説明

積層基板および該積層基板への実装部品の実装方法

【課題】はんだの接合強度が低下するのを抑制できる積層基板および該積層基板への実装部品の実装方法を提供する。
【解決手段】表面に実装部品41とはんだ接合される電極12が形成された第1絶縁層11と、前記第1絶縁層11の被実装面上に積層された第2絶縁層21とを備え、前記第2絶縁層21は、内部に前記電極12が露出するように形成された平面視矩形状の接合穴22と、前記接合穴22の四隅からそれぞれ第1絶縁層11の被実装面に沿って延設された4つの溝23とを有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の端子が、基板表面に形成された電極にはんだ接合されることによって、電子部品が面実装される積層基板および該積層基板への実装部品の実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のセラミック多層基板においては、セラミック多層基板の表面に形成された平坦な電極にスクリーン印刷法によりはんだ印刷を行い、面実装部品を実装しつつはんだ付けを行うことによって、電極と面実装部品の端子とのはんだ接合を行ってきたが、製品の小形化、面実装部品のめっき構造の多様性によりはんだ付けによる接合強度が不安定となり、はんだ接合部において断線が発生することがある。
【0003】
そこで、セラミック多層基板上に形成された凹部内に電極を配置し、はんだの厚みを増やすことによって、はんだの接合強度を高くする技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1の技術では、凹部に充填されるはんだに、はんだ溶融時に発生するガスを抜くためのガス抜き穴が形成されており、また、特許文献2の技術では、平面視で四角形状をなす凹部の各内壁面の中央付近に、はんだ溶融時に発生するガスを抜くためのガス抜き穴が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−159914号公報(図1)
【特許文献2】特開2005−260165号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2の技術の場合、発生したガスが凹部の角部に滞留し、発生したガスが外部にスムーズに排出されず凹部内に残存することがある。このとき、残存したガスがはんだの濡れ性を低下させ、はんだ接合の強度が不足する。
【0006】
そこで、本発明は、はんだの接合強度が低下するのを抑制することのできる積層基板および該積層基板への実装部品の実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による積層基板は、表面に実装部品とはんだ接合される電極が形成された第1絶縁層と、前記第1絶縁層の被実装面上に積層された第2絶縁層とを備え、前記第2絶縁層は、内部に前記電極が露出するように形成された平面視矩形状の接合穴と、前記接合穴の四隅からそれぞれ第1絶縁層の被実装面に沿って延設された4つの溝とを有している。
【0008】
本発明によると、第2絶縁層に接合穴が形成されることによって、第1絶縁層上に形成された電極を覆うはんだの量を増加させて、電極と実装部品とのはんだ接合強度を高くすることができる。
また、実装部品と電極とがはんだ接合されるときに、はんだ溶融時に発生するガスが接合穴の四隅から溝を経由して排出されるため、発生したガスを、接合穴の各角部に残存させることなく、効率よく排出することができる。
これにより、はんだが電極上に十分に濡れ広がり、はんだの接合強度が低下するのを抑制することができる。
【0009】
ここで、前記接合穴が前記4つの溝を介して外部雰囲気と連通するように、前記4つの溝の各々が外部雰囲気に到るまで延設されていることが好ましい。この構成によれば、接合穴で発生したガスを、溝部を介して外部に排出することができ、接合穴からガスを効率よく排出することができる。
【0010】
また、4つの溝が、平面視で前記接合穴を構成する辺の延設方向に沿って形成されていることが好ましい。この構成によれば、接合穴内で発生したガスが、接合穴の内壁面に沿って角部に到達した後に、スムーズに溝に導かれるため、発生したガスをさらに効率よく外部に排出することができる。
【0011】
さらに、4つの溝が、平面視で前記接合穴を構成する対向する2辺の延設方向に沿って形成されていることが好ましい。この構成によれば、4つの溝がすべて同一方向に延設されているため、溝へのはんだの流れ込みを抑制することができる。
すなわち、電極にはんだを印刷によって供給する際に、溝の延設方向と直交する方向にはんだを印刷することで、溝にはんだが流れ込むのを抑制することができる。これにより、はんだで溝がふさがれるのを防ぎ、ガス排出路を確実に確保することができる。
【0012】
上記した作用効果を得るための積層基板への実装部品の実装方法は、4つの溝が、平面視で前記接合穴を構成する、対向する2辺の延設方向に沿って形成されている積層基板上に、前記電極にはんだを供給するための開口部が設けられたマスクを載置する第1工程と、前記マスク上でスキージを所定方向に移動させてはんだを前記電極に供給する第2工程と、はんだ印刷された前記積層基板に実装部品を実装する第3工程とを備え、前記第2工程では、前記スキージを前記積層基板に形成された4つの溝の延設方向と直交する方向に移動させてはんだを前記電極に供給することを特徴とする。
【0013】
上記の積層基板への実装部品の実装方法によれば、4つの溝が、平面視で接合穴を構成する、対向する2辺の延設方向に沿って形成された積層基板を用い、マスク上でスキージを所定方向に移動させてはんだを電極に供給する第2工程において、スキージを積層基板に形成された4つの溝の延設方向と直交する方向に移動させてはんだを電極に供給するため、接合穴に充填されたはんだが溝内に流れ込むのを抑制することができ、はんだで溝がふさがれるのを防止でき、ガス排出路を確実に確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、第2絶縁層に接合穴が形成されることによって、第1絶縁層上に形成された電極を覆うはんだの量を増加させて、電極と実装部品とのはんだ接合強度を高くすることができる。
また、実装部品と電極とがはんだ接合されるときに、はんだ溶融時に発生するガスが接合穴の四隅から溝を経由して排出されるため、発生したガスを、接合穴の各角部に残存させることなく、効率よく排出することができる。
これにより、はんだが電極上に十分に濡れ広がり、はんだの接合強度が低下するのを抑制することができる。
また、本発明の積層基板への実装部品の実装方法によれば、4つの溝が、平面視で接合穴を構成する、対向する2辺の延設方向に沿って形成された積層基板を用い、マスク上でスキージを所定方向に移動させてはんだを電極に供給する第2工程において、スキージを積層基板に形成された4つの溝の延設方向と直交する方向に移動させてはんだを電極に供給するため、接合穴に充填されたはんだが溝内に流れ込むのを抑制することができ、はんだで溝がふさがれるのを防止でき、ガス排出路を確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るセラミック多層基板の部分拡大斜視図である。
【図2】図1に示すII-II線断面図である。
【図3】図1に示すセラミック多層基板の製造方法を示すブロック図である。
【図4】図3に示すはんだ充填工程を説明するための断面図である。
【図5】図3に示すはんだ充填工程を説明するための平面図である。
【図6】図3に示す実装工程を説明するための図である。
【図7】図3に示す実装工程を説明するための図である。
【図8】本実施形態の第1変形例を説明するための図である。
【図9】本実施形態の第2変形例を説明するための図である。
【図10】比較例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
図1および図2に示すように、セラミック多層基板1は、第1絶縁層11と、第2絶縁層21とが積層された積層構造を有している。
第1絶縁層11の表面であるパターン形成面(被実装面)11aに、ランド12を含む配線パターンが形成されている。ランド12は、矩形平面を有する電極であり、面実装部品41の端子42(図6および図7参照)がはんだ接合される。
【0017】
第2絶縁層21は、第1絶縁層11のパターン形成面11a上に積層されている。第2絶縁層21には、ランド12を露出させる平面視矩形状のキャビティ(接合穴)22と、キャビティ22の4つの角部それぞれに接続されつつパターン形成面11aに沿って延設されるガス抜き溝23とが形成されている。
なお、ガス抜き溝23は、セラミック多層基板1の端部まで延設され、外部雰囲気と連通していることが好ましい。
キャビティ22の各角部は、第1方向に延在する内壁面と第1方向に直交する第2方向に延在する内壁面とによって形成されている。
【0018】
ガス抜き溝23は、キャビティ22の角部から、当該角部を形成する2つの内壁面(平面視でキャビティ22を構成する辺)のうち第1方向に延在する内壁面の延設方向に沿って、かつ、当該内壁面と連続するように延設されている。
このように、キャビティ22と当該キャビティ22の各角部に接続されたガス抜き溝23とが、平面視においてH字形状となっている(図5参照)。
【0019】
次に、面実装部品41のセラミック多層基板1への実装方法について説明する。
図3に示すように、セラミック多層基板1の製造方法は、第1絶縁層形成工程と、第2絶縁層形成工程と、はんだ充填工程と、実装工程とを有している。
【0020】
第1絶縁層形成工程においては、絶縁基板の一方の面(パターン形成面11a)上に、スクリーン印刷法などにより、ランド12を含む配線パターンを印刷する。これにより、第1絶縁層11が形成される。
第2絶縁層形成工程においては、第1絶縁層形成工程で形成された第1絶縁層11のパターン形成面11a上に、絶縁基板を積層し、積層した絶縁基板を型抜きして焼結成形することによって、当該絶縁基板にランド12を露出させるキャビティ22と、キャビティ22の4つの角部それぞれに接続されたガス抜き溝23とを形成する。
これにより、第2絶縁層21が形成されると共に、セラミック多層基板1が完成する。
【0021】
図4に示すように、はんだ充填工程においては、セラミック多層基板1に係る第2絶縁層21上に、開口31aからキャビティ22のみが露出するように、ステンレス製のメタルマスク31を配置する(第1工程)。そして、錫を主材料としたペースト状のはんだ33をメタルマスク31の表面に塗布する。
その後、スキージ32を、メタルマスク31の表面に一定の圧力で当接させつつ、第2方向に移動させることによって、はんだ33をキャビティ22内に充填する(第2工程)。このとき、図5に示すように、スキージ32を、第2方向に移動させるため、第1方向に延設されるガス抜き溝23内にはんだ33が流れ込むのが抑制される。
【0022】
図6および図7に示すように、実装工程においては、面実装部品41の端子42と、当該端子42が接続されるべきランド12とが対面するように、面実装部品41をセラミック多層基板1上に配置する。
このとき、面実装部品41の端子42とランド12とがはんだ33を介して対向している。そして、面実装部品41が配置されたセラミック多層基板1に加熱処理を施すことによって、はんだ33が溶融し、端子42とこれに対向するランド12とがはんだ接合される(第3工程:リフロー方式)。
ペースト状はんだ33には、はんだ33がランド12および端子42となじみやすいように有機溶剤が含有されている。この有機溶剤が、はんだ溶融時にガスとして空気中に放出される。
図5に示すように、はんだ溶融時に発生したガスは、キャビティ22の角部からガス抜き溝23を介して外部に排出される。
【0023】
以上で、面実装部品41の実装を含むセラミック多層基板1の製造が完了する。
【0024】
上記のセラミック多層基板1では、第2絶縁層21にキャビティ22が形成されることによって、ランド12を覆うはんだ33の量が増加し、ランド12と端子42とのはんだ接合強度が高くなる。
また、実装工程において、面実装部品41の端子42とランド12とがはんだ接合されるときに、はんだ33の溶融時に発生したガスがキャビティ22の各角部からガス抜き溝23を経由して外部に排出されるため、発生したガスを、キャビティ22の各角部に残存させることなく均一に、かつ効率よく外部に排出することができる。これにより、はんだ33がランド12上に十分に濡れ広がり、はんだ33の接合強度が低下するのを抑制することができる。
【0025】
また、ガス抜き溝23が、キャビティ22の角部を形成する第1方向に延設される内壁面と第2方向に延設される内壁面のうち、第1方向に延在する内壁面の延設される方向に沿って、かつ、当該内壁面と連続するように延設されている。これにより、キャビティ22内で発生したガスが、キャビティ22の内壁面に沿って角部に到達した後に、スムーズにガス抜き溝23に導かれるため、発生したガスをさらに効率よく外部に排出することができる。
【0026】
さらに、ガス抜き溝23が、第1方向にのみ延設されているため、はんだ充填工程において、スキージ32を、第1方向に直交する第2方向に移動させつつ、キャビティ22内にはんだ33を充填することで、第1方向に延設されるガス抜き溝23内にはんだ33が流れ込むのを抑制することができる。
【0027】
次に、上述の本実施形態に係る第1変形例について説明する。なお、上述の実施形態と実質的に同一の部材については、同一の符号を付して、説明を省略する。
図8に示すように、ガス抜き溝23溝は、角部を形成している2辺の伸延方向から若干ずれるように形成されているため、凹部にはんだを充填するときに、直交方向から若干ずれる方向で、はんだが塗布される。
しかしながら、実装部品の端子と電極とがはんだ接合されるときに、はんだ溶融時に発生するガスが接合穴の各角部から溝を経由して外部に排出されるため、発生したガスを、接合穴の各角部に残存させることなく均一に、かつ効率よく外部に排出することができる。
これにより、はんだが電極上に十分に濡れ広がり、はんだの接合強度が低下するのを抑制することができる。
【0028】
図9に示すように、第2比較例に係るセラミック多層基板201の第2絶縁層221には、ランド12を露出させる平面視矩形状のキャビティ22と、キャビティ22の4つの角部に接続されつつパターン形成面11aに沿って伸延しているガス抜き溝223とが形成されている。各ガス抜き溝223は、キャビティ22から多層基板の四隅に向いて放射状に伸延するように形成されている。
【0029】
次に、比較例について説明する。なお、上述の実施形態と実質的に同一の部材については、同一の符号を付して、説明を省略する。
図10に示すように、比較例に係るセラミック多層基板101の第2絶縁層121には、ランド12を露出させる矩形平面を有するキャビティ22と、パターン形成面11aに沿って延在しているガス抜き溝123が形成されている。キャビティ22の4つの角部それぞれに、2つのガス抜き溝123が接続されている。
【0030】
キャビティ22の各角部から延在している一方のガス抜き溝123は、当該角部を形成する2つの内壁面のうち第1方向に延在する内壁面の延在方向に沿って延在している。また、当該角部から延在している他方のガス抜き溝123は、当該角部を形成する2つの内壁面のうち第2方向に延在する内壁面の延在方向に沿って延在している。
【0031】
これによると、各角部に第1方向および第2方向の2つのガス抜き溝123が接続されているため、第1方向(スキージと直交方向)には、はんだが流れ込むことはなく、ガス流路として機能するが、第2方向(スキージ方向)のガス抜き溝には、はんだが流れ込み、ガス流路をふさいでしまうので、好ましくない。
【0032】
図5、図8、図9、および図10を比較すると、はんだ印刷の際、溝内へのはんだの流れ込みを防止するためには、溝は、キャビティを形成する対向する2辺で、スキージの移動方向と直交する2辺から延設するように、H字状で形成されるのが好ましい。
ただし、2辺の延設方向から若干ずれて形成される場合(図8)、または、キャビティ22から放射状に延設するように形成される場合(図9)でも、溝内に若干量のはんだが流れ込むおそれはあるが、ガス排出路を確保することは可能である。
【符号の説明】
【0033】
1、101、201 セラミック多層基板
11 第1絶縁層
11a パターン形成面
12 ランド(電極)
21、121、221 第2絶縁層
22 キャビティ(接合穴)
23、123、223 ガス抜き溝
31 メタルマスク
31a 開口
32 スキージ
41 面実装部品
42 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に実装部品とはんだ接合される電極が形成された第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の被実装面上に積層された第2絶縁層とを備え、
前記第2絶縁層は、
内部に前記電極が露出するように形成された平面視矩形状の接合穴と、
前記接合穴の四隅からそれぞれ第1絶縁層の被実装面に沿って延設された4つの溝とを有していることを特徴とする積層基板。
【請求項2】
前記接合穴が前記4つの溝を介して外部雰囲気と連通するように、前記4つの溝の各々が外部雰囲気に到るまで延設されていることを特徴とする請求項1に記載の積層基板。
【請求項3】
前記4つの溝が、平面視で前記接合穴を構成する辺の延設方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の積層基板。
【請求項4】
前記4つの溝が、平面視で前記接合穴を構成する対向する2辺の延設方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項3に記載の積層基板。
【請求項5】
請求項4記載の積層基板上に、前記電極にはんだを供給するための開口部が設けられたマスクを載置する第1工程と、
前記マスク上でスキージを所定方向に移動させてはんだを前記電極に供給する第2工程と、
はんだ印刷された前記積層基板に実装部品を実装する第3工程と
を備え、
前記第2工程では、前記スキージを前記積層基板に形成された4つの溝の延設方向と直交する方向に移動させてはんだを前記電極に供給することを特徴とする積層基板への実装部品の実装方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−233640(P2011−233640A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101247(P2010−101247)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】