説明

積層板、及び該積層板を用いて得られる複合成形体

【課題】高温環境下で使用することができ、かつ発泡樹脂シートと金属板との剥離が抑制された複合成形体、及び当該複合成形体の作製を可能とする成形体前駆体(積層板)を提供すること。
【解決手段】本発明の積層板は、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂シートの両面に、接着剤を介して金属板が積層されて構成され、前記樹脂の融点が145℃以上で、かつ、前記接着剤の融点が前記樹脂の融点と同等以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層板、及び該積層板を用いて得られる複合成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、これまでに、板厚が0.5〜1.4mmで、発泡剤を含有するポリプロピレン系樹脂シートの両面に、板厚が0.05〜1.0mmのアルミニウム合金板を、接着剤を介して積層させた、板厚が3.4mm以下の積層板を開示している(特許文献1)。当該積層板は、冷間成形し、次いでこれを加熱して発泡剤を分解させることにより、ポリプロピレン系発泡樹脂シートの両面にアルミニウム合金板が積層した複合成形体とした後、種々の用途に用いられる。
【0003】
上記積層板は、単体では冷間成形性が低いポリプロピレン系樹脂シートに、板厚が薄くなって成形性が一層低下したアルミニウム合金板を組み合わせたにも関わらず、却って冷間成形性が著しく向上しており、複雑な形状に成形し易い。また、成形後の形状安定性にも優れている。このため、上記積層板は、たとえば自動車用のパネルや部品などの、面積が大きくて、かつ複雑な形状を有する成形体(複合成形体)を提供するための素材として好ましく用いることができる。
【0004】
近年、自動車用のパネルや部品には、より高温環境下で使用できることが求められており、それに伴い、当該用途に用いられる複合成形体の耐熱性の向上も求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4559513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
耐熱性の向上した複合成形体を提供する方法として、融点の高いポリプロピレン系樹脂シートを用いて積層体を作製する方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、融点の高いポリプロピレン系樹脂シートを用いて得られる複合成形体は、発泡後のポリプロピレン系発泡樹脂シートとアルミニウム合金板とが剥離し易いという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、高温環境下で使用することができ、かつ発泡樹脂シートと金属板との剥離が抑制された複合成形体、及び当該複合成形体の作製を可能とする成形体前駆体(積層板)を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することのできた本発明の積層板は、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂シートの両面に、接着剤を介して金属板が積層されて構成され、前記樹脂の融点が145℃以上で、かつ、前記接着剤の融点が前記樹脂の融点と同等以上であることを特徴とする。
【0010】
本明細書において、発泡性樹脂シートの形成に用いる樹脂や接着剤の融点とは、これらを示差走査熱量計(DSC)で測定して求められる融点を意味する。
【0011】
本発明の積層板において、前記樹脂がポリオレフィン系樹脂であり、かつ前記接着剤が変性ポリオレフィン系樹脂であることや、150℃、100mm/minでT型剥離試験を行った場合の、前記発泡性樹脂シートと前記金属板との剥離強度が、1.0N/mm以上であることは、好ましい実施態様である。
【0012】
また、本発明の積層板が、冷間成形した後に、前記発泡剤を加熱発泡させて用いられることも好ましい実施態様である。
【0013】
本明細書において、冷間成形とは120℃以下での成形を意味する。
【0014】
本発明には、上記積層板を冷間成形し、次いで加熱して前記発泡剤を分解させて得られることを特徴とする複合成形体も包含される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高温環境下でも使用でき、発泡樹脂シートと金属板との剥離が抑制された複合成形体を作製することができた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の積層板は、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂シートの両面に、接着剤を介して金属板が積層されて構成され、前記樹脂の融点が145℃以上で、かつ、前記接着剤の融点が前記樹脂の融点と同等以上であることを特徴とする。
【0017】
本発明において、融点の高い樹脂を用いて構成される積層板から、冷間成形工程と加熱発泡工程を経て複合成形体を作製しても、発泡後の発泡性樹脂シート(すなわち、発泡樹脂シート)と金属板との剥離が抑制されるメカニズムは不明であるものの、以下のように推測される。
【0018】
すなわち、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂シートの両面に、接着剤を介して金属板が積層される積層板について、複合成形体の形状精度を上げるために冷間成形をした場合、冷間成形後の発泡性樹脂シートは残留応力を持つこととなる。そのため、その後に樹脂シートを軟化させつつ発泡剤を分解させるために加熱した際、樹脂シートが軟化するまでの間、発泡性樹脂シートと金属板とが十分に接着していないと、残留応力の大きい箇所で発泡性樹脂シートと金属板とが剥離してしまう。そして、その状態で発泡剤が分解すると、発泡剤から生じたガスが剥離部分に集まることとなって、発泡樹脂シートと金属板とが部分的に大きく剥離した複合成形体が作製されることとなる。
【0019】
これまで、積層板を形成する接着剤としては、融点がせいぜい140℃の接着剤が用いられており、かかる接着剤を介して、融点が高い(具体的には、融点が145℃以上の)樹脂に金属板を積層した場合には、当該樹脂の融点が接着剤の融点を上回ることとなる。その結果、このような積層板を冷間成形後に加熱すると、当該加熱により上記樹脂が軟化する前に接着剤が軟化してしまい、上記のような剥離現象が生じることとなる。
【0020】
これに対し、本発明の積層体は、従来の接着剤に代えて、発泡性樹脂シートの形成に用いる樹脂の融点と同じか、もしくは当該樹脂の融点よりも高い融点を有する接着剤を用いて構成されている。このような積層板は、冷間成形後に加熱しても、上記樹脂が軟化する前に接着剤は軟化しないため、当該樹脂が金属板に十分に接着した状態を維持することができる。このため、発泡樹脂シートと金属板との剥離が十分に抑制された複合成形体を得ることができる。
【0021】
以下、本発明の積層板について詳述する。
【0022】
(樹脂)
本発明で発泡性樹脂シートの形成に用いる樹脂は、融点が145℃以上である。高融点の樹脂を用いて作製した複合成形体は、耐熱性に優れることから、高温環境下で使用することができる。上記樹脂の融点は、150℃以上が好ましく、155℃以上がより好ましい。本発明で用いる樹脂の融点の上限は特に限定されるものではないが、融点が高すぎると樹脂を軟化させ難くなって、発泡性樹脂シートの発泡倍率を十分に上げることができない場合があることから、400℃とすることが好ましい。なお、上記の樹脂として、2種以上の樹脂を混合して用いる場合は、混合後の樹脂の融点が145℃以上となるように調整する。
【0023】
上記樹脂としては、特に限定されず、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂の他、ポリカーボネート系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂などが挙げられる。
【0024】
ポリエチレン系樹脂としては、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィン(例えば、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン等)との共重合体、または当該α−オレフィンを2種類以上含む多元共重合体であって、エチレン含量が50質量%以上のものが挙げられる。
【0025】
ポリプロピレン系樹脂としては、ランダム共重合ポリプロピレン系樹脂、ホモポリプロピレン系樹脂、ブロック共重合ポリプロピレン系樹脂が好ましい。これらのポリプロピレン系樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリプロピレン系樹脂は、他の樹脂に比して、伸びが低下した金属板(特に、アルミニウム合金薄板)の歪み分布を均一化する効果が大きい。すなわち、金属板(特に、アルミニウム合金薄板)と組み合わされて積層された場合の、成形可能性や形状安定性などの成形性向上効果が大きい。
【0026】
ランダム共重合ポリプロピレン系樹脂としては、公知のプロピレンと、エチレンまたは炭素数4〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体が挙げられる。ブロック共重合ポリプロピレン系樹脂としては、公知のプロピレンと、エチレンまたは炭素数4〜20のα−オレフィンとのブロック共重合体が挙げられる。
【0027】
(発泡剤)
発泡剤としては、有機発泡剤、無機発泡剤のいずれも使用可能である。
【0028】
有機発泡剤としては、例えば、アゾ化合物、ニトロソ化合物、スルホニルヒドラジド化合物などが挙げられる。具体的には、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、アゾビスイソブチロニトリル、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ヒドラゾジカルボンアミド、ジフェニルスルホン−3,3−ジスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、ビウレアなどが挙げられる。なかでも、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物が好ましい。
【0029】
無機発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸亜鉛などが挙げられる。
【0030】
本発明では、120℃以上(より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180℃以上、よりさらに好ましくは200℃以上)に加熱することにより分解してガスを発生する発泡剤を用いるのが好ましい。このような発泡剤を用いることにより、発泡性樹脂シートの形成に用いる樹脂を軟化させた状態で発泡剤を分解させることができ、発泡性樹脂シートの発泡倍率を上げることができる。上記発泡剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
発泡剤の含有量は、発泡性樹脂シートの樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部であるのが好ましく、0.5〜5質量部であるのがより好ましい。
【0032】
(発泡性樹脂シート)
上記樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂シートは、当該樹脂に発泡剤を混練りした後、これをシート状に成形して得ることができる。混練温度は、発泡剤の熱分解温度よりも10℃以上低くすることが好ましい。これにより、混練により上記樹脂の温度が上昇しても、発泡が起こることを防止できる。
【0033】
本発明で用いる発泡性樹脂シートは、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、ラジカル発生剤、架橋助剤などが挙げられる。
【0034】
本発明で用いる発泡性樹脂シートの板厚は、0.5〜1.4mmであることが好ましい。当該シートの板厚が0.5mm未満の場合には、積層板の冷間成形時に、金属板の歪み分布を均一化する効果が小さくなり、冷間成形中に金属板が破断し、成形性が大幅に低下する場合がある。一方、当該シートの板厚が1.4mmを超えると、相対的に金属板による効果が小さくなって、発泡性樹脂単体と大差なくなるため、冷間成形によって所定の形状としても、元の直線的な形状に戻ろうとするスプリングバックが大きくなり、形状安定性が低くなる。
【0035】
(接着剤)
本発明で用いる接着剤の融点は、発泡性樹脂シートの形成に用いる樹脂の融点と同じか、もしくはそれより高い。このような高融点を有する接着剤を用いることにより、積層板の冷間成形後の加熱の際に、残留応力を持つ発泡性樹脂シートと金属板とが十分に接着した状態で、上記樹脂の軟化と発泡剤の分解が起こることとなるため、発泡後の発泡性樹脂シート(発泡樹脂シート)が金属板から剥離することを防ぐことができる。
【0036】
本発明で用いる接着剤の融点は、具体的には、145℃以上(好ましくは150℃以上)である。
【0037】
本発明で使用可能な接着剤成分は特に限定されず、例えば、アクリル系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤、セラミック系接着剤などが挙げられる。特に、ポリオレフィン系接着剤としては、エチレン若しくはマレイン酸などを共重合した変性ポリオレフィン系接着剤などが挙げられ、なかでもマレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0038】
本発明では、発泡性樹脂シートと金属板との接着性を向上するために、上記樹脂としてポリオレフィン系樹脂を用いた場合には、接着剤として変性ポリオレフィン系接着剤を用いるのが好ましい。
【0039】
(金属板)
本発明で用いる金属板としては、例えば、アルミニウム板、アルミニウム合金板、鋼板、めっき鋼板、銅板、チタン板などが挙げられる。これらの中でもアルミニウム板、アルミニウム合金板、鋼板、銅板が好ましい。
【0040】
アルミニウム合金板としては、積層板の冷間成形性(成形加工性、成形後の形状安定性)の向上のために、JISH0001規格にて規定される質別記号の内、O材、H22材〜H24材、H32材〜H34材、及びT4材から選択される調質処理材が好ましい。
【0041】
アルミニウム合金板の強度は、合金の成分組成にもよるが、調質処理による影響が大きく、JIS規格にて規定される1000系、3000系、5000系、6000系のアルミニウム合金であることが好ましい。1000系、3000系、5000系、6000系などのアルミニウム合金以外の調質処理では、強度が高くなる反面、伸びが低すぎて、積層板の冷間成形性を十分に向上できない場合がある。ここで、6000系の場合には、O材またはT4材から選択されたものであることが好ましい。また、5000系の場合には、O材またはH32材〜H34材から選択されたものであることが好ましい。
【0042】
アルミニウム合金板は、無塗装、表面処理なしで、平滑な表面のまま用いてもよいが、必要により、めっきや化成処理など、汎用されている乃至公知の表面処理、あるいはエンボス加工などの表面に凹凸を付与する加工が施されていてもよい。
【0043】
金属板の板厚は、複合成形体の軽量化を図る観点から、薄い程好ましい。具体的には、0.05〜1.0mmであることが好ましく、0.05〜0.5mmであることがより好ましい。少なくとも一方の金属板の板厚が0.05mm未満の場合には、得られる複合成形体の使用状態での曲げ剛性および曲げ強度が著しく低下する場合がある。また、少なくとも一方の金属板の板厚が1.0mmを超えると、複合成形体の質量が重くなる。
【0044】
(積層板)
本発明の積層板全体の板厚は薄いほど好ましく、具体的には、3.4mm以下(より好ましくは2.4mm以下)であることが好ましい。積層板の板厚を3.4mm以下にすることにより、複合成形体の軽量化を図ることができるのみならず、従来の金属板単独の成形時と同じプレス成形条件を用いて成形体を成形することができる。
【0045】
本発明の積層板は、150℃下、剥離速度100mm/minで積層板のT型剥離試験を行った場合の、発泡性樹脂シートと金属板との剥離強度は、1.0N/mm以上を示す。かかる構成により、発泡性樹脂シートが軟化するまで積層板を加熱しても、当該樹脂シートと金属板とを十分に接着できる。積層板の剥離強度は、好ましくは2.0N/mm以上(より好ましくは、3.0N/mm以上)である。
【0046】
(積層板の製造方法)
本発明の積層板の製造方法は特に限定されず、例えば、金属板の片面に接着剤を塗布した後、当該接着剤の塗布面と発泡性樹脂シートとを貼り合わせて積層板を製造する方法や、予め作製した接着剤のシートを、発泡性樹脂シートの両面に積層し、当該接着剤シート上に、さらに金属板を積層させて積層板を製造する方法などが挙げられる。
【0047】
本発明では、発泡性樹脂シートの両面に接着剤層を介して金属板を積層した後、例えば、熱ロールなどにより挟み込んで加熱することが好ましい。これにより、発泡性樹脂シートと金属板とが、接着剤を介して一体に接着される。熱ロールの温度は、発泡剤の発泡温度よりも低く、概ね発泡性樹脂シートの形成に用いる樹脂と接着剤の融点近傍に設定すればよい。これにより、元来、接着性のない樹脂からなる発泡性樹脂シートと金属板とを接着剤により接着でき、結果として、冷間成形に必要な発泡性樹脂シートと金属板との界面接着強度を確保することができる。
【0048】
(複合成形体)
本発明の複合成形体は、上記積層体からいずれの方法で作製されてもよく、熱間成形(120℃超での成形)した後、加熱発泡させて複合成形体としてもよいが、冷間成形した後に加熱発泡させて複合成形体とするのが好ましい。冷間成形により、複雑な形状を有する複合成形体を製造し易くなる。また、熱間成形した場合に比して冷間成形した場合の方が発泡性樹脂シートの形成に用いる樹脂に残留応力が残り易いことから、融点の高い接着剤を用いたことによる効果が発揮され易い。
【0049】
積層板の成形方法としては、例えば張出成形、絞り成形、曲げ成形などのプレス成形が挙げられる。また、成形後の積層体を加熱発泡させる方法としては、バッチ式または連続式のガス炉、電気炉などの対流伝熱方式の加熱炉を用いて積層体を加熱する方法が挙げられる。
【0050】
本発明の複合成形体は、発泡性樹脂シート中の発泡剤が分解して得られる発泡樹脂シートの両面に、接着剤を介して金属板が積層されて構成されている。
【0051】
発泡性樹脂シートの、発泡樹脂シートへの発泡倍率は2〜20倍程度とすることが好ましい。これにより、比較的大きな面積を有する複合成形体について、軽量化と曲げ剛性および曲げ強度の兼備を保証できる。発泡倍率が2倍未満の複合成形体では、曲げ剛性か曲げ強度が同じ金属板単体に比して軽量とならない場合がある。また、発泡倍率が20倍を超えると、複合成形体の曲げ剛性および曲げ強度が著しく低下する場合がある。
【0052】
発泡樹脂シートの板厚は、0.2mm以上(より好ましくは0.5mm以上)であることが好ましい。また、発泡樹脂シートの板厚の上限は、20mm(より好ましくは10mm)であることが好ましい。
【0053】
その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変形を加えた態様で実施することができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、特に断らない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ意味する。
【0055】
先ず、実験例で用いた評価方法について、以下説明する。
【0056】
(融点)
示差走査熱量計(DSC)を用いて、昇温速度10℃/minで300℃まで加熱して測定した。
【0057】
(T型剥離強度)
作製した積層板から210mm×25mmの試験片を切り出し、JIS K6854−3に準拠して、150℃、剥離速度100mm/minでT型剥離試験を行って測定した。
【0058】
(実験例1)
<積層板の作製>
接着剤として、マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂(マレイン酸10質量%を含む;融点167℃)を用いて、30μmの接着フィルムを作製した。
【0059】
発泡性ポリオレフィン系樹脂シートは、以下の(A)〜(F)の材料をラボプラストミルを用いて155℃で混練してシート状に押出すことにより作製した。平均板厚さは1.0mmであった。なお、混練後のシートの融点は158℃であった。
(A)高融点プロピレン系ランダム共重合体(MFR=7g/10分、融点=150℃)60%;
(B)ホモポリプロピレン(MFR=3g/10分、融点165℃)35%;
(C)プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(三井化学(株)製タフマー(登録商標)XM−7080、MFR=7g/10分、融点=83℃)5%;
(D)アゾジカルボンアミド(永和化成(株)製):(A)+(B)+(C)100部に対し、3部;
(E)ラジカル発生剤として「パーヘキサ25B」(登録商標、日油(株)製):(A)+(B)+(C)100部に対し0.05部;
(F)架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレート:(A)+(B)+(C)100部に対し、0.5部。
【0060】
上記発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの両面に、上記接着フィルム及び板厚0.3mmのアルミニウム合金板(JIS3004アルミニウム合金単板のO材)をこの順で積層した後、180℃で90秒間加熱して、積層板を作製した。得られた積層板から210mm×25mmの試験片を切り出し、T型剥離を行った。その結果を表1に示す。
【0061】
<複合成形体の作製>
得られた積層板から、70mm×90mmの試験片を切り出し、室温でプレス成形(冷間成形)を行って、成形高さ12.5mmの半球状に成形した後、210℃で600秒間加熱して発泡剤を分解させて、複合成形体を作製した。得られた複合成形体を切断して、その断面を目視観察し、アルミニウム合金板とポリオレフィン系発泡樹脂との剥離の有無を確認した。その結果を表1に示す。
【0062】
(実験例2)
<積層板の作製>
接着剤として、マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂(融点166℃)をトルエン溶媒に分散させた接着剤をアルミニウム合金板表面に塗布し、バーコータを用いて厚さ30μmになるように調整した後,炉内温度を200℃に設定した乾燥炉に入れ、60分間乾燥させることにより、乾燥膜厚が6μmの接着剤層を合金板表面に形成した。このような乾燥膜厚6μmの接着剤層を有する合金板を2枚作製した。
【0063】
次いで、この接着剤層を有する合金板を、実験例1で用いたのと同じ発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの両面に、接着剤層が接着面となるようにそれぞれ積層した後、180℃で90秒間加熱して、積層板を作製した。
【0064】
<複合成形体の作製>
得られた積層板を用いて、実験例1と同様の方法で複合成形体を作製した。
【0065】
実験例2で作製した積層板と複合成形体について、実験例1と同様の方法で、T型剥離強度試験と剥離の有無の確認を行った。その結果を表1に示す。
【0066】
(実験例3)
接着剤として、膜厚30μmのマレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂(融点147℃)を用いた以外は実験例1と同様にして、積層板及び複合成形体を作製し、T型剥離強度試験と剥離の有無の確認を行った。その結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1の結果から、接着剤の融点を、発泡性樹脂シートの形成に用いる樹脂の融点と同じか、あるいはそれ以上とすることにより、複合成形体における発泡樹脂シートと金属板との剥離を抑制できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の積層板は、たとえば自動車用のパネルや部品などの、面積が大きくて、かつ複雑な形状を有する成形体(複合成形体)を提供するための素材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂シートの両面に、接着剤を介して金属板が積層されて構成され、前記樹脂の融点が145℃以上で、かつ、前記接着剤の融点が前記樹脂の融点と同等以上であることを特徴とする積層板。
【請求項2】
前記樹脂がポリオレフィン系樹脂であり、かつ前記接着剤が変性ポリオレフィン系樹脂である請求項1に記載の積層板。
【請求項3】
150℃、100mm/minでT型剥離試験を行った場合の、前記発泡性樹脂シートと前記金属板との剥離強度が、1.0N/mm以上である請求項1または2に記載の積層板。
【請求項4】
冷間成形した後、前記発泡剤を加熱発泡させて用いられる請求項1から3のいずれか一項に記載の積層板。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の積層板を冷間成形し、次いで加熱して前記発泡剤を分解させて得られることを特徴とする複合成形体。

【公開番号】特開2012−254607(P2012−254607A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130071(P2011−130071)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】