説明

積層圧電素子の製造方法

【課題】 積層圧電素子の三面に、特別な構造の装置を用いることなく、膜質と膜厚が一定な外部電極を効率良く形成でき、外部電極の除去工程も必要ない製造方法を提供すること。
【解決手段】 第1の面(第1の側面)94に第1の外部電極(第1の側面電極)を形成した複数の積層圧電体9を、第2の面(第2の側面)95がターゲット13の金属粒子が放出される面と平行な面と角度をなすように並置させて、コーティングを行い第2の外部電極(第2の側面電極)951と配線電極921を同時に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエーターに用いられる積層圧電素子の製造方法に係り、特に外部電極の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクチュエーターに用いられる積層圧電素子は、単層の圧電素子よりも大きな変位を得ることができる。積層圧電素子の構造について、以下に図面を用いて説明する。
【0003】
図4は、積層圧電素子の説明図であり、図4(a)は積層圧電素子の斜視図、図4(b)は積層圧電素子の正面図である。図4(a)に示したように積層圧電素子1は、圧電セラミックス層6と第1の内部電極71と第2の内部電極72が交互に積層され、第1の内部電極71が露出している第1の側面4と、第2の内部電極72が露出している第2の側面5と、内部電極が露出していない上面2、底面3を有する直方体形状である。第1の内部電極71は、第2の側面5までは至らない形状であり、第2の内部電極72は、第1の側面4までは至らない形状である。
【0004】
外部電極としては、第1の側面4に第1の側面電極41、第2の側面5に第2の側面電極51、上面2の第2の側面電極51側の部分に第2の側面電極51と接続される配線電極21が形成されている。ここで配線電極21は、第2の側面電極51との配線を容易にするために設けられた外部電極であり、第1の側面電極41とは分離されている。底面3に外部電極は形成されていない。
【0005】
上述した積層圧電素子は、積層圧電体母体を短冊状に切断した積層圧電体に外部電極を形成した後、長手方向に垂直に所定の長さに切断して製造されている。ここで、積層圧電体母体は、内部電極が印刷されたセラミックシートを積層し、プレス圧着後、脱バインダーを行い、焼成して製造されている。以下に積層圧電素子の製造方法について図面を用いて説明する。
【0006】
図5は、積層圧電体母体の斜視図であり、図6は、積層圧電体の斜視図である。図5に示したように積層圧電体母体8は、圧電セラミックス層86と第1の内部電極871と第2の内部電極872が交互に積層されている。図5の例では5本の積層圧電体が切り取れるように内部電極パターンが形成されている。すなわち、第1の内部電極871、第2の内部電極872は、図4で説明した第1の内部電極71、第2の内部電極72が5個連続した内部電極パターンである。
【0007】
積層圧電体母体8を切断線81にて短冊状に切断すると、積層圧電体が得られる。図6に示したように積層圧電体9は、第1の側面94には第1の内部電極971が露出し、第2の側面95には第2の内部電極972が露出するように切断されている。第1の内部電極971は、第2の側面95までは至らないように切断され、第2の内部電極972は、第1の側面94までは至らないように切断されている。
【0008】
この積層圧電体9の、第1の側面94、第2の側面95に側面電極を形成し、上面92に配線電極を形成し、長手方向に垂直に所定の長さに切断すると図4で説明した積層圧電素子となる。
【0009】
積層圧電体に外部電極を形成する方法としては、真空中で外部電極の原料となるターゲットの金属へ、高エネルギー粒子をぶつけ、その衝撃で金属成分をたたき出し、基板上に金属成分の膜を形成するスパッタリングや蒸着、イオンプレーティングなどのPVD法(物理気相成長法)が用いられている。
【0010】
上述の方法により積層圧電体に外部電極をコーティングしようとすると、3つの面に外部電極を形成しなければならないため、1面毎に成膜を行い、3回の電極形成工程が必要であった。
【0011】
そこで、外部電極を効率よく形成する方法が特許文献1に開示されている。以下に特許文献1に記載の外部電極形成方法について図面を用いて説明する。
【0012】
図7は、従来の外部電極形成方法に係る装置の説明図である。図7はスパッタリング装置内に複数の積層圧電体9が設置された形態を示し、下方に配置されたターゲットからの放出粒子を矢印で示している。図7に示した複数の積層圧電体9は、粘着シート18で回転固定板16に固定されている。回転固定板16を回転軸17を中心にして回転させながら成膜することにより、ターゲットからの角度を変化させて積層圧電体9の3つの面に外部電極を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−197992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載の外部電極形成方法では、回転固定板を回転させる機構を備える必要があるため、スパッタリング装置に特別な構造を設ける必要がありコストがかかるという問題があった。
【0015】
また、外部電極を形成する過程で回転固定板を回転させるために、ターゲットと回転固定板に固定された積層圧電体の距離が常に変化し、成膜厚みと膜質が一定とならず、外部電極の品質にバラツキがあるという問題があった。
【0016】
特許文献1に記載の回転固定板を備えていないスパッタリング装置で外部電極を形成しようとすると、積層圧電体に1面ずつ外部電極を形成するので、3回の外部電極形成工程が必要となり作業効率が悪いという問題があった。
【0017】
特許文献1に記載の回転固定板の有無にかかわらず従来の外部電極形成方法によれば、積層圧電体の3つの面の全面に外部電極が形成される。上面の全面に外部電極が形成されると、側面電極同士が導通してしまう。そのため、上面に形成された外部電極を部分的に除去して絶縁部を設ける必要が生じ、工数が増大するという問題があった。
【0018】
また、積層圧電素子の外部電極において側面電極と配線電極が接続された部分には電流が集中しやすい。ところが従来の方法では接続部分の電極厚みが薄いので、電流が集中した場合には、導通不良が発生する可能性があるという問題があった。
【0019】
本発明の目的は、積層圧電素子の三面に、特別な構造の装置を用いることなく、膜質と膜厚が一定な外部電極を効率良く形成でき、外部電極の除去工程も必要ない製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の課題を解決するために、本発明は積層圧電体への外部電極形成方法を検討してなされたものである。すなわち、本発明によれば、複数の圧電セラミックス層内に第1の内部電極と第2の内部電極が交互に積層された直方体形状の積層圧電体を備え、前記積層圧電体に前記第1の内部電極が引き出された第1の面と、前記第1の面と対向し前記第2の内部電極が引き出された第2の面と、前記第1の面及び前記第2の面と接し積層方向最上部に位置する第3の面と、前記第1の面に第1の外部電極と、前記第2の面に第2の外部電極と、前記第3の面に前記第2の外部電極と接続される配線電極をスパッタリングあるいは蒸着により形成し、長手方向に切断して得られる積層圧電素子の製造方法であって、前記第1の面に前記第1の外部電極を形成した前記積層圧電体複数個を、前記第1の面及び前記第2の面以外が互いに接し、かつ前記第2の面がターゲットあるいは蒸着源の金属粒子が放出される面と平行な面と角度をなすように並置させ、前記第2の外部電極と前記配線電極を同時に形成することを特徴とする積層圧電素子の製造方法が得られる。
【0021】
本発明によれば、前記角度が30°以上45°以下であることを特徴とする上記の積層圧電素子の製造方法が得られる。
【0022】
本発明によれば、前記積層圧電体を前記ターゲットあるいは蒸着源の金属粒子が放出される面と一定間隔を保ちながら、長手方向に少なくとも1回往復移動させて、前記第1の外部電極、前記第2の外部電極及び前記配線電極を形成することを特徴とする上記の積層圧電素子の製造方法が得られる。
【0023】
本発明によれば、前記積層圧電体と、前記積層圧電体より高い寸法を有するマスク材を、前記積層圧電体の前記第1の面及び前記第2の面以外の面と前記マスク材が接するように、交互に配置して前記第1の外部電極を形成することを特徴とする上記の積層圧電素子の製造方法が得られる。
【0024】
本発明によれば、前記マスク材の高さ寸法は、前記積層圧電体の高さの110%以上120%未満の寸法 であることを特徴とする上記の積層圧電素子の製造方法が得られる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、上述のような積層圧電素子へ外部電極を形成する場合に、第1の面(第1の側面)への外部電極を形成した後、第2の面(第2の側面)及び第3の面(上面)への外部電極形成を行い、2回の外部電極形成で作業を完了することができるので、生産の効率化を図ることができる。
【0026】
配線電極の形成において、後工程で外部電極を除去する等の工数をかける必要がなく、生産の効率化を図ることができる。
【0027】
固定板を回転させる特別な機構を備えた装置を使用することなく、外部電極を形成することができる。
【0028】
積層圧電体をターゲットあるいは蒸着源の金属粒子が放出される面と一定間隔を保ちながら、長手方法に少なくとも1回往復移動させて成膜する方法なので、ターゲットあるいは蒸着源に対して積層圧電体の距離が一定であるため外部電極の膜厚が一定で膜質バラツキの少ない成膜が可能となる。
【0029】
積層圧電体の第1の面(第1の側面)に外部電極を形成する場合に、両隣に高さ寸法が高いマスク材を配置して成膜することによって、第1の面(第1の側面)と垂直な第3の面(上面)及び底面に回りこみにより外部電極が形成されずに、第1の面(第1の側面)だけに第1の外部電極(第1の側面電極)を形成できる。
【0030】
積層圧電体の第2の面(第2の側面)に外部電極を形成する場合に、積層圧電体を傾けて、かつ第3の面(上面)に重なり合う部分を設けて並置して、電流集中が発生する第2の外部電極(第2の側面電極)と配線電極の接続部分をターゲットと対向させて成膜を行うので、接続部分の膜厚を十分に確保することができる。
【0031】
したがって、本発明の外部電極形成方法によれば、特別な機構を備えた装置を使用することなく、積層圧電体に第1の外部電極(第1側面電極)、第2の外部電極(第2の側面電極)と配線電極を効率よく十分に膜厚を確保して成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による積層圧電体の第1の面(第1の側面)に外部電極を形成する方法の説明図。
【図2】本発明による積層圧電体の第2の面(第2の側面)に外部電極を形成する方法の説明図。
【図3】本発明による積層圧電体の第2の面(第2の側面)と第3の面(上面)に外部電極を形成する方法における固定板と積層圧電体の説明図。
【図4】積層圧電素子の説明図。図4(a)積層圧電素子の斜視図。図4(b)積層圧電素子の正面図。
【図5】積層圧電体母体の斜視図。
【図6】積層圧電体の斜視図。
【図7】従来の外部電極形成方法に係る装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。 図1は本発明による積層圧電体の第1の面(第1の側面)に外部電極を形成する方法の説明図である。スパッタリング装置にて外部電極をコーティングする場合を例に説明する。図1は、スパッタリング装置内で複数の積層圧電体9の第1の面(第1の側面)94をターゲット13に向けて平面固定板14に垂直に並置し、第1の面(第1の側面)94に第1の外部電極(第1の側面電極)941を形成している状態を示し、ターゲットからの放出される金属粒子を矢印で示している。
【0034】
ターゲットとしては、Ag、Au、Pt、Cu、Ni、Cr、Ti及びそれらの合金などを用いる。外部電極形成の条件としては、例えば、Ar雰囲気0.4〜1.2Paで放電させスパッタリングを行う。外部電極の構造としては単層構造でも良いが、例えば下地にコンタクト層としてNiを成膜し、その上に電極層としてAgを成膜する二層構造としてもよい。このとき、膜厚は約1μmが好ましい。
【0035】
平面固定板14は、図1に示したようにターゲット13と対向して平行な平面形状である。複数の積層圧電体9を平面固定板14に並置する方法について図1を用いて説明する。
【0036】
左端に、高さが積層圧電体9よりも高いマスク材15を、平面固定板14に垂直に固定する。右隣に、積層圧電体9の第1の面(第1の側面)94をターゲットと対向する方向に向けて垂直に固定する。以下同様にマスク材15と積層圧電体9を交互に平面固定板14に固定し、右端にマスク材15を並置する。
【0037】
このように、平面固定板14に複数の積層圧電体9を並置し、図1においてターゲットの金属粒子が放出される面と平行な状態を保持し、手前から後ろに向かってターゲット13の金属粒子が放出される面と平行に往復移動させながらスパッタリングを複数回行うことにより、ターゲット13と対向している第1の面(第1の側面)94だけに電極が形成されるので、積層圧電体9の第1の外部電極(第1の側面電極)941を形成することができる。
【0038】
ここで、マスク材15は、外部電極を形成する第1の面(第1の側面)94に垂直な第3の面(上面)92、底面93へ回り込みにより外部電極が形成されてしまうことを防ぐために、積層圧電体9よりも高さが必要である。マスク材15の高さは積層圧電体9の高さよりも10%以上20%未満であることが好ましい。
【0039】
マスク材15を設けなければ、第3の面(上面)92、底面93に積層圧電体9の高さ寸法のバラツキ分の外部電極が形成されてしまう。一方でマスク材15を20%以上に高くしすぎると、ターゲットから影の部分ができるため、第1の外部電極(第1の側面電極)941の膜厚を確保することができない。
【0040】
マスク材15は、成膜時の熱による熱膨張や変形が少なく加工性に優れたセラミックスが好ましいが、耐熱性があれば材質については問わない。
【0041】
次に、図2は、本発明による積層圧電体の第2の面(第2の側面)と第3の面(上面)に外部電極を形成する方法の説明図である。図3は、本発明による積層圧電体の第2の面(第2の側面)と第3の面(上面)に外部電極を形成する方法における固定板と積層圧電体の説明図である。
【0042】
図2は、スパッタリング装置内にターゲット13と対向させて複数の積層圧電体9を隣同士が重なり合う部分を設けて固定板10に斜めに並置した形態を示し、第2の面(第2の側面)95と第3の面(上面)92の一部に第2の外部電極(第2の側面電極)951、配線電極921を形成している状態を示している。ターゲットから放出される金属粒子を矢印で示している。図2は、固定板10に複数の積層圧電体9を並置した状態を示している。
【0043】
固定板10は、図2に示したように、連続した鋸状の切り込み部11を備えている。図2、図3の例では固定板10は、鋸状の切り込み部11に8本の積層圧電体を並置できる形状である。
【0044】
次に、複数の積層圧電体を固定板に並置する方法について図2を用いて説明する。図2の左端の鋸状の切り込み部11から、順番に右に向けて並置するように説明する。
【0045】
左端の鋸状の切り込み部11に積層圧電体9と同一形状のマスク材12の直交する2面を嵌め合わせる。右隣の鋸状の切り込み部11に、積層圧電体9の第1の面(第1の側面)94と底面93を嵌め合わせる。すると第2の面(第2の側面)95の全面はターゲット13と対向するが、第3の面(上面)92はマスク材12と重なりあう部分があるので一部だけがターゲット13と対向する。次の鋸状の切り込み部11に積層圧電体9の第1の面(第1の側面)94と底面93を嵌め合わせる。すると同様に第2の面(第2の側面)95の全面はターゲット13と対向するが、第3の面(上面)92は左隣の積層圧電体9の底面93と重なりあう部分があるので一部だけがターゲットと対向する。以下同様に積層圧電体9を並置して、右端には再び積層圧電体9と同一形状のマスク材12を並置する。
【0046】
このように、固定板10に複数の積層圧電体9を並置し、図2においてターゲットと平行な状態を保持し、図3における固定板10の長手方向である矢印で示した移動方向20へ往復移動させながらスパッタリングを複数回行うことにより、積層圧電体9のターゲット13と対向している部分だけに電極が形成されるので、第2の外部電極(第2の側面電極)951と配線電極921を形成することができる。
【0047】
固定板10に配置された積層圧電体の両端は隣に配置される積層圧電体と重なり合う部分がないので、第3の面(上面)の全面に電極が形成されてしまう。配線電極を形成するためには、成膜された電極を削除する必要がある。そこで、両端の切り込み部11には積層圧電体ではなく、同一形状のマスク材12を配置している。
【0048】
マスク材12は、成膜時の熱による熱膨張や変形が少なく加工性に優れたセラミックスが好ましいが、耐熱性があれば、材質については問わない。
【0049】
ここで、固定板10をターゲット13と平行な状態を保持した状態で移動させ、ターゲット13と複数回対向させることよってスパッタリングを行うことにより成膜時において、マスク材による影により膜厚にバラツキができないようにしている。
【0050】
図2において、積層圧電体9は角度Xの傾きを持って固定板10に配置されている。角度Xは、第2の面(第2の側面)95とターゲット13の金属粒子が放出される面と平行な面との角度と同一である。積層圧電体9の第2の面(第2の側面)95と第3の面(上面)92に均一な外部電極を形成するためには、角度Xは、30°以上45°以下の範囲であることが好ましい。
【0051】
角度Xが30°未満の状態では、積層圧電体9における第3の面(上面)92とターゲット13の垂直方向との角度が鋭角過ぎてしまい、配線電極921の膜厚を確保することができない。角度Xが46°以上の場合は、固定板10に積層圧電体9を安定して重ね合わせて並置することができない。
【0052】
積層圧電体9への第1の外部電極(第1の側面電極)941、第2の外部電極(第2の側面電極)951と配線電極921の形成は、まず第1の外部電極(第1の側面電極)941を形成した後に、第2の外部電極(第2の側面電極)951と配線電極921を同時に形成する順番が望ましい。始めに第2の外部電極(第2の側面電極)951と配線電極921を形成した積層圧電体9に第1の外部電極(第1の側面電極)941を形成しようとして、図1に示したように第1の面(第1の側面)94をターゲット13と対向させて配置すると、第1の面(第1の側面)94の両隣には高さ寸法が高いマスク材15が並置されているが、第3の面(上面)92の配線電極921が形成されていない絶縁部分に回り込みにより電極が形成されてしまう可能性があるためである。
【0053】
第1の外部電極(第1の側面電極)941、第2の外部電極(第2の側面電極)951と配線電極921のコーティングは、スパッタリングに限らず、蒸着、イオンプレーティングなどのPVD法(物理気相成長法)においても同様に実施することができる。
【実施例】
【0054】
以下に本発明の実施例について説明する。まずチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とするセラミックス原料粉末とバインダーを混合したセラミックススラリーを、シート状に成膜した。成膜されたセラミックスシートに内部電極を印刷後に積層してプレス圧着し成型した。得られた積層体を脱バインダー及び、焼成を行うことで図5に示した積層圧電体母体8を得た。
【0055】
積層圧電体母体8を切断線81にて切断し、図6に示したような直方体形状の積層圧電体9を得た。積層圧電体の外形寸法は、1.0×1.0×40mmとした。
【0056】
次に外部電極は、スパッタリング装置を用いてコーティングを行った。スパッタリング装置内にて、図1に示した平面固定板14に積層圧電体9の第1の面(第1の側面)94をターゲット13と対向させて、マスク材15と交互に垂直に並置した。マスク材の寸法は1.0×1.15×40mmとして、積層圧電体よりも高さ寸法が15%高いマスク材を用いた。
【0057】
スパッタリング装置内で1.0×10−3Pa以下まで真空引きを行い、下地にコンタクト層としてNiを成膜しその上に電極層としてAgを成膜する二層構造としてスパッタリングを行い、第1の外部電極(第1の側面電極941)を形成した。1μmの膜厚の第1の外部電極(第1の側面電極)941が得られた。この時、積層圧電体9の長手方向へ向かってターゲット13との距離を保持しながら10回往復移動させることよってスパッタリングを行い、第1の外部電極(第1の側面電極)941を形成した。
【0058】
次に図2に示した固定板10の鋸状の切り込み部11に、積層圧電体9の第1の面(第1の側面)94と底面93を嵌め合わせ、第3の面(上面)92と底面93が重なり合う部分を設けて、並置して、両端にマスク材12を配置した。ここで固定板においてターゲット13に平行な面と第2の面(第2の側面)との角度は30°とした。
【0059】
スパッタリング装置内で第1の外部電極(第1の側面電極)941を形成した条件と同様に、1.0×10−3Pa以下まで真空引きを行い、下地にコンタクト層としてNiを成膜しその上に電極層としてAgを成膜する二層構造としてスパッタリングを行い、第2の外部電極(第2の側面電極)951と配線電極921を形成し、1μmの膜厚の電極が得られた。この時、積層圧電体9の長手方向へ向かってターゲット13との距離を保持しながら10回往復移動させることよってスパッタリングを行い、第2の外部電極(第2の側面電極)951と配線電極921を同時に形成した。
【0060】
幅寸法1.0mmの上面92において、幅0.6mmの配線電極921が形成され、絶縁部分の幅は0.4mmとなった。
【0061】
以上本発明による積層圧電素子の外部電極形成方法により、積層圧電体9に1μmの膜厚の第1の外部電極(第1の側面電極)941、第2の外部電極(第2の側面電極)951と配線電極921を効率よく形成することができた。
【符号の説明】
【0062】
1 積層圧電素子
2、92 上面
3、93 底面
21、921 配線電極
4、94 第1の側面
5、95 第2の側面
41、941 第1の側面電極
51、951 第2の側面電極
6、86 圧電セラミックス層
71、871、971 第1の内部電極
72、872、972 第2の内部電極
8 積層圧電体母体
81 切断線
9 積層圧電体
10 固定板
11 切り込み部
12、15 マスク材
13 ターゲット
14 平面固定板
16 回転固定板
17 回転軸
18 粘着シート
20 移動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電セラミックス層内に第1の内部電極と第2の内部電極が交互に積層された直方体形状の積層圧電体を備え、前記積層圧電体に前記第1の内部電極が引き出された第1の面と、前記第1の面と対向し前記第2の内部電極が引き出された第2の面と、前記第1の面及び前記第2の面と接し積層方向最上部に位置する第3の面と、前記第1の面に第1の外部電極と、前記第2の面に第2の外部電極と、前記第3の面に前記第2の外部電極と接続される配線電極をスパッタリングあるいは蒸着により形成し、長手方向に切断して得られる積層圧電素子の製造方法であって、
前記第1の面に前記第1の外部電極を形成した前記積層圧電体複数個を、前記第1の面及び前記第2の面以外が互いに接し、かつ前記第2の面がターゲットあるいは蒸着源の金属粒子が放出される面と平行な面と角度をなすように並置させ、前記第2の外部電極と前記配線電極を同時に形成することを特徴とする積層圧電素子の製造方法。
【請求項2】
前記角度が30°以上45°以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層圧電素子の製造方法。
【請求項3】
前記積層圧電体を前記ターゲットあるいは蒸着源の金属粒子が放出される面と一定間隔を保ちながら、長手方向に少なくとも1回往復移動させて、前記第1の外部電極、前記第2の外部電極及び前記配線電極を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の積層圧電素子の製造方法。
【請求項4】
前記積層圧電体と、前記積層圧電体より高い寸法を有するマスク材を、前記積層圧電体の前記第1の面及び前記第2の面以外の面と前記マスク材が接するように、交互に配置して前記第1の外部電極を形成することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層圧電素子の製造方法。
【請求項5】
前記マスク材の高さ寸法は、前記積層圧電体の高さの110%以上120%未満であることを特徴とする請求項4に記載の積層圧電素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−8820(P2013−8820A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140271(P2011−140271)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】