説明

積層光学部材用粘着シート

【課題】液晶ディスプレイパネル等の積層光学部材を作製する際に用いられる基材レス粘着シートであり、特に、輸送や保存している時に糊折れや糊汚れ等が発生し難く、また、積層光学部材の作製に使用された場合においては、粘着剤層によって積層された部分において糊欠け等が発生し難く、歩留まりよく積層光学部材を構成する各光学基材をその粘着剤層で積層することができるようにした、粘着シートの提供を目的とする。
【解決手段】一方の面に離型処理が施され、他方の面が非離型処理面となっている第1の支持体と、一方の面に離型処理が施され、他方の面が非離型処理面となっている第2の支持体とが、粘着剤層を介して、それぞれの離型処理面が粘着剤層に接するように積層されている基材レス粘着シートであって、第1の支持体あるいは第2の支持体の非離型処理面の少なくともいずれかにスリップ防止層が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、リアプロジェクションスクリーン等の積層光学部材を作製する際に用いられる基材レス粘着シートであり、特に、輸送や保存している時に糊折れや糊汚れ等が発生し難く、また、積層光学部材の作製に使用された場合においては、粘着剤層によって積層された部分において糊欠け等に起因する接着不良や表示不良等が発生し難く、歩留まりよく積層光学部材を構成する各光学基材をその粘着剤層で積層することができるようにした、積層光学部材用粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、リアプロジェクションディスプレイ等は、従来のブラウン管方式のディスプレイに代わり、広く普及してきている。普及する最大の要因としては、ブラウン管方式と比較した場合、ディスプレイの表示部分の大型化が容易で、しかも軽量化や薄型化が可能であるということが挙げられている。また、地上波放送のデジタル化、ハイビジョン化等の動向も普及要因の一つとして挙げられている。
【0003】
これらのディスプレイは、偏光、拡散、反射防止、波長カット等の各種光学的機能を有する光学基材が粘着剤層を介して積層された構成となっている。これらの光学基材は、品質のバラツキ防止やディスプレイ組立等の効率化等を目的に、個別の光学的機能を有するものが多く、それらの複数個を粘着剤層を介して貼り合わせることによって光学部材が作製されている場合が殆どである。これらの粘着剤層は、貼り合わせる段階でいちいち塗布して形成していては生産効率が著しく劣ってしまうため、一般的には離型処理が施された2枚の支持体の間に粘着剤層をその離型処理面が接するように挟み込んで積層、一体化した構成の、所謂基材レス粘着シートといわれるものを使用し、その中の粘着剤層を利用して各光学基材の貼り合わせを行っている。
【0004】
基材レス粘着シートは、上述の如く、離型処理が施された2枚の支持体のそれぞれの離型処理面の間に粘着剤層を挟持した構成のものであって、製品の形態が平板状のものであっても、巻き取り状のものであっても、それを輸送したり保管する場合、あるいは積層光学部材作製時の取り扱いの際には、支持体の非離型処理面同士が接することとなる。
【0005】
このような基材レス粘着シートにおいては、粘着剤層のはみ出し防止、厚みムラ防止のため、それが平板状の形態の場合は上から荷重をかけることが、また、巻き取り状の形態の場合は強テンションで巻き取ることが事実上難しいとされてきた。
【0006】
また、このような基材レス粘着シートは、各々の支持体への離型処理は粘着剤層を形成する前工程で実施されるのが一般的であり、離型処理に際して使用した離型処理剤中の極僅かな離型成分、例えばシリコーン成分が、支持体の非離型処理面や粘着剤層等に移行したり滲み出すことにより、様々な問題を起こすことがある。
【0007】
例えば、基材レス粘着シートを構成する支持体に施される離型処理に使用される離型処理剤の非離型処理面への移行や滲み出しは、輸送あるいは保存中の基材レス粘着シートの支持体の非処理面同士の摩擦を低下させることとなり、容易に滑りズレや巻きズレを発生させ、粘着剤層に折れ跡等の欠陥を生じさせ(以下、糊折れという)、また、離型処理剤の粘着剤層や粘着シート端面への滲み出しは、リワーク時の糊残り(以下、糊汚れという)の原因となったり、酷い場合には、移行した離型成分が粘着剤層の粘着力を低下させ、その粘着剤層を用いて作製された積層光学部材の各光学基材同志の積層部分において浮き
を発生させること(以下、糊欠けという)があり、ディスプレイそのものの表示不良を招く恐れがある。
【0008】
このような糊折れ、糊汚れ、糊欠けを防止するための従来の対策としては、光学部材/粘着剤層/剥離支持体(セパレーター)の構成になる接着型光学部材において、剥離支持体を厚くし、物理的に折れ等を防止する方法(例えば、特許文献1参照。)や、光学フィルム層/粘着剤層との構成になる光学フィルム積層体において、粘着剤層端部に粉体を付着させる方法(例えば、特許文献2参照。)や、光学基材/粘着層の構成になる光学部材の粘着剤層端部に非粘着性の噴霧塗膜を形成する方法(例えば、特許文献3参照。)、さらには粘着型光学フィルムの側辺を凹凸の繰り返し構造に成形する方法(例えば、特許文献4参照。)が提案されており、上述のような構成の基材レス粘着シートにも応用されてきた。しかし、これらの方法では効果が不十分であったり、粉体や噴霧塗膜のようなものを端部に形成した場合には異物となり易く、それによる汚染が逆に問題なったり、複雑な工程が必要となるため、より簡単で、十分な効果が得られる、積層光学部材の作製に使用される基材レス構成の積層光学部材用粘着シートの提供が強く求められていた。
【特許文献1】特開2000−121832号公報
【特許文献2】特開2001−272539号公報
【特許文献3】特開2000−258627号公報
【特許文献4】特開2001−033623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のような従来技術における問題点を解決すべくなされた本発明の課題は、一方の面に離型処理が施され、他方の面が非離型処理面となっている第1の支持体と、一方の面に離型処理が施され、他方の面が非離型処理面となっている第2の支持体とが、粘着剤層を介して、それぞれの離型処理面が粘着剤層に接するように積層されている基材レス粘着シートであって、その輸送や取り扱いの際に糊折れ、糊汚れ、糊欠け等が起こり難いようにした、積層光学部材の各光学基材の貼り合わせに用いられる積層光学部材用粘着シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような課題を解決するためになされ、請求項1に記載の発明は、一方の面に離型処理が施され、他方の面が非離型処理面となっている第1の支持体と、一方の面に離型処理が施され、他方の面が非離型処理面となっている第2の支持体とが、粘着剤層を介して、それぞれの離型処理面が粘着剤層に接するように積層されている基材レス粘着シートであって、第1の支持体あるいは第2の支持体の非離型処理面の少なくともいずれかにスリップ防止層が設けられていることを特徴とする積層光学部材用粘着シートである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1記載の積層光学部材用粘着シートにおいて、前記スリップ防止層と対ポリエチレンテレフタレートフィルムとのJIS K7125に基づいて測定した静摩擦係数が、0.60以上であることを特徴とする。
【0012】
さらにまた、請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の積層光学部材用粘着シートにおいて、前記スリップ防止層が、支持体の非離型処理面に連続的に設けられていることを特徴とする。
【0013】
さらにまた、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の積層光学部材用粘着シートにおいて、前記スリップ防止層が、支持体の非離型処理面の両端に設けられていることを特徴とする。
【0014】
さらにまた、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の積層光学部材用粘着シートにおいて、前記スリップ防止層が、無定形微粒子を含有することを特徴とする。
【0015】
さらにまた、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の積層光学部材用粘着シートにおいて、第1の支持体と第2の支持体の粘着剤層に対する剥離力が異なっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の積層光学部材用粘着シートは、輸送や保存等の際に所謂糊折れや糊汚れ等が発生し難く、また、液晶ディスプレイやリアプロジェクションディスプレイ等の積層光学部材の各光学基材の積層作業に使用された場合は、所謂糊欠け等に起因する接着不良や表示不良等が発生し難く、歩留まりよく積層光学部材を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の積層光学部材用粘着シートをその一例を示す図面に基づいて説明する。図1には、本発明の積層光学部材用粘着シートの概略の断面構成が示してある。
【0018】
この積層光学部材用粘着シートは、一方の面に離型処理が施され、他方の面が非離型処理面となっている第1の支持体1と、一方の面に離型処理が施され、他方の面が非離型処理面となっている第2の支持体3とが、粘着剤層2を介して、それぞれの離型処理面が粘着剤層に接するように積層されている基材レス粘着シートであって、第1の支持体1の非離型処理面の一部にはスリップ防止層4が設けられている。
【0019】
第1の支持体1と第2の支持体3は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、セロハン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等からなるプラスチックフィルム類や、LBKP、LBSP、LDP、NBKP、NBSP、NDP等の化学パルプや、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、さらにはDIP等の古紙パルプ等のパルプを主成分とする紙類、綿、麻、絹あるいは化学繊維等からなる布類、さらにそれらを貼り合わせたシート状の基材からなる。これらの中では、耐熱性、コスト、平滑性等の点から、ポリエステルフィルムが好ましく用いられる。
【0020】
各支持体1、3の厚さは、加工性、積層光学部材用粘着シートとしての作業性に問題を生じない範囲であれば特に制限されるものではないが、25〜100μm程度が一般的である。
【0021】
各支持体1、3の片面、すなわち後述する粘着剤層2と接する支持体1、3の一方の面には、離型処理が施されている。この処理は、液晶ディスプレイやリアプロジェクションディスプレイ等の積層光学部材の各光学基材、例えば反射防止板や拡散板等を貼り合わせ、積層・一体化する際に使用される粘着剤層2を支持体1、3から剥離し易くするために行うものである。
【0022】
この離型処理としては、シリコーン系離型剤や長鎖アルキル系離型剤、さらにはフッ素系離型剤等の離型処理剤を使用した処理を挙げることができる。この中では、離型性に富んだシリコーン系の離型処理剤を使用し、その塗膜を熱硬化あるいはUV等の照射により光硬化させて離型性を有する薄膜を形成する方法が一般的である。
【0023】
また本発明の積層光学部材用粘着シートは、一方の支持体を剥離した後、積層光学部材を構成する光学基材に粘着剤層をその露出した面に貼着し、その後もう一方の支持体も剥離し、しかる後に別の光学基材と貼着、積層して光学部材を作製する関係上、各支持体の
離型処理面における剥離力に差を与える必要がある。具体的には、粘着剤層に対して20mN/25mm以上、好ましくは30mN/25mm以上の剥離力差になるようそれぞれの支持体において離型処理を施しておく。なお、各離型処理面における剥離力の調整は、例えばシリコーン系離型処理剤を使用する場合には、離型成分であるシリコーン成分の配合調整で容易にコントロール可能であり、ポリエステルフィルムの場合、各メーカーから剥離力に差をもたせた種々のグレードのものが市販されているので、その組合せで十分対応可能である。
【0024】
一方、粘着剤層2の構成素材としては、それによって貼り付ける光学基材の光学特性に悪影響を与えるものでなければ特にその構成材料を制限するものではないが、アクリル系ポリマーにアクリルオリゴマー、シランカップリング剤および架橋剤を配合して得られる、いわゆるアクリル系粘着剤が一般的には使用される。
【0025】
なお、この粘着剤層2は、従来公知のエアーナイフコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、コンマコーター、リップコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、ビルブレードコーター、ショートドエルブレードコーター、ロールコーター、エクストルーダー等の各種装置を用い、上記したような離型処理剤の薄膜を支持体の離型処理面に塗工し、乾燥させることで、容易に形成することができる。
【0026】
前記アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとし、これに多官能性化合物と反応する官能基を有するモノマーを共重合させることにより得られる。また、このアクリル系ポリマー中にはカルボキシル基を導入することもできる。また、アクリル系ポリマーの重量平均分子量は40万以上、好ましくは80万〜200万のものが好適に用いられる。
【0027】
アクリル系ポリマーの主骨格を構成するアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の平均炭素数は1〜12程度のものであり、アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは単独で、あるいは複数種を組み合わせて使用できる。
【0028】
前記アクリル系ポリマーと共重合する多官能性化合物と反応する官能基を有するモノマーユニットとしては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基等を含有するモノマーを挙げることができる。カルボキシル基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等を挙げることができる。また、水酸基を有するモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリレート等を挙げることができる。また、エポキシ基を有するモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0029】
アクリル系ポリマー中の前記モノマーユニットの割合は、特に制限されるものではないが、アルキル(メタ)アクリレート100質量部に対して、モノマー0.5〜10質量部程度が一般的である。
【0030】
前記アクリルオリゴマーとしては、前記アクリル系ポリマーと同様のアルキル(メタ)アクリレートのモノマーユニットを主骨格とするものを用いることができ、同様の共重合モノマーを共重合したものを用いることもできる。
【0031】
また、前記シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス
(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらを単独または複数組み合わせて使用できる。なお、シランカップリング剤の添加量は特に限定されるものではないが、前記アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.03〜2.0質量部程度が一般的である。
【0032】
さらに、前記架橋剤としては、水酸基と反応し得る官能基を分子内に複数有する化合物であればよく、特に制限されるものではないが、コスト、取り扱い性の点から、多官能イソシアネート化合物が一般的である。
【0033】
多官能イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、スミジュールN(商品名,住友バイエルウレタン株式会社製)等のビュレットポリイソシアネート化合物、デスモジュールIL、デスモジュールHL(商品名;バイエルA.G.社製)、コロネートEH(商品名;日本ポリウレタン工業株式会社製)等のアダクトポリイソシアネート化合物等を挙げることができ、これらを単独または複数組み合わせて使用できる。なお、架橋剤の添加量は特に限定されるものではないが、前記アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.1〜3.0質量部程度が一般的である。
【0034】
そして、粘着剤層を構成する材料には、必要に応じて一般的に粘着剤に使用される粘着付与剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、充填剤、顔料、染料、硬化促進剤等の各種添加剤を、本発明の目的を逸脱しない範囲で使用することができる。
【0035】
一方、本発明におけるスリップ防止層は、第1の支持体1あるいは第2の支持体3の非離型処理面の少なくともいずれかに設けるものである。図1には、支持体1の非離型処理面の一部に設けられた例が示してある。このようなスリップ防止層は、支持体への離型処理実施後に、それを巻き取ったり、重ね合わせる際、処理面から非処理面への離型成分の僅かな移行があったとしても支持体の非離型処理面同士でスリップせず、製造された積層光学部材用粘着シートの搬送中や保存中における製品同志のスリップに起因する所謂糊折れや糊汚れ等に起因する接着不良や表示不良等が発生し難く、また、積層光学部材の各光学基材の積層作業に使用された場合には、所謂糊欠け等が発生し難く、歩留まりよく積層光学部材を作製できるように設けるものである。
【0036】
上述の目的で設けられるこのスリップ防止層は、例えばバインダー樹脂中にカオリンやタルク等の微粒子が分散されてなるスリップ防止剤のように、支持体1、3の非離型処理面同士のスリップ性を改善できるようにしたスリップ防止剤により形成される。
【0037】
前記バインダー樹脂としては、セルロース誘導体、スチレン樹脂、スチレン共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等を挙げることができる。これらは単独または複数の組み合わせ
で使用できる。
【0038】
また前記微粒子としては、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、サチンホワイト、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、シリカ、炭酸カルシウム、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロサイト、水酸化マグネシウム等の無機顔料や、アクリル系プラスチックピグメント、スチレン系プラスチックピグメント等の有機顔料等を挙げることができ、これらを単独または複数組み合わせて使用できる。スリップ防止の目的で添加される微粒子としては、その効果をより発揮できるように、無定形微粒子を使用することが好ましい。
【0039】
スリップ防止層は、このような構成になるスリップ防止剤により、支持体の片面の非離型処理面上に設けられるが、その膜厚は、特に制限されるものではないが、通常1.0〜8.0μm程度が好ましい。1.0μm未満では、スリップ防止効果を得ることが難しくなり、8.0μmを超えると、スリップ防止層の凝集破壊による粉落ちが発生し、粘着剤層中に異物として混入したり、粘着剤層への跡残りの原因となる可能性非常に高くなる。
【0040】
このスリップ防止層におけるスリップ防止性の目安としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとの間のおけるJIS K7125に基づいて測定される静摩擦係数が、0.60以上になるよう構成されることがより好ましい。
【0041】
スリップ防止層の形成は、特に限定されるものではなく、前記したスリップ防止剤を使用してグラビア方式、スクリーン方式等の公知の薄膜形成方式により行えばよい。また、支持体の非離型処理面への形成は、そのどちらか一方であっても、両方であっても、さらには部分的であっても全面に渡っていてもよい。非離型処理面に部分的に設けるには、例えば支持体の幅に対して、2%以上の幅で設けられていること、がより好ましい。
【0042】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明の内容はこれらに限定されるものではない。また、実施例において示す「部」は、特に明示しない限り質量部を示す。
まず、下記するように、スリップ防止層形成用塗液と粘着剤層形成用塗液を調整した。
<スリップ防止層形成用塗液の調整>
下記に示す塗液A〜塗液Cの調整を行った。
[塗液A]
ポリウレタンエマルション 70部
(商品名:HUX−240、旭電化工業株式会社製)
コロイダルシリカ 30部
(商品名:AT−30T、旭電化工業株式会社製)
[塗液B]
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 20部
(商品名:ソルバインA、日信化学工業株式会社製)
球状炭酸カルシウム 5部
(商品名:マイクロパウダー3S、富士シリシア化学株式会社製)
トルエン 25部
メチルエチルケトン 50部
[塗液C]
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 20部
(商品名:ソルバインA、日信化学工業株式会社製)
無定型シリカ 2部
(商品名:サイリシア350、富士シリシア化学株式会社製)
トルエン 28部
メチルエチルケトン 50部
<粘着剤層形成用塗液の調整>
[塗液D]
アクリル系ポリマー溶液 99部
(商品名:オリバインBPS6127、東洋インキ製造株式会社製)
トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート 0.9部
(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン工業株式会社製)
シランカップリング剤 0.1部
(商品名:KBM−403、信越化学工業株式会社製)
【実施例1】
【0043】
厚さ38μmの片面離型処理ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製 E7002:剥離力62mN/25mm)を第1の支持体とし、まずその非離型処理面に、塗液Aを用いて、グラビア印刷方式により乾燥被膜厚が4μmとなるように不連続模様を印刷した後、乾燥させ、不連続模様状のスリップ防止層を設けた。続いて、第1の支持体の離型処理面に、塗液Dを使用し、リップコーターにより乾燥塗布膜厚が25μmとなるように薄膜を形成した後、乾燥させ、粘着剤層を設けた。そして、厚さ25μmの片面離型処理ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製 E7006:剥離力29mN/25mm)を第2の支持体とし、その離型処理面を前記工程で得られた第1の支持体上の粘着剤層と接するようにして貼り合わせることで、実施例1の積層光学部材用粘着シートを作製した。なお、塗液Aより形成されたスリップ防止層とポリエチレンテレフタレートとのJIS K7125に基づいて測定された摩擦係数は、0.45となっていた。
【実施例2】
【0044】
塗液Aの代わりに塗液Bを使用した以外、実施例1と同様の方法で、実施例2の積層光学部材用粘着シートを作製した。なお、塗液Bより形成されたスリップ防止層とポリエチレンテレフタレートとのJIS K7125に基づいて測定した摩擦係数は、0.61となっていた。
【実施例3】
【0045】
厚さ38μmの片面離型処理ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製 E7002:剥離力62mN/25mm)を第1の支持体とし、まずその非離型処理面に、塗液Aを使用し、グラビア印刷方式により乾燥被膜厚が4μmとなるように連続模様を印刷した後、乾燥させ、連続模様状のスリップ防止層を設けた。一方、第1の支持体の離型処理面には、塗液Dを使用し、リップコーターにより乾燥塗布膜厚が25μmとなるように薄膜を形成した後、乾燥させ、粘着剤層を設けた。そして、厚さ25μmの片面離型処理ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製 E7006:剥離力29mN/25mm)を第2の支持体とし、その離型処理面が前記工程で得られた第1の支持体上の粘着剤層と接するようにして貼り合わせることで、実施例3の積層光学部材用粘着シートを作製した。
【実施例4】
【0046】
厚さ38μmの片面離型処理ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製 E7002:剥離力62mN/25mm)を第1の支持体とし、まずその非離型処理面の両端部分に、塗液Aを使用し、グラビア印刷方式により乾燥被膜厚が4μmとなるように連続模様を印刷した後、乾燥させ、連続模様状のスリップ防止層を設けた。これに続いて、もう一方の離型処理面に、塗液Dを使用し、リップコーターにより乾燥塗布膜厚が25μmとなるように薄膜を形成した後、乾燥させ、粘着剤層を設けた。そして、厚さ25μmの片面離型処理ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製 E7006:剥離力29mN/25mm)を第2の支持体とし、その離型処理面を第1の支持体に設けられた粘着剤層に接するようにして貼り合わせることで、実施例4の積層光学部材用粘着シートを作製した。
【実施例5】
【0047】
塗液Aの代わりに塗液Cを使用した以外は実施例1と同様の方法で、実施例5の積層光学部材用粘着シートを作製した。なお、塗液Cより形成されたスリップ防止層とポリエチレンテレフタレートとのJIS K7125に基づいて測定した摩擦係数は、0.63となっていた。
【実施例6】
【0048】
厚さ38μmの片面離型処理ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製 E7002:剥離力62mN/25mm)を第1の支持体とし、その離型処理面に、塗液Dを使用し、リップコーターにより乾燥塗布膜厚が25μmとなるように薄膜を形成した後、乾燥させ、粘着剤層を設けた。続いて、厚さ25μmの片面離型処理ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製 E7006:剥離力29mN/25mm)を第2の支持体とし、その離型処理面を第1の支持体に設けられた粘着剤層に接するようにして貼り合わせることで、比較のための実施例6の積層光学部材用粘着シートを作製した。なお、第1に支持体の非離型処理面とポリエチレンテレフタレートとのJIS K7125に基づいて測定された摩擦係数は、0.29となっていた。
<評価>
実施例1〜6に係る各積層光学部材用粘着シートを1250mm×1250mmの平板にカットし、その200枚を積み重ねて梱包した状態(状態1)と、実施例1〜6に係る各積層光学部材用粘着シートを1300mm幅の6インチプラスチック管の中央部に1250mm幅で1000m巻き取った巻き取りを縦置きで梱包した状態(状態2)と、状態2と同様の巻き取りを横置きで梱包した状態(状態3)を設定し、これらの3種の梱包状態で約10時間トラック輸送した後開封し、輸送前との外観変化を目視判断するとともに、巻き取りに関しては、平板と同じく1250mm×1250mmに200枚断裁後、糊折れ、糊欠けが発生している枚数を数えた。
【0049】
状態1の評価結果を表1に、状態2の評価結果を表2に、状態3の評価結果を表3にそれぞれ示した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

表1〜3から分かるように、実施例1〜5の積層光学部材用粘着シートは、実施例6の積層光学部材用粘着シートと比較すると、明らかに輸送における梱包状態の保持性能に優れると同時に、その優れる保持性故に糊折れ、糊欠けといった現象も発生し難く、積層光学部材用粘着シートとしての性能そのものの欠陥も、非常に起こり難いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の積層光学部材用粘着シートの概略の断面構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1:第1の支持体
2:粘着剤層
3:第2の支持体
4:スリップ防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に離型処理が施され、他方の面が非離型処理面となっている第1の支持体と、一方の面に離型処理が施され、他方の面が非離型処理面となっている第2の支持体とが、粘着剤層を介して、それぞれの離型処理面が粘着剤層に接するように積層されている基材レス粘着シートであって、第1の支持体あるいは第2の支持体の非離型処理面の少なくともいずれかにスリップ防止層が設けられていることを特徴とする積層光学部材用粘着シート。
【請求項2】
前記スリップ防止層とポリエチレンテレフタレートフィルムとのJIS K7125に基づいて測定した静摩擦係数が、0.60以上であることを特徴とする請求項1記載の積層光学部材用粘着シート。
【請求項3】
前記スリップ防止層が、支持体の非離型処理面に連続的に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の積層光学部材用粘着シート。
【請求項4】
前記スリップ防止層が、支持体の非離型処理面の両端に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層光学部材用粘着シート。
【請求項5】
前記スリップ防止層が、無定形微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層光学部材用粘着シート。
【請求項6】
第1の支持体と第2の支持体の粘着剤層に対する剥離力が異なっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層光学部材用粘着シート。

【図1】
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【公開番号】特開2007−31470(P2007−31470A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212361(P2005−212361)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】