説明

積層型電子写真感光体及び画像形成装置

【課題】外光により発生するフォトメモリの発生を効果的に抑制することができ、かつ、優れた感度特性を備えた積層型電子写真感光体及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】基体上に、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、が設けられた積層型電子写真感光体及びそれを備えた画像形成装置であって、中間層が、酸化防止剤と、アルミナ、シリカ及び有機ケイ素化合物によって表面処理された酸化チタンと、を含有するとともに、酸化防止剤の含有量を、中間層における結着樹脂100重量部に対して10〜100重量部の範囲内の値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子写真感光体及び画像形成装置に関する。特に、フォトメモリの発生を効果的に抑制することができ、かつ、優れた感度特性を有する積層型電子写真感光体及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式による複写機やプリンター等の電子写真装置においては、廃棄性や大量生産性等に優れることから、有機感光体が多く使用されている。
しかしながら、有機感光体は、画像形成装置に組み付ける前段階等において、室内照明等の外光に曝された場合に、感光層の劣化が生じて帯電特性が低下しやすいという問題が見られた。
特に、積層型電子写真感光体の場合には、外光により異常に発生した電荷が、電荷発生層内部に蓄積され、初期帯電の均一性に影響を与えやすいことから、外光による帯電特性の低下が顕著に見られた。そして、かかる外光による帯電特性の低下は、いわゆるフォトメモリとなって、形成画像に悪影響を与えるといった問題が見られた。
【0003】
この点、主にオゾン等の活性種による感光層の劣化を抑制するための方法ではあるものの、感光層上に、酸化防止剤を含有した酸化劣化防止専用の層を積層する方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平4−163463号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された電子写真感光体は、外光による帯電特性の低下については何ら考慮していなかったため、特に、外光により異常に発生した電荷が、電荷発生層の内部に蓄積してしまう問題については、何ら解決することができなかった。
【0005】
そこで、本発明の発明者等は、鋭意検討した結果、積層型電子写真感光体の中間層に対して、所定量の酸化防止剤と、特定の酸化チタンと、を含有させることにより、外光により電荷発生層の内部に電荷が蓄積することを防止して、フォトメモリの発生を効果的に抑制し、かつ、優れた感度特性を得ることができることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、外光により発生するフォトメモリの発生を効果的に抑制することができ、かつ、優れた感度特性を有する積層型電子写真感光体及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、基体上に、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、が設けられた積層型電子写真感光体であって、中間層が、酸化防止剤と、アルミナ、シリカ及び有機ケイ素化合物によって表面処理された酸化チタンと、を含有するとともに、酸化防止剤の含有量を、中間層における結着樹脂100重量部に対して10〜100重量部の範囲内の値とすることを特徴とする積層型電子写真感光体が提供され、上述した問題点を解決することができる。
すなわち、中間層に対して、酸化防止剤を所定の範囲で含有させることによって、電荷発生層で外光により異常に発生した電荷と、かかる酸化防止剤と、が電荷発生層と中間層との層界面において結びつき、電荷発生層における電荷の蓄積を有効に抑制することができる。つまり、酸化防止剤が、電荷吸収機能を発揮することで、電荷発生層における電荷の蓄積を有効に抑制することができる。また、電荷発生層と中間層との層界面が、外光によって劣化するのを防止して、電荷発生層における電荷の蓄積をより有効に抑制することができる。したがって、外光によるフォトメモリの発生を効果的に抑制することができる。
また、中間層に対して、特定の酸化チタンを含有させることにより、中間層の導電性を好適な範囲に調節して、優れた感度特性を得ることができる。
【0007】
また、本発明の積層型電子写真感光体を構成するにあたり、酸化防止剤をヒンダードフェノール系化合物及びベンゾトリアゾール系化合物、あるいはいずれか一方の化合物とすることが好ましい。
このように構成することにより、外光によって電荷発生層において電荷が蓄積することを、さらに効果的に抑制することができる。
【0008】
また、本発明の積層型電子写真感光体を構成するにあたり、酸化チタンの平均1次粒子径を5〜30nmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、中間層における酸化チタンの分散性をより向上させることができる。
【0009】
また、本発明の積層型電子写真感光体を構成するにあたり、酸化チタンの含有量を、中間層における結着樹脂100重量部に対して50〜400重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、中間層の導電性を好適な範囲に調節することが容易となるとともに、酸化チタンの分散性をさらに向上させることができる。
【0010】
また、本発明の積層型電子写真感光体を構成するにあたり、酸化チタンとして、2種以上の酸化チタンを含有させることが好ましい。
このように構成することにより、中間層の導電性を、さらに容易に調節することができる。
【0011】
また、本発明の積層型電子写真感光体を構成するにあたり、中間層における結着樹脂をポリアミド樹脂とすることが好ましい。
このように構成することにより、中間層と、基体及び電荷発生層と、の密着性が向上するばかりか、酸化防止剤や特定の酸化チタンの分散性も向上させることができる。
【0012】
また、本発明の別の態様は、上述したいずれかの積層型電子写真感光体を備えるとともに、当該積層型電子写真感光体の周囲に、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段をそれぞれ配置することを特徴とする画像形成装置である。
すなわち、本発明の画像形成装置であれば、所定の中間層を含んだ積層型電子写真感光体を備えるため、フォトメモリの発生が抑制された良質な画像を、安定的に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、基体上に、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、が設けられた積層型電子写真感光体であって、中間層が、酸化防止剤と、アルミナ、シリカ及び有機ケイ素化合物によって表面処理された酸化チタンと、を含有するとともに、酸化防止剤の含有量を、中間層における結着樹脂100重量部に対して10〜100重量部の範囲内の値とすることを特徴とする積層型電子写真感光体である。
以下、第1の実施形態である積層型電子写真感光体について、各構成要件に分けて説明する。
【0014】
1.基本的構成
図1(a)に示すように、積層型電子写真感光体10は、基体13上に、塗布等の手段によって、酸化防止剤及び特定の酸化チタン等を含有する中間層12を形成し、次いでこの中間層12の上に、電荷発生剤等を含有する電荷発生層34、及び電荷輸送剤等を含有する電荷輸送層32を形成することによって作成することができる。
また、上述の構造とは逆に、図1(b)に示すように、中間層12上に電荷輸送層32を形成し、その上に電荷発生層34を形成してもよい。
ただし、このように形成した場合、電荷発生層34が、電荷輸送層32に比べて膜厚がごく薄いために破損しやすくなるばかりか、外光により電荷発生層34において電荷が蓄積することを抑制する効果が、過度に低下する場合がある。したがって、図1(a)に示すように、電荷発生層34の上に電荷輸送層32を形成することが好ましい。
なお、電荷輸送層32においては、一般に、正孔輸送剤または電子輸送剤のいずれか一方を含有させることが好ましいが、正孔輸送剤と電子輸送剤の両方を用いてもよい。
【0015】
2.基体
図1に例示する基体13としては、導電性を有する種々の材料を使用することができる。例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、及び真鍮などの金属にて形成された基体や、上述の金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料からなる基体、あるいはヨウ化アルミニウム、アルマイト、酸化スズ、及び酸化インジウムなどで被覆されたガラス製の基体などが例示される。
すなわち、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、基体は、使用に際して、充分な機械的強度を有するものが好ましい。
また、基体の形状は使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、及びドラム状などのいずれであってもよい。
【0016】
3.中間層
また、図1に示すように、基体13上に、酸化防止剤と、特定の酸化チタンと、を含有する中間層12を設けることを特徴とする。以下、各構成要素に分けて、中間層を説明する。
【0017】
(1)結着樹脂
(1)−1 種類
結着樹脂として、例えば、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を用いることが好ましい。
【0018】
また、上述した結着樹脂の中でも、特に、ポリアミド樹脂を用いることが好ましい。
この理由は、結着樹脂としてポリアミド樹脂を用いることによって、中間層と、基体及び電荷発生層と、の密着性が向上するばかりか、酸化防止剤や特定の酸化チタンの分散性も向上させることができるためである。
すなわち、ポリアミド樹脂であれば、基体との密着性に優れるため、基体表面の欠陥に起因した画像欠陥を効果的に抑制することができるためである。
また、高温高湿条件下であっても、中間層と、基体及び電荷発生層と、のそれぞれの界面が安定的に結着しているため、これらの界面における剥離等の発生を防止して、形成画像におけるかぶりの発生を有効に防止することができる。
さらに、かかる樹脂中に含有させる酸化防止剤や特定の酸化チタンの分散性を向上させて、均一な導電性を有する中間層を形成することができる。
なお、好適に使用されるポリアミド樹脂としては、溶剤への溶解性に優れることから、アルコール可溶性ポリアミド樹脂を用いることが好ましい。具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12等を共重合させた共重合体ナイロンと呼ばれるものや、N−アルコキシメチル変性ナイロン、N−アルコキシエチルナイロン等のように、ナイロンを化学的に変性させた変性ナイロンと呼ばれるものを用いることが好ましい。
【0019】
(1)−2 数平均分子量
また、結着樹脂の数平均分子量を1,000〜50,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、結着樹脂の数平均分子量をかかる範囲内の値とすることによって、中間層の膜厚を、より均一に形成することができるばかりか、酸化チタンの分散性をさらに向上させることができるためである。
すなわち、結着樹脂の数平均分子量が1,000未満になると、中間層を形成する際の塗布液の粘度が著しく低下し、均一な膜厚を得ることが困難になったり、機械的強度や成膜性、あるいは接着性が著しく低下したりする場合があるためである。一方、結着樹脂の数平均分子量が50,000を超えると、中間層を形成する際の塗布液の粘度が著しく増加し、中間層の膜厚を制御することが困難になったり、導電性が著しく低下したりする場合があるためである。
したがって、結着樹脂の数平均分子量を2,000〜30,000の範囲内の値とすることがより好ましく、5,000〜15,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、結着樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、ポリスチレン換算の分子量として測定することもできるし、あるいは、結着樹脂が縮合系樹脂の場合には、その縮合度から計算により算出することもできる。
また、数平均分子量の代替として、粘度平均分子量を上述した範囲とした場合であっても、同様の効果を得ることができる。
【0020】
(2)酸化チタン
また、中間層が、酸化チタンを含むことを特徴とする。
この理由は、酸化チタンが所定の導電性を有するため、かかる酸化チタンを中間層に分散させることにより、中間層に対して所定の導電性を付与することができるためである。
すなわち、中間層の導電性が過度に低くなると、電荷発生層において発生した電荷が、基体側へと移動することが困難となって、感度特性が低下したり、フォトメモリが発生しやすくなる場合があるためである。一方、中間層の導電性が過度に高くなると、基体側から電荷が注入されたり、帯電性が低下したりする場合があるためである。
したがって、中間層の導電性を好適な範囲に調節するために、酸化チタンの表面処理、平均一次粒子径及び含有量等を、それぞれ変化させることが必要となる。以下、それぞれの要件について説明する。
なお、酸化チタンは、結晶質、非結晶質のいずれも使用することができる。また、酸化チタンが結晶質である場合には、その結晶型がアナタース型、ルチル型及びブルッカイト型のいずれの場合であっても使用することができるが、特にルチル型を用いることがより好ましい。
【0021】
(2)−1 表面処理
酸化チタンが、アルミナ、シリカ及び有機ケイ素化合物によって表面処理を施されていることを特徴とする。
この理由は、かかる表面処理を施すことによって、中間層の導電性を調節して、感度特性を向上させることができるためである。
また、かかる所定の表面処理を施された酸化チタンであれば、中間層中に均一に分散させることができることから、かぶりの発生についても有効に抑制することができるためである。
すなわち、酸化チタンに対してアルミナ(Al23)及びシリカ(SiO2)による表面処理を施すことによって、中間層における酸化チタンの基本的な分散性を向上させることができるためである。
また、酸化チタンに対して、アルミナ及びシリカによる表面処理を施すことによって、後述する有機ケイ素化合物による表面処理量を、容易に調節することができるようになるためである。
そして、さらに、有機ケイ素化合物によって表面処理を施すことによって、酸化チタンの分散性をより向上させることができるばかりか、その表面処理量を変化させることによって、酸化チタンの導電性を容易に調節することができるためである。
なお、好適に使用される有機ケイ素化合物としては、アルキルシラン化合物、アルコキシシラン化合物、ビニル基含有シラン化合物、メルカプト基含有シラン化合物、アミノ基含有シラン化合物、あるいはこれらの縮合重合物であるポリシロキサン化合物が挙げられる。より具体的には、メチルハイドロジェンポリシロキサンやジメチルポリシロキサン等のシロキサン化合物が好ましく、特に、メチルハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
なお、アルミナ及びシリカの添加量としては、酸化チタン100重量部に対して1〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましく、5〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。また、有機ケイ素化合物の添加量としては、酸化チタン100重量部に対して1〜15重量部の範囲内の値とすることが好ましく、5〜10重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0022】
また、酸化チタンに対して、上述した有機ケイ素化合物による表面処理を施すことによって、かかる表面処理を施された酸化チタンを含有した中間層と、基体及び電荷発生層と、の密着力が向上することが知られている。
かかる効果の理由は、有機ケイ素化合物が、ポリアミド樹脂と相互作用して、かかるポリアミド樹脂の凝集力を向上させているためとも考えられるし、有機ケイ素化合物が、プライマーのように、中間層における表面を改質する効果を発揮しているためとも考えられる。
いずれにしても、酸化チタンに対して有機ケイ素化合物による表面処理を施すことによって、酸化チタンの分散性及びその導電性を調節することができるばかりか、中間層と、基体及び感光層と、の密着力を調節することも可能となる。
【0023】
(2)−2 平均一次粒子径
酸化チタンにおける平均一次粒子径(数平均一次粒子径、以下同様である。)を5〜30nmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、酸化チタンの平均一次粒子径を5〜30nmの範囲内の値とすることによって、中間層内における分散性をより向上させて、中間層の導電性を均一にすることができるためである。
すなわち、酸化チタンの平均一次粒子径が5nm未満の値となると、そのような酸化チタン粒子を精度良く製造することが困難となるばかりか、粒子同士が凝集しやすくなる場合があるためである。一方、酸化チタンの平均一次粒子径が30nmを超えた値となると、中間層内における分散性が低下して、中間層における導電性が不均一となる場合があるためである。その結果、感度特性が低下しやすくなる場合があるためである。
したがって、酸化チタンの平均一次粒子径を10〜20nmの範囲内の値とすることがより好ましく、12〜18nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、酸化チタンの平均一次粒子径は、電子顕微鏡写真及び画像処理装置を組み合わせて測定することができる。
【0024】
(2)−3 含有量
また、酸化チタンの含有量を、中間層における結着樹脂100重量部に対して50〜400重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、酸化チタンの含有量を、かかる範囲とすることによって、中間層の導電性を好適な範囲に調節することが容易となるとともに、酸化チタンの分散性をさらに向上させることができるためである。
すなわち、酸化チタンの含有量が、結着樹脂100重量部に対して50重量部未満の値となると、中間層の導電性を十分に向上させることが困難となって、感度特性が著しく低下する場合があるためである。一方、酸化チタンの含有量が、結着樹脂100重量部に対して400重量部を超えた値となると、過剰な酸化チタンによって、基体と中間層との間でリーク電流が発生し、かぶりが発生しやすくなる場合があるためである。
したがって、酸化チタンの含有量を、結着樹脂100重量部に対して80〜350重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、100〜300重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、ここでの酸化チタンの含有量とは、次項において記載するように2種以上の酸化チタンを併用する場合においても、上述した特定の酸化チタンのみの含有量を意味する。
【0025】
また、酸化チタンとして、平均一次粒子径や表面処理等が異なる別の酸化チタンを、さらに含むことも好ましい。
この理由は、このように、2種以上の酸化チタンを併用することにより、中間層の導電性を、さらに容易に調節することができるためである。
すなわち、2種以上の酸化チタンの混合比を変えることにより、中間層の導電性を適宜調節することが容易となるためである。
なお、特定の酸化チタン以外の酸化チタンの含有量は、特定の酸化チタン100重量部に対して10〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましく、20〜90重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0026】
次いで、図2を用いて、中間層における特定の酸化チタンの含有量と、感度特性と、の関係を説明する。
図2においては、横軸に、中間層における結着樹脂100重量部に対する特定の酸化チタンの含有量(重量部)を採り、縦軸に、かかる中間層を有する積層型電子写真感光体における明電位の絶対値(V)を採った特性曲線を示している。なお、用いた積層型電子写真感光体の構成や、上述した明電位の測定方法等については、後の実施例において記載する。
かかる特性曲線から理解されるように、特定の酸化チタンの含有量が0重量部から50重量部へと増加するのにともなって、明電位の絶対値が約150Vから約50Vへと急激に減少している。一方、特定の酸化チタンの含有量が50以上の範囲では、明電位の絶対値が40V前後の低い値を安定的に維持していることがわかる。
したがって、中間層の結着樹脂100重量部にたいする特定の酸化チタンの含有量を50重量部以上の値とすることにより、効果的に感度特性を向上させることができることがわかる。
【0027】
(3)酸化防止剤
また、中間層が、酸化防止剤を含有することを特徴とする。
この理由は、中間層に対して、酸化防止剤を含有させることによって、電荷発生層で外光により異常に発生した電荷と、かかる酸化防止剤と、が電荷発生層と中間層との層界面において結びつき、電荷発生層における電荷の蓄積を有効に抑制することができるためである。また、電荷発生層と中間層との層界面が、外光によって劣化することを防止して、電荷発生層における電荷の蓄積をより有効に抑制することができるためである。
したがって、外光によるフォトメモリの発生を効果的に抑制することができる。
すなわち、積層型電子写真感光体が、露光強度と比較して格段に強い光強度を有するとともに短波長も多く含まれる外光に曝された場合、その電荷発生層においては、電荷発生剤から電荷が異常に発生するのみならず、短波長の光によってラジカルが発生しやすくなる。その結果、特に電荷発生層と中間層との層界面における劣化が生じやすくなって、電荷発生層における多量の電荷が中間層側へと移動することが困難となる。そして、電荷発生層において電荷が多量に蓄積して、フォトメモリが発生することとなる。
一方、このような場合であっても、中間層に対して酸化防止剤を含有させることによって、上述したように、電荷発生層で外光により異常に発生した電荷と、かかる酸化防止剤と、が電荷発生層と中間層との層界面において結びつき、電荷の蓄積を解消することができる。また、短波長の光によるラジカルの発生及びそれによる層界面の劣化等を、効果的に抑制することができる。よって、積層型電子写真感光体が外光に曝された場合であっても、フォトメモリの発生を効果的に抑制することができる。
【0028】
(3)−1 種類
また、上述した酸化防止剤をヒンダードフェノール系化合物及びベンゾトリアゾール系化合物、あるいはいずれか一方の化合物とすることが好ましい。
この理由は、これらの化合物であれば、外光によって電荷発生層において電荷が蓄積することを、さらに効果的に抑制することができるためである。
すなわち、ヒンダードフェノール系化合物であれば、電荷やラジカルを捕捉することについて、優れた効果を有するためである。一方、ベンゾトリアゾール系化合物であれば、外光に含まれる短波長の光を効率的に吸収して熱エネルギーに変換することができるため、ラジカルの発生を防止することについて、優れた効果を有するためである。
【0029】
(3)−2 具体例
また、ヒンダードフェノール化合物の具体例としては、下記式(1)で表される化合物(P−1〜16)が挙げられる。
【0030】
【化1】

【0031】
また、ベンゾトリアゾール系化合物の具体例としては、下記式(2)で表される化合物(P17〜25)が挙げられる。
【0032】
【化2】

【0033】
(3)−3 含有量
また、酸化防止剤の含有量を、中間層の結着樹脂100重量部に対して10〜100重量部の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、酸化防止剤を、かかる範囲内で中間層に対して含有させることによって、上述した酸化防止剤の効果をより効果的に発揮させることができるためである。
すなわち、酸化防止剤の含有量が10重量部未満の値となると、外光によって異常に発生した電荷やラジカルを十分に処理することができず、電荷発生層における電荷の蓄積を抑制することが困難となる場合があるためである。一方、酸化防止剤の含有量が100重量部を超えると、中間層における導電性が低下して、逆に電荷発生層における電荷の蓄積を増加させてしまったり、中間層における分散性が低下して、かぶりの発生を抑制することが困難となったりする場合があるためである。
したがって、酸化防止剤の含有量を、中間層の結着樹脂100重量部に対して10〜70重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、20〜50重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0034】
次いで、図3を用いて、中間層における酸化防止剤の含有量と、フォトメモリと、の関係を説明する。
図3においては、横軸に、中間層における結着樹脂100重量部に対する酸化防止剤の含有量(重量部)を採り、縦軸に、かかる中間層を有する積層型電子写真感光体の外光照射部と未照射部とにおける明電位差(V)を採った特性曲線を示している。なお、かかる明電位差が大きい程、フォトメモリが発生していることを示す。また、酸化防止剤としては、式(1)中のP−1を使用した。その他、用いた積層型電子写真感光体の構成や、上述した明電位差の測定方法等については、後の実施例において記載する。
かかる特性曲線から理解されるように、酸化防止剤の含有量が0重量部から10重量部へと増加するのにともなって、明電位差の値は、約20Vから10V以下へと急激に減少している。そして、酸化防止剤の含有量が10〜100重量部の範囲では、その増加にともなって明電位差の値も増加するものの、15V前後の低い値を保持していることがわかる。一方、酸化防止剤の含有量が100重量部を超えた範囲では、その増加にともなって明電位差の値も増加し続け、酸化防止剤の含有量が150重量部のときには、約25Vにまで増加してしまうことがわかる。かかる増加は、酸化防止剤の含有量が過度に大きくなって、中間層の導電性が低下し、電荷発生層における電荷の蓄積を抑制することが困難となるためであると考えられる。
いずれにしても、中間層における結着樹脂100重量部に対する酸化防止剤の含有量を10〜100重量部の範囲内の値とすることにより、効果的にフォトメモリの発生を抑制できることがわかる。
【0035】
次いで、図4を用いて、中間層における酸化防止剤の含有量と、かぶりと、の関係を説明する。
図4においては、横軸に、中間層における結着樹脂100重量部に対する酸化防止剤の含有量(重量部)を採り、縦軸に、かかる中間層を有する積層型電子写真感光体を用いて画像形成を行った場合におけるかぶりID(FD値)(−)を採った特性曲線を示している。なお、酸化防止剤としては、式(1)中のP−1を使用した。また、用いた積層型電子写真感光体の構成や、FD値の測定方法等については、後の実施例において記載する。
かかる特性曲線から理解されるように、酸化防止剤の含有量が0〜100重量部の範囲では、その増加にともなってFD値も増加するものの、0.010前後の低い値を保持している。一方、酸化防止剤の含有量が100重量部を超えた範囲では、その増加にともなって、FD値がさらに増加してしまうため、酸化防止剤の含有量が150重量部のときには、0.02前後にまで増加してしまうことがわかる。かかる増加は、酸化防止剤の含有量が過度に大きくなって、中間層における分散性を低下させてしまうためであると考えられる。特に、酸化チタンの分散性を低下させてしまう結果、中間層と基体との間において、リーク電流が発生し、かぶりが発生しやすくなるものと考えられる。
いずれにしても、中間層における結着樹脂100重量部に対する酸化防止剤の含有量を10〜100重量部の範囲内の値とすることにより、かぶりの発生についても、十分に抑制することができることがわかる。
【0036】
(4)添加剤
また、中間層には、光散乱を生じさせて干渉縞の発生を防止する目的、分散性向上等の目的により、上述した酸化チタンとは別の各種添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を添加することも好ましい。
特に、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料や、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やフッ素樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等が好ましい添加剤である。
また、微粉末等の添加剤を添加する場合、その粒径を0.01〜3μmの範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、かかる粒径が大きすぎると中間層の凹凸が大きくなったり、電気的に不均一な部分が生じたり、さらには、画質欠陥を生じ易くなったりする場合があるためである。一方、かかる粒径が小さすぎると、十分な光散乱効果が得られない場合があるためである。
なお、微粉末等の添加剤を含有させる場合、その含有量を、中間層の固形分に対して重量比で1〜70重量%、より好ましくは5〜60重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0037】
(5)膜厚
また、この中間層の膜厚を0.1〜50μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、中間層厚が厚くなりすぎると、電子写真感光体表面に残留電位が生じやすくなり、電気特性を低下させる要因となる場合があるためである。その一方で、中間層厚が薄くなりすぎると、基体表面の凹凸を十分緩和させることができなくなり、基体と感光層との密着性を得ることができなくなるためである。
したがって、中間層の膜厚としては、0.5〜30μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜20μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0038】
4.電荷発生層
(1)電荷発生剤
(1)−1 種類
本発明における電荷発生剤としては、例えば、無金属フタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、ジオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、ピリリウム顔料、アンサンスロン顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料といった有機光導電体や、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコンといった無機光導電材料等の従来公知の電荷発生剤を用いることができる。
【0039】
より具体的には、下記式(3)〜(6)で表されるフタロシアニン系顔料(CGM−A〜D)を使用することがより好ましい。
この理由は、光源として半導体レーザを備えたレーザビームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置に使用する場合には、600〜800nm以上の波長領域に感度を有する電子写真感光体が必要となるためである。
その一方で、ハロゲンランプ等の白色の光源を備えた静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置に使用する場合には、可視領域に感度を有する電子写真感光体が必要となるため、例えば、ペリレン系顔料やビスアゾ顔料等を好適に用いることができる。
【0040】
【化3】

【0041】
【化4】

【0042】
【化5】

【0043】
【化6】

【0044】
(1)−2 含有量
また、電荷発生剤の含有量は、電荷発生層を構成する結着樹脂100重量部に対して、5〜1000重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる含有量が結着樹脂100重量部に対して5重量部未満の値となると、電荷発生量が不十分となって、鮮明な静電潜像を形成することが困難となる場合があるためである。一方、かかる含有量が結着樹脂100重量部に対して1000重量部を超えた値となると、均一な電荷発生層を形成することが困難となる場合があるためである。
したがって、電荷発生層を構成する結着樹脂100重量部に対する電荷発生剤の含有量を30〜500重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0045】
(2)結着樹脂
また、電荷発生層に用いる結着樹脂としては、ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールZタイプまたはビスフェノールCタイプ等のポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、N−ビニルカルバゾール等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0046】
(3)膜厚
また、電荷発生層の厚さを、0.1〜5μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、電荷発生層の厚さを、0.1〜5μmの範囲内の値とすることによって、露光による電荷発生量を向上させることができるためである。
すなわち、電荷発生層の厚さが0.1μm未満の値となると、十分な電荷発生能を有する電荷発生層を形成することが困難となる場合があるためである。一方、電荷発生層の厚さが5μmを超えた値となると、残留電荷の発生を抑制することが困難となったり、均一な電荷発生層の形成が困難となる場合があるためである。
したがって、電荷発生層の厚さを、0.15〜4μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.2〜3μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0047】
5.電荷輸送層
(1)電荷輸送剤
(1)−1 種類
電荷輸送層に用いる電荷輸送剤(正孔輸送剤及び電子輸送剤)としては、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−(ピリジル−(2))−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1−ビフェニル)−4,4′−ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4′−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4′−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体等の正孔輸送物質;クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、ジフェノキノン化合物等の電子輸送物質;及び上述した化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体等の一種単独または二種以上の組合せを挙げることができる。
【0048】
(1)−2 含有量
また、電荷輸送剤の含有量を、結着樹脂100重量部に対して、10〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、電荷輸送剤の含有量が10重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、電荷輸送剤の含有量が100重量部を超えた値になると、電荷輸送剤が結晶化しやすくなり、適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、電荷輸送剤の含有量を20〜80重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、使用する電荷輸送剤としては、電子写真感光体の帯電特性に応じて、正孔輸送剤か電子輸送剤のどちらか一方を用いることが一般的であるが、正孔輸送剤と電子輸送剤を併用することもできる。
【0049】
(2)添加剤
また、電子写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、或いは光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、電荷輸送層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等を添加することが好ましい。
例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等や、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体が挙げられる。
【0050】
(3)結着樹脂
また、電荷輸送層を構成する結着樹脂としては、従来から感光層に使用されている種々の樹脂を使用することができる。
例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂をはじめ、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
また、これらの結着樹脂は、単独または2種以上をブレンドまたは共重合して使用できる。
【0051】
(4)膜厚
また、電荷輸送層の膜厚は、一般に5〜50μmの範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、電荷輸送層の膜厚が5μm未満の値となると、均一に塗布することが困難となる場合があるためである。一方、電荷輸送層の膜厚が50μmを超えた値となると、機械的強度が低下する場合があるためである。したがって、10〜40μmの範囲内の値に設定することがより好ましい。
【0052】
6.製造方法
(1)基体の準備
干渉縞の発生防止のためには、エッチング、陽極酸化、ウエットブラスティング法、サンドブラスティング法、粗切削、センタレス切削等の方法を用いて、支持基体の表面に粗面化処理を行うことが好ましい。
【0053】
(2)酸化チタンの表面処理
また、酸化チタンに対して表面処理を施す方法としては、例えば、粉砕機を用いて、溶媒を用いずに、アルミナ、シリカ、有機ケイ素化合物及び酸化チタンを混合、分散させて酸化チタンの表面処理をする乾式処理方法を用いることが好ましい。
また、適当な溶媒に溶解させたアルミナ、シリカ及び有機ケイ素化合物を、酸化チタンスラリーに対して加えた後、撹拌し、その後、乾燥させて酸化チタンの表面処理をする湿式処理方法を用いることも好ましい。
なお、乾式処理方法と、湿式処理方法とでは、より均一な表面処理が可能であることから、湿式処理方法がより好ましい。
【0054】
また、湿式処理方法としては、湿式メディア分散型装置を用いることが好ましい。
この理由は、かかる湿式メディア分散型装置であれば、分散能に優れるため、酸化チタンの凝集粒子を効果的に粉砕及び分散させながら、均一な表面処理を施すことができるためである。
ここで、湿式メディア分散型装置とは、装置内にメディアが充填されているとともに、例えば、高速回転可能な撹拌ディスク等の分散力を向上させる部材を備えた装置である。
また、上述したメディアとしては、ボールやビーズ等を用いることが好ましく、より均一な表面処理をするためには、ビーズを用いることが好ましい。
また、ビーズの原材料としては、アルミナ、ガラス、ジルコン、ジルコニア、スチール及びフロント石等が好適に使用される。
なお、ビーズの直径としては、0.3〜2mmの範囲内とすることが好ましい。
【0055】
(3)中間層の形成
(3)−1 中間層用塗布液の準備
また、中間層を形成するにあたり、樹脂成分を溶解した溶液中に上述した酸化チタン及び酸化防止剤等の添加剤を添加して、分散処理を行い、塗布液を形成することが好ましい。
また、分散処理を行う方法は特に制限されるものではないが、一般的に公知のロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライタ、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等を用いることが好ましい。
【0056】
また、中間層用塗布液を製造するに際して、複数段階に分けて結着樹脂を溶解させるとともに、上述した酸化チタンと混合することが好ましい。
より具体的には、中間層用塗布液の製造に際して、下記工程(A)〜(B)を含むことが好ましい。
(A)酸化チタンを、中間層を構成する全結着樹脂量の31〜65重量%に該当する結着樹脂を溶解させてなる結着樹脂溶液中に添加して、一次分散液とする工程
(B)一次分散液に対して、全結着樹脂量の35〜69重量%に該当する結着樹脂を溶解させて、中間層用塗布液とする工程
この理由は、複数段階に分けずに、最初から全量の結着樹脂と、全量の酸化チタンと、有機溶剤と、を一段階で混合した場合、酸化チタン粒子表面における樹脂及び有機溶剤との接触割合が不均一となりやすいためである。したがって、中間層用塗布液中における酸化チタン表面の性質が変化し、酸化チタンの分散性が悪化する場合があるためである。また、一段階で混合した場合、特に、平均一次粒径が15nm以下の酸化チタンを使用すると、顕著に分散性が低下する場合があるためである。
【0057】
一方、中間層用塗布液の製造にあたり、(A)、(B)二つの工程を設けた場合、まず、(A)工程において一次分散液中の酸化チタンが、非常に高濃度となるため、個々の酸化チタン粒子表面における樹脂との接触割合と、有機溶剤との接触割合とを均一にすることが容易となる。したがって、続く(B)工程において、全添加樹脂量を加えた状態とした場合であっても、酸化チタンの分散性が一定状態で保持されることになる。その結果、中間層用塗布液は、その保存安定性が向上するため、所定の中間層を容易かつ安定的に形成することができる。
したがって、工程(A)において加える結着樹脂の量を、全結着樹脂の35〜60重量%に相当する分量とすることがより好ましく、40〜55重量%に相当する分量とすることがさらに好ましい。
【0058】
(3)−2 中間層用塗布液の塗布方法
また、中間層用塗布液の塗布方法については特に制限されるものではないが、浸漬塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法等の塗布法を用いることができる。
なお、中間層およびその上の感光層をより安定的に形成するためには、中間層用塗布液の塗布後、30〜200℃で、5分〜2時間、加熱乾燥処理を実施することが好ましい。
【0059】
(4)電荷発生層の形成
(4)−1 電荷発生層用塗布液の準備
また、電荷発生層を形成するにあたり、樹脂成分を溶解した溶液中に電荷発生剤等を添加して、分散処理を行い、塗布液を製造する。
また、分散処理を行う方法は、特に制限されるものではないが、一般的に公知のロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合し、塗布液とすることが好ましい。
【0060】
(4)−2 電荷発生層用塗布液の塗布
また、電荷発生層用塗布液の塗布方法については、特に制限されるものではないが、例えば、スピンコーター、アプリケーター、スプレーコーター、バーコーター、ディップコーター、ドクターブレード等を用いることが好ましい。
また、塗布工程の後、乾燥工程において、高温乾燥機や減圧乾燥機等を用いて、例えば、60℃〜150℃の乾燥温度で乾燥させることが好ましい。
【0061】
(5)電荷輸送層の形成
電荷輸送層の形成は、樹脂成分を溶解した溶液中に電荷輸送剤等を添加して、塗布液を製造することが好ましい。なお、分散処理、塗布方法、乾燥方法は、電荷発生層と重複するため省略する。
【0062】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態において説明した積層型電子写真感光体を備えるとともに、当該積層型電子写真感光体の周囲に、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段をそれぞれ配置することを特徴とする画像形成装置である。
以下、第1の実施形態の説明と異なる点を中心に説明する。
【0063】
1.基本構成
図5に、本発明に係る画像形成装置50の基本構成を示す。かかる画像形成装置50は、ドラム型の積層型電子写真感光体10を備えており、この積層型電子写真感光体10の周囲には、矢印Aで示す回転方向に沿って、一次帯電器14a、露光装置14b、現像器14c、転写帯電器14d、分離帯電器14e、クリーニング装置18、及び除電器23が順次に配設されて構成されている。
また、記録材Pを矢印Bで示す搬送方向に沿って、その上流側から順に、給紙ローラ19a、19b及び搬送ベルト21によって搬送し、その途中に、トナーを定着させて画像形成するための定着ローラ22a及び加圧ローラ22bが配設されている。
そして、積層型電子写真感光体10は、上述した所定の中間層12を支持基体13上に備えている。したがって、フォトメモリの発生が抑制された良質な画像を、安定的に形成することができる。
【0064】
2.動作
次いで、図5を参照しながら、画像形成装置50の基本動作を説明する。
まず、かかる画像形成装置50の積層型電子写真感光体10を、駆動手段(図示せず)によって、矢印Aで示す方向に所定のプロセススピード(周速度)で回転させるとともに、その表面を一次帯電器14aによって所定の極性及び電位に帯電させる。例えば、導電性弾性ローラを感光体表面に接触させる方式の場合には、1〜2kV程度の直流電圧を印加して、50〜2000Vに正帯電させることが好ましい。
次いで、レーザー、LED等の露光装置14bにより、画像情報に応じて光変調されながら反射ミラー等を介して、光を照射して、積層型電子写真感光体10の表面を露光する。この露光により、積層型電子写真感光体10の表面に静電潜像が形成される。
【0065】
次いで、静電潜像に基づいて、現像器14cにより現像剤(トナー)が現像される。すなわち、現像器14cには、トナーが収納されており、備えてある現像スリーブに、所定の現像バイアスを印加することにより、トナーが電子写真感光体10の静電潜像に対応して付着し、トナー像が形成される。
次いで、積層型電子写真感光体10上に形成されたトナー像は、記録材Pに転写される。この記録材Pは、給紙カセット(図示せず)から、給紙ローラ19a、19bによって給紙された後、積層型電子写真感光体10上のトナー像とタイミングが同期するように調整して、積層型電子写真感光体10と転写帯電器14dとの間の転写部に供給される。そして、電子写真感光体10上のトナー像は、転写帯電器14dに、所定の転写バイアスを印加することにより、記録材P上に確実に転写することができる。
【0066】
次いで、トナー像が転写された後の記録材Pは、分離帯電器14eによって積層型電子写真感光体10表面から分離され、搬送ベルト21によって定着器に搬送される。ここで、定着ローラ22a及び加圧ローラ22bによって、加熱処理及び加圧処理されて表面にトナー像が定着された後、排出ローラ(図示せず)によって画像形成装置50の外部に排出される。
一方、トナー像転写後の積層型電子写真感光体10はそのまま回転を続け、転写時に記録材Pに転写されなかった残留トナー(付着物)が積層型電子写真感光体10の表面から、クリーニング装置18によって除去されるとともに、積層型電子写真感光体10は、次の画像形成に供されることになる。
そして、上述したように、積層型電子写真感光体10は、所定の中間層12を支持基体13上に備えているため、長時間にわたって、優れた電気特性や画像特性を示すことができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの記載内容に限定されるものではない。
【0068】
[実施例1]
1.積層型電子写真感光体の製造
(1)中間層の形成
容器内に、アルミナ及びシリカで表面処理した後、メチルハイドロジェンポリシロキサンにて表面処理した酸化チタン(テイカ製、SMT−02、数平均一次粒子径:10nm)150重量部と、アルミナ及びシリカで表面処理した酸化チタン(テイカ製、MT−05、数平均一次粒子径:10nm)50重量部と、メタノール600重量部と、ブタノール150重量部と、予めメタノール200重量部、ブタノール50重量部に対して溶解させたアミランCM8000(東レ(株)製、四元共重合ポリアミド樹脂)50重量部と、を加えた後、ビーズミル(メディア:直径0.5mmのジルコニアボール)を用いて1時間混合して、1次分散溶液とした。
次いで、予めメタノール200重量部、ブタノール50重量部に対して溶解させた50重量部のアミランCM8000と、式(1)中のP−1で表される酸化防止剤10重量部を加えた後、ペイントシェーカーを用いて1時間混合して2次分散を行い、中間層用塗布液とした。
なお、上述の中間層用塗布液における各構成材料の添加量に関して、中間層用塗布液に加えられたアミランCM8000の全体量を基準量(100重量部)としている。
【0069】
次いで、得られた中間層用塗布液を、5ミクロンのフィルタにてろ過した後、直径30mm、長さ238.5mmのアルミニウム基体(支持基体)の一端を上にして、得られた中間層用塗布液中に5mm/secの速度で浸漬させて塗布した。その後、130℃、30分の条件で硬化処理を行って、膜厚2μmの中間層を形成した。
【0070】
(2)電荷発生層の形成
次いで、ボールミルを用いて、電荷発生剤として、式(4)で表されるチタニルフタロシアニン(CGM−B)の結晶を100重量部、結着樹脂としてポリビニルアセタール樹脂(積水化学(株)製、KS−5Z)100重量部、分散媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル2000重量部、テトラヒドロフラン6000重量部を、48時間混合、分散させ、電荷発生層用の塗布液を得た。得られた塗布液を、3ミクロンのフィルタにてろ過後、上述した中間層上にディップコート法にて塗布し、80℃で5分間乾燥させて、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0071】
(3)電荷輸送層の形成
次いで、超音波分散機内に、正孔輸送剤として下記式(7)で表されるスチルベン化合物(HTM−1)70重量部と、結着樹脂として、ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製、TS2020)100重量部と、溶剤としてテトラヒドロフラン460重量部と、を収容したのち、10分間分散処理させて、電荷輸送層用塗布液を得た。
得られた電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層用塗布液と同様にして電荷発生層上に塗布し、130℃で30分間乾燥し、膜厚20μmの電荷輸送層を形成し積層型電子写真感光体を作製した。
【0072】
【化7】

【0073】
(4)チタニルフタロシアニン結晶の製造
なお、電荷発生層において、電荷発生剤として含有させたチタニルフタロシアニン結晶は、以下のようにして製造した。
すなわち、アルゴン置換したフラスコ中に、o−フタロニトリル25gと、チタンテトラブトキシド28gと、キノリン300gとを加え、撹拌しつつ150℃まで昇温した。
次いで、反応系から発生する蒸気を系外へ留去しながら215℃まで昇温したのち、この温度を維持しつつさらに2時間、撹拌して反応させた。
次いで、反応終了後、150℃まで冷却した時点で反応混合物をフラスコから取り出し、ガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をN,N−ジメチルホルムアミド、およびメタノールで順次洗浄したのち真空乾燥して、青紫色の固体24gを得た。
【0074】
次いで、顔料化前処理として、上述したチタニルフタロシアニン化合物の製造で得られた青紫色の固体10gを、N,N−ジメチルホルムアミド100ミリリットル中に加え、撹拌しつつ130℃に加熱して2時間、撹拌処理を行った。
次いで、2時間経過した時点で加熱を停止し、さらに、23±1℃まで冷却した時点で撹拌も停止し、この状態で12時間、液を静置して安定化処理を行った。そして安定化された後の上澄みをガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をメタノールで洗浄したのち真空乾燥して、チタニルフタロシアニン化合物の粗結晶9.83gを得た。
【0075】
次いで、顔料化処理として、上述した顔料化前処理で得られたチタニルフタロシアニンの粗結晶5gを、濃硫酸100ミリリットルに加えて溶解した。
次いで、この溶液を、氷冷下の水中に滴下したのち室温で15分間撹拌し、さらに23±1℃付近で30分間、静置して再結晶させ、上澄みと分離させた。
次いで、上澄みをガラスフィルターによってろ別し、得られた固体を洗浄液が中性になるまで水洗したのち、乾燥させずに水が存在した状態で、クロロベンゼン200ミリリットル中に分散させて50℃に加熱して10時間、撹拌した。そして、上澄みをガラスフィルターによってろ別したのち、得られた結晶を50℃で5時間、真空乾燥させて、式(4)で表される無置換のチタニルフタロシアニンの結晶(青色粉末)4.1gを得た。
なお、得られたチタニルフタロシアニン結晶においては、初期、及び1,3−ジオキソランまたはテトラヒドロフラン中に7日間浸漬させた後においても、光学特性として、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=7.4°及び26.2°にピークが発生していないことを確認した。また、熱特性として、示差走査熱量分析での400℃までの昇温において、吸着水の気化にともなう90℃付近のピーク以外は、50〜400℃の範囲では、温度変化のピークを示さないことを確認した。
【0076】
2.評価
(1)フォトメモリ発生の評価
(1)−1 フォトメモリ画像の評価
得られた積層型電子写真感光体におけるフォトメモリ画像の評価を行った。
すなわち、得られた積層型電子写真感光体を部分的に遮光した状態で、光度1500Luxの白色光に2時間曝した。次いで、放置直後の積層型電子写真感光体を、負帯電反転現像プロセスを採用したプリンター(沖データ(株)製、MicroLine−22N)に搭載し、常温常湿下(温度:20℃、相対湿度:60%RH)において、ハーフトーン連画像を連続形成した。次いで、得られたハーフトーン画像で、積層型電子写真感光体の外光照射部及び遮光部に対応する部分におけるそれぞれの濃度差を、目視にて検査し、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:ハーフトーン画像上に外光照射の影響が観察されない。
△:ハーフトーン画像上に僅かに外光照射の影響が観察される。
×:ハーフトーン画像上に明確に外光照射の影響が観察される。
【0077】
(1)−2 明電位差の評価
また、得られた積層型電子写真感光体における明電位差を評価した。
すなわち、負帯電反転現像プロセスを採用したプリンタ(沖データ(株)製MicroLine−22)におけるイメージングユニットから、現像手段を取り外し、そこに電位測定装置を装着して、電位測定用のイメージングユニットを作成した。かかる電位測定装置は、イメージングユニットの現像位置に対して、電位測定プローブを配置する構成とした。また、かかる電位測定プローブを、電子写真感光体の軸方向における中央に対して配置し、電位測定プローブと電子写真感光体表面との距離は、5mmとした。
次いで、上述したフォトメモリ画像の評価における方法と同様の方法で、部分的に外光に曝した積層型電子写真感光体を、上述した電位測定用のイメージングユニットに装着し、負帯電させた。次いで、外光照射部及び外光未照射に対して、ベタ黒画像に相当する露光を行い、かかる露光部の明電位(V)を測定し、(外光未露光部の明電位(V))−(外光露光部の明電位(V))の値を算出して、明電位差(V)とし、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:明電位差(V)の値が10V未満の値である。
△:明電位差(V)の値が10〜20V未満の値である。
×:明電位差(V)の値が20V以上の値である。
【0078】
(2)かぶりの評価
また、得られた積層型電子写真感光体を、負帯電反転現像プロセスを採用した上述のプリンタ(沖データ(株)製、Microline−22N)に装着して、高温高湿下(温度:35℃、湿度:85%)におけるかぶり評価を行った。
すなわち、かかる高温高湿下において、白紙画像を5枚印刷し、白紙印字画像におけるID、及び白紙(未印刷)におけるIDを、反射濃度計(東京電色社製TC−6D)を用いて測定した。次いで、白紙印刷画像におけるIDから、白紙におけるIDを引いて、かぶりID値(FD値)とし、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:FD値が0.008未満の値である。
△:FD値が0.008〜0.015未満の値である。
×:FD値が0.015以上の値である。
【0079】
(3)総合評価
また、上述した各評価を総合して、下記基準に沿って総合評価を行った。
○:全ての評価項目において○の評価を受けている。
△:×の評価は得ていないが、△の評価を1つ以上受けている。
×:×の評価を1つ以上受けている。
【0080】
[実施例2〜3]
また、実施例2〜3においては、中間層を形成する際に、酸化防止剤の含有量をそれぞれ30重量部及び45重量部に変えたほかは、実施例1と同様に積層型電子写真感光体を製造するとともに、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0081】
[実施例4]
また、実施例4においては、中間層を形成する際に、酸化防止剤として式(1)中のP−14で表される化合物を65重量部用いたほかは、実施例1と同様に積層型電子写真感光体を製造するとともに、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0082】
[実施例5]
また、実施例5においては、中間層を形成する際に、酸化防止剤として式(2)中のP−18で表される化合物を用いたほかは、実施例2と同様に積層型電子写真感光体を製造するとともに、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0083】
[実施例6]
また、実施例6においては、中間層を形成する際に、酸化防止剤の含有量を100重量部に変えたほかは、実施例1と同様に積層型電子写真感光体を製造するとともに、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0084】
[比較例1]
また、比較例1においては、中間層を形成する際に、酸化防止剤を加えなかったほかは、実施例1と同様に積層型電子写真感光体を製造するとともに、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0085】
[比較例2〜3]
また、比較例2〜3においては、中間層を形成する際に、酸化防止剤の含有量をそれぞれ2重量部及び150重量部に変えたほかは、実施例1と同様に積層型電子写真感光体を製造するとともに、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
[実施例7〜13]
また、実施例7〜13においては、中間層を形成する際に、酸化チタンSMT−02の含有量を50〜450重量部に変えたほかは、実施例2と同様に積層型電子写真感光体を製造し、評価した。なお、実施例7〜13においては、外光に曝す前段階において、その明電位の絶対値(V)も測定した。得られた結果を表2に示す。
【0088】
[比較例4]
また、比較例4においては、中間層を形成する際に、酸化チタンSMT−02を加えなかったほかは、実施例7〜13と同様に積層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表2に示す。
なお、比較例4においては、明電位の絶対値が著しく大きく、感度特性が過度に低いため、フォトメモリについての評価は実施不可であった。
【0089】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の積層型電子写真感光体及びそれを備えた画像形成装置によれば、積層型電子写真感光体の中間層に対して、所定量の酸化防止剤と、特定の酸化チタンと、を含有させることにより、外光によるフォトメモリの発生を効果的に抑制し、かつ、優れた感度特性を得ることができるようになった。
したがって、本発明の積層型電子写真感光体及びそれを備えた画像形成装置は、複写機やプリンター等の各種画像形成装置における性能を向上させるだけでなく、積層型電子写真感光体の取り扱いや、画像形成装置の組み立て作業等の簡易化にも著しく寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】(a)及び(b)は、本発明にかかる積層型電子写真感光体の概略構成を説明するために供する図である。
【図2】特定の酸化チタンの含有量と感度特性との関係を説明するために供する図である。
【図3】酸化防止剤の含有量とフォトメモリとの関係を説明するために供する図である。
【図4】酸化防止剤の含有量とかぶりとの関係を説明するために供する図である。
【図5】本発明にかかる画像形成装置の概略構成を説明するために供する図である。
【符号の説明】
【0092】
10:積層型電子写真感光体、11:感光層、12:中間層、13:支持基体、14a:一次帯電器、14b:露光装置、14c:現像器、14d:転写帯電器、14e:分離帯電器、18:クリーニング装置、18a:クリーニングブレード、19a、19b:給紙ローラ、21:搬送ベルト、22a:定着ローラ、22b:加圧ローラ、23:除電器、32:電荷輸送層、34:電荷発生層、50:画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、が設けられた積層型電子写真感光体であって、
前記中間層が、酸化防止剤と、アルミナ、シリカ及び有機ケイ素化合物によって表面処理された酸化チタンと、を含有するとともに、前記酸化防止剤の含有量を、前記中間層における結着樹脂100重量部に対して10〜100重量部の範囲内の値とすることを特徴とする積層型電子写真感光体。
【請求項2】
前記酸化防止剤を、ヒンダードフェノール系化合物及びベンゾトリアゾール系化合物、あるいはいずれか一方の化合物とすることを特徴とする請求項1に記載の積層型電子写真感光体。
【請求項3】
前記酸化チタンの平均1次粒子径を5〜30nmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型電子写真感光体。
【請求項4】
前記酸化チタンの含有量を、前記中間層における結着樹脂100重量部に対して50〜400重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層型電子写真感光体。
【請求項5】
前記酸化チタンとして、2種以上の酸化チタンを含有させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層型電子写真感光体。
【請求項6】
前記中間層における結着樹脂をポリアミド樹脂とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層型電子写真感光体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層型電子写真感光体を備えるとともに、当該積層型電子写真感光体の周囲に、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段をそれぞれ配置することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−139372(P2008−139372A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322911(P2006−322911)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】