説明

積層体

【課題】装飾性組成物と補強材の接着性を改善し、可とう性、強度等に優れた積層体を提供する。
【解決手段】積層体は、装飾層及び無機質補強材を有するものであり、装飾層は、有機質結合材及び有色粉粒体を含み、無機質補強材は、無機質繊維シートが珪素化合物を含む処理液によって、被覆処理されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な積層体に関するものである。本発明積層体は、建築物の壁面等に適用できる。
【背景技術】
【0002】
建築物の内外装用建材として、天然石、自然石をイメージした比較的厚みがあり、様々な凹凸パターンを有するもの、重厚感のあるもの、など意匠性に優れるものが多く採用されつつある。
また、近年、安全で快適な居住空間への関心が高まり、意匠性に加え、内装用の建材の場合は、防火性能、汚染防止性能、室内の結露防止やカビ発生防止、あるいは抗菌性等、一方、外装用建材の場合は、遮熱性、断熱性、耐候性等、様々な機能性を有すること、さらには、可とう性、軽量化等により施工性に優れることが要求されている。これに伴い、多くの製品(建材シート等)の開発が行われている。
【0003】
しかし、天然石、自然石をイメージした意匠性建材シートでは、建築物内外装表面の曲面に対して施工した場合、折り曲げることができなかったり、また、折り曲げることができたとしても、ひび割れを生じたりする場合がある。
このような問題に対して、例えば、特許文献1には、合成樹脂繊維製織物より成る補強層にアクリル樹脂エマルション等の結合材と天然骨材や人工骨材等が配合された吹き付け材(装飾性組成物)を積層し、さらに接着材を介して表面に透明シートが成形された装飾材が記載されている。また、特許文献2には、装飾性組成物の中間に芯材として合成樹脂繊維製織物を設ける建築物表面仕上用シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−347251号公報
【特許文献2】特開平4−76151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献では、装飾性組成物と補強材を組み合わせることが記載されている。このような組み合わせは、意匠性シート建材の可とう性を高める手段として有効なものである。
【0006】
しかしながら、装飾性組成物と補強材を単に積層した場合、両者の接着性が不十分となるおそれがある。このような接着性の不具合が生じると、装飾性組成物と補強材の界面で破断したり、ひび割れを生じたり、補強材による可とう性向上効果は得られ難くなってしまう。
【0007】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたもので、装飾性組成物と補強材の接着性を改善し、可とう性、強度等に優れた積層体を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するため本発明者は鋭意検討の結果、装飾性組成物に積層する補強材として、特定処理液の被覆処理によって改質面が形成された無機質繊維シートを用いることに想到し、本発明を完成するに到った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.装飾層及び無機質補強材を有する積層体であり、
(1)該装飾層は、有機質結合材及び有色粉粒体を含む装飾性組成物によって形成された層であり、
(2)該無機質補強材は、無機質繊維シートが珪素化合物を含む処理液によって、被覆処理されたものである
ことを特徴とする積層体。
2.上記無機質補強材は、無機質繊維シートが珪素化合物及び有機質結合材を含む処理液によって、被覆処理されたものであることを特徴とする1.に記載の積層体。
3.上記無機質補強材の片面または両面に装飾層を有する1.または2.に記載の積層体。
4.基材に対し、接着材を介して1.〜3.のいずれかに記載の積層体を貼着することを特徴とする施工方法。
5.上記基材が曲面部位を有しており、該曲面部位に沿って、積層体を湾曲させて貼着することを特徴とする4.記載の施工方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装飾性組成物と補強材の接着性が改善される。本発明積層体は、可とう性、強度等において優れた性能を発揮することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
[装飾性組成物]
本発明の積層体は、装飾層及び無機質補強材を有するものである。
このうち、装飾層は、有機質結合材(A)及び有色粉粒体(B)含む装飾性組成物によって形成された層である。
【0013】
(A)有機質結合材
装飾性組成物における(A)有機質結合材(以下、「(A)成分」ともいう)としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース及びその誘導体等の水分散型、水可溶型、NAD型、溶剤可溶型、無溶剤型等が挙げられ、1液タイプ、2液タイプ等特に限定されず、用いることができる。
本発明では特に、水分散型及び/または水可溶型のアクリルシリコン樹脂を用いることが好ましい。
【0014】
(B)有色粉粒体
(B)有色粉粒体としては、少なくとも(b1)有色骨材を含むことが好ましい。
【0015】
(b1)有色骨材(以下、「(b1)成分」ともいう)は、積層体表面へ微細な凹凸を付与し、陰影感を有する立体的な意匠を表現することができる。また、粒子径の小さい着色顔料等を使用した場合と異なり、着色した粒子を混合して色調、質感等を付与することができ、積層体表面に存在する(b1)成分の小点が多彩模様として視認され、優れた装飾性を有する。本発明に好適な(b1)成分としては、特に限定されず、天然品、人工品のいずれも使用することができる。具体的には、例えば、重質炭酸カルシウム、寒水石、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、バライト粉、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、長石、珪石、珪砂等の粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、フライアッシュ、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラス粉砕物、樹脂ビーズ、樹脂バルーン、樹脂粉砕物、金属粒等が挙げられる。これらに着色を施したものも使用することができる。
【0016】
(b1)成分の平均粒子径は、0.01〜5mmであることが望ましい。このような範囲である場合、優れた意匠を表現することができるとともに、積層体を安定して製造することができる。なお(b1)成分の平均粒子径は、JIS Z8801−1:2000に規定される金属製網ふるいを用いてふるい分けを行い、その重量分布の平均値を算出することによって得られる値である。
【0017】
(b1)成分の配合量は、(A)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは200〜3000重量部、より好ましくは300〜2000重量部、さらに好ましくは500〜1500重量部である。上記範囲のように(A)成分に対して(b1)成分を多く含むことにより、骨材の質感を活かした優れた意匠性を得ることができ、さらに通気性を向上することができる。
【0018】
さらに、装飾性等を高める目的で、平均粒子径5mm超の骨材(b2)(以下「(b2)成分」という)を混合したり、散布したりすることもできる。本発明に好適な(b2)成分としては、例えば、天然石、珪石、珪砂等の粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、マイカ、貝殻類、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、ゴム類、プラスチック類、植物繊維、植物片等の植物類、アルミナフレーク等の金属類等や、それらの表面を着色コーティングしたもの等が挙げられる。
【0019】
また、本発明の効果を著しく損なわない限り、必要に応じ、公知の添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、例えば、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、消臭剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、難燃剤、着色顔料、体質顔料、吸放湿性粉体、光触媒、撥水剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒等が挙げられる。
【0020】
[無機質補強材]
本発明では、無機質補強材として、特定の処理液によって被覆処理された無機質繊維シート(以下「無機質補強材」ともいう)を用いる。本発明では、当該無機質補強材の使用によって、積層体の強度、可とう性を高めることができる。
【0021】
上記無機質繊維シートとしては、例えば、各種無機繊維を構成要素とする布状物、網目構造物等が挙げられる。本発明では特に、鉱物繊維、ガラス繊維等のからなる網目構造物が好適である。このような無機質繊維シートの使用は、不燃性、強度向上等の点で有効である。
【0022】
このような無機繊維からなる網目構造物としては、繊維が、好ましくは0.2mm〜30mm、より好ましくは0.5〜20mmの間隔で配列され、無機質繊維シートの厚さが、好ましくは0.01〜1.5mm、より好ましくは0.03〜1.2mm、さらに好ましくは0.05〜1.0mm程度であるものである。また、繊維の太さは、0.01mm〜1.5mm程度であることが好ましい。ここでいう繊維の太さとは、網目構造を形成する1本の太さのことであり、繊維1本または2本以上からなる糸状の束の太さである。
【0023】
上記無機質繊維シートを被覆処理する処理液には、珪素化合物を含む処理液が使用される。
上記処理液における珪素化合物としては、アルコキシシラン化合物、シランカップリング剤、コロイダルシリカ等が好適である。
【0024】
このうち、アルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の4官能アルコキシシラン化合物が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらアルコキシシラン化合物としては、アルコールまたはアルキレングリコール等で変性されたものが好適である。
【0025】
シランカップリング剤としては、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、イソシアネート官能性シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロオピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−[2−(ビニルベンジルアミノ)エチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0026】
コロイダルシリカとしては、酸化珪素からなるコロイド粒子が溶媒中に分散したコロイド溶液が使用できる。コロイダルシリカの粒子径は、好ましくは3〜100nm、より好ましくは5〜80nmである。
【0027】
本発明では、上記珪素化合物及び有機質結合材を含む処理液を使用することが好ましい。
上記処理液における有機質結合材としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。結合材として、塩化ビニル樹脂、アクリルシリコン樹脂、シリコーン樹脂、等から選ばれる1種以上を含む場合は、接着性向上等の点で好適である。また、有機質結合材は、上記珪素化合物と化学結合した状態であってもよい。
【0028】
処理液における各成分の比率(固形分重量比率)は、有機質結合材100重量部に対し、珪素化合物を1〜100重量部(さらには2〜80重量部)とすることが好ましい。このような処理液を使用することにより、本発明において無機質繊維シートと装飾層の接着性が向上し、さらに、積層体の強度、可とう性を高めることができる。
【0029】
上記処理液は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、上述以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、顔料、難燃剤、増粘剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0030】
上記処理液は、無機質繊維シートの片面または両面を被覆処理することができる。
無機質繊維シートを上記処理液によって被覆処理する方法としては、例えば、剥離性下地上に載置した無機質繊維シートに対し、処理液を塗付する方法、処理液中に浸漬させる等を採用することができる。処理液の使用量は、装飾層との接着性、可とう性等を考慮して適宜設定すればよい。
【0031】
本発明の無機質補強材は、上記の処理液によって被覆処理された無機質繊維シートであれば、上記処理液が硬化した状態、未硬化の状態どちらの状態でも使用することができる。特に、本発明では未硬化の状態であることが好ましい。
【0032】
本発明では、未硬化の状態として、上記無機質繊維シートを上記処理液で被覆処理した後、処理液の被膜のゲル分率が好ましくは60%以上(より好ましくは70%以上95%以下)となるような条件下で養生されたものであることが好ましい。このような無機質補強材を使用することにより、無機質補強材と装飾層との接着性をよりいっそう高めることができる。さらに、強度、可とう性等に優れた積層体を得ることができる。
【0033】
ここで、本発明のゲル分率は、離型紙に処理液を0.3mmの膜厚にて塗付し、各養生条件において24時間乾燥して形成させた被膜を剥離し、THFに24時間浸漬した後、乾燥させ、次式にて算出されるものである。
ゲル分率(%)=(浸漬後の被膜重量/浸漬前の被膜重量)×100
【0034】
[積層体]
本発明積層体は、装飾層及び無機質補強材を有するものであり、無機質補強材において無機質繊維シートの被覆処理面側に、装飾層が接している。本発明では、このような積層形態によって、無機質補強材と装飾層との接着性を高めることができる。さらに、強度、可とう性等に優れた積層体を得ることができる。
【0035】
積層形態としては、例えば以下の形態等が挙げられる。
(I)装飾層と無機質補強材が積層された形態。
(II)装飾層と無機質補強材と装飾層が積層された形態。
上記(I)の形態は、装飾層の片面に、無機質補強材が設けられたものである。一方、上記(II)の形態は、無機質補強材の両面に、装飾層が設けられたものである。いずれの形態においても、装飾層には、無機質繊維シートの被覆処理面側が接する。
【0036】
上記(I)の製造方法としては、例えば、
型枠内に装飾性組成物を積層し、この上に無機質補強材を載置し、硬化させた後、脱型する方法、
無機質補強材の上に装飾性組成物を積層し、硬化させる方法、
等によって製造できる。
【0037】
また、上記(II)の製造方法としては、例えば、
型枠内に装飾性組成物を積層し、この上に無機質補強材を載置し、次いで装飾性組成物を積層し、硬化させた後、脱型する方法、
等によって製造できる。
【0038】
装飾性組成物を積層する際には、例えば、吹付け、ローラー、鏝、刷毛塗り、レシプロ、コーター、流し込み等の手段を用いた方法を採用することができる。
型枠としては、例えばシリコーン樹脂製、ウレタン樹脂製、金属製等の型枠、あるいは離型紙を設けた型枠等が使用できる。
【0039】
装飾性組成物と無機質補強材の積層は、装飾性組成物が未硬化の状態で行うことが好ましい。また、装飾性組成物の硬化は、常温乃至加熱下で行えばよい。
【0040】
上記装飾性組成物の厚みは、1.0mm以上5.0mm以下が好ましい。このような場合、彫りの深い凹凸パターンを形成することもできるため、陰影、重厚感のある優れた意匠性を得ることができる。
【0041】
また、本発明の効果を阻害しない限り、装飾性等を高める目的で凹凸模様を形成したり、平均粒子径5mm超の骨材(b2)等の装飾材料を散布したりすることもできる。このような凹凸模様の形成や、装飾材料の散布は、装飾性組成物が硬化する前に行えばよい。
【0042】
上記(I)(II)において、型枠を用いて製造する場合は、凹凸模様の形成は、型枠側が積層体表面となるため、型枠内側の形状を調整することで付与することができ、装飾材料を散布する場合、公知または市販の散布機等を用い型枠内の底面に装飾材料を散在させた後に、装飾性組成物を流し込めばよい。
【0043】
また、上記(II)においては、型枠と反対側を積層体表面とすることもできる。この場合凹凸模様の形成は、こて、型押し、ローラー等を用いた方法を採用することができ、装飾材料の散布は、公知または市販の散布機等を用いることができる。
【0044】
さらに、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内であれば、積層体の表面保護性等を高める目的で、上塗層を積層することもできる。上塗層は、透明性を有するもの(クリヤー層)であればよく、この場合、上記積層体の意匠性(色相)をそのまま活かすことができる。また、上塗層は、透明性を有する範囲で各種顔料が添加されたカラークリヤー層であってもよい。このような上塗層としては、公知の水性型あるいは溶剤型塗料の塗付によって形成することができる。
これらの塗装は、公知の塗装方法によれば良く、スプレー、コーター、ローラー、刷毛等の塗装器具を使用することができる。
【0045】
本発明の積層体は、建築物の内外装、柱、間仕切り、扉、天井等の基材に対して施工されるものである。このような基材を構成する下地としては、例えば、石膏ボード、合板、金属板、コンクリート、モルタル、タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板等が挙げられる。
【0046】
積層体の施工方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
・基材に対し、接着材、粘着材、粘着テープ等を介して貼着する方法
・基材に対し、釘、鋲等を用いて固定化する方法
本発明では、特に、接着材を介して貼着することが好ましい。この場合、下地との接着性において優れた性能を発揮することができる。
【0047】
また、上記基材は、アーチ状の基材、または出隅部、入隅部等のコーナー部等の曲面部位を有するものであってもよい。この場合、基材の曲面部位に沿って、積層体を湾曲させて貼着する。本発明の積層体は、可とう性、強度等において優れた性能を有するため、積層体の美観性を損なうことなく施工することができる。
【0048】
接着材としては、特に限定されず、公知のものを使用すればよい。例えば、接着材に用いる合成樹脂としては、特に限定されないが、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、アクリルスチレン樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等の水可溶型、水分散型等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
また、施工性、仕上り性、接着強度、防火性等の各種性能を付与するために、粉体成分、中空粒子、多孔質粒子、繊維等を添加したり、必要に応じ、着色材料、体質顔料、分散剤、粘性調整剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤等の通常使用される添加剤を適宜加えることができる。
【0049】
積層体を接着材で貼り付ける際、隣接する積層体どうしを突き合わせて貼りつけたり、積層体間に目地を設けたりすることもできる。突き合わせて貼り付ける場合、接着材がはみ出さないようにすることが好ましい。また、目地を設ける場合、積層体を貼り付ける際の間隔は特には限定されないが、1mm〜30mm程度であればよい。このような範囲であれば、接着材を積層体の間で露出させることができ、容易に目地部を形成することができる。また、必要に応じて目地部の接着材をへら等で平滑処理しても良い。接着材を硬化させる際の雰囲気温度は、適宜設定することができるが、通常は常温でよい。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0051】
(装飾層組成物)
合成樹脂(アクリル樹脂エマルション、固形分50重量%、ガラス転移温度0℃)100重量部、有色粉粒体1(着色珪砂、淡黄色、平均粒子径80〜120μm)700重量部、有色粉粒体2(重質炭酸カルシウム、平均粒子径50〜150μm)400重量部、及び添加剤(増粘剤、水)5重量部を常法により混合・攪拌することによって装飾層組成物1を製造した。
【0052】
(無機質補強材の製造)
無機質繊維シート、及び処理液としては、以下のものを用意した。
・無機質繊維シート:ガラスメッシュ、ガラス繊維の間隔2mm、厚み0.2mm
・処理液1:テトラメトキシシラン溶液
・処理液2:カルボキシル基含有アクリル樹脂シリコン変性物(シリコン化合物:テトラメトキシシラン)と、エポキシ樹脂の混合液
・処理液3:カルボキシル基含有アクリル樹脂と、エポキシ樹脂の混合液
【0053】
(無機質補強材1)
無機質繊維シートに対し、刷毛を用いて処理液1を塗付け量25g/mずつ両面に塗付し、無機質繊維シートの両面を処理液1で被覆処理した。処理された無機質繊維シートを23℃下で、処理液の被膜のゲル分率が5%となるように養生し、無機質補強材1を得た。
(無機質補強材2)
無機質繊維シートに対し、刷毛を用いて処理液2を塗付け量25g/mずつ両面に塗付し、無機質繊維シートの両面を処理液2で被覆処理した。処理された無機質繊維シートを23℃下で、処理液の被膜のゲル分率が5%となるように養生し、無機質補強材2を得た。
(無機質補強材3)
無機質補強材2を23℃下で、処理液の被膜のゲル分率50%となるように養生し、無機質補強材3を製造した。
(無機質補強材4)
無機質補強材2を23℃下で、処理液の被膜のゲル分率65%となるように養生し、無機質補強材4を製造した。
(無機質補強材5)
無機質補強材2を23℃下で、処理液の被膜のゲル分率80%となるように養生し、無機質補強材5を製造した。
(無機質補強材6)
無機質補強材2を150℃下で、処理液の被膜のゲル分率100%となるように養生し、無機質補強材6を製造した。
(無機質補強材7)
剥離下地上に載置した無機質繊維シートに対し、刷毛を用いて処理液3を塗付け量25g/mずつ両面に塗付し、無機質繊維シートの両面を処理液3で被覆処理した。処理された無機質繊維シートを23℃下で、処理液の被膜のゲル分率が5%となるように養生し、無機質補強材7を得た。
(無機質補強材8)
無機質補強材7を23℃下で、処理液の被膜のゲル分率80%となるように養生し、無機質補強材8を製造した。
【0054】
(試験例1)
シリコン樹脂製型枠(縦300mm×横300mm×深さ5mm)の内面に、装飾層組成物を塗工(塗付け量2kg/m)し、無機質補強材1を積層後、さらに装飾層組成物を塗工(塗付け量2kg/m)し、50℃下で24時間乾燥後、脱型して積層体1を得た。
得られた積層体1を90°折り曲げた後、表面のひび割れ、及び無機質補強材と装飾層の間の密着性を目視で評価した。その結果を表1に示す。
なお、評価基準は、以下の通りである。
・表面のひび割れ
A:無し
B:僅かに有り
C:有り
・密着性
A:無し
B:僅かに剥離が認められた。
C:剥離が認められた。
【0055】
(試験例2〜8)
試験例1の無機質補強材1に代えて、無機質補強材2〜8を使用した以外は同様にして積層体2〜8を製造し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0056】
(試験例9)
試験例1の無機質補強材1に代えて、未処理の無機質繊維シートを使用した以外は同様にして積層体9を製造し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0057】
さらに、積層体2〜6について、無機質補強材と装飾層との付着強度を以下の方法で評価した。
基材として、70mm×150mm×6mmのスレート板を用い、基材に接着材を塗付し積層体を貼り付け、50℃、24時間養生したものを試験体とした。上記の試験体に40mm×40mmの鋼製ジグを二液型エポキシ樹脂接着材にて接着した。24時間後に鋼製ジグに沿って周囲を40mm×40mmの大きさにスレート板に達するまで切り傷を付け、下部引張用の鋼製ジグ及び鋼製当て板を用いて、試料面に鉛直方向にオートグラフにて引張力を加えて最大引張荷重を求めた。その結果、積層体5において最も良い結果となった。
【0058】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾層及び無機質補強材を有する積層体であり、
(1)該装飾層は、有機質結合材及び有色粉粒体を含む装飾性組成物によって形成された層であり、
(2)該無機質補強材は、無機質繊維シートが珪素化合物を含む処理液によって、被覆処理されたものである
ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
上記無機質補強材は、無機質繊維シートが珪素化合物及び有機質結合材を含む処理液によって、被覆処理されたものであることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
上記無機質補強材の片面または両面に装飾層を有する請求項1または請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
基材に対し、接着材を介して請求項1〜請求項3のいずれかに記載の積層体を貼着することを特徴とする施工方法。
【請求項5】
上記基材が曲面部位を有しており、
該曲面部位に沿って、積層体を湾曲させて貼着することを特徴とする請求項4記載の施工方法。

【公開番号】特開2013−18153(P2013−18153A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151850(P2011−151850)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(510114125)株式会社エフコンサルタント (32)
【Fターム(参考)】