積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成方法及び作成装置
【課題】第1未焼成導体層群と第2未焼成導体層群のそれぞれを構成する各未焼成導体層の輪郭や厚さ等に高い寸法精度を確保できる、積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成方法を提供する。
【解決手段】複数の凹部が所定配列で形成された平板状凹版IPのY方向位置を変化させることにより、第1未焼成導体層群PP1の印刷の対応した凹部領域と第2未焼成導体層群PP2の印刷に対応した凹部領域を選定して、帯状グリーンシートGSの表面に異配列の第1未焼成導体層群PP1及び第2未焼成導体層群PP2をシート長さ方向に沿って交互に印刷する。
【解決手段】複数の凹部が所定配列で形成された平板状凹版IPのY方向位置を変化させることにより、第1未焼成導体層群PP1の印刷の対応した凹部領域と第2未焼成導体層群PP2の印刷に対応した凹部領域を選定して、帯状グリーンシートGSの表面に異配列の第1未焼成導体層群PP1及び第2未焼成導体層群PP2をシート長さ方向に沿って交互に印刷する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型セラミックコンデンサや積層型インダクタ等の積層型電子部品の製造に用いられる未焼成導体層印刷シート、具体的には、帯状グリーンシートの表面に異配列の第1未焼成導体層群及び第2未焼成導体層群がシート長さ方向に沿って交互に印刷された未焼成導体層印刷シートの作成方法及び作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型セラミックコンデンサや積層型インダクタ等の積層型電子部品は、通常、「シート積層工程」と「積層体切断工程」と「チップ焼成工程」と「端子作成工程」とを経て製造されている。
【0003】
「シート積層工程」は、第1積層用シートと第2積層用シートとを所定枚数交互に積み重ねると共にその上下に第3積層用シートを所定枚数積み重ねて層相互を熱圧着する工程である。第1積層用シート及び第2積層用シートは、誘電体セラミック材料粉末や絶縁体セラミック材料粉末や磁性体材料粉末等の材料粉末とバインダとを含む所定サイズのグリーンシートの表面に複数の未焼成導体層(導体ペースト層)が所定配列で印刷されたものであり、第1積層用シートの未焼成導体層群と第2積層用シートの未焼成導体層群とは異なる配列を有している。また、第3積層用シートは、第1積層用シート及び第2積層用シートを構成するグリーンシートと同一サイズのグリーンシートであって、未焼成導体層は印刷されていない。
【0004】
「シート積層工程」で使用される第1積層用シート及び第2積層用シートは、予め作成した未焼成導体層印刷シートから打ち抜きや切断等の手法によって取り出される。この未焼成導体層印刷シートは、帯状グリーンシートの表面に異配列の第1未焼成導体層群及び第2未焼成導体層群をシート長さ方向に沿って交互に印刷することによって作成されている。
【0005】
第1未焼成導体層群及び第2未焼成導体層群の印刷にはスクリーン印刷法が一般に用いられているが、生産効率の向上を目的として、最近ではスクリーン印刷法に代えてグラビア印刷法を用いることが検討されている(特許文献1及び2を参照)。グラビア印刷法はダイレクトグラビア印刷法とオフセットグラビア印刷法に大別できるが、何れも外周面に複数の凹部が形成された円柱状凹版が使用されている。
【0006】
円柱状凹版の場合、各凹部は円柱状母体の外周面に切削やエッチング等の手法によって加工されるが、加工対象となる外周面が所定曲率半径を持つ曲面であるが故に、各凹部の輪郭や深さを高精度で仕上げることが難しい。つまり、各凹部に高い寸法精度を確保し難いことから、各凹部に充填された導体ペーストの抜け、並びに、帯状グリーンシートの表面への転移(オフセットグラビア印刷法では転写ロールの表面への転移)に不良を生じ易く、結果として、第1未焼成導体層群と第2未焼成導体層群のそれぞれを構成する各未焼成導体層の輪郭や厚さ等に高い寸法精度を確保することが難しくなる。
【0007】
また、円柱状凹版の場合、外周面の凹部に充填された導体ペーストを帯状グリーンシートの表面(オフセットグラビア印刷法では転写ロールの表面)に直接転移させることによって所期の印刷が行われるが、凹部が外周面(所定曲率半径を持つ曲面)に形成されているが故に、凹部に高い寸法精度を確保し難いことも相俟って、前記転移の際にペースト残存等の転移不良を生じ易く、結果として、第1未焼成導体層群と第2未焼成導体層群のそれぞれを構成する各未焼成導体層の輪郭や厚さ等に高い寸法精度を確保することが難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−197331号公報
【特許文献2】特開2007−049193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、第1未焼成導体層群と第2未焼成導体層群のそれぞれを構成する各未焼成導体層の輪郭や厚さ等に高い寸法精度を確保できる、積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成方法及び作成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明に係る作成方法は、帯状グリーンシートの表面に異配列の第1未焼成導体層群及び第2未焼成導体層群がシート長さ方向に沿って交互に印刷された、積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成方法において、複数の凹部が平面に所定配列で形成され、且つ、帯状グリーンシートのシート長さ方向と直交する方向に移動可能な平板状凹版を用い、(1)平板状凹版を前記シート長さ方向と直交する方向に移動させることによって複数の凹部のうち前記シート長さ方向と直交する方向の一方部分を除く凹部を印刷に利用できるようにし、該凹部に充填された導体ペーストを帯状グリーンシートの表面に直接転移して第1未焼成導体層群を印刷するステップと、(2)平板状凹版を前記シート長さ方向と直交する方向に移動させることによって複数の凹部のうち前記シート長さ方向と直交する方向の他方部分を除く凹部を印刷に利用できるようにし、該凹部に充填された導体ペーストを帯状グリーンシートの表面に直接転移して第2未焼成導体層群を印刷するステップとを、交互に繰り返す、ことをその特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る作成装置は、帯状グリーンシートの表面に異配列の第1未焼成導体層群及び第2未焼成導体層群がシート長さ方向に沿って交互に印刷された、積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成装置において、(1)複数の凹部が平面に所定配列で形成され、且つ、凹部に充填された導体ペーストを帯状グリーンシートの表面に直接転移するための平板状凹版と、(2)平板状凹版を帯状グリーンシートのシート長さ方向と直交する方向に移動させるための動力源と、(3)平板状凹版の複数の凹部に導体ペーストを充填するためのペースト供給機と、を備える、ことをその特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1未焼成導体層群と第2未焼成導体層群のそれぞれを構成する各未焼成導体層の輪郭や厚さ等に高い寸法精度を確保できる、積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成方法及び作成装置を提供することができる。
【0013】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明を適用した「未焼成導体層印刷シートの作成装置」の全体構成図である。
【図2】図2は図1に示した平板状凹版の詳細図である。
【図3】図3は図1に示した「未焼成導体層印刷シートの作成装置」に依る「未焼成導体層印刷シートの作成方法」の第1ステップを説明するための図である。
【図4】図4は図1に示した「未焼成導体層印刷シートの作成装置」に依る「未焼成導体層印刷シートの作成方法」の第2ステップを説明するための図である。
【図5】図5は図1に示した「未焼成導体層印刷シートの作成装置」に依る「未焼成導体層印刷シートの作成方法」の第3ステップを説明するための図である。
【図6】図6(A)は第2ステップにおける平板状凹版とグリーンシートとの位置関係を示す図、図6(B)は第3ステップにおいてグリーンシートに印刷された第1未焼成導体層群の配列を示す図である。
【図7】図7は図1に示した「未焼成導体層印刷シートの作成装置」に依る「未焼成導体層印刷シートの作成方法」の第4ステップを説明するための図である。
【図8】図8は図1に示した「未焼成導体層印刷シートの作成装置」に依る「未焼成導体層印刷シートの作成方法」の第5ステップを説明するための図である。
【図9】図9は図1に示した「未焼成導体層印刷シートの作成装置」に依る「未焼成導体層印刷シートの作成方法」の第6ステップを説明するための図である。
【図10】図10は図1に示した「未焼成導体層印刷シートの作成装置」に依る「未焼成導体層印刷シートの作成方法」の第7ステップを説明するための図である。
【図11】図11(A)は第6ステップにおける平板状凹版とグリーンシートとの位置関係を示す図、図11(B)は第7ステップにおいてグリーンシートに印刷された第2未焼成導体層群の配列を示す図である。
【図12】図12は作成された未焼成導体層印刷シートの表面図である。
【図13】図13(A)は図12に示した未焼成導体層印刷シートから取り出した第1積層用シートの表面図、図13(B)は図12に示した未焼成導体層印刷シートから取り出した第2積層用シートの表面図である。
【図14】図14は図13に示した第1積層用シート及び第2積層用シートを用いた「シート積層工程」とこれに続く「積層体切断工程」を説明するための図である。
【図15】図15は「積層体切断工程」で得られた未焼成チップを示す図である。
【図16】図16は「積層体切断工程」に続く「チップ焼成工程」とこれに続く「端子作成工程」を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<未焼成導体層印刷シートの作成装置>
先ず、図1及び図2を引用して、本発明を適用した「未焼成導体層印刷シートの作成装置」の全体構成について説明する。
【0016】
図1中のRFは繰出ロール、RTは巻取ロール、RGはガイドロール(図中は4個)、RBはバックアップロール、SRは回転動力源、HEは乾燥用ヒータ(図中は2個)、TEは可動テーブル、IPは平板状凹版、PFはペースト供給機である。
【0017】
因みに、図1及び図2に示した+X及び−Xの矢印と+Y及び−Yの矢印は水平面内で直交する2つの方向(X方向とY方向)を示し、+Z及び−Zの矢印は水平面と直交する垂直な方向(Z方向)を示す。
【0018】
繰出ロールRFと巻取ロールRTと各ガイドロールRGとバックアップロールRBのそれぞれは、Y方向と平行な軸(図示省略)に回転自在に支持されている。また、回転動力源SRから巻取ロールRTには、巻取ロールRTを図1中で反時計回り方向に間欠的に回転させるための動力が伝達される。
【0019】
繰出ロールRFには、帯状グリーンシートGSが巻き付けられている。この帯状グリーンシートGSは、ダイコータやドクターブレード等の塗工機を用いて、誘電体セラミック材料粉末や絶縁体セラミック材料粉末や磁性体材料粉末等の材料粉末とバインダとを主成分として予め調製したスラリーをポリエチレンフタレート等のプラスチックから成る帯状フィルムの一面に所定厚さで塗工して乾燥することによって作成されたものであるが、図面には帯状フィルムの図示を省略してある。
【0020】
繰出ロールRFに巻き付けられた帯状グリーンシートGSは、該繰出ロールRFから2つのガイドロールRGとバックアップロールRBと2つのガイドロールRGを順に経由して巻取ロールRTに達している。バックアップロールRBとその下流側の2つのガイドロールRGの外周面には、帯状グリーンシートGSの帯状フィルム側が接している。
【0021】
即ち、巻取ロールRTが図1中で反時計回り方向に間欠的に回転すると、該間欠回転に伴って、帯状グリーンシートGSが繰出ロールRFから間欠的に引き出され、且つ、帯状グリーンシートGSが各ガイドロールRGとバックアップロールRBの外周面に沿って間欠的に走行し、作成後の未焼成導体層印刷シートPS(図12を参照)が巻取ロールRTに巻き取られる。
【0022】
各乾燥用ヒータHEは、帯状グリーンシートGSに印刷された第1未焼成導体層群PP1(図6(B)を参照)と第2未焼成導体層群PP2(図11(B)を参照)を、該帯状グリーンシートGSが間欠的に走行する過程で加熱して乾燥させる役割を担っている。
【0023】
可動テーブルTEは、バックアップロールRBの下側に配置されている。この可動テーブルTEは、X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれに対応した直線動力源(図示省略)を有していて、X方向とY方向とZ方向の個別移動を可能としている。
【0024】
平板状凹版IPは、可動テーブルTE上に着脱自在に固定されている。この平板状凹版IPの非固定側の平面には、第1未焼成導体層群PP1(図6(B)を参照)の印刷と第2未焼成導体層群PP2(図11(B)を参照)の印刷とに共用される合計20個の凹部が所定配列で形成されている。この平板状凹版IPは、平板状母材の平面に切削やエッチング等の手法によって各凹部を加工することによって作成されている。
【0025】
図2から分かるように、平板状凹版IPの平面に形成された合計20個の凹部は、輪郭が4角形を成す計12個の第1凹部CP1と、輪郭が第1凹部CP1よりも小さな4角形を成す計8個の第2凹部CP2とから成る。各第1凹部CP1は、所定のX方向寸法Lcp1と、所定のY方向寸法Wcp1と、所定の深さDip1(図示省略)とを有している。また、各第2凹部CP2は、1/2Lcp1に該当するX方向寸法Lcp2と、Wcp1と同じY方向寸法Wcp2と、Dip1と同じ深さDip2(図示省略)とを有している。
【0026】
合計20個の凹部は、(1)第2凹部CP2と第1凹部CP1と第2凹部CP2とがX方向に所定間隔CLxをおいて直線的に並んだ計4つの第1凹部列CPL1と、(2)2つの第1凹部CP1がX方向に同じ間隔CLxをおいて直線的に並んだ計4つの第2凹部列CPL2とが、Y方向に所定間隔CLyをおいて交互に、且つ、平行に並んだ配列を有している。また、各第1凹部列CPL1における2つの間隔CLxのX方向中心と、各第2凹部列CPL2における各第1凹部CP1のX方向中心は、Y方向においてそれぞれ一致している。
【0027】
各第1凹部列CPL1における2つの間隔CLxのX方向中心と第1凹部CP1のX方向中心との距離、並びに、各第2凹部列CPL2における2つの第1凹部CP1のX方向中心と間隔CLxのX方向中心との距離は、未焼成チップCub(図15を参照)のX方向寸法Lccと略一致している。また、Y方向で隣接する2つの間隔CLyのY方向中心間の距離は、未焼成チップCub(図15を参照)のY方向寸法Wccと略一致している。
【0028】
また、図6(A)及び図11(A)から分かるように、前記帯状グリーンシートGSは、平板状凹版IPの平面に形成された合計8つの凹部列(4つの第1凹部列CPL1と4つの第2凹部列CPL2)のうち7つの凹部列に対向するY方向寸法を有している。
【0029】
ペースト供給機PFは、可動テーブルTEのX方向移動に合わせて、予め調製した導体ペーストを平板状凹版IPの平面に形成された合計20個の凹部のうちの一部を除く凹部に充填する役割を担っている。このペースト供給機PFは、例えば、導体ペーストを平板状凹版IPの凹部形成平面に吐出するディスペンサと、平板状凹版IPの凹部形成平面から余分な導体ペーストを掻き取るスキージとを備える。
【0030】
<未焼成導体層印刷シートの作成方法>
次に、図1及び図3〜図12を引用して、前記「未焼成導体層印刷シートの作成装置」に依る「未焼成導体層印刷シートの作成方法」について説明する。
【0031】
作成方法を実行する前は、可動テーブルTEは図1に示した第1初期位置で停止している。第1初期位置にあっては、平板状凹版IPの凹部形成平面のZ方向位置はペースト供給機PFに依るペースト供給が可能な位置に設定されている。また、第1初期位置にあっては、図6(A)に示したように、平板状凹版IPの平面に形成された合計8つの凹部列(4つの第1凹部列CPL1と4つの第2凹部列CPL2)のうち、Y方向の一方部分(図中は最下位)の第2凹部列CPL2を除く7つの凹部列(4つの第1凹部列CPL1と3つの第2凹部列CPL2)が帯状グリーンシートGSに対向している。
【0032】
<作成方法の第1ステップ>
図3に示したように、可動テーブルTEを、第1初期位置(図中の実線を参照)から−X方向に所定距離移動させ、移動後に可動テーブルTEを+X方向に同一距離移動させて第1初期位置に復帰させる。また、可動テーブルTEが±X方向に移動するときに、ペースト供給機PFから平板状凹版IPの7つの凹部列(4つの第1凹部列CPL1と3つの第2凹部列CPL2)の各凹部に導体ペーストを充填する。
【0033】
ペースト供給機PFとして、例えば、導体ペーストを平板状凹版IPの凹部形成平面に吐出するディスペンサと、平板状凹版IPの凹部形成平面から余分な導体ペーストを掻き取るスキージとを備えたものを使用する場合には、可動テーブルTEが−X方向に移動する過程でディスペンサから平板状凹版IPの凹部形成平面に導体ペーストが吐出され、可動テーブルTEが+X方向に移動する過程でスキージによって平板状凹版IPの凹部形成平面から余分な導体ペーストを掻き取されて所期の充填が行われる。
【0034】
<作成方法の第2ステップ>
続いて、図4に示したように、可動テーブルTEを+Z方向に所定距離移動させて、平板状凹版IPの凹部形成平面の図中右端を、帯状グリーンシートGSのバックアップロールRBの外周面に存する部位に接触させる。
【0035】
<作成方法の第3ステップ>
続いて、図5に示したように、帯状グリーンシートGSのバックアップロールRBの外周面に存する部位を+X方向に所定距離走行させると同時に可動テーブルTEを+X方向に同一移動速度で同一距離移動させる。
【0036】
これにより、平板状凹版IPの凹部形成平面と帯状グリーンシートGSのバックアップロールRBの外周面に存する部位との接触領域が−X方向に相対的に変化し、この変位に伴って、平板状凹版IPの7つの凹部列(4つの第1凹部列CPL1と3つの第2凹部列CPL2)の各凹部に充填された導体ペーストが帯状グリーンシートGSの表面に直接転移して図6(B)に示した第1未焼成導体層群PP1が印刷される。
【0037】
図6(B)から分かるように、第1未焼成導体層群PP1は、計10個の第1未焼成導体層(導体ペースト層)CS1と、計8個の第2未焼成導体層(導体ペースト層)CS2とで構成されており、合計18個の未焼成導体層の配列は、平板状凹版IPの7つの凹部列(4つの第1凹部列CPL1と3つの第2凹部列CPL2)を構成する合計18個の凹部の配列に合致している。
【0038】
また、第1未焼成導体層群PP1の各第1未焼成導体層CS1のX方向寸法とY方向寸法と厚さは、平板状凹版IPの第1凹部CP1のX方向寸法Lcp1とY方向寸法Wcp1と深さDip1にそれぞれ略一致し、しかも、各第2未焼成導体層CS2のX方向寸法とY方向寸法と厚さは、平板状凹版IPの第2凹部CP2のX方向寸法Lcp2とY方向寸法Wcp2と深さDip2にそれぞれ略一致している。
【0039】
因みに、第3ステップにおける帯状グリーンシートGSの+X方向の走行距離(=可動テーブルTEの+X方向の移動距離)は、第1未焼成導体層群PP1とこれに−X方向で隣接する第2未焼成導体層群PP2との間に所定間隔SPx(図12を参照)が確保できるような値に設定されている。
【0040】
<作成方法の第4ステップ>
続いて、図7に示したように、可動テーブルTEを−Z方向に所定距離移動させ、移動後に−X方向に所定距離移動させて第1初期位置に復帰させ、復帰後に+Y方向に所定距離As(図11(A)参照)移動させて第2初期位置に変位させる。
【0041】
第2初期位置にあっては、平板状凹版IPの凹部形成平面のZ方向位置はペースト供給機PFに依るペースト供給が可能な位置に設定されている。また、第2初期位置にあっては、図11(A)に示したように、平板状凹版IPの平面に形成された合計8つの凹部列(4つの第1凹部列CPL1と4つの第2凹部列CPL2)のうち、Y方向の他方部分(図中は最上位)の第1凹部列CPL1を除く7つの凹部列(3つの第1凹部列CPL1と4つの第2凹部列CPL2)が帯状グリーンシートGSに対向している。
【0042】
換言すれば、帯状グリーンシートGSに対向する凹部列を変更するために、第1初期位置に復帰した可動テーブルTEを+Y方向に所定距離As(図11(A)参照)移動させて第2初期位置に変位させる。因みに、この距離Asは未焼成チップCubのY方向寸法Wcc(図15を参照)に略一致している。
【0043】
<作成方法の第5ステップ>
続いて、図8に示したように、可動テーブルTEを第2初期位置(図中の実線を参照)から−X方向に所定距離移動させ、移動後に可動テーブルTEを+X方向に同一距離移動させて第2初期位置に復帰させる。また、可動テーブルTEが±X方向に移動するときに、ペースト供給機PFから平板状凹版IPの7つの凹部列(3つの第1凹部列CPL1と4つの第2凹部列CPL2)の各凹部に導体ペーストを充填する。
【0044】
ペースト供給機PFとして、例えば、導体ペーストを平板状凹版IPの凹部形成平面に吐出するディスペンサと、平板状凹版IPの凹部形成平面から余分な導体ペーストを掻き取るスキージとを備えたものを使用する場合には、可動テーブルTEが−X方向に移動する過程でディスペンサから平板状凹版IPの凹部形成平面に導体ペーストが吐出され、可動テーブルTEが+X方向に移動する過程でスキージによって平板状凹版IPの凹部形成平面から余分な導体ペーストを掻き取されて所期の充填が行われる。
【0045】
<作成方法の第6ステップ>
続いて、図9に示したように、可動テーブルTEを+Z方向に所定距離移動させて、平板状凹版IPの凹部形成平面の図中右端を、帯状グリーンシートGSのバックアップロールRBの外周面に存する部位に接触させる。
【0046】
<作成方法の第7ステップ>
続いて、図10に示したように、帯状グリーンシートGSのバックアップロールRBの外周面に存する部位を+X方向に所定距離走行させると同時に可動テーブルTEを+X方向に同一移動速度で同一距離移動させる。
【0047】
これにより、平板状凹版IPの凹部形成平面と帯状グリーンシートGSのバックアップロールRBの外周面に存する部位との接触領域が−X方向に相対的に変化し、この変位に伴って、平板状凹版IPの7つの凹部列(3つの第1凹部列CPL1と4つの第2凹部列CPL2)の各凹部に充填された導体ペーストが帯状グリーンシートGSの表面に直接転移して図11(B)に示した第2未焼成導体層群PP2が印刷される。
【0048】
図11(B)から分かるように、第2未焼成導体層群PP2は、計11個の第1未焼成導体層(導体ペースト層)CS1と、計6個の第2未焼成導体層(導体ペースト層)CS2とで構成されており、合計17個の未焼成導体層の配列は、平板状凹版IPの7つの凹部列(3つの第1凹部列CPL1と4つの第2凹部列CPL2)を構成する凹部の配列に合致している。即ち、第2未焼成導体層群PP2の配列は、第1未焼成導体層群PP1の配列と異なっている。
【0049】
また、第2未焼成導体層群PP2の各第1未焼成導体層CS1のX方向寸法とY方向寸法と厚さは、平板状凹版IPの第1凹部CP1のX方向寸法Lcp1とY方向寸法Wcp1と深さDip1にそれぞれ略一致し、しかも、各第2未焼成導体層CS2のX方向寸法とY方向寸法と厚さは、平板状凹版IPの第2凹部CP2のX方向寸法Lcp2とY方向寸法Wcp2と深さDip2にそれぞれ略一致している。
【0050】
因みに、第7ステップにおける帯状グリーンシートGSの+X方向の走行距離(=可動テーブルTEの+X方向の移動距離)は、第2未焼成導体層群PP2とこれに−X方向で隣接する第1未焼成導体層群PP1との間に所定間隔SPx(図12を参照)が確保できるような値に設定されている。
【0051】
<作成方法の第8ステップ>
続いて、可動テーブルTEを、−Y方向に所定距離As(図11(A)参照)移動させ、移動後に−Z方向に所定距離移動させ、移動後に−X方向に所定距離移動させて第1初期位置に復帰させる(図1を参照)。勿論、可動テーブルTEを、−Z方向に所定距離移動させ、移動後に−X方向に所定距離移動させ、移動後に−Y方向に所定距離As(図11(A)参照)移動させて第1初期位置に復帰させるようにしても良い。
【0052】
これ以降は、前記第1ステップ〜第3ステップと前記第4ステップ〜第8ステップとが交互に繰り返し実施されて、帯状グリーンシートGSへの第1未焼成導体層群PP1(図6(B)の印刷と第2未焼成導体層群PP2(図11(B)を参照)の印刷が交互に行われる。また、帯状グリーンシートGSに印刷された第1未焼成導体層群PP1(図6(B)を参照)と第2未焼成導体層群PP2(図11(B)を参照)は、該帯状グリーンシートGSが間欠的に走行する過程で各乾燥用ヒータHEにより加熱し乾燥される。そして、作成後の未焼成導体層印刷シートPS(図12を参照)が巻取ロールRTに巻き取られる。
【0053】
<積層型電子部品の製造方法例>
次に、図13〜図16を引用して、図12に示した未焼成導体層印刷シートPSを使用して積層型電子部品、例えば、積層型セラミックコンデンサを製造する方法例について説明する。
【0054】
製造に際しては、未焼成導体層印刷シートPSから、所定配列の第1未焼成導体層群PP1が印刷された第1積層用シートPS1(図13(A)を参照)と、第1未焼成導体層群PP1と異なる配列の第2未焼成導体層群PP2が印刷された第2積層用シートPS2(図13(B)を参照)を、打ち抜きや切断等の手法によって取り出す。
【0055】
先に述べたように、未焼成導体層印刷シートPSには異配列の第1未焼成導体層群PP1及び第2未焼成導体層群PP2がシート長さ方向に沿って交互に形成されているため、該未焼成導体層印刷シートPSを+X方向に走行させながら打ち抜きや切断等を行うだけで、同一サイズの第1積層用シートPS1と第2未焼成導体層群PP2を簡単に得ることができる。
【0056】
続いて、第1積層用シートPS1と第2積層用シートPS2とを所定枚数交互に積み重ねると共にその上下に第3積層用シート(図示省略)を所定枚数積み重ねて層相互を熱圧着して積層体MB(図14を参照)を得る。第3積層用シートは、第1積層用シートPS1及び第2積層用シートPS2を構成するグリーンシートと同一サイズのグリーンシートであって、未焼成導体層は印刷されていない。
【0057】
続いて、積層体MBにX方向の切断ラインDLx(図14を参照)とY方向の切断ラインDLyを設定し、ダイシング装置等の切断機によって、該積層体MBを各切断ラインDLx及びDLyで切断して、部品対応サイズの未焼成チップCub(図15を参照)を得る。この切断では、積層体MBに内在する各第1未焼成導体層CS1のX方向中心がY方向に切断され、且つ、各第2未焼成導体層CS2のX方向一端縁がY方向に切断されるため、未焼成チップCubのX方向両端面には、該未焼成チップCubに内在する複数の未焼成導体層の端縁が積層方向で交互に露出する。
【0058】
続いて、未焼成チップCubを焼成炉に投入して、未焼成導体層等が焼結された焼成チップCba(図16を参照)を得る。続いて、焼成チップCbaのX方向両端部にディップ法等の手法によって予め調製した端子ペーストを塗布し、これを焼き付け処理により焼結させて端子EE(図16を参照)を作成する。
【0059】
以上で、積層型セラミックコンデンサの製造が完了するが、材質等によっては未焼成チップCubと端子ペーストの焼結を同時に行うことも可能であり、また、端子EEの表面に必要に応じて電解メッキ等の手法によって1層以上の金属層が形成される。
【0060】
<作成装置及び作成方法によって得られる効果>
次に、前述の「未焼成導体層印刷シートの作成装置」及び「未焼成導体層印刷シートの作成方法」によって得られる効果について説明する。
【0061】
(E1)合計20個の凹部(計12個の第1凹部CP1と計8個の第2凹部CP2)が所定配列で形成された平板状凹版IPのY方向位置を変化させることにより、第1未焼成導体層群PP1の印刷の対応した凹部領域と第2未焼成導体層群PP2の印刷に対応した凹部領域を選定することができる。即ち、単一の平板状凹版IPを用いて、帯状グリーンシートGSの表面に異配列の第1未焼成導体層群PP1及び第2未焼成導体層群PP2をシート長さ方向に沿って交互に印刷することができる。
【0062】
(E2)各凹部は平板状凹版IPの平面に形成されているため、従前の円柱状凹版に比べて、各凹部に高い寸法精度を確保することができる。即ち、平板状凹版IPの場合、各凹部は平板状母材の平面に切削やエッチング等の手法によって加工されるが、加工対象が平面であるが故に、従前の円柱状凹版に比べて、各凹部の輪郭や深さ等を高精度に仕上げることが容易である。つまり、各凹部に高い寸法精度を確保し易いことから、各凹部に充填された導体ペーストの抜け、並びに、帯状グリーンシートGSの表面への転移を良好に行えるし、結果として、第1未焼成導体層群PP1と第2未焼成導体層群PP2のそれぞれを構成する各未焼成導体層の輪郭や厚さ等に高い寸法精度を確保することが容易となる。
【0063】
(E3)平板状凹版IPにあっては、平面の凹部に充填された導体ペーストを帯状グリーンシートの表面に直接転移させることによって所期の印刷が行われるが、凹部が平面に形成されているが故に、凹部に高い寸法精度を確保し易いことも相俟って、前記転移の際にペースト残存等の転移不良を生じ難く、結果として、第1未焼成導体層群PP1と第2未焼成導体層群PP2のそれぞれを構成する各未焼成導体層の輪郭や厚さ等に高い寸法精度を確保することが容易となる。
【0064】
<作成装置及び作成方法の変形例>
次に、前記「未焼成導体層印刷シートの作成装置」及び「未焼成導体層印刷シートの作成方法」の変形例について説明する。
【0065】
(M1)平板状凹版IPとして合計20個の凹部を平面に所定配列で形成したもの(図2を参照)を示したが、第1凹部列CPL1を構成する第1凹部CP1と第2凹部CP2の数を同じX方向並びで増加し、且つ、第2凹部列CPL2を構成する第1凹部CP1の数を同じX方向並びで増加しても良く、また、第1凹部列CPL1と第2凹部列CPL2の数を同じY方向並びで増加しても良い。
【0066】
(M2)未焼成導体層印刷シートPSとして帯状グリーンシートGSの表面に図12に示した第1未焼成導体層群PP1及び第2未焼成導体層群PP2を交互に印刷したものを例示したが、平板状凹版IPの表面に形成される凹部の配列を変更すれば第1未焼成導体層群PP1及び第2未焼成導体層群PP2と異なる配列を有する第1未焼成導体層群及び第2未焼成導体層群を帯状グリーンシートGSの表面に印刷することができる。また、平板状凹版IPの表面に形成される凹部の輪郭を変更すれば、積層型セラミックコンデンサ以外の積層型電子部品、例えば、積層型インダクタ等の製造に用いられる未焼成導体層印刷シートを作成することもできる。
【符号の説明】
【0067】
RF…繰出ロール、RT…巻取ロール、RG…ガイドロール、RB…バックアップロール、SR…回転動力源、GS…帯状グリーンシート、TE…可動テーブル、IP…平板状凹版、CP1…第1凹部、CP2…第2凹部、CPL1…第1凹部列、CPL2…第2凹部列、PF…ペースト供給機、PP1…第1未焼成導体層群、PP2…第2未焼成導体層群、CS1…第1未焼成導体層、CS2…第2未焼成導体層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型セラミックコンデンサや積層型インダクタ等の積層型電子部品の製造に用いられる未焼成導体層印刷シート、具体的には、帯状グリーンシートの表面に異配列の第1未焼成導体層群及び第2未焼成導体層群がシート長さ方向に沿って交互に印刷された未焼成導体層印刷シートの作成方法及び作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型セラミックコンデンサや積層型インダクタ等の積層型電子部品は、通常、「シート積層工程」と「積層体切断工程」と「チップ焼成工程」と「端子作成工程」とを経て製造されている。
【0003】
「シート積層工程」は、第1積層用シートと第2積層用シートとを所定枚数交互に積み重ねると共にその上下に第3積層用シートを所定枚数積み重ねて層相互を熱圧着する工程である。第1積層用シート及び第2積層用シートは、誘電体セラミック材料粉末や絶縁体セラミック材料粉末や磁性体材料粉末等の材料粉末とバインダとを含む所定サイズのグリーンシートの表面に複数の未焼成導体層(導体ペースト層)が所定配列で印刷されたものであり、第1積層用シートの未焼成導体層群と第2積層用シートの未焼成導体層群とは異なる配列を有している。また、第3積層用シートは、第1積層用シート及び第2積層用シートを構成するグリーンシートと同一サイズのグリーンシートであって、未焼成導体層は印刷されていない。
【0004】
「シート積層工程」で使用される第1積層用シート及び第2積層用シートは、予め作成した未焼成導体層印刷シートから打ち抜きや切断等の手法によって取り出される。この未焼成導体層印刷シートは、帯状グリーンシートの表面に異配列の第1未焼成導体層群及び第2未焼成導体層群をシート長さ方向に沿って交互に印刷することによって作成されている。
【0005】
第1未焼成導体層群及び第2未焼成導体層群の印刷にはスクリーン印刷法が一般に用いられているが、生産効率の向上を目的として、最近ではスクリーン印刷法に代えてグラビア印刷法を用いることが検討されている(特許文献1及び2を参照)。グラビア印刷法はダイレクトグラビア印刷法とオフセットグラビア印刷法に大別できるが、何れも外周面に複数の凹部が形成された円柱状凹版が使用されている。
【0006】
円柱状凹版の場合、各凹部は円柱状母体の外周面に切削やエッチング等の手法によって加工されるが、加工対象となる外周面が所定曲率半径を持つ曲面であるが故に、各凹部の輪郭や深さを高精度で仕上げることが難しい。つまり、各凹部に高い寸法精度を確保し難いことから、各凹部に充填された導体ペーストの抜け、並びに、帯状グリーンシートの表面への転移(オフセットグラビア印刷法では転写ロールの表面への転移)に不良を生じ易く、結果として、第1未焼成導体層群と第2未焼成導体層群のそれぞれを構成する各未焼成導体層の輪郭や厚さ等に高い寸法精度を確保することが難しくなる。
【0007】
また、円柱状凹版の場合、外周面の凹部に充填された導体ペーストを帯状グリーンシートの表面(オフセットグラビア印刷法では転写ロールの表面)に直接転移させることによって所期の印刷が行われるが、凹部が外周面(所定曲率半径を持つ曲面)に形成されているが故に、凹部に高い寸法精度を確保し難いことも相俟って、前記転移の際にペースト残存等の転移不良を生じ易く、結果として、第1未焼成導体層群と第2未焼成導体層群のそれぞれを構成する各未焼成導体層の輪郭や厚さ等に高い寸法精度を確保することが難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−197331号公報
【特許文献2】特開2007−049193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、第1未焼成導体層群と第2未焼成導体層群のそれぞれを構成する各未焼成導体層の輪郭や厚さ等に高い寸法精度を確保できる、積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成方法及び作成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明に係る作成方法は、帯状グリーンシートの表面に異配列の第1未焼成導体層群及び第2未焼成導体層群がシート長さ方向に沿って交互に印刷された、積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成方法において、複数の凹部が平面に所定配列で形成され、且つ、帯状グリーンシートのシート長さ方向と直交する方向に移動可能な平板状凹版を用い、(1)平板状凹版を前記シート長さ方向と直交する方向に移動させることによって複数の凹部のうち前記シート長さ方向と直交する方向の一方部分を除く凹部を印刷に利用できるようにし、該凹部に充填された導体ペーストを帯状グリーンシートの表面に直接転移して第1未焼成導体層群を印刷するステップと、(2)平板状凹版を前記シート長さ方向と直交する方向に移動させることによって複数の凹部のうち前記シート長さ方向と直交する方向の他方部分を除く凹部を印刷に利用できるようにし、該凹部に充填された導体ペーストを帯状グリーンシートの表面に直接転移して第2未焼成導体層群を印刷するステップとを、交互に繰り返す、ことをその特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る作成装置は、帯状グリーンシートの表面に異配列の第1未焼成導体層群及び第2未焼成導体層群がシート長さ方向に沿って交互に印刷された、積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成装置において、(1)複数の凹部が平面に所定配列で形成され、且つ、凹部に充填された導体ペーストを帯状グリーンシートの表面に直接転移するための平板状凹版と、(2)平板状凹版を帯状グリーンシートのシート長さ方向と直交する方向に移動させるための動力源と、(3)平板状凹版の複数の凹部に導体ペーストを充填するためのペースト供給機と、を備える、ことをその特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1未焼成導体層群と第2未焼成導体層群のそれぞれを構成する各未焼成導体層の輪郭や厚さ等に高い寸法精度を確保できる、積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成方法及び作成装置を提供することができる。
【0013】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明を適用した「未焼成導体層印刷シートの作成装置」の全体構成図である。
【図2】図2は図1に示した平板状凹版の詳細図である。
【図3】図3は図1に示した「未焼成導体層印刷シートの作成装置」に依る「未焼成導体層印刷シートの作成方法」の第1ステップを説明するための図である。
【図4】図4は図1に示した「未焼成導体層印刷シートの作成装置」に依る「未焼成導体層印刷シートの作成方法」の第2ステップを説明するための図である。
【図5】図5は図1に示した「未焼成導体層印刷シートの作成装置」に依る「未焼成導体層印刷シートの作成方法」の第3ステップを説明するための図である。
【図6】図6(A)は第2ステップにおける平板状凹版とグリーンシートとの位置関係を示す図、図6(B)は第3ステップにおいてグリーンシートに印刷された第1未焼成導体層群の配列を示す図である。
【図7】図7は図1に示した「未焼成導体層印刷シートの作成装置」に依る「未焼成導体層印刷シートの作成方法」の第4ステップを説明するための図である。
【図8】図8は図1に示した「未焼成導体層印刷シートの作成装置」に依る「未焼成導体層印刷シートの作成方法」の第5ステップを説明するための図である。
【図9】図9は図1に示した「未焼成導体層印刷シートの作成装置」に依る「未焼成導体層印刷シートの作成方法」の第6ステップを説明するための図である。
【図10】図10は図1に示した「未焼成導体層印刷シートの作成装置」に依る「未焼成導体層印刷シートの作成方法」の第7ステップを説明するための図である。
【図11】図11(A)は第6ステップにおける平板状凹版とグリーンシートとの位置関係を示す図、図11(B)は第7ステップにおいてグリーンシートに印刷された第2未焼成導体層群の配列を示す図である。
【図12】図12は作成された未焼成導体層印刷シートの表面図である。
【図13】図13(A)は図12に示した未焼成導体層印刷シートから取り出した第1積層用シートの表面図、図13(B)は図12に示した未焼成導体層印刷シートから取り出した第2積層用シートの表面図である。
【図14】図14は図13に示した第1積層用シート及び第2積層用シートを用いた「シート積層工程」とこれに続く「積層体切断工程」を説明するための図である。
【図15】図15は「積層体切断工程」で得られた未焼成チップを示す図である。
【図16】図16は「積層体切断工程」に続く「チップ焼成工程」とこれに続く「端子作成工程」を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<未焼成導体層印刷シートの作成装置>
先ず、図1及び図2を引用して、本発明を適用した「未焼成導体層印刷シートの作成装置」の全体構成について説明する。
【0016】
図1中のRFは繰出ロール、RTは巻取ロール、RGはガイドロール(図中は4個)、RBはバックアップロール、SRは回転動力源、HEは乾燥用ヒータ(図中は2個)、TEは可動テーブル、IPは平板状凹版、PFはペースト供給機である。
【0017】
因みに、図1及び図2に示した+X及び−Xの矢印と+Y及び−Yの矢印は水平面内で直交する2つの方向(X方向とY方向)を示し、+Z及び−Zの矢印は水平面と直交する垂直な方向(Z方向)を示す。
【0018】
繰出ロールRFと巻取ロールRTと各ガイドロールRGとバックアップロールRBのそれぞれは、Y方向と平行な軸(図示省略)に回転自在に支持されている。また、回転動力源SRから巻取ロールRTには、巻取ロールRTを図1中で反時計回り方向に間欠的に回転させるための動力が伝達される。
【0019】
繰出ロールRFには、帯状グリーンシートGSが巻き付けられている。この帯状グリーンシートGSは、ダイコータやドクターブレード等の塗工機を用いて、誘電体セラミック材料粉末や絶縁体セラミック材料粉末や磁性体材料粉末等の材料粉末とバインダとを主成分として予め調製したスラリーをポリエチレンフタレート等のプラスチックから成る帯状フィルムの一面に所定厚さで塗工して乾燥することによって作成されたものであるが、図面には帯状フィルムの図示を省略してある。
【0020】
繰出ロールRFに巻き付けられた帯状グリーンシートGSは、該繰出ロールRFから2つのガイドロールRGとバックアップロールRBと2つのガイドロールRGを順に経由して巻取ロールRTに達している。バックアップロールRBとその下流側の2つのガイドロールRGの外周面には、帯状グリーンシートGSの帯状フィルム側が接している。
【0021】
即ち、巻取ロールRTが図1中で反時計回り方向に間欠的に回転すると、該間欠回転に伴って、帯状グリーンシートGSが繰出ロールRFから間欠的に引き出され、且つ、帯状グリーンシートGSが各ガイドロールRGとバックアップロールRBの外周面に沿って間欠的に走行し、作成後の未焼成導体層印刷シートPS(図12を参照)が巻取ロールRTに巻き取られる。
【0022】
各乾燥用ヒータHEは、帯状グリーンシートGSに印刷された第1未焼成導体層群PP1(図6(B)を参照)と第2未焼成導体層群PP2(図11(B)を参照)を、該帯状グリーンシートGSが間欠的に走行する過程で加熱して乾燥させる役割を担っている。
【0023】
可動テーブルTEは、バックアップロールRBの下側に配置されている。この可動テーブルTEは、X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれに対応した直線動力源(図示省略)を有していて、X方向とY方向とZ方向の個別移動を可能としている。
【0024】
平板状凹版IPは、可動テーブルTE上に着脱自在に固定されている。この平板状凹版IPの非固定側の平面には、第1未焼成導体層群PP1(図6(B)を参照)の印刷と第2未焼成導体層群PP2(図11(B)を参照)の印刷とに共用される合計20個の凹部が所定配列で形成されている。この平板状凹版IPは、平板状母材の平面に切削やエッチング等の手法によって各凹部を加工することによって作成されている。
【0025】
図2から分かるように、平板状凹版IPの平面に形成された合計20個の凹部は、輪郭が4角形を成す計12個の第1凹部CP1と、輪郭が第1凹部CP1よりも小さな4角形を成す計8個の第2凹部CP2とから成る。各第1凹部CP1は、所定のX方向寸法Lcp1と、所定のY方向寸法Wcp1と、所定の深さDip1(図示省略)とを有している。また、各第2凹部CP2は、1/2Lcp1に該当するX方向寸法Lcp2と、Wcp1と同じY方向寸法Wcp2と、Dip1と同じ深さDip2(図示省略)とを有している。
【0026】
合計20個の凹部は、(1)第2凹部CP2と第1凹部CP1と第2凹部CP2とがX方向に所定間隔CLxをおいて直線的に並んだ計4つの第1凹部列CPL1と、(2)2つの第1凹部CP1がX方向に同じ間隔CLxをおいて直線的に並んだ計4つの第2凹部列CPL2とが、Y方向に所定間隔CLyをおいて交互に、且つ、平行に並んだ配列を有している。また、各第1凹部列CPL1における2つの間隔CLxのX方向中心と、各第2凹部列CPL2における各第1凹部CP1のX方向中心は、Y方向においてそれぞれ一致している。
【0027】
各第1凹部列CPL1における2つの間隔CLxのX方向中心と第1凹部CP1のX方向中心との距離、並びに、各第2凹部列CPL2における2つの第1凹部CP1のX方向中心と間隔CLxのX方向中心との距離は、未焼成チップCub(図15を参照)のX方向寸法Lccと略一致している。また、Y方向で隣接する2つの間隔CLyのY方向中心間の距離は、未焼成チップCub(図15を参照)のY方向寸法Wccと略一致している。
【0028】
また、図6(A)及び図11(A)から分かるように、前記帯状グリーンシートGSは、平板状凹版IPの平面に形成された合計8つの凹部列(4つの第1凹部列CPL1と4つの第2凹部列CPL2)のうち7つの凹部列に対向するY方向寸法を有している。
【0029】
ペースト供給機PFは、可動テーブルTEのX方向移動に合わせて、予め調製した導体ペーストを平板状凹版IPの平面に形成された合計20個の凹部のうちの一部を除く凹部に充填する役割を担っている。このペースト供給機PFは、例えば、導体ペーストを平板状凹版IPの凹部形成平面に吐出するディスペンサと、平板状凹版IPの凹部形成平面から余分な導体ペーストを掻き取るスキージとを備える。
【0030】
<未焼成導体層印刷シートの作成方法>
次に、図1及び図3〜図12を引用して、前記「未焼成導体層印刷シートの作成装置」に依る「未焼成導体層印刷シートの作成方法」について説明する。
【0031】
作成方法を実行する前は、可動テーブルTEは図1に示した第1初期位置で停止している。第1初期位置にあっては、平板状凹版IPの凹部形成平面のZ方向位置はペースト供給機PFに依るペースト供給が可能な位置に設定されている。また、第1初期位置にあっては、図6(A)に示したように、平板状凹版IPの平面に形成された合計8つの凹部列(4つの第1凹部列CPL1と4つの第2凹部列CPL2)のうち、Y方向の一方部分(図中は最下位)の第2凹部列CPL2を除く7つの凹部列(4つの第1凹部列CPL1と3つの第2凹部列CPL2)が帯状グリーンシートGSに対向している。
【0032】
<作成方法の第1ステップ>
図3に示したように、可動テーブルTEを、第1初期位置(図中の実線を参照)から−X方向に所定距離移動させ、移動後に可動テーブルTEを+X方向に同一距離移動させて第1初期位置に復帰させる。また、可動テーブルTEが±X方向に移動するときに、ペースト供給機PFから平板状凹版IPの7つの凹部列(4つの第1凹部列CPL1と3つの第2凹部列CPL2)の各凹部に導体ペーストを充填する。
【0033】
ペースト供給機PFとして、例えば、導体ペーストを平板状凹版IPの凹部形成平面に吐出するディスペンサと、平板状凹版IPの凹部形成平面から余分な導体ペーストを掻き取るスキージとを備えたものを使用する場合には、可動テーブルTEが−X方向に移動する過程でディスペンサから平板状凹版IPの凹部形成平面に導体ペーストが吐出され、可動テーブルTEが+X方向に移動する過程でスキージによって平板状凹版IPの凹部形成平面から余分な導体ペーストを掻き取されて所期の充填が行われる。
【0034】
<作成方法の第2ステップ>
続いて、図4に示したように、可動テーブルTEを+Z方向に所定距離移動させて、平板状凹版IPの凹部形成平面の図中右端を、帯状グリーンシートGSのバックアップロールRBの外周面に存する部位に接触させる。
【0035】
<作成方法の第3ステップ>
続いて、図5に示したように、帯状グリーンシートGSのバックアップロールRBの外周面に存する部位を+X方向に所定距離走行させると同時に可動テーブルTEを+X方向に同一移動速度で同一距離移動させる。
【0036】
これにより、平板状凹版IPの凹部形成平面と帯状グリーンシートGSのバックアップロールRBの外周面に存する部位との接触領域が−X方向に相対的に変化し、この変位に伴って、平板状凹版IPの7つの凹部列(4つの第1凹部列CPL1と3つの第2凹部列CPL2)の各凹部に充填された導体ペーストが帯状グリーンシートGSの表面に直接転移して図6(B)に示した第1未焼成導体層群PP1が印刷される。
【0037】
図6(B)から分かるように、第1未焼成導体層群PP1は、計10個の第1未焼成導体層(導体ペースト層)CS1と、計8個の第2未焼成導体層(導体ペースト層)CS2とで構成されており、合計18個の未焼成導体層の配列は、平板状凹版IPの7つの凹部列(4つの第1凹部列CPL1と3つの第2凹部列CPL2)を構成する合計18個の凹部の配列に合致している。
【0038】
また、第1未焼成導体層群PP1の各第1未焼成導体層CS1のX方向寸法とY方向寸法と厚さは、平板状凹版IPの第1凹部CP1のX方向寸法Lcp1とY方向寸法Wcp1と深さDip1にそれぞれ略一致し、しかも、各第2未焼成導体層CS2のX方向寸法とY方向寸法と厚さは、平板状凹版IPの第2凹部CP2のX方向寸法Lcp2とY方向寸法Wcp2と深さDip2にそれぞれ略一致している。
【0039】
因みに、第3ステップにおける帯状グリーンシートGSの+X方向の走行距離(=可動テーブルTEの+X方向の移動距離)は、第1未焼成導体層群PP1とこれに−X方向で隣接する第2未焼成導体層群PP2との間に所定間隔SPx(図12を参照)が確保できるような値に設定されている。
【0040】
<作成方法の第4ステップ>
続いて、図7に示したように、可動テーブルTEを−Z方向に所定距離移動させ、移動後に−X方向に所定距離移動させて第1初期位置に復帰させ、復帰後に+Y方向に所定距離As(図11(A)参照)移動させて第2初期位置に変位させる。
【0041】
第2初期位置にあっては、平板状凹版IPの凹部形成平面のZ方向位置はペースト供給機PFに依るペースト供給が可能な位置に設定されている。また、第2初期位置にあっては、図11(A)に示したように、平板状凹版IPの平面に形成された合計8つの凹部列(4つの第1凹部列CPL1と4つの第2凹部列CPL2)のうち、Y方向の他方部分(図中は最上位)の第1凹部列CPL1を除く7つの凹部列(3つの第1凹部列CPL1と4つの第2凹部列CPL2)が帯状グリーンシートGSに対向している。
【0042】
換言すれば、帯状グリーンシートGSに対向する凹部列を変更するために、第1初期位置に復帰した可動テーブルTEを+Y方向に所定距離As(図11(A)参照)移動させて第2初期位置に変位させる。因みに、この距離Asは未焼成チップCubのY方向寸法Wcc(図15を参照)に略一致している。
【0043】
<作成方法の第5ステップ>
続いて、図8に示したように、可動テーブルTEを第2初期位置(図中の実線を参照)から−X方向に所定距離移動させ、移動後に可動テーブルTEを+X方向に同一距離移動させて第2初期位置に復帰させる。また、可動テーブルTEが±X方向に移動するときに、ペースト供給機PFから平板状凹版IPの7つの凹部列(3つの第1凹部列CPL1と4つの第2凹部列CPL2)の各凹部に導体ペーストを充填する。
【0044】
ペースト供給機PFとして、例えば、導体ペーストを平板状凹版IPの凹部形成平面に吐出するディスペンサと、平板状凹版IPの凹部形成平面から余分な導体ペーストを掻き取るスキージとを備えたものを使用する場合には、可動テーブルTEが−X方向に移動する過程でディスペンサから平板状凹版IPの凹部形成平面に導体ペーストが吐出され、可動テーブルTEが+X方向に移動する過程でスキージによって平板状凹版IPの凹部形成平面から余分な導体ペーストを掻き取されて所期の充填が行われる。
【0045】
<作成方法の第6ステップ>
続いて、図9に示したように、可動テーブルTEを+Z方向に所定距離移動させて、平板状凹版IPの凹部形成平面の図中右端を、帯状グリーンシートGSのバックアップロールRBの外周面に存する部位に接触させる。
【0046】
<作成方法の第7ステップ>
続いて、図10に示したように、帯状グリーンシートGSのバックアップロールRBの外周面に存する部位を+X方向に所定距離走行させると同時に可動テーブルTEを+X方向に同一移動速度で同一距離移動させる。
【0047】
これにより、平板状凹版IPの凹部形成平面と帯状グリーンシートGSのバックアップロールRBの外周面に存する部位との接触領域が−X方向に相対的に変化し、この変位に伴って、平板状凹版IPの7つの凹部列(3つの第1凹部列CPL1と4つの第2凹部列CPL2)の各凹部に充填された導体ペーストが帯状グリーンシートGSの表面に直接転移して図11(B)に示した第2未焼成導体層群PP2が印刷される。
【0048】
図11(B)から分かるように、第2未焼成導体層群PP2は、計11個の第1未焼成導体層(導体ペースト層)CS1と、計6個の第2未焼成導体層(導体ペースト層)CS2とで構成されており、合計17個の未焼成導体層の配列は、平板状凹版IPの7つの凹部列(3つの第1凹部列CPL1と4つの第2凹部列CPL2)を構成する凹部の配列に合致している。即ち、第2未焼成導体層群PP2の配列は、第1未焼成導体層群PP1の配列と異なっている。
【0049】
また、第2未焼成導体層群PP2の各第1未焼成導体層CS1のX方向寸法とY方向寸法と厚さは、平板状凹版IPの第1凹部CP1のX方向寸法Lcp1とY方向寸法Wcp1と深さDip1にそれぞれ略一致し、しかも、各第2未焼成導体層CS2のX方向寸法とY方向寸法と厚さは、平板状凹版IPの第2凹部CP2のX方向寸法Lcp2とY方向寸法Wcp2と深さDip2にそれぞれ略一致している。
【0050】
因みに、第7ステップにおける帯状グリーンシートGSの+X方向の走行距離(=可動テーブルTEの+X方向の移動距離)は、第2未焼成導体層群PP2とこれに−X方向で隣接する第1未焼成導体層群PP1との間に所定間隔SPx(図12を参照)が確保できるような値に設定されている。
【0051】
<作成方法の第8ステップ>
続いて、可動テーブルTEを、−Y方向に所定距離As(図11(A)参照)移動させ、移動後に−Z方向に所定距離移動させ、移動後に−X方向に所定距離移動させて第1初期位置に復帰させる(図1を参照)。勿論、可動テーブルTEを、−Z方向に所定距離移動させ、移動後に−X方向に所定距離移動させ、移動後に−Y方向に所定距離As(図11(A)参照)移動させて第1初期位置に復帰させるようにしても良い。
【0052】
これ以降は、前記第1ステップ〜第3ステップと前記第4ステップ〜第8ステップとが交互に繰り返し実施されて、帯状グリーンシートGSへの第1未焼成導体層群PP1(図6(B)の印刷と第2未焼成導体層群PP2(図11(B)を参照)の印刷が交互に行われる。また、帯状グリーンシートGSに印刷された第1未焼成導体層群PP1(図6(B)を参照)と第2未焼成導体層群PP2(図11(B)を参照)は、該帯状グリーンシートGSが間欠的に走行する過程で各乾燥用ヒータHEにより加熱し乾燥される。そして、作成後の未焼成導体層印刷シートPS(図12を参照)が巻取ロールRTに巻き取られる。
【0053】
<積層型電子部品の製造方法例>
次に、図13〜図16を引用して、図12に示した未焼成導体層印刷シートPSを使用して積層型電子部品、例えば、積層型セラミックコンデンサを製造する方法例について説明する。
【0054】
製造に際しては、未焼成導体層印刷シートPSから、所定配列の第1未焼成導体層群PP1が印刷された第1積層用シートPS1(図13(A)を参照)と、第1未焼成導体層群PP1と異なる配列の第2未焼成導体層群PP2が印刷された第2積層用シートPS2(図13(B)を参照)を、打ち抜きや切断等の手法によって取り出す。
【0055】
先に述べたように、未焼成導体層印刷シートPSには異配列の第1未焼成導体層群PP1及び第2未焼成導体層群PP2がシート長さ方向に沿って交互に形成されているため、該未焼成導体層印刷シートPSを+X方向に走行させながら打ち抜きや切断等を行うだけで、同一サイズの第1積層用シートPS1と第2未焼成導体層群PP2を簡単に得ることができる。
【0056】
続いて、第1積層用シートPS1と第2積層用シートPS2とを所定枚数交互に積み重ねると共にその上下に第3積層用シート(図示省略)を所定枚数積み重ねて層相互を熱圧着して積層体MB(図14を参照)を得る。第3積層用シートは、第1積層用シートPS1及び第2積層用シートPS2を構成するグリーンシートと同一サイズのグリーンシートであって、未焼成導体層は印刷されていない。
【0057】
続いて、積層体MBにX方向の切断ラインDLx(図14を参照)とY方向の切断ラインDLyを設定し、ダイシング装置等の切断機によって、該積層体MBを各切断ラインDLx及びDLyで切断して、部品対応サイズの未焼成チップCub(図15を参照)を得る。この切断では、積層体MBに内在する各第1未焼成導体層CS1のX方向中心がY方向に切断され、且つ、各第2未焼成導体層CS2のX方向一端縁がY方向に切断されるため、未焼成チップCubのX方向両端面には、該未焼成チップCubに内在する複数の未焼成導体層の端縁が積層方向で交互に露出する。
【0058】
続いて、未焼成チップCubを焼成炉に投入して、未焼成導体層等が焼結された焼成チップCba(図16を参照)を得る。続いて、焼成チップCbaのX方向両端部にディップ法等の手法によって予め調製した端子ペーストを塗布し、これを焼き付け処理により焼結させて端子EE(図16を参照)を作成する。
【0059】
以上で、積層型セラミックコンデンサの製造が完了するが、材質等によっては未焼成チップCubと端子ペーストの焼結を同時に行うことも可能であり、また、端子EEの表面に必要に応じて電解メッキ等の手法によって1層以上の金属層が形成される。
【0060】
<作成装置及び作成方法によって得られる効果>
次に、前述の「未焼成導体層印刷シートの作成装置」及び「未焼成導体層印刷シートの作成方法」によって得られる効果について説明する。
【0061】
(E1)合計20個の凹部(計12個の第1凹部CP1と計8個の第2凹部CP2)が所定配列で形成された平板状凹版IPのY方向位置を変化させることにより、第1未焼成導体層群PP1の印刷の対応した凹部領域と第2未焼成導体層群PP2の印刷に対応した凹部領域を選定することができる。即ち、単一の平板状凹版IPを用いて、帯状グリーンシートGSの表面に異配列の第1未焼成導体層群PP1及び第2未焼成導体層群PP2をシート長さ方向に沿って交互に印刷することができる。
【0062】
(E2)各凹部は平板状凹版IPの平面に形成されているため、従前の円柱状凹版に比べて、各凹部に高い寸法精度を確保することができる。即ち、平板状凹版IPの場合、各凹部は平板状母材の平面に切削やエッチング等の手法によって加工されるが、加工対象が平面であるが故に、従前の円柱状凹版に比べて、各凹部の輪郭や深さ等を高精度に仕上げることが容易である。つまり、各凹部に高い寸法精度を確保し易いことから、各凹部に充填された導体ペーストの抜け、並びに、帯状グリーンシートGSの表面への転移を良好に行えるし、結果として、第1未焼成導体層群PP1と第2未焼成導体層群PP2のそれぞれを構成する各未焼成導体層の輪郭や厚さ等に高い寸法精度を確保することが容易となる。
【0063】
(E3)平板状凹版IPにあっては、平面の凹部に充填された導体ペーストを帯状グリーンシートの表面に直接転移させることによって所期の印刷が行われるが、凹部が平面に形成されているが故に、凹部に高い寸法精度を確保し易いことも相俟って、前記転移の際にペースト残存等の転移不良を生じ難く、結果として、第1未焼成導体層群PP1と第2未焼成導体層群PP2のそれぞれを構成する各未焼成導体層の輪郭や厚さ等に高い寸法精度を確保することが容易となる。
【0064】
<作成装置及び作成方法の変形例>
次に、前記「未焼成導体層印刷シートの作成装置」及び「未焼成導体層印刷シートの作成方法」の変形例について説明する。
【0065】
(M1)平板状凹版IPとして合計20個の凹部を平面に所定配列で形成したもの(図2を参照)を示したが、第1凹部列CPL1を構成する第1凹部CP1と第2凹部CP2の数を同じX方向並びで増加し、且つ、第2凹部列CPL2を構成する第1凹部CP1の数を同じX方向並びで増加しても良く、また、第1凹部列CPL1と第2凹部列CPL2の数を同じY方向並びで増加しても良い。
【0066】
(M2)未焼成導体層印刷シートPSとして帯状グリーンシートGSの表面に図12に示した第1未焼成導体層群PP1及び第2未焼成導体層群PP2を交互に印刷したものを例示したが、平板状凹版IPの表面に形成される凹部の配列を変更すれば第1未焼成導体層群PP1及び第2未焼成導体層群PP2と異なる配列を有する第1未焼成導体層群及び第2未焼成導体層群を帯状グリーンシートGSの表面に印刷することができる。また、平板状凹版IPの表面に形成される凹部の輪郭を変更すれば、積層型セラミックコンデンサ以外の積層型電子部品、例えば、積層型インダクタ等の製造に用いられる未焼成導体層印刷シートを作成することもできる。
【符号の説明】
【0067】
RF…繰出ロール、RT…巻取ロール、RG…ガイドロール、RB…バックアップロール、SR…回転動力源、GS…帯状グリーンシート、TE…可動テーブル、IP…平板状凹版、CP1…第1凹部、CP2…第2凹部、CPL1…第1凹部列、CPL2…第2凹部列、PF…ペースト供給機、PP1…第1未焼成導体層群、PP2…第2未焼成導体層群、CS1…第1未焼成導体層、CS2…第2未焼成導体層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状グリーンシートの表面に異配列の第1未焼成導体層群及び第2未焼成導体層群がシート長さ方向に沿って交互に印刷された、積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成方法において、
複数の凹部が平面に所定配列で形成され、且つ、帯状グリーンシートのシート長さ方向と直交する方向に移動可能な平板状凹版を用い、(1)平板状凹版を前記シート長さ方向と直交する方向に移動させることによって複数の凹部のうち前記シート長さ方向と直交する方向の一方部分を除く凹部を印刷に利用できるようにし、該凹部に充填された導体ペーストを帯状グリーンシートの表面に直接転移して第1未焼成導体層群を印刷するステップと、(2)平板状凹版を前記シート長さ方向と直交する方向に移動させることによって複数の凹部のうち前記シート長さ方向と直交する方向の他方部分を除く凹部を印刷に利用できるようにし、該凹部に充填された導体ペーストを帯状グリーンシートの表面に直接転移して第2未焼成導体層群を印刷するステップとを、交互に繰り返す、
ことを特徴とする積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成方法。
【請求項2】
平板状凹版を帯状グリーンシートのシート長さ方向に移動できるようにし、前記ステップ(1)における第1未焼成導体層群の印刷と前記ステップ(2)における第2未焼成導体層群の印刷のそれぞれを、帯状グリーンシートをシート長さ方向に走行させると同時に平板状凹版を帯状グリーンシートのシート長さ方向に移動させながら行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成方法。
【請求項3】
帯状グリーンシートの表面に異配列の第1未焼成導体層群及び第2未焼成導体層群がシート長さ方向に沿って交互に印刷された、積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成装置において、
(1)複数の凹部が平面に所定配列で形成され、且つ、凹部に充填された導体ペーストを帯状グリーンシートの表面に直接転移するための平板状凹版と、(2)平板状凹版を帯状グリーンシートのシート長さ方向と直交する方向に移動させるための動力源と、(3)平板状凹版の複数の凹部に導体ペーストを充填するためのペースト供給機と、を備える、
ことを特徴とする積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成装置。
【請求項4】
(4)帯状グリーンシートをシート長さ方向に走行させるための第2の動力源と、(5)平板状凹版を帯状グリーンシートのシート長さ方向に移動させるための第3の動力源とを、さらに備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成装置。
【請求項1】
帯状グリーンシートの表面に異配列の第1未焼成導体層群及び第2未焼成導体層群がシート長さ方向に沿って交互に印刷された、積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成方法において、
複数の凹部が平面に所定配列で形成され、且つ、帯状グリーンシートのシート長さ方向と直交する方向に移動可能な平板状凹版を用い、(1)平板状凹版を前記シート長さ方向と直交する方向に移動させることによって複数の凹部のうち前記シート長さ方向と直交する方向の一方部分を除く凹部を印刷に利用できるようにし、該凹部に充填された導体ペーストを帯状グリーンシートの表面に直接転移して第1未焼成導体層群を印刷するステップと、(2)平板状凹版を前記シート長さ方向と直交する方向に移動させることによって複数の凹部のうち前記シート長さ方向と直交する方向の他方部分を除く凹部を印刷に利用できるようにし、該凹部に充填された導体ペーストを帯状グリーンシートの表面に直接転移して第2未焼成導体層群を印刷するステップとを、交互に繰り返す、
ことを特徴とする積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成方法。
【請求項2】
平板状凹版を帯状グリーンシートのシート長さ方向に移動できるようにし、前記ステップ(1)における第1未焼成導体層群の印刷と前記ステップ(2)における第2未焼成導体層群の印刷のそれぞれを、帯状グリーンシートをシート長さ方向に走行させると同時に平板状凹版を帯状グリーンシートのシート長さ方向に移動させながら行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成方法。
【請求項3】
帯状グリーンシートの表面に異配列の第1未焼成導体層群及び第2未焼成導体層群がシート長さ方向に沿って交互に印刷された、積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成装置において、
(1)複数の凹部が平面に所定配列で形成され、且つ、凹部に充填された導体ペーストを帯状グリーンシートの表面に直接転移するための平板状凹版と、(2)平板状凹版を帯状グリーンシートのシート長さ方向と直交する方向に移動させるための動力源と、(3)平板状凹版の複数の凹部に導体ペーストを充填するためのペースト供給機と、を備える、
ことを特徴とする積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成装置。
【請求項4】
(4)帯状グリーンシートをシート長さ方向に走行させるための第2の動力源と、(5)平板状凹版を帯状グリーンシートのシート長さ方向に移動させるための第3の動力源とを、さらに備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の積層型電子部品用の未焼成導体層印刷シートの作成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−9562(P2012−9562A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143005(P2010−143005)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
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