説明

積層体

【課題】滑雪性および汚れ防止性に優れる積層体を提供する。
【解決手段】基材と、該基材上に積層された粒子層とを有する積層体であって、前記粒子層は、枝分かれした棒状粒子であって、該枝分かれした棒状粒子の各々の直径は3〜50nmであり、該枝分かれした棒状粒子の平均粒径が30〜500nmである第一の酸化ケイ素粒子と、平均粒径が1〜20nmである第二の酸化ケイ素粒子と、平均粒径が20nmより大きい第三の酸化ケイ素粒子と、分散媒とを含む粒子分散液であって、前記第一、第二、および第三の酸化ケイ素粒子の合計量を100重量%とするとき、第一の酸化ケイ素粒子の量が15〜50重量%、第二の酸化ケイ素粒子の量が15〜50重量%、第三の酸化ケイ素粒子の量が35〜70重量%である粒子分散液を前記基材に塗布し、その後、塗布された粒子分散液から分散媒を除去して形成された層である積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑雪性および汚れ防止性に優れる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅、倉庫、ビル、輸送機材、道路・鉄道関連施設、農業用施設、太陽光発電パネル、架空送電設備などで使用されている資材には、屋外で長時間使用しても汚れにくいことが要求されている。さらにこれらの資材を積雪地域で使用する場合には、積雪荷重による倒壊、破損、変形といった問題が発生するため、雪が資材に積もりにくいこと、すなわち滑雪性が要求される。
【0003】
資材に汚れ防止性や滑雪性を付与する目的で、種々の手法がこれまでに考案されている。例えば特許文献1には、パーフルオロアルキル基を有するポリシロキサン及びその組成物を用いて着雪氷防止する方法が開示されている。
特許文献2には、光触媒性微粒子およびコロイダルシリカを利用した滑雪用塗膜形成コーティング組成物、滑雪用塗膜および滑雪用部材が開示されている。
特許文献3には、熱可塑性樹脂製延伸糸条を織成してなる織布クロスの表面に赤外線吸収層を積層し、その裏面に赤外線反射層を積層して得られる滑雪シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−155348
【特許文献2】特開2006−111680
【特許文献3】特開2006−9452
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている方法は、撥水性を付与して滑雪させる技術であるが、経時的な汚れにより本来の撥水性が失われていき、長期間にわたる滑雪性、汚れ防止性の発現が困難であった。特許文献2に記載されているような、紫外線により親水化する光触媒性微粒子を利用する方法や、特許文献3に記載されているような赤外線吸収剤を利用する方法は、降雪量が多くなると紫外線あるいは赤外線が少なくなるために、本来の機能が発揮されず、滑雪性、汚れ防止性が不十分となる問題があった。このように、従来の手法では、滑雪性や汚れ防止性が十分ではなかった。本発明は、滑雪性および汚れ防止性に優れる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの面において本発明は、基材と、該基材上に積層された粒子層とを有する積層体であって、前記粒子層は、枝分かれした棒状粒子であって、該枝分かれした棒状粒子の各々の直径は3〜50nmであり、該枝分かれした棒状粒子の平均粒径が30〜500nmの第一の酸化ケイ素粒子と、平均粒径が1〜20nmである第二の酸化ケイ素粒子と、平均粒径が20nmより大きい第三の酸化ケイ素粒子と、分散媒とを含む粒子分散液であって、前記第一、第二、および第三の酸化ケイ素粒子の合計量を100重量%とするとき、第一の酸化ケイ素粒子の量が15〜50重量%、第二の酸化ケイ素粒子の量が15〜50重量%、第三の酸化ケイ素粒子の量が35〜70重量%である粒子分散液を前記基材に塗布し、その後、塗布された粒子分散液から分散媒を除去して形成された層である積層体である。
上記積層体の一つの好ましい態様において、前記粒子層の水接触角は5°以下である。他の好ましい態様において、前記基材は熱可塑性樹脂からなるフィルムである。他の好ましい態様において、前記基材は屋外用看板である。他の好ましい態様において、前記基材はガラスである。
他の面において本発明は、受光面を有する太陽光発電パネルであって、前記受光面が、前記粒子層が外側に露出するように前記積層体で構成されている太陽光発電パネルである。この態様において、前記積層体の基材はガラスである。
なお、本発明の上記積層体は、すなわち、基材と、該基材上に積層された粒子層とを有する積層体であって、前記粒子層は、枝分かれした棒状粒子であって、該枝分かれした棒状粒子の各々の直径は3〜50nmであり、該枝分かれした棒状粒子の平均粒径が30〜500nmの第一の酸化ケイ素粒子と、平均粒径が1〜20nmである第二の酸化ケイ素粒子と、平均粒径が20nmより大きい第三の酸化ケイ素粒子とを含有し、前記粒子層における前記第一、第二、および第三の酸化ケイ素粒子の合計量を100重量%とするとき、第一の酸化ケイ素粒子の含有量が15〜50重量%、第二の酸化ケイ素粒子の含有量が15〜50重量%、第三の酸化ケイ素粒子の含有量が35〜70重量%である積層体である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、滑雪性および汚れ防止性に優れる積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明における基材を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、公知の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、繊維強化プラスチック、金属、ガラス、窯業系建材用資材等から適宜選択して用いることができる。例えば、太陽光発電パネルの受光面は通常、ガラスで構成されている。したがって、基材としてガラス製基材を備える本発明の積層体は、太陽光発電パネルの受光部に好適に適用することができる。
また本発明における基材の形状も特に限定されるものではなく、フィルム、シート、板等が挙げられる。なお、本発明では、フィルム、シートおよび板を、以下、まとめてフィルム類と称することもある。
【0009】
樹脂製基材としては、例えば熱可塑性樹脂を溶融押出成形等の方法で成形して得られるフィルム類を用いてもよいし、糸状の樹脂を織成して得られる織布フィルム類を用いることもできる。
基材を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレンやプロピレン等のα−オレフィンの単独重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン/ヘキセン−1共重合体、エチレン/オクテン−1共重合体のように、2種類以上のα−オレフィンを共重合して得られる共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸メチル共重合体、アイオノマー樹脂のように、α−オレフィンを主成分とし、α−オレフィンと他の単量体とを共重合して得られる共重合体、エチレン/スチレン共重合体のように、α−オレフィンとビニル基含有芳香族系単量体とを共重合して得られる共重合体、エチレン/ノルボルネン共重合体、エチレン/スチレン/ノルボルネン共重合体のように、α−オレフィンと環状単量体とを共重合して得られる共重合体、などのオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/メタクリル酸メチル共重合体、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素含有樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;フッ素含有樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱可塑性樹脂からなるフィルムは、柔軟性に優れるため、例えば農業用フィルムとして用いられる積層体の基材として好適である。
【0010】
基材を構成する熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0011】
基材を構成する光硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0012】
基材として使用できる繊維強化プラスチックとしては、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、ガラス長繊維強化プラスチック(GMT)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP)、ザイロン強化プラスチック(ZFRP)、ポリエチレン繊維強化プラスチック(DFRP)などがあげられる。
【0013】
基材として使用できるガラスとしては、特に限定されるものではなく、公知のガラス板の中から適宜選択して用いることができる。
平滑性が良く、透視像の歪が少なく、ある程度の剛性をもって風や外力による歪が少なく、可視光領域の透過に優れ、かつ、比較的低コストで得られるフロート法による、酸化金属などの着色成分を少なくした、透明タイプあるいはクリアタイプと呼ばれるソーダライムガラスの使用が簡便である。
【0014】
基材として使用できる金属としては、特に限定されるものではなく、公知の建築用金属材料の中から適宜選択して用いることができる。
建築用金属材料としては、圧延鋼材、金属板などがあげられる。圧延鋼材としては、例えば、H形鋼、丸型鋼管、角型鋼管、山型鋼、I型鋼などが揚げられる。金属板としては、例えば亜鉛めっき鋼板、ガルバリウム鋼板、ガルファン鋼板などのめっき鋼板、意匠性を付与するためにめっき鋼板に塗装したカラー鋼板、ステンレス鋼板、銅板などがあげられる。
【0015】
本発明における基材がフィルムまたはシートである場合、その厚みは通常、10〜2000μmである。
本発明における基材は、単層であってもよく、多層であってもよい。
【0016】
本発明の積層体は、基材と、該基材上に積層された粒子層とを有する積層体であって、前記粒子層は、枝分かれした棒状粒子であって、該枝分かれした棒状粒子の各々の直径は3〜50nmであり、該枝分かれした棒状粒子の平均粒径が30〜500nmの第一の酸化ケイ素粒子と、平均粒径が1〜20nmである第二の酸化ケイ素粒子と、平均粒径が20nmより大きい第三の酸化ケイ素粒子と、分散媒とを含む粒子分散液であって、前記第一、第二、および第三の酸化ケイ素粒子の合計量を100重量%とするとき、第一の酸化ケイ素粒子の量が15〜50重量%、第二の酸化ケイ素粒子の量が15〜50重量%、第三の酸化ケイ素粒子の量が35〜70重量%である粒子分散液を前記基材に塗布し、その後、塗布された粒子分散液から分散媒を除去して形成された層である。
【0017】
第一の酸化ケイ素粒子とは、枝分かれした棒状粒子であって、該枝分かれした棒状粒子の各々の直径は3〜50nmであり、該枝分かれした棒状粒子の平均粒径は30〜500nmである。このような第一の酸化ケイ素粒子としては市販品を使用することができ、その例としては、日産化学工業株式会社製のスノーテックス(登録商標)UP、OUP、(これらは、水を分散媒とするシリカゾルである)、日産化学工業株式会社製のIPA−ST−UP(これは、イソプロパノールを分散媒とするシリカゾルである)などを挙げることができる。第一の酸化ケイ素粒子を形成している各棒状粒子の直径(すなわち、第一の酸化ケイ素粒子を形成している酸化ケイ素からなる棒の直径)は、透過型電子顕微鏡を用いて観測される棒状粒子の画像から求められる。
第一の酸化ケイ素粒子は、各粒子の形状が同一である必要はないが、細長い形状で分枝を有する点は共通している。第一の酸化ケイ素粒子の形状としては、ほぼ真直なもの、屈曲しているもの、分枝が結合して網状を有するものが挙げられる。このような細長い形状の酸化ケイ素粒子の大きさは、動的光散乱法による測定される平均粒子径で表すのが適切である。本発明において、第一の酸化ケイ素粒子の平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定される。動的光散乱法による平均粒子径の測定法は、ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス(Journal of Chemical Physics)第57巻第11号(1972年12月)の第4814頁に説明されており、例えば、市販の米国Coulter社製N4と呼ばれる装置により容易に平均粒子径を測定することができる。
【0018】
本発明における第二の酸化ケイ素粒子は、平均粒径が1〜20nm、好ましくは1〜10nmの酸化ケイ素粒子である。ここで第二の酸化ケイ素粒子の平均粒径は、シアーズ法により求められる。シアーズ法による平均粒径の測定は、Analytical Chemistry vol.28, p1981-1983, 1956に記載されており、この方法を第二の酸化ケイ素粒子の平均粒径の測定に適用する。第二の酸化ケイ素粒子は、球状粒子であることが好ましい。
このような第二の酸化ケイ素粒子としては市販品を使用することができ、その例としては、日産化学工業株式会社製のスノーテックス(登録商標)XS、OXS、S、OS、O、N、C、AK(これらは、水を分散媒とするシリカゾルである)などを挙げることができる。
【0019】
本発明における第三の酸化ケイ素粒子は、平均粒径が20nmより大きく、好ましくは60〜200nmの酸化ケイ素粒子である。ここで、第三の酸化ケイ素粒子の平均粒径はBET法により求められる。具体的には、第三の酸化ケイ素粒子の平均粒径のBET法による決定は、“Adsorption, Surface Area and Porosity,” 2nd ed., Academic Press, London(1982), Chap.2, p42に記載された方法により該粒子のBET比表面積Sを求め、更に式:D=6/(ρ*S)(ここで、ρは粒子の密度を表す。)を用いてDを算出することにより行われる。求められたDが平均粒径である。第三の酸化ケイ素粒子は、球状粒子であることが好ましい。
このような第三の酸化ケイ素粒子としては市販品を使用することができ、その例としては、日産化学工業株式会社製のスノーテックス(登録商標)XL、YL、ZL(これらは、水を分散媒とするシリカゾルである)などを挙げることができる。
【0020】
前記第一、第二および第三の酸化ケイ素粒子の割合は、これらを含む層における第一、第二および第三の酸化ケイ素粒子の合計を100重量%とするとき、第一の酸化ケイ素粒子が15〜50重量%、第二の酸化ケイ素粒子が15〜50重量%、第三の酸化ケイ素粒子が35〜70重量%である。
【0021】
前記したように第一、第二および第三の酸化ケイ素粒子は、いずれも粒子分散液(ゾル)として入手可能である。本発明の積層体は、このような粒子分散液(ゾル)を混合した混合粒子分散液を、基材上に塗布し、ついで、塗布した混合粒子分散液から液体分散媒を適当な手段で除去して層を形成することにより、得ることができる。
【0022】
基材の上に形成する層の厚さは特に限定されないが、安定した滑雪性、汚れ防止機能を発現させるためには、50〜200nmとすることが好ましく、80〜150nmとすることがより好ましい。該層の厚みは、混合粒子分散液に含まれる第一の酸化ケイ素粒子、第二の酸化ケイ素粒子および第三の酸化ケイ素粒子の量や、混合粒子分散液の塗布量を変更することにより調節することができる。
【0023】
上記混合粒子分散液は、界面活性剤や有機系電解質、無機層状化合物などを含有してもよい。
【0024】
界面活性剤としては、例えば、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性などの各種界面活性剤が挙げられる。具体的には、アニオン性界面活性剤としては、カプリル酸ナトリウム、カプリル酸カリウム、デカン酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ステアリン酸テトラメチルアンモニウム、ステアリン酸ナトリウムなどが挙げられ、特に、炭素数6〜10のアルキル鎖を有するカルボン酸のアルカリ金属塩が好ましい。
【0025】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、臭化−N−オクタデシルピリジニウム、臭化セチルトリエチルホスホニウムが挙げられる。
【0026】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
【0027】
有機系電解質とは、電離性イオン性基を有する有機化合物を指す。例えば、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ブチルスルホン酸カリウム、フェニルホスフィン酸ナトリウム、ジエチルリン酸ナトリウムなどが挙げられ、特に、ベンゼンスルホン酸誘導体が好ましい。有機系電解質のうち、高い界面活性効果を示すものは界面活性剤と呼ばれることもある。
【0028】
無機層状化合物とは、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を有している無機化合物であり、粒径が5μm以下であることが好ましい。特に、粒径が3μm以下であることが、透明性の面で好ましい。
【0029】
無機層状化合物としては、混合粒子分散液に含まれる分散媒に膨潤・へき開するものが好ましく、中でも、膨潤性を有する粘土系鉱物が好ましい。粘土系鉱物はシリカの4面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウムなどを中心金属にした8面体層を有する2層構造からなる化合物と、アルミニウムやマグネシウムなどを中心金属にした8面体層を2つのシリカ4面体層が両側から挟んだ3層構造からなる化合物に分類される。前者としては、カオリナイト族、アンチゴライト族などを挙げることができ、後者としては、層間のカチオンの数によって、スメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族を挙げることができる。特に、水を分散媒とした場合にチキソトロピックな粘性を与えることを特徴とするスメクタイト族が好ましい。混合粒子分散液の粘度は、当該分散液に無機層状化合物を混合することにより制御することができ、無機層状化合物の混合による粘度の制御には、混合粒子分散液の樹脂製基材への塗工性、定着性を向上させる効果がある。
【0030】
基材上に上記混合粒子分散液を塗布する方法は特に限定されず、例えば、グラビアコーティング、リバースコーティング、刷毛ロールコーティング、スプレーコーティング、キスコーティング、ダイコーティング、ディッピング、バーコーティングなどの公知の方法で塗布することができる。
【0031】
基材に混合粒子分散液を塗布して形成された分散液層から液体分散媒を除去することにより粒子層を形成することが出来る。該分散液層から液体分散媒を除去する方法としては、例えば、常圧下または減圧下で加熱する方法が挙げられる。液体分散媒の除去の際の圧力、加熱温度は、使用する材料(すなわち、第一の酸化ケイ素粒子、第二の酸化ケイ素粒子、第三の酸化ケイ素粒子、および液体分散媒)に応じて適宜選択することができる。例えば、分散媒が水であるときは、一般的には50〜80℃で、好ましくは約60℃で乾燥することができる。
【0032】
基材が、ガラス、セラミックスなどの耐熱性を有するものであれば、混合粒子分散液の塗布後に焼付け処理を行うことにより、基材との密着性をさらに向上させることが可能である。
【0033】
基材に混合粒子分散液を塗布する前に、該基材の表面にコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、フレーム処理、電子線処理、アンカーコート処理、洗浄処理などの前処理を行なうことが好ましい。
【0034】
また、基材の前処理として、特開平08−319476号公報に記載されたような、コロイド状アルミナ、コロイド状シリカ、アニオン性界面活性剤、無機層状化合物を含む液を基材に塗工して、ベースコート層を設けることが好ましく、該ベースコートを設けた基材を本発明における基材に用いてもよい。
【0035】
本発明の積層体は、基材の少なくとも片面に、前記第一の酸化ケイ素粒子、第二の酸化ケイ素粒子、第三の酸化ケイ素粒子を含む層を有していればよい。本発明の積層体が片面に前記層を有する場合、該層が汚れ防止や滑雪性が求められる側となるようにして使用すればよい。例えば本発明の積層体を屋外で使用する場合には、前記第一の酸化ケイ素粒子、第二の酸化ケイ素粒子、第三の酸化ケイ素粒子を含む層が雨や雪に直接接する側となるように、施工して使用すればよい。
本発明の積層体は、農業用ハウス、畜舎、簡易倉庫、ガレージ、全天候型スポーツ施設、住宅、倉庫、ビル、輸送機材、橋梁、道路・鉄道関連施設、架空送電設備、太陽光発電パネルなどの耐久性や易施工性を必要とする被覆資材や、瓦、スレート、タイル等窯業系建材用資材に好適に使用できる。また本発明の積層体は、汚れ防止性に優れるため、道路標識等、その外観が重要である屋外用看板用途にも好適である。屋外用看板として用いられる本発明の積層体においては、その基材が屋外用看板である。本発明の積層体は、透明性にも優れるため、採光性の求められる用途、例えば農業用ハウスの被覆材に好適である。
また、本発明の積層体は、前記第一の酸化ケイ素粒子、第二の酸化ケイ素粒子、第三の酸化ケイ素粒子を含む層を表面に積層するため、親水性にも優れる。本発明の積層体の前記第一の酸化ケイ素粒子、第二の酸化ケイ素粒子、第三の酸化ケイ素粒子を含む層の水接触角は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。本発明の積層体は親水性を有するため、該積層体表面に散水処理することで簡易に冷房機能を付与することができ、採光材料の過昇温防止効果も期待できる。
【0036】
本発明の積層体を農業用フィルムとして用いる場合、その厚みは50〜200μmであることが好ましい。また、本発明の積層体を畜舎、簡易倉庫やガレージなどの長期間にわたって使用する被覆用資材として用いる場合、その厚みは50〜2000μmであることが好ましい。
【0037】
本発明の積層体の好ましい一つの用途は、受光面を有する太陽光発電パネルであって、前記受光面が、前記粒子層が外側に露出するように本発明の積層体で構成されている太陽光発電パネルである。この場合、前記積層体の基材としては、ガラス製基材が好ましく採用される。
本発明の積層体を農業用フィルムや太陽光発電パネルの部材として使用する場合、透明性を確保するため、粒子層を有する積層体の全光線透過率は50%以上、好ましくは80%以上、が好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[基材]
・インフレーション成形により得られた、厚み100μmの低密度ポリエチレンフィルムを基材Aとして用いた。
・6mm厚みのフロート法板ガラスを基材Bとして用いた。
・カラー塗装した亜鉛めっき鋼板を基材Cとして用いた。
・2mm厚みのアクリルを基材Dとして用いた。
[ベースコート液の調製]
イオン交換水99重量%、無機層状化合物(商品名:スメクトンSA;クニミネ工業社製)1重量%を混合、撹拌して無機層状化合物分散液を調製した。
イオン交換水79.584重量%、前記無機層状化合物分散液9.000重量%、コロイダルアルミナ水分散液(商品名:アルミナゾル520、平均粒径:20nm、固形分濃度20重量%;日産化学工業社製を使用)9.000重量%、コロイダルシリカ水分散液(商品名:スノーテックス20、平均粒径:20nm、固形分濃度20重量%;日産化学工業社製を使用)2.400重量%、カプリル酸ナトリウム(試薬;東京化成社製)0.014重量%、p−トルエンスルホン酸ナトリウム(試薬;ナカライテスク社製)0.002重量%を混合、撹拌して、ベースコート液を得た。
[混合粒子分散液の調製]
固形分濃度が5wt%となるように表1に示す割合で、酸化ケイ素粒子(A)、酸化ケイ素粒子(B)、酸化ケイ素粒子(C)を混合し、混合粒子分散液を得た。使用した主な材料は以下のとおりである。
1)酸化ケイ素粒子(A)
スノーテックス(登録商標)UP(日産化学工業株式会社製の枝分かれした棒状コロイダルシリカ;枝分かれした棒状粒子を構成する各粒子の直径:5〜20nm(これは、透過型電子顕微鏡観察で求められた)、動的光散乱法により求めた平均粒径:40〜300nm;固形分濃度:20重量%) 以下、これを「ST−UP」と記す。
2)酸化ケイ素粒子(B)
スノーテックス(登録商標)ST−XS(日産化学工業株式会社製のコロイダルシリカ;シアーズ法により求めた平均粒径4〜6nm;固形分濃度20重量%) 以下、これを「ST−XS」と記す。
3)酸化ケイ素粒子(C)
スノーテックス(登録商標)ST−ZL(日産化学工業株式会社製のコロイダルシリカ;BET法により求めた平均粒径78nm;固形分濃度40重量%) 以下、これを「ST−ZL」と記す。
[ベースコート層の形成]
基材表面にベースコート液を#16のマイヤーバーで塗工、乾燥して、ベースコートからなる層を形成した。なお、塗工直後のベースコート層の厚みは、推定37μmである。また、乾燥はドライヤーにて行った。
[酸化ケイ素粒子層の形成]
上記で得られたベースコート層上に、#16のマイヤーバーを用いてさらに混合粒子分散液を塗布、乾燥して、酸化ケイ素粒子層を形成し、屋外展張用フィルムを得た。なお、塗工直後の酸化ケイ素粒子層の厚みは、推定37μmである。また、乾燥はドライヤーにて行った。
【0039】
[積層体の評価]
実施例の評価は次の方法で実施した。
1)雪の動摩擦係数
試料の上に自然雪を成形した雪ブロック(大きさ12×12cmのしまり雪、雪荷重20kg/m)を載せ、所定時間後に5mm/secの速度で15cm滑動させて測定した滑動抵抗力を雪重量で除した値を動摩擦係数とした。測定は−10℃で雪ブロックをセットとし、その後、室温を+5℃に上げ、融雪水が若干発生(摩擦界面が湿潤化)する1時間経過後、さらにそれから1時間経過する毎に、合計4回測定した。同じ条件で3回測定を行ない、その平均値を算出し、その結果を表1、3、6および8に記載した。
2)濡れ性
23℃の恒温室で、試料表面に純水3μlを滴下して、協和界面科学社製の自動接触角計CA−Z型を用い、接触角を測定し、その結果を表1、3、6および8に記載した。
3)光沢度
光沢度については、測定角度を60°として、JIS K7105−1981に準じて、スガ試験機(株)製のデジタル変角光沢計UGV−5DPを用いて測定し、表2、4、7および9に記載した。
4)天然雪に対する暴露試験方法
札幌市手稲区にある暴露台に試験塗膜を水平から30%の角度をつけて設置し、試験塗膜上における冠雪量の程度(冠雪の面積割合)を目視観察し、雪無しの場合を「0」、全面冠雪の場合を「10」とする11段階で評価し、表2、4、7および9に記載した。
5)水膜による冷房効果
札幌市手稲区に、ベニヤ板で底面1m角、高さ1mの小屋模型を設置し、底面および4面の壁の内部を発泡シートで断熱した。上部に水平から30%の角度をつけて積層体を設置し、スプリンクラーで水道水を断続的に散布した。散水量は10L/分とし、散水間隔は、午前9時以降、3分間散水した後、27分間停止とし、2サイクル経過後、4サイクル経過後、6サイクル経過後それぞれのモデル内部の空間中央部の温度を熱電対で測定し、表5に記載した。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
【表6】

【0046】
【表7】

【0047】
【表8】

【0048】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に積層された粒子層とを有する積層体であって、前記粒子層は、枝分かれした棒状粒子であって、該枝分かれした棒状粒子の各々の直径は3〜50nmであり、該枝分かれした棒状粒子の平均粒径が30〜500nmである第一の酸化ケイ素粒子と、平均粒径が1〜20nmである第二の酸化ケイ素粒子と、平均粒径が20nmより大きい第三の酸化ケイ素粒子と、分散媒とを含む粒子分散液であって、前記第一、第二、第三の粒子の合計量を100重量%とするとき、第一の酸化ケイ素粒子の量が15〜50重量%、第二の酸化ケイ素粒子の量が15〜50重量%、第三の酸化ケイ素粒子の量が35〜70重量%である粒子分散液を前記基材に塗布し、その後、塗布された粒子分散液から分散媒を除去して形成された層である積層体。
【請求項2】
前記粒子層の水接触角が5°以下である請求項1に記載の積層体
【請求項3】
前記基材が熱可塑性樹脂からなるフィルムである請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記基材が屋外用看板である請求項1または2に記載の積層体。
【請求項5】
前記基材がガラスである請求項1または2に記載の積層体。
【請求項6】
基材と、該基材上に積層された粒子層とを有する積層体であって、前記粒子層は、枝分かれした棒状粒子であって、該枝分かれした棒状粒子の各々の直径は3〜50nmであり、該枝分かれした棒状粒子の平均粒径が30〜500nmである第一の酸化ケイ素粒子と、平均粒径が1〜20nmである第二の酸化ケイ素粒子と、平均粒径が20nmより大きい第三の酸化ケイ素粒子とを含有し、前記粒子層における前記第一、第二、および第三の酸化ケイ素粒子の合計量を100重量%とするとき、第一の酸化ケイ素粒子の含有量が15〜50重量%、第二の酸化ケイ素粒子の含有量が15〜50重量%、第三の酸化ケイ素粒子の含有量が35〜70重量%である積層体。
【請求項7】
受光面を有する太陽光発電パネルであって、前記受光面が、前記粒子層が外側に露出するように請求項5記載の積層体で構成されている太陽光発電パネル。

【公開番号】特開2011−148288(P2011−148288A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149339(P2010−149339)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】