説明

積層体

【課題】耐火性、断熱性、強度等において優れた性能を有する積層体を提供する。
【解決手段】無機質基材及び有機質基材から選ばれる基材の少なくとも一方の面に、セメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粒子を4〜40重量部、無機軽量粒子を5〜300重量部、及び吸熱物質を5〜800重量部含む組成物の硬化体からなる耐火断熱層を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な積層体に関するものである。本発明積層体は、耐火性、断熱性等において優れた性能を有するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁面等に用いられる材料として、耐火性、断熱性等の諸性能を有するものが種々提案されている。このような材料の一例として、ロックウールをセメント等で固定化したものが知られている。例えば、特許文献1(特開平6−322856号公報)には、木毛セメント板の片面に、セメントで固着されたロックウール粒状綿の層からなる耐火性建材が記載されている。
【0003】
上記特許文献1等において、ロックウール層の断熱性を向上させるには、セメントに対するロックウールの比率を高く設定する必要がある。ところが、ロックウールの比率を高くすると、その一方で強度が低下してしまうという問題が生じる。
このように強度が低下したロックウール層では、衝撃、振動等の外力が加わると、層の剥離、脱落等が生じやすくなる。すなわち、ロックウール層において、断熱性と強度を両立することは難しいのが現状である。
【0004】
さらに、ロックウール層は、水分を吸収しやすい性質を有している。このような性質に起因し、ロックウール層では、層自体の強度が低下し、衝撃、振動等の外力に対する抵抗性が不十分となるおそれがある。また、ロックウール層と基材との界面における接着強度が低下し、層の脱落等を誘発するおそれもある。加えて、水分の吸収により、断熱性が低下するおそれもある。このような水分に起因する問題は、セメントに対するロックウールの比率が高くなる程、顕在化しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−322856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたもので、耐火性、断熱性、強度等において優れた性能を有する材料を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために本発明者らは、鋭意検討の結果、無機質基材及び有機質基材から選ばれる基材に、特定組成の硬化体からなる耐火断熱層が積層された積層体に想到し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0009】
1.無機質基材及び有機質基材から選ばれる基材の少なくとも一方の面に、
セメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粒子を4〜40重量部、無機軽量粒子を5〜300重量部、及び吸熱物質を5〜800重量部含む組成物の硬化体からなる耐火断熱層が設けられたことを特徴とする積層体。
2.無機質基材及び有機質基材から選ばれる基材の少なくとも一方の面に、
セメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粒子を4〜40重量部、無機軽量粒子を5〜300重量部、及び吸熱物質を5〜800重量部含む組成物の硬化体からなる耐火断熱層、
厚さが0.05〜1mmである無機質薄層、
が順に設けられたことを特徴とする積層体。
3.無機質基材及び有機質基材から選ばれる基材の少なくとも一方の面に、
セメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粒子を4〜40重量部、無機軽量粒子を5〜300重量部、吸熱物質を5〜800重量部、及び水を200〜1200重量部含む組成物を塗付し、硬化させることを特徴とする積層体の製造方法。
4.無機質基材及び有機質基材から選ばれる基材の少なくとも一方の面に、
セメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粒子を4〜40重量部、無機軽量粒子を5〜300重量部、吸熱物質を5〜800重量部、水を200〜1200重量部、水溶性金属塩を0.5〜30重量部、及び水溶性高分子化合物を0.5〜30重量部含む組成物を塗付し、硬化させることを特徴とする積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層体は、耐火性、断熱性、強度等において優れた性能を発揮することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
本発明の積層体は、無機質基材及び有機質基材から選ばれる基材の少なくとも一方の面に、セメント、発泡有機樹脂粒子、無機軽量粒子、及び吸熱物質を必須成分とする組成物の硬化体からなる耐火断熱層が設けられたものである。
【0013】
上記耐火断熱層を構成する成分のうち、セメントは結合材として作用するものである。セメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメントのほか、アルミナセメント、超速硬セメント、膨張セメント、酸性リン酸塩セメント、シリカセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、キーンスセメント等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。これらの中でも、ポルトランドセメントが好ましい。より具体的には、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント及び白色ポルトランドセメントの少なくとも1種が好ましいものとして挙げられる。
【0014】
発泡有機樹脂粒子としては、有機樹脂を粒状に発泡させたもの、あるいは、有機樹脂を発泡成形した後に粒状に破砕したもの等を使用することができる。これらは、個々の粒子中に気孔を有するものであればよい。
発泡有機樹脂粒子としては、例えば、発泡スチロール、発泡ポリウレタン、発泡フェノール、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリ塩化ビニル等の公知の発泡有機樹脂が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。本発明では、特に発泡スチロール粒子が好適である。
発泡有機樹脂粒子の平均粒子径は、通常1〜10mm程度である。また、発泡有機樹脂粉粒体のかさ密度は、通常0.08g/cm以下であり、好ましくは0.03g/cm以下、より好ましくは0.015g/cm以下である。
【0015】
本発明では、上記発泡有機樹脂粒子として難燃化処理したものを使用することにより、耐火性において十分な物性を得ることができる。このような難燃化処理の方法としては、(1)発泡有機樹脂粒子の製造時に難燃化処理する方法、(2)発泡有機樹脂粒子の製造後に難燃化処理する方法がある。
【0016】
上記(1)の発泡有機樹脂粒子の製造時に難燃化処理する方法としては、例えば難燃剤を添加する方法が挙げられる。この場合における難燃剤の添加方法としては、有機樹脂の重合時、例えば懸濁重合時の初期段階、あるいはある程度の重合転化率に達した時に添加する方法、有機樹脂に発泡剤を含浸させる際に難燃剤を添加する方法、押し出し時に難燃剤を添加する方法、等が挙げられる。
【0017】
また、上記(1)では、難燃性に優れる有機樹脂組成物を使用し、発泡有機樹脂粒子を製造することもできる。例えば、ポリオール、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びイソシアネート部をヌレート環化させる触媒を用いたイソシアヌレート発泡体や、ポリオールに難燃性のフェノール樹脂を結合させた樹脂を使用した変性フェノール発泡体、ハロゲンを含有するモノマーを重合してなる有機樹脂を使用した発泡体等が挙げられる。上記のポリオールとしては、特に、芳香族ポリエステルポリオール、芳香族ポリエーテルポリオール(マンニッヒ変性ポリエーテルポリオール等)から選ばれるものを使用するのが好ましい。
このような難燃性に優れる有機樹脂を使用する場合において、さらに難燃剤を添加することもできる。
【0018】
上記難燃剤としては、例えばトリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート、ジフェニルオクチルフォスフェート、トリ(β−クロロエチル)フォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ(ジクロロプロピル)フォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリ(ジブロモプロピル)フォスフェート、クロロフォスフォネート、ブロモフォスフォネート、ジエチル−N, N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルフォスフォネート等の有機リン系化合物;塩素化ポリフェニル、塩素化ポリエチレン、塩化ジフェニル、塩化トリフェニル、五塩化脂肪酸エステル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン、テトラクロル無水フタル酸等の塩素化合物;テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルオキサイド、ヘキサブロモシクロドデカン、トリブロモフェノール、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスペンタブロモジフェニル等の臭素化合物:三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物;三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン化合物;ホウ酸亜鉛、ホウ酸ナトリウム、水酸化アルミニウム等の無機質化合物等が挙げられる。
【0019】
上記(2)の発泡有機樹脂粒子の製造後に難燃化処理する方法としては、難燃剤、アルコキシシラン化合物、珪酸塩化合物等(これらを「難燃処理剤」と総称する)を上記発泡有機樹脂粒子にコーティングしたり、吸着させる方法等が挙げられる。また、これら難燃化処理剤は1種又は2種以上で使用することができる。
【0020】
難燃剤としては上記(1)と同様のものを使用することができる。
上記アルコキシシラン化合物としては限定的でなく、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等が使用できる。
【0021】
また、上記珪酸塩化合物としては、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウム等のほか、市販の水ガラス等を使用することもできる。
【0022】
難燃処理剤は、必要に応じて水又はその他の適当な溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液を上記発泡有機樹脂にコーティング、吸着等の方法で処理しても良い。上記溶液又は分散液にアクリル系樹脂等のバインダーを適宜配合することもできる。上記溶液又は分散液で処理した後は、乾燥又は必要により熱処理すれば良い。難燃処理剤の使用量は、所望の難燃性、上記発泡有機樹脂の種類等に応じて適宜決定することができる。
【0023】
発泡有機樹脂粒子の比率は、セメント100重量部に対し、通常4〜40重量部、好ましくは5〜35重量部である。発泡有機樹脂粒子が少なすぎる場合は、断熱性等が不十分となる。発泡有機樹脂粒子が多すぎる場合は、耐火性、強度等において、十分な物性が得られ難くなる。
【0024】
無機軽量粒子は、個々の粒子中に気孔を有する無機質材料である。このような無機軽量粒子としては、例えば、パーライト、膨張頁岩、ひる石、膨張バーミキュライト、軽石、シラスバルーン等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。無機軽量粒子の平均粒子径は、通常0.1〜5mm程度である。
【0025】
無機軽量粒子の比率は、セメント100重量部に対し、通常5〜300重量部、好ましくは10〜250重量部である。無機軽量粒子が少なすぎる場合は、耐火性、断熱性等において、十分な物性が得られ難くなる。無機軽量粒子が多すぎる場合は、強度等の点で不利となる。
【0026】
吸熱物質は、加熱により水を放出する金属化合物である。このような吸熱物質は、加熱の際、水蒸気を発生させ、その吸熱作用によって耐火性能向上に寄与するものである。
このような吸熱物質としては、例えば、
水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化スカンジウム等の金属水酸化物;
ホウ砂(四ホウ酸ナトリウム)、八ホウ酸二ナトリウム、ホウ酸亜鉛等の金属ホウ酸塩;
ゼオライト、ハロイサイト、アロフェン、エトリンジャイト等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。吸熱物質としては、特に金属水酸化物が好適である。
【0027】
吸熱物質の比率は、セメント100重量部に対し、通常5〜800重量部、好ましくは10〜600重量部、より好ましくは20〜300重量部である。吸熱物質が少なすぎる場合は、耐火性等が不十分となる。吸熱物質が多すぎる場合は、断熱性、強度等において十分な物性が得られ難くなる。
【0028】
本発明では、上記成分に加えて水溶性金属塩を含むことが好ましい。水溶性金属塩としては、水に溶解し、金属イオンを生成するものが好ましく、さらには2価以上の多価金属イオンを生成するものが好ましい。このような水溶性金属塩は、後述の水溶性高分子化合物との相互作用により、無機質薄層を形成しやすくするものである。
このような水溶性金属塩としては、例えば、
硫酸アンモニウムアルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸鉄、硫酸カリウム鉄、硫酸マグネシウム、硫酸ニッケル、硫酸亜鉛、硫酸ベリリウム、硫酸ジルコニウム等の金属硫酸塩;
リン酸アルミニウム、リン酸コバルト、リン酸マグネシウム、リン酸マグネシウムアンモニウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸二水素亜鉛等の金属リン酸塩;
硝酸アルミニウム、硝酸亜鉛、硝酸カルシウム、硝酸コバルト、硝酸ビスマス、硝酸ジルコニウム、硝酸セリウム、硝酸鉄、硝酸鉄、硝酸ニッケル、硝酸マグネシウム等の金属硝酸塩;
酢酸亜鉛、酢酸コバルト等の金属酢酸塩;
塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化コバルト、塩化鉄等の金属塩化物塩、
が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0029】
上記の水溶性金属塩としては、特に水に溶解しアルミニウム塩を生成するものが好ましく、中でも硫酸アルミニウムが好ましい。
【0030】
水溶性金属塩の比率は、セメント100重量部に対し、通常0.5〜30重量部、好ましくは1〜25重量部、より好ましくは2〜20重量部である。この範囲であれば、後述の水溶性高分子化合物との相互作用により、無機質薄層が効率的に形成され、防火性を高めることができる。
【0031】
本発明では、上記成分に加えて水溶性高分子化合物を含むことが好ましい。水溶性高分子化合物を含むことにより、無機質薄層が形成されやすくなる。
このような水溶性高分子化合物としては、例えば、
ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアルキレンオキサイド、バイオガム、ガラクトマンナン誘導体、アルギン酸及びその誘導体、ゼラチン、カゼイン及びアルブメンならびにこれらの誘導体、セルロース誘導体等が挙げられる。水溶性高分子化合物は、高粘度品がより好ましく、具体的にはその水溶性高分子化合物の1%水溶液の粘度(B型粘度計を用いて20℃で測定した値を示す。以下同じ。)が通常8000mPa・s以上、好ましくは10000mPa・s以上、より好ましくは12000mPa・s以上となるような水溶性高分子化合物を使用することが好ましい。
【0032】
水溶性高分子化合物の比率は、セメント100重量部に対し、通常0.5〜30重量部、好ましくは0.8〜15重量部、より好ましくは1〜10重量部である。この範囲であれば、水溶性金属塩との相互作用により、無機質薄層が効率的に形成され、防火性を高めることができる。
【0033】
本発明では、水溶性金属塩と水溶性高分子化合物を併用して使用することにより、本発明の組成物の硬化時、耐火断熱層の上に無機質薄層を効率的に形成することができ、防火性を向上することができる。その作用機構は明らかではないが、両成分による保水性向上効果が寄与しているものと推測される。
【0034】
無機質薄層は、セメント成分に由来するものであり、少なくともCa成分及びSi成分を含むものである。無機質薄層は、耐火断熱層の硬化段階において、水に分散または溶解したセメント成分が、耐火断熱層の表層で固化することにより形成される。この無機質薄層の厚さは、好ましくは0.05〜1mm、より好ましくは0.08〜0.5mm、さらに好ましくは0.1〜0.4mmである。
【0035】
本発明の積層体は、基材の少なくとも一方の面に、上記各成分を必須成分とする組成物の硬化体からなる耐火断熱層が設けられたものである。この耐火断熱層は、上記各成分を含む組成物に適宜水等を加えて均一に混練したものを、硬化させることにより得ることができる。この際、上記組成物は、必要に応じ、増粘剤、界面活性剤、難燃剤、減水剤、消泡剤、樹脂、繊維等を含むものであってもよい。
【0036】
水の比率は、セメント100重量部に対し、通常200〜1200重量部、より好ましくは400〜1000重量部、さらに好ましくは500〜800重量部である。この範囲の水を添加することにより、耐火断熱層の上に、無機質薄層を効率的に形成することができる。
【0037】
基材は、上記耐火断熱層等を固定化可能なものであればよい。基材としては、無機質基材及び/または有機質基材が使用できる。
無機質基材としては、例えば、モルタル、コンクリート、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、炭酸カルシウム発泡板、不燃火山性ガラス質複層板、繊維強化セメント板、軽量セメント板等が挙げられる。この他、無機質基材としては、無機繊維を含む繊維質シート等が挙げられる。無機繊維としては、例えばロックウール、ガラス繊維、シリカ繊維、シリカ−アルミナ繊維、カーボン繊維、炭化珪素繊維等が挙げられる。なお、本発明における無機質基材に、金属板は包含されない。
有機質基材としては、例えば、プラスチック、ゴム、紙等のほか、有機樹脂発泡体からなるもの、有機繊維を含む繊維質シート等が挙げられる。このうち、有機樹脂発泡体としては、例えば、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、塩化ビニルフォーム、ビスコーススポンジ、ゴムフォーム、EVAフォーム、ABSフォーム、ポリアミドフォーム、アクリルフォーム、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、ユリアフォーム、シリコンフォーム、エポキシフォーム等が挙げられる。
【0038】
耐火断熱層は、上記基材の少なくとも一方の面に対し、上記組成物を吹付け、こて塗り等の各種手段により塗付し、硬化させることによって形成できる。上記組成物の塗付、硬化は、基材が建築物に設置されるまでに行ってもよいし、設置された後に行ってもよい。
また、耐火断熱層は、各種下塗層を介して設けることもできる。
【0039】
本発明の積層体は、以下の方法によって製造できる。
(1)基材の少なくとも一方の面に、
セメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粒子を4〜40重量部、無機軽量粒子を5〜300重量部、吸熱物質を5〜800重量部、及び水を200〜1200重量部含む組成物を塗付し、硬化させる。
(2)基材の少なくとも一方の面に、
セメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粒子を4〜40重量部、無機軽量粒子を5〜300重量部、吸熱物質を5〜800重量部、水を200〜1200重量部、水溶性金属塩を0.5〜30重量部、及び水溶性高分子化合物を0.5〜30重量部含む組成物を塗付し、硬化させる。
本発明では、特に上記(2)の方法が好ましい。このような方法によれば、基材上に、厚さ5〜100mmの耐火断熱層が設けられ、さらにその上に厚さ0.05〜1mmの無機質薄層が形成された積層体が得られやすい。耐火断熱層の厚さは、通常5〜100mm、好ましくは10〜50mmである。この範囲であれば、耐火性、断熱性等において優れた性能を有する。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0041】
原料としては以下のものを使用した。
・セメント:ポルトランドセメント、かさ比重1.2
・発泡有機樹脂粒子A:発泡スチロール粒子、平均粒子径3mm、かさ比重0.014
・発泡有機樹脂粒子B:発泡有機樹脂粒子A100重量部に対して珪酸リチウム溶液とアクリルスチレンエマルションとの混合物(珪酸リチウム溶液(固形分23重量%):アクリルスチレンエマルション(固形分50重量%)=9:1(重量比))60重量部を添加混合した後、50℃で24時間かけて乾燥したもの
・無機軽量粒子:ひる石、平均粒子径1mm、かさ比重0.12
・吸熱物質:水酸化アルミニウム、かさ比重1.2
・水溶性金属塩:硫酸アルミニウム
・水溶性高分子化合物:メチルセルロース(1%水溶液の粘度が15000mPa・s)
【0042】
(実施例1)
セメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粒子A21重量部、無機軽量粒子140重量部、吸熱物質9重量部、水溶性高分子化合物5重量部を均一に混合した組成物に、水610重量部を加えて混練した。
上記混練物を、常温下で硬化させ、縦8cm×横14cm×厚み4cmに切り出し、硬化体の密度、及び熱伝導率を測定した。なお、熱伝導率は、熱伝導率計「Kemthrm QTM−D3」(京都電子工業製)を用いて測定した。
【0043】
さらに、上記混練物を繊維強化セメント板の一方の面に、乾燥厚みが35mmとなるように塗付して試験体を作製し、以下の試験を実施した。
(加熱試験A)
試験体の繊維強化セメント板側に600℃のヒーターを設置して、10分間加熱した後、試験体の硬化体側の温度を測定した。試験結果を、表1に示す。評価は、最も低い温度領域であったものを「A」、最も高い温度領域であったものを「E」とする5段階にて行った。
【0044】
(実施例2〜16、比較例1〜2)
表1〜2に示す配合にて、実施例1と同様に、硬化体と試験体を作製し、同様の試験を行った。結果を表1〜2に示す。
【0045】
さらに、実施例3〜5、7〜9について加熱試験Bを行った。
(加熱試験B)
試験体の硬化体側に対し、輻射電気ヒーターにより、50kW/mの輻射熱を20分間照射した後の総発熱量を測定した。結果を表3に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質基材及び有機質基材から選ばれる基材の少なくとも一方の面に、
セメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粒子を4〜40重量部、無機軽量粒子を5〜300重量部、及び吸熱物質を5〜800重量部含む組成物の硬化体からなる耐火断熱層が設けられたことを特徴とする積層体。
【請求項2】
無機質基材及び有機質基材から選ばれる基材の少なくとも一方の面に、
セメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粒子を4〜40重量部、無機軽量粒子を5〜300重量部、及び吸熱物質を5〜800重量部含む組成物の硬化体からなる耐火断熱層、
厚さが0.05〜1mmである無機質薄層、
が順に設けられたことを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2011−156799(P2011−156799A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21582(P2010−21582)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】