説明

積層型電子部品

【課題】実装方向の方向性を無くしつつ、ノイズ除去効果を向上させることが可能な積層型電子品を提供する。
【解決手段】積層型電子部品1は、積層体2と、外部電極3,4及び外部電極5,6と、接続導体7〜14とを備える。積層体2は、第1インダクタ部20と、第2インダクタ部21とを有している。第1インダクタ部20において、導体パターンP1〜P6が接続導体7〜10により接続されていると共に一定方向に巻回されており、第2インダクタ部21において、導体パターンP6〜P10が接続導体11〜14により接続されていると共に一定方向に巻回されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層型電子部品として、例えば特許文献1に記載の積層型電子部品がある。この従来の積層型電子部品は、セラミック体の内部に、第1インダクタ、第2インダクタ、第1コンデンサ及び第2コンデンサが設けられており、ノイズを除去するノイズフィルタ(LCフィルタ)として構成されている。この積層型電子部品では、第1インダクタと第2インダクタとのインダクタンスを同一にすることにより、実装の方向性をなくすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−252456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の積層型電子部品のようなノイズフィルタでは、実装時の作業性を維持しつつ、ノイズを効果的に除去することが要請されている。
【0005】
本発明は、実装方向の方向性を無くしつつ、ノイズ除去効果を向上させることが可能な積層型電子品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る積層型電子部品は、絶縁体層を介在させて複数の内部導体が積層された積層体と、積層体の外表面に形成された一組の第1の外部電極及び一組の第2の外部電極と、積層体の外表面に形成された第1の接続導体及び第2の接続導体と、を備え、複数の内部導体は、第1〜第6の内部導体を有し、積層体は、第1の内部導体、第2の内部導体及び第3の内部導体が少なくとも一層の絶縁体層を挟んで配置された第1インダクタ部と、第4の内部導体、第5の内部導体及び第6の内部導体が少なくとも一層の絶縁体層を挟んで配置された第2インダクタ部とを有し、第1インダクタ部において、第1の内部導体は、一端が一方の第1の外部電極に接続されると共に他端が第1の接続導体に接続され、第2の内部導体は、一端が他方の第1の外部電極に接続されると共に他端が第1の接続導体に接続され、第3の内部導体は、両端が第1の接続導体に接続されており、第1の内部導体、第2の内部導体及び第3の内部導体が一定方向に巻回されており、第2インダクタ部において、第4の内部導体は、一端が一方の第2の外部電極に接続されると共に他端が第2の接続導体に接続され、第5の内部導体は、一端が他方の第2の外部電極に接続されると共に他端が第2の接続導体に接続され、第6の内部導体は、両端が第2の接続導体に接続されており、第4の内部導体、第5の内部導体及び第6の内部導体が一定方向に巻回されていることを特徴とする。
【0007】
この積層型電子部品では、第1インダクタ部において、第1〜第3の内部導体が第1の接続導体によって接続されており、第2インダクタ部において、第4〜第6の内部導体が第2の接続導体によって接続されている。これにより、各内部導体が接続されて巻回されるため、インダクタンスを大きくすることができる。また、第1インダクタ部及び第2インダクタ部では、第1〜第3の内部導体と第4〜第6の内部導体とが一定方向に巻回されているため、インダクタンスを大きくすることができる。更に、第3の内部導体及び第6の内部導体を備えることにより、インダクタンスを大きくすることができる。したがって、ノイズ除去効果を向上させることができる。さらに、積層型電子部品では、第1インダクタ部及び第2インダクタ部のそれぞれに第1〜第3の内部導体、第4〜第6の内部導体により一定方向に巻回されたコイルが構成されているため、第1の外部電極及び第2の外部電極のいずれでも実装することができる。したがって、実装方向の方向性を無くすことができる。
【0008】
第1及び第2の外部電極は、積層体の外表面に形成された焼付層と、焼付層上に形成されためっき層とにより形成されており、第1及び第2の接続導体は、積層体の外表面上にめっき層により形成されていることが好ましい。このように、第1及び第2の接続導体をめっき層により形成することで、第1及び第2の接続導体を小さくすることができる。その結果、第1及び第2外部電極との間で短絡が発生する短絡により生じるショート不良を低減できる。
【0009】
第1及び第2の外部電極と第1及び第2の接続導体とは、積層体において異なる外表面に形成されていることが好ましい。このような構成によれば、第1及び第2外部電極と第1及び第2接続導体との間で短絡が発生することをより防止でき、短絡に起因するショート不良をより一層低減できる。
【0010】
第1〜第3の内部導体と第4〜第6の内部導体とは、絶縁体層の面内方向を基準として回転対称に形成されていることが好ましい。このような構成によれば、第1〜第3の内部導体により構成されるコイルと第4〜第6の内部導体により構成されるコイルとのインダクタンスは変わらない。したがって、第1の外部電極及び第2の外部電極のいずれかで実装した場合でも、同様の特性を得ることができる。
【0011】
第1の内部導体、第3の内部導体及び第2の内部導体は、積層体の積層方向の一端面側からこの順に当該積層体内に配置されており、第5の内部導体、第6の内部導体及び第4の内部導体は、積層体の一端面に対向する他端面側からこの順に当該積層体内に配置されており、第1の内部導体と第5の内部導体、第2の内部導体と第4の内部導体、及び第3の内部導体と第6の内部導体とは、鏡像関係にあることが好ましい。このような構成によれば、実装の方向をなくしつつ、第1〜第3の内部導体により構成されるコイルと第4〜第6の内部導体により構成されるコイルとのインダクタンスを略同等にできる。したがって、第1の外部電極及び第2の外部電極のいずれかで実装した場合でも、同様の特性を得ることができる。
【0012】
第3の内部導体は、第1の内部導体と第2の内部導体との間に複数配置されており、第6の内部導体は、第4の内部導体と第5の内部導体との間に複数配置されており、複数の第3の内部導体の両端は、それぞれ第1の接続導体に接続され、複数の第6の内部導体の両端は、それぞれ第2の接続導体に接続されていることが好ましい。このような構成によれば、インダクタンスをより一層大きくすることができる。
【0013】
積層体は、第1の内部電極と第2の内部電極とが少なくとも一層の絶縁体層を挟んで対向して配置されたコンデンサ部を有し、第1の内部電極は、絶縁体層上に複数配置され、一組の第1の外部電極のそれぞれに接続されており、第2の内部電極は、絶縁体層上に複数配置され、一組の第2の外部電極のそれぞれに接続されていることが好ましい。このとき、積層型電子部品は、第1の外部電極が信号線に接続され、第2の外部電極が接地線に接続されることが好ましい。このような構成によれば、π型回路を構成できる。
【0014】
積層体の外表面に形成された第3の接続導体及び第4の接続導体を備え、積層体は、第1の内部電極と第2の内部電極とが少なくとも一層の絶縁体層を挟んで対向して配置されたコンデンサ部を有し、第3の内部導体は、第3の接続導体を介して第1の内部電極と接続され、第6の内部導体は、第4の接続導体を介して第2の内部電極と接続されていることが好ましい。このとき、第1の外部電極が信号線に接続され、第4の接続導体が接地線に接続されることが好ましい。このような構成によれば、T型回路を構成できる。
【0015】
第1及び第2の内部電極のそれぞれは主面電極を有し、第1〜第6の内部導体は、絶縁体層の積層方向から見て主面電極と対向しないことが好ましい。このような構成によれば、第1及第2インダクタ部とコンデンサ部との結合を防止できるため、高周波ノイズを確実に減衰させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、実装方向の方向性を無くしつつ、ノイズ除去効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係る積層型電子部品を示す斜視図である。
【図2】図1に示す積層型電子部品の積層体の分解斜視図である。
【図3】図1に示す積層型電子部品の等価回路図である。
【図4】第2実施形態に係る積層型電子部品を示す斜視図である。
【図5】図4に示す積層型電子部品の積層体の分解斜視図である。
【図6】図4に示す積層型電子部品の等価回路図である。
【図7】第3実施形態に示す積層型電子部品を示す斜視図である。
【図8】図7に示す積層型電子部品の積層体の分解斜視図である。
【図9】第4実施形態に係る積層型電子部品の積層体の分解斜視図である。
【図10】第4実施形態に係る積層型電子部品の等価回路図である。
【図11】第5実施形態に係る積層型電子部品の斜視図である。
【図12】図11に示す積層型電子部品の積層体の分解斜視図である。
【図13】第6実施形態に係る積層型電子部品を示す斜視図である。
【図14】図12に示す積層体型電子部品の積層体の分解斜視図である。
【図15】図12に示す積層型電子部品の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、第1実施形態に係る積層型電子部品を示す斜視図である。図2は、図1に示す積層型電子部品の積層体の分解斜視図である。図1に示す積層型電子部品1は、DCラインのノイズフィルタとして機能するものである。
【0020】
図1に示すように、積層型電子部品1は、略直方体形状の積層体2と、第1〜第4外部電極3,4,5,6と、第1〜第8接続導体(第1の接続導体、第2の接続導体)7,8,9,10,11,12,13,14とを備えている。
【0021】
積層体2は、互いに対向する一対の端面(第3及び第4の側面)2a,2bと、一対の端面2a,2b間を連結するように伸び且つ互いに対向する一対の側面(第1及び第2の側面)2c,2dと、一対の側面2c,2dを連結するように伸び且つ互いに対向する一対の主面(一端面、他端面)2e,2fとを有する。第1及び第2外部電極(一組の第1の外部電極)3,4は、積層体2の側面2c側に形成されており、第3及び第4外部電極(一組の第2の外部電極)5,6は、積層体2の側面2d側に形成されている。第1及び第2接続導体(第1の接続導体)7,8と第5及び第6接続導体(第2の接続導体)11,12とは、積層体2の端面2aに形成されており、第3及び第4接続導体(第1の接続導体)9,10と第7及び第8接続導体(第2の接続導体)13,14とは、積層体2の端面2bに形成されている。
【0022】
積層体2の内部には、図2に示すように、絶縁体層Sを介在させた状態で、パターンの異なる複数の導体パターンP1〜P10が配置されている。絶縁体層Sは、例えば磁性体層であり、絶縁体グリーンシートの焼成物からなるものである。絶縁体層Sは、例えば、フェライト(Ni−Cu−Zn系フェライト、Ni−Cu−Zn−Mg系フェライト、又はNi−Cu系フェライトなど)から構成されている。絶縁体層Sは、フェライト以外の材料、例えば、ストロンチウム、カルシウム、アルミナ及び酸化珪素からなるガラスと、アルミナとからなるガラス系セラミックなどから構成されていてもよい。実際の積層型電子部品1では、絶縁体層S間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0023】
積層体2は、第1インダクタ部20と、第2インダクタ部21とを有している。第1インダクタ部20は、絶縁体層S2〜S6上に形成されたパターンの異なる第1〜第5導体パターンP1〜P5が積層されて構成されている。第1インダクタ部20には、第1〜第5導体パターンP1〜P5により第1コイルL1(図3参照)が構成されている。
【0024】
絶縁体層S1は、積層体2の積層方向の最上部に配置されている。絶縁体層S2上には、第1導体パターン(第1の内部導体)P1が形成されている。第1導体パターンP1は、絶縁体層S2上において積層体2の端面2a,2b及び側面2dに沿って略コ字(U字)状に形成されている。第1導体パターンP1の一端は、第1接続導体7に対応する位置に引き出されて、積層体2の端面2aに露出している。第1導体パターンP1の他端は、第1外部電極3に対応する位置に引き出されて、積層体2の側面2cに露出している。
【0025】
また、絶縁体層S2上には、第2〜第4接続導体8〜10に対応する位置に、ダミーパターンDP1,DP2,DP3が形成されている。ダミーパターンDP1〜DP3は、略矩形状を呈しており、第2〜第4接続導体8〜10に対応する位置で積層体2の端面2a,2bにそれぞれ露出している。第1導体パターンP1と各ダミーパターンDP1〜DP3とは、絶縁体層S2上において互いに電気的に接続されないように絶縁されている。
【0026】
絶縁体層S3上には、第2導体パターン(第3の内部導体)P2が形成されている。第2導体パターンP2は、絶縁体層S3上において積層体2の端面2b及び側面2c,2dに沿って略コ字状に形成されている。第2導体パターンP2の一端は、第1接続導体7に対応する位置に引き出されて、積層体2の端面2aに露出している。第2導体パターンP2の他端は、第2接続導体8に対応する位置に引き出されて、積層体2の端面2aに露出している。
【0027】
また、絶縁体層S3上には、第3及び第4接続導体9,10に対応する位置に、ダミーパターンDP4,DP5が形成されている。ダミーパターンDP4,DP5は、略矩形状を呈しており、第3及び第4接続導体9,10に対応する位置で積層体2の端面2bにそれぞれ露出している。第2導体パターンP2と各ダミーパターンDP4,DP5とは、絶縁体層S3上において互いに電気的に接続されないように絶縁されている。
【0028】
絶縁体層S4上には、第3導体パターン(第3の内部導体)P3が形成されている。第3導体パターンP3は、絶縁体層S4上において積層体2の端面2a,2b及び側面2cに沿って略コ字状に形成されている。第3導体パターンP3の一端は、第2接続導体8に対応する位置に引き出されて、積層体の端面2aに露出している。第3導体パターンP3の他端は、第4接続導体10に対応する位置に引き出されて、積層体2の端面2bに露出している。
【0029】
また、絶縁体層S4上には、第1及び第3接続導体7,9に対応する位置に、ダミーパターンDP6,DP7が形成されている。ダミーパターンDP6,DP7は、略矩形状を呈しており、第1及び第3接続導体7,9に対応する位置で積層体2の端面2a,2bにそれぞれ露出している。第3導体パターンP3と各ダミーパターンDP6,DP7とは、絶縁体層S4上において互いに電気的に接続されないように絶縁されている。
【0030】
絶縁体層S5上には、第4導体パターン(第3の内部導体)P4が形成されている。第4導体パターンP4は、絶縁体層S5上において積層体2の端面2a及び側面2c,2dに沿って略コ字状に形成されている。第4導体パターンP4の一端は、第3接続導体9に対応する位置に引き出されて、積層体2の端面2bに露出している。第4導体パターンP4の他端は、第4接続導体10に対応する位置に引き出されて、積層体2の端面2bに露出している。
【0031】
また、絶縁体層S5上には、第1及び第2接続導体7,8に対応する位置に、ダミーパターンDP8,DP9が形成されている。ダミーパターンDP8,DP9は、略矩形状を呈しており、第1及び第2接続導体7,8に対応する位置で積層体2の端面2aにそれぞれ露出している。第4導体パターンP4と各ダミーパターンDP8,DP9とは、絶縁体層S5上において互いに電気的に接続されないように絶縁されている。
【0032】
絶縁体層S6上には、第5導体パターン(第2の内部導体)P5が形成されている。第5導体パターンP5は、絶縁体層S6上において積層体2の端面2a,2b及び側面2dに沿って略コ字状に形成されている。第5導体パターンP5の一端は、第2外部電極4に対応する位置に引き出されて、積層体2の側面2c側に露出している。第5導体パターンP5の他端は、第3接続導体9に対応する位置に引き出されて、積層体2の端面2bに露出している。
【0033】
また、絶縁体層S6上には、第1、第2及び第4接続導体7,8,10に対応する位置に、ダミーパターンDP10,DP11,DP12が形成されている。ダミーパターンDP10〜DP12は、略矩形状を呈しており、第1、第2及び第4接続導体7,8,10に対応する位置で積層体2の端面2a,2bにそれぞれ露出している。第5導体パターンP5と各ダミーパターンDP10〜DP12とは、絶縁体層S6上において互いに電気的に接続されないように絶縁されている。
【0034】
第1導体パターンP1〜第5導体パターンP5の各辺は、積層方向において重なる(対向する)位置に形成されている。積層体2では、第1導体パターンP1〜第5導体パターンP5が積層されることにより、一定の方向(図示矢印方向)に巻回された第1コイルL1が構成される。
【0035】
第2インダクタ部21は、絶縁体層S8〜S12上に形成されたパターンの異なる第6〜第10導体パターンP6〜P10が積層されて構成されている。第2インダクタ部21には、第6〜第10導体パターンP6〜P10が積層されることにより、第2コイルL2(図3参照)が構成されている。第1コイルL1と第2コイルL2とは、絶縁体層Sの面内方向において回転対称をなしている。なお、絶縁体層S6と絶縁体層S8との間、すなわち第1インダクタ部20と第2インダクタ部21との間には、必要に応じて、単数又は複数枚(図中は2枚)の絶縁体層S7を積層してもよい。
【0036】
絶縁体層S8上には、第6導体パターン(第4の内部導体)P6が形成されている。第6導体パターンP6は、絶縁体層S8上において積層体2の端面2a,2b及び側面2cに沿って略コ字状に形成されている。第6導体パターンP6の一端は、第4外部電極6に対応する位置に引き出されて、積層体2の側面2dに露出している。第6導体パターンP6の他端は、第8接続導体(第2の接続導体)14に対応する位置に引き出されて、積層体2の端面2bに露出している。第6導体パターンP6は、絶縁体層Sの面内方向において第1導体パターンP1と回転対称に形成されており、第5導体パターンP5と鏡像関係にある。
【0037】
また、絶縁体層S8上には、第5〜第7接続導体11〜13に対応する位置に、ダミーパターンDP13,DP14,DP15が形成されている。ダミーパターンDP13〜DP15は、略矩形状を呈しており、第5〜第7接続導体11〜13に対応する位置で積層体2の端面2a,2bにそれぞれ露出している。第6導体パターンP6と各ダミーパターンDP13〜DP15とは、絶縁体層S8上において互いに電気的に接続されないように絶縁されている。
【0038】
絶縁体層S9上には、第7導体パターン(第6の内部導体)P7が形成されている。第7導体パターンP7は、絶縁体層S9上において積層体2の端面2a及び側面2c,2dに沿って略コ字状に形成されている。第7導体パターンP7の一端は、第7接続導体(第2の接続導体)13に対応する位置に引き出されて、積層体2の端面2bに露出している。第7導体パターンP7の他端は、第8接続導体14に対応する位置に引き出されて、積層体2の端面2bに露出している。第7導体パターンP7は、絶縁体層Sの面内方向において第2導体パターンP2と回転対称に形成されており、第4導体パターンP4と鏡像関係にある。
【0039】
また、絶縁体層S9上には、第5及び第6接続導体11,12に対応する位置に、ダミーパターンDP16,DP17が形成されている。ダミーパターンDP16,DP17は、略矩形状を呈しており、第5及び第6接続導体11,12に対応する位置で積層体2の端面2aにそれぞれ露出している。第7導体パターンP7と各ダミーパターンDP16,DP17とは、絶縁体層S9上において互いに電気的に接続されないように絶縁されている。
【0040】
絶縁体層S10上には、第8導体パターン(第6の内部導体)P8が形成されている。第8導体パターンP8は、絶縁体層S10上において積層体2の端面2a,2b及び側面2dに沿って略コ字状に形成されている。第8導体パターンP8の一端は、第5接続導体11に対応する位置に引き出されて、積層体2の端面2aに露出している。第8導体パターンP8の他端は、第7接続導体13に対応する位置に引き出されて、積層体2の端面2bに露出している。第8導体パターンP8は、絶縁体層Sの面内方向において第3導体パターンP3と回転対称に形成されており、第3導体パターンP3と鏡像関係にある。
【0041】
また、絶縁体層S10上には、第6及び第8接続導体12,14に対応する位置に、ダミーパターンDP18,DP19が形成されている。ダミーパターンDP18,DP19は、略矩形状を呈しており、第6及び第8接続導体12,14に対応する位置で積層体2の端面2a,2bにそれぞれ露出している。第8導体パターンP8と各ダミーパターンDP18,DP19は、絶縁体層S10上において互いに電気的に接続されないように絶縁されている。
【0042】
絶縁体層S11上には、第9導体パターン(第6の内部導体)P9が形成されている。第9導体パターンP9は、絶縁体層S11上において積層体2の端面2b及び側面2c,2dに沿って略コ字状に形成されている。第9導体パターンP9の一端は、第5接続導体11に対応する位置に引き出されて、積層体2の端面2aに露出している。第9導体パターンP9の他端は、第6接続導体12に対応する位置に引き出されて、積層体2の端面2aに露出している。第9導体パターンP9は、絶縁体層Sの面内方向において第4導体パターンP4と回転対称に形成されおり、第2導体パターンP2と鏡像関係にある。
【0043】
また、絶縁体層S11上には、第7及び第8接続導体13,14に対応する位置に、ダミーパターンDP20,DP21が形成されている。ダミーパターンDP20,DP21は、略矩形状を呈しており、第7及び第8接続導体13,14に対応する位置で積層体2の端面2bにそれぞれ露出している。第9導体パターンP9と各ダミーパターンDP20,DP21は、絶縁体層S11上において互いに電気的に接続されないように絶縁されている。
【0044】
絶縁体層S12上には、第10導体パターン(第5の内部導体)P10が形成されている。第10導体パターンP10は、絶縁体層S12上において積層体2の端面2a,2b及び側面2cに沿って略コ字状に形成されている。第10導体パターンP10の一端は、第6接続導体12に対応する位置に引き出されて、積層体2の端面2aに露出している。第10導体パターンP10の他端は、第3外部電極5に対応する位置に引き出されて、積層体2の側面2dに露出している。第10導体パターンP10は、絶縁体層Sの面内方向において第5導体パターンP5と回転対称に形成されており、第1導体パターンP1と鏡像関係にある。
【0045】
また、絶縁体層S12上には、第5、第7及び第8接続導体11,13,14に対応する位置に、ダミーパターンDP22,DP23,DP24が形成されている。ダミーパターンDP22〜DP24は、略矩形状を呈しており、第5、第7及び第8接続導体11,13,14に対応する位置で積層体2の端面2a,2bにそれぞれ露出している。第10導体パターンP10と各ダミーパターンDP22〜DP24とは、絶縁体層S12上において互いに電気的に接続されないように絶縁されている。
【0046】
第6導体パターンP6〜第10導体パターンP10の各辺は、積層方向において重なる(対向する)位置に形成されている。第6導体パターンP6〜第10導体パターンP10が積層されることにより、一定の方向(図示矢印方向)に巻回された第2コイルL2が構成される。つまり、第1〜第5導体パターンP1〜P5により構成される第1コイルL1と第6〜第10導体パターンP6〜P10により構成される第2コイルL2とは、絶縁体層Sの面内方向において回転対称に形成されている。
【0047】
第1〜第4外部電極3〜6は、積層型電子部品1を実装基板に実装する際に、所定の極性に接続される電極である。第1及び第2外部電極3,4は、積層体2の側面2cと主面2e,2fとに跨って形成されており、互いに所定の間隔をあけて配置されている。第3及び第4外部電極5,6は、積層体2の側面2dと主面2e,2fとに跨って形成されており、互いに所定の間隔をあけて配置されている。
【0048】
また、第1〜第4接続導体(第1の接続導体)7〜10は、積層体2の第1インダクタ部20に属する第1〜第5導体パターンP1〜P5同士を並列に接続する導体であり、実装基板には直接接続されない導体である。第5〜第8接続導体(第2の接続導体)11〜14は、積層体2の第2インダクタ部21に属する第6〜第10導体パターンP6〜P10同士を並列に接続する導体であり、実装基板には直接接続されない導体である。
【0049】
第1〜第4外部電極3〜6は、Cuなどの導電性金属粉末及びガラスフリットを含む導電性ペーストを焼き付けて形成される焼付層を内層とし、例えばNiなどの対ハンダ喰われ性を有する材料やSn、Sn合金、Agなどのハンダ濡れ性を有する材料からなる単層或いは複数層のめっき層を外層とする複数層によって構成されている。第1〜第8接続導体7〜14は、第1〜第4外部電極3〜6と同様のめっき層のみによって構成されている。
【0050】
具体的には、第1〜第4外部電極3〜6及び第1〜第8接続導体7〜14は、以下のように形成される。まず、スクリーン印刷などによって電極パターンを形成したグリーンシートを積層し、プレス工程、切断工程、焼成工程などを経て、積層体2を得る。
【0051】
次に、積層体2の幅方向の側面2cから露出する第1導体パターンP1及び第5導体パターンP5の一端をそれぞれ覆うように、転写法或いはスクリーン印刷法を用いて導電性ペーストを塗布する。同様に、側面2dから露出する第6導体パターンP6及び第10導体パターンP10の一端をそれぞれ覆うように、転写法或いはスクリーン印刷法を用いて導電性ペーストを塗布する。その後、所定の温度で焼き付けて焼付層を形成する。
【0052】
最後に、積層体2の長手方向の端面2aから露出する各導体パターンP1〜P3,P8〜P10及びダミーパターンDP1,DP6,DP8〜DP11,DP13,DP14,DP16〜DP18,DP22と、端面2bから露出する各導体パターンP3〜P8及びダミーパターンDP2〜DP5,DP7,DP12,DP15,DP19〜DP21,DP23,DP24と、焼付層とをそれぞれ覆うように、バレルめっき法などを用いてめっき層を形成する。これにより、第1〜第4外部電極3〜6及び第1〜第8接続導体7〜14が形成され、積層型電子部品1が得られる。
【0053】
図3は、積層体型電子部品の等価回路図である。図3に示すように、積層型電子部品1では、第1〜第5導体パターンP1〜P5により第1コイルL1が構成されており、第6〜第10導体パターンP1〜P10により第2コイルL2が構成されている。第1コイルL1と第2コイルL2とは、電気的に独立している。
【0054】
このような構成を有する積層型電子部品1は、第1外部電極3と第2外部電極4とが信号ライン(信号線)に接続されるように実装基板に実装して第1コイルL1のみを使用、または、第3外部電極5と第4外部電極6が信号ラインに接続されるように実装基板に実装して第2コイルL2のみを使用することができる。さらに、積層型電子部品1は、第1及び第2外部電極3,4、第3及び第4外部電極5,6がそれぞれ信号ラインに接続されるように実装基板に実装することにより、インダクタアレイとして使用することができる。
【0055】
以上説明したように、積層型電子部品1では、第1インダクタ部20において、第1〜第5導体パターンP1〜P5が第1〜第4接続導体7〜10によって接続されており、第2インダクタ部21において、第6〜第10導体パターンP6〜P10が第5〜第8接続導体11〜14によって接続されている。これにより、第1〜第5導体パターンP1〜P5、第6〜第10導体パターンP6〜P10がそれぞれ接続されて巻回されるため、インダクタンスを大きくすることができる。
【0056】
また、第1インダクタ部20及び第2インダクタ部21では、第1コイルL1及び第2コイルL2を構成する内部パターンが一定方向に巻回されているため、インダクタンスを大きくすることができる。したがって、ノイズ除去効果をより一層向上させることができる。さらに、積層型電子部品1では、第1インダクタ部20及び第2インダクタ部21のそれぞれに第1コイルL1、第2コイルL2が構成されているため、第1及び第2外部電極3,4及び第3及び第4外部電極5,6のいずれでも実装することができる。したがって、実装方向の方向性を無くすことができる。
【0057】
また、第1〜第8接続導体7〜14がめっき層により形成されているため、第1〜第8接続導体7〜14を小さく形成することができる。これにより、第1〜第4外部電極3〜6との間に短絡が生じることを防止でき、短絡に起因するショート不良を低減できる。
【0058】
また、第1〜第5導体パターンP1〜P5により構成される第1コイルL1と第6〜第10導体パターンP6〜P10により構成される第2コイルL2とは、絶縁体層Sの面内方向において回転対称に形成されている。したがって、第1及び第2外部電極3,4または第3及び第4外部電極5,6で実装しても、インダクタンスが変わらない。
【0059】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態について説明する。図4は、第2実施形態に係る積層型電子部品を示す斜視図である。図5は、図4に示す積層型電子部品の積層体の分解斜視図である。
【0060】
図4に示すように、積層型電子部品1Aは、積層体2Aと、第1〜第4外部電極3〜6と、第1〜第4接続導体24,25,26,27とを備えている。ここで、第1及び第2接続導体24,25が第1の接続導体に相当し、第3及び第4接続導体26,27が第2の接続導体に相当する。第1及び第3外部電極3,5は、積層体2Aの側面2c側に形成されており、第2及び第4外部電極4,6は、積層体2Aの側面2d側に形成されている。第1及び第2接続導体24,25は、積層体2Aの端面2aに形成されており、第3及び第4接続導体26,27は、積層体2Aの端面2bに形成されている。
【0061】
積層体2Aは、第1インダクタ部28と、第2インダクタ部29とを有している。第1インダクタ部28は、絶縁体層S2〜S4上に形成されたパターンの異なる第1〜第3導体パターンP11〜P13が積層されて構成されている。第1インダクタ部28には、第1〜第3導体パターンP11〜P13により第1コイルL1(図6参照)が構成されている。
【0062】
絶縁体層S1は、積層体2Aの積層方向の最上部に配置されている。絶縁体層S2上には、第1導体パターン(第1の内部導体)P11が形成されている。第1導体パターンP11は、絶縁体層S2上において略環状に形成されている。第1導体パターンP11の一端は、第1外部電極3に対応する位置に引き出されて、積層体2Aの側面2cに露出している。第1導体パターンP11の他端は、第1接続導体24に対応する位置に引き出されて、積層体2Aの端面2aに露出している。
【0063】
また、絶縁体層S2上には、第2接続導体25に対応する位置に、ダミーパターンDP25が形成されている。ダミーパターンDP25は、略矩形状を呈しており、第2接続導体25に対応する位置で積層体2Aの端面2aに露出している。
【0064】
絶縁体層S3上には、第2導体パターン(第3の内部導体)P12が形成されている。第2導体パターンP12は、絶縁体層S3上において略環状に形成されている。第2導体パターンP12の一端は、第1接続導体24に対応する位置に引き出されて、積層体2Aの端面2aに露出している。第2導体パターンP12の他端は、第2接続導体25に対応する位置に引き出されて、積層体2Aの端面2aに露出している。第2導体パターンP12は、積層方向から見て第1導体パターンP11よりも外形が小さく形成されている。
【0065】
絶縁体層S4上には、第3導体パターン(第2の内部導体)P13が形成されている。第3導体パターンP13は、絶縁体層S4上において略環状に形成されている。第3導体パターンP13の一端は、第2接続導体25に対応する位置に引き出されて、積層体2Aの端面2aに露出している。第3導体パターンP13の他端は、第2外部電極4に対応する位置に引き出されて、積層体2の側面2dに露出している。第3導体パターンP13は、積層方向から見て第1導体パターンP11及び第2導体パターンP13よりも外形が小さく形成されている。
【0066】
また、絶縁体層S4上には、第1接続導体24に対応する位置に、ダミーパターンDP26が形成されている。ダミーパターンDP26は、略矩形状を呈しており、第1接続導体24に対応する位置で積層体2Aの端面2aに露出している。絶縁体層S5上には、第1及び第2接続導体24,25に対応する位置に、ダミーパターンDP27,DP28が形成されている。ダミーパターンDP27,DP28は、略矩形状を呈しており、第1及び第2接続導体24,25に対応する位置で積層体2Aの端面2aに露出している。
【0067】
第2インダクタ部29は、絶縁体層S8〜S10上に形成されたパターンの異なる第4〜第6導体パターンP14〜P16が積層されて構成されている。第2インダクタ部29には、第4〜第6導体パターンP14〜P16が積層されることにより、第2コイルL2(図6参照)が構成されている。第1コイルL1と第2コイルL2とは、絶縁体層Sの面内方向において回転対称をなしている。なお、絶縁体層S5と絶縁体層S7との間には、必要に応じて、単数又は複数枚(図中は2枚)の絶縁体層S6を積層してもよい。
【0068】
絶縁体層S7上には、第3及び第4接続導体26,27に対応する位置に、ダミーパターンDP29,DP30が形成されている。ダミーパターDP29,DP30は、略矩形状を呈しており、第3及び第4接続導体26,27に対応する位置で積層体2Aの端面2bに露出している。
【0069】
絶縁体層S8上には、第4導体パターン(第4の内部導体)P14が形成されている。第4導体パターンP14は、絶縁体層S8上において略環状に形成されている。第4導体パターンP14の一端は、第4接続導体27に対応する位置に引き出されて、積層体2Aの端面2bに露出している。第4導体パターンP14の他端は、第4外部電極6に対応する位置に引き出されて、積層体2Aの側面2dに露出している。第4導体パターンP14は、第3導体パターンP13と鏡像関係にある。また、第4導体パターンP14は、積層方向から見て後述する第5及び第6導体パターンP15,P16よりも外形が小さく形成されている。
【0070】
また、絶縁体層S8上には、第3接続導体26に対応する位置に、ダミーパターンDP31が形成されている。ダミーパターンDP31は、略矩形状を呈しており、第3接続導体26に対応する位置で積層体2Aの端面2bに露出している。
【0071】
絶縁体層S9上には、第5導体パターン(第6の内部導体)P15が形成されている。第5導体パターンP15は、絶縁体層S9上において略環状に形成されている。第5導体パターンP15の一端は、第3接続導体26に対応する位置に引き出されて、積層体2Aの端面2bに露出している。第5導体パターンP15の他端は、第4接続導体27に対応する位置に引き出されて、積層体2Aの端面2bに露出している。第5導体パターンP15は、第2導体パターンP12と鏡像関係にある。また、第5導体パターンP15は、積層方向から見て後述する第6導体パターンP16よりも外形が小さく、且つ第4導体パターンP14よりも外形が大きく形成されている。
【0072】
絶縁体層S10上には、第6導体パターン(第5の内部導体)P16が形成されている。第6導体パターンP16は、絶縁体層S10上において略環状に形成されている。第6導体パターンP16の一端は、第3外部電極5に対応する位置に引き出されて、積層体2Aの側面2cに露出している。第6導体パターンP16の他端は、第3接続導体26に対応する位置に引き出されて、積層体2の端面2bに露出している。第6導体パターンP16は、第1導体パターンP11と鏡像関係にある。また、第5導体パターンP16は、積層方向から見て第4及び第5導体パターンP14,P15よりも外形が大きく形成されている。
【0073】
また、絶縁体層S10上には、第4接続導体27に対応する位置に、ダミーパターンDP32が形成されている。ダミーパターンDP32は、略矩形状を呈しており、第4接続導体27に対応する位置で積層体2Aの端面2bに露出している。
【0074】
図6は、積層体型電子部品の等価回路図である。図6に示すように、積層型電子部品1Aでは、第1〜第3導体パターンP11〜P13により第1コイルL1が構成されており、第4〜第6導体パターンP14〜P16により第2コイルL2が構成されている。第1コイルL1と第2コイルL2とは、電気的に独立している。
【0075】
積層型電子部品1Aでは、第1外部電極3と第2外部電極4とが信号ラインに接続されるように実装基板に実装して第1コイルL1のみを使用、または、第3外部電極5と第4外部電極6が信号ラインに接続されるように実装基板に実装して第2コイルL2のみを使用することができる。さらに、積層型電子部品1Aは、第1及び第2外部電極3,4、第3及び第4外部電極5,6がそれぞれ信号ラインに接続されるように実装基板に実装することにより、インダクタアレイとして使用することができる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、実装方向の方向性を無くしつつ、ノイズ除去効果を向上させることができる。また、本実施形態では、第1〜第3導体パターンP11〜P13、第4〜第6導体パターンP14〜P16は、積層方向において重ならないように配置されているため、導体パターンにより生じる段差を小さくすることができ、絶縁体層S同士の接着強度を確保することができる。これにより、積層型電子部品1Aの構造欠陥を抑制できる。
【0077】
[第3実施形態]
続いて、第3実施形態について説明する。図7は、第3実施形態に係る積層型電子部品を示す斜視図である。図8は、図7に示す積層型電子部品の積層体の分解斜視図である。
【0078】
図7に示すように、積層型電子部品1Bは、積層体2Bと、第1〜第4外部電極3〜6と、第1〜第8接続導体7〜14とを備えている。
【0079】
積層体2Bは、第1インダクタ部30と、第2インダクタ部31とを有している。第1インダクタ部30は、絶縁体層S2〜S6上に形成されたパターンの異なる第1〜第5導体パターンP21〜P25が積層されて構成されている。第1インダクタ部30には、第1〜第5導体パターンP21〜P25により第1コイルL1(図6参照)が構成されている。
【0080】
絶縁体層S1は、積層体2Bの積層方向の最上部に配置されている。絶縁体層S2上には、第1導体パターン(第1の内部導体)P21が形成されている。第1導体パターンP21は、絶縁体層S2上において略環状に形成されている。第1導体パターンP21の一端は、第1外部電極3に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの側面2cに露出している。第1導体パターンP21の他端は、第1接続導体7に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの端面2aに露出している。
【0081】
また、絶縁体層S2上には、第2〜第4接続導体8〜10に対応する位置に、ダミーパターンDP40,DP41,DP42が形成されている。ダミーパターンDP40〜DP42は、略矩形状を呈しており、第2〜第4接続導体8〜10に対応する位置で積層体2Bの端面2a,2bにそれぞれ露出している。
【0082】
絶縁体層S3上には、第2導体パターン(第3の内部導体)P22が形成されている。第2導体パターンP22は、絶縁体層S3上において略環状に形成されている。第2導体パターンP22の一端は、第1接続導体7に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの端面2aに露出している。第2導体パターンP22の他端は、第2接続導体8に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの端面2aに露出している。第2導体パターンP22は、積層方向から見て第1導体パターン21よりも外形が小さく形成されている。
【0083】
また、絶縁体層S3上には、第3及び第4接続導体9,10に対応する位置に、ダミーパターンDP43,DP44が形成されている。ダミーパターンDP43,DP44は、略矩形状を呈しており、第3及び第4接続導体9,10に対応する位置で積層体2Bの端面2bにそれぞれ露出している。
【0084】
絶縁体層S4上には、第3導体パターン(第3の内部導体)P23が形成されている。第3導体パターンP23は、絶縁体層S4上において積層体2Bの端面2a,2b及び側面2cに沿って略コ字状に形成されている。第3導体パターンP23の一端は、第2接続導体8に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの端面2aに露出している。第3導体パターンP23の他端は、第4接続導体10に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの端面2bに露出している。第3導体パターンP23は、積層方向から見て第1導体パターンP21及び第2導体パターンP22よりも外形が小さく形成されている。
【0085】
また、絶縁体層S4上には、第1及び第3接続導体7,9に対応する位置に、ダミーパターンDP45,DP46が形成されている。ダミーパターンDP45,DP46は、略矩形状を呈しており、第1及び第3接続導体7,9に対応する位置で積層体2Bの端面2a及び端面2bにそれぞれ露出している。
【0086】
絶縁体層S5上には、第4導体パターン(第3の内部導体)P24が形成されている。第4導体パターンP24は、絶縁体層S5上において積層体2Bの側面2c,2dに沿って略コ字状に形成されている。第4導体パターンP24の一端は、第3接続導体9に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの端面2bに露出している。第4導体パターンP24の他端は、第4接続導体10に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの端面2bに露出している。第4導体パターンP23は、積層方向から見て第1〜第3導体パターンP21〜P23よりも外形が小さく形成されている。
【0087】
また、絶縁体層S5上には、第1及び第2接続導体7,8に対応する位置に、ダミーパターンDP47,DP48が形成されている。ダミーパターンDP47,DP48は、略矩形状を呈しており、第1及び第2接続導体7,8に対応する位置で積層体2Bの端面2aにそれぞれ露出している。
【0088】
絶縁体層S6上には、第5導体パターン(第2の内部導体)P25が形成されている。第5導体パターンP25は、絶縁体層S6上において積層体2Bの端面2b及び側面2cに沿って略L字状に形成されている。第5導体パターンP25の一端は、第3接続導体9に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの端面2bに露出している。第5導体パターンP25の他端は、第2外部電極4に対応する位置に引き出されて、積層体2の側面2d側に露出している。
【0089】
また、絶縁体層S6上には、第1、第2及び第4接続導体7,8,10に対応する位置に、ダミーパターンDP49,DP50,DP51が形成されている。ダミーパターンDP49〜DP50は、略矩形状を呈しており、第1、第2及び第4接続導体7,8,10に対応する位置で積層体2Bの端面2a,2bにそれぞれ露出している。
【0090】
絶縁体層S7上には、第1〜第4接続導体7〜10に対応する位置に、ダミーパターンDP52,DP53,DP54,DP55が形成されている。ダミーパターンDP52〜DP55は、略矩形状を呈しており、第1〜第4接続導体7〜10に対応する位置で積層体2Bの端面2a,2bにそれぞれ露出している。
【0091】
積層体2では、第1導体パターンP21〜第5導体パターンP25が積層されることにより、一定の方向に巻回された第1コイルL1が構成される。
【0092】
第2インダクタ部31は、絶縁体層S10〜S14上に形成されたパターンの異なる第6〜第10導体パターンP26〜P30が積層されて構成されている。第2インダクタ部31には、第6〜第10導体パターンP26〜P30が積層されることにより、第2コイルL2(図6参照)が構成されている。第1コイルL1と第2コイルL2とは、絶縁体層Sの面内方向において回転対称をなしている。なお、絶縁体層S7と絶縁体層S9との間には、単数又は複数枚(図中は2枚)の絶縁体層S8が積層されている。
【0093】
絶縁体層S9上には、第5〜第8接続導体11〜14に対応する位置に、ダミーパターンDP56,DP57,DP58,DP59が形成されている。ダミーパターンDP56〜DP59は、略矩形状を呈しており、第5〜第8接続導体11〜14に対応する位置で積層体2Bの端面2a,2bにそれぞれ露出している。
【0094】
絶縁体層S10上には、第6導体パターン(第4の内部導体)P26が形成されている。第6導体パターンP26は、絶縁体層S10上において積層体2Bの端面2a及び側面2dに沿って略L字状に形成されている。第6導体パターンP26の一端は、第4外部電極6に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの側面2d側に露出している。第6導体パターンP26の他端は、第5接続導体11に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの端面2aに露出している。第6導体パターンP26は、第5導体パターンP25と鏡像関係にある。
【0095】
また、絶縁体層S10上には、第6〜第8接続導体12〜14に対応する位置に、ダミーパターンDP60,DP61,DP62が形成されている。ダミーパターンDP60〜DP62は、略矩形状を呈しており、第6〜第8接続導体12〜14に対応する位置で積層体2Bの端面2a,2bにそれぞれ露出している。
【0096】
絶縁体層S11上には、第7導体パターン(第6の内部導体)P27が形成されている。第7導体パターンP27は、絶縁体層S11上において積層体2Bの側面2c,2dに沿って略コ字状に形成されている。第7導体パターンP27の一端は、第5接続導体11に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの端面2aに露出している。第7導体パターンP27の他端は、第6接続導体14に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの端面2aに露出している。第7導体パターンP27は、第4導体パターンP24と鏡像関係にある。また、第7導体パターンP27は、積層方向から見て後述する第8〜第10導体パターンP28〜P30よりも外形が小さく形成されている。
【0097】
また、絶縁体層S11上には、第7及び第8接続導体13,14に対応する位置に、ダミーパターンDP63,DP64が形成されている。ダミーパターンDP63,DP64は、略矩形状を呈しており、第7及び第8接続導体13,14に対応する位置で積層体2Bの端面2bにそれぞれ露出している。
【0098】
絶縁体層S12上には、第8導体パターン(第6の内部導体)P28が形成されている。第8導体パターンP28は、絶縁体層S12上において積層体2Bの端面2a,2b及び側面2cに沿って略コ字状に形成されている。第8導体パターンP28の一端は、第6接続導体12に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの端面2aに露出している。第8導体パターンP28の他端は、第8接続導体14に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの端面2bに露出している。第8導体パターンP28は、第3導体パターンP23と鏡像関係にある。また、第8導体パターンP28は、積層方向から見て後述する第9及び第10導体パターンP29,P30よりも外形が小さく、且つ第7導体パターンP27よりも外形が大きく形成されている。
【0099】
また、絶縁体層S12上には、第5及び第7接続導体11,13に対応する位置に、ダミーパターンDP65,DP66が形成されている。ダミーパターンDP65,DP66は、略矩形状を呈しており、第5及び第7接続導体11,13に対応する位置で積層体2Bの端面2a,2bにそれぞれ露出している。
【0100】
絶縁体層S13上には、第9導体パターン(第6の内部導体)P29が形成されている。第9導体パターンP29は、絶縁体層S13上において略環状に形成されている。第9導体パターンP29の一端は、第7接続導体13に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの端面2bに露出している。第9導体パターンP29の他端は、第8接続導体14に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの端面2bに露出している。第9導体パターンP29は、第2導体パターンP22と鏡像関係にある。また、第9導体パターンP29は、積層方向から見て後述する第10導体パターンP30よりも外形が小さく、且つ第7及び第8導体パターンP27,P28よりも外形が大きく形成されている。
【0101】
また、絶縁体層S13上には、第5及び第6接続導体11,12に対応する位置に、ダミーパターンDP67,DP68が形成されている。ダミーパターンDP67,DP68は、略矩形状を呈しており、第5及び第6接続導体11,12に対応する位置で積層体2Bの端面2aにそれぞれ露出している。
【0102】
絶縁体層S14上には、第10導体パターン(第5の内部導体)P30が形成されている。第10導体パターンP30は、絶縁体層S14上において略環状に形成されている。第10導体パターンP30の一端は、第3外部電極5に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの側面2cに露出している。第10導体パターンP30の他端は、第7接続導体13に対応する位置に引き出されて、積層体2Bの側面2bに露出している。第10導体パターンP30は、第1導体パターンP21と鏡像関係にある。また、第10導体パターンP30は、第7〜第9導体パターンP27〜P29よりも外形が大きく形成されている。
【0103】
また、絶縁体層S14上には、第5、第6及び第8接続導体11,12,14に対応する位置に、ダミーパターンDP69,DP70,DP71が形成されている。ダミーパターンDP69〜DP71は、略矩形状を呈しており、第5、第6及び第8接続導体11,12,14に対応する位置で積層体2Bの端面2a,2bにそれぞれ露出している。
【0104】
第6導体パターンP26〜第10導体パターンP30が積層されることにより、一定の方向に巻回された第2コイルL2が構成される。
【0105】
上記構成を有する積層型電子部品1Bでは、第1〜第5導体パターンP21〜P25により第1コイルL1が構成されており、第6〜第10導体パターンP26〜P30により第2コイルL2が構成されている(図6参照)。第1コイルL1と第2コイルL2とは、絶縁体層Sの面内方向において回転対称をなしている。また、第1コイルL1と第2コイルL2とは、電気的に独立している。積層型電子部品1Bは、積層型電子部品1Aと同様の使用形態を有している。
【0106】
以上説明したように、本実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、実装方向の方向性を無くしつつ、ノイズ除去効果を向上させることができる。また、本実施形態では、第1〜第5導体パターンP21〜P25、第6〜第10導体パターンP26〜P30は、積層方向において重ならないように配置されているため、導体パターンにより生じる段差を小さくすることができ、絶縁体層S同士の接着強度を確保することができる。これにより、積層型電子部品1Bの構造欠陥を抑制できる。
【0107】
[第4実施形態]
続いて、第4実施形態について説明する。図9は、第4実施形態に係る積層型電子部品の積層体の分解斜視図である。
【0108】
図9に示すように、第4実施形態に係る積層型電子部品の積層体2Cは、第1インダクタ部20と、第2インダクタ部21と、コンデンサ部40とを有している。積層体2Cは、コンデンサ部40を有する点で、第1実施形態の積層体2と異なる。以下、コンデンサ部40について説明する。
【0109】
コンデンサ部40は、第1インダクタ部20と第2インダクタ部21との間に配置されている。コンデンサ部40は、第1内部電極40A,40Bと、第2内部電極41A,41Bとを有している。
【0110】
コンデンサ部40において、絶縁体層S20上には、第1内部電極40A,40Bが形成されている。第1内部電極40Aと第1内部電極40Bとは、積層体2Cの長手方向において所定の間隔をあけて離間して配置されている。第1内部電極40Aは、略矩形状の主電極部(主面電極)40Aaと、主電極部40Aaの一辺から第1外部電極3に対応する位置において、側面2cに露出するように引き出された導体引出部40Abとを有している。第1内部電極40Bは、略矩形状の主電極部40Baと、主電極部40Baの一辺から第2外部電極4に対応する位置において、側面2cに露出するように引き出された導体引出部40Bbとを有している。
【0111】
絶縁体層S21上には、第2内部電極41A,41Bが形成されている。第2内部電極41Aと第2内部電極41Bとは、積層体2Cの長手方向において所定の間隔をあけて離間して配置されている。第2内部電極41Aは、略矩形状の主電極部41Aaと、主電極部41Aaの一辺から第3外部電極5に対応する位置において、側面2dに露出するように引き出された導体引出部41Abとを有している。第2内部電極41Bは、略矩形状の主電極部41Baと、主電極部41Baの一辺から第4外部電極6に対応する位置において、側面2dに露出するように引き出された導体引出部41Bbとを有している。
【0112】
第1内部電極40Aと第2内部電極41Aとは、積層方向から見て重なる位置に対向して配置されている。第1内部電極40Bと第2内部電極41Bとは、積層方向から見て重なる位置に対向して配置されている。主電極部40Aa、主電極部40Ba、主電極部41Aa及び主電極部41Baは、積層方向から見て第1〜第10導体パターンP1〜P10と対向しない位置に配置されている。なお、第1内部電極40A,40B、第2内部電極41A,41Bが形成される絶縁体層S20、S21は、誘電体セラミックを含むセラミックグリーンシートの焼成物であることが好ましい。
【0113】
図10は、第4実施形態に係る積層型電子部品の等価回路図である。図10に示すように、上記構成を有する積層型電子部品では、第1コイルL1及び第2コイルL2と、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2とが構成される。第1コンデンサC1は、第1内部電極40Aと第2内部電極41Aとで構成される。第2コンデンサC2は、第1内部電極40Bと第2内部電極41Bとで構成される。第1コンデンサC1と第2コンデンサC2とは、並列に接続されている。
【0114】
このような積層型電子部品は、例えば、第1外部電極3及び第2外部電極4が信号ラインに接続され、第3外部電極5及び第4外部電極6がGNDラインに接続されるように実装される。このように実装される積層型電子部品では、第1コイルL1と第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2とでπ型回路が構成される。
【0115】
以上説明したように、本実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、実装方向の方向性を無くしつつ、ノイズ除去効果を向上させることができる。
【0116】
また、本実施形態では、主電極部40Aa、主電極部40Ba、主電極部41Aa及び主電極部41Baは、積層方向から見て第1〜第10導体パターンP1〜P10と対向しない位置に配置されている。したがって、第1及第2インダクタ部20,21とコンデンサ部40との結合を防止できるため、高周波ノイズを確実に減衰させることができる。
【0117】
[第5実施形態]
続いて、第5実施形態について説明する。図11は、第5実施形態に係る積層型電子部品を示す斜視図である。図12は、図11に示す積層型電子部品の積層体の分解斜視図である。
【0118】
図11に示すように、積層型電子部品1Dは、積層体2Dと、第1〜第4外部電極3〜6と、第1〜第4接続導体45,46,47,48とを備えている。第1及び第2外部電極3,4は、積層体2Dの側面2c側に形成されており、第3及び第4外部電極5,6は、積層体2Dの側面2d側に形成されている。第1及び第3接続導体45,47は、積層体2Dの端面2aに形成されており、第2及び第4接続導体46,48は、積層体2Dの端面2bに形成されている。
【0119】
積層体2Dは、第1インダクタ部50と、第2インダクタ部51と、コンデンサ部40とを有している。コンデンサ部40は、第4実施形態に係る積層体2Cのコンデンサ部40と同様の構成を有している。第1インダクタ部50は、絶縁体層S2〜S4上に形成されたパターンの異なる第1〜第3導体パターンP31〜P33が積層されて構成されている。第1インダクタ部50には、第1〜第3導体パターンP31〜P33により第1コイルL1(図10参照)が構成されている。
【0120】
絶縁体層S2上には、第1導体パターン(第1の内部導体)P31が形成されている。第1導体パターンP31は、絶縁体層S2上において略環状に形成されている。第1導体パターンP31の一端は、第1外部電極3に対応する位置に引き出されて、積層体2Dの側面2cに露出している。第1導体パターンP31の他端は、第1接続導体45に対応する位置に引き出されて、積層体2Dの端面2aに露出している。
【0121】
また、絶縁体層S2上には、第2接続導体46に対応する位置に、ダミーパターンDP80が形成されている。ダミーパターンDP80は、略矩形状を呈しており、第2接続導体46に対応する位置で積層体2Dの端面2bにそれぞれ露出している。
【0122】
絶縁体層S3上には、第2導体パターン(第3の内部導体)P32が形成されている。第2導体パターンP32は、絶縁体層S3上において積層体2Dの端面2a,2b及び側面2cに沿って略コ字状に形成されている。第2導体パターンP2の一端は、第1接続導体45に対応する位置に引き出されて、積層体2Dの端面2aに露出している。第2導体パターンP32の他端は、第2接続導体46に対応する位置に引き出されて、積層体2Dの端面2bに露出している。
【0123】
絶縁体層S4上には、第3導体パターン(第2の内部導体)P33が形成されている。第3導体パターンP33は、絶縁体層S4上において略環状に形成されている。第3導体パターンP33の一端は、第2外部電極4に対応する位置に引き出されて、積層体2Dの側面2cに露出している。第3導体パターンP33の他端は、第2接続導体46に対応する位置に引き出されて、積層体2Dの端面2bに露出している。
【0124】
また、絶縁体層S4上には、第1接続導体45に対応する位置に、ダミーパターンDP81が形成されている。ダミーパターンDP81は、略矩形状を呈しており、第1接続導体45に対応する位置で積層体2Dの端面2aに露出している。
【0125】
第2インダクタ部51は、絶縁体層S6〜S8上に形成されたパターンの異なる第4〜第6導体パターンP34〜P36が積層されて構成されている。第2インダクタ部51には、第4〜第6導体パターンP34〜P36が積層されることにより、第2コイルL2(図10参照)が構成されている。第1コイルL1と第2コイルL2とは、絶縁体層Sの面内方向において回転対称をなしている。
【0126】
絶縁体層S6上には、第4導体パターン(第4の内部導体)P34が形成されている。第4導体パターンP34は、絶縁体層S6上において略環状に形成されている。第4導体パターンP34の一端は、第3接続導体47に対応する位置に引き出されて、積層体2Dの端面2aに露出している。第4導体パターンP34の他端は、第3外部電極5に対応する位置に引き出されて、積層体2Dの側面2dに露出している。第4導体パターンP34は、誘電体層Sの面内方向において第3導体パターンP33と回転対称に形成されており、且つ第3導体パターンP33と鏡像の関係にある。
【0127】
また、絶縁体層S6上には、第4接続導体48に対応する位置に、ダミーパターンDP82が形成されている。ダミーパターンDP82は、略矩形状を呈しており、第4接続導体48に対応する位置で積層体2Dの端面2bに露出している。
【0128】
絶縁体層S7上には、第5導体パターン(第6の内部導体)P35が形成されている。第5導体パターンP35は、絶縁体層S7上において積層体2の端面2a,2b及び側面2dに沿って略コ字状に形成されている。第5導体パターンP35の一端は、第3接続導体47に対応する位置に引き出されて、積層体2Dの端面2aに露出している。第5導体パターンP35の他端は、第4接続導体48に対応する位置に引き出されて、積層体2Dの端面2bに露出している。第5導体パターンP35は、誘電体層Sの面内方向において第2導体パターンP32と回転対称に形成されており、且つ第2導体パターンP32と鏡像関係にある。
【0129】
絶縁体層S8上には、第6導体パターン(第5の内部導体)P36が形成されている。第6導体パターンP36は、絶縁体層S8上において略環状に形成されている。第6導体パターンP36の一端は、第4接続導体48に対応する位置に引き出されて、積層体2Dの端面2bに露出している。第6導体パターンP36の他端は、第4外部電極6に対応する位置に引き出されて、積層体2の側面2dに露出している。第6導体パターンP36は、誘電体層Sの面内方向において第1導体パターンP31と回転対称に形成されており、且つ第1導体パターンP31と鏡像関係にある。
【0130】
また、絶縁体層S8上には、第3接続導体47に対応する位置に、ダミーパターンDP83が形成されている。ダミーパターンDP83は、略矩形状を呈しており、第3接続導体47に対応する位置で積層体2Dの端面2aに露出している。
【0131】
上記の構成を有する積層型電子部品1Dでは、第4実施形態に係る積層型電子部品と同様の等価回路を有する。すなわち、図10に示すように、積層型電子部品1Dでは、第1コイルL1及び第2コイルL2と、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2とが構成される。第1コンデンサC1は、第1内部電極40Aと第2内部電極41Aとで構成される。第2コンデンサC2は、第1内部電極40Bと第2内部電極41Bとで構成される。第1コンデンサC1と第2コンデンサC2とは、並列に接続されている。
【0132】
このような積層型電子部品1Dは、例えば、第1外部電極3及び第2外部電極4が信号ラインに接続され、第3外部電極5及び第4外部電極6がGNDラインに接続されるように実装される。このように実装される積層型電子部品1Dでは、第1コイルL1と第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2とでπ型回路が構成される。
【0133】
以上説明したように、本実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、実装方向の方向性を無くしつつ、ノイズ除去効果を向上させることができる。
【0134】
[第6実施形態]
続いて、第6実施形態について説明する。図13は、第6実施形態に係る積層型電子部品を示す斜視図である。図14は、図13に示す積層型電子部品の積層体の分解斜視図である。
【0135】
図13に示すように、積層型電子部品1Eは、積層体2Eと、第1〜第4外部電極3〜6と、第1〜第8接続導体7〜14と、コンデンサ接続導体(第3の接続導体、第4の接続導体)60,61とを備えている。第1及び第2外部電極3,4は、積層体2Eの側面2c側に形成されており、第4及び第5外部電極5,6は、積層体2の側面2d側に形成されている。コンデンサ接続導体60は、第1及び第2外部電極3,4の間に形成されており、コンデンサ接続導体61は、第3及び第4外部電極5,6の間に形成されている。
【0136】
積層体2Eは、第1インダクタ部20Aと、第2インダクタ部21Aと、コンデンサ部52とを有している。コンデンサ部52は、第1インダクタ部20Aと第2インダクタ部21Aとの間に配置されている。コンデンサ部52は、第1内部電極53と、第2内部電極54とから構成されている。
【0137】
第1インダクタ部20Aにおいて、絶縁体層S4上には、第3導体パターンP3Aが形成されている。第3導体パターンP3Aは、絶縁体層S4上において積層体2Eの端面2a,2b及び側面2cに沿って略コ字状に形成されている。第3導体パターンP3Aの一端は、第2接続導体8に対応する位置に引き出されて、積層体2Eの端面2aに露出している。第3導体パターンP3Aの他端は、第4接続導体10に対応する位置に引き出されて、積層体2Eの端面2bに露出している。第3導体パターンP3Aにおける側面2cに沿った部分の中央部には、引出パターンP3Aaが形成されている。引出パターンP3Aaは、コンデンサ接続導体60に対応する位置に引き出されて、積層体2Eの側面2cに露出している。
【0138】
第2インダクタ部21Aにおいて、絶縁体層S10上には、第8導体パターンP8Aが形成されている。第8導体パターンP8Aは、絶縁体層S10上において積層体2Eの端面2a,2b及び側面2dに沿って略コ字状に形成されている。第8導体パターンP8Aの一端は、第5接続導体11に対応する位置に引き出されて、積層体2Eの端面2aに露出している。第8導体パターンP8Aの他端は、第7接続導体13に対応する位置に引き出されて、積層体2Eの端面2bに露出している。第8導体パターンP8Aにおける側面2dに沿った部分の中央部には、引出パターンP8Aaが形成されている。引出パターンP8Aaは、コンデンサ接続導体61に対応する位置に引き出されて、積層体2Eの側面2dに露出している。
【0139】
コンデンサ部52において、絶縁体層S22上には、第1内部電極53が形成されている。第1内部電極53は、絶縁体層S22の中央部に配置される略矩形状の主電極部53aと、主電極部53aの一辺からコンデンサ接続導体60に対応する位置において側面2cに露出するように引き出された導体引出部53bとを有している。
【0140】
絶縁体層S23上には、第2内部電極54が形成されている。第2内部電極54は、絶縁体層S23の中央部に配置される略矩形状の主電極部54aと、主電極部54aの一辺からコンデンサ接続導体61に対応する位置において側面2dに露出するように引き出された導体引出部54bとを有している。主電極部53aと主電極部54aとは、積層方向から見て重なる位置に対向して配置されている。また、主電極部53a及び主電極部54aは、積層方向から見て第1〜第10導体パターンP1〜P10と対向しない位置に配置されている。なお、第1内部電極53、第2内部電極54が形成される絶縁体層S22、S23は、誘電体セラミックを含むセラミックグリーンシートの焼成物であることが好ましい。
【0141】
図15は、積層型電子部品の等価回路図である。図15に示すように、積層型電子部品1Eでは、第1コイルL1、第2コイルL2、第3コイルL3及び第4コイルL4と、コンデンサC1とが構成される。コンデンサC1は、第1内部電極53と第2内部電極53とで構成される。
【0142】
このような積層型電子部品は、例えば、第1及び第2外部電極3,4が信号ラインに接続され、少なくともコンデンサ接続導体61がGNDラインに接続されるように実装される(なお、第3及び第4外部電極5,6がGNDラインに接続されてもよい)。このように実装される積層型電子部品1Eでは、第1コイルL1及び第2コイルL2とコンデンサC1とでT型回路が構成される。
【0143】
以上説明したように、本実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、実装方向の方向性を無くしつつ、ノイズ除去効果を向上させることができる。
【0144】
また、本実施形態では、主電極部53a及び主電極部54aは、積層方向から見て第1〜第10導体パターンP1〜P10と対向しない位置に配置されている。したがって、第1及第2インダクタ部20A,21Aとコンデンサ部50との結合を防止できるため、高周波ノイズを確実に減衰させることができる。
【0145】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0146】
1,1A,1B,1C,1E…積層型電子部品、2,2A,2B,2C,2D,2E…積層体、2a,2b…端面(第3及び第4の側面)、2c,2d…側面(第1及び第2の側面)、3,4…外部電極(第1の外部電極)、5,6…外部電極(第2の外部電極)、7〜10…第1〜第4接続導体(第1の接続導体)、11〜14…第5〜第8接続導体(第2の接続導体)、20,20A,28、30…第1インダクタ部、21,21A,29,31…第2インダクタ部、24,25…第1及び第2接続導体(第1の接続導体)、26,27…第3及び第4接続導体(第2の接続導体)、45,46…第1及び第2接続導体(第1の接続導体)、47,48…第3及び第4接続導体(第2の接続導体)、60…コンデンサ接続導体(第3の接続導体)、61…コンデンサ接続導体(第4の接続導体)、P1,P11,P21,P31…第1導体パターン(第1の内部導体)、P2〜P4,P12,P22〜24P32…導体パターン(第3の内部導体)、P5,P13,P25,P33…導体パターン(第2の内部導体)、P6,P14,P26,P34…導体パターン(第4の内部導体)、P7〜P9,P15,P27〜P29,P35…導体パターン(第6の内部電極)、P10,P16,P30,P36…導体パターン(第5の内部電極)、S…誘電体層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体層を介在させて複数の内部導体が積層された積層体と、
前記積層体の外表面に形成された一組の第1の外部電極及び一組の第2の外部電極と、
前記積層体の外表面に形成された第1の接続導体及び第2の接続導体と、を備え、
前記複数の内部導体は、第1〜第6の内部導体を有し、
前記積層体は、
前記第1の内部導体、前記第2の内部導体及び前記第3の内部導体が少なくとも一層の前記絶縁体層を挟んで配置された第1インダクタ部と、
前記第4の内部導体、前記第5の内部導体及び前記第6の内部導体が少なくとも一層の前記絶縁体層を挟んで配置された第2インダクタ部とを有し、
前記第1インダクタ部において、
前記第1の内部導体は、一端が一方の前記第1の外部電極に接続されると共に他端が前記第1の接続導体に接続され、
前記第2の内部導体は、一端が他方の前記第1の外部電極に接続されると共に他端が前記第1の接続導体に接続され、
前記第3の内部導体は、両端が前記第1の接続導体に接続されており、
前記第1の内部導体、前記第2の内部導体及び前記第3の内部導体が一定方向に巻回されており、
前記第2インダクタ部において、
前記第4の内部導体は、一端が一方の前記第2の外部電極に接続されると共に他端が前記第2の接続導体に接続され、
前記第5の内部導体は、一端が他方の前記第2の外部電極に接続されると共に他端が前記第2の接続導体に接続され、
前記第6の内部導体は、両端が前記第2の接続導体に接続されており、
前記第4の内部導体、前記第5の内部導体及び前記第6の内部導体が一定方向に巻回されていることを特徴とする積層型電子部品。
【請求項2】
前記第1及び第2の外部電極は、前記積層体の前記外表面に形成された焼付層と、前記焼付層上に形成されためっき層とにより形成されており、
前記第1及び第2の接続導体は、前記積層体の前記外表面上にめっき層により形成されていることを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記第1及び第2の外部電極と前記第1及び第2の接続導体とは、前記積層体において異なる外表面に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記第1〜第3の内部導体と前記第4〜第6の内部導体とは、前記絶縁体層の面内方向を基準として回転対称に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記第1の内部導体、前記第3の内部導体及び前記第2の内部導体は、前記積層体の積層方向の一端面側からこの順に当該積層体内に配置されており、
前記第5の内部導体、前記第6の内部導体及び前記第4の内部導体は、前記積層体の前記一端面に対向する他端面側からこの順に当該積層体内に配置されており、
前記第1の内部導体と前記第5の内部導体、前記第2の内部導体と前記第4の内部導体、及び前記第3の内部導体と前記第6の内部導体とは、鏡像関係にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記第3の内部導体は、前記第1の内部導体と前記第2の内部導体との間に複数配置されており、
前記第6の内部導体は、前記第4の内部導体と前記第5の内部導体との間に複数配置されており、
複数の前記第3の内部導体の両端は、それぞれ前記第1の接続導体に接続され、
複数の前記第6の内部導体の両端は、それぞれ前記第2の接続導体に接続されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記積層体は、第1の内部電極と第2の内部電極とが少なくとも一層の前記絶縁体層を挟んで対向して配置されたコンデンサ部を有し、
前記第1の内部電極は、前記絶縁体層上に複数配置され、前記一組の第1の外部電極のそれぞれに接続されており、
前記第2の内部電極は、前記絶縁体層上に複数配置され、前記一組の第2の外部電極のそれぞれに接続されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記積層体の外表面に形成された第3の接続導体及び第4の接続導体を備え、
前記積層体は、第1の内部電極と第2の内部電極とが少なくとも一層の前記絶縁体層を挟んで対向して配置されたコンデンサ部を有し、
前記第3の内部導体は、前記第3の接続導体を介して前記第1の内部電極と接続され、
前記第6の内部導体は、前記第4の接続導体を介して前記第2の内部電極と接続されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記第1及び第2の内部電極のそれぞれは主面電極を有し、
前記第1〜第6の内部導体は、前記絶縁体層の積層方向から見て前記主面電極と対向しないことを特徴とする請求項7又は8記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記第1の外部電極が信号線に接続され、前記第2の外部電極が接地線に接続されることを特徴とする請求項7記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記第1の外部電極が信号線に接続され、前記第4の接続導体が接地線に接続されることを特徴とする請求項8記載の積層型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−84808(P2013−84808A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224229(P2011−224229)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】