説明

積層体

【課題】本発明は、優れたハードコート層と反射防止層を備え、干渉縞の発生を抑えた積層体を提供する。
【解決手段】基材(1)の少なくとも片面に、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を分子中に含有する多官能性モノマーを主成分とする電離放射線硬化型樹脂(2)と導電性材料(3)を主成分とする電離放射線硬化型樹脂を含むハードコート層(4)、無機酸化物を含む反射防止層(7)を順次積層した積層体であって、
前記電離放射線硬化型樹脂(2)が、1分子中に−OH基を1個以上含有する多官能性モノマーを含み、かつ、基材(1)とハードコート層(4)の屈折率差が0.01以上0.1以内であり、かつ、ハードコート層(4)が、基材(1)を溶解または膨潤させる一種類以上の溶剤(5)及び導電性材料(3)が安定に分散される溶剤(6)を含む塗布液を用いて形成されていることを特徴とする積層体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたハードコート層と反射防止層を備え、干渉縞の発生を抑え、帯電防止性、透明性及び密着性に優れる積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種ディスプレイに用いられるプラスチックフィルムに硬度を付帯させる為にアクリル系UV樹脂等をコーティングし、ハードコート性を付帯させる方法が用いられてきた。しかし、これらの方法によってプラスチックフィルムの硬度は改善されるものの、プラスチックフィルムおよびアクリル系UV樹脂が帯電しやすく、作業時に塵やほこりが付着するという問題があり、帯電性の改善が強く要求されている。
【0003】
そこでこれらの問題点を改良するために各種導電性材料を添加することが行われているが、導電性材料を添加することで基材とハードコートの屈折率差が生じ、干渉縞が発生してしまう。
【0004】
以下に、特許文献を記す。
【特許文献1】特開2000−111760号公報
【特許文献2】特開2003−39586号公報
【特許文献3】特開2003−205563号公報 基材とハードコート層の屈折率差を少なくする為に、基材とハードコート層の間に中間層を設ける方式(特許文献1参照)では干渉縞が低減するだけに過ぎず、完全に消失するわけではない。
【0005】
また、基材上に、透明導電性層、ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層を順に積層する方法(特許文献2参照)では、導電層が基材とハードコート層の間に存在する為導電性を発現し難いという問題点もある。
【0006】
さらに、基材を溶解または膨潤させる溶剤を含む樹脂を用いてハードコート層を基材に塗布することによってハードコート層を形成することを特徴とする光学フィルム(特許文献3参照)も提案されているが、基材を溶解または膨潤させる溶剤はおもに導電性材料の分散を阻害するものであることが多く、干渉縞のない導電性ハードコートの作製は困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、優れたハードコート層と反射防止層を備え、干渉縞の発生を抑え、帯電防止性、透明性及び密着性に優れる積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、下記の手段によって解決できる。すなわち、
請求項1に係る発明は、基材(1)の少なくとも片面に、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を分子中に含有する多官能性モノマーを主成分とする電離放射線硬化型樹脂(2)と導電性材料(3)を主成分とする電離放射線硬化型樹脂を含むハードコート
層(4)、無機酸化物を含む反射防止層(7)を順次積層した積層体であって、
前記電離放射線硬化型樹脂(2)が、1分子中に−OH基を1個以上含有する多官能性モノマーを含み、基材(1)とハードコート層(4)の屈折率差が0.01以上0.1以内であり、かつ、ハードコート層(4)が、基材(1)を溶解または膨潤させる一種類以上の溶剤(5)及び導電性材料(3)が安定に分散される溶剤(6)を含む塗布液を用いて形成されていることを特徴とする積層体である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記電離放射線硬化型樹脂(2)が、1分子中に−OH基を1個以上含有する樹脂がペンタエリスリトールトリアクリレートからなり、かつ、ハードコート層(4)が、電離放射線硬化型樹脂(2)90〜30重量部に対し、導電性材料(3)10〜70重量部含むことを特徴とする請求項1記載の積層体である。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記導電性材料(3)が、ATO(酸化アンチモン/酸化スズ)、ITO(酸化インジウム/酸化スズ)、Sb25、TiO2、ZnO2、Ce23の金属酸化物粒子のうち少なくとも1種類以上を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の積層体である。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記基材(1)が、セルロース系フィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体である。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記溶剤(5)が、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンのうち少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体である。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記溶剤(6)が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ペンタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、セロソルブのうち少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体である。
【0014】
請求項7に係る発明は、前記溶剤(5)が、酢酸メチル25〜75重量部およびメチルセロソルブ75〜25重量部含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層体である。
【0015】
請求項8に係る発明は、前記反射防止層(7)が、下記一般式(8)および(9)で示される有機ケイ素化合物、またはそれからなる重合体との共重合体からなる低屈折率層(10)からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層体である。
【0016】
Si(OR)4 ・・・・・(8)
(但し、Rはアルキル基である)
R’mSi(OR)4-m ・・・・・(9)
(但し、R’はフッ素含有置換基、Rはアルキル基であり、mは置換数である)
【発明の効果】
【0017】
本発明により、優れたハードコート層と反射防止層を備え、干渉縞の発生を抑え、帯電防止性、透明性及び密着性に優れる積層体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の積層体の構成の一例を示す断面図である。図1に示すように、本発明の一実施例としての積
層体は、基材(1)の少なくとも片面に、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を分子中に含有する多官能性モノマーを主成分とする電離放射線硬化型樹脂(2)と導電性材料(3)を主成分とする電離放射線硬化型樹脂を含むハードコート層(4)、無機酸化物を含む反射防止層(7)を順次積層した積層体であって、前記電離放射線硬化型樹脂(2)が、1分子中に−OH基を1個以上含有する多官能性モノマーを含み、かつ、基材(1)とハードコート層(4)の屈折率差が0.01以上0.1以内であり、かつ、ハードコート層(4)が、基材(1)を溶解または膨潤させる一種類以上の溶剤(5)及び導電性材料(3)が安定に分散される溶剤(6)を含む塗布液を用いて形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
本発明で用いられる基材(1)としては、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロース系フィルムが用いられる。複屈折が少なく、透明性、屈折率、分散などの光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性の点に優れており、更に市販の溶剤によって容易に溶解または膨潤する為、本発明においては他のフィルムよりも好ましい。
【0020】
上記基材(1)には、各種安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等が添加されていても良い。また、基材(1)の厚さは特に限定されるものではないが、20〜200μmが好ましい。
【0021】
本発明で用いられる電離放射線硬化型樹脂(2)とは、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂も包含するものであって、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を分子中に含有する多官能性モノマーを主成分とする。多官能性モノマーとしては、1、4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビスβ‐(メタ)アクリロイルオキシプロピネート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、2、3‐ビス(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシメチル[2.2.1]ヘプタン、ポリ1、2−ブタジエンジ(メタ)アクリレート、1、2−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルヘキサン、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカンエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、10−デカンジオール(メタ)アクリレート、3、8−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルトリシクロ[5.2.10]デカン、水素添加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、1、 4−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、ヒドロキシピバリンサンエステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エポキシ変成ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。多官能モノマーは、単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、必要で有れば単官能モノマーと併用して共重合させることもできる。
【0022】
光重合開始剤としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。
【0023】
また、光増感剤としてトリエチルアミン、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール等の3級アミン、トリフェニルホスフィン等のアルキルフォスフィン系、β―チオジグリコール等のチオエーテル系をあげることが出来、これらを1種類あるいは2種類以上を混合して使用できる。
【0024】
さらに、性能改良のため、泡消剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤等を含有することができる。
【0025】
本発明で用いられる導電性材料(3)としては、ATO(酸化アンチモン/酸化スズ)、ITO(酸化インジウム/酸化スズ)、Sb25、TiO2、ZnO2、Ce23等の金属酸化物粒子が挙げられる。その中でも白色で透明性の優れたSb25の使用が望ましい。
【0026】
また、上記の導電性材料の添加により、後述するハードコート層(4)の表面に微細な凹凸が生じ、表面積が増大する。その為、ハードコート層(4)と後述する低屈折率層(10)との間で物理的吸着力が増大し、密着性が向上する。その結果、低屈折率層の耐擦傷性を向上させることが可能である。これらの金属酸化物微粒子の粒径は0.1μm以下であることが望ましく、0.1μmより大きくなるとヘイズが高くなり、ハードコートの透過率が低下する。
【0027】
本発明の積層体における電離放射線硬化型樹脂(2)が、1分子中に−OH基を1個以上含有する樹脂がペンタエリスリトールトリアクリレートからなり、かつ、ハードコート層(4)が、電離放射線硬化型樹脂(2)90〜30重量部に対し、導電性材料(3)10〜70重量部含むことを特徴とする。ハードコート層(4)は、特に電離放射線硬化型樹脂(2)80〜60重量部に対し、導電性材料(3)20〜40重量部の範囲が好ましい。
【0028】
ペンタエリスリトールトリアクリレートは、1分子中にアクリロイル基3個と−OH基1個を有する紫外線硬化型多官能性モノマーである。アクリル系紫外線硬化型樹脂に、分子中に−OH基を持つ多官能性モノマーを用いることによって、低屈折率層と高い密着性を備えた積層体を提供できる。
【0029】
ハードコート層(4)を硬化させる方法としては、例えば、紫外線照射、加熱等を用いることができる。紫外線照射の場合、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、フュージョンランプ等を使用することができる。紫外線照射量は、通常100〜800mJ/cm2程度である。ハードコート層(4)の膜厚は3μm以上あれば十分な強度となるが、塗工精度、取扱いから5〜7μmの範囲が好ましい。
【0030】
ハードコート層(4)は、ウェットコーティング法(ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等)により透明プラスチックフィルム基材(1)の少なくとも片面に塗工される。
【0031】
本発明で用いられる溶剤(5)としては、トリアセチルセルロースを溶解または膨潤させる溶剤として、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5
−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、またアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらにメチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。
【0032】
特に、溶剤(5)として、酢酸メチル25〜75重量部およびメチルセロソルブ75〜25重量部含むものが好ましく用いられる。
【0033】
本発明で用いられる溶剤(6)としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール類、またメチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、さらにメチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。
【0034】
また、これらの溶剤(5)および(6)はハードコート剤に対し、10〜80重量部が望ましく、特に50〜70重量部が好ましい。
【0035】
本発明の積層体における反射防止層(7)は、下記一般式(8)および(9)で示される有機ケイ素化合物、またはそれからなる重合体との共重合体からなる低屈折率層(10)からなることを特徴とするものである。
【0036】
Si(OR)4 ・・・・・(8)
(但し、Rはアルキル基である)
R’mSi(OR)4-m ・・・・・(9)
(但し、R’はフッ素含有置換基、Rはアルキル基であり、mは置換数である)
低屈折率層(10)を形成するコーティング剤で用いられる上記一般式(8)で表される有機ケイ素化合物としては、Si(OCH34、Si(OC254、Si(OC374、Si〔OCH(CH32)〕4、Si(OC494等が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。
【0037】
低屈折率層(10)を形成するコーティング剤で用いられる一般式(9)で表される有機ケイ素化合物としては、CF3(CH22Si(OCH33、CF3CF2(CH22Si(OCH33、CF3(CF22(CH22Si(OCH33、CF3(CF23(CH22Si(OCH33、CF3(CF24(CH22Si(OCH33、CF3(CF25(CH22Si(OCH33、CF3(CF26(CH22Si(OCH33、CF3(CF27(CH22Si(OCH33、CF3(CF28(CH22Si(OCH33、CF3(CF29(CH22Si(OCH33、CF3(CH22Si(OC253、CF3CF2(CH22Si(OC253、CF3(CF22(CH22Si(OC253、CF3(CF23(CH22Si(OC253、CF3(CF24(CH22Si(OC253、CF3(CF25(CH22Si(OC253、CF3(CF26(CH22Si(OC253、CF3(CF27(CH22Si(OC253、CF3(CF28(CH22Si(OC253、CF3(CF29(CH22Si(OC253等が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。
【0038】
上記一般式(8)、又は一般式(9)で表される有機ケイ素化合物を用いて重合体を、あるいは、一般式(8)で表される有機ケイ素化合物、若しくはその重合体と、一般式(
9)で表される有機ケイ素化合物、若しくはその重合体を用いて共重合体を作製する方法は限定されないが、加水分解によって作製する際の触媒としては、塩酸、シュウ酸、硝酸、酢酸、フッ酸、ギ酸、リン酸、アンモニア、アルミニウムアセトナート、ジブチルスズラウレート、オクチル酸スズ化合物、メタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、トリフロロ酢酸等が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。
【0039】
低屈折率層(10)は、通常、揮発性溶媒に希釈して塗布される。希釈溶媒として用いられるものは、組成物の安定性、ハードコート層(4)に対する濡れ性、揮発性などを考慮して、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチル等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のグリコールエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。
【0040】
低屈折率層(10)は、前述したウェットコーティング法により表面処理を行ったハードコート層上に塗工され、加熱乾燥により塗膜中の溶媒を揮発させ、その後、加熱、加湿、紫外線照射、電子線照射等を行い塗膜を硬化させる。
【0041】
低屈折率層(10)の屈折率は、前記透明プラスチックフィルム基材、ハードコート層のいずれの屈折率よりも低い値であり、また、この低屈折率層(10)の厚さdは、低屈折率層の屈折率をnとすると、nd=λ/4であることが好ましい。
【0042】
従来、通常のアクリル系紫外線硬化型樹脂バインダー(屈折率約1.50〜1.53)と導電性材料(屈折率約1.45〜2.8)からなるハードコート剤は、基材であるトリアセチルセルロースフィルム等のセルロース系フィルムとの屈折率差をなくすことが困難であり、その結果干渉縞が生じていた。そこで、本発明の積層体は、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロース系フィルムからなる基材(1)を溶解または膨潤させる溶剤(5)を用いることにより、基材とハードコート層界面に微小な凹凸を形成することにより、基材(1)とハードコート層(4)界面からの反射がなく、干渉縞のない積層体を提供することができる。さらに、導電性材料(3)が安定に分散される溶剤(6)を併用することにより、高い導電性をもつ積層体を提供できる。アクリル系紫外線硬化型樹脂に、分子中に−OH基を持つ多官能性モノマーを導入した電離放射線硬化樹脂(2)としての紫外線硬化型樹脂を用いることによって、低屈折率層(10)からなる反射防止層(7)と高い密着性を備えた積層体を提供できる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の具体的な実施例について詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0044】
積層体の性能は,下記の方法に従って評価した。
(a)光学特性
(a)―1 反射率測定:フィルム面に艶消しの黒色塗料を塗布した後、波長360〜800nmの光を入射角5゜とした場合の片面の反射率を測定した。
【0045】
(a)―2 ヘイズ値…積層体を写像性測定器[日本電色工業(株)製,NDH−20
00]を使用して測定した。
【0046】
(b)表面抵抗値
(b)―1 表面抵抗:JIS K6911に準拠して行った。
【0047】
(c)機械強度
(c)―1 耐擦傷性:基材表面をスチールウール〔ボンスター#0000:日本スチールウール(株)製〕により250g/cm2で10回擦り、傷の有無を目視判定した(スチールウール試験)。判定基準を以下に示す。
○:傷を確認することが出来ない。
△:数本傷を確認できる。
×:傷が多数確認できる。
(c)―2 密着性:基材表面を1mm角100点カット後、粘着セロハンテープ〔ニチバン(株)製工業用24mm巾セロテープ(登録商標)〕による剥離の有無を目視判定した(クロスカットテープピール試験)。
(c)―3 鉛筆硬度…JIS K5400に準拠し、試験機法により500g加重で評価した。
【0048】
<実施例1>
厚み80μm、屈折率1.49のトリアセチルセルロース(全光線透過率:93%、ヘイズ値:0.2%)上に、
ペンタエリスリトールトリアクリレート 80重量部
導電性金属酸化物(五酸化アンチモン、屈折率n=1.60) 20重量部
イルガキュアー184 3.5重量部
メチルエチルケトン 60重量部
1−ペンタノール 40重量部
を撹拌混合した塗布液を、バーコーティング法により乾燥後の膜厚が3μm程度になるように塗布、乾燥させ、高圧水銀灯により600mJ/cm2の紫外線を照射し、本発明の積層体を作製した。このフィルムの性能評価結果を表1に示す。
【0049】
<実施例2>
ペンタエリスリトールトリアクリレート 60重量部
導電性金属酸化物(五酸化アンチモン、屈折率n=1.60) 40重量部
イルガキュアー184 3.5重量部
酢酸メチル 30重量部
メチルセロソルブ 70重量部
とした以外は実施例1と同様にして本発明の積層体を作製した。このフィルムの性能評価結果を表1に示す。
【0050】
<実施例3>
本発明の積層体の性能と比較するための比較例として、
ペンタエリスリトールトリアクリレート 50重量部
導電性金属酸化物(五酸化アンチモン、屈折率n=1.60) 50重量部
イルガキュアー184 3.5重量部
メチルアルコール 100重量部とした以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。このフィルムの性能評価結果を表1に示す。
【0051】
<実施例4>
本発明の積層体の性能と比較するための比較例として、
ペンタエリスリトールトリアクリレート 100重量部
イルガキュアー184 3.5重量部
イソプロピルアルコール 100重量部とした以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。このフィルムの性能評価結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

表1の各実施例についての光学特性は図面で示してある。
【0053】
表1より、実施例1、2で得られた本発明の積層体は、耐擦傷性に優れ、干渉縞が認められない、優れたハードコート層と反射防止層を備え、干渉縞の発生を抑え、帯電防止性、透明性及び密着性に優れるものである。これに対して、実施例3、4で得られた本発明の積層体の性能と比較するための比較例で得られた積層体は、耐擦傷性に劣り、干渉縞の発生が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の積層体の構成の一例を示す断面図である。
【図2】実施例1で得られた積層体の光学特性を示す図である。
【図3】実施例2で得られた積層体の光学特性を示す図である。
【図4】実施例3で得られた積層体の光学特性を示す図である。
【図5】実施例4で得られた積層体の光学特性を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1・・・基材(1)
2・・・電離放射線硬化型樹脂(2)
3・・・導電性材料(3)
4・・・ハードコート層(4)
7・・・低屈折率層からなる反射防止層(7)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(1)の少なくとも片面に、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を分子中に含有する多官能性モノマーを主成分とする電離放射線硬化型樹脂(2)と導電性材料(3)を主成分とする電離放射線硬化型樹脂を含むハードコート層(4)、無機酸化物を含む反射防止層(7)を順次積層した積層体であって、
前記電離放射線硬化型樹脂(2)が、1分子中に−OH基を1個以上含有する多官能性モノマーを含み、基材(1)とハードコート層(4)の屈折率差が0.01以上0.1以内であり、かつ、ハードコート層(4)が、基材(1)を溶解または膨潤させる一種類以上の溶剤(5)及び導電性材料(3)が安定に分散される溶剤(6)を含む塗布液を用いて形成されていることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記電離放射線硬化型樹脂(2)が、1分子中に−OH基を1個以上含有する樹脂がペンタエリスリトールトリアクリレートからなり、かつ、ハードコート層(4)が、電離放射線硬化型樹脂(2)90〜30重量部に対し、導電性材料(3)10〜70重量部含むことを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記導電性材料(3)が、ATO(酸化アンチモン/酸化スズ)、ITO(酸化インジウム/酸化スズ)、Sb25、TiO2、ZnO2、Ce23の金属酸化物粒子のうち少なくとも1種類以上を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の積層体。
【請求項4】
前記基材(1)が、セルロース系フィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記溶剤(5)が、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンのうち少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記溶剤(6)が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ペンタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、セロソルブのうち少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
前記溶剤(5)が、酢酸メチル25〜75重量部およびメチルセロソルブ75〜25重量部含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
前記反射防止層(7)が、下記一般式(8)および(9)で示される有機ケイ素化合物、またはそれからなる重合体との共重合体からなる低屈折率層(10)からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層体。
Si(OR)4 ・・・・・(8)
(但し、Rはアルキル基である)
R’mSi(OR)4-m ・・・・・(9)
(但し、R’はフッ素含有置換基、Rはアルキル基であり、mは置換数である)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−35493(P2006−35493A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215511(P2004−215511)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】