説明

積層型パワーインダクタ及びその製造方法

【課題】内部電極パターンによるコイルをできるだけ大きく形成することにより、容量を確保できる積層型パワーインダクタ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による積層型パワーインダクタ100は、複数のボディシートが積層された積層体110と、ボディシートに形成され、積層体110の側面に露出されるように形成される内部電極パターンと、この内部電極パターンの露出部を保護するシーリング部130と、内部電極パターンの組み合わせにより形成されたコイル部の両端に電気的に連結される外部電極120と、を含む。コイル部の内部面積を40〜50%以上増大させることができるため、磁束が流れる空間を十分に確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーインダクタ(Power inductor)に関し、より詳細には、内部電極が印刷された複数のボディシートが積層されることによりコイル部を形成する積層型パワーインダクタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型 Power インダクタは、携帯機器内のDC−DCコンバータのような電源回路に主に用いられており、開発方向は、小型化、高電流化、低い直流抵抗などに重点がおかれている。現在DC−DCコンバータの高周波化及び小型化に伴い、既存の巻線型チョークコイル(Choke Coil)の代わりに積層型パワーインダクタの使用が増大している。
【0003】
特に、パワーインダクタの場合、フェライトの磁化を遅らせて高電流環境下でインダクタンスの特性を維持する特性を有している。磁化を遅らせる方法としては、磁束が流れる経路の中央に非磁性体物質を配置する方法と、磁性体微粉を非磁性体によりアイソレーション(isolation)させる方法などが用いられる。
【0004】
積層型パワーインダクタの場合、高温で電極とともにフェライトボディを同時焼結しなければならないため、層と層の間に非磁性体を挿入する方法が主に用いられている。しかし、このような方法は、巻線型に比べコストと信頼性において優れているが、バイアス(bias)特性が良好でないという短所がある。
【0005】
近年、パワーインダクタを主に使用しているスマートフォンのディスプレイが大きくなりアプリケーションプロセッサの動作速度が速くなるにつれてバッテリー消費が激しくなっているため、DC−DCコンバータの効率が重要になるとともに高電流パワーインダクタの必要性が高まっている。
【0006】
高電流環境下で用いられるパワーインダクタは、内部回路に用いられる内部電極の線幅が広く厚く設けられる。また、非磁性体の使用により容量(インダクタンス)を確保するのが難しいため、できるだけコイルを大きく巻くのが有利であるが、それによってチップの端部のマージン部が内部電極の段差によって分離されて不良が生じやすい。
【0007】
図1は、従来の積層型パワーインダクタの内部電極を示す図面であって、Aは、内部電極パターンによるコイルを大きく形成するために内部電極パターンを確張する方向を示すものであり、Bは、内部電極パターンの線幅を示すものである。図1に図示されたように、コイルを大きく形成するほどボディシートのマージン部Cが減少され、内部電極パターンの段差によりチップの端部が分離される不良が発生する。そのため、内部電極パターンによるコイルを大きく形成することによりインダクタの容量を確保する方法には限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−165973号公報
【特許文献2】特許第2807135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記問題点を解決するために導き出されたものであり、内部電極パターンによるコイルをできるだけ大きく形成することにより、容量を確保できる積層型パワーインダクタ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を果たすための本発明の積層型パワーインダクタは、複数のボディシートが積層された積層体と、前記ボディシートに形成され、前記積層体の側面に露出するように形成される内部電極パターンと、前記内部電極パターンの露出部を保護するシーリング部と、前記内部電極パターンの組み合わせにより形成されたコイル部の両端に電気的に連結される外部電極と、を含むことができる。
【0011】
また、前記シーリング部は磁性体材質であってもよく、特に、磁性体粉末のMC(Metal Composite)であってもよい。
【0012】
また、前記内部電極パターンは、前記積層体の両側面に露出することができる。
【0013】
さらに、前記積層型パワーインダクタは、前記積層されたボディシートの間に挿入され、非磁性体材質であるギャップ層をさらに含むことができる。
【0014】
一方、本発明による積層型パワーインダクタの製造方法は、ボディシートの側面端部に当接するように内部電極パターンを印刷する段階と、複数の前記ボディシートを積層する段階と、前記積層されたボディシートの側面にシーリング部を形成する段階と、前記内部電極パターンの組み合わせにより形成されるコイル部の両端に電気的に連結される外部端子を形成する段階と、を含むことができる。
【0015】
また、前記シーリング部を形成する段階は、磁性体材質によりシーリング部を形成することができ、特に、磁性体粉末のMC(Metal Composite)を塗布してシーリング部を形成することができる。
【0016】
また、前記内部電極パターンを印刷する段階は、前記内部電極パターンを前記ボディシートの両側面端部に当接するように印刷することができ、前記シーリング部を形成する段階は、前記積層されたボディシートの両側面にシーリング部を形成することができる。
【0017】
さらに、前記積層型パワーインダクタの製造方法は、前記ボディシートを積層する段階の前に前記ボディシートの間にギャップ層を挿入する段階をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明による積層型パワーインダクタ及びその製造方法によれば、コイル部の内部面積を40〜50%以上増大させることができるため、磁束が流れる空間を十分に確保できる。従って、インダクタの初期容量を向上させることができ、直流バイアス飽和点の容量を増加させることができる。
【0019】
また、コイル部の外側に位置する磁性体の面積が狭くなる効果があるため、磁束の流れが根本的に遮断され、磁束の飽和を効果的に遅らせることができるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の積層型パワーインダクタの内部電極を示す図面である。
【図2】本発明による積層型パワーインダクタを示す斜視図である。
【図3】図2に図示された積層型パワーインダクタの側面図である。
【図4】図2に図示された積層型パワーインダクタの分解斜視図である。
【図5】図4に図示された内部電極パターンを示す図面である。
【図6】ボディシートのマージンによる直流バイアス特性を示すグラフ図である。
【図7】ボディシートのマージンによる直流バイアス特性を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を説明する。しかし、これは例示に過ぎず、本発明はこれに限定されない。
【0022】
本発明を説明するにあたり、本発明に係わる公知技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にする可能性があると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。そして、後述する用語は本発明においての機能を考慮して定義された用語であり、これは使用者、運用者の意図または慣例などによって異なることができる。従って、その定義は本明細書の全体における内容を基に下すべきであろう。
【0023】
本発明の技術的思想は特許請求の範囲によって決まり、以下の実施例は本発明の技術的思想を本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に効率的に説明するための一つの手段に過ぎない。
【0024】
図2は、本発明による積層型パワーインダクタを示す斜視図であり、図3は、図2に図示された積層型パワーインダクタの側面図であり、図4は、図2に図示された積層型パワーインダクタの分解斜視図である。
【0025】
図2〜図4を参照すると、本発明による積層型パワーインダクタ100は、積層体110、内部電極パターン117、シーリング部130及び外部電極120を含むことができる。
【0026】
前記積層体110は、フェライト材質のボディシート115が複数層に積層されて形成される。通常、フェライトは、磁性を有するセラミックのような物質であり、磁場に対する透過性に優れ、電気抵抗が高い性質を有しており、各種の電子部品に用いられる。
【0027】
前記ボディシート115は、薄板状に製造され、このボディシート115の上面に内部電極パターン117が形成される。このボディシート115を複数層に積層することにより内部電極パターン117が上下に組み合わされ、この組み合わされた内部電極パターン117によりコイル部が製造される。
【0028】
また、前記積層体110には外部電極120が位置し、この外部電極120は前記コイル部の両端に電気的に連結される。即ち、積層体110の内部に位置したコイル部は前記外部電極120を介して外部に電気的に連結される。
【0029】
ここで、前記内部電極パターン117は、積層体110の側面に露出されるように形成されることができる。即ち、内部電極パターン117がボディシート115の側面端部に当接するように形成されボディシート115が積層されると積層体110の側面に露出される。
【0030】
図5は、図4に図示された内部電極パターン117を示した図面であって、ボディシート115の側面端部に当接する部分に内部電極パターン117を形成することによりコイル部の直径をできるだけ大きくすることができる効果を有する。
【0031】
一方、前記のように内部電極パターン117がボディシート115の側面端部に当接する部分に形成されると内部電極パターン117の段差により積層体110の端部が分離され、内部電極パターン117が積層体110の外部に露出するという問題点が生じる。
【0032】
本発明ではこのような問題点を解決するために、積層体110の外部に露出した内部電極パターン117を保護するためのシーリング部130をさらに含む。シーリング部130は、積層体110の側面に形成され、積層体110の隙間に露出した内部電極パターン117を密封/保護する機能を行う。
【0033】
このように、本発明は、ボディシート115の面積を全て活かしてコイル部をできるだけ大きく形成することにより、コイル部の内部面積を40〜50%以上増大させることができる。そのため、磁束が流れる空間を十分に確保することができる。
【0034】
従って、インダクタの初期容量を向上させることができ、直流バイアス飽和点の容量を増加させることができる。また、コイル部の外側に位置する磁性体の面積が狭くなる効果を有するため、磁束の流れが根本的に遮断され、磁束の飽和を効果的に遅らせることが可能である。
【0035】
ここで、前記シーリング部130は、磁性体材質を使用することができる。磁性体材質を使用することにより、MS(Mgnetic saturation)が高くなり、バイアス特性を改善することができる。特に、シーリング部130の材料として磁性体粉末材料であるMC(Metal Composite)を使用することにより、本発明の積層型パワーインダクタ100の信頼性をより向上させることが可能となる。
【0036】
一方、前記内部電極パターン117は、前記積層体110の両側面に全て露出されるように形成されることができる。内部電極パターン117が積層体110の両側面に全て露出されるようにすることにより、一側面のみに内部電極パターン117が露出される場合に比べてコイル部の直径をできるだけ大きくすることができるという長所がある。これにより、前記シーリング部130も露出された内部電極パターン117を保護するために積層体110の両側面に全て形成されることができる。
【0037】
さらに、前記積層型パワーインダクタ100は、積層されたボディシート115の間に挿入され、非磁性体材質であるギャップ層をさらに含むことができる。ギャップ層は非磁性体材質で形成され、前記ボディシート115の間に挿入されて磁束を遮断する機能を行う。
【0038】
図6及び図7は、ボディシートのマージン(図1のC参照)によるバイアス特性を示したグラフであって、ボディシートに150μmのマージンCが形成された積層型インダクタの両側面を切断しながらバイアス特性を評価する方法を用いた。
【0039】
グラフにおける「◇」はインダクタの両側面を切断する前のバイアス特性を示し、「■」はインダクタの両側面を切断してマージンCが100μmである場合のバイアス特性、「△」はマージンCが50μmである場合のバイアス特性、「○」はマージンCが0μmである場合、即ち内部電極パターン117が露出された場合のバイアス特性、をそれぞれ示す。
【0040】
先ず、図6は、ボディシートのマージンCによるインダクタの初期容量と飽和磁化時の容量を示したものであって、インダクタの初期容量は、ボディシート115のマージンCが減少されるほど低下するが、飽和磁化時の容量はあまり差がないことが分かる。
【0041】
図7は、インダクタ容量の変化率を基準にしたグラフであって、パワーインダクタで主に評価される部分であるΔLs30%のところを見ると、マージンCが0μmである場合、即ち内部電極パターン117が露出された場合の容量が2.2Aから2.5A以上と、10%以上改善されたことが分かる。
【0042】
以下、本発明による積層型パワーインダクタの製造方法について説明する。
【0043】
本発明による積層型パワーインダクタの製造方法は、先ず、ボディシート115に内部電極パターン117を印刷する。そして、複数の前記ボディシート115を積層した後、外部端子120を形成する。この外部端子120は、内部電極パターン117の組み合わせにより形成されるコイル部の両端に電気的に連結される。
【0044】
ここで、前記内部電極パターン117は、ボディシート115の側面端部に当接するように印刷する。図5に図示されたように、内部電極パターン117の組み合わせにより形成されるコイル部ができるだけ大きく形成されるようにするためである。
【0045】
また、前記ボディシート115を積層する段階の後、前記積層されたボディシート115の両側面にシーリング部130を形成する段階をさらに含むことができる。前記のように前記シーリング部130は、ボディシート115が積層された積層体110の外部に露出された内部電極パターン117を密封/保護する機能を行う。
【0046】
前記シーリング部130は、磁性体材質であってもよく、特に磁性体粉末のMC(Metal Composite)を塗布する方法によりシーリング部130を形成することができる。
【0047】
一方、前記内部電極パターン117を印刷する段階は、前記内部電極パターン117を前記ボディシート115の両側面端部に当接するように印刷することができる。内部電極パターン117を、ボディシート115の一側面のみに当接するように印刷する場合に比べて、コイル部の直径をできるだけ大きくすることができるという長所がある。
【0048】
さらに、本発明による積層型パワーインダクタの製造方法は、前記ボディシート115を積層する段階の前に、前記ボディシート115の間にギャップ層を挿入する段階をさらに含むことができる。ギャップ層は内部電極から漏れる磁束を遮断する機能を行う。
【0049】
以上、代表的な実施例を参照して本発明に対して詳細に説明したが、本発明に属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、上述の実施例に対して本発明の範囲を外れない限度内で多様な変形が可能であることを理解するであろう。
【0050】
従って、本発明の権利範囲は上述の実施例に限定されてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなくこの特許請求の範囲と均等なものによって決められるべきである。
【符号の説明】
【0051】
100 積層型パワーインダクタ
110 積層体
115 ボディシート
117 内部電極パターン
120 外部電極
130 シーリング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のボディシートが積層された積層体と、
前記ボディシートに形成され、前記積層体の側面に露出されるように形成される内部電極パターンと、
前記内部電極パターンの露出部を保護するシーリング部と、
前記内部電極パターンの組み合わせにより形成されたコイル部の両端に電気的に連結される外部電極と、を含む積層型パワーインダクタ。
【請求項2】
前記シーリング部は、
磁性体材質である請求項1に記載の積層型パワーインダクタ。
【請求項3】
前記シーリング部は、
磁性体粉末のMC(Metal Composite)である請求項2に記載の積層型パワーインダクタ。
【請求項4】
前記内部電極パターンは、
前記積層体の両側面に露出される請求項1に記載の積層型パワーインダクタ。
【請求項5】
前記シーリング部は、
前記積層体の両側面に形成される請求項4に記載の積層型パワーインダクタ。
【請求項6】
前記積層型パワーインダクタは、前記積層されたボディシートの間に挿入され、非磁性体材質であるギャップ層をさらに含む請求項1に記載の積層型パワーインダクタ。
【請求項7】
ボディシートの側面端部に当接するように内部電極パターンを印刷する段階と、
複数の前記ボディシートを積層する段階と、
前記積層されたボディシートの側面にシーリング部を形成する段階と、
前記内部電極パターンの組み合わせにより形成されるコイル部の両端に電気的に連結される外部端子を形成する段階と、
を含む積層型パワーインダクタの製造方法。
【請求項8】
前記シーリング部を形成する段階は、
磁性体材質によりシーリング部を形成する請求項7に記載の積層型パワーインダクタの製造方法。
【請求項9】
前記シーリング部を形成する段階は、
磁性体粉末のMC(Metal Composite)を塗布してシーリング部を形成する請求項8に記載の積層型パワーインダクタの製造方法。
【請求項10】
前記内部電極パターンを印刷する段階は、
前記内部電極パターンを前記ボディシートの両側面端部に当接するように印刷する請求項7に記載の積層型パワーインダクタの製造方法。
【請求項11】
前記シーリング部を形成する段階は、
前記積層されたボディシートの両側面にシーリング部を形成する請求項10に記載の積層型パワーインダクタの製造方法。
【請求項12】
前記積層型パワーインダクタの製造方法は、
前記ボディシートを積層する段階の前に、前記ボディシートの間にギャップ層を挿入する段階をさらに含む請求項7に記載の積層型パワーインダクタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−98554(P2013−98554A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−235441(P2012−235441)
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【出願人】(512255804)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (21)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electro−Mechanics Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】150, Maeyeong−ro, Yeongtong−gu, Suwon−si, Gyeonggi−do, Republic of Korea
【Fターム(参考)】