説明

積層体

【課題】プラスチック基材の片面上に蒸着薄膜層と、極薄の接着層と、シーラント層が順次積層された積層体で、強浸透性内容物であってもラミネート強度が低下せず、高度なガスバリア性を有する包装体を形成することができる積層体の提供を目的とする。
【解決手段】プラスチック基材と該プラスチック基材の少なくとも片面上に、無機酸化物からなる蒸着薄膜層と、接着層と、シーラント層が順次積層された積層体であって、前記接着層が2官能以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と金属アルコキシドを含む組成物からなり、該組成物中におけるイソシアネート化合物と金属アルコキシドとの比(イソシアネート化合物/金属アルコキシド)が、99/1〜60/40(重量比)で、且つ、前記接着層にフッ素系界面活性剤を50〜1000重量ppm含有することを特徴とする積層体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック基材の少なくとも片面上に無機酸化物からなる蒸着薄膜層を有する積層基材上に、少なくとも接着層とシーラント層が順次積層されてなる積層体であって、特に、優れたラミネート強度を有し、かつ揮発性物質が含まれている各種強浸透性内容物が作用してもプラスチック基材上の蒸着薄膜層とシーラント層間のラミネート強度が低下せず、さらには高度なガスバリア性を有することを特徴とする積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や医薬品などを包装するための包装材料として、例えば、層構成が、紙層/ポリエチレン層/アルミ箔層/ポリエステル層/シーラント層となっている積層体が広く使用されている。このような積層体のポリエステル層とシーラント層との貼り合わせは、通常はポリエステルフィルム上に二液硬化型ポリウレタン系のアンカーコート剤を塗布してから、シーラント層を押出ラミネートすることにより行っていた。そして、このような積層体は適度のラミネート強度やガスバリア性を有しており、食品や医薬品などを包装するための包装材料として広く使用されている。
【0003】
しかしながら、上述のような構成の積層体を包装材料として用い、例えば酸性物質、アルカリ性物質、香料、界面活性剤、有機溶剤などの揮発性物質を包装した場合、揮発性物質の強い浸透力によってアンカーコート剤が悪影響を受け、プラスチック基材とシーラント層間のラミネート強度が経時で低下し、その結果デラミネーション(剥離)を引き起こすことがあった。
【0004】
このようなデラミネーションは、前述したような構成の積層体の製造工程におけるラミネート加工に際して使用されるアンカーコート剤、例えばポリエステルポリオールなどの主剤とイソシアネート化合物からなる硬化剤を配合した二液硬化型ポリウレタン系のアンカーコート剤からなる接着層に、上記のような強浸透性内容物が浸透して、接着層の主剤樹脂成分の膨潤や分子量の低下が生じ、その結果、接着層の凝集力が低下して起きるものと考えられる。
【0005】
このような状況の下、プラスチック基材上に少なくとも接着層を介してシーラント層が設けられてなる積層体において、揮発性物質が含まれている各種強浸透性内容物が作用しても、プラスチック基材とシーラント層間のラミネート強度が低下しない、包装材用途に好適に使用できる積層体の開発が強く望まれている。
【0006】
上記のような積層体の開発として、例えば、その接着層を構成する接着剤が、イソシアネート化合物および金属アルコキシドを含む組成物からなり、該組成物中におけるイソシアネート化合物と金属アルコキシドとの比(イソシアネート化合物/金属アルコキシド)が、99/1〜60/40であることにより、揮発性物質が含まれている各種強浸透性内容物に対しても、プラスチック基材上の蒸着薄膜層とシーラント層間のラミネート強度が低下しない積層体の提案がある。(特許文献1参照)
【0007】
しかし、上述のような接着剤を極薄で塗布すると、プラスチック基材上の蒸着薄膜層に対するレベリング性(濡れ性)が悪く、不均一な接着層が形成され、十分なラミネート強度が得られる部分とそうでない部分がランダムに存在するようになり、均一なラミネート強度が得られないことがあった。
【0008】
一般に、レベリング性(濡れ性)の改善策としては、接着剤に界面活性剤を添加する手
法が用いられる。しかしながら、特許文献1のイソシアネート化合物と金属アルコキシドとの混合物からなる接着剤では、希釈溶剤として酢酸エチルを用いている為、本来水系で用いられる陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができず、その結果、接着剤の極薄な均一塗布に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−94051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来の問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、プラスチック基材の少なくとも片面上に無機酸化物からなる蒸着薄膜層と、接着層と、シーラント層が順次積層された積層体であって、特に、接着層が極薄均一で、且つ、初期ラミネート強度と、各種強浸透性内容物の充填後のラミネート強度に優れた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、本発明の請求項1に係る発明は、プラスチック基材と、該プラスチック基材の少なくとも片面上に、無機酸化物からなる蒸着薄膜層と、接着層と、シーラント層が順次積層された積層体であって、前記接着層が2官能以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と金属アルコキシドを含む組成物からなり、該組成物中におけるイソシアネート化合物と金属アルコキシドとの比(イソシアネート化合物/金属アルコキシド)が、99/1〜60/40(重量比)で、且つ、前記接着層にフッ素系界面活性剤を50〜1000重量ppm含有することを特徴とする積層体である。
【0012】
本発明の請求項2に係る発明は、前記2官能以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物が、2官能のイソシアネートモノマー、またはそのアダクト、ビューレット、イソシアヌレートタイプの3官能化させたモノマーの誘導体のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の積層体である。
【0013】
本発明の請求項3に係る発明は、前記金属アルコキシドの金属が、ケイ素、アルミニウム、チタン、またはジルコニウムであることを特徴とする請求項1記載の積層体である。
【0014】
本発明の請求項4に係る発明は、前記金属アルコキシドが、シランカップリング剤であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の積層体である。
【0015】
本発明の請求項5に係る発明は、前記接着層の厚みが0.005μm〜1μmであることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の積層体である。
【0016】
本発明の請求項6に係る発明は、前記シーラント層が、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層体である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の積層体は、非常に薄く緻密な接着層を形成することができるため、酸性物質、アルカリ性物質、香料、界面活性剤、有機溶剤などの強浸透性内容物用の包装材料として使用してもプラスチック基材上の蒸着薄膜層とシーラント層間のラミネート強度が低下す
ることがない優れた品質を保持し、且つ、生産性向上と低コスト化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の積層体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図1に従って詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の実施の形態を示す積層体の断面図である。本発明の積層体は、プラスチック基材(1)の少なくとも片面上に無機酸化物からなる蒸着薄膜層(2)と、接着層(3)と、シーラント層(4)が順次積層されたものであり、接着層(3)が2官能以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と金属アルコキシドを含む組成物からなり、
該組成物中におけるイソシアネート化合物と金属アルコキシドとの比(イソシアネート化合物/金属アルコキシド)が、99/1〜60/40(重量比)で、且つ、前記接着層にフッ素系界面活性剤を50〜1000重量ppm含有することを特徴とするものである。
【0021】
<プラスチック基材>
本発明に係るプラスチック基材(1)としては、ポリエステルフィルムのノーマルタイプ、共重合タイプ、易接着タイプのものや、ナイロンフィルムのノーマルタイプ、易接着タイプのもの、あるいはポリプロピレンフィルムの未静防タイプ、静防タイプのものなど、様々なタイプのものが使用可能である。
【0022】
また、脂肪族ポリエステルフィルムや脂肪族芳香族ポリエステルフィルムも使用可能である。さらに、プラスチック基材の構成材料としては、乳酸を主成分とするポリマー、例えば、乳酸のみからなるホモポリマーや、乳酸を主成分とし乳酸以外のモノマー、例えばリンゴ酸、グリコール酸などのオキシ酸、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシヴァリレート、カプロラクトン、およびコハク酸、アジピン酸などのジカルボン酸類とエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのジオール類などを共重合したコポリマー、あるいはこれらの混合物などが使用可能である。それに加えて、コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸などのジカルボン酸類と、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのジオール類との共重合体、例えばテレフタル酸を有するポリエチレンテレフタレート−サクシネート、ポリブチレンアジペート−テレフタレート、ポリテトラメチレンアジペート−テレフタレートなども使用可能である。
【0023】
上記プラスチック基材は、無機酸化物からなる蒸着薄膜層が安定的に形成できるための前処理として、コロナ処理やプラズマ処理などの表面処理がなされていればより好ましい。
【0024】
また、蒸着薄膜層との密着性を良くするための表面処理が、予め施されてないプラスチック基材を用いる場合には、蒸着薄膜加工の前に、該プラスチック基材にコロナ処理、低圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、フレーム処理、イオンボンバード処理などの表面処理、さらには薬品処理、溶剤処理などの表面処理をすることができる。また、必要に応じて無機化合物を有する蒸着用プライマーの薄膜をプラスチック基材上に設けておいてもよい。さらに、金属箔並の高度なガスバリア性を付与するために蒸着薄膜層上に無機化合物を有するガスバリア性被膜層を設けてもかまわない。
【0025】
特に、非常に過酷な揮発性物質が含まれている強浸透性内容物の用途には、前記プラスチック基材と蒸着薄膜層との密着性をより良くするためにプラスチック基材上に無機化合物を有する蒸着用プライマーを設けた積層体を使用することが好ましい。さらに、金属箔
並の高度なガスバリア性が必要な用途には、前記蒸着薄膜層上に無機化合物を有するガスバリア性被膜層を設けた積層体を使用することが好ましい。
【0026】
<蒸着薄膜層>
前記無機酸化物からなる蒸着薄膜層は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化錫などの単体や、あるいはそれらの混合物からなり、酸素や水蒸気などに対するガスバリア性を有するものであればよい。中でも酸化アルミニウム、酸化ケイ素、および酸化マグネシウムは、酸素透過率および水蒸気透過率に優れる点で、特に好ましい。
【0027】
<接着層>
前記プラスチック基材上の無機酸化物からなる蒸着薄膜層(2)に積層される接着層(3)は、厚みが0.005μm〜1μmであって、2官能以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と金属アルコキシドと、フッ素系界面活性剤の混合からなる接着剤組成物である。
【0028】
接着層(3)中の2官能以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物は、例えばシーラント層のような有機物に対する接着に優れる。イソシアネート化合物が1官能では、接着に関与する官能基量が少なすぎるため、その結果、接着性が劣る。また、金属アルコキシドは、例えば蒸着薄膜層のような無機物に対する接着に優れている。従って、接着層がイソシアネート化合物のみの場合、プラスチック基材上の蒸着薄膜層と接着層間のラミネート強度が弱く十分な初期強度が得られない。一方、接着層が金属アルコキシドのみの場合、接着層とシーラント層間のラミネート強度が弱く十分な初期強度が得られない。
【0029】
上述のイソシアネート化合物と金属アルコキシドとの混合の比(イソシアネート化合物/金属アルコキシド)は、発明者等の鋭意努力の結果、99/1〜60/40、より好ましくは99/1〜70/30、さらに好ましくは99/1〜80/20がよいことが分った。
【0030】
前記イソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその水素添加体などの各種ジイソシアネート系モノマーなどが挙げられる。また、これらのジイソシアネートモノマーを、トリメチロールプロパンやグリセロールなどの3官能の活性水素含有化合物と反応させたアダクトタイプや、水と反応させたビューレットタイプや、イソシアネート基の自己重合を利用したトリマー(イソシアヌレート)タイプなど3官能性の誘導体や,それ以上の多官能性の誘導体を使用することができる。
【0031】
前記金属アルコキシドの金属としては、ケイ素、アルミニウム、チタン、またはジルコニウムを使用することが可能である。具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリメトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドなどが挙げられる。以上のように金属アルコキシドには種々あるが、取り扱い性、コストなどを考えればケイ素のアルコキシドがより好ましく使用可能で、テトラアルコキシドに限定されることはなく、イソシアネート基、エポキシ基、またはアミノ基などを含有するシランカップリング剤を適宜選定して使用するのがより好ましい。シランカップリング剤の作用効果としては、例えばシーラント層のような有機物、および蒸着薄膜層のような無機物の双方に対しての接着が期待できる。
【0032】
<フッ素系界面活性剤>
本発明に係るフッ素系界面活性剤は、分子構造中に疎水基と親水基の両方を有し、該疎水基が完全にフッ素化されたフルオロカーボン鎖(パーフルオロカーボン鎖)を有する化合物である。また、アニオンタイプ、ノニオンタイプ、カチオンタイプ、両性タイプのいずれのタイプも使用可能である。具体的には、フルオロアルキル(C2〜10)カルボン酸、3−[フルオロアルキル(C6〜11)オキシ]−1−アルキル(C3〜4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜20)カルボン酸、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、N−[3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜13)、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、パーフルオロアルキル(C4〜12)スルホン酸塩(Li,K,Na)、パーフルオロアルキル(C6〜10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜10)−N−エチルスルホニルグリシン塩(K)、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)、モノパーフルオロアルキル(C6〜16)エチルリン酸エステル、など様々なものが挙げられる。中でも本発明に係る接着剤の希釈溶剤として酢酸エチルが使用されることから、酢酸エチルに溶解するフッ素系界面活性剤がより好ましい。
【0033】
上記フッ素系界面活性剤は、他の液体に比べて表面張力が非常に小さいため、物体の表面で薄く広がる傾向がある。また、上記フッ素系界面活性剤は接着剤の希釈溶剤として用いる酢酸エチルにも、一部のものを除いてほとんど溶解することから、本発明の接着剤に極少量の添加することで、蒸着薄膜層(2)に対する接着剤のレベリング性(濡れ性)を格段に向上させることができ、さらに、接着剤を極薄に塗布しても、均一な接着層(3)の形成が可能となる。
【0034】
また、フッ素系界面活性剤の添加量は、接着層を構成するイソシアネート化合物と金属アルコキシドとの混合物に対して、固形分比50〜1000重量ppmであればよいが、50〜500重量ppm程度であればより好ましい。50重量ppm未満の添加では、プラスチック基材上の蒸着薄膜層に対する接着層のレベリング性(濡れ性)を向上させるのには不十分である。一方、1000重量ppmを超える添加は、プラスチック基材上の蒸着薄膜層に対する接着層のレベリング性(濡れ性)を向上させるのには過剰な添加量であり、また反応後に接着層の凝集力低下に繋がる。
【0035】
このような構成の接着層は、プラスチック基材上の蒸着薄膜層上に、2官能以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と金属アルコキシドとの混合物と、この混合物に対して固形分比50〜1000重量ppmのフッ素系界面活性剤とからなる塗工液を、酢酸エチルを希釈溶剤として用い、その固形分割合を0.01〜3重量%、好ましくは0.05〜2重量%の割合の塗工液を塗工して薄膜を設ければよい。具体的には接着層の乾燥時の厚みが0.005μm〜1μmであれば良い。接着層の厚みが0.005μm未満だと、接着剤の塗布膜厚の均一制御に限界があり、好ましくは0.01〜0.5μmがよい。
【0036】
<シーラント層>
一方、接着層上に積層されるシーラント層(4)としては、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂からなる層を具体的な例として挙げることができる。上記ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂は、優れた加工性や安価なコストなどの点で好ましい。このようなシーラント層の形成材料としては、さらに、高密度ポ
リエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体などのエチレン系樹脂や、ホモ・ブロック・ランダムの各ポリプロピレン樹脂や、プロピレン−αオレフィン共重合体などのプロピレン系樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体やエチレン−メタクリル酸共重合体などのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチルやエチレン−アクリル酸エチルやエチレン−メタクリル酸メチルやエチレン−メタクリル酸エチルなどのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のエステル化物、カルボン酸部位をナトリウムイオン、亜鉛イオンで架橋した、エチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−無水マレイン酸グラフト共重合体やエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸のような三元共重合体に代表される酸無水物変性ポリオレフィン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などのエポキシ化合物変性ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる樹脂の単体あるいは2種以上のブレンド物などが具体的に挙げられる。
【0037】
また、脂肪族ポリエステルや脂肪族芳香族ポリエステルも使用可能である。より具体的な例としては、コハク酸、アジピン酸などのジカルボン酸類と、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのジオール類との共重合体(例えば、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート−アジペート)、微生物産生のポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート−ヴァリレート、ポリヒドロキシブチレート−ヘクサノエート、乳酸、リンゴ酸、グリコール酸などのオキシ酸の重合体またはこれらの共重合体、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトン−ブチレンサクシネート、アミド結合を有するポリエステル、カーボネート結合を有するポリエステルなどの脂肪族ポリエステル、あるいはテレフタル酸を有するポリエチレンテレフタレート−サクシネート、ポリブチレンアジペート−テレフタレート、ポリテトラメチレンアジペート−テレフタレートなどの脂肪族芳香族ポリエステルから選ばれる樹脂の単体あるいは2種以上のブレンド物などが挙げられる。これらの構成材料には、必要に応じて各種添加剤(酸化防止剤、粘着付与剤、充填剤、各種フィラーなど)を添加してもかまわない。
【0038】
本発明の積層体において、蒸着薄膜層を有するプラスチック基材およびシーラント層としてともに脂肪族ポリエステルまたは脂肪族芳香族ポリエステルを使用すると、高度なガスバリア性と強浸透性内容物耐性だけでなく、生分解性機能も併せ持つこととなる。このとき蒸着薄膜層を有するプラスチック基材とシーラント層間に存在する接着層は生分解性を有していないが、接着層の厚みが0.005μm〜1μmの非常に薄い層であるために積層体の生分解性を阻害することはない。
【0039】
以上、本発明に係る積層体について説明したが、本発明の積層体は上記のような層構成のものに限定されるものではなく、包装材料としての用途を考慮し、包装材料として要求される剛性や耐久性などを向上させる目的で、他の層を介在させた構成であってもかまわない。
【0040】
そして、このような構成の積層体は、例えば、プラスチック基材上の蒸着薄膜層上に、2官能以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と金属アルコキシドとの混合物と、この混合物に対して固形分比50〜1000重量ppmのフッ素系界面活性剤を加えて、更に、全固形分比が0.01〜3重量%になるように酢酸エチルを加えて調製した接着剤を用いて、乾燥後の接着層の厚みが0.005μm〜1μmとなるように、押出ラミネート機で塗布、乾燥し、続いて、Tダイからポリエチレン等を押し出してシーラント層を積層することにより得ることができる。
【0041】
上述した一例の方法等で本発明の積層体を作製することにより、プラスチック基材上の蒸着薄膜層と接着層間、および接着層とシーラント層間の初期のラミネート強度が良好で、かつ揮発性物質が含まれている各種強浸透性内容物を充填しても、プラスチック基材上の蒸着薄膜層と接着層間、および接着層とシーラント層間のラミネート強度が低下しないパウチが形成を得ることができる。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例をもって本発明の詳細な説明をする。
【0043】
(実施例1)
プラスチック基材として一方の面にコロナ処理を施し、その面に酸化アルミニウム蒸着層を形成させた厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。次に、イソシアネート化合物としてイソホロンジイソシアネートモノマーを、金属アルコキシドとしてテトラエトキシシランを、95/5(重量比)となるよう混合し、これらに対して固形分比が50重量ppmのパーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミドを加え、さらに、全固形分比を0.5重量%となるように酢酸エチルを加えて接着剤を調整した。
【0044】
次に、前記酸化アルミニウム蒸着層上に前記該接着剤を塗工して接着層を形成させ、オーブンにて乾燥後、その上にシーラント層として厚み40μmの低密度ポリエチレンをダイ下温度320℃、加工速度80m/minで押出ラミネート法により押し出して積層した。その後、50℃で3日間のエージングを施し、積層体を得た。接着層の乾燥後の厚みは45nmであった。
【0045】
(実施例2)
プラスチック基材として一方の面にコロナ処理を施し、その面に酸化アルミニウム蒸着層を形成させた厚み15μmのナイロンフィルムを用いた。次に、イソシアネート化合物としてトリレンジイソシアネートのアダクトタイプを、金属アルコキシドとしてアルミニウムトリイソプロポキシドを、90/10(重量比)となるよう混合し、これらに対して固形分比が50重量ppmのパーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミドを加え、全固形分比を0.5重量%となるように酢酸エチルを加えて接着剤を調整した。
【0046】
前記接着剤以外は実施例1と同様の方法で、積層体を得た。接着層の乾燥後の厚みは45nmであった。
【0047】
(実施例3)
プラスチック基材として一方の面にコロナ処理を施し、その面に酸化ケイ素蒸着層を形成させた厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。次に、イソシアネート化合物としてイソホロンジイソシアネートのアダクトタイプを、金属アルコキシドとしてチタニウムテトラエトキシドを、85/15(重量比)となるよう混合し、これらに対して固形分比が100重量ppmのN−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミドを加え、全固形分比を0.5重量%となるように酢酸エチルを加えて接着剤を調整した。
【0048】
前記接着剤を用いて、シーラント層の構成材料としてエチレン−メタクリル酸共重合体を用いた以外は実施例1と同様の方法で、積層体を得た。接着層の乾燥後の厚みは60nm、シーラント層を押出ラミネート法により接着層上に押し出して形成したときのダイ下温度は280℃であった。
【0049】
(実施例4)
プラスチック基材として一方の面にコロナ処理を施し、その面に酸化ケイ素蒸着層を形成させた厚み15μmのナイロンフィルムを用いた。次に、イソシアネート化合物としてキシリレンジイソシアネートのアダクトタイプを、金属アルコキシドとしてジルコニウムテトライソプロポシキドを、80/20(重量比)となるよう混合し、これらに対して固形
分比が200重量ppmのパーフルオロウンデカン酸を加え、全固形分比を0.5重量%となるように酢酸エチルを加えて接着剤を調整した。
【0050】
シーラント層の構成材料として亜鉛アイオノマーを用いた以外は実施例1と同様の方法で、積層体を得た。接着層の乾燥後の厚みは60nm、シーラント層を押出ラミネート法により接着層上に押し出して形成したときのダイ下温度は300℃であった。
【0051】
(実施例5)
プラスチック基材として一方の面にコロナ処理を施した厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。次に、その処理面に下記組成からなるプライマー層を塗布、乾燥した後、酸化アルミニウム蒸着層を形成した。
【0052】
[プライマーの組成]
A液のアクリルポリオールの水酸基に対してB液のイソシアネート基が当量となるよう混合し、この混合溶液の固形分比が2.0重量%となるように酢酸エチルで希釈したプライマーの組成物。
A液: 希釈溶媒(酢酸エチル)中、γ−イソシアネートプロピルトリメチルシラン
1.0重量%と、アクリルポリオール10重量%との混合溶液
B液: イソシアネート化合物であるXDIとIPDIの7/3(重量比)混合物
【0053】
次に、前記酸化アルミニウム蒸着層上に下記組成からなるガスバリア性コーティング剤を塗布、乾燥してガスバリア性被膜層を形成させた。
【0054】
[ガスバリア性コーティング剤の組成]
C液とD液を60/40(重量比)で混合したもの。
C液: テトラエトキシシラン10.4gに0.1N塩酸89.6gを加え、30分間攪拌し加水分解させた固形分3.0重量%(SiO換算)の加水分解溶液
D液: ポリビニルアルコール3.0重量%水/イソプロピルアルコール溶液(水/イソプロピルアルコール=90/10、重量比)
【0055】
次に、イソシアネート化合物としてヘキサメチレンジイソシアネートのビューレットタイプを、金属アルコキシドとしてイソシアネート系シランカップリング剤を、70/30(重量比)となるよう混合し、これらに対して固形分比が500重量ppmのペンタデカフルオロオクタン酸を加え、全固形分比を0.5重量%となるように酢酸エチルを加えて接着剤を調整した。
【0056】
次に、前記ガスバリア性被膜層上に、前記接着剤を用いて、シーラント層の構成材料としてランダムポリプロピレンを使用した以外は実施例1と同様の方法で、積層体を得た。接着層の乾燥後の厚みは85nm、シーラント層を押出ラミネート法により接着層上に押し出して形成したときのダイ下温度は275℃であった。
【0057】
(実施例6)
プラスチック基材として厚み15μmのポリ乳酸フィルムを用い、次に、蒸着層を酸化ケイ素にした以外は実施例5と同様の方法で蒸着層を形成した。
【0058】
次に、イソシアネート化合物としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートタイプを、金属アルコキシドとしてアミノ系シランカップリング剤を、60/40(重量比)となるよう混合し、これらに対して固形分比が1000重量ppmのヘプタフルオロブタン酸を加え、全固形分比を0.5重量%となるように酢酸エチルを加えて接着剤を調整した。
【0059】
次に、上記接着剤を用いて、シーラント層の構成材料としてポリブチレンサクシネートを用いた以外は実施例1と同様の方法で積層体を得た。接着層の乾燥後の厚みは85nm、シーラント層を押出ラミネート法により接着層上に押し出して形成したときのダイ下温度は280℃であった。
【0060】
(比較例1)
イソシアネート化合物としてトリレンジイソシアネートのアダクトタイプを、金属アルコキシドとしてテトラエトキシシランを、30/70(重量比)となるよう混合し、次に全固形分比を0.5重量%となるように酢酸エチルを加えて接着剤を調整し、それ以外は実施例1と同様の方法で、積層体を得た。
【0061】
(比較例2)
プラスチック基材として一方の面にコロナ処理を施し、その面に酸化アルミニウム蒸着層を形成させた厚み15μmのナイロンフィルムを用いた。
【0062】
次に、イソシアネート化合物としてイソホロンジイソシアネートのアダクトタイプを、金属アルコキシドとしてアルミニウムトリイソプロポキシドを、20/80(重量比)となるよう混合し、全固形分比が0.5重量%となるように酢酸エチルを加えて接着剤を調整した。それ以外は実施例1と同様の方法で、積層体を得た。
【0063】
(比較例3)
プラスチック基材として一方の面にコロナ処理を施し、その面に酸化ケイ素蒸着層を形成させた厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
【0064】
次に、キシリレンジイソシアネートのアダクトタイプの固形分比を0.5重量%となるように酢酸エチルを加えて接着剤を調整し、シーラント層の構成材料としてエチレン−メタクリル酸共重合体を使用した以外は実施例1と同様の方法で、積層体を得た。接着層の乾燥後の厚みは60nm、シーラント層を押出ラミネート法により接着層上に押し出して形成したときのダイ下温度は280℃であった。
【0065】
(比較例4)
プラスチック基材として一方の面にコロナ処理を施し、その面に酸化ケイ素蒸着層を形成させた厚み15μmのナイロンフィルムを用いた。次に、イソシアネート化合物としてトリレンジイソシアネートのアダクトタイプを、金属アルコキシドとしてイソシアネート系シランカップリング剤を、70/30(重量比)となるよう混合し、固形分比が0.5重量%となるように酢酸エチルを加えて接着剤を調整した。
【0066】
次に、シーラント層の構成材料としてランダムポリプロピレンを用いた以外は実施例1と同様の方法で、積層体を得た。接着層の乾燥後の厚みは85nm、シーラント層を押出ラミネート法により接着層上に押し出して形成したときのダイ下温度は275℃であった。
【0067】
<物性評価>
上記の実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた積層体を用いて、各種プラスチック基材とシーラント層間における初期のラミネート強度を測定した(表1参照)。その結果、比較例1〜4で得られた積層体はいずれも初期のラミネート強度が不均一で、パウチ形成に適する強度を有さず、以下のパウチ形成には至らなかった。一方、実施例1〜6で得られた積層体はいずれも初期のラミネート強度がパウチ形成に適した十分な強度を示した。
【0068】
次に、パウチ形成に適するラミネート強度を有した実施例1〜6の積層体を用いてパウチを形成し、内容物として湿布薬(揮発性の強浸透性物質としてサリチル酸メチルやメントールを含有)と、浴用剤(揮発性の強浸透性物質として香料成分を含有)をそれぞれ充填、密封し、40℃の恒温室内に放置した。
【0069】
3ヶ月経過後にこれらのパウチを恒温室から取り出し、それぞれのパウチの各種プラスチック基材とシーラント層間のラミネート強度[N/15mm]を測定し、恒温室に入れる前のパウチにおける初期のラミネート強度と比較した。このときのラミネート強度の測定条件は、試料幅15mmのT型剥離で、剥離速度300mm/minとした。恒温室投入前と後におけるラミネート強度の測定結果をまとめて、以下の表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
<比較結果>
実施例1〜6および比較例1〜4について比較結果を行った。その結果、実施例1〜6で得られた実施例品は、いずれも各種プラスチック基材とシーラント層間における初期のラミネート強度が、シーラント切れを示すほど強固であった。また、揮発性物質を含む湿布薬や浴用剤を入れて40℃で3ヶ月間保存したパウチにおいてもラミネート強度に変化はなく、初期のラミネート強度を十分に保っていた。
【0072】
一方、比較例1〜4で得られた比較品は、いずれも各種プラスチック基材とシーラント層間における初期のラミネート強度が、接着層のプラスチック基材に対するレベリング性(濡れ性)が悪く、十分なラミネート強度が得られる部分とそうでない部分がランダムに存在し、ラミネート強度に不均一が生じていたことから、包装材料への使用には適さないことが判明した。
【0073】
上記のように、実施例1〜6で得られた実施例品は、比較例1〜4で得られた比較品に比べて、いずれも良好な結果を示した。
【符号の説明】
【0074】
1・・・・プラスチック基材
2・・・・蒸着薄膜層
3・・・・接着層
4・・・・シーラント層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基材と、該プラスチック基材の少なくとも片面上に、無機酸化物からなる蒸着薄膜層と、接着層と、シーラント層が順次積層された積層体であって、前記接着層が2官能以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と金属アルコキシドを含む組成物からなり、該組成物中におけるイソシアネート化合物と金属アルコキシドとの比(イソシアネート化合物/金属アルコキシド)が、99/1〜60/40(重量比)で、且つ、前記接着層にフッ素系界面活性剤を50〜1000重量ppm含有することを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記2官能以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物が、2官能のイソシアネートモノマー、またはそのアダクト、ビューレット、イソシアヌレートタイプの3官能化させたモノマーの誘導体のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記金属アルコキシドの金属が、ケイ素、アルミニウム、チタン、またはジルコニウムであることを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項4】
前記金属アルコキシドが、シランカップリング剤であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記接着層の厚みが0.005μm〜1μmであることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記シーラント層が、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−126003(P2012−126003A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279143(P2010−279143)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】