説明

積層体

【課題】本発明は、優れた遮熱性を示すとともに、優れた意匠性を有する積層体を提供する。
【解決手段】本発明の積層体は、バインダーと、有彩色の干渉色を示す2種以上の金属酸化物被覆粒子を含み、該金属酸化物被覆粒子の組み合わせによる加法混色により、高明度の干渉色を呈する透明層と、装飾層を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、遮熱性を有する顔料として、酸化チタン、アルミナ等の白色顔料が用いられている。このような白色顔料は、赤外光領域で一定の反射性能を示すものである。
但し、このような白色顔料は、一般に隠蔽力が高い。そのため、白色顔料を用いて形成された塗膜は、下地の色彩等に関係なく、ほぼ白のみの単調な塗膜となってしまう場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−90042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対し、例えば特許文献1には、反射率の高い着色顔料で構成された塗料を用いることにより、白のみの単調な色調だけでなく、様々な色彩の付与が可能であることが記載されている。
しかし、特許文献1の技術で得られる塗膜は、白色顔料系の遮熱材料に比べ、遮熱効果に優れた材料を得ることが困難である。
【0005】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、赤外光領域での反射性能に優れ、温度上昇抑制効果を発揮するとともに、透明性を有し、下地の模様や色調等を活かすことで、様々な色彩の付与が可能な積層体を得ることを目的とするものである。
加えて、装飾層に断熱性及び/または赤外線反射性を付与する、更に、断熱層や赤外線反射層を積層することにより、遮熱性、意匠性に優れる積層体を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、有彩色の干渉色を示す金属酸化物被覆粒子を2種以上組み合わせることにより得られる遮熱性と透明性を兼ね備えた透明層と、装飾層を含む積層体が、優れた遮熱性を示すとともに、装飾層の模様や色調等を活かした意匠設計が可能であることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の積層体に関するものである。
1.装飾層と透明層を含む積層体であって、
透明層が、バインダーと、有彩色の干渉色を示す2種以上の金属酸化物被覆粒子を含み、該金属酸化物被覆粒子の組み合わせによる加法混色により、高明度の干渉色を呈することを特徴とする積層体。
2.透明層のバインダーが、アクリル成分及びシリコン成分を含むことを特徴とする1.に記載の積層体。
3.装飾層が、断熱性及び/または赤外線反射性を有することを特徴とする1.または2.に記載の積層体。
4.さらに、断熱層、赤外線反射層、補強層から選ばれる1層以上が積層されてなることを特徴とする1.から3.のいずれかに記載の積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、優れた遮熱性を示すとともに、装飾層の模様や色調等を活かすことのできる意匠設計が可能な、意匠性に優れた積層体である。
さらに、装飾層に断熱性及び/または赤外線反射性を付与すること、あるいは、断熱層や赤外線反射層を積層することにより、遮熱性、意匠性に優れる積層体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
本発明の積層体は、装飾層と透明層を含むものである。
【0011】
<透明層>
本発明の透明層は、バインダーと、有彩色の干渉色を示す2種以上の金属酸化物被覆粒子を含む透明被覆材により形成されたものである。
【0012】
本発明で用いる金属酸化物被覆粒子は、基体粒子の表層を金属酸化物で被覆したものであり、金属酸化物被覆層表面及び基体粒子表面で反射した光の干渉作用により有彩色を発現できるものであり、赤外線反射効果にも優れたものである。このような金属酸化物被覆粒子は、公知の方法に従って製造することができる。
【0013】
基体粒子としては、透明性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、雲母、ガラス、セリサイト、タルク、カオリン、スメクタイト、合成マイカ、合成セリサイト、シリカ、酸化アルミニウム、窒化硼素等が挙げられ、これらのうち1種以上を用いることができる。本発明では、特に、雲母、ガラス、合成マイカが好適に用いられる。
基体粒子の形状としては、針状、球状、鱗片状等が挙げられるが、鱗片状の形状が好ましく用いられる。基体粒子の大きさ(短径及び長径)は、0.1μm以上1mm以下(好ましくは1μm以上500μm以下)の範囲内で適宜設定すればよい。
【0014】
このような基体粒子の表層に被覆する金属酸化物としては、高屈折率のものであれば特に限定されないが、例えば、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化クロム、酸化ニッケル等が挙げられる。この中でも、二酸化チタンが好適である。
金属酸化物被覆層の厚みは、発現する有彩色によって、適宜設定すればよく、概ね50nm以上200nm以下程度である。
【0015】
金属酸化物被覆粒子の形状としては、針状、球状、鱗片状等が挙げられるが、この中でも鱗片状の形状が好ましい。
金属酸化物被覆粒子が鱗片状の場合、その大きさ(短径及び長径)は、通常0.1μm以上1mm以下(好ましくは1μm以上500μm以下、より好ましくは2μm以上200μm以下、さらに好ましくは5μm以上100μm以下)程度であり、その厚みは、通常0.01μm以上5μm以下(好ましくは0.05μm以上1μm以下)程度であるものが好ましい。
なお、上記金属酸化物被覆粒子の大きさ、厚みは、走査型電子顕微鏡の観察によって測定することができる。
【0016】
このような金属酸化物被覆粒子は、基本的に透明性を有するものであるが、金属酸化物被覆層表面での反射光と基体粒子表面での反射光との光路差に基づく干渉作用により、有彩色を発現できるものである。
有彩色の色相は、例えば、金属酸化物被覆層の厚さ等によってコントロールすることができる。例えば、金属酸化物被覆層の厚さが90nm〜110nm程度であれば赤色系、110nm〜120nm程度であればマゼンダ(紫)系、120nm〜135nm程度であれば青色系、135nm〜155nm程度であれば緑色系等の反射光を得ることができる。
【0017】
本発明の透明層では、有彩色の干渉色を示す金属酸化物被覆粒子を、2種以上混合して用いることを特徴とする。2種以上を混合することによって、それぞれの金属酸化物被覆粒子からの反射光が重なりあい、加法混色により、高明度の干渉色を得ることができる。
なお、「高明度」とは、明度が相対的に低い金属酸化物被覆粒子に対し、他の金属酸化物被覆粒子を混合した場合、混合前の明度に比べ、混合後の明度が高くなる状態を意味する。
【0018】
本発明では、このような高明度化によって、遮熱性と透明性を兼ね備えた透明層を得ることができる。特に、無彩色の色相になるように、有彩色の金属酸化物被覆粒子を組み合わせることにより、本発明の効果をいっそう高めることができる。
有彩色の組み合わせとしては、マゼンダ(紫)、青、シアン(水色)、緑、黄、橙、及び赤等から選ばれる2種以上が挙げられる。本発明では、特に、マゼンダ(紫)と緑、青と黄、シアン(水色)と赤等の補色関係にある2種の組み合わせ、または、赤、緑及び青、若しくは、シアン、マゼンタ及び黄といった3種の組み合わせ等が、より無彩色の色相になるため好ましい。
【0019】
また、金属酸化物被覆粒子は、透明性にも優れ、酸化チタン等の白色顔料よりも隠蔽力が高くなく、塗膜劣化の原因にもなりにくい。さらに、本発明の金属酸化物被覆粒子は、可視光領域において、ほとんど光を吸収せず、反射しなかった光は、ほぼ透過する性質を有する。
そのため、2種以上の金属酸化物被覆粒子が存在すると、たとえ金属酸化物被覆粒子どうしが重なっていたとしても、それぞれの金属酸化物被覆粒子の作用によって、反射強度を高めることができる。
【0020】
有彩色の干渉色を示す金属酸化物被覆粒子が、1種のみの場合は、干渉色による有彩色の色相が現れてしまい、装飾層の模様や色調等が阻害されやすくなる。また、遮熱性能にも劣る場合がある。
白色(シルバー)の金属酸化物被覆粒子は、隠蔽力が高く、装飾層の模様や色調をうまく活かすことができない。また、十分な遮熱性能が得られ難い。
【0021】
一方、通常の着色顔料を2種以上用いた場合は、減法混色により、黒っぽく、暗い色相になってしまい、装飾層の模様や色調が隠蔽されてしまう。
通常の着色顔料は、可視光領域において、吸収される波長と吸収されない波長が存在し、吸収されなかった波長が反射されて、それに応じた色相が見えるというものである。例えば青色顔料では、可視光領域において、青色を示す波長以外は顔料により吸収され、吸収されなかった青色を示す波長が反射され、青色に見えるというものである。
このような着色顔料を2種以上用いた場合は、減法混色により、黒っぽく、暗い色相になってしまう。これは、それぞれの着色顔料に存在する吸収波長領域と反射波長領域のうち、いずれか一つの着色顔料に吸収波長領域が存在すると、その領域では波長が吸収されてしまうため、反射波長領域・反射強度が小さくなってしまうからである。例えば、赤色顔料と緑色顔料を混合した場合、いわゆる補色関係にある色のため、赤色顔料は赤色を示す波長以外は吸収され、緑色顔料は緑色を示す波長以外は吸収されるため、可視光領域のほぼ全域に亘って光が吸収されてしまい、黒っぽく、暗い色相になってしまう。
【0022】
本発明の透明層におけるバインダーとしては、結合材として作用し、透明性を有する被膜が形成可能なものであれば、特に限定されず使用することができる。このようなバインダーとしては、例えば水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶剤可溶型樹脂、非水分散型樹脂、無溶剤型樹脂、粉末樹脂等が挙げられる。このうち、本発明では、水分散性樹脂及び/または水溶性樹脂が好適であり、特に水分散性樹脂(合成樹脂エマルション)を含む態様が好適である。合成樹脂エマルションとしては、平均粒子径が30〜500nm(さらには50〜300nm)であるものが好適である。
使用可能な樹脂の種類としては、例えば、シリコン樹脂、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルウレタン樹脂、フッ素樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、バイオガム、ガラクトマンナン誘導体、アルギン酸誘導体、セルロース誘導体等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。
【0023】
本発明の透明層におけるバインダーとしては、特に、アクリル成分とシリコン成分を含むバインダーが好適である。アクリル成分とシリコン成分の重量比率は、固形分換算で100:10〜100:90であることが好ましく、より好ましくは100:20〜100:70である。このようなバインダーを使用すれば、2種以上の樹脂の屈折率の違い等により、本発明の効果を高めることが可能となる。
【0024】
アクリル成分としては、各種アクリルモノマーを重合、あるいは、各種アクリルモノマーとその他のモノマーを共重合することにより得ることができる。
アクリルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸
N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルニトリル等が挙げられる。
【0025】
シリコン成分としては、シリカ、シリコーン等が挙げられ、中でもシリカが好適である。
このようなシリカは、例えば、珪酸ソーダ、珪酸リチウム、珪酸カリウム、シリケート化合物を原料として製造することができる。このうち、シリケート化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等、あるいはこれらの縮合物等が挙げられる。製造時には触媒等を使用することもできる。また、製造過程ないし製造後に、触媒等に含まれる金属をイオン交換処理等によって除去することもできる。シリカの粒子径は、通常1〜200nm、好ましくは5〜100nm程度である。
【0026】
本発明では、アクリル成分とシリコン成分を含むバインダーを用いることにより、遮熱性を高めることができる。その理由は明確ではないが、第一には、アクリル成分とシリコン成分の屈折率の相違により、その界面において光を反射する作用が発揮されること、第二には、被膜中にシリコン成分が規則的に配列することにより、反射波長領域が広域化されること、第三には、シリコン成分の存在下で被膜が形成されることにより、微細な空隙が形成され、熱伝導性が低下すること等が考えられる。さらに、金属酸化物被覆粒子を効率良く分散させる作用等も寄与しているものと考えられる。
また、本発明では、アクリル成分とシリコン成分を含むバインダーを用いることにより、透明層の経時的な汚染を防ぎ、耐候性に優れ、汚染物質に起因する熱線吸収を抑制することもできる。
【0027】
本発明におけるバインダーとしては、特に、アクリル樹脂エマルション及びシリカを含むものが好適である。このうち、アクリル樹脂エマルションとしては、シリカと反応可能なものが好適である。具体的には、シリカに存在するシラノール基と反応可能な、水酸基、加水分解性シリル基等(好ましくは、加水分解性シリル基)の官能基を有するエマルションであることが好ましい。このようなバインダーを用いることにより、本発明の効果をいっそう高めることができる。
【0028】
バインダーと金属酸化物被覆粒子の混合比率は、特に限定されないが、バインダーの固形分100重量部に対し、金属酸化物被覆粒子の合計量で0.1重量部以上300重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5重量部以上200重量部以下、さらに好ましくは1.0重量部以上100重量部以下、最も好ましくは2.0重量部以上30重量部以下である。このよう混合比率であれば、遮熱性と透明性を兼ね備えた透明層が得られやすい。
【0029】
本発明の透明被覆材では、必要に応じ、上記成分の他に、各種添加剤を混合して用いてもよい。添加剤としては、例えば、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、撥水剤、架橋剤、紫外線吸収剤、艶消し剤、酸化防止剤、触媒、調湿剤、低汚染化剤、難燃剤、不燃剤等が挙げられる。また本発明の効果が著しく損われない範囲内において、金属酸化物被覆粒子が含まれていてもよい。
【0030】
本発明の透明層は、前述の通り、金属酸化物被覆粒子の組み合わせによる加法混色により、高明度の干渉色を呈するものである。透明層の明度は、色彩色差計にて測定することができ、CIE1976L色空間におけるL値より評価することができる。すなわち、L値が高ければ明度が高く、低ければ明度が低いことになり、2種以上混合した時のL値と、1種のみ混合したときのL値を比較することにより、評価できる。
本発明では、L値が35以上90以下、さらには45以上80以下であることが好ましい。このような範囲であれば、遮熱性に優れ、装飾層の模様や色調等を活かすことができる。
【0031】
透明層の色相は、色彩色差計にて測定することができ、CIE1976L色空間におけるa値、b値より評価することができる。すなわち、a値とb値が0に近いほど、より無彩色の色相と評価できる。具体的には、2種以上混合したときのa値、b値と、1種のみ混合したときのa値、b値を比較することにより、評価できる。
本発明では特に、a値とb値が、{(a+(b1/2が、30以下、さらには20以下、さらには15以下であることが好ましい。
【0032】
透明層の透明性は、装飾層の模様や色調が見える程度であればよい。具体的に、透明層の透明性は、色彩色差計にて隠蔽率を測定することにより評価することができる。測定は、JIS K 5600−4−1「塗料一般試験方法(隠ぺい力)」方法B(隠ぺい率試験紙)に準じて測定すればよい。本発明では、特に、隠蔽率が、60%以下、さらには50%以下であることが好ましい。
【0033】
なお、透明層の明度、色相、透明性は、いずれも、コーティング材を隠蔽率試験紙上に、乾燥膜厚が40μmとなるように塗付し、乾燥させたものを試験片として測定すればよい。このうち、明度、色相については、黒色の下地部分を対象に測定を行う。
【0034】
本発明の透明層の厚さは、用途により適宜選択すればよいが、通常は0.01mm以上0.5mm以下、さらには0.02mm以上0.3mm以下程度である。
【0035】
<装飾層>
本発明の装飾層としては、多色模様及び/または凹凸模様を有するものであれば特に限定されず適用することができる。なお、本発明でいう多色模様とは、少なくとも2色以上の色彩が視認可能な状態で混在する模様のことである。また、凹凸模様とは、概ね0.2〜5mm程度の高低差を有する表面模様のことである。
このような装飾層は、例えば、石材調仕上塗材、JIS K5667の多彩模様塗料、JIS A6909の薄付け仕上塗材・厚付け仕上塗材等の装飾性塗材から形成される装飾層が挙げられる。
【0036】
〔石材調仕上塗材〕
石材調仕上塗材は、骨材の発色によって多色模様が形成可能な塗材であり、構成成分として結合材及び骨材を必須成分とする塗材である。
【0037】
結合材としては、例えば、水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶剤可溶型樹脂、非水分散型樹脂、無溶剤型樹脂、粉末樹脂等が挙げられ、特に水分散性樹脂(合成樹脂エマルション)を含む態様が好適である。また、樹脂の種類としては、特に限定されないが、例えば、シリコン樹脂、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルウレタン樹脂、フッ素樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、バイオガム、ガラクトマンナン誘導体、アルギン酸誘導体、セルロース誘導体等を使用することができる。また、これらは、硬化剤や硬化触媒によって架橋可能なものであってもよい。
【0038】
骨材としては、通常、粒子径0.05〜5mmの骨材を使用する。かかる骨材としては、自然石、自然石の粉砕物等の天然骨材、及び着色骨材等の人工骨材から選ばれる少なくとも1種以上を好適に使用することができる。具体的には、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、石灰石、珪石、珪砂、砕石、雲母、珪質頁岩、及びこれらの粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、ゴム粒、金属粒等が挙げられる。また、貝殻、珊瑚、木材、炭、活性炭等の粉砕物を使用することもできる。さらに、これらの表面を、顔料、染料、釉薬等で表面処理を行うことにより着色コーティングしたもの等も使用できる。このような骨材の2種以上を適宜組み合せて使用することにより、種々の多色模様を表出することができる。
骨材は、結合材の固形分100重量部に対し、通常100〜4000重量部、好ましくは150〜3000重量部、より好ましくは200〜2000重量部の比率で混合する。骨材の混合比率がこのような範囲内であれば、形成塗膜の意匠性、ひび割れ防止性等の点において好適である。
【0039】
石材調仕上塗材には、上記以外の成分を混合することができる。このような成分としては、例えば、着色顔料、体質顔料、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、撥水剤、架橋剤、紫外線吸収剤、艶消し剤、酸化防止剤、触媒、調湿剤、低汚染化剤、難燃剤、不燃剤等が挙げられる。また本発明の効果が損われない範囲内において、着色顔料、体質顔料、骨材等を混合してもよい。
【0040】
石材調仕上塗材によって装飾層を形成する場合は、例えば、スプレー、ローラー、コテ、刷毛、レシプロ、コーター、流し込み等の手段を用いることが可能であり、1種または2種以上の塗材を重ねて装飾層を形成してもよい。このような石材調仕上塗材では、種々の凹凸模様を付与することもできる。
【0041】
〔多彩模様塗料〕
多彩模様塗料は、液状またはゲル状の2色以上の色粒が分散媒に懸濁したものである。これらは(1)水中油型(O/W型)、(2)油中水型(W/O型)、(3)油中油型(O/O型)、(4)水中水型(W/W型)に分類することができる。このうち、水中油型(O/W型)及び水中水型(W/W型)の多彩模様塗料については、いずれも分散媒が水性であり、環境面等において好ましいものである。
【0042】
多彩模様塗料における色粒は、結合材と着色顔料、及び必要に応じ各種添加剤等を含む着色塗料が、分散媒中に粒状に分散されたものである。
【0043】
結合材としては、例えば、〔石材調仕上塗材〕において例示したものと同様のものが使用できる。
【0044】
なお、上記樹脂が溶剤可溶型樹脂及び/または非水分散型樹脂である場合は、溶剤型着色塗料が得られ、これを水性分散媒に分散させると水中油型(O/W型)の多彩模様塗料となる。また、上記樹脂が水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂である場合は、水性着色塗料が得られ、これを水性分散媒に分散させると水中水型(W/W型)の多彩模様塗料となる。
【0045】
着色塗料中の着色顔料としては、一般的に塗料に配合可能なものを使用することができる。具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、オーカー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、アルミニウム顔料、パール顔料等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0046】
着色塗料においては、公知の塗料用添加剤を適宜使用することができる。このような添加剤としては、例えば、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、撥水剤、架橋剤、紫外線吸収剤、艶消し剤、酸化防止剤、触媒、調湿剤、低汚染化剤、難燃剤、不燃剤等が挙げられる。また本発明の効果が著しく損われない範囲内において、金属酸化物被覆粒子が含まれていてもよい。
【0047】
着色塗料を粒状に分散させる方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。具体的には、分散安定剤等を含む水性分散媒に、着色塗料を分散させる方法等を採用することができる。
分散安定剤は、着色塗料を粒状に安定化せしめる成分であり、着色塗料の種類等に応じて選定することができる。分散安定剤の具体例としては、例えば、着色塗料の架橋剤として作用する成分等が挙げられる。このような成分としては、例えば、エポキシ類、イソシアネート類、アミン類、アルコシシシラン類、有機チタネート類、アルミニウムキレート類、マグネシウム塩類、カルシウム塩類、バリウム塩類、アルミニウム塩類、ナトリウム塩類、カリウム塩類、ホウ酸塩類、リン酸塩類等が挙げられる。この他、分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキサイド、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、セルロースアセテートフタレート、ベントナイト、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ペクチン、キサンタンガム、澱粉等を使用することもできる。
【0048】
色粒の粒子径や形状は、適宜設定することができる。具体的には、製造時における攪拌羽根の形状、攪拌槽に対する攪拌羽根の大きさや位置、攪拌羽根の回転速度、着色塗料の粘性、分散安定剤の添加方法や濃度、水性分散媒の粘性等を適宜選択・調整すればよい。
色粒の粒子径は、特に限定されないが、通常0.01〜10mm(好ましくは0.1〜5mm)程度である。
【0049】
多彩模様塗料によって装飾層を形成する場合は、スプレー、ローラー、刷毛等の手段を用いることができる。
【0050】
〔薄付け仕上塗材・厚付け仕上塗材〕
JIS A6909に規定されている薄付け仕上塗材・厚付け仕上塗材は、結合材と、これに着色顔料、体質顔料、骨材、及びその他混和剤(増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、撥水剤、架橋剤、紫外線吸収剤、艶消し剤、酸化防止剤、触媒、調湿剤、低汚染化剤、難燃剤、不燃剤等)を均一に混合して得ることができるものである。
【0051】
結合材としては、例えば、〔石材調仕上塗材〕において例示したものと同様のものが使用できる。
【0052】
着色顔料としては、例えば、〔多彩模様塗料〕において例示したものと同様のものが使用できる。着色顔料の混合比率は、結合材の固形分100重量部に対し、通常1〜300重量部(好ましくは2〜200重量部)程度である。
【0053】
体質顔料は、主に増量剤として作用するものであり、厚膜の塗膜形成に有効にはたらく成分である。体質顔料の具体例としては、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、含水微粉珪酸、タルク、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、水酸化アルミニウム等が挙げられる。かかる体質顔料の粒子径は、通常50μm未満(好ましくは0.5μm以上50μm未満)である。体質顔料の混合比率は、結合材の固形分100重量部に対し、通常10〜1000重量部(好ましくは20〜500重量部)程度である。
【0054】
骨材としては、例えば、〔石材調仕上塗材〕において例示したものと同様のものが使用できる。骨材の混合比率は、結合材の固形分100重量部に対し、通常10〜2000重量部(好ましくは30〜1500重量部)程度である。
【0055】
このような塗材においては、種々の凹凸模様、例えば砂壁状、ゆず肌状、繊維壁状、さざ波状、スタッコ状、凹凸状、月面状、櫛引状、虫喰状等の模様を形成することができる。
【0056】
装飾層としては、さらに、断熱性及び/または赤外線反射性を付与したものでもよい。
【0057】
装飾層に断熱性を付与することにより、熱の伝導を抑えることができ、積層体裏面の温度上昇を抑え、遮熱性を向上させることができる。
断熱性を付与する方法としては、例えば、装飾層中に空隙部分をつくる方法等が挙げられる。例えば、記装飾性塗材の構成成分として、中空粒子及び/または多孔質粒子等を混合することにより、装飾層中に空隙部分をつくることができ、断熱性を付与した、断熱装飾層を得ることができる。
【0058】
中空粒子としては、例えば、中空セラミック粒子、中空樹脂粒子等が挙げられる。中空セラミック粒子を構成するセラミック成分としては、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、フライアッシュ、アルミナ、シラス、黒曜石等が挙げられる。中空樹脂粒子を構成する樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂、アクリル−アクリロニトリル共重合樹脂、アクリル−スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、アクリロニトリル−メタアクリロニトリル共重合樹脂、アクリル−アクリロニトリル−メタアクリロニトリル共重合樹脂、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合樹脂等が挙げられる。中空粒子は、これらの成分を公知の方法で発泡させることにより得られる。中空粒子の平均粒子径は通常0.1〜200μm(好ましくは1〜150μm)程度である。また、中空粒子の密度は通常0.01〜1g/cm(好ましくは0.01〜0.8g/cm)程度である。
【0059】
多孔質粒子としては、例えば、シリカゲル、ゼオライト、硫酸ナトリウム、アルミナ、アロフェン、珪藻土、珪質頁岩、セピオライト、アタバルジャイト、モンモリロナイト、ゾノライト、イモゴライト、大谷石粉、活性白土、炭、活性炭、木粉、多孔質樹脂粒子等が挙げられる。このうち、多孔質樹脂粒子としては、ウレタンフォーム、スチレンフォーム等の粉砕物等が使用できる。多孔質粒子の平均粒子径は通常0.1〜5.0mm程度である。また、多孔質粒子の比表面積は100m/g以上であることが好ましい。なお、比表面積は、BET法により測定される値である。
【0060】
装飾層に赤外線反射性を付与することにより、透明層の赤外線反射効果とあいまって、より優れた赤外線反射性を付与でき、遮熱性を向上させることができる。
赤外線反射性を付与する方法としては、例えば、上記装飾性塗材の構成成分として、赤外線反射粉体等を混合する方法等が挙げられる。赤外線反射粉体等を混合することによって、赤外線反射性を付与した赤外線反射装飾層を得ることができる。
赤外線反射粉体としては、例えば、アルミニウムフレーク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、アルミナ、鉄−クロム複合酸化物、マンガン−ビスマス複合酸化物、マンガン−イットリウム複合酸化物、マンガン−鉄−コバルト複合酸化物、ペリレン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、弁柄、朱、チタニウムレッド、カドミウムレッド、イソインドリノン、イソインドリン、ベンズイミダゾロン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、コバルトブルー、インダスレンブルー、群青、紺青等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。また、前述の金属酸化物被覆粒子を用いることもできる。
【0061】
本発明の装飾層の厚さは、用途により適宜選択すればよいが、通常は0.05mm以上10.0mm以下、さらには0.1mm以上5.0mm以下程度である。
【0062】
さらに本発明の積層体は、装飾層、透明層とともに、断熱層、赤外線反射層、補強層から選ばれる1層以上が積層されていてもよい。
【0063】
<断熱層>
本発明において、断熱層を積層することにより、熱の伝導を抑え、積層体裏面の温度上昇を抑え、遮熱性を向上させることができる。
断熱層としては、例えば、中空粒子及び/または多孔質粒子、結合材等を含む断熱材料から形成されるもの等が挙げられる。
中空粒子、多孔質粒子、結合材は、前述したもの等を使用することができ、この他に、各種添加剤(増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、撥水剤、架橋剤、紫外線吸収剤、艶消し剤、酸化防止剤、触媒、調湿剤、低汚染化剤、難燃剤、不燃剤)を混合して、断熱材料を得ることができる。
また、この他に、着色顔料、体質顔料、骨材等を混合して装飾性を付与することもできるし、赤外線反射粉体を混合して赤外線反射性を付与することもできる。
また、断熱層として、ウレタンフォーム、スチレンフォーム等のフォーム材料を用いることもできる。
【0064】
本発明の断熱層の厚さは、用途により適宜選択すればよいが、通常は0.05mm以上10.0mm以下、さらには0.1mm以上5.0mm以下程度である。
【0065】
<赤外線反射層>
本発明において、赤外線反射層を積層することにより、透明層の赤外線反射効果とあいまって、より優れた赤外線反射性を付与でき、遮熱性を向上させることができる。
赤外線反射層としては、例えば、赤外線反射粉体、結合材等を含む赤外線反射材料から形成されるもの等が挙げられる。
赤外線反射粉体、結合材は、前述したもの等を使用することができ、この他に、各種添加剤(増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、撥水剤、架橋剤、紫外線吸収剤、艶消し剤、酸化防止剤、触媒、調湿剤、低汚染化剤、難燃剤、不燃剤)を混合して、赤外線反射材料を得ることができる。
また、この他に、着色顔料、体質顔料、骨材等を混合して装飾性を付与することもできるし、中空粒子及び/または多孔質粒子を混合して断熱性を付与することもできる。
【0066】
本発明の赤外線反射層の厚さは、用途により適宜選択すればよいが、通常は0.01mm以上3.0mm以下、さらには0.05mm以上2.0mm以下程度である。
【0067】
<補強層>
本発明において、補強層を積層することにより、積層体の強度、断熱性等が向上し、さらに後述するように下地基材に積層して用いる場合は、積層体のズレ防止、密着性等の効果も発揮することができる。
補強層としては、例えば、織布、不織布、メッシュ等の繊維質シート等が用いられる。
繊維としては、例えば、パルプ繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、PBO繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、塩化ビニル繊維、セルロース繊維、ロックウール、ガラス繊維、シリカ繊維、シリカ−アルミナ繊維、カーボン繊維、炭化珪素繊維等の繊維や、鉄、銅等の金属細線等が挙げられる。
【0068】
<積層体>
本発明の積層体は、装飾層と透明層を含むものであるが、さらに、断熱層、赤外線反射層、補強層等から選ばれる1層以上を含む3層以上の積層体でもよい。
このような積層体の積層構成は、本発明の効果が得られるものであれば、特に限定されないが、好ましい積層構成を実施の形態として次に示す。
【0069】
(実施の形態1)
実施の形態1としては、表面から順に、透明層、装飾層が積層された積層体である。
【0070】
(実施の形態2)
実施の形態2としては、表面から順に、透明層、装飾層、断熱層が積層された積層体である。
【0071】
(実施の形態3)
実施の形態3としては、表面から順に、透明層、装飾層、赤外線反射層が積層された積層体である。
【0072】
(実施の形態4)
実施の形態4としては、表面から順に、透明層、装飾層、補強層が積層された積層体である。
【0073】
(実施の形態5)
実施の形態5としては、表面から順に、透明層、装飾層、断熱層、補強層が積層された積層体である。
【0074】
(実施の形態6)
実施の形態6としては、表面から順に、透明層、装飾層、赤外線反射層、補強層が積層された積層体である。
【0075】
(実施の形態7)
実施の形態7としては、表面から順に、透明層、装飾層、断熱層、赤外線反射層が積層された積層体である。
【0076】
(実施の形態8)
実施の形態8としては、表面から順に、透明層、装飾層、赤外線反射層、断熱層が積層された積層体である。
【0077】
(実施の形態9)
実施の形態9としては、表面から順に、透明層、装飾層、補強層、赤外線反射層が積層された積層体である。
【0078】
(実施の形態10)
実施の形態10としては、表面から順に、透明層、装飾層、断熱層、補強層、赤外線反射層が積層された積層体である。
【0079】
(実施の形態11)
実施の形態11としては、表面から順に、透明層、装飾層、赤外線反射層、補強層、断熱層が積層された積層体である。
【0080】
(実施の形態12)
実施の形態12としては、表面から順に、透明層、装飾層、断熱層、赤外線反射層、補強層が積層された積層体である。
【0081】
(実施の形態13)
実施の形態13としては、表面から順に、透明層、装飾層、赤外線反射層、断熱層、補強層が積層された積層体である。
【0082】
(実施の形態14)
実施の形態14としては、表面から順に、透明層、装飾層、補強層、装飾層、補強層が積層された積層体である。
【0083】
なお、実施の形態1〜14は、表面から順に、透明層、装飾層が積層されたものであるが、装飾層が透明性を有するものである場合は、表面から順に、装飾層(透明性)、透明層が積層されたものでもよい。また、透明層と装飾層の間に、透明性を有する赤外線反射層が含まれていてもよい。
【0084】
積層体の製造方法としては、特に限定されず、湿式方法、乾式方法、またはそれらを組み合わせた方法で、適宜製造することができる。例えば、スプレー、ローラー、コテ、刷毛、レシプロ、コーター、流し込み等の手段を用いて、適宜製造することができ、温度等を調節して、硬化を促進させてもよい。
また、赤外線反射層、断熱層、補強層においても、同様の方法で適宜積層すればよい。
【0085】
本発明の積層体は、建築物・土木構造体の他、家電・車両等において好適に使用することができ、例えば、下地基材の上に積層して用いることができる。
下地基材としては、建築物・土木構造体、家電・車両等に用いられる材料であれば特に限定されないが、例えば、石膏ボード、合板、コンクリート、モルタル、磁器タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板、ALC板、サイディング板、押出成形板、鋼板、プラスチック板、木質板、ガラス板、ビニルシート、フィルム等が挙げられる。
【0086】
下地基材の上に積層体を積層する方法としては、特に限定されず、接着材等を介して下地基材の上に貼着する方法、また、例えば、下地基材の上に、前述した装飾性塗材を塗付積層して装飾層を形成し、さらにその上に、前述した透明被覆材を塗付積層して透明層を形成する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0087】
以下に実験例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0088】
(透明被覆材の製造)
表1、2に示す配合に従い、常法により各原料を均一に混合して透明被覆材を製造した。
【0089】
なお、各透明被覆材の隠蔽率、色相は次の通りである。
透明被覆材A:L値:49.9、a値:1.1、b値:−11.3、{(a+(b1/2:11.4、隠蔽率:50%未満
透明被覆材B:L値:50.3、a値:1.5、b値:−12.3、{(a+(b1/2:12.3、隠蔽率:50%未満
透明被覆材C:L値:63.3、a値:1.0、b値:−10.7、{(a+(b1/2:10.7、隠蔽率:50%未満
透明被覆材D:L値:51.9、a値:1.7、b値:−3.5、{(a+(b1/2:3.9、隠蔽率:50%未満
透明被覆材E:L値:50.2、a値:−0.3、b値:−8.4、{(a+(b1/2:8.4、隠蔽率:50%未満
透明被覆材F:L値:49.7、a値:1.4、b値:0.8、{(a+(b1/2:1.6、隠蔽率:50%未満
透明被覆材G:L値:67.7、a値:0.5、b値:−10.0、{(a+(b1/2:10.0、隠蔽率:50%未満
透明被覆材H:L値:67.9、a値:0.2、b値:−10.3、{(a+(b1/2:10.3、隠蔽率:50%未満
透明被覆材I:L値:68.0、a値:0.1、b値:−10.4、{(a+(b1/2:10.4、隠蔽率:50%未満
透明被覆材J:L値:68.1、a値:−0.2、b値:−9.5、{(a+(b1/2:9.5、隠蔽率:50%未満
透明被覆材K:L値:44.8、a値:1.4、b値:−5.0、{(a+(b1/2:5.2、隠蔽率:50%未満
透明被覆材L:L値:38.7、a値:−0.4、b値:−1.4、{(a+(b1/2:1.5、隠蔽率:50%未満
透明被覆材M:L値:81.7、a値:−1.7、b値:−3.5、{(a+(b1/2:3.9、隠蔽率:50%以上
透明被覆材N:L値:50.1、a値:−2.2、b値:−5.6、{(a+(b1/2:6.0、隠蔽率:50%未満
透明被覆材O:L値:31.3、a値:21.3、b値:−17.4、{(a+(b1/2:27.5、隠蔽率:50%未満
透明被覆材P:L値:31.3、a値:4.4、b値:−27.5、{(a+(b1/2:27.8、隠蔽率:50%未満
透明被覆材Q:L値:45.4、a値:−13.6、b値:0.3、{(a+(b1/2:13.6、隠蔽率:50%未満
透明被覆材R:L値:48.7、a値:−2.5、b値:21.5、{(a+(b1/2:21.6、隠蔽率:50%未満
透明被覆材S:L値:36.5、a値:15.6、b値:1.8、{(a+(b1/2:15.7、隠蔽率:50%未満
透明被覆材T:L値:21.5、a値:0.2、b値:0.8、{(a+(b1/2:0.8、隠蔽率:50%未満
【0090】
なお、隠蔽率、色相の測定は、隠蔽率試験紙の上に、各透明被覆材を、フィルムアプリケータにて、乾燥膜厚が40μmとなるように塗付し、温度23℃、湿度50%RH下(以下「標準状態」ともいう。)で、48時間養生して試験体とし、
色彩色差計「CR−300」(ミノルタ株式会社製)を用いて、試験体における黒地上塗膜と白地上塗膜の視感反射率を測定することによって隠蔽率を、黒地上塗膜の視感反射率を測定することによってL値、a値、b値を算出した。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
(実施例1)
ガラス不織布(厚み0.4mm、坪量50g/m)の上に、装飾性塗材Aを5.0kg/mで塗工し、さらに透明被覆材Aを0.1kg/mで塗工し、80℃下で60分間乾燥させ、積層体(装飾層の厚さ:3.5mm、透明層の厚さ:40μm)を得た。
得られた積層体を400mm×200mmに切り取り、スレート板(400mm×200mm×6mm)の上に、アクリル系接着剤を用いて、積層体のガラス不織布面を貼着し、試験体を得た。得られた試験体は、装飾層(装飾性塗材A)の意匠が明確であり、優れた意匠性を有していた。
装飾性塗材A:アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部、水150重量部、着色骨材(黄色系着色珪砂:赤色系着色珪砂=50:50(重量比)、平均粒子径50〜500μm)600重量部、中空ガラス粒子(平均粒子径40μm、密度0.45g/cm)4重量部、増粘剤5重量部、分散剤2重量部、泡消剤5重量部
また、得られた試験体について、次の試験を行った。
【0095】
(1)遮熱性試験
得られた試験体に対し、赤外線ランプ(250W)を40cmの距離から照射し、照射1時間後の試験体裏面温度を接触式温度計を用いて測定した。評価は、ブランク(比較例10)を基準とし、温度が最も低いものをAとし、以下順に、A´、B、B´、C、C´、そして、ブランクとかわらないもの、あるいはブランクより温度が高くなったものをD、として行った。結果を表3に示す。
【0096】
(実施例2〜10、比較例1〜10)
表3に示す透明被覆材以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、実施例1と同様の試験を行った。結果は表3に示す。
実施例2〜10では、装飾性塗材Aによる意匠が明確であり、優れた意匠を示した。
比較例1、3は、白みがかかり、装飾性塗材Aの意匠がぼやけてしまった。
比較例5〜9は、金属酸化物被覆粒子のそれぞれのカラーが認識されてしまい、装飾性塗材本来の色彩がぼやけてしまった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾層と透明層を含む積層体であって、
透明層が、バインダーと、有彩色の干渉色を示す2種以上の金属酸化物被覆粒子を含み、該金属酸化物被覆粒子の組み合わせによる加法混色により、高明度の干渉色を呈することを特徴とする積層体。
【請求項2】
透明層のバインダーが、アクリル成分及びシリコン成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
装飾層が、断熱性及び/または赤外線反射性を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
さらに、断熱層、赤外線反射層、補強層から選ばれる1層以上が積層されてなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の積層体。



【公開番号】特開2011−93310(P2011−93310A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212996(P2010−212996)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(599071496)ベック株式会社 (98)
【Fターム(参考)】