積層体
【課題】機械用部材、自動車部品等として好適で、摺動性、耐表面傷付き性、耐熱性、金属との接着が良好であり、シャーリング加工において切断端部の剥離が少ない積層体を提供すること。
【解決手段】金属体の少なくとも一つの面に、金属接触層と表層とが順次積層された積層体であって、該金属接触層が、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)ポリアリールケトン樹脂を(A)/(B)=95/5〜5/95の質量比で含む樹脂成分100質量部に対して、(C)充填材を0〜100質量部、及び又は(D)固体潤滑剤を0〜100質量部の割合で含む樹脂組成物からなり、該表層が、(B)ポリアリールケトン樹脂100質量部に対して、(C)充填材0〜100質量部、及び又は(D)固体潤滑剤を0〜100質量部の割合で含む樹脂組成物からなる積層体である。
【解決手段】金属体の少なくとも一つの面に、金属接触層と表層とが順次積層された積層体であって、該金属接触層が、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)ポリアリールケトン樹脂を(A)/(B)=95/5〜5/95の質量比で含む樹脂成分100質量部に対して、(C)充填材を0〜100質量部、及び又は(D)固体潤滑剤を0〜100質量部の割合で含む樹脂組成物からなり、該表層が、(B)ポリアリールケトン樹脂100質量部に対して、(C)充填材0〜100質量部、及び又は(D)固体潤滑剤を0〜100質量部の割合で含む樹脂組成物からなる積層体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層間の接着性に優れた、熱可塑性樹脂組成物と金属との積層体に係り、特に摺動性、耐熱性、耐表面傷付き性、シャーリング等による切断端部の剥離が少なく、耐薬品性が良好で、機械用部材、自動車部品等として好適に使用できる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
摺動性、耐熱性、耐表面傷付き性が要求される機械用部材、自動車部品等として、金属表面を各種の固体潤滑剤を含んだ樹脂で被覆した樹脂被覆金属が使用されている。被覆する方法としては、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて金属面に溶剤コートする方法が一般的である。しかしながら、溶剤コート方法では被覆時に使用する溶剤が揮発して環境への影響を生じやすいという問題があり、溶剤を使用しない他の方法が要望されている。
具体的な方法としては、熱硬化性樹脂に代えて、リサイクル性に優れた熱可塑性樹脂の使用が検討されており、該熱可塑性樹脂の中でも、特に、ポリエーテルエーテルケトン樹脂やポリエーテルケトン樹脂などのポリアリールケトン樹脂は、耐熱性、難燃性、耐薬品性などに優れているため、航空機部品、自動車部品、機械部品、電気・電子部品を中心に多く採用されている。
しかしながら、ポリアリールケトン樹脂は、単独では金属と接着しにくいので、金属表面への積層が困難であった。
通常、該ポリアリールケトン樹脂を金属表面へ積層する方法としては、溶剤にはほとんど溶解しないために溶剤コーティングは極めて困難であり、溶射法(HVOFプロセス、例えば、特許文献1参照)や、粉体塗装法(例えば、特許文献2参照)が検討されている。
しかしながら、HVOFプロセスでは、ポリアリールエーテルケトン樹脂を溶射するために水素などの燃料ガスと酸素ガスを使用し、内部燃焼を用いるので樹脂の劣化のおそれや溶射後に残留応力の緩和が必要な場合があり、粉体塗装法ではポリアリールエーテルケトン樹脂を金属体表面に積層するために、ポリアリールエーテルケトン樹脂の粉体を金属体表面に付着させた後、例えば400℃程度での高温焼き付けが必要であり、加熱や冷却に時間がかかり、生産効率が良くないので、焼き付け時の生産コストが高いという問題点がある。また、粉体の融着により樹脂層を形成するため、樹脂層に内部空隙やピンホールが発生し易い。さらに、アルミニウムでは焼き鈍しが発生してアルミニウム基材の強度が低下するという問題がある。
【0003】
一方、銅箔やアルミニウム箔などの金属表面への積層が必要な電子回路板基材において、融点が高い結晶性樹脂としての耐熱性を生かすために、ポリアリールケトン樹脂と、金属との接着が良好なポリエーテルイミド樹脂との混合物が注目されてきた。
例えば、この混合物は銅箔と良好な接着性を示し、回路板基材に有用であることが開示されている(例えば、特許文献3参照)。さらに、この混合物を用いた、プリント配線基板や金属体との積層体及びその製造方法や熱融着性絶縁シートが開示されている(例えば、特許文献4、特許文献5参照)。
しかしながら、ポリアリールケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂との混合物は、金属との接着性は良好であるが、耐摩耗性、耐アルカリ性などの耐薬品性、摺動性に限界があるため、機械部品、自動車部品などの分野では必ずしも充分ではなく、用途に限界があった。
【0004】
【特許文献1】特開2002−39203号公報
【特許文献2】特開2003−48273公報
【特許文献3】特開昭59−115353号公報
【特許文献4】特開2002−212314公報
【特許文献5】特許第3514667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、機械部品、自動車部品等として好適で、特に金属体と熱可塑性樹脂層との接着性に優れ、摺動性、耐熱性、耐薬品性が良好な、熱可塑性樹脂と金属との積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、種々鋭意検討を重ねた結果、金属体の少なくとも一つの面に、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)ポリアリールケトン樹脂を含む金属接触層と、(B)ポリアリールケトン樹脂を含む表層とを順次積層した積層体が、上記課題を解決し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の積層体を提供するものである。
(1)金属体の少なくとも一つの面に、金属接触層と表層とが順次積層された積層体であって、該金属接触層が(A)熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)ポリアリールケトン樹脂を含む樹脂組成物からなり、該表層が、ポリアリールケトン樹脂(B)を含む樹脂組成物からなることを特徴とする積層体。
(2)金属接触層及び/又は表層が、更に(C)充填材を含む樹脂組成物からなる前記(1)に記載の積層体。
(3)金属接触層及び/又は表層が、更に(D)固体潤滑剤を含む樹脂組成物からなる前記(1)又は(2)に記載の積層体。
(4)金属接触層が、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)ポリアリールケトン樹脂を(A)/(B)=95/5〜5/95の質量比で含む樹脂組成物100質量部に対して、(C)充填材を0〜100質量部及び/又は(D)固体潤滑剤を0〜400質量部の割合で含む樹脂組成物からなり、表層が、(B)ポリアリールケトン樹脂100質量部に対して、(C)充填材を0〜100質量部及び/又は(D)固体潤滑剤を0〜100質量部の割合で含む樹脂組成物からなる前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の積層体。
(5)金属接触層が、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)ポリアリールケトン樹脂を(A)/(B)=95/5〜30/70の質量比で含む樹脂組成物100質量部に対して、(C)充填材を0〜100質量部及び/又は(D)固体潤滑剤を0〜100質量部の割合で含む樹脂組成物からなる前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の積層体。
(6)金属接触層と表層の厚さの比率が、1/99〜99/1の範囲である前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の積層体。
(7)金属体の厚さが0.01〜50mm、金属接触層の厚さが0.1〜800μm、表層の厚さが1〜1000μmである前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の積層体。
【0007】
(8)(A)成分の熱可塑性ポリイミド樹脂が下記構造式(1)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂又は下記構造式(2)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂を主成分とするものであり、(B)成分のポリアリールケトン樹脂が下記構造式(3)で表される繰り返し単位を有する結晶性ポリエーテルエーテルケトン樹脂を主成分とするものである前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の積層体。
【0008】
【化1】
【0009】
(9)(C)成分の充填材が板状である前記(2)〜(8)のいずれか1項に記載の積層体。
(10)(C)成分の充填材の平均粒子径が0.01〜200μmの範囲にある前記(2)〜(9)のいずれか1項に記載の積層体。
(11)(C)成分の充填材がマイカである前記(2)〜(10)のいずれか1項に記載の積層体。
(12)(D)成分の固体潤滑剤が黒鉛、フッ素樹脂、及び遷移金属硫化物から選ばれる少なくとも1種である前記(3)〜(8)のいずれか1項に記載の積層体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属との接着性に優れ、耐熱性、耐溶剤性、耐表面傷付き性、滑り性、摺動性が良好で、機械用部材、自動車部品等として好適に使用できる、熱可塑性樹脂と金属との積層体を提供することができる。
また、低温で形成できるために、金属基材硬さが低下する等の問題により使用できなかった金属材料の摺動部品についてもポリアリールケトン樹脂組成物からなる摺動層を形成することが可能となる。
さらに、従来の溶剤コート法による樹脂コート等の摺動部品に比べて、溶剤を使用しないため溶剤の環境への揮発拡散がなく環境負荷が低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の積層体は、熱可塑性樹脂と金属との積層体であり、金属体の少なくとも一つの面に、熱可塑性樹脂組成物からなる金属接触層と表層とが順次積層された積層体である。
本発明に使用する金属体としては、鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、アルミニウム合金、アルミニウム−シリコン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、銅、銀、金、黄銅、真鍮、青銅、ステンレス鋼、炭素鋼、鋳鉄、超合金(例として、NCF800、NCF600)などが挙げられる。また、鉄や炭素鋼に亜鉛、錫、クロム、ニッケル、亜鉛−アルミニウムなどのメッキを施した鋼材も使用することができる。これらのうちで、剛性が高く、安価であるという観点から、好ましくは、鉄、鋳鉄、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金である。さらに、錆を生じにくいという観点から、より好ましくはステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金である。
【0012】
ステンレス鋼としては、種々の合金組成のものがあり、例えば、SUS301、SUS301L、SUS302、SUS302B、SUS303、SUS303Se、SUS304、SUS304L、SUS304J1、SUS304J2、SUS305、SUS309S、SUS310S、SUS316、SUS316L、SUS317、SUS321、SUS329J1、SUS329J3L、SUS329J4L、SUS347、SUS403、SUS405、SUS410、SUS430、SUS434、SUS436L、SUS436J1L、SUS444、SUS447J1、SUS304cul、SUSXM7、SUSXM27、SUSXM15J1、SUS630、SUS631、SUH409、SUH21及びSUH409Lなどが挙げられる。
【0013】
アルミニウム、アルミニウム合金としては、たとえば、JIS H2118−2000、JIS H2211−1999、JIS H4000−1999、JIS H4040−1999、JIS H4080−1999、JIS H4090−1990、JIS H4100−1999、JIS H4140−1988、JIS H5202−1999、JIS H5302−1999に示された合金番号やJIS H0001−1998に示された質別記号のものを挙げることができ、具体的には、A1050、A1070、A1080、A1085、A1100、A1200、A1N00、A3203、A2011、A2014、A2017、A2023、A2024、A2219、A3003、A3004、A3104、A3203、A4032、A4043、A5005、A5052、A5056、A5083、A5086、A5454、A5652、A5N01、A6005A、A6060、A6061、A6063、A6082、A6N01、A7005、A7020、A7050、A7075、A7N01、A8021、A8079、AC1B、AC2A、AC4A、AC4B、AC4C、AC4D、AC5A、AC7A、AC8A、AC8B、AC8C、AC9A、AC9B、ADC1、ADC2、ADC3、ADC5、ADC6、ADC8,ADC10、ADC12、ADC14、A390、BA11、BA12等が挙げられる。また、上記金属には圧延、伸展や熱処理を加えたものなども使用することができる。
【0014】
金属体の形状は特に限定されないが、例えば、平面体、曲面体、波板体、筒体、管体、円盤状などが挙げられる。これらのうち、加工が容易なのは平面体であり、平面体としては、例えば、枚葉体、連続した帯状体(コイル)などが挙げられる。金属体の厚さは特に限定されないが、加工の容易さから、通常0.01〜50mm程度、好ましくは、0.05〜20mm程度、さらに好ましくは0.1〜15mm程度である。
金属体の表面仕上げは種々の方法により行うことができ、処理された表面としては、例えば、圧延処理、熱処理、酸洗処理などの処理を施された表面(例えば、JIS G0203−2000、JIS G4305−1999、AISI規格等に規定されるNo.1、No.2D、No.2B)、さらに研磨された表面(例えば、上記規格等に規定されるNo.3、No.4、#240、#320、#400)、冷間圧延と光輝処理を施された表面(例えば、上記規格等に規定されるBA)、研磨を施された表面(例えば、上記規格等に規定される、ヘアラインを意味するHL、無方向ヘアライン研磨仕上げを意味するバイブレーションであるNo.7、鏡面仕上げであるNo.8)などが挙げられる。また、他の表面処理法としては、ブラスト法によるショットブラスト、銀白色ダル調仕上げ、やビーズブラスト、ブラスト法による梨地肌仕上げ、ブライト仕上げ、化学発色、エンボス、エッチング、下地とは異なる金属によるメッキ仕上げ(例えば、金、銀、銅、アルミニウム、クロム等によるメッキ)などが挙げられる。
【0015】
これらのうちで、さらに、JIS B0601−1994に規定される表面粗さパラメータの十点平均粗さ(Rz)が0.01〜80μm程度の範囲のものが好ましく、さらに好ましくは0.4〜20μm程度のものである。Rzが0.01μm以上であると、熱可塑性樹脂と充填材とを含む金属接触層との接着性が良好となり、Rzが80μm以下であると、表面層の凹凸に対する影響が小さい。
また、JIS B0601−1994に規定される表面粗さパラメータの最大高さ(Ry)は、通常0.01〜100μm程度の範囲であり、好ましくは、0.5〜25μm程度である。Ryが0.01μm以上であると、金属体表面と金属接触層との間の接着強度が良好となり、100μm以下であれば、表面層の凹凸に対する影響が小さい。
同様に、金属体のJIS B0601−1994に規定される表面粗さパラメータの算術平均粗さ(Ra)は、通常0.001〜10μm程度の範囲であり、好ましくは0.05〜2.5μm程度の範囲である。
これらJIS B0601−1994に規定される表面粗さ(Rz、Ry、Ra)は市販の表面粗さ測定装置(一例として、小坂研究所株式会社製、表面粗さ測定装置、型式SE3−FK等)を使用して測定することができる。
【0016】
本発明の積層体を構成する金属接触層は、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)ポリアリールケトン樹脂を含む樹脂組成物からなる。(A)成分の熱可塑性ポリイミド樹脂は、その構造単位に芳香核結合及びイミド結合を含む熱可塑性樹脂であり、具体例として、ポリエーテルイミド樹脂が挙げられるが、特に制限されるものでない。具体的には、下記構造式(1)
【0017】
【化2】
【0018】
で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド[ゼネラルエレクトリック社製の商品名「Ultem 1000」(ガラス転移温度Tg:216℃)、「Ultem 1010」(ガラス転移温度:216℃)]、下記構造式(2)
【0019】
【化3】
【0020】
で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド[ゼネラルエレクトリック社製の商品名「Ultem CRS5001」(ガラス転移温度:226℃)]が挙げられ、そのほかの具体例として、ゼネラルエレクトリック社製の商品名「Ultem XH6050」(ガラス転移温度:247℃)、三井化学株式会社製の商品名「オーラムPL500AM」(ガラス転移温度:258℃)、などが挙げられる。これらのうちで、好ましくは非晶性のものであり、さらに好ましくは、上記構造式(1)又は(2)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂を主成分とするものである。ここで主成分とは、その含有量が50質量%を超える樹脂成分をいう。
該ポリエーテルイミド樹脂の製造方法は特に限定されるものではないが、通常、上記構造式(1)で表される繰り返し単位を有する非晶性ポリエーテルイミド樹脂は、4,4´−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)ジフタル酸二無水物とm−フェニレンジアミンとの重縮合物として、また上記構造式(2)で表される繰り返し単位を有する非晶性ポリエーテルイミド樹脂は、4,4´−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)ジフタル酸二無水物とp−フェニレンジアミンとの重縮合物として公知の方法によって合成することができる。
また、本発明で用いるポリエーテルイミド樹脂は、必要に応じてアミド基、エステル基、スルホニル基など共重合可能な基を有する他の単量体単位を含むものであってもかまわない。なお、(A)成分の熱可塑性ポリイミド樹脂は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
本発明の積層体において、金属接触層に使用する(B)成分のポリアリールケトン樹脂は、その構造単位に芳香核結合、エーテル結合及びケトン結合を含む熱可塑性樹脂であり、その代表例としては、ポリエーテルケトン(ガラス転移温度:157℃、結晶融解ピーク温度:373℃)、ポリエーテルエーテルケトン(ガラス転移温度:143℃、結晶融解ピーク温度:334℃)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(ガラス転移温度:153℃、結晶融解ピーク温度:370℃)等があり、また、必要に応じてビフェニル構造、スルホニル基など共重合可能な構造や基を有する他の繰り返し単位を含むものであってもかまわない。本発明においては、下記構造式(3)
【0022】
【化4】
【0023】
で表される繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂を主成分とするものが好適に使用される。ここで主成分とは、その含有量が50質量%を超える成分のことをいう。
この繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンは、ビクトレックス社製の商品名「PEEK151G」、「PEEK381G」、「PEEK450G」などとして市販されている。これらはいずれもガラス転移温度143℃、結晶融解ピーク温度334℃のものである。なお、(B)成分のポリアリールケトン樹脂は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明に係る金属接触層を構成する樹脂組成物において、(A)成分の熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)成分のポリアリールケトン樹脂の混合質量比は、(A)/(B)=95/5〜5/95の範囲が好ましく、より好ましくは、(A)/(B)=85/15〜30/70の範囲、さらに好ましくは、(A)/(B)=80/20〜45/55の範囲、特に好ましくは85/15〜50/50の範囲である。
(A)成分と(B)成分の合計100質量%に対し、(A)成分が95質量%以下であると、(B)成分のポリアリールケトン樹脂が持つ、優れた耐熱性や低い吸水特性を発揮させることができる。また、(A)成分が5質量%以上であると、金属接触層と金属体との接着性が良好となる。
また、(B)成分として結晶性のポリアリールケトン樹脂を使用する場合、(A)成分と(B)成分の合計100質量%に対し、(A)成分が80質量%以下であると、金属接触層を構成する樹脂組成物の結晶性が高くなり、また結晶化速度も速くなり、耐熱性が良好である。また、同様の場合、(A)成分が55質量%以上であると、結晶性のポリアリールケトン樹脂の結晶化に伴う体積収縮(寸法変化)が大きくなりにくく、金属体との接着において信頼性が得られる。これらのことから、(B)成分として、結晶性のポリアリールケトン樹脂を用いる場合には、(A)成分と(B)成分との混合質量比は(A)/(B)=75/25〜55/45とすることが好ましい。
【0025】
ここで、厚さ0.4mmのステンレス鋼板などの比較的硬い金属板の少なくとも一つの面に、ポリアリールケトン樹脂(A)とポリエーテルイミド樹脂(B)との樹脂組成物を金属接触層とし、ポリアリールケトン樹脂(B)を表層として積層して得た積層体においては、金属板と樹脂層との接着は良好であるがカッターナイフでは切断できないので、シャーリングなどの方法で切断する際、端部に剥離が生じる場合がある。このため、本発明では金属接触層への充填材の添加が好ましく、端部の剥離を低減する効果がある。
【0026】
本発明で用いる(C)成分の充填材としては、公知のものを使用することができ、例えば、クレー、ガラス、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウム、窒化珪素などの充填材、ガラス繊維やアラミド繊維、炭素繊維などの繊維状充填材、鱗片状(板状)粉体、例えば、合成マイカ、天然マイカ(マスコバイト、フロゴパイト、セリサイト、スゾライト等)、焼成された合成マイカや天然マイカ、ベーマイト、タルク、イライト、カオリナイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、スメクタイト、板状アルミナ、鱗片状チタン酸塩(例えば、鱗片状チタン酸マグネシウムカリウム、鱗片状チタン酸リチウムカリウム等)などが挙げられる。これらのなかで、合成マイカ、天然マイカ、焼成された合成マイカや天然マイカ、ベーマイト、タルク、イライト、カオリナイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、スメクタイトなどの鱗片状(板状)粉体、板状アルミナ、鱗片状チタン酸塩が好ましく、合成マイカ、天然マイカがより好ましい。これらの充填材は1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
この充填材の形状としては、板状が好ましく、平均粒径が0.01〜200μm程度、好ましくは0.1〜20μm程度、より好ましくは、1〜10μm程度、平均アスペクト比(粒径/厚み)は通常1〜100程度、好ましくは5〜50程度さらに好ましくは、10〜30程度のものが好適に用いられる。
【0027】
(C)成分の充填材としては表面処理剤により表面処理されたものを用いてもよい。表面処理剤としては、アミノシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、アクリロキシ基又はメタクリロキシ基を有するシラン化合物などのシランカップリング剤、珪素原子に炭素数1〜30の範囲の直鎖、分岐又は環状の炭化水素基が1又は2個結合したアルコキシシラン、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコネートカップリング剤などが挙げられる。表面処理剤の使用量は、通常、充填材100質量部に対して0.1〜8質量部、好ましくは0.5〜3質量部の範囲である。
【0028】
表面処理の方法としては、既知の種々の方法が適用できる。例えば、表面処理剤を溶解した溶液中で充填材と表面処理剤を接触させた後、溶媒を除去する湿式法、表面処理剤を溶解した溶液と充填材とを噴霧、撹拌等の方法により接触させて、充填材表面に表面処理剤をまぶした後、溶媒を除去する半湿式法、熱可塑性樹脂と充填材及び表面処理剤又は少量の溶媒に溶解させた表面処理剤を混合後、撹拌するインテグラルブレンド法などが挙げられる。充填材表面に効率よく表面処理剤を付着させるという観点から、湿式法、半湿式法が好ましい。
溶媒中の表面処理剤の濃度は0.1〜80質量%程度の濃度とすることができる。溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、ヘキサン等の除去しやすいものが好ましい。この溶媒は、少量の水や加水分解を促進する少量の酸成分を含むものであってもよい。
上記表面処理方法により、充填材と、溶媒に希釈した又は希釈しない表面処理剤とを接触混合した後、数時間から数日間空気中に放置し、空気中の水分と接触させて加水分解を起こさせるとともに、使用した溶媒を蒸発除去することが推奨される。
この蒸発除去の処理は、アルコキシシリル基の加水分解反応や生成したヒドロキシシリル基を充填材表面のヒドロキシル基と脱水縮合反応させ、かつ、発生したアルコールや使用した溶媒除去のため、常圧下ないし減圧下に、通常、80〜150℃程度、好ましくは100〜130℃程度にて行なう。処理時間は通常4〜200時間程度であり、好ましくは24〜100時間程度である。
金属接触層を構成する樹脂組成物に使用する(C)成分の充填材の量は、上述した(A)成分の熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)成分のポリアリールケトン樹脂の合計量100質量部に対して、0〜100質量部が好ましく、より好ましくは10〜55質量部、更に好ましくは15〜45質量部の範囲である。充填材が100質量部以下であると、金属接触層が著しく脆くなることがない。一方、10質量部以上であると、本発明の積層体をシャーリング等により切断する際に端部の剥がれが少なくなり、金属接触層と金属体との密着が向上し、且つ、線膨張係数の低減効果による積層体の形状安定性が向上する。
【0029】
金属接触層を構成する樹脂組成物には、固体潤滑剤を含んでも良い。金属接触層の固体潤滑剤は金属接触層の摺動性や摩耗性を向上させ、表層が摩耗した場合に引き続いて摩耗が金属層に達するのを遅らせる効果がある。また、本発明の積層体に使用する表層フィルムや金属接触層と表層とが積層された積層フィルムの端材や耳などをリサイクルして使用することにより金属接触層を構成する樹脂組成物中に固体潤滑剤が混入してもよい。金属接触層や表層を構成する樹脂組成物に含有される固体潤滑剤としては、フッ素樹脂、黒鉛、遷移金属硫化物、六方晶窒化硼素等の材料が例示される。
【0030】
上記フッ素樹脂としては、分子中にフッ素原子を含有する高分子化合物であれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。このようなものとして、例えば、(a)分子内に、−(CF2CF2)−で表わされる繰り返し構造単位を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE);(b)分子内に、−(CF2CF2)−および−〔CF(CF3)CF2〕−で表わされる繰り返し構造単位を有し、好ましくは、−(CF2CF2)−で表される繰り返し構造単位を99〜80質量%と−〔CF(CF3)CF2〕−で表わされる繰り返し構造単位を1〜20質量%とからなる、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP);(c)分子内に、−(CF2CF2)−および−〔CF(OCmF2 m+1)CF2〕−(式中、mは1〜16の範囲、好ましくは1〜10の範囲の正の整数)で表される繰り返し構造単位を有し、好ましくは、−(CF2CF2)−で表わされる繰り返し構造単位を99〜92質量%と、−〔CF(OCmF2 m+1)CF2〕−で表わされる繰り返し構造単位を1〜8質量%とからなる、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、(d)分子内に、−(CF2CF2)−および−(CH2CH2)−で表される繰り返し構造単位を有し、好ましくは、−(CF2CF2)−で表わされる繰り返し構造単位を90〜74質量%と、−(CH2CH2)−で表わされる繰り返し構造単位を10〜26質量%とからなる、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE);(e)分子内に、−(CFClCF2)−および−(CH2CH2)−で表される繰り返し構造単位を有するクロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体;(f)分子内に、−(CF2CH2)−で表わされる繰り返し構造単位を有するポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられ、さらに、これらフッ素樹脂は、この樹脂の本質的な性質を損なわない範囲で他のモノマーに基づく繰り返し構造単位を含んでいるものも挙げられる。
【0031】
上記他のモノマーとしては、テトラフルオロエチレン(ただし、PFA、FEP及びETFEを除く。)、ヘキサフルオロプロピレン(ただし、FEPを除く。)、パーフルオロアルキルビニルエーテル(ただし、PFAを除く。)、パーフルオロアルキルエチレン(アルキル基の炭素数1〜16)、パーフルオロアルキルアリルエーテル(アルキル基の炭素数1〜16)、及び、式:CF2=CF[OCF2CF(CF3)]nOCF2(CF2)p Y(式中、Yはハロゲン、nは0〜5の整数、pは0〜2の整数を表す。)で示される化合物等が挙げられる。他のモノマーに基づく繰り返し構造単位の量は、重合体の50質量%以下、好ましくは、0.01〜45質量%である。
【0032】
これらフッ素樹脂のうちで、好ましくは、(a)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、(b)テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、(c)テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)より選ばれるものであり、更に好ましくは、(a)PTFEである
【0033】
上記フッ素樹脂の分子量は特に限定されないが、溶融するPTFEの場合には、特に、溶融粘度が380℃において100万Pa・s以下のものが好ましい。これらのフッ素樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記フッ素樹脂は、成形用の粉末であっても固体潤滑材用の微粉末であってもよい。ポリテトラフルオロエチレンの市販品としては、例えば三井・デュポンフロロケミカル社製のテフロン7JやTLP−10、旭硝子(株)製のフルオンG163、ダイキン工業(株)製のポリフロンM15やルブロンL5等が挙げられる。
【0034】
本発明で固体潤滑剤として使用される黒鉛としては、天然鱗片状黒鉛、天然土状黒鉛、人造黒鉛、熱分解黒鉛等が挙げられ、好ましくは、天然鱗片状黒鉛、人造黒鉛である。天然鱗片状黒鉛は、外見が板状、うろこ状、葉状、針状を呈するものを大部分含む天然産の黒鉛である。人造黒鉛はコークスとピッチの混合物等の炭素源を高温で焼成して得られる塊状物を粉砕して得られるものや気相成長により製造される結晶化度の高いタイプのものが好ましい。熱分解黒鉛は、コークス等の炭素源を約2500℃ないし3000℃の高温で焼成して黒鉛化して得られるものである。これら、天然鱗片状黒鉛、人造黒鉛、熱分解黒鉛は、天然土状黒鉛に比べ二酸化珪素、珪酸塩化合物等の灰分や不純物、揮発分が少なく、耐熱性、潤滑性に優れており、また、樹脂中に配合した場合にも樹脂劣化が起こりにくい。また、本発明で使用される黒鉛の平均粒径は、レーザー回折法により測定した平均粒径が1〜100μm程度であり、4〜80μm程度のものが好ましく、5〜60μm程度のものが更に好ましい。
平均粒径が100μm以下であれば樹脂成分中での均一分散や良好な成形フィルム外観が得やすく、1μm以上であれば、樹脂成分への配合や混練時に粉体の飛散等のハンドリングトラブルが起こりにくく、押出機等を用いて溶融混練する場合、スクリューへのかみこみ不良による計量不安定や、押出物の形状不安定による引き取り性悪化などの問題が起きにくい。
本発明に使用する黒鉛中の灰分量は少ない方が好ましく、通常2質量%以下、さらに好ましくは、0.05〜1質量%である。2質量%以下の範囲であれば、樹脂成分中に配合して使用する際、加工時の樹脂成分の熱劣化が起こりにくい。
また、黒鉛中の揮発分は少ない方が好ましく、通常2質量%以下、好ましくは1質量%以下である。2質量%以下の範囲であれば、樹脂成分との溶融混練時に発泡が少なくなる。
これらの黒鉛の市販品の例としては、株式会社中越黒鉛工業所の商品名CPB−3(天然鱗片状黒鉛),CPB−30,CPB−3000、日本黒鉛工業(株)の商品名CP、特CP、CPB、Timcal社製、Timrex KS−44(人造黒鉛)等が挙げられる。
【0035】
本発明で固体潤滑剤として使用される遷移金属硫化物としては、二硫化モリブデン、二硫化タングステンなどが挙げられ、金属接触層を構成する熱可塑性樹脂、及び/又は表層を構成する熱可塑性樹脂中に分散させるために、粉体であることが好ましい。平均粒径は、0.1〜20μm程度が好ましく、より好ましくは、0.3〜11μm程度である。平均粒径が0.1μm以上であれば、熱可塑性樹脂成分との溶融混練時に、粉体の飛散等によるハンドリングトラブルが起こりにくく、20μm以下であれば、熱可塑性樹脂成分中への分散不良やフィルム外観不良が起こりにくい。
【0036】
二硫化モリブデン粉末の具体例として、日本黒鉛工業株式会社製 商品名モリパウダーA(平均粒径0.5μm)、商品名モリパウダーB(平均粒径3μm)、商品名モリパウダーC(平均粒径0.3〜0.4μm)、住鉱潤滑剤株式会社製、商品名MOS等が挙げられる。
二硫化タングステンの具体例として、日本潤滑剤株式会社製、商品名タンミックA(平均粒径1μm)、タンミックB(平均粒径0.6μm)等が挙げられる。
六方晶窒化硼素(略号:h−BN)は、金属接触層の樹脂、及び/又は表層の樹脂中に分散させるために、粉体であることが好ましい。このものの平均粒径は0.01〜100μm、好ましくは、0.1〜20μm、より好ましくは3−15μm、である。平均粒径が0.1μm以上であれば、樹脂成分との溶融混練時に、粉体の飛散等によるハンドリングトラブルが起こりにくく、100μm以下であれば、樹脂成分中への分散不良やフィルム外観不良が起こりにくい。比表面積は、0.1〜100m2/g、好ましく
は、1〜20m2/gである。比表面積が0.1m2/g以上、及び100m2/g以下であれば分散不良が起こりにくい。
【0037】
本発明で固体潤滑剤として使用される六方晶窒化硼素の具体例として、水島合金鉄株式会社、GEスペシャルティ・マテリアルズ・ジャパン株式会社等より販売されているものが挙げられる。
【0038】
これら(D)成分の固体潤滑剤の中で、さらに好ましくは、前記のPTFE、天然鱗片状黒鉛である。
金属接触層において使用する上記(D)成分の固体潤滑剤の量は、上述した(A)成分の熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)成分のポリアリールケトン樹脂の合計量100質量部に対して、0〜100質量部が好ましく、より好ましくは5〜55質量部、更に好ましくは10〜45質量部の範囲である。
金属接触層には(D)成分が含まれなくとも、金属体や表層との接着は良好であるが、フィルム成形時の端部のリサイクルに伴い(D)成分が含まれる場合に、(D)成分が100質量部以下であれば、金属接触層の成形加工性に著しい低下が起こりにくい。
金属接触層を構成する樹脂組成物中に、(C)成分と(D)成分を併用する場合、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対する(C)成分と(D)成分の合計質量は、0〜100質量部、好ましくは、0〜55質量部である。(C)成分と(D)成分の合計質量が100質量部以下であれば、溶融混練時のサージング等の不具合が起こりにくい。
金属接触層を構成する樹脂組成物には、その性質を損なわない程度に、(A)成分、(B)成分以外の樹脂や(C)成分の充填材、(D)成分の固体潤滑剤以外の各種添加剤、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、着色剤、滑剤、難燃剤等を適宜配合してもよい。また、(C)成分の充填材及び(D)成分の固体潤滑剤を含めた各種添加剤の混合方法は、公知の方法を用いることができる。
【0039】
混合の組合せの例として、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の3成分の例を下記に示す。
(I)(A)成分、(B)成分と(C)成分の3成分を同時に混合・分散させる方法、
(II)(A)成分と(B)成分をあらかじめ混合し、この混合物に(C)成分を混合・分散させる方法、
(III)(A)成分又は(B)成分に、(C)成分をあらかじめ混合分散させて、(A)成分と(C)成分の混合物又は(B)成分と(C)成分の混合物を調製し、次いで(A)成分と(C)成分の混合物に(B)成分を混合するか、あるいは(B)成分と(C)成分の混合物に(A)成分を混合する方法、
(IV)(A)成分及び(B)成分それぞれに(C)成分を混合分散させた混合物を調製し、これらの混合物を更に混合する方法[この場合、(A)成分に対する(C)成分の比率と(B)に対する(C)成分の比率は同じでも異なっていてもよい。]、
(V)複数種の(A)成分及び/又は複数種の(B)成分を使用する場合、これらのうちの少なくとも1種に、高濃度に(C)成分を混合分散させた混合物と、配合すべき他の(A)成分及び/又は(B)成分を混合するか、又は上記混合物と、配合すべき他の(A)成分及び/又は(B)成分に低濃度に(C)成分を混合分散させた混合物を混合分散させる方法などが挙げられる。
(D)成分を使用する場合も、上記混合方法に準じて混合分散させることができる。
【0040】
混合、分散の方法としては、(A)成分と(B)成分、(C)成分及び/又は(D)成分と所望により用いられる各種添加剤をそれぞれ別々に単軸溶融混練機や二軸溶融混練機に供給して混合することもでき、複数の供給部を有する溶融混練機を用いて各成分を逐次的に溶融混練機に供給することもできる。また、あらかじめヘンシェルミキサー(商品名)、スーパーミキサー、リボンブレンダー、タンブラーミキサーなどの混合機を利用してそれらを予備混合した後、溶融混練機に供給して、具体的には350℃〜430℃の温度で溶融混練することもできる。また、目的により、水性媒体や有機溶媒に分散せしめて湿式法により混合することも可能である。
さらに、(C)成分及び/又は(D)成分や各種添加剤を、(A)成分及び/又は(B)成分をベース樹脂として高濃度(代表的な含有量としては10〜60質量%程度)に混合したマスターバッチを別途作製しておき、これを使用する樹脂に濃度を調整して混合し、ニーダーや押出機等を用いて機械的にブレンドする方法などが挙げられる。上記混合方法の中では、マスターバッチを作製し、混合する方法が分散性や作業性の点から好ましい。
混合された樹脂組成物は、成分の溶融混合分散に続いて直接フィルム状に成形しても良く、また、一旦ストランドないしはシート状に押し出され、カッティングされてペレット、顆粒、粉体等の成形加工に適した形態で得てもよい。
本発明において、上記金属接触層の厚さは、特に制限されるものではないが、通常0.1〜800μm程度であり、成形が比較的容易であるという観点から2〜200μm程度が好ましい。
【0041】
本発明の積層体を構成する表層は、(B)ポリアリールケトン樹脂又はこれと(C)充填材を含む樹脂組成物、及び又は(D)固体潤滑剤を含む樹脂組成物からなる。(B)ポリアリールケトン樹脂は、上記金属接触層において例示したものと同様のものを使用することができ、そのポリアリールケトン樹脂の種類は、金属接触層において使用されるものと同じであっても異なっていてもよい。表層においては、上記構造式(3)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンを使用することが好ましい。
表層において使用する(C)充填材は、上記金属接触層において例示したものと同様のものを使用することができ、その充填材の種類は、金属接触層において使用されるものと同じであっても異なっていてもよい。
表層に使用する(C)充填材の量は、(B)ポリアリールケトン樹脂100質量部に対して、0〜100質量部の範囲である。添加する充填材が100質量部以下であると、表層が著しく脆くなることがない。この充填材の添加により表層の鉛筆硬度が向上し、線膨張係数の低減による積層体の形状安定性が向上する。このことから好適な充填材の添加量は、(B)成分のポリアリールケトン樹脂100質量部に対して、10〜55質量部の範囲が好ましく、より好ましくは、15〜45質量部の範囲である。
表層に使用する(D)固体潤滑剤は、上記金属接触層において例示したものと同様のものを使用することができ、その固体潤滑剤の種類は、金属接触層において使用されるものと同じであっても異なっていてもよい。
【0042】
表層に使用する(D)固体潤滑剤の添加量は、(B)ポリアリールケトン樹脂100質量部に対して、0〜400質量部の範囲がよく、さらに添加する固体潤滑剤が100質量部以下であると、表層が著しく脆くなることがなく好ましい。この固体潤滑剤の添加により表層の摩擦係数が低減できる。このことから好適な固体潤滑剤(D)の添加量は、(B)成分100質量部に対して10〜55質量部の範囲がより好ましく、さらに好ましくは、15〜45質量部の範囲である。
表層を構成する樹脂組成物に、(C)成分と(D)成分を併用する場合、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対する(C)成分と(D)成分の合計質量は、0〜100質量部が好ましく、より好ましくは、0〜55質量部である。(C)成分と(D)成分の合計質量が100質量部以下であれば、溶融混練時のサージング等の不具合が起こりにくい。
【0043】
表層を構成する樹脂組成物[(B)成分単独の場合も含む。]には、必要に応じて、(B)成分以外の樹脂や(C)成分の充填材、(D)成分の固体潤滑剤以外の各種添加剤、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、着色剤、滑剤、難燃剤等を適宜配合してもよい。
(C)成分の充填材、及び/又は(D)成分の固体潤滑剤や各種添加剤の混合方法は、公知の方法を用いることができる。混合の組合せの例として、(B)成分、及び(D)成分からなる2成分の例を下記に示す。
(VI)(B)成分と(D)成分の2成分を同時に混合・分散させる方法、
(VII)(B)成分に、高濃度に(D)成分を混合分散させた混合物をあらかじめ調製し、この混合物に更に(B)成分を混合・分散させる方法、
(VIII)(B)成分に(D)成分を異なる濃度に混合分散させた複数種の混合物をあらかじめ調製し、これらの混合物を混合する方法、
(IX)複数種の(B)成分及び/又は複数種の(D)成分を使用する場合、(B)成分の少なくとも1種に、高濃度に(D)成分を混合分散させた混合物と、配合すべき他の(B)成分を混合するか、又は上記混合物と、配合すべき他の(B)成分に低濃度に(D)成分を混合分散させた混合物を混合・分散させる方法、
などが挙げられる。混合・分散は、上記金属接触層における方法と同様の方法により行うことができる。
【0044】
表層の厚さは、特に制限されるものではないが、通常1〜1000μm程度であり、成形が比較的容易であるという観点から10〜200μmが好ましい。
金属接触層と表層の厚さの比率は、通常、金属接触層の厚さ/表層の厚さの比が、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10の範囲である。表層の比率が1より高いと摺動性、摩耗性と表層の機械的強度に優れ、金属接触層の比率が1より高いと金属接触層の機械的強度と接着強度に優れる。
また、金属接触層と表層を合わせて共押出により積層フィルムとして成形し、冷却前又は冷却後に金属体と積層する場合に、上記厚さ比率の範囲であれば、各層が安定して成形できる。一方、摺動性と摩耗性に優れる表層比率が高いと積層体の寿命が長くなる。この観点から、より好ましくは、金属接触層の厚さ/表層の厚さの比が、10/90〜70/30である。
【0045】
本発明の積層体においては、本発明の主旨を超えない範囲で、金属接触層と表層の間に、金属接触層や表層と同じ成分を含む層や、他の成分よりなる層を介在させた積層構造を有するものであってもよい。
【0046】
本発明の積層体を構成する金属接触層及び表層の成形方法としては、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法等の公知の方法が挙げられる。例えば、押出部先端の断面形状が長方形や長方形類似形状のダイ、具体的にはTダイ、Iダイなどフィルム押出用のダイスより押出されたフィルム状の樹脂組成物を冷却体に接触させて冷却する押出キャスト法、カレンダー法等を採用することができ、特に限定されるものではないが、フィルムの製膜性、安定生産性等の面から、TダイやIダイなどフィルム押出用のダイスと冷却体を用いる押出キャスト法が好ましい。上記冷却体としては、表面の材質が金属やゴム、繊維などよりなり、形態はロールやベルト、シームレスベルトなどが挙げられる。
これらのうちで、冷却装置が単純で取り扱い易いという理由から、冷却体としてロールを用いることが好ましい。その一例として、押出機より溶融した樹脂組成物が導管を経てダイに送り込まれ、ダイの先端よりフィルム状に押出され、冷却用の金属ロールとゴムロールに挟まれてフィルム状に形状固定・冷却され、続いて、金属ロール側に巻き付いて冷却されて、巻き取り機に送られる。フィルムは必要に応じて、金属ロールと巻き取り機の間にさらに他のロールや、冷却エアーにより冷却される。
【0047】
押出キャスト法での成形温度は、組成物の流動特性や製膜性等によって適宜調整されるが、概ねガラス転移温度ないしは融点以上、430℃以下、好ましくは、350〜400℃、さらに好ましくは380〜395℃である。
ロール等の冷却体の表面温度は、通常、各層を構成する樹脂成分のガラス転移温度ないしは融点以下の温度である。金属接触層を形成する場合、冷却体の表面温度は、通常30〜175℃程度、好ましくは90〜140℃の範囲である。30℃以上であると、冷却体表面に空気中の水分が凍って付着することを避けることができ、175℃以下であると、冷却体との接触により形成された形状が変化することを防ぐことができる。表層を形成する場合、冷却体の表面温度は、通常30〜155℃程度、好ましくは90〜141℃程度の範囲である。30℃以上であると、冷却体表面に空気中の水分が凍って付着することを避けることができ、175℃以下であると、冷却体との接触により形成された形状が変化することを防ぐことができる。冷却体上面に熱電対や温度指示体を接触させる接触法、赤外線温度計など光や電磁波を用いる非接触法などで測定することができる。
冷却体の表面温度の好適範囲は、冷却体の温度制御機構や、オイル、水などの循環冷媒等熱媒体の温度を適切に選択することにより制御することができる。
【0048】
本発明の積層体を製造する際の金属体、金属接触層及び表層の積層方法は、特に限定されないが、例えば、上記金属体と、あらかじめフィルム状に成形した金属接触層と表層を重ね合わせて圧力をかけながら加熱して積層するプレス成形、金属体と、あらかじめフィルム状に成形した金属接触層と表層を同時に又は別々に加熱ロール接触や赤外線、熱風などにより加熱した後に重ね合わせ、ロールやプレスにより圧力をかけて密着させる方法、金属接触層を構成する樹脂組成物と、表層を構成する樹脂組成物をそれぞれ別々の押出機で溶融混練してそれぞれ別々のダイ又は多層のダイ内で積層し、フィルム状に押し出して冷却せずにそのまま金属体表面に載せて、金属体とともに加熱プレス又は加熱ロールに挟んで積層する方法、又は金属接着層と表層を積層フィルムとして押し出して一旦冷却した後、金属体と加熱プレス又は加熱ロールに挟んで積層する方法などが挙げられる
積層温度は、各層に使用される樹脂成分の融解温度や、ガラス転移温度、充填材や固体潤滑剤の量比により適宜選択されるが、通常350〜390℃、好ましくは360〜370℃である。また、金属接触層と表層との積層フィルムを使用する場合は、210〜390℃、好ましくは230〜280℃の範囲である。210℃以上で接着強度が良好となり、390℃以下では樹脂成分の急激な劣化を避けることができる。
加熱の時間は、積層方法と積層温度と求められる接着強度により適宜選択されるが、通常0.01秒以上、好ましくは0.1秒〜500分の範囲である。0.01秒以上時間の選択で接着強度を向上に効果があり、500分以下の短い時間の選択で樹脂成分の劣化を避けることができる。
圧力は、積層装置、温度、時間と求められる接着強度、金属体の強度により適宜選択されるが、通常0.1MPa以上、好ましくは1MPa〜100MPaである。また、プレス成形により積層する場合、好ましくは2〜10MPaの範囲である。0.1MPa以上で接着強度を高める効果が得られ、100MPa以下で、金属接着層や表層の異常な変形を避けることができる。
【0049】
上記積層の際に使用する金属体は連続したコイル、帯板やカットされた板の状態でよく、金属接触層、表層もそれぞれ連続した巻きやカットされた枚葉の形態で積層に供してよい。
また、金属体と金属接触層との接着向上のため、アミノシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤などの使用も可能である。
本発明の積層体の用途としては、回転摺動や往復摺動部分を有する機械部品、自動車部品、スラスト軸受けやジャーナル軸受け等の各種軸受け、自動車エンジンルーム内部品や隔壁、ドア摺動部品、ブレーキ部品、エネルギー発生機器部品、熱遮蔽板、エアーコンプレッサーの斜板、シュー、各種機器の筐体などが挙げられる。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値及び評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向と呼ぶ。
【0051】
(1)切断端部の剥離状態
金属部分の厚さが1mm以下の積層体については、生野機械株式会社製のシャーリング(刃渡り約1000mm、足踏み式)を用い、積層体を幅3cm、長さ20cmの短冊状に3枚切断し、長辺端部に生じる剥離の有無を目視にて観察し、以下の4ランクに分けて評価した。なお、固定刃側の切断端部と可動刃側の切断部の剥離発生状態が異なる場合は、剥離の長さや幅が大きい方の端部の剥離状態を評価し、さらに、上記短冊状試験片切断後の残りの部分の切断端部剥離状態も観察し、剥離の長さや幅が大きければそのものを評価結果とした。
ランク1:端部の剥離が生じていないか、又は剥離幅の最大値が0.5mm以下。
ランク2:剥離幅の最大値が0.5mm超、かつ1mm以下。
ランク3:剥がれが端部全体に生じており、剥離幅は少なくとも部分的に1mm超。
ランク4:シャーリングによる切断後、室温にて2日間状態調節中に、剥がれが端部から剥離幅1mmを超えて徐々に広がり、積層面の少なくとも10%が剥離する状態。
【0052】
(2)切れ目周囲の剥離状態
金属体部分の厚さが1mmを超える積層体については、シャーリングにて切断できないので、カッターナイフにて樹脂面に2cm間隔の平行な直線状の切れ目を3本入れ、さらにそれらの直線の中心付近にそれらの直線と直角方向に幅2cmの直線上の切れ目を平行に3本入れ、剥離の状態を目視にて観察した。また、切れ目の部分にカッターナイフ先端を差し込んで切れ目部分の剥離を試みた。切れ目部分に生じる剥離の有無を目視にて観察し、以下の4ランクに分けて評価した。
ランク1:切れ目の剥離が生じていないか、又は剥離幅の最大値が0.5mm以下。
ランク2:切れ目の剥離幅の最大値が0.5mm超、かつ1mm以下。
ランク3:剥がれが切れ目全体に生じており、剥離幅は少なくとも部分的に1mm超。
ランク4:カッターナイフによる切断後、室温にて2日間状態調節中に、剥がれが切れ目部分から剥離幅1mmを超えて徐々に広がり、積層面の少なくとも10%が剥離する状態。
【0053】
(3)剥離強度
金属部分の厚さが1mm以下の積層体については、得られた積層体を上記シャーリングにより、幅3cm、長さ20cmの短冊状に切断し、熱可塑性樹脂面の長さ20cmの両辺端部より内側に5mmの位置にカッターナイフで直線状の切れ目を作製し、さらに、長さ3cmの片方の辺より内側に約3〜5cmの位置に長さ3cmの辺にほぼ並行にカッターナイフで切れ目を作製し、その位置を積層体面の上下に繰り返し折り曲げて剥離強度測定用の剥離箇所を作製し、試験片とした。
また、金属体部分の厚さが1mmを超える積層体については、シャーリングによる切断を行わず、積層体樹脂面に、カッターナイフにて2cm間隔の平行な直線状の切れ目を5本入れ、さらにそれらの直線の端部から2〜3cmの位置にそれらの直線と直角方向に直線上の切れ目を1本入れ、切れ目の部分にカッターナイフ先端を差し込んで剥離箇所の作製を試みた。剥離箇所作製操作中に樹脂層部分が折れたり破断したものは材料破壊(「材破」と略記する。)と判断した。
さらに、接着強度測定の目的で剥離部分の樹脂層を引っ張るために、幅18mmのセロハンテープを剥離部分に貼り付けて、引っ張りしろを設けた。具体的には、幅18mmのセロハンテープ(商品名ニチバンセロテープ、型番:CT405A−18)を長さ約33cmに切り取り、両端部約1.5cmを残して粘着面を内側にして中央で2つに折って貼り合わせ、両端部を、上記剥離部分に貼り付け、幅18mm、長さ約15cmの引っ張りしろとした。
剥離箇所から熱可塑性樹脂層ないしは上記セロハンテープで積層体の面と垂直な方向に引っ張り、剥離箇所を広げた。剥離箇所が広がったものは、引っ張り試験機にて50mm/分の速度で180度方向に引っ張り、剥離強度を測定した。広げる操作中にフィルムが破れたものは材料強度より剥離強度が強いと判断し、材料破壊(「材破」と略記する。)と判断した。
【0054】
(4)摩擦係数測定
JIS K 7125−1987に準じ、静摩擦係数と動摩擦係数を測定した。
(5)鉛筆硬度
JIS K 3312−1994に準じ、鉛筆硬度を測定した。
(6)積層体に使用した金属体の表面粗さ
小坂研究所株式会社製、表面粗さ測定装置、型式SE3−FK、を使用し、JIS B0601−1994に規定される表面粗さパラメータを測定した。測定したパラメータは、十点平均粗さ(Rz)、最大高さ(Ry)、算術平均粗さ(Ra)である。
(7)耐溶剤性
積層体を室温にて4時間クロロホルム中に浸漬し、表面外観の変化を目視にて観察し、未浸漬の試料と比較して、以下の5ランクに分けて評価した。
ランク1:外観変化が無い。
ランク2:表面の光沢が変化する。
ランク3:表面荒れが部分的に生じる。
ランク4:表面荒れが全体に生じる。
ランク5:少なくとも部分的に溶解する。
【0055】
実施例1
(1)金属接触層に使用するフィルムの作製
非晶性ポリエーテルイミド樹脂[ゼネラルエレクトリック社製、商品名:Ultem 1000、ガラス転移温度Tg:216℃](以下、単にPEI−1と略記することがある)2.016kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し28質量%)、ポリエーテルイミド樹脂[ゼネラルエレクトリック社製、Ultem CRS5001、Tg:226℃](以下、単にPEI−2と略記することがある)2.304kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し32質量%)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂[ビクトレックス社製、PEEK450G、Tg:143℃、融点Tm:334℃](以下、単にPEEK−1と略記することがある)2.88kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)、及び充填材として合成マイカ(平均粒径:6μm、アスペクト比:25)2.8kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し38.9質量部、略号C1)からなる成分をサイドフィード付き二軸押出機を用いて設定温度380℃で混練し、ストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした。
このペレットを、180℃で12時間熱風乾燥した後、Tダイを接続した口径40mmの単軸押出機を使用し、380℃にてフィルム状に押出し、設定温度160℃の循環オイルにて温度調節された金属キャストロールの表面に接触させ、その反対側からシリコーンゴムロールにて押しつけて急冷製膜することにより、厚さ100μmの金属接触層用のフィルム(略号をS1とする。)を得た。
【0056】
(2)表層に使用するフィルムの作製
上記のPEEK−1 7.2kg(100質量部)及び充填材として合成マイカ(C1)2.8kg(PEEK−1 100質量部に対し38.9質量部)からなる成分をサイドフィード付き二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練し、ストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした。
このペレットを、180℃で12時間熱風乾燥した後、Tダイを接続した口径40mmの単軸押出機を使用し、390℃にてフィルム状に押出し、設定温度130℃の循環オイルにて温度調節された金属キャストロールの表面に接触させ、その反対側からシリコーンゴムロールにて押しつけて急冷製膜することにより、厚さ約110μmの表層用のフィルム(略号をT1とする。)を得た。
【0057】
(3)積層体の作製
下から上に向かって下記の順番に重ね合わせたものを、高性能高温真空プレス成形機(北川精機(株)製、成型プレス、型式:VH1−1747)内にセットし、設定最高温度360℃、設定最高温度保持時間20分、プレス成形機の設定圧力9.7MPa(接着部の圧力は約3.9MPa)にてプレス成形し、積層体を得た。
(i)両面を35μmの銅箔で覆った一辺が約30cmの正方形で、厚さ1.6mmのクッション紙(三菱製紙株式会社製、商品名:RAボード RAB N 0016)、
(j)一辺が約30cmの正方形で、厚さ2mmのステンレス鋼板、
(k)縦30cm、横25cmの長方形で、厚さ50μmのポリイミドフィルム(宇部興産(株)製、商品名:ユーピレックス50S、厚さ50μm)、
(L)一辺が22cmの正方形で、厚さ0.4mmのステンレス鋼板(SUS304、クロロホルム洗浄により脱脂済み、略号A1)、
(m)一辺が24cmの正方形の金属接触層用フィルム(略号S1)、
(n)一辺が24cmの正方形の表層用フィルム(略号T1)、
(o)上記(k)と同様のポリイミドフィルム、
(p)上記(j)と同様のステンレス板、
(q)上記(i)と同様の銅箔で覆ったクッション紙。
上記(i)〜(q)は、重ね合わせる前に少量のエタノールをしみこませたワイピング紙で表面の汚れや異物を取り除き、さらに、上記(k)〜(o)は、重ね合わせる前に、目視検査により表裏の異物を確認し、少量のエタノールをしみこませたワイピングクロス(帝人(株)製、商品名:ミクロスター−CP)を用いてその異物をふき取った後、再度目視検査を行い、異物が除去できたことを確認した後に重ね合わせた。
使用した金属体A1の表面粗さパラメータは、Raが0.18μm、Ryが1.5μm、Rzが1.4μmであった。
【0058】
得られた積層体の断面を顕微鏡にて観察し、各層の厚さを測定したところ、金属体0.4mm、金属接触層96μm、表層107μmであった。この値より金属接触層と表層の比率は47:53と算出した。この積層体を上記シャーリングにて切断し、端部の剥離状況を目視観察したところ、ランク1であった。静摩擦係数は0.235であり、動摩擦係数は0.163であった。剥離強度を測定するため端部に剥離箇所を作製しようとしたが、剥離せず、カッターナイフで切れ目を入れ、積層体を面の上下に数回折り曲げて剥離箇所を作製したが剥離箇所は広がらず、指先で熱可塑性樹脂層を引っ張って剥がそうとしたところ、熱可塑性樹脂層が切れたので、材料破壊(以下、「材破」と略記する。)と判定した。鉛筆硬度はHであった。また、上記の方法により耐溶剤性を評価したところ外観変化は見られず、ランクは1であった。
【0059】
実施例2
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を4.4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し55質量%)、PEI−2を使用せず、PEEK−1を3.6kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し45質量%)、に変更し、合成マイカ(C1)を下記の方法により作製した表面処理マイカ2kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し25質量部)に変更し、フィルム厚さを35μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、金属接触層用フィルム(略号をS2とする。)を得た。
表面処理マイカは、以下の方法により作製した。ヘンシェルミキサー(商品名)に、市販のマイカ(平均粒子径:10μm、アスペクト比:20)2kgを入れ、その上から、水分約3質量%のイソプロピルアルコール160gに溶解した表面処理剤ヘキシルトリメトキシシラン(東京化成工業株式会社製、試薬グレード)40g(合成マイカ100質量部に対して2質量部)を溶解して得た20質量%溶液200gを振りかけ、ミキサー上部に蓋をした。窒素を供給しながらミキサーを10分間作動させて撹拌混合した。このものを、ステンレス製のバットに広げ、室内にて4日間放置した後、120℃のオーブン中で48時間加熱処理し、室温まで冷却して表面処理されたマイカ(略号をC2とする。)を得た。さらに、この操作を10回繰り返して、約20kgの表面処理マイカを得た。
表層用フィルムの構成成分のうち、PEEK−1の量を7.6kg(100質量部)に、合成マイカ(C1)を上記表面処理マイカ(C2)2.4kg(PEEK−1 100質量部に対し31.6質量部)に変更し、フィルム厚さを40μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、表層用フィルム(略号をT2とする。)を得た。
金属体を厚さ0.4mmのSUS301 二分の一H材(略号をA2とする。)に変更し、金属接触層用フィルムを上記S2、表層用フィルムを上記T2に変更した以外は実施例1と同様のプレス成形を行い、積層体を得た。金属体A2の表面粗さパラメータは、Ra0.08μm、Ry1.0μm、Rz0.92μmであった。
得られた積層体の各層の厚さは、金属体0.4mm、金属接触層33μm、表層38μmであった。このものの評価結果を表1に示す。
【0060】
実施例3
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を3.04kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)、PEI−2を1.9kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し25質量%)、PEEK−1を2.66kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し35質量%)、に変更し、合成マイカ(C1)を上記表面処理マイカ(C2)2.4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し31.6質量部)に変更し、フィルム厚さを80μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、金属接触層用フィルム(略号をS3とする。)を得た。
表層用フィルムの構成成分をPEEK−1のみとして合成マイカを配合せず、二軸押出機を使用せず180℃にて12時間乾燥後、口径40mmの単軸押出機に直接、供給してフィルムとして押出し、フィルム厚さを30μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、表層用フィルム(略号をT3とする。)を得た。
金属体を厚さ0.5mmのSUS304(略号をA3とする。)に変更し、金属接触層用フィルムを上記S3、表層用フィルムを上記T3に変更した以外は実施例1と同様のプレス成形を行い、積層体を得た。金属体A3の表面粗さパラメータは、Ra0.17μm、Ry1.67μm、Rz1.37μmであった。
得られた積層体の各層の厚さは、金属体0.5mm、金属接触層76μm、表層27μmであった。このものの評価結果を表1に示す。
【0061】
比較例1
表層用フィルムの構成成分をPEEK−1 10kg(100質量部)のみとして、合成マイカの配合と溶融混練を行わず、そのまま押出成形を行った以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ110μmの表層用フィルム(略号をTR1とする。)を得た。
金属接触層用フィルムを使用せず、表層用フィルムを上記TR1に変更した以外は実施例1と同様のプレス成形を行い、積層体を得た。得られた積層体の各層の厚さは、金属体0.4mm、表層106μmであった。
この積層体を実施例1と同様のシャーリングにて切断し、端部の剥離状況を目視観察したところ、ランク3であり、さらに23℃、湿度50%の恒温室内にて2日間状態調節中に、剥がれが端部から剥離幅1mmを超えて徐々に積層面全体に広がり、積層面の約60%が剥離したので、ランク4と判定した。さらに、2日経過後には接着面の約80%が剥離したので接着不良と判定した。剥がれたTR1層の厚さは106μmであった。接着不良のため、それ以外の評価は行わなかった。
【0062】
比較例2
金属接触層用フィルムを上記S1とし、表層用フィルムを使用しない点以外は実施例1と同様のプレス成形を行い、積層体を得た。得られた積層体の各層の厚さは、金属体0.4mm、金属接触層96μmであった。このものの評価結果を表1に示す。
比較例3
上記ステンレス板A1の表面をショットブラストにより粗面化した(略号をRA1とする)。表面粗さパラメーターRaは1.4μm、Ryは14.9μm、Rzは10.7μmであった。上記PEEK−1に着色用カーボンブラック0.2質量%を溶融混練により配合したペレットを平均粒径約0.1mmに粉砕し(略号をPEEK−1P)、上記RA1上に塗布し、420℃に設定されたオーブン中にて60分加熱し、PEEK−1Pを溶融させたのち、6時間かけてオーブンを室温まで冷却した。このものの静摩擦係数は、0.262であり、動摩擦係数は0.198であった。
【0063】
実施例4
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を3.28kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)、PEI−2を2.87kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し35質量%)、PEEK−1を2.05kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し25質量%)、に変更し、合成マイカ(C1)を下記の方法により作製した表面処理マイカ1.8kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し22質量部)に変更し、フィルム厚さを50μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、金属接触層用フィルム(略号をS4とする。)を得た。
表面処理合成マイカは、以下の方法により作製した。ヘンシェルミキサー(商品名)に、市販の合成マイカ(平均粒子径:6μm、アスペクト比:25)2kgを入れ、その上から、水分約3質量%のイソプロピルアルコール160gに溶解した表面処理剤フェニルトリメトキシシラン(東京化成工業株式会社製、試薬グレード)40g(マイカ100質量部に対して2質量部)を溶解して得た20質量%溶液200gを振りかけ、ミキサー上部に蓋をした。窒素を供給しながらミキサーを10分間作動させて撹拌混合した。このものを、ステンレス製のバットに広げ、室内にて4日間放置した後、120℃のオーブン中で48時間加熱処理し、室温まで冷却して表面処理された合成マイカ(略号をC3とする。)を得た。さらに、同様の操作を30回繰り返して、約60kgの表面処理合成マイカを得た。
表層用フィルムの構成成分のうち、PEEK−1の量を8.2kg(100質量部)に、合成マイカ(C1)を上記S4に使用したものと同様の表面処理合成マイカ(C3)1.8kg(PEEK−1 100質量部に対し22質量部)に変更し、フィルム厚さを70μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、表層用フィルム(略号をT4とする。)を得た。
金属接触層用フィルムを上記S4、表層用フィルムを上記T4に変更した以外は実施例1と同様のプレス成形を行い、積層体を得た。得られた積層体の各層の厚さは、金属体0.4mm、金属接触層46μm、表層66μmであった。このものの評価結果を表2に示す。
【0064】
実施例5
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を2.25kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEI−2を2.25kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEEK−1を3.0kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)に変更し、合成マイカ(C1)を上記表面処理合成マイカ(C3)2.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し33.3質量部)に変更し、フィルム厚さを50μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、金属接触層用フィルム(略号をS5とする。)を得た。
表層用フィルムの構成成分のうち、PEEK−1の量を7.5kg(100質量部)に、合成マイカ(C1)を上記S4に使用したものと同様の表面処理合成マイカ(C3)2.5kg(PEEK−1 100質量部に対し33.3質量部)に変更し、フィルム厚さを50μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、表層用フィルム(略号をT5とする。)を得た。
金属体を厚さ0.3mmのSUS316(略号をA4とする。)に変更し、金属接触層用フィルムを上記S5、表層用フィルムを上記T5に変更した以外は実施例1と同様のプレス成形を行い、積層体を得た。金属板A4の表面粗さパラメータは、Ra0.07μm、Ry1.87μm、Rz1.15μmであった。
得られた積層体の各層の厚さは、金属体0.3mm、金属接触層45μm、表層47μmであった。このものの評価結果を表2に示す。
【0065】
実施例6
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を4.4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し55質量%)、PEI−2を使用せず、PEEK−1を3.6kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し45質量%)に変更し、合成マイカ(C1)を上記表面処理合成マイカ(C3)2kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し25質量部)に変更し、フィルム厚さを28μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、金属接触層用フィルム(略号をS6とする。)を得た。
上記のPEEK−1 8kg(100質量部)及び固体潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレン樹脂(旭硝子株式会社製、グレード名 フルオンPTFE L−169J、略号:D1)2kg(PEEK−1 100質量部に対し25質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした。
このペレットを用い、フィルム厚さを60μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、表層用フィルム(略号をT6とする。)を得た。
金属接触層用フィルムを上記S6、表層用フィルムを上記T6に変更した以外は実施例1と同様のプレス成形を行い、積層体を得た。
得られた積層体の各層の厚さは、金属体0.4mm、金属接触層24μm、表層55μmであった。このものの評価結果を表2に示す。
【0066】
実施例7
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を3.2kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)、PEI−2を2.4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEEK−1を2.4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)に変更し、合成マイカ(C1)を上記表面処理合成マイカ(C3)2kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し25質量部)に変更し、フィルム厚さを24μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、金属接触層用フィルム(略号をS7とする。)を得た。
上記のPEEK−1 8.33kg(100質量部)及び固体潤滑剤としてフッ素樹脂を鱗片状黒鉛(日本黒鉛株式会社製、商品名 特CP、顕微鏡下での平均粒径測定値は6μm、略号:D2)1.67kg(PEEK−1 100質量部に対し20質量部)に変更し、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした。
このペレットを用い、押出温度を390℃とし、フィルム厚さを100μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、表層用フィルム(略号をT7とする。)を得た。
金属接触層用フィルムを上記S7、表層用フィルムを上記T7に変更した以外は実施例1と同様のプレス成形を行い、積層体を得た。
得られた積層体の各層の厚さは、金属体0.4mm、金属接触層20μm、表層96μmであった。このものの評価結果を表2に示す。
【0067】
実施例8
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEI−2を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEEK−1を4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)とし、合成マイカ(C1)を上記表面処理マイカ(C2)1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し15質量部)とし、固体潤滑剤を上記フッ素樹脂(D1)1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し15質量部)、及び上記黒鉛(D2)1kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し10質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした。
このペレットを用い、押出温度を390℃とし、フィルム厚さを50μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、金属接触層用フィルム(略号をS8とする。)を得た。
上記のPEEK−1 10kg(100質量部)、上記表面処理合成マイカ(C3)1kg(PEEK−1 100質量部に対し10質量部)、固体潤滑剤として上記フッ素樹脂(D1)2kg(PEEK−1 100質量部に対し20質量部)、及び上記鱗片状黒鉛(D2)1kg(PEEK−1 100質量部に対し10質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした。
このペレットを用い、フィルム厚さを35μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、表層用フィルム(略号をT8とする。)を得た。
金属接触層用フィルムを上記S8、表層用フィルムを上記T8に変更した以外は実施例1と同様のプレス成形を行い、積層体を得た。
得られた積層体の各層の厚さは、金属体0.4mm、金属接触層45μm、表層31μmであった。このものの評価結果を表2に示す。
【0068】
実施例9
(共押出による積層フィルムの作製)
上記PEI−1を2.8kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し28質量%)、PEI−2を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEEK−1を4.2kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し42質量%)、及び上記表面処理マイカ(C2)2.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し25質量部)をサイドフィード付き二軸押出機を用いて設定温度380℃で混練し、ストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした。
このペレットを180℃で8時間熱風乾燥し、390℃に設定した口径30mmφの単軸押出機を接続したマルチマニホールド式のダイ(設定温度390℃)より金属接触層として押し出した。
また、上記PEEK−1のペレットを180℃で8時間熱風乾燥したのち390℃に設定した口径40mmφの単軸押出機を接続した上記マルチマニホールドダイ(設定温度390℃)より表層として押し出した。
金属接触層と表層の厚さ比は16:84となるように溶融樹脂の吐出量を調整した。この共押出フィルムすなわち積層フィルムの金属接触層側を125℃のキャスティングロールにて急冷し、表層側にシリコンゴムロールを押し当てた。さらに、金属ロールの反対側に設置された約35℃の水で冷却される硬質クロムメッキロールを押しつけてシリコンゴムロールを冷却した。次いでこの共押出フィルムを巻き取って積層体を得た。このものの厚さが50μmとなるように、押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整した。作製した積層フィルムの断面を顕微鏡により拡大して観察し、各層の厚さを測定したところ、金属接触層の厚さは8μm、表層の厚さは42μmであった。この積層フィルムの略号を「ST9」とする。
(金属体との積層)
金属接触層用フィルム(S1)と表層用フィルム(T1)を上記積層フィルム(ST9)に変更し、積層フィルムの金属接触層を金属体(A1)に接触するように(A1)上に重ね、プレス積層時の設定最高温度を250℃、設定最高温度保持時間を30分に変更したほかは実施例1と同様の操作によりプレス成形し、積層体を得た。
この積層体の評価結果を表3に示す。
【0069】
実施例10
(金属接触層に使用する樹脂組成物の作製)
金属接触層の構成成分のうち、PEI−1を6kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し60質量%)、PEI−2を使用せず、PEEK−1を4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)、表面処理マイカ(C2)1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し15質量部)、及び固体潤滑剤として上記フッ素樹脂(D1)1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し15質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした(略号をK101とする。)。
表層構成成分として、上記のPEEK−1 10kg(100質量部)、上記表面処理合成マイカ(C3)0.8kg(PEEK−1 100質量部に対し8質量部)、及び固体潤滑剤として上記フッ素樹脂(D1)2.5kg(PEEK−1 100質量部に対し25質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした(略号をK102とする。)。
(共押出による積層フィルムの作製)
上記K101のペレットを180℃で8時間熱風乾燥し、390℃に設定した口径30mmφの単軸押出機を接続したマルチマニホールド式のダイ(設定温度390℃)より金属接触層として押し出した。
また、上記K102のペレットを180℃で8時間熱風乾燥したのち390℃に設定した口径40mmφの単軸押出機を接続した上記マルチマニホールドダイ(設定温度390℃)より表層として押し出した。
金属接触層と表層の厚さ比は14:86となるように溶融樹脂の吐出量を調整した。この共押出フィルムすなわち積層フィルムの金属接触層側を125℃のキャスティングロールにて急冷し、表層側にシリコンゴムロールを押し当てた。さらに、金属ロールの反対側に設置された約35℃の水で冷却される硬質クロムメッキロールを押しつけてシリコンゴムロールを冷却した。次いでこの共押出フィルムを巻き取って積層体を得た。このものの厚さが105μmとなるように、押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整した。作製した積層フィルムの断面を顕微鏡により拡大して観察し、各層の厚さを測定したところ、金属接触層の厚さは15μm、表層の厚さは90μmであった。この積層フィルムの略号を「ST10」とする。
(金属体との積層)
積層フィルム(ST9)を(ST10)に変更したほかは、実施例9と同様のプレス成形操作を行い積層体を得た。この積層体の評価結果を表3に示す。
【0070】
実施例11
金属接触層の構成成分のうち、PEI−1を6kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し60質量%)、PEI−2を1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し15質量%)、PEEK−1を2.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し25質量%)、表面処理合成マイカ(C3)を1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し15質量部)、及び固体潤滑剤である上記黒鉛(D2)を1kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し10質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした(略号をK111とする。)。
表層構成成分のうち、上記PEEK−1 10kg(100質量部)、上記表面処理合成マイカ(C3)1.0kg(PEEK−1 100質量部に対し10質量部)、固体潤滑剤として上記フッ素樹脂(D1)2kg(PEEK−1 100質量部に対し20質量部)、及び上記黒鉛(D2)1kg(PEEK−1 100質量部に対し10質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした(略号をK112とする。)。
(共押出による積層フィルムの作製)
上記K111のペレットを180℃で8時間熱風乾燥したのち、390℃に設定した口径30mmφの単軸押出機を接続したマルチマニホールド式のダイ(設定温度390℃)より金属接触層として押し出した。
また、上記K112のペレットを180℃で8時間熱風乾燥したのち、390℃に設定した口径30mmφの単軸押出機を接続した上記マルチマニホールドダイ(設定温度390℃)より表層として押し出した。
金属接触層と表層の厚さ比は57:43となるように溶融樹脂の吐出量を調整した。この共押出フィルムすなわち積層フィルムの金属接触層側を125℃のキャスティングロールにて急冷し、表層側にシリコンゴムロールを押し当てた。さらに、金属ロールの反対側に設置された約35℃の水で冷却される硬質クロムメッキロールを押しつけてシリコンゴムロールを冷却した。次いでこの共押出フィルムを巻き取って積層体を得た。このものの厚さが70μmとなるように、押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整した。作製した積層フィルムの断面を顕微鏡により拡大して観察し、各層の厚さを測定したところ、金属接触層の厚さは40μm、表層の厚さは30μmであった。この積層フィルムの略号を「ST11」とする。
(金属体との積層)
積層フィルム(ST9)をST11に変更したほかは、実施例9と同様のプレス成形操作を行い、積層体を得た。この積層体の評価結果を表3に示す。
【0071】
実施例12
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEI−2を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEEK−1を4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)に変更し、合成マイカを使用せず、二軸押出機による混練を行わず、充分撹拌して180℃、8時間乾燥したのち、直接口径40mmの単軸押出機に供給し、厚さを50μmとしたほかは実施例1と同様の操作を行い、金属接触層用フィルムを得た(略号をS12とする。)。表層用フィルムの構成成分をPEEK−1 10kgとし、合成マイカを使用せず、二軸押出機による混練を行わず、180℃、8時間乾燥したのち、直接口径40mmの単軸押出機に供給し、厚さを50μmとしたほかは実施例1と同様の操作を行い、表層用フィルムを得た(略号をT12とする。)。金属体を厚さ4mm、縦16cm、横16cmの鋳鉄板(略号をA5とする。)とし、積層方法を下記のように変更した以外は、実施例1と同様の操作により積層体を得た。金属体(A5)は、ショットブラストにより表面処理されたものであり、その表面粗さパラメーターRaは1.07μm、Ryは11.1μm、Rzは8.5μmであった。この積層体の評価結果を表4に示す。
(積層体の作製)
下から上に向かって下記の順番に重ね合わせたものを、高性能高温真空プレス成形機(北川精機(株)製、成型プレス、型式:VH1−1747)内にセットし、設定最高温度360℃、設定最高温度保持時間30分、プレス成形機の設定圧力5.2MPa(接着部の圧力は約3.9MPa)にてプレス成形し、積層体を得た。
(i−1)一辺が約30cmの正方形で、厚さ1.5mmのステンレス鋼板、
(j−1)両面を35μmの銅箔で覆った一辺が約20cmの正方形で、厚さ1.6mmのクッション紙(三菱製紙(株)製、商品名:RAボード RAB N 0016)、
(k−1)一辺が16cmの正方形で、厚さ4mmの鋳鉄板(クロロホルム洗浄により脱脂済み、表面処理面を上、略号A5)、
(l−1)一辺が18cmの正方形の上記金属接触用フィルム(略号S12)、
(m−1)一辺が18cmの正方形の上記表層用フィルム(略号T12)、
(n−1)一辺が20cmの正方形で厚さ50μmのポリイミドフィルム(宇部興産(株)製、商品名:ユーピレックス50S、厚さ50μm)、ポリイミドフィルム、
(o−1)厚さ125μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、商品名:カプトン500H)、
(p−1)上記(n−1)と同様のポリイミドフィルム、
(q−1)一辺が20cmの正方形で厚さ5mmのステンレス板(SUS304)、
(r−1)一辺が18cmの正方形で上記(i−1)と同様の、銅箔で覆ったクッション紙。
上記(i−1)〜(r−1)は、重ね合わせる前に少量のエタノールをしみこませたワイピング紙で表面の汚れや異物を取り除き、さらに、上記(k−1)は表面の埃や異物をゴム製ブロアーを用いて除去し、上記(l−1)〜(p−1)は、重ね合わせる前に、目視検査により表裏の異物を確認し、少量のエタノールをしみこませたワイピングクロス(帝人(株)製、商品名:ミクロスター−CP)を用いてその異物をふき取った後、再度目視検査を行い、異物が除去できたことを確認した後に重ね合わせた。
【0072】
実施例13
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を5.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し55質量%)、PEI−2を使用せず、PEEK−1を4.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し45質量%)、合成マイカを使用せず、固体潤滑剤(D1)0.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し5質量部)、固定潤滑剤(D2)0.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し5質量部)、二軸押出機の押出温度と単軸押出機の押出温度を390℃、及び厚さを25μmに変更した以外は実施例1と同様の操作により金属接触層用フィルムを得た(略号をS13とする。)。表層用フィルムの構成成分をPEEK−1 10kg、合成マイカを使用せず、固体潤滑剤(D1)2.5kg(PEEK−1 100質量部に対して25質量部)、表層厚さを60μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作により表層用フィルムを得た(略号をT13とする。)。金属接触層用フィルムを上記(S13)とし、表層用フィルムを上記(T13)とし、金属体を厚さ6mmの鋳鉄板(略号をA6とする。)としたほかは実施例12と同様の操作を行い、積層体を得た。金属体(A6)は、ショットブラストにより表面処理されたものであり、その表面粗さパラメーターRaは0.56μm、Ryは5.8μ、Rzは4.9μmであった。この積層体の評価結果を表4に示す。
【0073】
実施例14
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEI−2を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEEK−1を4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)、充填材として表面処理合成マイカ1kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し10質量部)、固体潤滑剤として(D1)0.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し5質量部)、固定潤滑剤(D2)1kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し10質量部)、二軸押出機の押出温度と単軸押出機の押出温度を390℃、及び金属接触層厚さを30μmに変更したほかは実施例1と同様の操作により金属接触層用フィルムを得た(略号をS14とする。)。表層用フィルムの構成成分をPEEK−1 10kg、充填材として表面処理合成マイカ1kg(PEEK−1 100質量部に対して10質量部)、固体潤滑剤(D1)2kg(PEEK−1 100質量部に対して20質量部)と(D2)1kg(PEEK−1 100質量部に対して10質量部)、表層厚さを40μmとしたほかは実施例1と同様の操作により表層用フィルムを得た(略号をT14とする。)。金属体を上記A6とし、金属接触層を上記S14とし、表層を上記T14に変更した以外は、実施例12と同様の操作を行い、積層体を得た。この積層体の評価結果を表4に示す。
【0074】
実施例15
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)、PEI−2を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEEK−1を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、充填材として表面処理合成マイカ1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し15質量部)、固体潤滑剤として(D1)1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し15質量部)、二軸押出機の押出温度と単軸押出機の押出温度を390℃、及び金属接触層厚さを28μmに変更したほかは、実施例1と同様の操作を行い、金属接触用フィルムを得た(略号をS15とする。)。表層用フィルムの構成成分をPEEK−1 10kg、充填材として表面処理合成マイカ1kg(PEEK−1 100質量部に対して10質量部)、固体潤滑剤(D1)2kg(PEEK−1 100質量部に対して20質量部)、表層厚さを60μmとしたほかは、実施例1と同様の操作を行い表層用フィルムを得た(略号をT15とする。)。金属体を厚さ10mmの鋳鉄(略号をA7とする。)、金属接触層表層用フィルムを上記S15とし、表層用フィルムを上記T15に変更したほかは、実施例12と同様の操作を行い、積層体を得た。
金属体(A7)は、ショットブラストにより表面処理されたものであり、その表面粗さパラメーターRaは0.83μm、Ryは8.5μ、Rzは6.6μmであった。この積層体の評価結果を表4に示す。
【0075】
実施例16
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対して30質量%)、PEI−2を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対して30質量%)、PEEK−1を4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対して40質量%)、充填材として表面処理合成マイカ2.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対して25質量部)、二軸押出機の押出温度と単軸押出機の押出温度を390℃、金属接触用フィルム厚さを40μmに変更したほかは、実施例1と同様の操作を行い金属接触用フィルムを得た(略号をS16とする。)。表層用フィルムの構成成分をPEEK−1 10kg(100質量部)、充填材として表面合成マイカ0.5kg(PEEK−1 100質量部に対して5質量部)、固体潤滑剤として、上記黒鉛(D2)0.5kg(PEEK−1、100質量部に対して5質量部)とポリテトラフルオロエチレン樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名 ポリフロンTFE L−5、略号をD3とする。)2kg(PEEK−1 100質量部に対して20質量部)、表層用フィルム厚さを70μmとしたほかは実施例1と同様の操作を行い、表層用フィルムを得た(略号をT16とする。)。金属体を上記A6とし、金属接触層用フィルムを上記S16とし、表層用フィルムを上記T16に変更したほかは、実施例12と同様の操作を行い、積層体を得た。この積層体の評価結果を表4に示す。
【0076】
実施例17
表層構成成分として、上記のPEEK−1 10kg(100質量部)、上記表面処理合成マイカ(C3)1kg(PEEK−1 100質量部に対し10質量部)、及び固体潤滑剤として上記フッ素樹脂(D1)2kg(PEEK−1 100質量部に対し20質量部)と、上記黒鉛(D2)0.5kg(PEEK−1 100質量部に対し5質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした(略号をK172とする。)。
金属接触層の構成成分のうち、PEI−1を3.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し35質量%)、PEI−2を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEEK−1を3.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し35質量%)として、これらのペレットを充分混合撹拌した後、180℃で8時間熱風乾燥したのち、390℃に設定した口径30mmφの単軸押出機を接続したマルチマニホールド式のダイ(設定温度390℃)より金属接触層として押し出した。
また、上記K172のペレットを180℃で8時間熱風乾燥したのち、390℃に設定した口径30mmφの単軸押出機を接続した上記マルチマニホールドダイ(設定温度390℃)より表層として押し出した。
金属接触層と表層の厚さ比は24:76となるように溶融樹脂の吐出量を調整した。この共押出フィルムすなわち積層体の金属接触層側を125℃のキャスティングロールにて急冷し、表層側にシリコンゴムロールを押し当てた。さらに、金属ロールの反対側に設置された約35℃の水で冷却される硬質クロムメッキロールを押しつけてシリコンゴムロールを冷却した。次いでこの共押出フィルムを巻き取って積層体を得た。このものの厚さが34μmとなるように、押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整した。作製した積層フィルムの断面を顕微鏡により拡大して観察し、各層の厚さを測定したところ、金属接触層の厚さは8μm、表層の厚さは26μmであった。この積層フィルムの略号を「ST17」とする。
金属接触用フィルムと表層用フィルムを上記積層フィルム(ST17)に変更し、金属体を上記A6に変更したほかは、実施例12と同様のプレス成形操作を行い、積層体を得た。この積層体の評価結果を表5に示す。
【0077】
実施例18
金属接触層の構成成分のうち、PEI−1を5.8kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し58質量%)、PEI−2を使用せず、PEEK−1を4.2kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し42質量%)、表面処理合成マイカ(C3)1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し15質量部)、及び固体潤滑剤である上記フッ素樹脂(D1)1kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し10質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした(略号をK181とする。)。
表層構成成分として、上記のPEEK−1 10kg(100質量部)、充填材としての表面処理合成マイカを使用せず、及び固体潤滑剤として上記フッ素樹脂(D1)2.5kg(PEEK−1 100質量部に対し25質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした(略号をK182とする。)。
上記K181のペレットを180℃で8時間熱風乾燥し、390℃に設定した口径30mmφの単軸押出機を接続したマルチマニホールド式のダイ(設定温度390℃)より金属接触層として押し出した。
また、上記K182のペレットを180℃で8時間熱風乾燥したのち、390℃に設定した口径40mmφの単軸押出機を接続した上記マルチマニホールドダイ(設定温度390℃)より表層として押し出した。
金属接触層と表層の厚さ比が14:86となるように溶融樹脂の吐出量を調整した。この共押出フィルムすなわち積層体の金属接触層側を125℃のキャスティングロールにて急冷し、表層側にシリコンゴムロールを押し当てた。さらに、金属ロールの反対側に設置された約35℃の水で冷却される硬質クロムメッキロールを押しつけてシリコンゴムロールを冷却した。次いでこの共押出フィルムを巻き取って積層体を得た。このものの厚さが105μmとなるように、押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整した。作製した積層フィルムの断面を顕微鏡により拡大して観察し、各層の厚さを測定したところ、金属接触層の厚さは15μm、表層の厚さは90μmであった。この積層フィルムの略号を「ST18」とする。
金属接触用フィルムと表層用フィルムを上記積層フィルム(ST18)に変更し、プレスによる積層温度を250℃に変更したほかは、実施例12と同様のプレス成形操作を行い、積層体を得た。この積層体の評価結果を表5に示す。
【0078】
実施例19
金属接触層の構成成分のうち、PEI−1を6kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し60質量%)、PEI−2を1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し15質量%)、PEEK−1を2.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し25質量%)、表面処理合成マイカ(C3)1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し15質量部)、及び固体潤滑剤を(D2)1kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し10質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした(略号をK191とする。)。
表層構成成分として、上記のPEEK−1 10kg(100質量部)、充填材として表面処理合成マイカ(C3)0.5kg(PEEK−1 100質量部に対し5質量部)、及び固体潤滑剤として上記フッ素樹脂(D1)2kg(PEEK−1 100質量部に対し20質量部)と上記黒鉛(D2)0.5kg(PEEK−1 100質量部に対し5質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした(略号をK192とする。)。
上記K191のペレットを180℃で8時間熱風乾燥し、390℃に設定した口径30mmφの単軸押出機を接続したマルチマニホールド式のダイ(設定温度390℃)より金属接触層として押し出した。
また、上記K192のペレットを180℃で8時間熱風乾燥したのち、390℃に設定した口径30mmφの単軸押出機を接続した上記マルチマニホールドダイ(設定温度390℃)より表層として押し出した。
金属接触層と表層の厚さ比が57:43となるように溶融樹脂の吐出量を調整、全体の厚さが70μmとなるように、押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整したほかは実施例10と同様の操作を行い積層フィルムを得た。作製した積層フィルムの断面を顕微鏡により拡大して観察し、各層の厚さを測定したところ、金属接触層の厚さは34μm、表層の厚さは26μmであった。この積層フィルムの略号を「ST19」とする。
金属接触用フィルムと表層用フィルムを上記積層フィルム(ST19)に変更し、金属体を上記A6に変更し、プレスによる積層温度を250℃に変更したほかは、実施例12と同様のプレス成形操作を行い、積層体を得た。この積層体の評価結果を表5に示す。
【0079】
実施例20
金属接触用フィルムと表層用フィルムを上記積層フィルム(ST18)に変更し、金属体をショットブラストにより表面処理を施した厚さ8mmのアルミニウム板(材質はJIS H4000−1999に示されたA1100、珪素と鉄の合計含有量0.7%。略号をA8とする。)に変更し、プレスによる積層温度を240℃に変更したほかは実施例12と同様の操作を行い、積層体を得た。金属体(A8)は、ショットブラストにより表面処理されたものであり、その表面粗さパラメーターRaは0.74μm、Ryは7.5μm、Rzは6.1μmであった。この積層体の評価結果を表5に示す。
【0080】
実施例21
金属接触用フィルムと表層用フィルムを上記積層フィルム(ST19)に変更し、金属体をショットブラストにより表面処理を施した厚さ6mmのアルミニウム−珪素合金板(材質はJIS H4000−1999に示されたA4043、珪素含有量5.5%。略号をA9とする。)に変更し、プレスによる積層温度を240℃に変更したほかは実施例12と同様の操作を行い、積層体を得た。金属体(A9)の表面粗さパラメーターRaは0.85μm、Ryは9.1μm、Rzは7.2μmであった。この積層体の評価結果を表5に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
表1及び2より、実施例1乃至8の積層体は、シャーリングによる切断の端部に剥離が生じにくく本発明の効果が明らかである。
表3より、実施例9乃至11の積層体は、シャーリングによる切断の端部に剥離が生じにくく、本発明の効果が明らかである。
表4より、実施例12乃至16の積層体は、カッターナイフによる切れ目周囲に剥離が生じにくく、本発明の効果が明らかである。
表5より、実施例17乃至21の積層体は、カッターナイフによる切れ目周囲に剥離が生じにくく、本発明の効果が明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の積層体は、摺動性、耐熱性、耐薬品性、ハンダ耐熱性、寸法安定性等に優れることから、各種の用途に好適に用いられ、その用途としては、自動車エンジンルーム内部品や隔壁、ドアの摺動部品、ブレーキ部品、エアーコンップレッサー部品、軸受け、ブッシュ、エネルギー発生機器部品、電池部品、燃料電池部品、熱遮蔽板、各種機器の筐体、電磁波遮蔽板、航空宇宙機器の保護板などが挙げられる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、層間の接着性に優れた、熱可塑性樹脂組成物と金属との積層体に係り、特に摺動性、耐熱性、耐表面傷付き性、シャーリング等による切断端部の剥離が少なく、耐薬品性が良好で、機械用部材、自動車部品等として好適に使用できる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
摺動性、耐熱性、耐表面傷付き性が要求される機械用部材、自動車部品等として、金属表面を各種の固体潤滑剤を含んだ樹脂で被覆した樹脂被覆金属が使用されている。被覆する方法としては、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて金属面に溶剤コートする方法が一般的である。しかしながら、溶剤コート方法では被覆時に使用する溶剤が揮発して環境への影響を生じやすいという問題があり、溶剤を使用しない他の方法が要望されている。
具体的な方法としては、熱硬化性樹脂に代えて、リサイクル性に優れた熱可塑性樹脂の使用が検討されており、該熱可塑性樹脂の中でも、特に、ポリエーテルエーテルケトン樹脂やポリエーテルケトン樹脂などのポリアリールケトン樹脂は、耐熱性、難燃性、耐薬品性などに優れているため、航空機部品、自動車部品、機械部品、電気・電子部品を中心に多く採用されている。
しかしながら、ポリアリールケトン樹脂は、単独では金属と接着しにくいので、金属表面への積層が困難であった。
通常、該ポリアリールケトン樹脂を金属表面へ積層する方法としては、溶剤にはほとんど溶解しないために溶剤コーティングは極めて困難であり、溶射法(HVOFプロセス、例えば、特許文献1参照)や、粉体塗装法(例えば、特許文献2参照)が検討されている。
しかしながら、HVOFプロセスでは、ポリアリールエーテルケトン樹脂を溶射するために水素などの燃料ガスと酸素ガスを使用し、内部燃焼を用いるので樹脂の劣化のおそれや溶射後に残留応力の緩和が必要な場合があり、粉体塗装法ではポリアリールエーテルケトン樹脂を金属体表面に積層するために、ポリアリールエーテルケトン樹脂の粉体を金属体表面に付着させた後、例えば400℃程度での高温焼き付けが必要であり、加熱や冷却に時間がかかり、生産効率が良くないので、焼き付け時の生産コストが高いという問題点がある。また、粉体の融着により樹脂層を形成するため、樹脂層に内部空隙やピンホールが発生し易い。さらに、アルミニウムでは焼き鈍しが発生してアルミニウム基材の強度が低下するという問題がある。
【0003】
一方、銅箔やアルミニウム箔などの金属表面への積層が必要な電子回路板基材において、融点が高い結晶性樹脂としての耐熱性を生かすために、ポリアリールケトン樹脂と、金属との接着が良好なポリエーテルイミド樹脂との混合物が注目されてきた。
例えば、この混合物は銅箔と良好な接着性を示し、回路板基材に有用であることが開示されている(例えば、特許文献3参照)。さらに、この混合物を用いた、プリント配線基板や金属体との積層体及びその製造方法や熱融着性絶縁シートが開示されている(例えば、特許文献4、特許文献5参照)。
しかしながら、ポリアリールケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂との混合物は、金属との接着性は良好であるが、耐摩耗性、耐アルカリ性などの耐薬品性、摺動性に限界があるため、機械部品、自動車部品などの分野では必ずしも充分ではなく、用途に限界があった。
【0004】
【特許文献1】特開2002−39203号公報
【特許文献2】特開2003−48273公報
【特許文献3】特開昭59−115353号公報
【特許文献4】特開2002−212314公報
【特許文献5】特許第3514667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、機械部品、自動車部品等として好適で、特に金属体と熱可塑性樹脂層との接着性に優れ、摺動性、耐熱性、耐薬品性が良好な、熱可塑性樹脂と金属との積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、種々鋭意検討を重ねた結果、金属体の少なくとも一つの面に、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)ポリアリールケトン樹脂を含む金属接触層と、(B)ポリアリールケトン樹脂を含む表層とを順次積層した積層体が、上記課題を解決し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の積層体を提供するものである。
(1)金属体の少なくとも一つの面に、金属接触層と表層とが順次積層された積層体であって、該金属接触層が(A)熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)ポリアリールケトン樹脂を含む樹脂組成物からなり、該表層が、ポリアリールケトン樹脂(B)を含む樹脂組成物からなることを特徴とする積層体。
(2)金属接触層及び/又は表層が、更に(C)充填材を含む樹脂組成物からなる前記(1)に記載の積層体。
(3)金属接触層及び/又は表層が、更に(D)固体潤滑剤を含む樹脂組成物からなる前記(1)又は(2)に記載の積層体。
(4)金属接触層が、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)ポリアリールケトン樹脂を(A)/(B)=95/5〜5/95の質量比で含む樹脂組成物100質量部に対して、(C)充填材を0〜100質量部及び/又は(D)固体潤滑剤を0〜400質量部の割合で含む樹脂組成物からなり、表層が、(B)ポリアリールケトン樹脂100質量部に対して、(C)充填材を0〜100質量部及び/又は(D)固体潤滑剤を0〜100質量部の割合で含む樹脂組成物からなる前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の積層体。
(5)金属接触層が、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)ポリアリールケトン樹脂を(A)/(B)=95/5〜30/70の質量比で含む樹脂組成物100質量部に対して、(C)充填材を0〜100質量部及び/又は(D)固体潤滑剤を0〜100質量部の割合で含む樹脂組成物からなる前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の積層体。
(6)金属接触層と表層の厚さの比率が、1/99〜99/1の範囲である前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の積層体。
(7)金属体の厚さが0.01〜50mm、金属接触層の厚さが0.1〜800μm、表層の厚さが1〜1000μmである前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の積層体。
【0007】
(8)(A)成分の熱可塑性ポリイミド樹脂が下記構造式(1)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂又は下記構造式(2)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂を主成分とするものであり、(B)成分のポリアリールケトン樹脂が下記構造式(3)で表される繰り返し単位を有する結晶性ポリエーテルエーテルケトン樹脂を主成分とするものである前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の積層体。
【0008】
【化1】
【0009】
(9)(C)成分の充填材が板状である前記(2)〜(8)のいずれか1項に記載の積層体。
(10)(C)成分の充填材の平均粒子径が0.01〜200μmの範囲にある前記(2)〜(9)のいずれか1項に記載の積層体。
(11)(C)成分の充填材がマイカである前記(2)〜(10)のいずれか1項に記載の積層体。
(12)(D)成分の固体潤滑剤が黒鉛、フッ素樹脂、及び遷移金属硫化物から選ばれる少なくとも1種である前記(3)〜(8)のいずれか1項に記載の積層体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属との接着性に優れ、耐熱性、耐溶剤性、耐表面傷付き性、滑り性、摺動性が良好で、機械用部材、自動車部品等として好適に使用できる、熱可塑性樹脂と金属との積層体を提供することができる。
また、低温で形成できるために、金属基材硬さが低下する等の問題により使用できなかった金属材料の摺動部品についてもポリアリールケトン樹脂組成物からなる摺動層を形成することが可能となる。
さらに、従来の溶剤コート法による樹脂コート等の摺動部品に比べて、溶剤を使用しないため溶剤の環境への揮発拡散がなく環境負荷が低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の積層体は、熱可塑性樹脂と金属との積層体であり、金属体の少なくとも一つの面に、熱可塑性樹脂組成物からなる金属接触層と表層とが順次積層された積層体である。
本発明に使用する金属体としては、鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、アルミニウム合金、アルミニウム−シリコン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、銅、銀、金、黄銅、真鍮、青銅、ステンレス鋼、炭素鋼、鋳鉄、超合金(例として、NCF800、NCF600)などが挙げられる。また、鉄や炭素鋼に亜鉛、錫、クロム、ニッケル、亜鉛−アルミニウムなどのメッキを施した鋼材も使用することができる。これらのうちで、剛性が高く、安価であるという観点から、好ましくは、鉄、鋳鉄、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金である。さらに、錆を生じにくいという観点から、より好ましくはステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金である。
【0012】
ステンレス鋼としては、種々の合金組成のものがあり、例えば、SUS301、SUS301L、SUS302、SUS302B、SUS303、SUS303Se、SUS304、SUS304L、SUS304J1、SUS304J2、SUS305、SUS309S、SUS310S、SUS316、SUS316L、SUS317、SUS321、SUS329J1、SUS329J3L、SUS329J4L、SUS347、SUS403、SUS405、SUS410、SUS430、SUS434、SUS436L、SUS436J1L、SUS444、SUS447J1、SUS304cul、SUSXM7、SUSXM27、SUSXM15J1、SUS630、SUS631、SUH409、SUH21及びSUH409Lなどが挙げられる。
【0013】
アルミニウム、アルミニウム合金としては、たとえば、JIS H2118−2000、JIS H2211−1999、JIS H4000−1999、JIS H4040−1999、JIS H4080−1999、JIS H4090−1990、JIS H4100−1999、JIS H4140−1988、JIS H5202−1999、JIS H5302−1999に示された合金番号やJIS H0001−1998に示された質別記号のものを挙げることができ、具体的には、A1050、A1070、A1080、A1085、A1100、A1200、A1N00、A3203、A2011、A2014、A2017、A2023、A2024、A2219、A3003、A3004、A3104、A3203、A4032、A4043、A5005、A5052、A5056、A5083、A5086、A5454、A5652、A5N01、A6005A、A6060、A6061、A6063、A6082、A6N01、A7005、A7020、A7050、A7075、A7N01、A8021、A8079、AC1B、AC2A、AC4A、AC4B、AC4C、AC4D、AC5A、AC7A、AC8A、AC8B、AC8C、AC9A、AC9B、ADC1、ADC2、ADC3、ADC5、ADC6、ADC8,ADC10、ADC12、ADC14、A390、BA11、BA12等が挙げられる。また、上記金属には圧延、伸展や熱処理を加えたものなども使用することができる。
【0014】
金属体の形状は特に限定されないが、例えば、平面体、曲面体、波板体、筒体、管体、円盤状などが挙げられる。これらのうち、加工が容易なのは平面体であり、平面体としては、例えば、枚葉体、連続した帯状体(コイル)などが挙げられる。金属体の厚さは特に限定されないが、加工の容易さから、通常0.01〜50mm程度、好ましくは、0.05〜20mm程度、さらに好ましくは0.1〜15mm程度である。
金属体の表面仕上げは種々の方法により行うことができ、処理された表面としては、例えば、圧延処理、熱処理、酸洗処理などの処理を施された表面(例えば、JIS G0203−2000、JIS G4305−1999、AISI規格等に規定されるNo.1、No.2D、No.2B)、さらに研磨された表面(例えば、上記規格等に規定されるNo.3、No.4、#240、#320、#400)、冷間圧延と光輝処理を施された表面(例えば、上記規格等に規定されるBA)、研磨を施された表面(例えば、上記規格等に規定される、ヘアラインを意味するHL、無方向ヘアライン研磨仕上げを意味するバイブレーションであるNo.7、鏡面仕上げであるNo.8)などが挙げられる。また、他の表面処理法としては、ブラスト法によるショットブラスト、銀白色ダル調仕上げ、やビーズブラスト、ブラスト法による梨地肌仕上げ、ブライト仕上げ、化学発色、エンボス、エッチング、下地とは異なる金属によるメッキ仕上げ(例えば、金、銀、銅、アルミニウム、クロム等によるメッキ)などが挙げられる。
【0015】
これらのうちで、さらに、JIS B0601−1994に規定される表面粗さパラメータの十点平均粗さ(Rz)が0.01〜80μm程度の範囲のものが好ましく、さらに好ましくは0.4〜20μm程度のものである。Rzが0.01μm以上であると、熱可塑性樹脂と充填材とを含む金属接触層との接着性が良好となり、Rzが80μm以下であると、表面層の凹凸に対する影響が小さい。
また、JIS B0601−1994に規定される表面粗さパラメータの最大高さ(Ry)は、通常0.01〜100μm程度の範囲であり、好ましくは、0.5〜25μm程度である。Ryが0.01μm以上であると、金属体表面と金属接触層との間の接着強度が良好となり、100μm以下であれば、表面層の凹凸に対する影響が小さい。
同様に、金属体のJIS B0601−1994に規定される表面粗さパラメータの算術平均粗さ(Ra)は、通常0.001〜10μm程度の範囲であり、好ましくは0.05〜2.5μm程度の範囲である。
これらJIS B0601−1994に規定される表面粗さ(Rz、Ry、Ra)は市販の表面粗さ測定装置(一例として、小坂研究所株式会社製、表面粗さ測定装置、型式SE3−FK等)を使用して測定することができる。
【0016】
本発明の積層体を構成する金属接触層は、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)ポリアリールケトン樹脂を含む樹脂組成物からなる。(A)成分の熱可塑性ポリイミド樹脂は、その構造単位に芳香核結合及びイミド結合を含む熱可塑性樹脂であり、具体例として、ポリエーテルイミド樹脂が挙げられるが、特に制限されるものでない。具体的には、下記構造式(1)
【0017】
【化2】
【0018】
で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド[ゼネラルエレクトリック社製の商品名「Ultem 1000」(ガラス転移温度Tg:216℃)、「Ultem 1010」(ガラス転移温度:216℃)]、下記構造式(2)
【0019】
【化3】
【0020】
で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド[ゼネラルエレクトリック社製の商品名「Ultem CRS5001」(ガラス転移温度:226℃)]が挙げられ、そのほかの具体例として、ゼネラルエレクトリック社製の商品名「Ultem XH6050」(ガラス転移温度:247℃)、三井化学株式会社製の商品名「オーラムPL500AM」(ガラス転移温度:258℃)、などが挙げられる。これらのうちで、好ましくは非晶性のものであり、さらに好ましくは、上記構造式(1)又は(2)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂を主成分とするものである。ここで主成分とは、その含有量が50質量%を超える樹脂成分をいう。
該ポリエーテルイミド樹脂の製造方法は特に限定されるものではないが、通常、上記構造式(1)で表される繰り返し単位を有する非晶性ポリエーテルイミド樹脂は、4,4´−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)ジフタル酸二無水物とm−フェニレンジアミンとの重縮合物として、また上記構造式(2)で表される繰り返し単位を有する非晶性ポリエーテルイミド樹脂は、4,4´−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)ジフタル酸二無水物とp−フェニレンジアミンとの重縮合物として公知の方法によって合成することができる。
また、本発明で用いるポリエーテルイミド樹脂は、必要に応じてアミド基、エステル基、スルホニル基など共重合可能な基を有する他の単量体単位を含むものであってもかまわない。なお、(A)成分の熱可塑性ポリイミド樹脂は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
本発明の積層体において、金属接触層に使用する(B)成分のポリアリールケトン樹脂は、その構造単位に芳香核結合、エーテル結合及びケトン結合を含む熱可塑性樹脂であり、その代表例としては、ポリエーテルケトン(ガラス転移温度:157℃、結晶融解ピーク温度:373℃)、ポリエーテルエーテルケトン(ガラス転移温度:143℃、結晶融解ピーク温度:334℃)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(ガラス転移温度:153℃、結晶融解ピーク温度:370℃)等があり、また、必要に応じてビフェニル構造、スルホニル基など共重合可能な構造や基を有する他の繰り返し単位を含むものであってもかまわない。本発明においては、下記構造式(3)
【0022】
【化4】
【0023】
で表される繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂を主成分とするものが好適に使用される。ここで主成分とは、その含有量が50質量%を超える成分のことをいう。
この繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンは、ビクトレックス社製の商品名「PEEK151G」、「PEEK381G」、「PEEK450G」などとして市販されている。これらはいずれもガラス転移温度143℃、結晶融解ピーク温度334℃のものである。なお、(B)成分のポリアリールケトン樹脂は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明に係る金属接触層を構成する樹脂組成物において、(A)成分の熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)成分のポリアリールケトン樹脂の混合質量比は、(A)/(B)=95/5〜5/95の範囲が好ましく、より好ましくは、(A)/(B)=85/15〜30/70の範囲、さらに好ましくは、(A)/(B)=80/20〜45/55の範囲、特に好ましくは85/15〜50/50の範囲である。
(A)成分と(B)成分の合計100質量%に対し、(A)成分が95質量%以下であると、(B)成分のポリアリールケトン樹脂が持つ、優れた耐熱性や低い吸水特性を発揮させることができる。また、(A)成分が5質量%以上であると、金属接触層と金属体との接着性が良好となる。
また、(B)成分として結晶性のポリアリールケトン樹脂を使用する場合、(A)成分と(B)成分の合計100質量%に対し、(A)成分が80質量%以下であると、金属接触層を構成する樹脂組成物の結晶性が高くなり、また結晶化速度も速くなり、耐熱性が良好である。また、同様の場合、(A)成分が55質量%以上であると、結晶性のポリアリールケトン樹脂の結晶化に伴う体積収縮(寸法変化)が大きくなりにくく、金属体との接着において信頼性が得られる。これらのことから、(B)成分として、結晶性のポリアリールケトン樹脂を用いる場合には、(A)成分と(B)成分との混合質量比は(A)/(B)=75/25〜55/45とすることが好ましい。
【0025】
ここで、厚さ0.4mmのステンレス鋼板などの比較的硬い金属板の少なくとも一つの面に、ポリアリールケトン樹脂(A)とポリエーテルイミド樹脂(B)との樹脂組成物を金属接触層とし、ポリアリールケトン樹脂(B)を表層として積層して得た積層体においては、金属板と樹脂層との接着は良好であるがカッターナイフでは切断できないので、シャーリングなどの方法で切断する際、端部に剥離が生じる場合がある。このため、本発明では金属接触層への充填材の添加が好ましく、端部の剥離を低減する効果がある。
【0026】
本発明で用いる(C)成分の充填材としては、公知のものを使用することができ、例えば、クレー、ガラス、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウム、窒化珪素などの充填材、ガラス繊維やアラミド繊維、炭素繊維などの繊維状充填材、鱗片状(板状)粉体、例えば、合成マイカ、天然マイカ(マスコバイト、フロゴパイト、セリサイト、スゾライト等)、焼成された合成マイカや天然マイカ、ベーマイト、タルク、イライト、カオリナイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、スメクタイト、板状アルミナ、鱗片状チタン酸塩(例えば、鱗片状チタン酸マグネシウムカリウム、鱗片状チタン酸リチウムカリウム等)などが挙げられる。これらのなかで、合成マイカ、天然マイカ、焼成された合成マイカや天然マイカ、ベーマイト、タルク、イライト、カオリナイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、スメクタイトなどの鱗片状(板状)粉体、板状アルミナ、鱗片状チタン酸塩が好ましく、合成マイカ、天然マイカがより好ましい。これらの充填材は1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
この充填材の形状としては、板状が好ましく、平均粒径が0.01〜200μm程度、好ましくは0.1〜20μm程度、より好ましくは、1〜10μm程度、平均アスペクト比(粒径/厚み)は通常1〜100程度、好ましくは5〜50程度さらに好ましくは、10〜30程度のものが好適に用いられる。
【0027】
(C)成分の充填材としては表面処理剤により表面処理されたものを用いてもよい。表面処理剤としては、アミノシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、アクリロキシ基又はメタクリロキシ基を有するシラン化合物などのシランカップリング剤、珪素原子に炭素数1〜30の範囲の直鎖、分岐又は環状の炭化水素基が1又は2個結合したアルコキシシラン、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコネートカップリング剤などが挙げられる。表面処理剤の使用量は、通常、充填材100質量部に対して0.1〜8質量部、好ましくは0.5〜3質量部の範囲である。
【0028】
表面処理の方法としては、既知の種々の方法が適用できる。例えば、表面処理剤を溶解した溶液中で充填材と表面処理剤を接触させた後、溶媒を除去する湿式法、表面処理剤を溶解した溶液と充填材とを噴霧、撹拌等の方法により接触させて、充填材表面に表面処理剤をまぶした後、溶媒を除去する半湿式法、熱可塑性樹脂と充填材及び表面処理剤又は少量の溶媒に溶解させた表面処理剤を混合後、撹拌するインテグラルブレンド法などが挙げられる。充填材表面に効率よく表面処理剤を付着させるという観点から、湿式法、半湿式法が好ましい。
溶媒中の表面処理剤の濃度は0.1〜80質量%程度の濃度とすることができる。溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、ヘキサン等の除去しやすいものが好ましい。この溶媒は、少量の水や加水分解を促進する少量の酸成分を含むものであってもよい。
上記表面処理方法により、充填材と、溶媒に希釈した又は希釈しない表面処理剤とを接触混合した後、数時間から数日間空気中に放置し、空気中の水分と接触させて加水分解を起こさせるとともに、使用した溶媒を蒸発除去することが推奨される。
この蒸発除去の処理は、アルコキシシリル基の加水分解反応や生成したヒドロキシシリル基を充填材表面のヒドロキシル基と脱水縮合反応させ、かつ、発生したアルコールや使用した溶媒除去のため、常圧下ないし減圧下に、通常、80〜150℃程度、好ましくは100〜130℃程度にて行なう。処理時間は通常4〜200時間程度であり、好ましくは24〜100時間程度である。
金属接触層を構成する樹脂組成物に使用する(C)成分の充填材の量は、上述した(A)成分の熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)成分のポリアリールケトン樹脂の合計量100質量部に対して、0〜100質量部が好ましく、より好ましくは10〜55質量部、更に好ましくは15〜45質量部の範囲である。充填材が100質量部以下であると、金属接触層が著しく脆くなることがない。一方、10質量部以上であると、本発明の積層体をシャーリング等により切断する際に端部の剥がれが少なくなり、金属接触層と金属体との密着が向上し、且つ、線膨張係数の低減効果による積層体の形状安定性が向上する。
【0029】
金属接触層を構成する樹脂組成物には、固体潤滑剤を含んでも良い。金属接触層の固体潤滑剤は金属接触層の摺動性や摩耗性を向上させ、表層が摩耗した場合に引き続いて摩耗が金属層に達するのを遅らせる効果がある。また、本発明の積層体に使用する表層フィルムや金属接触層と表層とが積層された積層フィルムの端材や耳などをリサイクルして使用することにより金属接触層を構成する樹脂組成物中に固体潤滑剤が混入してもよい。金属接触層や表層を構成する樹脂組成物に含有される固体潤滑剤としては、フッ素樹脂、黒鉛、遷移金属硫化物、六方晶窒化硼素等の材料が例示される。
【0030】
上記フッ素樹脂としては、分子中にフッ素原子を含有する高分子化合物であれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。このようなものとして、例えば、(a)分子内に、−(CF2CF2)−で表わされる繰り返し構造単位を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE);(b)分子内に、−(CF2CF2)−および−〔CF(CF3)CF2〕−で表わされる繰り返し構造単位を有し、好ましくは、−(CF2CF2)−で表される繰り返し構造単位を99〜80質量%と−〔CF(CF3)CF2〕−で表わされる繰り返し構造単位を1〜20質量%とからなる、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP);(c)分子内に、−(CF2CF2)−および−〔CF(OCmF2 m+1)CF2〕−(式中、mは1〜16の範囲、好ましくは1〜10の範囲の正の整数)で表される繰り返し構造単位を有し、好ましくは、−(CF2CF2)−で表わされる繰り返し構造単位を99〜92質量%と、−〔CF(OCmF2 m+1)CF2〕−で表わされる繰り返し構造単位を1〜8質量%とからなる、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、(d)分子内に、−(CF2CF2)−および−(CH2CH2)−で表される繰り返し構造単位を有し、好ましくは、−(CF2CF2)−で表わされる繰り返し構造単位を90〜74質量%と、−(CH2CH2)−で表わされる繰り返し構造単位を10〜26質量%とからなる、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE);(e)分子内に、−(CFClCF2)−および−(CH2CH2)−で表される繰り返し構造単位を有するクロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体;(f)分子内に、−(CF2CH2)−で表わされる繰り返し構造単位を有するポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられ、さらに、これらフッ素樹脂は、この樹脂の本質的な性質を損なわない範囲で他のモノマーに基づく繰り返し構造単位を含んでいるものも挙げられる。
【0031】
上記他のモノマーとしては、テトラフルオロエチレン(ただし、PFA、FEP及びETFEを除く。)、ヘキサフルオロプロピレン(ただし、FEPを除く。)、パーフルオロアルキルビニルエーテル(ただし、PFAを除く。)、パーフルオロアルキルエチレン(アルキル基の炭素数1〜16)、パーフルオロアルキルアリルエーテル(アルキル基の炭素数1〜16)、及び、式:CF2=CF[OCF2CF(CF3)]nOCF2(CF2)p Y(式中、Yはハロゲン、nは0〜5の整数、pは0〜2の整数を表す。)で示される化合物等が挙げられる。他のモノマーに基づく繰り返し構造単位の量は、重合体の50質量%以下、好ましくは、0.01〜45質量%である。
【0032】
これらフッ素樹脂のうちで、好ましくは、(a)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、(b)テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、(c)テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)より選ばれるものであり、更に好ましくは、(a)PTFEである
【0033】
上記フッ素樹脂の分子量は特に限定されないが、溶融するPTFEの場合には、特に、溶融粘度が380℃において100万Pa・s以下のものが好ましい。これらのフッ素樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記フッ素樹脂は、成形用の粉末であっても固体潤滑材用の微粉末であってもよい。ポリテトラフルオロエチレンの市販品としては、例えば三井・デュポンフロロケミカル社製のテフロン7JやTLP−10、旭硝子(株)製のフルオンG163、ダイキン工業(株)製のポリフロンM15やルブロンL5等が挙げられる。
【0034】
本発明で固体潤滑剤として使用される黒鉛としては、天然鱗片状黒鉛、天然土状黒鉛、人造黒鉛、熱分解黒鉛等が挙げられ、好ましくは、天然鱗片状黒鉛、人造黒鉛である。天然鱗片状黒鉛は、外見が板状、うろこ状、葉状、針状を呈するものを大部分含む天然産の黒鉛である。人造黒鉛はコークスとピッチの混合物等の炭素源を高温で焼成して得られる塊状物を粉砕して得られるものや気相成長により製造される結晶化度の高いタイプのものが好ましい。熱分解黒鉛は、コークス等の炭素源を約2500℃ないし3000℃の高温で焼成して黒鉛化して得られるものである。これら、天然鱗片状黒鉛、人造黒鉛、熱分解黒鉛は、天然土状黒鉛に比べ二酸化珪素、珪酸塩化合物等の灰分や不純物、揮発分が少なく、耐熱性、潤滑性に優れており、また、樹脂中に配合した場合にも樹脂劣化が起こりにくい。また、本発明で使用される黒鉛の平均粒径は、レーザー回折法により測定した平均粒径が1〜100μm程度であり、4〜80μm程度のものが好ましく、5〜60μm程度のものが更に好ましい。
平均粒径が100μm以下であれば樹脂成分中での均一分散や良好な成形フィルム外観が得やすく、1μm以上であれば、樹脂成分への配合や混練時に粉体の飛散等のハンドリングトラブルが起こりにくく、押出機等を用いて溶融混練する場合、スクリューへのかみこみ不良による計量不安定や、押出物の形状不安定による引き取り性悪化などの問題が起きにくい。
本発明に使用する黒鉛中の灰分量は少ない方が好ましく、通常2質量%以下、さらに好ましくは、0.05〜1質量%である。2質量%以下の範囲であれば、樹脂成分中に配合して使用する際、加工時の樹脂成分の熱劣化が起こりにくい。
また、黒鉛中の揮発分は少ない方が好ましく、通常2質量%以下、好ましくは1質量%以下である。2質量%以下の範囲であれば、樹脂成分との溶融混練時に発泡が少なくなる。
これらの黒鉛の市販品の例としては、株式会社中越黒鉛工業所の商品名CPB−3(天然鱗片状黒鉛),CPB−30,CPB−3000、日本黒鉛工業(株)の商品名CP、特CP、CPB、Timcal社製、Timrex KS−44(人造黒鉛)等が挙げられる。
【0035】
本発明で固体潤滑剤として使用される遷移金属硫化物としては、二硫化モリブデン、二硫化タングステンなどが挙げられ、金属接触層を構成する熱可塑性樹脂、及び/又は表層を構成する熱可塑性樹脂中に分散させるために、粉体であることが好ましい。平均粒径は、0.1〜20μm程度が好ましく、より好ましくは、0.3〜11μm程度である。平均粒径が0.1μm以上であれば、熱可塑性樹脂成分との溶融混練時に、粉体の飛散等によるハンドリングトラブルが起こりにくく、20μm以下であれば、熱可塑性樹脂成分中への分散不良やフィルム外観不良が起こりにくい。
【0036】
二硫化モリブデン粉末の具体例として、日本黒鉛工業株式会社製 商品名モリパウダーA(平均粒径0.5μm)、商品名モリパウダーB(平均粒径3μm)、商品名モリパウダーC(平均粒径0.3〜0.4μm)、住鉱潤滑剤株式会社製、商品名MOS等が挙げられる。
二硫化タングステンの具体例として、日本潤滑剤株式会社製、商品名タンミックA(平均粒径1μm)、タンミックB(平均粒径0.6μm)等が挙げられる。
六方晶窒化硼素(略号:h−BN)は、金属接触層の樹脂、及び/又は表層の樹脂中に分散させるために、粉体であることが好ましい。このものの平均粒径は0.01〜100μm、好ましくは、0.1〜20μm、より好ましくは3−15μm、である。平均粒径が0.1μm以上であれば、樹脂成分との溶融混練時に、粉体の飛散等によるハンドリングトラブルが起こりにくく、100μm以下であれば、樹脂成分中への分散不良やフィルム外観不良が起こりにくい。比表面積は、0.1〜100m2/g、好ましく
は、1〜20m2/gである。比表面積が0.1m2/g以上、及び100m2/g以下であれば分散不良が起こりにくい。
【0037】
本発明で固体潤滑剤として使用される六方晶窒化硼素の具体例として、水島合金鉄株式会社、GEスペシャルティ・マテリアルズ・ジャパン株式会社等より販売されているものが挙げられる。
【0038】
これら(D)成分の固体潤滑剤の中で、さらに好ましくは、前記のPTFE、天然鱗片状黒鉛である。
金属接触層において使用する上記(D)成分の固体潤滑剤の量は、上述した(A)成分の熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)成分のポリアリールケトン樹脂の合計量100質量部に対して、0〜100質量部が好ましく、より好ましくは5〜55質量部、更に好ましくは10〜45質量部の範囲である。
金属接触層には(D)成分が含まれなくとも、金属体や表層との接着は良好であるが、フィルム成形時の端部のリサイクルに伴い(D)成分が含まれる場合に、(D)成分が100質量部以下であれば、金属接触層の成形加工性に著しい低下が起こりにくい。
金属接触層を構成する樹脂組成物中に、(C)成分と(D)成分を併用する場合、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対する(C)成分と(D)成分の合計質量は、0〜100質量部、好ましくは、0〜55質量部である。(C)成分と(D)成分の合計質量が100質量部以下であれば、溶融混練時のサージング等の不具合が起こりにくい。
金属接触層を構成する樹脂組成物には、その性質を損なわない程度に、(A)成分、(B)成分以外の樹脂や(C)成分の充填材、(D)成分の固体潤滑剤以外の各種添加剤、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、着色剤、滑剤、難燃剤等を適宜配合してもよい。また、(C)成分の充填材及び(D)成分の固体潤滑剤を含めた各種添加剤の混合方法は、公知の方法を用いることができる。
【0039】
混合の組合せの例として、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の3成分の例を下記に示す。
(I)(A)成分、(B)成分と(C)成分の3成分を同時に混合・分散させる方法、
(II)(A)成分と(B)成分をあらかじめ混合し、この混合物に(C)成分を混合・分散させる方法、
(III)(A)成分又は(B)成分に、(C)成分をあらかじめ混合分散させて、(A)成分と(C)成分の混合物又は(B)成分と(C)成分の混合物を調製し、次いで(A)成分と(C)成分の混合物に(B)成分を混合するか、あるいは(B)成分と(C)成分の混合物に(A)成分を混合する方法、
(IV)(A)成分及び(B)成分それぞれに(C)成分を混合分散させた混合物を調製し、これらの混合物を更に混合する方法[この場合、(A)成分に対する(C)成分の比率と(B)に対する(C)成分の比率は同じでも異なっていてもよい。]、
(V)複数種の(A)成分及び/又は複数種の(B)成分を使用する場合、これらのうちの少なくとも1種に、高濃度に(C)成分を混合分散させた混合物と、配合すべき他の(A)成分及び/又は(B)成分を混合するか、又は上記混合物と、配合すべき他の(A)成分及び/又は(B)成分に低濃度に(C)成分を混合分散させた混合物を混合分散させる方法などが挙げられる。
(D)成分を使用する場合も、上記混合方法に準じて混合分散させることができる。
【0040】
混合、分散の方法としては、(A)成分と(B)成分、(C)成分及び/又は(D)成分と所望により用いられる各種添加剤をそれぞれ別々に単軸溶融混練機や二軸溶融混練機に供給して混合することもでき、複数の供給部を有する溶融混練機を用いて各成分を逐次的に溶融混練機に供給することもできる。また、あらかじめヘンシェルミキサー(商品名)、スーパーミキサー、リボンブレンダー、タンブラーミキサーなどの混合機を利用してそれらを予備混合した後、溶融混練機に供給して、具体的には350℃〜430℃の温度で溶融混練することもできる。また、目的により、水性媒体や有機溶媒に分散せしめて湿式法により混合することも可能である。
さらに、(C)成分及び/又は(D)成分や各種添加剤を、(A)成分及び/又は(B)成分をベース樹脂として高濃度(代表的な含有量としては10〜60質量%程度)に混合したマスターバッチを別途作製しておき、これを使用する樹脂に濃度を調整して混合し、ニーダーや押出機等を用いて機械的にブレンドする方法などが挙げられる。上記混合方法の中では、マスターバッチを作製し、混合する方法が分散性や作業性の点から好ましい。
混合された樹脂組成物は、成分の溶融混合分散に続いて直接フィルム状に成形しても良く、また、一旦ストランドないしはシート状に押し出され、カッティングされてペレット、顆粒、粉体等の成形加工に適した形態で得てもよい。
本発明において、上記金属接触層の厚さは、特に制限されるものではないが、通常0.1〜800μm程度であり、成形が比較的容易であるという観点から2〜200μm程度が好ましい。
【0041】
本発明の積層体を構成する表層は、(B)ポリアリールケトン樹脂又はこれと(C)充填材を含む樹脂組成物、及び又は(D)固体潤滑剤を含む樹脂組成物からなる。(B)ポリアリールケトン樹脂は、上記金属接触層において例示したものと同様のものを使用することができ、そのポリアリールケトン樹脂の種類は、金属接触層において使用されるものと同じであっても異なっていてもよい。表層においては、上記構造式(3)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンを使用することが好ましい。
表層において使用する(C)充填材は、上記金属接触層において例示したものと同様のものを使用することができ、その充填材の種類は、金属接触層において使用されるものと同じであっても異なっていてもよい。
表層に使用する(C)充填材の量は、(B)ポリアリールケトン樹脂100質量部に対して、0〜100質量部の範囲である。添加する充填材が100質量部以下であると、表層が著しく脆くなることがない。この充填材の添加により表層の鉛筆硬度が向上し、線膨張係数の低減による積層体の形状安定性が向上する。このことから好適な充填材の添加量は、(B)成分のポリアリールケトン樹脂100質量部に対して、10〜55質量部の範囲が好ましく、より好ましくは、15〜45質量部の範囲である。
表層に使用する(D)固体潤滑剤は、上記金属接触層において例示したものと同様のものを使用することができ、その固体潤滑剤の種類は、金属接触層において使用されるものと同じであっても異なっていてもよい。
【0042】
表層に使用する(D)固体潤滑剤の添加量は、(B)ポリアリールケトン樹脂100質量部に対して、0〜400質量部の範囲がよく、さらに添加する固体潤滑剤が100質量部以下であると、表層が著しく脆くなることがなく好ましい。この固体潤滑剤の添加により表層の摩擦係数が低減できる。このことから好適な固体潤滑剤(D)の添加量は、(B)成分100質量部に対して10〜55質量部の範囲がより好ましく、さらに好ましくは、15〜45質量部の範囲である。
表層を構成する樹脂組成物に、(C)成分と(D)成分を併用する場合、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対する(C)成分と(D)成分の合計質量は、0〜100質量部が好ましく、より好ましくは、0〜55質量部である。(C)成分と(D)成分の合計質量が100質量部以下であれば、溶融混練時のサージング等の不具合が起こりにくい。
【0043】
表層を構成する樹脂組成物[(B)成分単独の場合も含む。]には、必要に応じて、(B)成分以外の樹脂や(C)成分の充填材、(D)成分の固体潤滑剤以外の各種添加剤、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、着色剤、滑剤、難燃剤等を適宜配合してもよい。
(C)成分の充填材、及び/又は(D)成分の固体潤滑剤や各種添加剤の混合方法は、公知の方法を用いることができる。混合の組合せの例として、(B)成分、及び(D)成分からなる2成分の例を下記に示す。
(VI)(B)成分と(D)成分の2成分を同時に混合・分散させる方法、
(VII)(B)成分に、高濃度に(D)成分を混合分散させた混合物をあらかじめ調製し、この混合物に更に(B)成分を混合・分散させる方法、
(VIII)(B)成分に(D)成分を異なる濃度に混合分散させた複数種の混合物をあらかじめ調製し、これらの混合物を混合する方法、
(IX)複数種の(B)成分及び/又は複数種の(D)成分を使用する場合、(B)成分の少なくとも1種に、高濃度に(D)成分を混合分散させた混合物と、配合すべき他の(B)成分を混合するか、又は上記混合物と、配合すべき他の(B)成分に低濃度に(D)成分を混合分散させた混合物を混合・分散させる方法、
などが挙げられる。混合・分散は、上記金属接触層における方法と同様の方法により行うことができる。
【0044】
表層の厚さは、特に制限されるものではないが、通常1〜1000μm程度であり、成形が比較的容易であるという観点から10〜200μmが好ましい。
金属接触層と表層の厚さの比率は、通常、金属接触層の厚さ/表層の厚さの比が、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10の範囲である。表層の比率が1より高いと摺動性、摩耗性と表層の機械的強度に優れ、金属接触層の比率が1より高いと金属接触層の機械的強度と接着強度に優れる。
また、金属接触層と表層を合わせて共押出により積層フィルムとして成形し、冷却前又は冷却後に金属体と積層する場合に、上記厚さ比率の範囲であれば、各層が安定して成形できる。一方、摺動性と摩耗性に優れる表層比率が高いと積層体の寿命が長くなる。この観点から、より好ましくは、金属接触層の厚さ/表層の厚さの比が、10/90〜70/30である。
【0045】
本発明の積層体においては、本発明の主旨を超えない範囲で、金属接触層と表層の間に、金属接触層や表層と同じ成分を含む層や、他の成分よりなる層を介在させた積層構造を有するものであってもよい。
【0046】
本発明の積層体を構成する金属接触層及び表層の成形方法としては、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法等の公知の方法が挙げられる。例えば、押出部先端の断面形状が長方形や長方形類似形状のダイ、具体的にはTダイ、Iダイなどフィルム押出用のダイスより押出されたフィルム状の樹脂組成物を冷却体に接触させて冷却する押出キャスト法、カレンダー法等を採用することができ、特に限定されるものではないが、フィルムの製膜性、安定生産性等の面から、TダイやIダイなどフィルム押出用のダイスと冷却体を用いる押出キャスト法が好ましい。上記冷却体としては、表面の材質が金属やゴム、繊維などよりなり、形態はロールやベルト、シームレスベルトなどが挙げられる。
これらのうちで、冷却装置が単純で取り扱い易いという理由から、冷却体としてロールを用いることが好ましい。その一例として、押出機より溶融した樹脂組成物が導管を経てダイに送り込まれ、ダイの先端よりフィルム状に押出され、冷却用の金属ロールとゴムロールに挟まれてフィルム状に形状固定・冷却され、続いて、金属ロール側に巻き付いて冷却されて、巻き取り機に送られる。フィルムは必要に応じて、金属ロールと巻き取り機の間にさらに他のロールや、冷却エアーにより冷却される。
【0047】
押出キャスト法での成形温度は、組成物の流動特性や製膜性等によって適宜調整されるが、概ねガラス転移温度ないしは融点以上、430℃以下、好ましくは、350〜400℃、さらに好ましくは380〜395℃である。
ロール等の冷却体の表面温度は、通常、各層を構成する樹脂成分のガラス転移温度ないしは融点以下の温度である。金属接触層を形成する場合、冷却体の表面温度は、通常30〜175℃程度、好ましくは90〜140℃の範囲である。30℃以上であると、冷却体表面に空気中の水分が凍って付着することを避けることができ、175℃以下であると、冷却体との接触により形成された形状が変化することを防ぐことができる。表層を形成する場合、冷却体の表面温度は、通常30〜155℃程度、好ましくは90〜141℃程度の範囲である。30℃以上であると、冷却体表面に空気中の水分が凍って付着することを避けることができ、175℃以下であると、冷却体との接触により形成された形状が変化することを防ぐことができる。冷却体上面に熱電対や温度指示体を接触させる接触法、赤外線温度計など光や電磁波を用いる非接触法などで測定することができる。
冷却体の表面温度の好適範囲は、冷却体の温度制御機構や、オイル、水などの循環冷媒等熱媒体の温度を適切に選択することにより制御することができる。
【0048】
本発明の積層体を製造する際の金属体、金属接触層及び表層の積層方法は、特に限定されないが、例えば、上記金属体と、あらかじめフィルム状に成形した金属接触層と表層を重ね合わせて圧力をかけながら加熱して積層するプレス成形、金属体と、あらかじめフィルム状に成形した金属接触層と表層を同時に又は別々に加熱ロール接触や赤外線、熱風などにより加熱した後に重ね合わせ、ロールやプレスにより圧力をかけて密着させる方法、金属接触層を構成する樹脂組成物と、表層を構成する樹脂組成物をそれぞれ別々の押出機で溶融混練してそれぞれ別々のダイ又は多層のダイ内で積層し、フィルム状に押し出して冷却せずにそのまま金属体表面に載せて、金属体とともに加熱プレス又は加熱ロールに挟んで積層する方法、又は金属接着層と表層を積層フィルムとして押し出して一旦冷却した後、金属体と加熱プレス又は加熱ロールに挟んで積層する方法などが挙げられる
積層温度は、各層に使用される樹脂成分の融解温度や、ガラス転移温度、充填材や固体潤滑剤の量比により適宜選択されるが、通常350〜390℃、好ましくは360〜370℃である。また、金属接触層と表層との積層フィルムを使用する場合は、210〜390℃、好ましくは230〜280℃の範囲である。210℃以上で接着強度が良好となり、390℃以下では樹脂成分の急激な劣化を避けることができる。
加熱の時間は、積層方法と積層温度と求められる接着強度により適宜選択されるが、通常0.01秒以上、好ましくは0.1秒〜500分の範囲である。0.01秒以上時間の選択で接着強度を向上に効果があり、500分以下の短い時間の選択で樹脂成分の劣化を避けることができる。
圧力は、積層装置、温度、時間と求められる接着強度、金属体の強度により適宜選択されるが、通常0.1MPa以上、好ましくは1MPa〜100MPaである。また、プレス成形により積層する場合、好ましくは2〜10MPaの範囲である。0.1MPa以上で接着強度を高める効果が得られ、100MPa以下で、金属接着層や表層の異常な変形を避けることができる。
【0049】
上記積層の際に使用する金属体は連続したコイル、帯板やカットされた板の状態でよく、金属接触層、表層もそれぞれ連続した巻きやカットされた枚葉の形態で積層に供してよい。
また、金属体と金属接触層との接着向上のため、アミノシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤などの使用も可能である。
本発明の積層体の用途としては、回転摺動や往復摺動部分を有する機械部品、自動車部品、スラスト軸受けやジャーナル軸受け等の各種軸受け、自動車エンジンルーム内部品や隔壁、ドア摺動部品、ブレーキ部品、エネルギー発生機器部品、熱遮蔽板、エアーコンプレッサーの斜板、シュー、各種機器の筐体などが挙げられる。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値及び評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向と呼ぶ。
【0051】
(1)切断端部の剥離状態
金属部分の厚さが1mm以下の積層体については、生野機械株式会社製のシャーリング(刃渡り約1000mm、足踏み式)を用い、積層体を幅3cm、長さ20cmの短冊状に3枚切断し、長辺端部に生じる剥離の有無を目視にて観察し、以下の4ランクに分けて評価した。なお、固定刃側の切断端部と可動刃側の切断部の剥離発生状態が異なる場合は、剥離の長さや幅が大きい方の端部の剥離状態を評価し、さらに、上記短冊状試験片切断後の残りの部分の切断端部剥離状態も観察し、剥離の長さや幅が大きければそのものを評価結果とした。
ランク1:端部の剥離が生じていないか、又は剥離幅の最大値が0.5mm以下。
ランク2:剥離幅の最大値が0.5mm超、かつ1mm以下。
ランク3:剥がれが端部全体に生じており、剥離幅は少なくとも部分的に1mm超。
ランク4:シャーリングによる切断後、室温にて2日間状態調節中に、剥がれが端部から剥離幅1mmを超えて徐々に広がり、積層面の少なくとも10%が剥離する状態。
【0052】
(2)切れ目周囲の剥離状態
金属体部分の厚さが1mmを超える積層体については、シャーリングにて切断できないので、カッターナイフにて樹脂面に2cm間隔の平行な直線状の切れ目を3本入れ、さらにそれらの直線の中心付近にそれらの直線と直角方向に幅2cmの直線上の切れ目を平行に3本入れ、剥離の状態を目視にて観察した。また、切れ目の部分にカッターナイフ先端を差し込んで切れ目部分の剥離を試みた。切れ目部分に生じる剥離の有無を目視にて観察し、以下の4ランクに分けて評価した。
ランク1:切れ目の剥離が生じていないか、又は剥離幅の最大値が0.5mm以下。
ランク2:切れ目の剥離幅の最大値が0.5mm超、かつ1mm以下。
ランク3:剥がれが切れ目全体に生じており、剥離幅は少なくとも部分的に1mm超。
ランク4:カッターナイフによる切断後、室温にて2日間状態調節中に、剥がれが切れ目部分から剥離幅1mmを超えて徐々に広がり、積層面の少なくとも10%が剥離する状態。
【0053】
(3)剥離強度
金属部分の厚さが1mm以下の積層体については、得られた積層体を上記シャーリングにより、幅3cm、長さ20cmの短冊状に切断し、熱可塑性樹脂面の長さ20cmの両辺端部より内側に5mmの位置にカッターナイフで直線状の切れ目を作製し、さらに、長さ3cmの片方の辺より内側に約3〜5cmの位置に長さ3cmの辺にほぼ並行にカッターナイフで切れ目を作製し、その位置を積層体面の上下に繰り返し折り曲げて剥離強度測定用の剥離箇所を作製し、試験片とした。
また、金属体部分の厚さが1mmを超える積層体については、シャーリングによる切断を行わず、積層体樹脂面に、カッターナイフにて2cm間隔の平行な直線状の切れ目を5本入れ、さらにそれらの直線の端部から2〜3cmの位置にそれらの直線と直角方向に直線上の切れ目を1本入れ、切れ目の部分にカッターナイフ先端を差し込んで剥離箇所の作製を試みた。剥離箇所作製操作中に樹脂層部分が折れたり破断したものは材料破壊(「材破」と略記する。)と判断した。
さらに、接着強度測定の目的で剥離部分の樹脂層を引っ張るために、幅18mmのセロハンテープを剥離部分に貼り付けて、引っ張りしろを設けた。具体的には、幅18mmのセロハンテープ(商品名ニチバンセロテープ、型番:CT405A−18)を長さ約33cmに切り取り、両端部約1.5cmを残して粘着面を内側にして中央で2つに折って貼り合わせ、両端部を、上記剥離部分に貼り付け、幅18mm、長さ約15cmの引っ張りしろとした。
剥離箇所から熱可塑性樹脂層ないしは上記セロハンテープで積層体の面と垂直な方向に引っ張り、剥離箇所を広げた。剥離箇所が広がったものは、引っ張り試験機にて50mm/分の速度で180度方向に引っ張り、剥離強度を測定した。広げる操作中にフィルムが破れたものは材料強度より剥離強度が強いと判断し、材料破壊(「材破」と略記する。)と判断した。
【0054】
(4)摩擦係数測定
JIS K 7125−1987に準じ、静摩擦係数と動摩擦係数を測定した。
(5)鉛筆硬度
JIS K 3312−1994に準じ、鉛筆硬度を測定した。
(6)積層体に使用した金属体の表面粗さ
小坂研究所株式会社製、表面粗さ測定装置、型式SE3−FK、を使用し、JIS B0601−1994に規定される表面粗さパラメータを測定した。測定したパラメータは、十点平均粗さ(Rz)、最大高さ(Ry)、算術平均粗さ(Ra)である。
(7)耐溶剤性
積層体を室温にて4時間クロロホルム中に浸漬し、表面外観の変化を目視にて観察し、未浸漬の試料と比較して、以下の5ランクに分けて評価した。
ランク1:外観変化が無い。
ランク2:表面の光沢が変化する。
ランク3:表面荒れが部分的に生じる。
ランク4:表面荒れが全体に生じる。
ランク5:少なくとも部分的に溶解する。
【0055】
実施例1
(1)金属接触層に使用するフィルムの作製
非晶性ポリエーテルイミド樹脂[ゼネラルエレクトリック社製、商品名:Ultem 1000、ガラス転移温度Tg:216℃](以下、単にPEI−1と略記することがある)2.016kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し28質量%)、ポリエーテルイミド樹脂[ゼネラルエレクトリック社製、Ultem CRS5001、Tg:226℃](以下、単にPEI−2と略記することがある)2.304kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し32質量%)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂[ビクトレックス社製、PEEK450G、Tg:143℃、融点Tm:334℃](以下、単にPEEK−1と略記することがある)2.88kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)、及び充填材として合成マイカ(平均粒径:6μm、アスペクト比:25)2.8kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し38.9質量部、略号C1)からなる成分をサイドフィード付き二軸押出機を用いて設定温度380℃で混練し、ストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした。
このペレットを、180℃で12時間熱風乾燥した後、Tダイを接続した口径40mmの単軸押出機を使用し、380℃にてフィルム状に押出し、設定温度160℃の循環オイルにて温度調節された金属キャストロールの表面に接触させ、その反対側からシリコーンゴムロールにて押しつけて急冷製膜することにより、厚さ100μmの金属接触層用のフィルム(略号をS1とする。)を得た。
【0056】
(2)表層に使用するフィルムの作製
上記のPEEK−1 7.2kg(100質量部)及び充填材として合成マイカ(C1)2.8kg(PEEK−1 100質量部に対し38.9質量部)からなる成分をサイドフィード付き二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練し、ストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした。
このペレットを、180℃で12時間熱風乾燥した後、Tダイを接続した口径40mmの単軸押出機を使用し、390℃にてフィルム状に押出し、設定温度130℃の循環オイルにて温度調節された金属キャストロールの表面に接触させ、その反対側からシリコーンゴムロールにて押しつけて急冷製膜することにより、厚さ約110μmの表層用のフィルム(略号をT1とする。)を得た。
【0057】
(3)積層体の作製
下から上に向かって下記の順番に重ね合わせたものを、高性能高温真空プレス成形機(北川精機(株)製、成型プレス、型式:VH1−1747)内にセットし、設定最高温度360℃、設定最高温度保持時間20分、プレス成形機の設定圧力9.7MPa(接着部の圧力は約3.9MPa)にてプレス成形し、積層体を得た。
(i)両面を35μmの銅箔で覆った一辺が約30cmの正方形で、厚さ1.6mmのクッション紙(三菱製紙株式会社製、商品名:RAボード RAB N 0016)、
(j)一辺が約30cmの正方形で、厚さ2mmのステンレス鋼板、
(k)縦30cm、横25cmの長方形で、厚さ50μmのポリイミドフィルム(宇部興産(株)製、商品名:ユーピレックス50S、厚さ50μm)、
(L)一辺が22cmの正方形で、厚さ0.4mmのステンレス鋼板(SUS304、クロロホルム洗浄により脱脂済み、略号A1)、
(m)一辺が24cmの正方形の金属接触層用フィルム(略号S1)、
(n)一辺が24cmの正方形の表層用フィルム(略号T1)、
(o)上記(k)と同様のポリイミドフィルム、
(p)上記(j)と同様のステンレス板、
(q)上記(i)と同様の銅箔で覆ったクッション紙。
上記(i)〜(q)は、重ね合わせる前に少量のエタノールをしみこませたワイピング紙で表面の汚れや異物を取り除き、さらに、上記(k)〜(o)は、重ね合わせる前に、目視検査により表裏の異物を確認し、少量のエタノールをしみこませたワイピングクロス(帝人(株)製、商品名:ミクロスター−CP)を用いてその異物をふき取った後、再度目視検査を行い、異物が除去できたことを確認した後に重ね合わせた。
使用した金属体A1の表面粗さパラメータは、Raが0.18μm、Ryが1.5μm、Rzが1.4μmであった。
【0058】
得られた積層体の断面を顕微鏡にて観察し、各層の厚さを測定したところ、金属体0.4mm、金属接触層96μm、表層107μmであった。この値より金属接触層と表層の比率は47:53と算出した。この積層体を上記シャーリングにて切断し、端部の剥離状況を目視観察したところ、ランク1であった。静摩擦係数は0.235であり、動摩擦係数は0.163であった。剥離強度を測定するため端部に剥離箇所を作製しようとしたが、剥離せず、カッターナイフで切れ目を入れ、積層体を面の上下に数回折り曲げて剥離箇所を作製したが剥離箇所は広がらず、指先で熱可塑性樹脂層を引っ張って剥がそうとしたところ、熱可塑性樹脂層が切れたので、材料破壊(以下、「材破」と略記する。)と判定した。鉛筆硬度はHであった。また、上記の方法により耐溶剤性を評価したところ外観変化は見られず、ランクは1であった。
【0059】
実施例2
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を4.4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し55質量%)、PEI−2を使用せず、PEEK−1を3.6kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し45質量%)、に変更し、合成マイカ(C1)を下記の方法により作製した表面処理マイカ2kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し25質量部)に変更し、フィルム厚さを35μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、金属接触層用フィルム(略号をS2とする。)を得た。
表面処理マイカは、以下の方法により作製した。ヘンシェルミキサー(商品名)に、市販のマイカ(平均粒子径:10μm、アスペクト比:20)2kgを入れ、その上から、水分約3質量%のイソプロピルアルコール160gに溶解した表面処理剤ヘキシルトリメトキシシラン(東京化成工業株式会社製、試薬グレード)40g(合成マイカ100質量部に対して2質量部)を溶解して得た20質量%溶液200gを振りかけ、ミキサー上部に蓋をした。窒素を供給しながらミキサーを10分間作動させて撹拌混合した。このものを、ステンレス製のバットに広げ、室内にて4日間放置した後、120℃のオーブン中で48時間加熱処理し、室温まで冷却して表面処理されたマイカ(略号をC2とする。)を得た。さらに、この操作を10回繰り返して、約20kgの表面処理マイカを得た。
表層用フィルムの構成成分のうち、PEEK−1の量を7.6kg(100質量部)に、合成マイカ(C1)を上記表面処理マイカ(C2)2.4kg(PEEK−1 100質量部に対し31.6質量部)に変更し、フィルム厚さを40μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、表層用フィルム(略号をT2とする。)を得た。
金属体を厚さ0.4mmのSUS301 二分の一H材(略号をA2とする。)に変更し、金属接触層用フィルムを上記S2、表層用フィルムを上記T2に変更した以外は実施例1と同様のプレス成形を行い、積層体を得た。金属体A2の表面粗さパラメータは、Ra0.08μm、Ry1.0μm、Rz0.92μmであった。
得られた積層体の各層の厚さは、金属体0.4mm、金属接触層33μm、表層38μmであった。このものの評価結果を表1に示す。
【0060】
実施例3
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を3.04kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)、PEI−2を1.9kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し25質量%)、PEEK−1を2.66kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し35質量%)、に変更し、合成マイカ(C1)を上記表面処理マイカ(C2)2.4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し31.6質量部)に変更し、フィルム厚さを80μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、金属接触層用フィルム(略号をS3とする。)を得た。
表層用フィルムの構成成分をPEEK−1のみとして合成マイカを配合せず、二軸押出機を使用せず180℃にて12時間乾燥後、口径40mmの単軸押出機に直接、供給してフィルムとして押出し、フィルム厚さを30μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、表層用フィルム(略号をT3とする。)を得た。
金属体を厚さ0.5mmのSUS304(略号をA3とする。)に変更し、金属接触層用フィルムを上記S3、表層用フィルムを上記T3に変更した以外は実施例1と同様のプレス成形を行い、積層体を得た。金属体A3の表面粗さパラメータは、Ra0.17μm、Ry1.67μm、Rz1.37μmであった。
得られた積層体の各層の厚さは、金属体0.5mm、金属接触層76μm、表層27μmであった。このものの評価結果を表1に示す。
【0061】
比較例1
表層用フィルムの構成成分をPEEK−1 10kg(100質量部)のみとして、合成マイカの配合と溶融混練を行わず、そのまま押出成形を行った以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ110μmの表層用フィルム(略号をTR1とする。)を得た。
金属接触層用フィルムを使用せず、表層用フィルムを上記TR1に変更した以外は実施例1と同様のプレス成形を行い、積層体を得た。得られた積層体の各層の厚さは、金属体0.4mm、表層106μmであった。
この積層体を実施例1と同様のシャーリングにて切断し、端部の剥離状況を目視観察したところ、ランク3であり、さらに23℃、湿度50%の恒温室内にて2日間状態調節中に、剥がれが端部から剥離幅1mmを超えて徐々に積層面全体に広がり、積層面の約60%が剥離したので、ランク4と判定した。さらに、2日経過後には接着面の約80%が剥離したので接着不良と判定した。剥がれたTR1層の厚さは106μmであった。接着不良のため、それ以外の評価は行わなかった。
【0062】
比較例2
金属接触層用フィルムを上記S1とし、表層用フィルムを使用しない点以外は実施例1と同様のプレス成形を行い、積層体を得た。得られた積層体の各層の厚さは、金属体0.4mm、金属接触層96μmであった。このものの評価結果を表1に示す。
比較例3
上記ステンレス板A1の表面をショットブラストにより粗面化した(略号をRA1とする)。表面粗さパラメーターRaは1.4μm、Ryは14.9μm、Rzは10.7μmであった。上記PEEK−1に着色用カーボンブラック0.2質量%を溶融混練により配合したペレットを平均粒径約0.1mmに粉砕し(略号をPEEK−1P)、上記RA1上に塗布し、420℃に設定されたオーブン中にて60分加熱し、PEEK−1Pを溶融させたのち、6時間かけてオーブンを室温まで冷却した。このものの静摩擦係数は、0.262であり、動摩擦係数は0.198であった。
【0063】
実施例4
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を3.28kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)、PEI−2を2.87kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し35質量%)、PEEK−1を2.05kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し25質量%)、に変更し、合成マイカ(C1)を下記の方法により作製した表面処理マイカ1.8kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し22質量部)に変更し、フィルム厚さを50μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、金属接触層用フィルム(略号をS4とする。)を得た。
表面処理合成マイカは、以下の方法により作製した。ヘンシェルミキサー(商品名)に、市販の合成マイカ(平均粒子径:6μm、アスペクト比:25)2kgを入れ、その上から、水分約3質量%のイソプロピルアルコール160gに溶解した表面処理剤フェニルトリメトキシシラン(東京化成工業株式会社製、試薬グレード)40g(マイカ100質量部に対して2質量部)を溶解して得た20質量%溶液200gを振りかけ、ミキサー上部に蓋をした。窒素を供給しながらミキサーを10分間作動させて撹拌混合した。このものを、ステンレス製のバットに広げ、室内にて4日間放置した後、120℃のオーブン中で48時間加熱処理し、室温まで冷却して表面処理された合成マイカ(略号をC3とする。)を得た。さらに、同様の操作を30回繰り返して、約60kgの表面処理合成マイカを得た。
表層用フィルムの構成成分のうち、PEEK−1の量を8.2kg(100質量部)に、合成マイカ(C1)を上記S4に使用したものと同様の表面処理合成マイカ(C3)1.8kg(PEEK−1 100質量部に対し22質量部)に変更し、フィルム厚さを70μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、表層用フィルム(略号をT4とする。)を得た。
金属接触層用フィルムを上記S4、表層用フィルムを上記T4に変更した以外は実施例1と同様のプレス成形を行い、積層体を得た。得られた積層体の各層の厚さは、金属体0.4mm、金属接触層46μm、表層66μmであった。このものの評価結果を表2に示す。
【0064】
実施例5
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を2.25kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEI−2を2.25kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEEK−1を3.0kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)に変更し、合成マイカ(C1)を上記表面処理合成マイカ(C3)2.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し33.3質量部)に変更し、フィルム厚さを50μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、金属接触層用フィルム(略号をS5とする。)を得た。
表層用フィルムの構成成分のうち、PEEK−1の量を7.5kg(100質量部)に、合成マイカ(C1)を上記S4に使用したものと同様の表面処理合成マイカ(C3)2.5kg(PEEK−1 100質量部に対し33.3質量部)に変更し、フィルム厚さを50μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、表層用フィルム(略号をT5とする。)を得た。
金属体を厚さ0.3mmのSUS316(略号をA4とする。)に変更し、金属接触層用フィルムを上記S5、表層用フィルムを上記T5に変更した以外は実施例1と同様のプレス成形を行い、積層体を得た。金属板A4の表面粗さパラメータは、Ra0.07μm、Ry1.87μm、Rz1.15μmであった。
得られた積層体の各層の厚さは、金属体0.3mm、金属接触層45μm、表層47μmであった。このものの評価結果を表2に示す。
【0065】
実施例6
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を4.4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し55質量%)、PEI−2を使用せず、PEEK−1を3.6kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し45質量%)に変更し、合成マイカ(C1)を上記表面処理合成マイカ(C3)2kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し25質量部)に変更し、フィルム厚さを28μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、金属接触層用フィルム(略号をS6とする。)を得た。
上記のPEEK−1 8kg(100質量部)及び固体潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレン樹脂(旭硝子株式会社製、グレード名 フルオンPTFE L−169J、略号:D1)2kg(PEEK−1 100質量部に対し25質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした。
このペレットを用い、フィルム厚さを60μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、表層用フィルム(略号をT6とする。)を得た。
金属接触層用フィルムを上記S6、表層用フィルムを上記T6に変更した以外は実施例1と同様のプレス成形を行い、積層体を得た。
得られた積層体の各層の厚さは、金属体0.4mm、金属接触層24μm、表層55μmであった。このものの評価結果を表2に示す。
【0066】
実施例7
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を3.2kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)、PEI−2を2.4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEEK−1を2.4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)に変更し、合成マイカ(C1)を上記表面処理合成マイカ(C3)2kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し25質量部)に変更し、フィルム厚さを24μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、金属接触層用フィルム(略号をS7とする。)を得た。
上記のPEEK−1 8.33kg(100質量部)及び固体潤滑剤としてフッ素樹脂を鱗片状黒鉛(日本黒鉛株式会社製、商品名 特CP、顕微鏡下での平均粒径測定値は6μm、略号:D2)1.67kg(PEEK−1 100質量部に対し20質量部)に変更し、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした。
このペレットを用い、押出温度を390℃とし、フィルム厚さを100μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、表層用フィルム(略号をT7とする。)を得た。
金属接触層用フィルムを上記S7、表層用フィルムを上記T7に変更した以外は実施例1と同様のプレス成形を行い、積層体を得た。
得られた積層体の各層の厚さは、金属体0.4mm、金属接触層20μm、表層96μmであった。このものの評価結果を表2に示す。
【0067】
実施例8
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEI−2を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEEK−1を4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)とし、合成マイカ(C1)を上記表面処理マイカ(C2)1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し15質量部)とし、固体潤滑剤を上記フッ素樹脂(D1)1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し15質量部)、及び上記黒鉛(D2)1kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し10質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした。
このペレットを用い、押出温度を390℃とし、フィルム厚さを50μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、金属接触層用フィルム(略号をS8とする。)を得た。
上記のPEEK−1 10kg(100質量部)、上記表面処理合成マイカ(C3)1kg(PEEK−1 100質量部に対し10質量部)、固体潤滑剤として上記フッ素樹脂(D1)2kg(PEEK−1 100質量部に対し20質量部)、及び上記鱗片状黒鉛(D2)1kg(PEEK−1 100質量部に対し10質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした。
このペレットを用い、フィルム厚さを35μmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、表層用フィルム(略号をT8とする。)を得た。
金属接触層用フィルムを上記S8、表層用フィルムを上記T8に変更した以外は実施例1と同様のプレス成形を行い、積層体を得た。
得られた積層体の各層の厚さは、金属体0.4mm、金属接触層45μm、表層31μmであった。このものの評価結果を表2に示す。
【0068】
実施例9
(共押出による積層フィルムの作製)
上記PEI−1を2.8kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し28質量%)、PEI−2を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEEK−1を4.2kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し42質量%)、及び上記表面処理マイカ(C2)2.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し25質量部)をサイドフィード付き二軸押出機を用いて設定温度380℃で混練し、ストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした。
このペレットを180℃で8時間熱風乾燥し、390℃に設定した口径30mmφの単軸押出機を接続したマルチマニホールド式のダイ(設定温度390℃)より金属接触層として押し出した。
また、上記PEEK−1のペレットを180℃で8時間熱風乾燥したのち390℃に設定した口径40mmφの単軸押出機を接続した上記マルチマニホールドダイ(設定温度390℃)より表層として押し出した。
金属接触層と表層の厚さ比は16:84となるように溶融樹脂の吐出量を調整した。この共押出フィルムすなわち積層フィルムの金属接触層側を125℃のキャスティングロールにて急冷し、表層側にシリコンゴムロールを押し当てた。さらに、金属ロールの反対側に設置された約35℃の水で冷却される硬質クロムメッキロールを押しつけてシリコンゴムロールを冷却した。次いでこの共押出フィルムを巻き取って積層体を得た。このものの厚さが50μmとなるように、押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整した。作製した積層フィルムの断面を顕微鏡により拡大して観察し、各層の厚さを測定したところ、金属接触層の厚さは8μm、表層の厚さは42μmであった。この積層フィルムの略号を「ST9」とする。
(金属体との積層)
金属接触層用フィルム(S1)と表層用フィルム(T1)を上記積層フィルム(ST9)に変更し、積層フィルムの金属接触層を金属体(A1)に接触するように(A1)上に重ね、プレス積層時の設定最高温度を250℃、設定最高温度保持時間を30分に変更したほかは実施例1と同様の操作によりプレス成形し、積層体を得た。
この積層体の評価結果を表3に示す。
【0069】
実施例10
(金属接触層に使用する樹脂組成物の作製)
金属接触層の構成成分のうち、PEI−1を6kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し60質量%)、PEI−2を使用せず、PEEK−1を4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)、表面処理マイカ(C2)1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し15質量部)、及び固体潤滑剤として上記フッ素樹脂(D1)1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し15質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした(略号をK101とする。)。
表層構成成分として、上記のPEEK−1 10kg(100質量部)、上記表面処理合成マイカ(C3)0.8kg(PEEK−1 100質量部に対し8質量部)、及び固体潤滑剤として上記フッ素樹脂(D1)2.5kg(PEEK−1 100質量部に対し25質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした(略号をK102とする。)。
(共押出による積層フィルムの作製)
上記K101のペレットを180℃で8時間熱風乾燥し、390℃に設定した口径30mmφの単軸押出機を接続したマルチマニホールド式のダイ(設定温度390℃)より金属接触層として押し出した。
また、上記K102のペレットを180℃で8時間熱風乾燥したのち390℃に設定した口径40mmφの単軸押出機を接続した上記マルチマニホールドダイ(設定温度390℃)より表層として押し出した。
金属接触層と表層の厚さ比は14:86となるように溶融樹脂の吐出量を調整した。この共押出フィルムすなわち積層フィルムの金属接触層側を125℃のキャスティングロールにて急冷し、表層側にシリコンゴムロールを押し当てた。さらに、金属ロールの反対側に設置された約35℃の水で冷却される硬質クロムメッキロールを押しつけてシリコンゴムロールを冷却した。次いでこの共押出フィルムを巻き取って積層体を得た。このものの厚さが105μmとなるように、押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整した。作製した積層フィルムの断面を顕微鏡により拡大して観察し、各層の厚さを測定したところ、金属接触層の厚さは15μm、表層の厚さは90μmであった。この積層フィルムの略号を「ST10」とする。
(金属体との積層)
積層フィルム(ST9)を(ST10)に変更したほかは、実施例9と同様のプレス成形操作を行い積層体を得た。この積層体の評価結果を表3に示す。
【0070】
実施例11
金属接触層の構成成分のうち、PEI−1を6kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し60質量%)、PEI−2を1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し15質量%)、PEEK−1を2.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し25質量%)、表面処理合成マイカ(C3)を1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し15質量部)、及び固体潤滑剤である上記黒鉛(D2)を1kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し10質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした(略号をK111とする。)。
表層構成成分のうち、上記PEEK−1 10kg(100質量部)、上記表面処理合成マイカ(C3)1.0kg(PEEK−1 100質量部に対し10質量部)、固体潤滑剤として上記フッ素樹脂(D1)2kg(PEEK−1 100質量部に対し20質量部)、及び上記黒鉛(D2)1kg(PEEK−1 100質量部に対し10質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした(略号をK112とする。)。
(共押出による積層フィルムの作製)
上記K111のペレットを180℃で8時間熱風乾燥したのち、390℃に設定した口径30mmφの単軸押出機を接続したマルチマニホールド式のダイ(設定温度390℃)より金属接触層として押し出した。
また、上記K112のペレットを180℃で8時間熱風乾燥したのち、390℃に設定した口径30mmφの単軸押出機を接続した上記マルチマニホールドダイ(設定温度390℃)より表層として押し出した。
金属接触層と表層の厚さ比は57:43となるように溶融樹脂の吐出量を調整した。この共押出フィルムすなわち積層フィルムの金属接触層側を125℃のキャスティングロールにて急冷し、表層側にシリコンゴムロールを押し当てた。さらに、金属ロールの反対側に設置された約35℃の水で冷却される硬質クロムメッキロールを押しつけてシリコンゴムロールを冷却した。次いでこの共押出フィルムを巻き取って積層体を得た。このものの厚さが70μmとなるように、押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整した。作製した積層フィルムの断面を顕微鏡により拡大して観察し、各層の厚さを測定したところ、金属接触層の厚さは40μm、表層の厚さは30μmであった。この積層フィルムの略号を「ST11」とする。
(金属体との積層)
積層フィルム(ST9)をST11に変更したほかは、実施例9と同様のプレス成形操作を行い、積層体を得た。この積層体の評価結果を表3に示す。
【0071】
実施例12
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEI−2を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEEK−1を4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)に変更し、合成マイカを使用せず、二軸押出機による混練を行わず、充分撹拌して180℃、8時間乾燥したのち、直接口径40mmの単軸押出機に供給し、厚さを50μmとしたほかは実施例1と同様の操作を行い、金属接触層用フィルムを得た(略号をS12とする。)。表層用フィルムの構成成分をPEEK−1 10kgとし、合成マイカを使用せず、二軸押出機による混練を行わず、180℃、8時間乾燥したのち、直接口径40mmの単軸押出機に供給し、厚さを50μmとしたほかは実施例1と同様の操作を行い、表層用フィルムを得た(略号をT12とする。)。金属体を厚さ4mm、縦16cm、横16cmの鋳鉄板(略号をA5とする。)とし、積層方法を下記のように変更した以外は、実施例1と同様の操作により積層体を得た。金属体(A5)は、ショットブラストにより表面処理されたものであり、その表面粗さパラメーターRaは1.07μm、Ryは11.1μm、Rzは8.5μmであった。この積層体の評価結果を表4に示す。
(積層体の作製)
下から上に向かって下記の順番に重ね合わせたものを、高性能高温真空プレス成形機(北川精機(株)製、成型プレス、型式:VH1−1747)内にセットし、設定最高温度360℃、設定最高温度保持時間30分、プレス成形機の設定圧力5.2MPa(接着部の圧力は約3.9MPa)にてプレス成形し、積層体を得た。
(i−1)一辺が約30cmの正方形で、厚さ1.5mmのステンレス鋼板、
(j−1)両面を35μmの銅箔で覆った一辺が約20cmの正方形で、厚さ1.6mmのクッション紙(三菱製紙(株)製、商品名:RAボード RAB N 0016)、
(k−1)一辺が16cmの正方形で、厚さ4mmの鋳鉄板(クロロホルム洗浄により脱脂済み、表面処理面を上、略号A5)、
(l−1)一辺が18cmの正方形の上記金属接触用フィルム(略号S12)、
(m−1)一辺が18cmの正方形の上記表層用フィルム(略号T12)、
(n−1)一辺が20cmの正方形で厚さ50μmのポリイミドフィルム(宇部興産(株)製、商品名:ユーピレックス50S、厚さ50μm)、ポリイミドフィルム、
(o−1)厚さ125μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、商品名:カプトン500H)、
(p−1)上記(n−1)と同様のポリイミドフィルム、
(q−1)一辺が20cmの正方形で厚さ5mmのステンレス板(SUS304)、
(r−1)一辺が18cmの正方形で上記(i−1)と同様の、銅箔で覆ったクッション紙。
上記(i−1)〜(r−1)は、重ね合わせる前に少量のエタノールをしみこませたワイピング紙で表面の汚れや異物を取り除き、さらに、上記(k−1)は表面の埃や異物をゴム製ブロアーを用いて除去し、上記(l−1)〜(p−1)は、重ね合わせる前に、目視検査により表裏の異物を確認し、少量のエタノールをしみこませたワイピングクロス(帝人(株)製、商品名:ミクロスター−CP)を用いてその異物をふき取った後、再度目視検査を行い、異物が除去できたことを確認した後に重ね合わせた。
【0072】
実施例13
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を5.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し55質量%)、PEI−2を使用せず、PEEK−1を4.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し45質量%)、合成マイカを使用せず、固体潤滑剤(D1)0.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し5質量部)、固定潤滑剤(D2)0.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し5質量部)、二軸押出機の押出温度と単軸押出機の押出温度を390℃、及び厚さを25μmに変更した以外は実施例1と同様の操作により金属接触層用フィルムを得た(略号をS13とする。)。表層用フィルムの構成成分をPEEK−1 10kg、合成マイカを使用せず、固体潤滑剤(D1)2.5kg(PEEK−1 100質量部に対して25質量部)、表層厚さを60μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作により表層用フィルムを得た(略号をT13とする。)。金属接触層用フィルムを上記(S13)とし、表層用フィルムを上記(T13)とし、金属体を厚さ6mmの鋳鉄板(略号をA6とする。)としたほかは実施例12と同様の操作を行い、積層体を得た。金属体(A6)は、ショットブラストにより表面処理されたものであり、その表面粗さパラメーターRaは0.56μm、Ryは5.8μ、Rzは4.9μmであった。この積層体の評価結果を表4に示す。
【0073】
実施例14
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEI−2を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEEK−1を4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)、充填材として表面処理合成マイカ1kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し10質量部)、固体潤滑剤として(D1)0.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し5質量部)、固定潤滑剤(D2)1kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し10質量部)、二軸押出機の押出温度と単軸押出機の押出温度を390℃、及び金属接触層厚さを30μmに変更したほかは実施例1と同様の操作により金属接触層用フィルムを得た(略号をS14とする。)。表層用フィルムの構成成分をPEEK−1 10kg、充填材として表面処理合成マイカ1kg(PEEK−1 100質量部に対して10質量部)、固体潤滑剤(D1)2kg(PEEK−1 100質量部に対して20質量部)と(D2)1kg(PEEK−1 100質量部に対して10質量部)、表層厚さを40μmとしたほかは実施例1と同様の操作により表層用フィルムを得た(略号をT14とする。)。金属体を上記A6とし、金属接触層を上記S14とし、表層を上記T14に変更した以外は、実施例12と同様の操作を行い、積層体を得た。この積層体の評価結果を表4に示す。
【0074】
実施例15
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し40質量%)、PEI−2を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEEK−1を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、充填材として表面処理合成マイカ1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し15質量部)、固体潤滑剤として(D1)1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し15質量部)、二軸押出機の押出温度と単軸押出機の押出温度を390℃、及び金属接触層厚さを28μmに変更したほかは、実施例1と同様の操作を行い、金属接触用フィルムを得た(略号をS15とする。)。表層用フィルムの構成成分をPEEK−1 10kg、充填材として表面処理合成マイカ1kg(PEEK−1 100質量部に対して10質量部)、固体潤滑剤(D1)2kg(PEEK−1 100質量部に対して20質量部)、表層厚さを60μmとしたほかは、実施例1と同様の操作を行い表層用フィルムを得た(略号をT15とする。)。金属体を厚さ10mmの鋳鉄(略号をA7とする。)、金属接触層表層用フィルムを上記S15とし、表層用フィルムを上記T15に変更したほかは、実施例12と同様の操作を行い、積層体を得た。
金属体(A7)は、ショットブラストにより表面処理されたものであり、その表面粗さパラメーターRaは0.83μm、Ryは8.5μ、Rzは6.6μmであった。この積層体の評価結果を表4に示す。
【0075】
実施例16
金属接触層用フィルムの構成成分のうち、PEI−1を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対して30質量%)、PEI−2を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対して30質量%)、PEEK−1を4kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対して40質量%)、充填材として表面処理合成マイカ2.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対して25質量部)、二軸押出機の押出温度と単軸押出機の押出温度を390℃、金属接触用フィルム厚さを40μmに変更したほかは、実施例1と同様の操作を行い金属接触用フィルムを得た(略号をS16とする。)。表層用フィルムの構成成分をPEEK−1 10kg(100質量部)、充填材として表面合成マイカ0.5kg(PEEK−1 100質量部に対して5質量部)、固体潤滑剤として、上記黒鉛(D2)0.5kg(PEEK−1、100質量部に対して5質量部)とポリテトラフルオロエチレン樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名 ポリフロンTFE L−5、略号をD3とする。)2kg(PEEK−1 100質量部に対して20質量部)、表層用フィルム厚さを70μmとしたほかは実施例1と同様の操作を行い、表層用フィルムを得た(略号をT16とする。)。金属体を上記A6とし、金属接触層用フィルムを上記S16とし、表層用フィルムを上記T16に変更したほかは、実施例12と同様の操作を行い、積層体を得た。この積層体の評価結果を表4に示す。
【0076】
実施例17
表層構成成分として、上記のPEEK−1 10kg(100質量部)、上記表面処理合成マイカ(C3)1kg(PEEK−1 100質量部に対し10質量部)、及び固体潤滑剤として上記フッ素樹脂(D1)2kg(PEEK−1 100質量部に対し20質量部)と、上記黒鉛(D2)0.5kg(PEEK−1 100質量部に対し5質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした(略号をK172とする。)。
金属接触層の構成成分のうち、PEI−1を3.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し35質量%)、PEI−2を3kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し30質量%)、PEEK−1を3.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し35質量%)として、これらのペレットを充分混合撹拌した後、180℃で8時間熱風乾燥したのち、390℃に設定した口径30mmφの単軸押出機を接続したマルチマニホールド式のダイ(設定温度390℃)より金属接触層として押し出した。
また、上記K172のペレットを180℃で8時間熱風乾燥したのち、390℃に設定した口径30mmφの単軸押出機を接続した上記マルチマニホールドダイ(設定温度390℃)より表層として押し出した。
金属接触層と表層の厚さ比は24:76となるように溶融樹脂の吐出量を調整した。この共押出フィルムすなわち積層体の金属接触層側を125℃のキャスティングロールにて急冷し、表層側にシリコンゴムロールを押し当てた。さらに、金属ロールの反対側に設置された約35℃の水で冷却される硬質クロムメッキロールを押しつけてシリコンゴムロールを冷却した。次いでこの共押出フィルムを巻き取って積層体を得た。このものの厚さが34μmとなるように、押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整した。作製した積層フィルムの断面を顕微鏡により拡大して観察し、各層の厚さを測定したところ、金属接触層の厚さは8μm、表層の厚さは26μmであった。この積層フィルムの略号を「ST17」とする。
金属接触用フィルムと表層用フィルムを上記積層フィルム(ST17)に変更し、金属体を上記A6に変更したほかは、実施例12と同様のプレス成形操作を行い、積層体を得た。この積層体の評価結果を表5に示す。
【0077】
実施例18
金属接触層の構成成分のうち、PEI−1を5.8kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し58質量%)、PEI−2を使用せず、PEEK−1を4.2kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し42質量%)、表面処理合成マイカ(C3)1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し15質量部)、及び固体潤滑剤である上記フッ素樹脂(D1)1kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し10質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした(略号をK181とする。)。
表層構成成分として、上記のPEEK−1 10kg(100質量部)、充填材としての表面処理合成マイカを使用せず、及び固体潤滑剤として上記フッ素樹脂(D1)2.5kg(PEEK−1 100質量部に対し25質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした(略号をK182とする。)。
上記K181のペレットを180℃で8時間熱風乾燥し、390℃に設定した口径30mmφの単軸押出機を接続したマルチマニホールド式のダイ(設定温度390℃)より金属接触層として押し出した。
また、上記K182のペレットを180℃で8時間熱風乾燥したのち、390℃に設定した口径40mmφの単軸押出機を接続した上記マルチマニホールドダイ(設定温度390℃)より表層として押し出した。
金属接触層と表層の厚さ比が14:86となるように溶融樹脂の吐出量を調整した。この共押出フィルムすなわち積層体の金属接触層側を125℃のキャスティングロールにて急冷し、表層側にシリコンゴムロールを押し当てた。さらに、金属ロールの反対側に設置された約35℃の水で冷却される硬質クロムメッキロールを押しつけてシリコンゴムロールを冷却した。次いでこの共押出フィルムを巻き取って積層体を得た。このものの厚さが105μmとなるように、押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整した。作製した積層フィルムの断面を顕微鏡により拡大して観察し、各層の厚さを測定したところ、金属接触層の厚さは15μm、表層の厚さは90μmであった。この積層フィルムの略号を「ST18」とする。
金属接触用フィルムと表層用フィルムを上記積層フィルム(ST18)に変更し、プレスによる積層温度を250℃に変更したほかは、実施例12と同様のプレス成形操作を行い、積層体を得た。この積層体の評価結果を表5に示す。
【0078】
実施例19
金属接触層の構成成分のうち、PEI−1を6kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し60質量%)、PEI−2を1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し15質量%)、PEEK−1を2.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計質量に対し25質量%)、表面処理合成マイカ(C3)1.5kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し15質量部)、及び固体潤滑剤を(D2)1kg(PEI−1、PEI−2及びPEEK−1の合計100質量部に対し10質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした(略号をK191とする。)。
表層構成成分として、上記のPEEK−1 10kg(100質量部)、充填材として表面処理合成マイカ(C3)0.5kg(PEEK−1 100質量部に対し5質量部)、及び固体潤滑剤として上記フッ素樹脂(D1)2kg(PEEK−1 100質量部に対し20質量部)と上記黒鉛(D2)0.5kg(PEEK−1 100質量部に対し5質量部)を、サイドフィード付きの二軸押出機を用いて設定温度390℃で混練してストランド状に押出し、カッティングしてペレットとした(略号をK192とする。)。
上記K191のペレットを180℃で8時間熱風乾燥し、390℃に設定した口径30mmφの単軸押出機を接続したマルチマニホールド式のダイ(設定温度390℃)より金属接触層として押し出した。
また、上記K192のペレットを180℃で8時間熱風乾燥したのち、390℃に設定した口径30mmφの単軸押出機を接続した上記マルチマニホールドダイ(設定温度390℃)より表層として押し出した。
金属接触層と表層の厚さ比が57:43となるように溶融樹脂の吐出量を調整、全体の厚さが70μmとなるように、押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整したほかは実施例10と同様の操作を行い積層フィルムを得た。作製した積層フィルムの断面を顕微鏡により拡大して観察し、各層の厚さを測定したところ、金属接触層の厚さは34μm、表層の厚さは26μmであった。この積層フィルムの略号を「ST19」とする。
金属接触用フィルムと表層用フィルムを上記積層フィルム(ST19)に変更し、金属体を上記A6に変更し、プレスによる積層温度を250℃に変更したほかは、実施例12と同様のプレス成形操作を行い、積層体を得た。この積層体の評価結果を表5に示す。
【0079】
実施例20
金属接触用フィルムと表層用フィルムを上記積層フィルム(ST18)に変更し、金属体をショットブラストにより表面処理を施した厚さ8mmのアルミニウム板(材質はJIS H4000−1999に示されたA1100、珪素と鉄の合計含有量0.7%。略号をA8とする。)に変更し、プレスによる積層温度を240℃に変更したほかは実施例12と同様の操作を行い、積層体を得た。金属体(A8)は、ショットブラストにより表面処理されたものであり、その表面粗さパラメーターRaは0.74μm、Ryは7.5μm、Rzは6.1μmであった。この積層体の評価結果を表5に示す。
【0080】
実施例21
金属接触用フィルムと表層用フィルムを上記積層フィルム(ST19)に変更し、金属体をショットブラストにより表面処理を施した厚さ6mmのアルミニウム−珪素合金板(材質はJIS H4000−1999に示されたA4043、珪素含有量5.5%。略号をA9とする。)に変更し、プレスによる積層温度を240℃に変更したほかは実施例12と同様の操作を行い、積層体を得た。金属体(A9)の表面粗さパラメーターRaは0.85μm、Ryは9.1μm、Rzは7.2μmであった。この積層体の評価結果を表5に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
表1及び2より、実施例1乃至8の積層体は、シャーリングによる切断の端部に剥離が生じにくく本発明の効果が明らかである。
表3より、実施例9乃至11の積層体は、シャーリングによる切断の端部に剥離が生じにくく、本発明の効果が明らかである。
表4より、実施例12乃至16の積層体は、カッターナイフによる切れ目周囲に剥離が生じにくく、本発明の効果が明らかである。
表5より、実施例17乃至21の積層体は、カッターナイフによる切れ目周囲に剥離が生じにくく、本発明の効果が明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の積層体は、摺動性、耐熱性、耐薬品性、ハンダ耐熱性、寸法安定性等に優れることから、各種の用途に好適に用いられ、その用途としては、自動車エンジンルーム内部品や隔壁、ドアの摺動部品、ブレーキ部品、エアーコンップレッサー部品、軸受け、ブッシュ、エネルギー発生機器部品、電池部品、燃料電池部品、熱遮蔽板、各種機器の筐体、電磁波遮蔽板、航空宇宙機器の保護板などが挙げられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属体の少なくとも一つの面に、金属接触層と表層とが順次積層された積層体であって、該金属接触層が(A)熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)ポリアリールケトン樹脂を含む樹脂組成物からなり、該表層が、ポリアリールケトン樹脂(B)を含む樹脂組成物からなることを特徴とする積層体。
【請求項2】
金属接触層及び/又は表層が、更に(C)充填材を含む樹脂組成物からなる請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
金属接触層及び/又は表層が、更に(D)固体潤滑剤を含む樹脂組成物からなる請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
金属接触層が、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)ポリアリールケトン樹脂を(A)/(B)=95/5〜5/95の質量比で含む樹脂組成物100質量部に対して、(C)充填材を0〜100質量部及び/又は(D)固体潤滑剤を0〜100質量部の割合で含む樹脂組成物からなり、表層が、(B)ポリアリールケトン樹脂100質量部に対して、(C)充填材を0〜100質量部及び/又は(D)固体潤滑剤を0〜400質量部の割合で含む樹脂組成物からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
金属接触層が、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)ポリアリールケトン樹脂を(A)/(B)=95/5〜30/70の質量比で含む樹脂組成物100質量部に対して、(C)充填材を0〜100質量部及び/又は(D)固体潤滑剤を0〜100質量部の割合で含む樹脂組成物からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
金属接触層と表層の厚さの比率が、1/99〜99/1の範囲である請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
金属体の厚さが0.01〜50mm、金属接触層の厚さが0.1〜800μm、表層の厚さが1〜1000μmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
(A)成分の熱可塑性ポリイミド樹脂が下記構造式(1)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂又は下記構造式(2)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂を主成分とするものであり、(B)成分のポリアリールケトン樹脂が下記構造式(3)で表される繰り返し単位を有する結晶性ポリエーテルエーテルケトン樹脂を主成分とするものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層体。
【化1】
【請求項9】
(C)成分の充填材が板状である請求項2〜8のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項10】
(C)成分の充填材の平均粒子径が0.01〜200μmの範囲にある請求項2〜9のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項11】
(C)成分の充填材がマイカである請求項2〜10のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項12】
(D)成分の固体潤滑剤が黒鉛、フッ素樹脂、及び遷移金属硫化物から選ばれる少なくとも1種である請求項3〜8のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項1】
金属体の少なくとも一つの面に、金属接触層と表層とが順次積層された積層体であって、該金属接触層が(A)熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)ポリアリールケトン樹脂を含む樹脂組成物からなり、該表層が、ポリアリールケトン樹脂(B)を含む樹脂組成物からなることを特徴とする積層体。
【請求項2】
金属接触層及び/又は表層が、更に(C)充填材を含む樹脂組成物からなる請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
金属接触層及び/又は表層が、更に(D)固体潤滑剤を含む樹脂組成物からなる請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
金属接触層が、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)ポリアリールケトン樹脂を(A)/(B)=95/5〜5/95の質量比で含む樹脂組成物100質量部に対して、(C)充填材を0〜100質量部及び/又は(D)固体潤滑剤を0〜100質量部の割合で含む樹脂組成物からなり、表層が、(B)ポリアリールケトン樹脂100質量部に対して、(C)充填材を0〜100質量部及び/又は(D)固体潤滑剤を0〜400質量部の割合で含む樹脂組成物からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
金属接触層が、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂と(B)ポリアリールケトン樹脂を(A)/(B)=95/5〜30/70の質量比で含む樹脂組成物100質量部に対して、(C)充填材を0〜100質量部及び/又は(D)固体潤滑剤を0〜100質量部の割合で含む樹脂組成物からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
金属接触層と表層の厚さの比率が、1/99〜99/1の範囲である請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
金属体の厚さが0.01〜50mm、金属接触層の厚さが0.1〜800μm、表層の厚さが1〜1000μmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
(A)成分の熱可塑性ポリイミド樹脂が下記構造式(1)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂又は下記構造式(2)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂を主成分とするものであり、(B)成分のポリアリールケトン樹脂が下記構造式(3)で表される繰り返し単位を有する結晶性ポリエーテルエーテルケトン樹脂を主成分とするものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層体。
【化1】
【請求項9】
(C)成分の充填材が板状である請求項2〜8のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項10】
(C)成分の充填材の平均粒子径が0.01〜200μmの範囲にある請求項2〜9のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項11】
(C)成分の充填材がマイカである請求項2〜10のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項12】
(D)成分の固体潤滑剤が黒鉛、フッ素樹脂、及び遷移金属硫化物から選ばれる少なくとも1種である請求項3〜8のいずれか1項に記載の積層体。
【公開番号】特開2006−44224(P2006−44224A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34521(P2005−34521)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
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