説明

積層体

【課題】クロスとしてガラスクロスのみを用い、且つ高温での寸法安定性及び繰り返し屈曲性に優れた絶縁基材上に、金属層が設けられた積層体の提供。
【解決手段】一枚の絶縁基材若しくは複数枚重ねられた絶縁基材からなる絶縁層の、片面又は両面に、金属層が設けられた積層体であって、前記絶縁基材は、液晶ポリエステルが含浸された、厚さが5〜25μmのガラスクロスであることを特徴とする積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁基材上に金属層が設けられた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリエステルは、優れた高周波特性、低吸湿性を示すことから、エレクトロニクス基板材料として注目されている。特に、芳香族化合物由来の繰返し単位を含む液晶ポリエステルからなるフィルム(液晶ポリエステルフィルム)は、異方性が小さく、電子部品用フィルムの材料として優れている(例えば、特許文献1参照)。しかし、液晶ポリエステルフィルム単独では、十分な剛性が得られない。
【0003】
これに対して、他の樹脂と同様に、液晶ポリエステルを含有する液状組成物をガラス繊維からなるシートに含浸させ、溶媒を除去して得られた液晶ポリエステル含浸基材は、耐熱性、誘電特性、低吸湿性、寸法安定性に優れることが開示されており(例えば、特許文献2参照)、剛性が高く、絶縁基材として有用である。このような絶縁基材は、さらにその表面に金属層が設けられ、エレクトロニクス基板材料の製造に利用される。
一方、有機繊維を含むクロス、有機繊維とガラス繊維を含むクロスなどを用いて得られた絶縁基材は、繰り返し屈曲性と寸法安定性の両特性に優れることが開示されている(例えば、特許文献3及び4参照)。しかし、このような絶縁基材は、液晶ポリエステル含浸基材よりも高吸湿性であり、吸湿により寸法安定性が悪化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−137011号公報
【特許文献2】特表2010−528149号公報
【特許文献3】特開平8−246292号公報
【特許文献4】特開平10−235780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
絶縁基材では、通常、高温での寸法安定性及び繰り返し屈曲性を有することが求められる。これに対して、特許文献2に記載の液晶ポリエステル含浸基材は、剛性が高く、高温での寸法安定性に優れるものの、繰り返し屈曲性が不十分になることがあるという問題点があった。このように、クロスとしてガラスクロスのみを用いた従来の液晶ポリエステル含浸基材としては、特許文献3及び4に記載の通常の絶縁基材のように、高温での寸法安定性及び繰り返し屈曲性に優れたものが得られにくく、エレクトロニクス基板材料への利用に制限があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、クロスとしてガラスクロスのみを用い、且つ高温での寸法安定性及び繰り返し屈曲性に優れた絶縁基材上に、金属層が設けられた積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、
本発明は、一枚の絶縁基材若しくは複数枚重ねられた絶縁基材からなる絶縁層の、片面又は両面に、金属層が設けられた積層体であって、前記絶縁基材は、液晶ポリエステルが含浸された、厚さが5〜25μmのガラスクロスであることを特徴とする積層体を提供する。
本発明の積層体においては、前記絶縁層が、一枚の絶縁基材からなることが好ましい。
本発明の積層体においては、前記液晶ポリエステルが、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される繰返し単位を有し、前記液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、下記一般式(1)で表される繰返し単位を30〜50モル%、下記一般式(2)で表される繰返し単位を25〜35モル%、下記一般式(3)で表される繰返し単位を25〜35モル%有することが好ましい。
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−X−Ar−Y−
(式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基であり;Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基であり;X及びYは、それぞれ独立に酸素原子又はイミノ基であり;前記Ar、Ar及びAr中の一つ以上の水素原子は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar−Z−Ar
(式中、Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基又はナフチレン基であり;Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基である。)
本発明の積層体においては、前記一般式(3)において、X及び/又はYがイミノ基であることが好ましい。
本発明の積層体においては、前記液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、Arが1,4−フェニレン基又は2,6−ナフチレン基である前記一般式(1)で表される繰返し単位を合計で30〜50モル%有し、Arが1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基又は2,6−ナフチレン基である前記一般式(2)で表される繰返し単位を合計で25〜35モル%有し、Arが1,4−フェニレン基であり、且つX及びYの一方が酸素原子であり、他方がイミノ基である前記一般式(3)で表される繰返し単位を25〜35モル%有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クロスとしてガラスクロスのみを用い、且つ高温での寸法安定性及び繰り返し屈曲性に優れた絶縁基材上に、金属層が設けられた積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る積層体の一実施形態を例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係る積層体は、一枚の絶縁基材若しくは複数枚重ねられた絶縁基材からなる絶縁層の、片面又は両面に、金属層が設けられた積層体であって、前記絶縁基材は、液晶ポリエステルが含浸された、厚さが5〜25μmのガラスクロスであることを特徴とする。絶縁層は、液晶ポリエステルが含浸されたガラスクロスからなるので、剛性及び高温での寸法安定性に優れる。また、絶縁層は、ガラスクロスの厚さが5〜25μmであることにより、繰り返し屈曲性に優れる。かかる絶縁層を備えた積層体は、エレクトロニクス基板材料として優れた特性を有するものとなる。なお、以下において、「絶縁層の寸法安定性」とは、特に断りの無い限り「絶縁層の高温での寸法安定性」を指すものとする。そして「高温」とは、例えば、200〜250℃の温度域を指す。
【0011】
液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0012】
液晶ポリエステルの典型的な例としては、
(I)芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合(重縮合)させてなるもの、
(II)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの、
(III)芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合させてなるもの、
(IV)ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、を重合させてなるもの
が挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
【0013】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、及びカルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
【0014】
液晶ポリエステルは、下記一般式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記一般式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)と、下記一般式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)とを有することがより好ましい。
【0015】
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−X−Ar−Y−
(式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基であり;Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基であり;X及びYは、それぞれ独立に酸素原子又はイミノ基であり;前記Ar、Ar及びAr中の一つ以上の水素原子は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar−Z−Ar
(式中、Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基又はナフチレン基であり;Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基である。)
【0016】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、1〜10であることが好ましい。
前記アリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、6〜20であることが好ましい。
前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar、Ar又はArで表される前記基毎に、それぞれ独立に2個以下であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0017】
前記アルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n−ブチリデン基及び2−エチルヘキシリデン基が挙げられ、その炭素数は1〜10であることが好ましい。
【0018】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Arが1,4−フェニレン基であるもの(p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、及びArが2,6−ナフチレン基であるもの(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0019】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Arが1,4−フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが1,3−フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが2,6−ナフチレン基であるもの(2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、及びArがジフェニルエ−テル−4,4’−ジイル基であるもの(ジフェニルエ−テル−4,4’−ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0020】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Arが1,4−フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p−アミノフェノール又はp−フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、及びArが4,4’−ビフェニリレン基であるもの(4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
【0021】
繰返し単位(1)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは30〜80モル%、さらに好ましくは30〜60モル%、特に好ましくは30〜50モル%である。
繰返し単位(2)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは20〜35モル%、特に好ましくは25〜35モル%である。
繰返し単位(3)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは20〜35モル%、特に好ましくは25〜35モル%である。
繰返し単位(1)の含有量が多いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶媒に対する溶解性が低くなり易い。
【0022】
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、好ましくは0.9/1〜1/0.9、より好ましくは0.95/1〜1/0.95、さらに好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
【0023】
なお、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に二種以上有してもよい。また、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
【0024】
液晶ポリエステルは、繰返し単位(3)として、X及び/又はYがイミノ基(−NH−)であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位及び/又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有することが好ましく、繰返し単位(3)として、X及び/又はYがイミノ基であるもののみを有することがより好ましい。このようにすることで、液晶ポリエステルは溶媒に対する溶解性がより優れたものとなる。
【0025】
前記液晶ポリエステルは、これを構成する全繰返し単位の合計量に対して、Arが1,4−フェニレン基又は2,6−ナフチレン基である繰返し単位(1)を合計で30〜50モル%有するものが好ましい。
また、前記液晶ポリエステルは、これを構成する全繰返し単位の合計量に対して、Arが1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基又は2,6−ナフチレン基である繰返し単位(2)を合計で25〜35モル%有するものが好ましい。
また、前記液晶ポリエステルは、これを構成する全繰返し単位の合計量に対して、Arが1,4−フェニレン基であり、且つX及びYの一方が酸素原子であり、他方がイミノ基である繰返し単位(3)を25〜35モル%有するものが好ましい。
そして、前記液晶ポリエステルは、これら繰返し単位(1)、(2)及び(3)の含有量をすべて満たすものが特に好ましい。
【0026】
液晶ポリエステルは、これを構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や強度・剛性が高い高分子量の液晶ポリエステルを操作性良く製造することができる。溶融重合は、触媒の存在下で行ってもよく、この場合の触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、1−メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
【0027】
液晶ポリエステルは、その流動開始温度が、好ましくは250℃以上、より好ましくは250℃〜350℃、さらに好ましくは260℃〜330℃である。流動開始温度が高いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、高過ぎると、溶媒に対する溶解性が低くなり易かったり、後述する液状組成物の粘度が高くなり易かったりする。
【0028】
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kg/cm)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0029】
前記ガラスクロスは、主としてガラス繊維からなるシートであり、該ガラス繊維は、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤で表面処理されていてもよい。
【0030】
ガラスクロスは、織物(織布)、編物及び不織布のいずれでもよい。なかでも、後述する液晶ポリエステル含浸基材の寸法安定性が向上し易いことから、ガラスクロスは織物であることが好ましい。
【0031】
ガラスクロスの製造方法としては、ガラスクロスを形成する繊維を水中に分散させ、必要に応じてアクリル樹脂等の糊剤を添加して、抄紙機にて抄造後、乾燥させることで不織布を得る方法や、公知の織成機を用いる方法が例示できる。
【0032】
繊維の織り方としては、平織り、朱子織り、綾織り、ななこ織り等が利用できる。織り密度は、10〜100本/25mmであることが好ましい。
ガラスクロスの単位面積当たりの質量は、10〜300g/mであることが好ましい。
【0033】
ガラスクロスは、市販品でもよい。容易に入手可能な市販品のガラスクロスとしては、旭化成イーマテリアルズ社製、ユニチカ社製、日東紡績社製、有沢製作所社製のものが例示できる。
【0034】
前記絶縁基材中のガラスクロスの厚さは、5〜25μmであり、好ましくは8〜18μmである。下限値以上とすることで、絶縁層の寸法安定性が顕著に向上し、上限値以下とすることで、繰り返し屈曲性が顕著に向上する。特に、ガラスクロスの厚さが8〜18μmであることにより、絶縁層の繰り返し屈曲性が大幅に向上する。例えば、先に挙げた「特表2010−528149号公報」には、液晶ポリエステル含浸基材について、ガラスクロスの厚さを所定の範囲とすることにより、繰り返し屈曲性にいかなる影響があるかについては、何ら記載されていない。
【0035】
前記絶縁基材は、液晶ポリエステルが含浸されたガラスクロス(以下、「液晶ポリエステル含浸基材」ということがある。)である。
【0036】
前記絶縁基材は、液晶ポリエステル及び溶媒を含む液状組成物(液晶ポリエステル液状組成物)、好ましくは液晶ポリエステルが溶媒に溶解された液状組成物(液晶ポリエステル溶液)をガラスクロスに含浸させ、溶媒を除去することで製造できる。
【0037】
前記溶媒としては、用いる液晶ポリエステルが溶解可能なもの、具体的には50℃にて1質量%以上の濃度([液晶ポリエステル]/[液晶ポリエステル+溶媒]×100)で溶解可能なものが、適宜選択して用いられる。
【0038】
前記溶媒の例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;p−クロロフェノール、ペンタクロロフェノール、ペンタフルオロフェノール等のハロゲン化フェノール;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル;アセトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート;トリエチルアミン等のアミン;ピリジン等の含窒素複素環芳香族化合物;アセトニトリル、スクシノニトリル等のニトリル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン(N−メチル−2−ピロリドン)等のアミド系化合物(アミド結合を有する化合物);テトラメチル尿素等の尿素化合物;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄化合物;ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸等のリン化合物が挙げられ、これらの二種以上を用いてもよい。
【0039】
溶媒としては、腐食性が低く、取り扱い易いことから、非プロトン性化合物、特にハロゲン原子を有しない非プロトン性化合物を主成分とする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める非プロトン性化合物の割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%である。
また、前記非プロトン性化合物としては、液晶ポリエステルを溶解し易いことから、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系化合物を用いることが好ましい。
【0040】
また、溶媒としては、液晶ポリエステルを溶解し易いことから、双極子モーメントが3〜5である化合物を主成分とする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める、双極子モーメントが3〜5である化合物の割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%であり、前記非プロトン性化合物として、双極子モーメントが3〜5である化合物を用いることが好ましい。
【0041】
また、溶媒としては、除去し易いことから、1気圧における沸点が220℃以下である化合物を主成分とするとする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める、1気圧における沸点が220℃以下である化合物の割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%であり、前記非プロトン性化合物として、1気圧における沸点が220℃以下である化合物を用いることが好ましい。
【0042】
液状組成物中の液晶ポリエステルの含有量は、液晶ポリエステル及び溶媒の合計量に対して、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは15〜45質量%であり、所望の粘度の液状組成物が得られるように、適宜調整される。
【0043】
液状組成物は、充填材、添加剤、液晶ポリエステル以外の樹脂等の他の成分を一種以上含んでもよい。
【0044】
前記充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機充填材;硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリル樹脂等の有機充填材が挙げられ、その含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜100質量部である。
【0045】
前記添加剤の例としては、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤及び着色剤が挙げられ、その含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜5質量部である。
【0046】
前記液晶ポリエステル以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、その含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜20質量部である。
【0047】
液状組成物は、液晶ポリエステル、溶媒、及び必要に応じて用いられる他の成分を、一括で又は適当な順序で混合することにより調製することができる。他の成分として充填材を用いる場合は、液晶ポリエステルを溶媒に溶解させて、液晶ポリエステル溶液を得、この液晶ポリエステル溶液に充填材を分散させることにより調製することが好ましい。
【0048】
ガラスクロスに液状組成物を含浸させる方法としては、浸漬槽中の前記液状組成物にガラスクロスを浸漬する方法が例示できる。この方法においては、液状組成物の液晶ポリエステルの含有量、浸漬時間、浸漬したガラスクロスの液状組成物からの引き上げ速度を適宜調節することで、ガラスクロスへの液晶ポリエステルの付着量を容易に制御できる。
【0049】
液状組成物を含浸させたガラスクロスから溶媒を除去する方法は、特に限定されないが、操作が簡便である点で、溶媒を蒸発させる方法が好ましく、加熱、減圧及び通風のいずれかを単独で、又は二つ以上を組み合わせて蒸発させる方法が例示できる。
加熱して溶媒を除去する場合、加熱温度は好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上である。この時の加熱条件は、例えば、液晶ポリエステルフィルムの製造時と同様とすることができる。
【0050】
溶媒を除去して得られた液晶ポリエステル含浸基材における液晶ポリエステルの付着量は、液晶ポリエステル含浸基材に対して50〜90質量%であることが好ましく、60〜85質量%であることがより好ましい。
【0051】
液晶ポリエステル含浸基材は、溶媒除去後にさらに加熱処理することが好ましい。これにより、含浸されている液晶ポリエステルをより高分子量化でき、耐熱性をより向上させることができる。
【0052】
加熱処理は、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。そして、加熱温度は、好ましくは240〜330℃、より好ましくは250〜330℃、さらに好ましくは260〜320℃である。下限値以上とすることで、液晶ポリエステル含浸基材の耐熱性がより向上する。加熱時間は、好ましくは1〜30時間、より好ましくは1〜10時間である。下限値以上とすることで、液晶ポリエステル含浸基材の耐熱性がより向上し、上限値以下とすることで、液晶ポリエステル含浸基材の生産性がより向上する。
【0053】
前記絶縁層は、一枚の絶縁基材からなるものでもよいし、複数枚重ねられた絶縁基材からなるものでもよいが、一枚の絶縁基材からなるものが好ましい。
絶縁層が複数枚重ねられた絶縁基材からなる場合、これら複数枚の絶縁基材は、すべて同じでもよいし、一部のみ同じでもよく、すべて異なっていてもよい。また、その枚数は2枚以上であれば特に限定されない。複数枚重ねられた絶縁基材からなる絶縁層は、例えば、複数枚の絶縁基材を、その厚さ方向に重ね合わせ、加熱プレスして互いに融着させ、一体化させることで作製できる。
【0054】
絶縁層の厚さは、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下である。上限値以下とすることで、絶縁層の繰り返し屈曲性がより向上する。
【0055】
絶縁層の繰り返し屈曲性は、例えば、折り曲げ面の曲率半径を0.35〜0.45mm、折り曲げ角を130〜140°、張力を4.5〜5.5Nとし、毎分170〜180回の速度で、絶縁層を繰返し折り曲げ、これが破断するまでの回数(以下、「破断屈曲回数」ということがある。)で評価できる。本発明においては、絶縁層の前記破断屈曲回数が、例えば、5000回以上であることが好ましく、7000回以上であることがより好ましく、10000回以上であることがさらに好ましい。
【0056】
絶縁層の寸法安定性は、例えば、200〜250℃で測定した表面方向の線膨張率で評価できる。本発明においては、絶縁層の前記線膨張率が、例えば、70ppm/℃以下であることが好ましく、50ppm/℃以下であることがより好ましく、30ppm/℃以下であることがさらに好ましい。
【0057】
前記金属層は、絶縁層の表面に設けられ、絶縁層の一面のみ、すなわち片面に設けられていてもよいし、一面と、これとは反対側の面との両面に設けられていてもよい。
【0058】
金属層の材質は、銅、アルミニウム、銀又はこれらから選択される一種以上の金属を含む合金が好ましい。なかでも、より優れた導電性を有し、低コストである点から、銅又は銅合金が好ましい。そして、金属層は、材料の取扱いが容易で、簡便に形成でき、経済性にも優れる点から、金属箔からなるものが好ましく、銅箔からなるものがより好ましい。金属層を絶縁層の両面に設ける場合、これら金属層の材質は、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0059】
金属層の厚さは、好ましくは1〜70μmであり、より好ましくは3〜35μmであり、さらに好ましくは5〜18μmである。
【0060】
金属層を設ける方法としては、金属箔を絶縁層の表面に加熱プレス等で融着させる方法、金属箔を絶縁層の表面に接着剤で接着させる方法、絶縁層の表面をめっき法、スクリーン印刷法又はスパッタリング法により、金属粉又は金属粒子で被覆する方法が例示できる。
【0061】
加熱プレスは、真空条件下、例えば、0.5kPa以下等の減圧下で行うことが好ましい。
加熱プレス時の加熱温度の上限値は、用いた液晶ポリエステルの分解温度を下回るように設定すればよいが、前記分解温度よりも30℃以上低い温度であることが好ましい。液晶ポリエステルの分解温度は、例えば、熱重量減少分析等の公知の手法で測定できる。
また、加熱プレス時の圧力は、1〜30MPaであることが好ましく、時間は10〜60分であることが好ましい。
【0062】
絶縁層が複数枚重ねられた絶縁基材からなり、上記のように、金属箔を絶縁層の表面に融着させて、金属層を設ける場合には、絶縁層を構成する複数枚の絶縁基材と、金属箔とを、それぞれこれらの厚さ方向に重ねて同時に加熱プレスしてもよい。このように、絶縁基材の加熱プレス時に、重ねたときに最も外側に位置する絶縁基材の表面に、さらに金属箔を重ねて、これら金属箔及び複数の絶縁基材を加熱プレスすることで、金属層を同時に設けることができる。
【0063】
絶縁層の表面を金属粉又は金属粒子で被覆して、金属層を設ける場合には、めっき法を適用することが好ましく、無電解めっき法又は電解めっき法を適用することがより好ましい。また、金属層の特性をさらに向上させるために、めっき法で形成した金属層を加熱処理することが好ましく、このときの加熱処理の条件は、前記加熱プレスの条件と同様でよい。
【0064】
図1は、ここまでに説明した本発明に係る積層体の一実施形態を例示する概略断面図である。ここに示す積層体1は、絶縁層11の一方の面に金属層12が、他方の面に金属層13が設けられたものであり、上記のように絶縁層11は、一枚の絶縁基材若しくは複数枚重ねられた絶縁基材からなり、金属層12及び13はいずれか一方が設けられていなくてもよい。
【0065】
本発明に係る積層体は、金属層に所定の配線パターンを形成し、これをそのまま、又は必要に応じて二枚以上を積層することにより、プリント配線板として好適に用いることができる。屈曲性の観点からは、金属層に配線パターンを形成した積層体を一枚用いて、プリント配線板とすることが好ましい。
【0066】
本発明に係る積層体において、絶縁層は、クロスとしてガラスクロスのみを用いた絶縁基材からなるにも関わらず、繰り返し屈曲性に優れる。そして、絶縁基材として液晶ポリエステル含浸基材を用いているので、剛性及び高温での寸法安定性にも優れる。かかる絶縁層を備えた積層体は、エレクトロニクス基板材料として極めて有用である。
【実施例】
【0067】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。なお、液晶ポリエステルの流動開始温度、及び液状組成物の粘度は、それぞれ以下の方法で測定した。
【0068】
(液晶ポリエステルの流動開始温度の測定)
フローテスター(島津製作所社製、CFT−500型)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度を測定した。
【0069】
(液状組成物の粘度の測定)
B型粘度計(東機産業社製「TVL−20型」)を用いて、No.21のローターにより、回転速度5rpmで測定した。
【0070】
<液晶ポリエステル液状組成物の製造>
[製造例1]
(液晶ポリエステルの製造)
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(1976g、10.5モル)、4−ヒドロキシアセトアニリド(1474g、9.75モル)、イソフタル酸(1620g、9.75モル)及び無水酢酸(2374g、23.25モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で攪拌しながら、15分間かけて室温から150℃まで昇温し、この温度(150℃)を保持して3時間還流させた。
次いで、留出する副生成物の酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、2時間50分かけて300℃まで昇温し、300℃で1時間保持した後、反応器から内容物を取り出した。この内容物を室温まで冷却し、得られた固形物を粉砕機で粉砕し、比較的低分子量の粉末状の液晶ポリエステル(プレポリマー)を得た。このプレポリマーの流動開始温度は235℃であった。このプレポリマーを窒素ガス雰囲気下において、6時間かけて室温から223℃まで昇温し、223℃で3時間保持して加熱処理することにより、固相重合を行い、次いで冷却して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は270℃であった。
【0071】
(液状組成物の製造)
得られた液晶ポリエステル(2200g)をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc、7800g)に加え、100℃で2時間加熱して、液状組成物を得た。この液状組成物について、測定温度23℃で粘度を測定したところ、0.2Pa・s(200cP)であった。
【0072】
<積層体の製造>
[実施例1]
厚さが10μmのガラスクロス(旭化成イーマテリアルズ社製:グレード1000)を、製造例1で得られた液状組成物に室温で1分間浸漬し、熱風式乾燥機により設定温度160℃の条件で溶媒を蒸発させることで、液晶ポリエステル含浸基材を得た。この液晶ポリエステル含浸基材の樹脂付着量は約84.5質量%であった。熱風式乾燥機を用いて、この液晶ポリエステル含浸基材を窒素ガス雰囲気下、290℃で3時間加熱処理し、絶縁基材を得た。次いで、この絶縁基材の両面に銅箔(三井金属鉱業社製「3EC‐VLP」、厚さ18μm)を載せ、この状態で高温真空プレス機(北川精機社製「KVHC−PRESS」、縦300mm、横300mm)を用いて、両面側から最高圧力5.0MPa、保持温度340℃、保持時間30分の条件で加熱プレスし、各層を一体化させることにより、一枚の絶縁基材からなる絶縁層の両面に、銅層が設けられた積層体を得た。なお、得られた積層体中のガラスクロスの厚さは、使用前の厚さ(本実施例では10μm)と同じであることを確認した。これは、以降の他の実施例及び比較例でも同様である。
【0073】
[実施例2]
厚さが10μmのガラスクロスに代えて、厚さが13μmのガラスクロス(旭化成イーマテリアルズ社製:グレード1010)を用いたこと以外は、実施例1と同様に積層体を得た。液晶ポリエステル含浸基材の樹脂付着量は約74.0質量%であった。
【0074】
[比較例1]
厚さが10μmのガラスクロスに代えて、厚さが45μmのガラスクロス(ユニチカ社製:グレード1078)を用いたこと以外は、実施例1と同様に積層体を得た。液晶ポリエステル含浸基材の樹脂付着量は約55質量%であった。
【0075】
[比較例2]
厚さが10μmのガラスクロスに代えて、厚さが30μmのガラスクロス(旭化成イーマテリアルズ社製:グレード1035)を用いたこと以外は、実施例1と同様に積層体を得た。液晶ポリエステル含浸基材の樹脂付着量は約64質量%であった。
【0076】
[比較例3]
厚さが10μmのガラスクロスに代えて、厚さが28μmのガラスクロス(旭化成イーマテリアルズ社製:グレード1037)を用いたこと以外は、実施例1と同様に積層体を得た。液晶ポリエステル含浸基材の樹脂付着量は約65質量%であった。
【0077】
[比較例4]
自動塗工装置I型(テスター産業社製)に電解銅箔(三井金属鉱業社製「3EC−VLP」、厚さ18μm)を設置し、マイクロメーター付フィルムアプリケーター(SHEEN社製)の設定を450μmにして、製造例1で得られた液状組成物を銅箔粗化面に塗布し、樹脂フィルム積層体を作製した。得られた樹脂フィルム積層体を、温度100℃の通風オーブンを用いて10分間乾燥させた。その後、乾燥させた樹脂フィルム積層体を窒素ガス雰囲気下の熱風オーブン中で、昇温速度3.2℃/分で30℃から290℃まで昇温し、320℃で2時間保持する加熱処理を行った。さらに、室温まで放冷して、厚さが43μmの一枚の液晶ポリエステルフィルム(絶縁基材)の片面に、銅層が設けられた片面積層体を得た。次いで、この片面積層体の液晶ポリエステルフィルム上に、電解銅箔(三井金属鉱業社製「3EC−VLP」、厚さ18μm)を載せ、高温真空プレス機(北川精機社製「KVHC−PRESS」、縦300mm、横300mm)を用いて、両面側から最高圧力5.0MPa、保持温度340℃、保持時間30分の条件で加熱プレスし、各層を一体化させることにより、一枚の絶縁基材からなる絶縁層の両面に、銅層が設けられた積層体を得た。
【0078】
<積層体の評価>
上記各実施例及び比較例で製造した積層体について、下記方法で線膨張率により寸法安定性を、破断屈曲回数により繰り返し屈曲性を、それぞれ評価した。結果を表1に示す。
【0079】
(線膨張率の測定)
塩化第二鉄溶液(木田社製、40°ボーメ)を用いて、積層体の両面から銅層を全て除去し、JIS C6481「プリント配線板用銅張積層板試験方法」に準拠して、熱機械分析装置(セイコーインスツル社製「TMA―120」)を用いて、得られた試験片(絶縁層)の面方向の線膨張率を測定した(温度範囲200〜250℃、1St スキャン)。
【0080】
(破断屈曲回数の測定)
塩化第二鉄溶液(木田社製、40°ボーメ)を用いて、積層体の両面から銅層を全て除去し、耐折性試験機(東洋精機社製「MIT−D」)を用いて、折り曲げ面の曲率半径を0.38mm、折り曲げ角を135°、張力を4.9Nとし、毎分175回の速度で、得られた試験片(絶縁層)を繰返し折り曲げ、これが破断するまでの回数を測定した。
【0081】
【表1】

【0082】
表1から明らかなように、実施例1及び2の絶縁層は、ガラスクロスの厚さが所定の範囲であることにより、寸法安定性及び繰り返し屈曲性のいずれにも優れていた。
一方、比較例1〜3の絶縁層は、ガラスクロスの厚さが厚過ぎて、寸法安定性には優れていたが、繰り返し屈曲性が大きく劣っていた。
また、比較例4の絶縁層は、ガラスクロスを用いた液晶ポリエステル含浸基材ではなく、液晶ポリエステルフィルムであるため、寸法安定性及び繰り返し屈曲性がいずれも劣っており、特に寸法安定性が大きく劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、エレクトロニクスの基板に利用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1・・・積層体、11・・・絶縁層、12,13・・・金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚の絶縁基材若しくは複数枚重ねられた絶縁基材からなる絶縁層の、片面又は両面に、金属層が設けられた積層体であって、
前記絶縁基材は、液晶ポリエステルが含浸された、厚さが5〜25μmのガラスクロスであることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記絶縁層が、一枚の絶縁基材からなることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記液晶ポリエステルが、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される繰返し単位を有し、前記液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、下記一般式(1)で表される繰返し単位を30〜50モル%、下記一般式(2)で表される繰返し単位を25〜35モル%、下記一般式(3)で表される繰返し単位を25〜35モル%有することを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体。
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−X−Ar−Y−
(式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基であり;Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基であり;X及びYは、それぞれ独立に酸素原子又はイミノ基であり;前記Ar、Ar及びAr中の一つ以上の水素原子は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar−Z−Ar
(式中、Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基又はナフチレン基であり;Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基である。)
【請求項4】
前記一般式(3)において、X及び/又はYがイミノ基であることを特徴とする請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、
Arが1,4−フェニレン基又は2,6−ナフチレン基である前記一般式(1)で表される繰返し単位を合計で30〜50モル%有し、
Arが1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基又は2,6−ナフチレン基である前記一般式(2)で表される繰返し単位を合計で25〜35モル%有し、
Arが1,4−フェニレン基であり、且つX及びYの一方が酸素原子であり、他方がイミノ基である前記一般式(3)で表される繰返し単位を25〜35モル%有することを特徴とする請求項3又は4に記載の積層体。

【図1】
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【公開番号】特開2013−1105(P2013−1105A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138223(P2011−138223)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】