説明

積層体

【課題】優れた湿度・温度調節機能、結露防止機能を有する積層体を提供する。
【解決手段】積層体は、調湿層と蓄熱層の間に、吸水性を有する吸水層を含み、該吸水層が熱応答性樹脂を含む。該熱応答性樹脂が、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上のモノマーを重合して得られる樹脂。蓄熱層が、有機潜熱蓄熱材(a)、有機処理された層状粘土鉱物(b)、1分子中に3以上のOH基を有し、分子量が5000〜8000であるポリオール(c−1)、イソシアネート化合物(c−2)を含み、(c−1)と(c−2)の混合比率が、NCO/OH比率で1.5以上8.0以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた湿度・温度調節機能、結露防止機能を有する積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
快適な居住空間に対する関心が高まる中、居住空間の壁や天井、床に適用する材料として、結露防止やカビ発生防止、あるいは湿度・温度の調整による不快感抑制等の機能を有する材料が求められている。
例えば、結露防止やカビ発生防止にも効果がある材料としては、湿気を吸収・放出する湿度調節機能を有する材料、すなわち、調湿材料などが挙げられる。
また、蓄熱性を有する材料も、外気温との温度差を和らげ、その結果、結露防止やカビ発生防止にも効果がある材料として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−197557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1では、調湿材料(吸放湿材料)と蓄熱材料を積層させることが記載されている。該技術を用いれば、ある程度、結露防止性等の向上が得られることは予測できる。
しかし、調湿材料(吸放湿材料)や蓄熱材料、また、特許文献1の技術では、結露防止性に不十分な場合があり、より優れた結露防止性技術の確立が待たれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、より優れた結露防止機能を目指し、鋭意検討をした結果、調湿層と蓄熱層の間に、吸水性を有する特定の吸水層を積層することによって、優れた調湿機能を有し、結露防止機能に優れていることを見出し、本発明の完成に至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.調湿層と蓄熱層を含む積層体であって、
調湿層と蓄熱層の間に、吸水性を有する吸水層を含み、該吸水層が熱応答性樹脂を含むことを特徴とする積層体。
2.該熱応答性樹脂が、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上のモノマーを重合して得られる樹脂であることを特徴とする1.に記載の積層体。
3.蓄熱層が、有機潜熱蓄熱材(a)、有機処理された層状粘土鉱物(b)、1分子中に3以上のOH基を有し、分子量が5000〜8000であるポリオール(c−1)、イソシアネート化合物(c−2)を含み、(c−1)と(c−2)の混合比率が、NCO/OH比率で1.5以上8.0以下である、ことを特徴とする1.または2.に記載の積層体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の積層体は、優れた結露防止機能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】は、試験1の試験設備のモデル図である。
【図2】は、試験1で測定された温度変化グラフである。
【符号の説明】
【0009】
1:試験板
2:アクリルボックス
3:熱電対
4:恒温器
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明の積層体は、調湿層と蓄熱層を含み、調湿層と蓄熱層の間に、特定の吸水性を有する吸水層が積層されたことを特徴とするものである。
【0012】
<調湿層>
本発明で用いる調湿層は、水分や湿気等を吸収かつ放出するものであり、例えば、湿度を調節できる材料(調湿材)を含むもの、あるいは、調湿体からなるもの等が挙げられる。
【0013】
調湿材としては、例えば、
ベーマイト、シリカゲル、ゼオライト、硫酸ナトリウム、アルミナ、アロフェン、珪藻土、珪質頁岩、セピオライト、アタバルジャイト、モンモリロナイト、ゾノライト、イモゴライト、大谷石粉、活性白土、木炭、竹炭、活性炭、木粉、貝殻粉、多孔質合成樹脂粒等の多孔質粉体、
ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリアミノ酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルメチルエーテル、ポリ(イソブチレン−マレイン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパン−スルホン酸)、ポリアクロキシプロパンスルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルピリジン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン等、または、それらの誘導体等を含む合成樹脂、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ヒアルロン酸、カゼイン、コラーゲン、デンプン、ヒドロキシルセルロース、カルゲナン、キトサン、ゼラチン等の天然物由来の樹脂等からなる吸水性ポリマー、等が挙げられる。
なお、吸水性ポリマーは、粉体やゲル体の形態で使用することもできるし、結合材として用いることもできる。
【0014】
本発明では特に、調湿材として、多孔質粉体、吸水性ポリマーの粉体タイプを使用する場合が好ましく、このような粉体としては、例えば、吸湿率が、通常10%以上、好ましくは20%以上の性能を有するものが好ましい。
なお、吸湿率とは、試料を温度20℃・相対湿度45%の恒温恒湿器にて24時間乾燥した後、温度20℃・相対湿度90%の恒温恒湿器にて24時間吸湿させたときの重量変化より求められる値である。すなわち、
吸湿率(%)={(吸湿後の重量−乾燥後の重量)/乾燥後の重量}×100
【0015】
このような調湿材は、結合材等によって調湿層を形成することができる。
結合材としては、例えば、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等の有機結合材、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、白色セメント、焼石膏、コロイダルシリカ、水溶性珪酸アルカリ金属塩等の無機結合材等が挙げられる。なお上記吸水性ポリマーが、結合材として作用するものでもよい。
【0016】
結合材と調湿材との混合比率は、特に限定されないが、結合材(固形分)100重量部に対し、調湿材1重量部以上1000重量部以下、さらには5重量部以上800重量部以下であることが好ましい。
【0017】
調湿層を形成する成分としては、上記調湿材、結合材の他に、顔料、骨材、粘性調整剤、可塑剤、緩衝剤、分散剤、架橋剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、防藻剤、防虫剤、湿潤剤、消泡剤、発泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、造膜助剤、沈降防止剤、たれ防止剤、凍結防止剤、滑剤、脱水剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維類、香料、化学物質吸着剤、光触媒、難燃剤等の添加剤を混合してもよい。
【0018】
顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(べんがら)、クロム酸鉛(モリブデートオレンジ)、黄鉛、黄色酸化鉄、群青、コバルトグリーン等の無機系着色顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンツイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機系着色顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、メタリック顔料等が挙げられる。
骨材としては、例えば、珪砂、砕石、寒水石、川砂、山砂、大理石粉砕物、御影石粉砕物、花崗岩粉砕物、蛇紋岩粉砕物、黒曜石粉砕物、石灰岩粉砕物、蛍石粉砕物、寒水石粉砕物、長石粉砕物、珪石粉砕物、珪砂粉砕物、陶磁器粉砕物、マイカ、セラミック粉砕物、ガラスビーズ、ガラス粉砕物、樹脂ビーズ、多孔質樹脂ビーズ、金属粒等、または、それらを着色したもの等が挙げられる。
このような顔料や骨材により、調湿層に優れた意匠を施すことができる。
【0019】
水分や湿気等を吸収かつ放出する調湿体としては、例えば、
ガラス繊維、アルミニウム繊維、ステンレス繊維、シリカ−アルミナ繊維、カーボン繊維等の無機繊維、あるいはパルプ繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ビニル繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、テトロン繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維等の有機繊維、、綿、木綿、石綿、麻、ヤシ、コルク、ケナフ等の天然繊維等の繊維からなるクロス、メッシュや織布・不織布等の繊維質体、また、石膏ボード、珪酸カルシウム板、発泡体、多孔質体等が挙げられる。
これらの調湿体をそのまま調湿層として用いることもできるし、上記調湿材料を含む調湿層成分を積層して用いてもよい。
【0020】
本発明で用いる調湿層としては、特に、吸放湿量が、30g/m以上、好ましくは50g/m以上、さらに好ましくは80g/m以上有するものが好ましい。このような調湿層を使用することによって、結露を防止し、室内空間において十分な調湿効果を得ることができる。吸放湿量の上限は特に限定されないが、通常は500g/m以下、好ましくは300g/m以下程度である。
なお、本発明における吸放湿量は、調湿層の裏側面をアルミニウム粘着テープでシールした後、JIS A6909:2003「建築用仕上塗材」7.32.2の手順によって測定される値である。
【0021】
<蓄熱層>
本発明で用いる蓄熱層は、有機潜熱蓄熱材(以下、「(a)成分」ともいう。)と、有機処理された層状粘土鉱物(以下、「(b)成分」ともいう。)、1分子中に3以上のOH基を有し、分子量が5000〜8000であるポリオール(以下、「(c−1)成分」ともいう。)と、イソシアネート化合物(以下、「(c−2)成分」ともいう。)とを含むことを特徴とする。
【0022】
(a)成分としては、例えば、脂肪族炭化水素、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル、ポリエーテル化合物、脂肪酸トリグリセリド等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0023】
このような(a)成分は、沸点が高く、また、(c−1)成分及び/または(c−2)成分との相溶性に優れるため、得られた蓄熱層から(a)成分が揮発し難い。そのため、蓄熱層形成時における体積変化(肉痩せ)がほとんど無く、また長期に亘り蓄熱性能が持続するため、好ましい。さらに、用途に応じた相変化温度(融点)の設定が容易であり、例えば相変化温度(融点)の異なる2種以上の有機潜熱蓄熱材を混合することで、容易に相変化温度の設定が可能となる。
【0024】
脂肪族炭化水素としては、例えば、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素を用いることができ、具体的には、n−デカン(融点−30℃)、n−ウンデカン(融点−25℃)、n−ドデカン(融点−8℃)、n−トリデカン(融点−5℃)、ペンタデカン(融点6℃)、n−テトラデカン(融点8℃)、n−ヘキサデカン(融点17℃)、n−ヘプタデカン(融点22℃)、n−オクタデカン(融点28℃)、n−ノナデカン(融点32℃)、エイコサン(融点36℃)、ドコサン(融点44℃)、およびこれらの混合物で構成されるn−パラフィンやパラフィンワックス等が挙げられる。
【0025】
長鎖アルコールとしては、例えば、炭素数8〜36の長鎖アルコールを用いることができ、具体的には、カプリルアルコール(融点7℃)、ラウリルアルコール(融点24℃)、ミリスチルアルコール(融点38℃)、ステアリルアルコール(融点58℃)等が挙げられる。
【0026】
長鎖脂肪酸としては、例えば、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸を用いることができ、具体的には、オクタン酸(融点17℃)、デカン酸(融点32℃)、ドデカン酸(融点44℃)、テトラデカン酸(融点50℃)、ヘキサデカン酸(融点63℃)、オクタデカン酸(融点70℃)等の脂肪酸等が挙げられる。
【0027】
長鎖脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを用いることができ、具体的には、ラウリン酸メチル(融点5℃)、ミリスチン酸メチル(融点19℃)、パルミチン酸メチル(融点30℃)、ステアリン酸メチル(融点38℃)、ステアリン酸ブチル(融点25℃)、アラキジン酸メチル(融点45℃)等が挙げられる。
【0028】
ポリエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールジアクリレート、エチルエチレングリコール等が挙げられる。
【0029】
脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、ヤシ油、パーム核油等の植物油や、その精製加工品である中鎖脂肪酸トリグリセリド、長鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
【0030】
本発明では、特に、有機潜熱蓄熱材として、相変化温度(融点)が実用温度領域にあることが好ましく、特に相変化温度(融点)が、0℃以上20℃以下、さらに好ましくは5℃以上18℃以下の温度領域にあるものを含むことが好ましい。
【0031】
本発明で用いる(b)成分は、有機処理された層状の粘土鉱物であり、(a)成分と混合し用いるものである。(b)成分と(a)成分を混合することにより、(b)成分の層間に、(a)成分が入り込む。(b)成分は、有機処理されたものであるため、(a)成分が(b)成分の層間に入り込みやすく、また(a)成分が(b)成分の層間に保持されやすい構造となっている。
このような(b)成分と(a)成分を混合することにより、結果として、(a)成分の粘度を上昇させ、後述する(c)成分内に(a)成分を担持し、より保持し続けることができる。そのため、(a)成分が蓄熱層外部へ漏れ出すのを防ぎ、蓄熱性に優れ、加工性、施工性に優れた蓄熱層を得ることができる。
また、(b)成分は、(a)成分とほとんど反応することがなく、有機潜熱蓄熱材の融点やその他の各種物性に影響を与えない。そのため、(a)成分の蓄熱材としての性能を効率よく発揮することができ、相変化温度(融点)の設定が容易である。
【0032】
(b)成分の底面間隔は、13.0〜30.0Å(好ましくは15.0〜26.0Å)程度であることが好ましい。このような範囲であることにより、(a)成分が、(b)成分の層間により入り込みやい。なお、底面間隔はX線回折パターンにおける(001)反射から算出される値である。
【0033】
(a)成分と(b)成分混合時の粘度は、0.5〜20.0Pa・s程度とすればよい。なお、粘度は、B型回転粘度計を用い、温度23℃、相対湿度50%RH、20rpmで測定した値である。
また、(a)成分と(b)成分混合時のTI値は、4.0〜9.0程度とすればよい。なお、TI値は、B型回転粘度計を用い、下記式1により求められる値である。
TI値=η1/η2 (式1)
(但し、η1:2rpmにおける粘度(Pa・s:2回転目の指針値)、η2:20rpmにおける粘度(Pa・s:4回転目の指針値))
【0034】
このような粘度、TI値とすることによって、後述する(c)成分内に(a)成分が担持されやすく、かつ、(c)成分内に(a)成分が保持されやすい。そのため、(a)成分が蓄熱層外部へ漏れ出すのを防ぎ、より蓄熱性に優れ、より加工性、施工性に優れた蓄熱層を得ることができる。
【0035】
(b)成分としては、有機処理された層状粘土鉱物であれば特に限定されない。
層状粘土鉱物としては、例えば、スメクタイト、バーミキュライト、カオリナイト、アロフェン、雲母、タルク、ハロイサイト、セピオライト等が挙げられる。また、膨潤性フッ素雲母、膨潤性合成マイカ等も利用できる。
有機処理としては、例えば、層状粘土鉱物の層間に存在する陽イオンを長鎖アルキルアンモニウムイオン等でイオン交換(インターカレート)すること等が挙げられる。
本発明では、特に、スメクタイト、バーミキュライトが有機処理されやすい点から、好適に用いられる。さらに、スメクタイトの中でも、特に、モンモリロナイトが好適に用いられ、本発明では、特に、有機処理されたモンモリロナイトを好適に用いることができる。
【0036】
具体的に、有機処理されたモンモリロナイトとしては、ホージュン社製のエスベン、エスベン C、エスベン E、エスベン W、エスベン P、エスベン WX、エスベン NX、エスベン NZ、エスベン N-400、オルガナイト、オルガナイトーD、オルガナイトーT(商品名)、ズードケミー触媒社製のTIXOGEL MP、TIXOGEL VP、TIXOGEL VP、TIXOGEL MP、TIXOGEL EZ 100、MP 100、TIXOGEL UN、TIXOGEL DS、TIXOGEL VP−A、TIXOGEL VZ、TIXOGEL PE、TIXOGEL MP 250、TIXOGEL MPZ(商品名)、エレメンティスジャパン社製のBENTONE 34、38、52、500、1000、128、27、SD−1、SD−3(商品名)等が挙げられる。
【0037】
(a)成分と(b)成分の混合比は、通常(a)成分100重量部に対し、(b)成分を0.5重量部から50重量部(好ましくは1重量部から30重量部、より好ましくは3重量部から15重量部)程度とすればよい。0.5重量部より少ない場合は、(a)成分が(c)成分内から漏れやすくなる場合がある。50重量部より多い場合は、(a)成分の粘度が高くなり過ぎ、(c)成分への担持・保持工程が困難となる場合がある。
【0038】
本発明で用いる(c−1)成分は、1分子中に3以上のOH基を有し、分子量が5000〜8000(好ましくは5500〜7500)であるポリオールであり、後述する(c−2)成分と反応させることにより成形体(以下、「(C)成分」ともいう。)を形成し、(a)成分を担持・保持する成分である。
【0039】
(c−1)成分としては、例えば、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリテトラメチレングリコールポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシプロピレンエチレンポリオール、エポキシポリオール、アルキドポリオール、フッ素含有ポリオール、ケイ素含有系ポリオール、セルロース及び/またはその誘導体、アミロース等の多糖類等が挙げられる。
本発明では、特に、ポリエーテルポリオールを用いることが好ましく、さらには、グリセリンを開始剤とするポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。
【0040】
このような(c−1)成分は、(c−2)成分と反応して、適度な3次元架橋構造を形成することができ、該架橋構造内に多量の(a)成分を担持・保持可能な蓄熱層を得ることができ、(a)成分の漏れを抑制することが可能である。また、得られた蓄熱層は柔軟性に優れ、吸水層との密着性にも優れる。
1分子中のOH基が3未満のポリオールでは、3次元架橋構造を形成し難く、多量の(a)成分の担持・保持ができない場合がある。また、分子量が5000より小さい場合は、緻密な架橋構造となってしまい、蓄熱材を多く含ませることが困難であり、柔軟性に劣り、密着性に劣る場合がある。分子量が8000より大きい場合は、蓄熱層の形成が困難な場合がある。
【0041】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物等が挙げられる。
【0042】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、1,4−テトラメチレンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、トリメチルペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキシレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、メタキシレングリコール、パラキシレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチルテレフタレート、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトール、ソルビトール、シュークロースなど)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、2−メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0043】
多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;
テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0044】
環状エステルの開環重合物において、環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
3種類の成分による反応物において、多価アルコール、多価カルボン酸、環状エステルとしては、前記例示のものなどを用いることができる。
【0045】
本発明では、ポリエステルポリオールとして、特に、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物が好ましく、例えば、多価アルコールとして、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等、多価カルボン酸として、アジピン酸等を用いることが好ましい。
ポリエステルポリオールの製造方法は、常法により行うことができ、必要に応じ、公知の硬化剤、硬化触媒等を用いてもよい。
【0046】
アクリルポリオールとしては、例えば、ヒドロキシル基を有するアクリル単量体を単独重合または共重合させる、または共重合可能な他の単量体を共重合させることによって得ることができる。
【0047】
ヒドロキシル基を有するアクリル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;
グリセリンやトリメチロールプロパン等のトリオールの(メタ)アクリル酸モノエステル類;
上記(メタ)アクリル酸エステル類とポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルポリオール類とのモノエーテル類;
(メタ)アクリル酸グリシジルと酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸等の一塩基酸との付加物;
上記(メタ)アクリル酸エステル類と、ε−カプロラクタム、γ−バレロラクトン等のラクトン類の開環重合により得られる付加物;
等が挙げられ、これらを単独重合または共重合することにより得ることができる。
【0048】
また、共重合可能な他の単量体としては、
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸、けい皮酸等のカルボキシル基含有単量体;
【0049】
(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸アミノブチル、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p−アミノスチレン、(メタ)アクリル酸−N−メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N−t−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノプロピル、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピロリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕モルホリン、4−〔N,N−ジメチルアミノ〕スチレン、4−〔N,N−ジエチルアミノ〕スチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のアミノ基含有単量体;
【0050】
(メタ)アクリル酸グリシジル、ジグリシジルフマレート、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル、3,4−エポキシビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−ε−カプロラクトン変性グリシジル、(メタ)アクリル酸−β−メチルグリシジル等のエポキシ基含有単量体;
【0051】
(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、N、N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタクリレート)、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、ビニルアミド等のアミド基含有単量体;
【0052】
(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル等のアルコキシシリル基含有単量体;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基含有単量体;
アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル基含有単量体;
N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等のメチロール基含有単量体;
ビニルオキサゾリン、2−プロペニル2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有単量体;
【0053】
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸n一アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸オキチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ドデセニル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−4−tert−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−フェニルエチル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−4−メトキシブチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;
【0054】
フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;
スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル系単量体;
エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、酢酸ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、シリコーンマクロマー等のその他の単量体;
等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0055】
重合方法としては、特に限定されず、公知の塊状重合、懸濁重合、溶液重合、分散重合、乳化重合、酸化還元重合等を用いればよく、必要に応じ、開始剤、連鎖移動剤等またはその他の添加剤等を加えてもよい。例えば、上記のモノマー成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物などのラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合することによって得ることができる。
【0056】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物;環状炭酸エステル(アルキレンカーボネート等)の開環重合物等が挙げられる。
【0057】
環状炭酸エステルの開環重合物において、アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネート等が挙げられる。
【0058】
なお、ポリカーボネートポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
【0059】
ポリオレフィンポリオールとしては、オレフィンを重合体又は共重合体の骨格(又は主鎖)の成分とし且つ分子内に(特に末端に)ヒドロキシル基を少なくとも2つ有するポリオールであって、数平均分子量が500以上のものを用いることができる。前記オレフィンとしては、末端に炭素−炭素二重結合を有するオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンなど)であってもよく、また末端以外の部位に炭素−炭素二重結合を有するオレフィン(例えば、イソブテンなど)であってもよく、さらにはジエン(例えば、ブタジエン、イソプレンなど)であってもよい
【0060】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のポリアルキレングリコールの他、多価アミンないし多価アルコールを開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加させた共重合体等が挙げられる。
【0061】
多価アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン等が挙げられる。
【0062】
多価アルコールとしては、上述したもの等が挙げられるが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトール、ソルビトール、シュークロースなど)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、2−メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が好適に用いられる。
【0063】
本発明では、特に、ポリオールとして、グリセリンを開始剤とするポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。グリセリンを開始剤とするポリエーテルポリオールは、蓄熱材との相溶性に優れ、蓄熱材を担持・保持しやすい。
【0064】
セルロース及び/またはその誘導体としては、セルロース、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース等のセルロースアセテート、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、硝酸セルロース等のセルロースエステル類、エチルセルロース、ベンジルセルロース、シアノエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエーテル類等が挙げられる。
【0065】
セルロース及び/またはその誘導体は、ヒドロキシル基を有するものであるが、ヒドロキシル基の一部をアルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)等により、置換されたものが好ましい。
具体的には、置換度が、1.8〜2.8、さらには2.2〜2.6であることが好ましい。なお、置換度とは、セルロースを構成するグリコースユニット中に存在する3つのヒドロキシル基が、アルコキシル基等で置換された割合を意味し、100%置換された場合で置換度は3となる。
置換度をこのような範囲で制御することにより、後述する(a)成分との相互作用を向上させることができ、多孔体内に、(a)成分を長期に亘り保持することができる。
置換度が、1.8より小さい場合は、(a)成分との相互作用が低下する場合があり、(a)成分を多孔体内に、十分保持できない場合がある。また、2.8より大きい場合は、セルロース中のヒドロキシル基が減少し、十分な強度を有する3次元架橋構造が得られない場合がある。
【0066】
本発明で用いるポリオールの水酸基価は、特に限定されないが、15KOHmg/g以上40KOHmg/g以下であることが好ましく、さらには20KOHmg/g以上35KOHmg/g以下であることが好ましい。
このような水酸基価とすることにより、イソシアネート化合物と反応して、より多くの蓄熱材を蓄熱体中に含ませることができるとともに、蓄熱材の漏れを抑制するのに最適な架橋構造を得ることができる。水酸基価が高すぎる場合は、蓄熱材を多く含ませることが困難であり、柔軟性に劣る場合がある。また、水酸基価が低すぎる場合は、蓄熱材を十分に保持できない場合がある。
【0067】
(c−2)成分としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート等、及び、これらをアロハネート化、ビウレット化、2量化(ウレチジオン)、3量化(イソシアヌレート)、アダクト化、カルボジイミド反応等によって誘導体化したもの、及びそれらの混合物、及び、それらと共重合可能な単量体との共重合体等が挙げられる。
【0068】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネ−ト、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が挙げられる。
【0069】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0070】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、4,4´−ジフェニルジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルエ−テルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4´−ジイソシアネート、2,2´−ジフェニルプロパン−4,4´−ジイソシアネート、3,3´−ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジイソシネート、4,4´−ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3´−ジメトキシジフェニル−4,4´−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0071】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト(XDI)、ω,ω´−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0072】
本発明では、特に、HMDI及びその誘導体化したもの等の脂肪族ジイソシアネート、MDI及びその誘導体化したもの等の芳香族ジイソシアネート等を用いることが好ましい。
【0073】
本発明は、(a)成分、(b)成分と、(c−1)成分、(c−2)成分を混合し、(c−1)成分と(c−2)成分を反応させることにより、(c−1)成分と(c−2)成分からなる成形物(以下、「(c)成分」ともいう。)中に(a)成分((b)成分を含む)が含有された蓄熱層を得ることができる。
【0074】
また、(c−1)成分と(c−2)成分の混合比率は、NCO/OH比率で1.5以上8.0以下、好ましくは1.8超7.0以下、さらに好ましくは2.0以上6.0以下範囲内で設定する。
通常NCO/OH比率は1付近に調整するものであるが、本発明のように(a)成分((b)成分を含む)を多量に含有する場合には、本発明特定の(c−1)成分、(c−2)成分を用い、NCO/OH比率が1.5以上8.0以下とすることで、(a)成分の含有率が高くても、(a)成分の保持力に優れ、優れた蓄熱性能及び持続性を有し、かつ、(a)成分の漏れも無く、柔軟性、加工性、施工性に優れる蓄熱層が得られる。NCO/OH比率が1.5未満では、(a)成分の保持力、柔軟性、加工性が低下し、また、湿度・温度調節機能、結露防止機能にも劣る。また、NCO/OH比率が8.0よりも大きい場合は、(a)成分の保持力、柔軟性が低下する。
【0075】
また、(a)成分の混合比率は、蓄熱層全量に対し、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。
【0076】
さらに本発明では、(a)成分、(b)成分、(c−1)成分、(c−2)成分とともに、非イオン性界面活性剤(以下、「(d)成分」ともいう。)を含むことが好ましい。
【0077】
(d)成分としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、
テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、
ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン等が挙げられる。
【0078】
本発明では特に(d)成分として、親水親油バランス(HLB値)が10以上(好ましくは10超20以下、より好ましくは11以上19以下、さらに好ましくは12以上18以下、最も好ましくは13以上17以下)の非イオン性界面活性剤を好適に用いることができる。
このような(d)成分を含むことにより、(a)成分、(b)成分と、(c−1)成分、(c−2)成分の分離を防ぐことができ、(a)成分が均一に分散した蓄熱層を得ることができる。
【0079】
(d)成分と(a)成分の混合比は、通常(a)成分100重量部に対し、(d)成分0.01重量部〜30重量部(好ましくは0.1重量部〜20重量部)程度とすればよい。このような範囲であることにより、(a)成分、(b)成分と、(c−1)成分、(c−2)成分の分離をより防ぐことができ、(a)成分が均一に分散した蓄熱層を得ることができる。
(d)成分が0.01重量部より少ない場合は、(a)成分、(b)成分と(c−1)成分及び/または(c−2)成分が分離してしまうかまたはクリーミング現象を起こしやすく、効率よく分散させることが困難である。30重量部より多い場合は、得られる蓄熱層の耐水性等の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0080】
また、(a)成分として炭素数8〜36の長鎖アルキル基を有する蓄熱材を用いた場合、(d)成分の構造中に、炭素数8〜36の長鎖アルキル基を有する非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。特に、(a)成分と(d)成分の長鎖アルキル基の炭素数が近似するもの、あるいは同様のものを選定することにより、本発明の効果を高めることができる。
【0081】
また、2種以上の(a)成分を混合して使用する場合は、相溶化剤(以下、「(e)成分」ともいう。)を用いることが好ましい。(e)成分を用いることにより、(a)成分同士の相溶性を向上させることができる。
(e)成分としては、例えば、脂肪酸トリグリセリド、親水親油バランス(HLB)が1以上10未満(好ましくは1以上5以下)の非イオン性界面活性剤等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合し用いることができる。
【0082】
脂肪酸トリグリセリドは、上述したように、有機潜熱蓄熱材としても用いられる物質である。このような脂肪酸トリグリセリドは、特に有機潜熱蓄熱材同士の相溶性を、より向上させることができるとともに、優れた蓄熱性を有するため好ましい。脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、ヤシ油、パーム核油等の植物油や、その精製加工品であるカプリル酸トリグリセリド、パルミチン酸トリグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド等の脂肪酸トリグリセリドが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0083】
親水親油バランス(HLB)が1以上10未満(好ましくは1以上5以下)の非イオン性界面活性剤としては、例えば、
ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0084】
(e)成分と(a)成分の混合比率は、通常(a)成分100重量部に対し、(e)成分0.1重量部〜20重量部(好ましくは0.1重量部〜10重量部)程度とすればよい。
【0085】
また、(c−1)成分と(c−2)成分の反応では、反応促進剤を用いて硬化反応を迅速に進めることもできる。
例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、テトラメチルブタンジアミン、ジメチルアミノエタノール、ダイマージアミン、ダイマー酸ポリアミドアミン等のアミン類;
ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、錫オクテート等の錫カルボン酸塩類;
ナフテン酸鉄、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン、オクチル酸亜鉛等の金属カルボン酸塩類;
ジブチルチンチオカルボキシレート、ジオクチルチンチオカルボキシレート、トリブチルメチルアンモニウムアセテート、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等のカルボキシレート類;
アルミニウムトリスアセチルアセテート等のアルミニウム化合物;
等が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。
【0086】
反応促進剤は、(c−1)成分の固形分100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部の比率で混合すればよい。
【0087】
本発明蓄熱層には、上記成分の他に、顔料、骨材、粘性調整剤、可塑剤、緩衝剤、分散剤、架橋剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、防藻剤、湿潤剤、消泡剤、発泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、凍結防止剤、滑剤、脱水剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維類、香料、化学物質吸着剤、光触媒、吸放湿性粉粒体、熱伝導性物質、難燃剤等の添加剤を含有することもできる。
【0088】
例えば、難燃剤としては、例えば、三塩化リン、五塩化リン、ポリリン酸アンモニウム、アミド変性ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、エチレンジアミンリン酸塩、エチレンジアミンリン酸亜鉛塩、1、4−ブタンジアミンリン酸塩などのリン酸アミン塩や、赤燐、リン酸エステル等のリン系化合物;、トリクレジルフォスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート、ジフェニルオクチルフォスフェート、トリ(β−クロロエチル)フォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ(ジクロロプロピル)フォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリ(ジブロモプロピル)フォスフェート、クロロフォスフォネート、ブロモフォスフォネート、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルフォスフォネート等の有機リン系化合物;、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄、酸化銅、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ケイ素、ゼオライト、ホウ酸亜鉛、ホウ酸ソーダ、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の金属化合物;、天然鱗片状グラファイト、熱分解グラファイト、キャッシュグラファイト等の粉末を硫酸、硝酸、酢酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩等で処理したもの等の膨張性黒鉛等が挙げられる。
【0089】
本発明では、特に、膨張性黒鉛を含むものが好ましい。膨張性黒鉛としては、膨張温度が、潜熱蓄熱材の引火点以下であるものが好ましく、例えば、180℃以下、さらには170℃以下、さらには160℃以下であるものが好ましい。このような膨張温度であることにより、潜熱蓄熱材の引火点以下で膨張して表面炭化層(断熱層)を形成し、潜熱蓄熱材への引火を防止することができる。このような膨張性黒鉛としては、天然鱗片状グラファイトの層間に酢酸等の有機酸を挿入(処理)したものが好ましい。特に、粒子径が150〜500μmで、膨張容積が150〜300ml/gであるものが好ましい。
【0090】
(a)成分と難燃剤の混合比は、通常(a)成分100重量部に対し、難燃剤を5重量部〜100重量部(好ましくは10重量部〜50重量部)程度とすればよい。
【0091】
<吸水層>
本発明で用いる吸水層は、熱応答性樹脂を含むことを特徴とするものである。
熱応答性樹脂としては、例えば、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクロイルピロリジンなどのN−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルメチルエーテル等から選ばれる1種以上のモノマーを重合して得られる樹脂等が挙げられる。本発明では、特に、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上のモノマーを重合して得られる樹脂が好ましい。
このような熱応答性樹脂は、水和状態から脱水和状態、または、脱水和状態から水和状態へと転移する臨界温度が存在する。例えば、N−アルキル(メタ)アクリルアミドやN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドは、低い温度領域においては親水性で水に溶解し水和状態であるが、臨界温度以上になると、疎水性で水に不溶となり脱水和状態へと転移する。このような熱応答性樹脂を、吸水層中に含むことによって、低い温度領域(結露が発生しやすい温度領域)では水分をより多く吸水しやすく、温度が高くなると、水分を放出しやすくなるため、本発明の結露防止機能、調湿機能をより高める効果がある。
このような熱応答性樹脂の形態としては、結合材中に含まれるものでもよいし、樹脂粒子として含まれるものでもよい。
結合材中に含まれる場合は、結合材全量に対し、10重量%以上、さらには20重量%以上であることが好ましい。また、樹脂粒子として含まれる場合は、結合材全量(固形分)100重量部に対し、10重量部以上、さらには20重量部以上であることが好ましい。
【0092】
本発明で用いる吸水層は、より吸水性を高めるため、熱応答性樹脂の他に、吸水性樹脂及び/または吸水性粉体を含んでいてもよい。
吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリアミノ酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルメチルエーテル、ポリ(イソブチレン−マレイン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパン−スルホン酸)、ポリアクロキシプロパンスルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルピリジン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン等、または、それらの誘導体等を含む合成樹脂、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ヒアルロン酸、カゼイン、コラーゲン、デンプン、ヒドロキシルセルロース、カルゲナン、キトサン、ゼラチン等の天然物由来の樹脂等が挙げられる。
また、吸水性粉体としては、例えば、ベーマイト、シリカゲル、ゼオライト、硫酸ナトリウム、アルミナ、アロフェン、珪藻土、珪質頁岩、セピオライト、アタバルジャイト、モンモリロナイト、ゾノライト、イモゴライト、大谷石粉、活性白土、木炭、竹炭、活性炭、木粉、貝殻粉、多孔質合成樹脂粒等が挙げられる。
【0093】
吸水層を形成する成分としては、上記熱応答性樹脂、吸水性樹脂、吸水性粉体の他に、結合材、顔料、骨材、粘性調整剤、可塑剤、緩衝剤、分散剤、架橋剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、防藻剤、防虫剤、湿潤剤、消泡剤、発泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、造膜助剤、沈降防止剤、たれ防止剤、凍結防止剤、滑剤、脱水剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維類、香料、化学物質吸着剤、光触媒、難燃剤等の添加剤を混合してもよい。
【0094】
本発明積層体は、上記調湿層と蓄熱層の間に、吸水性を有する吸水層を含むものであれば、特に限定されない。
本発明の積層体は、吸水層により、特に結露が発生しやすい低い温度領域で、水分を吸収しやすく、例えば調湿層で吸収しきれない水分を吸収することが可能であり、結露防止機能を高めるとともに、温度が高くなると水分を放出しやすく、調湿機能を高める効果も有する。蓄熱層により、居住空間の急激な温度変化を緩和することができる。さらに、蓄熱層により急激な温度変化を防ぐことができるため、急激な温度変化の連続による層の劣化等を防ぐこともできる。
【0095】
このような積層体の製法としては、特に限定されず、例えば、それぞれ調湿層、吸水層、蓄熱層を予め作製しておき接着剤等で積層する方法、予め作製しておいた調湿層の上に上記吸水層成分、蓄熱層成分を塗付積層する方法、予め作製しておいた蓄熱層の上に上記吸水層成分、調湿層成分を塗付積層する方法等が挙げられ、乾式、湿式等特に限定されない。本発明では、特に、調湿層の上に上記吸水層成分を塗付積層し、さらにその上に蓄熱層成分を塗付積層して製造する方法が好ましい。
予め調湿層、吸水層、蓄熱層を製造する方法では、特に限定されず、上記調湿層成分、上記吸水層成分または上記蓄熱層成分を、型枠工法、フローコーター法、押出し形成法等公知の方法にて製造すればよいし、各種基材の上に塗付積層したものでもよい。
また、調湿層成分、吸水層成分、蓄熱層成分を塗付積層する場合は、スプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗り、コテ塗り、流し込み等の公知の方法で塗付積層すればよい。
【0096】
特に、蓄熱層の製造では、(a)成分、(b)成分と、(c−1)成分、(c−2)成分、また必要によりその他の成分を混合し、(c−1)成分と(c−2)成分を反応させることが好ましい。
製造方法としては、(a)成分、(b)成分、(c−1)成分、(c−2)成分、その他の成分を混合し、(c−1)成分と(c−2)成分を反応させる方法、(a)成分、(b)成分、(c−1)成分(または(c−2)成分)、その他の成分を混合し、(c−2)成分(または(c−1)成分)を添加することにより反応させる方法等が挙げられる。
反応温度は、特に限定されないが、(a)成分の相変化温度以上とすることが好ましく、使用する(a)成分の種類によって異なるが、通常20℃〜80℃程度であればよい。また、反応時間は通常0.2〜5時間程度とすればよい。
また、反応を促進するため、上記反応促進剤や、熱、光等のエネルギーを与えることができる。
【0097】
また、(d)成分を含有する場合、(c−1)成分及び/または(c−2)成分中に(a)成分、(b)成分が、微細なコロイド状に分散した状態をつくりだし、そのような状態から(c−1)成分と(c−2)成分を反応させることにより、(c)成分中に(a)成分、(b)成分が、微細に分散した蓄熱層を製造することができる。
このような製造方法では、(a)成分の含有率をより高くすることができる。また、(a)成分が、微細に均一に分散した状態であるため、垂直に固定化した場合でも蓄熱材の偏りがなく、(a)成分の固液変化に伴う体積変化による蓄熱層自体の形状変化を軽減することもできるため、好ましい。
【0098】
(d)成分を含有し、微細なコロイド状に分散した状態をつくりだす方法では、反応前の状態において、(a)成分が、粒子径10μm〜1000μm(好ましくは50μm〜900μm、さらに好ましくは100μm〜800μm)程度の大きさのコロイド状に分散した状態であることが好ましい。このような状態から(c−1)成分と(c−2)成分を反応させることにより、(a)成分が微細に分散した蓄熱層を得ることができる。
【0099】
なお、粒子径は、光学顕微鏡(BHT−364M、オリンパス光学工業株式会社製)を用いて測定した値である。
【0100】
本発明積層体の厚さは、使用用途によって適宜設定すればよいが、調湿層の厚さが0.5mm以上10mm以下(好ましくは1.0mm以上7mm以下)程度、蓄熱層の厚さが0.1mm以上10mm以下(好ましくは0.5mm以上7mm以下)程度、吸水層の厚さが0.1mm以上5mm以下(好ましくは0.3mm以上4mm以下)程度であればよい。
【0101】
このようにして得られた積層体は、主として、住宅等の建築物の壁材、天井材、床材等の内・外装材の材料として好適に使用することができ、各種基材に積層して用いることができる。
基材としては、特に限定されないが、例えば、石膏ボード、合板、コンクリート、モルタル、磁器タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板、ALC板、サイディング板、押出成形板、鋼板、アルミニウム板、プラスチック板、ガラス板等が挙げられる。
【0102】
基材に積層する方法としては、予め製造しておいた積層体を、接着剤、粘着剤、粘着テープ、釘、鋲等を用いて基材に貼着することもできるし、ピン、ファスナー、レール等を用いて固定化することもできる。また、基材に直接、調湿層成分、吸水層成分、蓄熱層成分を塗付積層することもできる。
また、基材の裏面または積層体の裏面に、必要により、断熱層が積層されていてもよいし、表面には、本発明の効果を損なわない程度に装飾層や保護層が積層されたものでもよい。
また、本発明の構成、効果を損なわない限り、2種以上の蓄熱層、または、2種以上の吸水層、または、2種以上の調湿層を含む4層以上の積層体であってもよい。
【実施例】
【0103】
以下に実験例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0104】
(蓄熱層の作製)
表1に示す原料を用い、表2に示す配合量にて、反応促進剤以外の成分を温度35℃で均一に混合した後、反応促進剤を加え、十分攪拌した。攪拌後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを敷いた300×180×5mmの型枠中に流し込み、さらにポリエチレンテレフタレートフィルムを積層し、50℃で180分硬化させ、脱型して、厚み5mmの蓄熱層1〜4を得た。各蓄熱層について、次の評価を行った。
(成形性評価)
蓄熱層を得る際の成形性について評価した。評価は次の通りである。結果は表3に示す。
◎:異常はみられず、優れた試験体が得られた。
○:ほとんど異常はみられず、良好な試験体が得られた。
×:硬化不良が見られた。
【0105】
(実験例)
表3に示す原料を用い、表4に示す配合量にて、温度23度、相対湿度50%にて均一に混合した後、ガラス不織布(厚み0.4mm、坪量50g/m)の上に、厚さが2.5mmとなるように調湿層成分を塗付し、乾燥・硬化させ、調湿層を得た。
さらに表5に示す原料を用い、表6に示す配合量にて、温度23度、相対湿度50%にて均一に混合した後、得られた調湿層のガラス不織布側に、厚さが1mmとなるように吸水層成分を塗付積層し、乾燥・硬化させ、吸水層を得た。
さらに表1に示す原料を用い、表2に示す配合量にて、反応促進剤以外の成分を温度35℃で均一に混合した後、反応促進剤を加え、十分攪拌した後、得られた吸水層の上に、厚さが5mmとなるように蓄熱層成分を塗付積層し、乾燥・硬化させ、調湿層・吸水層・蓄熱層からなる積層体を得た。
表7に示す組み合わせにて、スレート板(400×200mm、厚さ6mm)の上に、アクリル系接着剤を用いて積層体(蓄熱層・吸水層・調湿層(ガラス不織布側と蓄熱層を貼着))を貼着し、試験板を作製した。
次に、図1に示すように、外寸が400×200×200mmであるアクリルボックス(2)を用意し、アクリルボックス(2)の外側1面と、試験板のスレート板側とを貼り付け、試験体ボックスを作製した。この試験体ボックスを用いて次の試験を行った。
なお、実験例6はスレート板の上に蓄熱層と調湿層のみ、実験例7はスレート板の上に蓄熱層のみ、実験例8はスレート板の上に調湿層のみ、実験例9はスレート板のみを貼り付けた試験体ボックスである。
【0106】
(試験1)
実験例1、7、8、9について、試験体ボックスを恒温器(4)の中に設置し、恒温器内部を室内、アクリルボックス内を屋外と想定し、図1に示すように、温度を測定するための熱電対(3)(室内温度、屋外温度、試験板表面温度)を設置した。
恒温器内及びアクリルボックス内の温度を23℃、湿度を80%に設定した後、アクリルボックス内の温度を下げるため、アクリルボックス内に氷を投入・密封し、各熱電対の温度を経時的に測定した。測定結果は、図2に示す。
(試験2)
実験例1〜9について、図1に示すように、試験1と同様の方法で、恒温器(4)の中に、試験体ボックス、熱電対(3)を設置した。
恒温器内及びアクリルボックス内の温度を23℃、湿度を50%に設定した後、アクリルボックス内の温度を下げるため、アクリルボックス内に氷(ドライアイス)を投入・密封し、投入30分後の、試験体表面の状態を観察し、結露状態を評価した。評価は次のとおりである。結果は表7に示す。
○:水滴がなく結露の発生はみられなかった。
△:わずかに結露が発生した。
×:結露が発生した。
(試験3)
恒温器内及びアクリルボックス内の温度を23℃、湿度を80%に設定した以外は、試験2と同様の方法で結露状態を評価した。結果は表7に示す。
(試験4)
恒温器内及びアクリルボックス内の温度を23℃、湿度を90%に設定した以外は、試験2と同様の方法で結露状態を評価した。結果は表7に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
【表4】

【0111】
【表5】

【0112】
【表6】

【0113】
【表7】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
調湿層と蓄熱層を含む積層体であって、
調湿層と蓄熱層の間に、吸水性を有する吸水層を含み、該吸水層が熱応答性樹脂を含むことを特徴とする積層体。
【請求項2】
該熱応答性樹脂が、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上のモノマーを重合して得られる樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
蓄熱層が、有機潜熱蓄熱材(a)、有機処理された層状粘土鉱物(b)、1分子中に3以上のOH基を有し、分子量が5000〜8000であるポリオール(c−1)、イソシアネート化合物(c−2)を含み、(c−1)と(c−2)の混合比率が、NCO/OH比率で1.5以上8.0以下である、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−230301(P2011−230301A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100042(P2010−100042)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(599071496)ベック株式会社 (98)
【Fターム(参考)】