体の多元共重合体が挙げられる。なお、本発明において言う多元共重合体とは、3種以上の単量体を共重合して得られた共重合体のことを言う。
【0024】
エチレンと無水マレイン酸の共重合体としては、エチレンと無水マレイン酸の2元共重合体、エチレンと無水マレイン酸とCH=C(R)−COORで表わされる単量体との共重合体等のエチレンと無水マレイン酸とその他の単量体との多元共重合体が挙げられる。
【0025】
エチレンと一般式CH=C(R1)−COOR2で表される単量体の共重合体を構成する各構成単位の重量比は、エチレン及び一般式CH=C(R1)−COOR2の重量に換算して、好ましくはエチレン:CH=C(R1)−COOR2=20〜95:80〜5であり、より好ましくは50〜95:50〜5である。更に好ましくは60〜90:40〜10である。
【0026】
更に、エチレンと無水マレイン酸とCH=C(R)−COORで表わされる単量体の共重合体の場合は、上記のエチレンとCH=C(R1)−COOR2の重量比の条件に加え、無水マレイン酸単位の含有量を無水マレイン酸の重量に換算して、0.1〜10重量%とするのが成形性、熱接着性の点でよく、更に好ましくは0.5〜5重量%である。
【0027】
無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂としては、ポリオレフィン樹脂に無水マレイン酸を付加させて変性したものが挙げられ、ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びエチレン−酢酸ビニル共重合体が挙げられる。なお、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂としては層Aの説明において挙げたものを使用することができる。無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂としては中でも無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂及び無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0028】
接着性ポリオレフィン樹脂としては、中でも特に、エチレンと一般式CH=C(R)−COORで表わされる単量体と無水マレイン酸の共重合体及び無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする、特に50〜100重量%含有するものが、従来の熱接着温度より低温での熱接着温度で接着でき、接着性に優れるので好ましく、中でもエチレンと一般式CH=C(R)−COORで表わされる単量体と無水マレイン酸の3元共重合体がより好ましい。
【0029】
層B中の接着性ポリオレフィン樹脂の含有量としては、一般式CH=C(R)−COOR単位、α,β−不飽和カルボン酸単位、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の一部が金属イオンにより中和されてなる単位、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸・α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部が金属イオンにより中和されてなる単位または無水マレイン酸単位等のポリオレフィン樹脂に接着性を付与する単位(以下、「接着性成分」という)の層B中の量が、単量体の重量に換算して、全部で好ましくは0.5〜50重量%、より好ましくは2〜25重量%となるように、接着性ポリオレフィン樹脂の量を調整して層Bに配合すればよい。接着性成分の含有量が少ないと十分な接着強度が得られず、また接着性成分の含有量が多いと積層体をフィルム等の製品とし、該製品を巻いて保管した後にブロッキング現象が起こり易くなるので好ましくない。
【0030】
更に層Bには、層Aの説明において挙げられたポリオレフィン樹脂等を配合することができる。
【0031】
本発明の層A、層Bには、紫外線吸収剤及び/またはヒンダードアミン系光安定剤を配合することが好ましい。
【0032】
紫外線吸収剤としては、例えばサリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系及びトリアジン系等の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0033】
具体的には、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤としては、サリチル酸フェニル、4−t−ブチル−フェニル−サリシレート等が挙げられる。
【0034】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等の2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−クロルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホンベンゾフェノン等の2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス−(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン等が挙げられる。
【0035】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3'',4'',5'',6''−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(分子量388)、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(分子量448)、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)(分子量659)等が挙げられる。
【0036】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、2−エチル−ヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、オクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0037】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシフェニル)1,3,5−トリアジン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−((ヘキシル)オキシ)−フェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(オクチロキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(オクチロキシ)フェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシロシキ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−((メチル)オキシ)フェノール等が挙げられる。
【0038】
中でも、経時後層表面へ吹き出しにくいという点で、ベンゾトリアゾール系またはトリアジン系の紫外線吸収剤でかつ、分子量が300以上であるものが好ましい。
【0039】
紫外線吸収剤の配合量は、各々の層について層中の樹脂成分100重量部当たり、0.01〜10重量部が好ましく、特に0.05〜5重量部が好ましい。配合量が0.01重量部未満では、褐色・劣化の防止効果が不十分となりやすく、10重量部を超えて使用しても、配合量に見合った効果が得られず、またブリードを起こす恐れがある。
【0040】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジル−4−ベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ホスファイト(チバ・ガイギー(株)製「キマソープ944」)、1,3,8−トリアザ−7,7,9,9−テトラメチル−3−n−オクチルピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン(チバ・ガイギー(株)製「チヌビン144」)、1,2,3,4−テトラ(4−カルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−ブタン、1,3,8−トリアザ−7,7,9,9−テトラメチル−2,4−ジオキソ−スピロ[4,5]デカン、トリ(4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)アミン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェニルカルバモイルオキシ−2,2,6,6テトラメチルピペリジン、4−p−トルエンスルホニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート等が挙げられる。中でも経時後基材層表面へ吹き出しにくいという点や長期耐候性が良好であるということから分子量が1000以上のものを用いることが好ましく、特に、ポリオレフィン樹脂にヒンダードアミン骨格を有する化合物を共重合させたものが吹き出し難く好ましい。
【0041】
ヒンダードアミン系光安定剤の配合量は、各々の層について層中の樹脂成分100重量部あたり0.01〜10重量部であるのが好ましい。配合量が0.01重量部未満では、安定化効果が不十分となる場合があり、10重量部を超えて使用しても、配合量に見合った効果が得られず、またブルームを起こす恐れがある。
【0042】
更に本発明の積層体の層A、層Bには、他の樹脂や必要に応じて酸化防止剤、スリップ剤、着色剤、充填剤、核剤等の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲内で配合してもよい。また、これらの添加剤については、予め樹脂に高濃度で配合したもの(マスターバッチ)を用いるのが一般的である。
【0043】
層Aと層Bの製造方法としては、Tダイ押出し成形法、インフレーション成形法及びカレンダー成形法等の一般的なポリオレフィン樹脂フィルムの成形方法を用いればよく、特に限定されず、また前述の方法によりポリオレフィン樹脂層Aと層Bとが積層した積層体を製造してもよい。層Bの表面は、層C等との密着性を向上させる為にコロナ放電処理等の前処理をしてもよい。
【0044】
層Aと層Bからなる積層体の厚さは、その使用する用途等により異なるが、装飾用のフィルム等に用いた場合には後加工、あるいは取り扱い易さの点から0.05〜1mm、特に0.05〜0.50mmが好ましい。
【0045】
層Aと層Bとの厚さの比は99/1〜10/90がよく、好ましくは90/10〜50/50である。層Bが薄すぎると十分な接着性が得られなくなり、また厚すぎるとフィルム(層)成形が難しくなり好ましくない。
【0046】
本発明の積層体は、層Aと接する面とは反対側の層B表面に更に、ポリカーボネートポリウレタン樹脂を主成分とするポリウレタン樹脂層C(「層C」)が設けられている。層Cのポリカーボネートポリウレタン樹脂の含有量は50〜100重量%であるのが好ましい。更に層Cには、本発明の目的を損なわない範囲でポリカーボネートポリウレタン樹脂以外のポリウレタン樹脂やその他の樹脂を配合してもよい。
【0047】
ポリカーボネートポリウレタン樹脂としては、ポリカーボネートジオールとジイソシアネート化合物を反応させて得られる反応物が挙げられ、該反応物としては、重量平均分子量が15,000〜150,000のものが好ましい。重量平均分子量が15,000未満だと、乾燥性を良くする為に過剰量の架橋剤が必要となる結果、架橋度が高くなり過ぎて柔軟な層Cが得られ難くなり、熱接着性が低下するので好ましくない。
【0048】
一方、重量平均分子量が150,000を超えると層C形成時の溶液粘度が高くなり、作業性、乾燥性が悪くなる他、溶剤の過剰残存、気泡の発生頻度が高くなり、層Bやポリオレフィン樹脂層等との密着性を低下する原因となるので好ましくない。
【0049】
ポリカーボネートジオールは、下記一般式(p)で示されるものである。
【0050】
HO−[−R−O−COO−]n−R−OH ・・・・(p)
(Rは脂肪族系置換基、または脂環族系置換基)
ポリカーボネートジオールは、例えばアルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート、ジアルキルカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とジオール類及び/またはポリエーテルポリオール類を反応させて得られる。
【0051】
アルキレンカーボネートの例としては、エチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート等があげられる。
【0052】
ジアリールカーボネートの例としては、ジフェニルカーボネート、フェニル−ナフチルカーボネート、ジナフチルカーボネート、4−メチルジフェニルカーボネート、4−エチルジフェニルカーボネート、4−プロピルジフェニルカーボネート、4,4’−ジメチル−ジフェニルカーボネート、4,4’−ジエチル−ジフェニルカーボネート、4,4’−ジプロピル−ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0053】
ジアルキルカーボネートの例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート、ジ−n−アミルカーボネート、ジイソアミルカーボネート等が挙げられる。
【0054】
これらカーボネート類と反応させる物質として、ジオール類の例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−ペンタンジオール、3−メチル−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,3,5−トリメチルペンタンジオール及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0055】
また、ポリエーテルポリオール類の例としては、例えばテトラヒドロフランの開環重合により得られるポリテトラメチレングリコール、ジオール類のアルキレンオキサイド付加物及びこれらの混合物等が挙げられる。ここで用いるジオール類の例として、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、異性体ペンタンジオール類、異性体ヘキサンジオール類または、オクタンジオール類例えば2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノン、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられ、アルキレンオキサイドの例として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン等が挙げられ、これらは2種以上混合して使用することも可能である。
【0056】
上述のジオール類及びポリエーテルポリオール類は1種単独でも、あるいは2種以上混合して使用してもよい。これらはいずれも公知の方法で前述のアルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート及びジアルキルカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と反応させてポリカーボネートジオールを形成することができる。
【0057】
ポリカーボネートジオールの重量平均分子量は500〜4000であるのが好ましく、更に好ましくは1000〜3000であり、500より小さいと熱ラミネート後の接着強度が低下し、4000を超えると塗膜の外観上ちぢみ、うねり等の現象を起こし好ましくない。
【0058】
次に、ジイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート及びキシレンジイソシアネート等の、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネート並びにこれらの混合物等が挙げられる。
【0059】
ポリカーボネートジオールとジイソシアネート化合物を反応させて得られる反応物は、ポリカーボネートジオールにジイソシアネート化合物をモル比でポリカーボネートジオール:ジイソシアネート化合物=1:0.7〜1:5程度の割合で反応させることにより、公知の方法で製造することができる。このような方法としては、予めプレポリマー化した後、架橋剤または鎖延長剤を用いて高分子量ポリウレタンを製造する方法、または全成分を一段で反応させて高分子量ポリウレタンを製造する方法等の公知の方法が挙げられる。 何れの方法で製造するにしても、ゴム弾性を有する層Cを形成する目的からポリカーボネートジオールとジイソシアネート化合物を反応させて得られる反応物は、直鎖状構造を主体とする構造であることが好ましい。
【0060】
ポリカーボネートポリウレタン樹脂としては、ポリカーボネートジオールと、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種を反応させて得られる反応物であって分子末端に水酸基を有する重量平均分子量が15,000〜150,000のポリカーボネートポリウレタン樹脂を主成分とするものが好ましい。該ポリカーボネートポリウレタン樹脂はポリカーボネートポリウレタン樹脂中50〜100重量%であるのが好ましく、特に70〜100重量%であるのが好ましい。
【0061】
本発明の層Cの形成は、架橋剤を添加せずにポリカーボネートポリウレタン樹脂を含有する一液型塗工剤を使用して形成することが可能であるが、必要に応じてポリカーボネートポリウレタン樹脂を主剤として、更に少量の架橋剤(硬化剤)を混合して、ポリカーボネートポリウレタン樹脂と架橋剤とを反応させて形成することもできる。
混合する架橋剤としては、(x)脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート化合物とエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサントリオール及びトリメチロールプロパントリメタクリレート等からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを付加重合して得られる、脂肪族ジイソシアネートのアダクト体、脂環族ジイソシアネートのアダクト体あるいは芳香族ジイソシアネートのアダクト体またはこれらの混合物や、(y)脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートあるいは芳香族ジイソシアネート等を重合して得られるイソシアヌレート重合体またはこれらの混合物が挙げられ、これらの架橋剤は1種以上を混合して用いることができる。
主剤/架橋剤の混合割合は、主剤の水酸基価及び架橋剤のイソシアネート含有率により異なるが、通常主剤のポリカーボネートポリウレタン樹脂100重量部に対し架橋剤を5〜40重量部、好ましくは10〜30重量部配合する。
通常、これらの主剤または、主剤及び架橋剤は溶剤に溶解させて用い、更に希釈溶剤等を用いて適当な濃度に調製し塗工剤とし、リバースロールコート法またはグラビアロールコート法等の一般的な塗工方法を用いて前記層Aと層Bの積層体における層Bの外側表面に塗工し乾燥させ層Cを形成する。得られた層Cの乾燥膜厚は、通常0.3〜3μm程度である。
【0062】
更に、本発明の積層体においては、巻物状態及び熱ラミネート工程でのブロッキング防止の目的で、層Cに有機系粉末または無機系粉末を配合してもよい。
有機系粉末としては、ポリウレタン樹脂ビーズ、ポリアクリル樹脂ビーズ及びポリカーボネート樹脂ビーズ等が挙げられ、無機系粉末としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、シリカアルミナ、クレー、タルク、酸化チタン及びカーボンブラック等の顔料が挙げられる。
中でも、平均粒子径0.1〜5μmのシリカ粉末を使用することが特に好ましい。
有機系粉末及び/または無機系粉末の配合量は、層C中の樹脂成分100重量部に対し通常1〜100重量部の使用が好ましく、所望する熱接着性、表面光沢、非ブロッキング性を考慮して適量使用すればよい。
【0063】
その他、必要に応じ、層Cに公知の粉末状及び/または液状の紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤や帯電防止剤を配合しても良い。
紫外線吸収剤及び光安定剤としては、前述の層A及び層Bの説明において挙げられたものを使用することができる。紫外線吸収剤と光安定剤の配合割合は1/3〜3/1(重量比)程度で、層C中の樹脂成分100重量部に対し1〜70重量部配合することができる。
【0064】
帯電防止剤としては、4級アンモニウム塩基を有する帯電防止剤等を層C中の樹脂成分100重量部に対し0.5〜5.0重量部配合することができる。配合量が0.5重量部未満であると、帯電防止効果が低く、一方、配合量が5.0重量部を超えると、熱接着性を阻害する原因になるので好ましくない。4級アンモニウム塩基を有する帯電防止剤としては、炭素原子数1〜20の、アルキルジメチルアミンやアルキルジエチルアミン等のジメチル硫酸塩またはジエチル硫酸塩が挙げられ、特にアルキル基中の水素の代わりに水酸基を有するものが好ましい。
【0065】
なお、層Aと層Bとの間、層Bと層Cとの間には、必要に応じ更に層を設けてもよい。
【0066】
本発明の積層体は、積層体の層Cの外側表面に印刷層D、基材層Eをこの順番で積層することにより、医療用や工業用の粘着フィルム(テープ)、看板や各種部品等への貼り付けを目的とするステッカーやマーキングフィルム等の装飾用粘着フィルム(テープ)及び住宅等の建築物の内外装材や、家具什器類や家電製品等の表面化粧材用として使用される化粧シートに好適に用いることができる。
【0067】
印刷層Dは、生産性、接着強度の点から、ポリエステルポリウレタン樹脂を含有していることが好ましく、その含有量は好ましくは10〜95重量%、更に好ましくは15〜90重量%である。ポリエステルポリウレタン樹脂としては中でも接着強度の観点から、イソホロンジイソシアネートとポリカプロラクトンポリオールを反応させて得られる反応物、すなわち少なくともイソホロンジイソシアネートとポリカプロラクトンポリオールを反応させて得られる反応物(例えば、イソホロンジイソシアネート・ポリカプロラクトンポリオール反応物、他の単量体・イソホロンジイソシアネート・ポリカプロラクトンポリオール反応物)を主成分とするものが好ましく、特にポリエステルポリウレタン樹脂における該反応物の含有量が50〜100重量%であることが好ましい。また印刷層Dには、ポリエステルポリウレタン樹脂の他、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルまたはこれらの混合物を主成分とするアクリル系共重合体等のその他の樹脂を、基材層Eとの密着性等を考慮して適宜配合することができる。
【0068】
更に、印刷層Dには、着色剤(顔料、染料)の他、溶剤、分散剤や消泡剤等の補助剤を配合することができ、これらは用途等を考慮して適宜選択して用いればよい。
【0069】
基材層Eとしては、ポリオレフィン樹脂を50〜100重量%含有するものが好ましく、更に60〜100重量%含有するものが好ましい。該ポリオレフィン樹脂としては、層Aの説明において挙げたものを使用することができる。基材層Eの製造方法としては、Tダイ押出し成形法、インフレーション成形法及びカレンダー成形法等の一般的なポリオレフィン樹脂フィルムの成形方法を用いればよい。基材層Eの厚さは、その使用用途等により異なるが、装飾用のフィルム等に用いた場合には後加工、あるいは取り扱い易さの点から0.05〜1mm、特に0.05〜0.50mmが好ましい。
【0070】
印刷層Dの形成は、ポリエステルポリウレタン樹脂等のバインダー樹脂、着色剤及び溶剤等を含有するインクを用い、基材層Eまたは基材層E上に設けたプライマー層等の上にグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷または転写シートからの転写印刷等の公知の印刷法によって行えば良い。絵柄模様としては、特に制限は無く、用途に応じた模様とすれば良い。具体的には、例えば、木目模様、石目模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、或いは全面ベタ等が挙げられる。なお、印刷層Dは柄パターンを有する柄層と、全面ベタ層からなっていてもよい。
【0071】
本発明の積層体を、印刷層Dと基材層Eからなる印刷フィルム等の被着体に熱ラミネートするには、加熱ドラムや電熱ヒーターにて積層体及び被着体をそれぞれ120〜220℃の温度に加熱した後、金属ロールとゴムロールとの間で圧着してラミネートするかもしくは金属ロールと金属ロールとの間で圧着してラミネートするか、または金属ロールを120〜220℃の温度に加熱しておき、ラミネートを同時に実施する等の方法を用いればよい。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の例によって限定されるものではない。

1)積層基材(層A/層B)の作成
表−1に記載の構成になるように、2種2層共押し出し成形機を用いて6種類(a〜f)の積層基材を作成した。なお、層厚比は、層A:層B=4:1とした。

2)積層体の作成
下記の通り塗布液1及び2を調製し、1)で得られた積層基材の層B上に該塗布液のいずれかをグラビアロールコート法にて乾燥後の塗膜厚さが1μmになるように塗工し、80℃の熱風乾燥機にて10秒間乾燥させて層Cを形成し、積層体を作成した。
【0073】
<塗布液の調製>
(塗布液1):ポリヘキサメチレンポリカーボネートジオールとイソホロンジイソシアネートを1:1のモル比で混合し、反応させて得られた重量平均分子量50,000のポリカーボネートポリウレタン樹脂を用い、下記配合の塗布液を調製した。

【0074】
(配合) 配合量(重量部)
ポリカーボネートポリウレタン溶液(*1) 100
架橋剤溶液(*2) 5
希釈溶剤(メチルエチルケトン) 70

(*1)固形分濃度20重量%、溶剤:メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール=85/15(重量比)
(*2)ヘキサメチレンジイソシアネート三量体溶液、固形分濃度75重量%、溶剤:酢酸エチル

(塗布液2):ザ・インクテック(株)製 AR−4(アクリル変性ポリウレタンを含有する塗布液)を用いた。
【0075】
3)被着体の作成
厚さ80μmのプロピレンランダム共重合体フィルム(基材層E)にコロナ処理を施した後、該フィルムの片面に、ポリエステルポリウレタン樹脂(イソホロンジイソシアネートとポリカプロラクトンジオールを反応させて得られる反応物)バインダー30重量%、着色顔料5重量%、メチルエチルケトン50重量%及びメチルイソブチルケトン15重量%の組成よりなる印刷インクを用いてグラビア印刷法により木目柄模様を形成し(印刷層D)、被着体とした。

4)積層体の評価
ヒートシーラー(テスター産業(株)製TP−701)を用い、2)で得られた積層体と3)で得られた被着体を層Cと印刷層Dが接着するようにして熱接着(ヒートシール)させた後、常温に冷却後、積層体を固定し、被着体を引張る方法で剥離し、接着強度を定性評価した。結果を表−2に記載した。なお、熱接着条件及び評価基準は以下の通りである。
【0076】
<熱接着条件>
(i) 温度:130℃、圧力:0.1MPa、時間:2秒
(ii) 温度:150℃、圧力:0.1MPa、時間:2秒
(iii) 温度:180℃、圧力:0.1MPa、時間:2秒

<評価基準>
◎:剥離時に積層体が切断するほど接着している
○:積層体は切断はしないが、強固に接着している(一部凝集破壊)
△:接着はしているが、比較的容易に剥離する(層Cと印刷層Dの界面で剥離)
×:層Cと印刷層Dの界面で容易に剥離する
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の積層体の実施の形態を示す側断面図
【図2】本発明の積層体の実施の形態を示す側断面図
【図3】本発明の積層体の実施の形態を示す側断面図
【図4】本発明の積層体の実施の形態を示す側断面図
【符号の説明】
【0080】
1:層C
2:層B
3:層A
4:ポリオレフィン樹脂層
5:印刷層D
6:基材層E
7:プライマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ポリオレフィン樹脂層A、接着性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂層B及びポリカーボネートポリウレタン樹脂を主成分とするポリウレタン樹脂層Cをこの順に有する積層体。
【請求項2】
接着性ポリオレフィン樹脂が、
(1)エチレン系アイオノマー樹脂、
(2)エチレンと一般式CH=C(R)−COOR(式中、Rは水素またはメチル基を表し、Rは水素または炭素原子数1〜10個のアルキル基を表す)で表わされる単量体の共重合体、
(3)エチレンと無水マレイン酸の共重合体及び
(4)無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂
からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
接着性ポリオレフィン樹脂が、エチレンと一般式CH=C(R)−COOR(式中、Rは水素またはメチル基を表し、Rは水素または炭素原子数1〜10個のアルキル基を表す)で表わされる単量体と無水マレイン酸の共重合体及び無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
ポリウレタン樹脂層Cが、ポリカーボネートポリウレタン樹脂と、
(x)脂肪族ジイソシアネートのアダクト体、脂環族ジイソシアネートのアダクト体及び芳香族ジイソシアネートのアダクト体並びに
(y)イソシアヌレート重合体
からなる群から選ばれる少なくとも1種を反応させて得られる反応物からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
ポリカーボネートポリウレタン樹脂が、ポリカーボネートジオールと、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種を反応させて得られる反応物であって分子末端に水酸基を有する重量平均分子量が15,000〜150,000のポリカーボネートポリウレタン樹脂を主成分とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体のポリウレタン樹脂層C側に印刷層D及び基材層Eをこの順に設けてなる積層体。
【請求項7】
印刷層Dが、ポリエステルポリウレタン樹脂を含む請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
ポリエステルポリウレタン樹脂が、イソホロンジイソシアネートとポリカプロラクトンポリオールを反応させて得られる反応物を主成分とする請求項7に記載の積層体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ポリオレフィン樹脂層A、接着性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂層Bポリカーボネートポリウレタン樹脂を主成分とするポリウレタン樹脂層C、イソホロンジイソシアネートとポリカプロラクトンポリオールを反応させて得られる反応物を主成分とするポリエステルポリウレタン樹脂を含む印刷層D及び基材層Eをこの順に有する積層体。
【請求項2】
接着性ポリオレフィン樹脂が、
(1)エチレン系アイオノマー樹脂、
(2)エチレンと一般式CH=C(R)−COOR(式中、Rは水素またはメチル基を表し、Rは水素または炭素原子数1〜10個のアルキル基を表す)で表わされる単量体の共重合体、
(3)エチレンと無水マレイン酸の共重合体及び
(4)無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂
からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
接着性ポリオレフィン樹脂が、エチレンと一般式CH=C(R)−COOR(式中、Rは水素またはメチル基を表し、Rは水素または炭素原子数1〜10個のアルキル基を表す)で表わされる単量体と無水マレイン酸の共重合体及び無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
ポリウレタン樹脂層Cが、ポリカーボネートポリウレタン樹脂と、
(x)脂肪族ジイソシアネートのアダクト体、脂環族ジイソシアネートのアダクト体及び芳香族ジイソシアネートのアダクト体並びに
(y)イソシアヌレート重合体
からなる群から選ばれる少なくとも1種を反応させて得られる反応物からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
ポリカーボネートポリウレタン樹脂が、ポリカーボネートジオールと、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種を反応させて得られる反応物であって分子末端に水酸基を有する重量平均分子量が15,000〜150,000のポリカーボネートポリウレタン樹脂を主成分とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
少なくとも、ポリオレフィン樹脂層A、接着性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂層B及びポリカーボネートポリウレタン樹脂を主成分とするポリウレタン樹脂層Cをこの順に有する積層体と、イソホロンジイソシアネートとポリカプロラクトンポリオールを反応させて得られる反応物を主成分とするポリエステルポリウレタン樹脂を含む印刷層D及び基材層Eをこの順に有する積層体とを前記ポリウレタン樹脂層Cと前記印刷層Dが接するように熱接着することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−21530(P2006−21530A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165867(P2005−165867)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000176774)三菱化学エムケーブイ株式会社 (29)
【Fターム(参考)】