説明

積層構造体およびそれからなるフィルターろ材

【課題】本発明の目的は、捕集効率が良好あり圧力損失が少なく、プリーツ加工性に優れ、プリーツ部で毛羽が発生せず、層間の剥離が起きにくい積層構造体およびそれからなるフィルターろ材を提供する。
【解決手段】2層以上からなる積層構造体であって、少なくとも、直径10nm〜500nmの超極細繊維の繊維構造体からなる超極細繊維層と、一部あるいは全部が熱可塑性繊維からなる不織布または熱可塑性樹脂が付着した不織布からなる不織布層とからなり、かつ、該積層構造体の少なくとの一方の面において、線状、波状、または、ジグザグ状の熱圧着部が形成されており、該熱圧着部が複数並列に並んで配されていることを特徴とする積層構造体とする。上記積層構造体からなるフィルターろ材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分的に熱圧着部が形成された、超極細繊維層を含む2層以上の積層構造体およびそれからなるフィルターろ材に関する。
【背景技術】
【0002】
有害物質による環境汚染の防止や人体への接触を低減するため、種々の工場ではフィルターを使用し有害物質の捕集がなされている。また、フィルターの長寿命化を目的として、フィルターろ材はろ過面積を大きくするために、プリーツ状に折り曲げられ、枠体と一体化したフィルターユニットとして使用される。また、環境保全の観点から排ガス中に含まれる有害物質の規制値が厳しくなっており、該有害物質の高捕集効率、低圧力損失、微細粒子の捕集といった特性を有するろ材が求められている。
【0003】
高捕集効率および微細粒子の捕集のためには、フィルターろ材を構成する繊維径を小さくし、孔径を小さくする必要があるため、超極細繊維から成るフィルターろ材が使用されることが多くなっている。一方で、プリーツ加工後の形態保持性のためにはフィルターろ材の剛性も必要とされるが、超極細繊維はプリーツ加工ならびに加工後の形態保持に必要な剛性を有しないことが多いため、超極細繊維層の補強層と一体化された複数層のフィルターろ材が使用される。
【0004】
また、エレクトロスピニング法により製造した超極細繊維は、他の基材上に積層されて使用されるため、基材からの毛羽立ちや剥離も問題となっており、超極細繊維層の加工性は低い。このような問題を解決するために、超極細繊維層を樹脂にて緻密な間隔にて固定し、超極細繊維層の破損を抑制する方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この方法でもプリーツ加工等による強い摩擦により、超極細繊維層で毛羽が発生したり、該層と基材との剥離が起きたりする問題がある。
【0005】
一方、フィルターろ材としては、超極細繊維層と補強層とを一体化させたものを用いることができるが、該補強層は、フィルターの長寿命化の役割も果たしているため、補強層は、厚く、嵩高性が高く、フィルターとして種々の加工が可能な剛性を有するものが使用される。しかし、補強層を厚くし、嵩高性が高くして、剛性を持たせた場合、フィルターろ材のプリーツ加工が困難となるという問題がある。
【特許文献1】特開2007−224466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、捕集効率が良好あり圧力損失が少なく、プリーツ加工性に優れ、プリーツ部で毛羽が発生せず、層間の剥離が起きにくい積層構造体およびそれからなるフィルターろ材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが検討したところ、上記課題は次の構成により達成できることを見出した。すなわち、本発明によれば、2層以上からなる積層構造体であって、少なくとも、直径10nm〜500nmの超極細繊維層と、一部あるいは全部が熱可塑性繊維からなる不織布または熱可塑性樹脂が付着した不織布からなる不織布層とからなり、かつ、該積層構造体の少なくとの一方の面において、線状、波状、または、ジグザグ状の熱圧着部が形成されており、該熱圧着部が複数並列に並んで配されていることを特徴とする積層構造体が提供される。また、上記積層構造体からなるフィルターろ材が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層構造体は、超極細繊維層と一部または全部が熱可塑性繊維からなるあるいは熱可塑性樹脂が付着した不織布層からなり、プリーツ加工を施す部分に線状、波状、ジグザグ状の熱圧着部を有しているため、容易に該加工を行うことができ、該加工やその後の使用においてプリーツ部で毛羽が発生しない。また、上記積層構造体では、超極細繊維層と不織布層が熱圧着により接合一体化されており層間の剥離が起きにくく、超極細繊維層の存在により捕集効率が良好であり、かつプリーツ部以外には熱圧着部が存在しないため圧力損失が極めて少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の積層構造体は、2層以上からなる積層構造体であって、少なくとも、直径10nm〜500nmの超極細繊維の繊維構造体からなる超極細繊維層と、一部あるいは全部が熱可塑性繊維からなる不織布または熱可塑性樹脂が付着した不織布からなる不織布層とからなる積層構造体である。
【0010】
発明においては、超極細繊維層を構成する超極細繊維の繊維構造体の目付は捕集効率ならびに圧力損失の点から、0.01〜20g/mであることが好ましく、0.1〜3g/mであることがよりこの好ましい。
【0011】
上記超極細繊維は、エレクトロスピニング法あるいは海島紡糸法、メルトブロー法により成形することが好ましいが、エレクトロスピニング法により成形された繊維であることがかかる繊維径を容易に達成できるの点から好ましい。
【0012】
また、上記超極細繊維を構成する重合体は、公知の方法により繊維に成形可能なものであればよく、特にエレクトロスピニング法により紡糸可能はものが好ましい。具体例としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレ−ト(PMMA)、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、アラミド、ポリパラフェニレンテレフタラミド、ポリパラフェニレンテレフタラミド−3,4’−オキシジフェニレンテレフタラミド共重合体、ポリメタフェニレンイソフタラミド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセテート、セルロース、ポリエチレンサルファイド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン(FVDF)、ポリウレタン、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリビニルメチルケトン、ポリエチレンイミド(PEI)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ナイロン6、ナイロン66などナイロン系、ポリ臭化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリクロロプレン、ノルボルネン系モノマーの開環重合体およびその水添物、フィブロイン、天然ゴム、キチン、キトサン、コラーゲン、ゼインなどの有機材料が挙げられ、これらは共重合したものであっても、混合物で挙げられる。また、シリカ、アルミナ、Y、ZrO、チタニアなどのゾルゲル法を利用できる無機材料であってもよい。
【0013】
一方、不織布層を構成する不織布の目付は、フィルター性能およびプリーツ加工性の観点から10〜200g/mが好ましく、20〜70g/mがより好ましい。
【0014】
不織布を構成する繊維は、特に限定されるものではないが、合成繊維であっても天然繊維又は無機繊維であっても良く、その一部に熱可塑性繊維あるいは熱可塑性樹脂が含まれていれば良い。天然繊維としては、セルロース繊維、タンパク質繊維など、無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、スチール繊維などが挙げられる。合成繊維のポリマーとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ナイロン6、ナイロン66などのナイロン系、芳香族ポリアミドなどが挙げられる。
【0015】
本発明においては、積層構造体に熱圧着部を形成するため、上記不織布が、一部あるいは全部が熱可塑性繊維からなる不織布であるか、または、熱可塑性樹脂が付着している必要がある。
【0016】
上記の熱可塑性繊維を構成するポリマーおよび熱可塑性樹脂を構成するポリマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリル樹脂(PMMA)などが挙げられる。
【0017】
上記不織布を形成する繊維の直径は特に限定されないが、積層構造体の剛性の観点より、500nm以上100μm以下が好ましく、1μm以上100μm以下がより好ましい。
【0018】
上記不織布が、熱可塑性繊維とそれ以外の繊維で構成されている場合、熱可塑性繊維の不織布全重量に対する重量比率は5〜100重量%が好ましく、40〜100重量%がより好ましい。
【0019】
また、上記不織布を構成する繊維に、熱可塑性樹脂が付着している場合は、熱可塑性樹脂の不織布全重量に対する重量比率は5〜50重量%が好ましく、10〜50重量%がより好ましい。
【0020】
本発明においては、積層構造体が上記の超極細繊維層および不織布層からなり、少なくとも該積層構造体の一方の面において、線状、波状、または、ジグザグ状の熱圧着部が形成されており、該熱圧着部が複数並列に配されていることが肝要である。該熱圧着部において、プリーツ加工を施されることで、容易にプリーツ加工を行うことができ、該加工やその後の使用において磨耗しやすいプリーツ部(屈曲部)が熱融着されていることから超極細繊維の毛羽立ちもなく、層間剥離が起こりにくい。また、上記繊維構造体では、超極細繊維層が積層されていることにより捕集効率が良好で、圧力損失も小さくすることができるが、さらに熱圧着部がプリーツ部のみに形成され、気体や液体が主に通過する部分にはないため、上記性能を遺憾なく発揮することができる。
【0021】
上記の熱圧着部の形状が、波状およびジグザグ状の場合にはプリーツ加工性の観点から、波状またはジグザグ状の熱圧着部に接する2本の接線間の幅が、熱圧着部の幅が1/2以上1未満であることが好ましく、1/2〜3/4であることがより好ましい。また、積層構造体の熱圧着部の厚みは、プリーツ加工性および熱圧着による積層構造体の脆化の観点より、熱圧着されていない部分(以下、非熱圧着部と称することがある)の厚みに対して5〜70%が好ましい。また、積層構造体の熱圧着部を有する面において、該面全体に対する熱圧着部の面積比率は、ろ材各層の接着性ならびに圧力損失の観点から、0.1〜50%が好ましい。
【0022】
不織布は、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法、トウ開繊法、抄紙法、カーディング法、エアレイド法、フィラメント直交法などにより製造できる。これらの不織布はそのまま用いても良いが、制電加工、撥水加工、親水加工などが目的に応じて施されていてもよい。
【0023】
さらに、不織布層の上に超極細繊維の繊維構造体を形成する。本発明においては、超極細繊維を形成する手法としてはエレクトロスピニング法に好ましく例示することができる。
【0024】
エレクトロスピニング法とは、前述した超極細繊維を成形できるポリマーの溶液に、高電圧を印加して繊維構造体上にスプレーして超極細繊維を形成する方法である。また、得られる超極細繊維の繊維径は印加電圧、溶液濃度、スプレーの飛散距離等に依存し、これらの条件を調整することで任意の繊維径とすることができる。
【0025】
前述したポリマーを溶解させる溶媒としては、前記材料により異なり、特に限定されるものではないが、例えば、水、アセトン、クロロホルム、メタノール、エタノール、プロパノール、トルエン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、シクロヘキサン、ベンジルアルコール、1,4−ジオキサン、塩化メチレン、四塩化炭素フェノール、ピリジン、トリクロロエタン、酢酸、蟻酸、ヘキサフルオロイソプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどを挙げることができる。
【0026】
より具他的には、全芳香族ポリアミドの場合は溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを、ポリアクリロニトリルの場合は溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを用いることができる。
【0027】
電解紡糸と条件しては、濃度は1〜16%、電圧は5.0〜70kV、紡糸距離は5.0〜50cm、単位距離あたりの電圧に換算すると、0.5〜7.0kv/cmであるのが好ましい。
【0028】
具体的には、全芳香族ポリアミドポリマーと溶媒とを5:95〜16:84の重量比で溶解させたポリマー溶液を調製し、5〜70kVの電圧下で行うことにより前述した繊維径を有するアラミド超極細繊維を作製することができる。
【0029】
紡糸溶液の供給は、ノズルや口金から押し出す方法や、紡糸溶液中に浸した円盤やドラムに、必要量となるように紡糸溶液を付着させ、連続回転させることにより供給する方法が挙げられる。ノズルや口金から供給する場合、吐出部の内径は超極細繊維の繊維径と相関がないため、限定はない。
【0030】
不織布層の上に超極細繊維層を成形した後、これらの層を部分的に熱圧着する。熱圧着部を形成する方法は特に限定されないが、エンボスロールによる熱圧縮が好ましい。エンボスロール温度は、不織布層に含まれる熱可塑性繊維あるいは樹脂の融点の±50℃となる温度領域が好ましく、融点−20℃から融点+20℃の温度領域がより好ましい。
【0031】
本発明の部分的に熱圧着部が形成された、超極細繊維層を含む2層以上の不織布の剛軟度は、プリーツ加工性ならびにプリーツ形状維持の観点から、カンチレバー法において7cm以上が好ましい。
プリーツの加工法は特に限定されるものではないが、レシプロ式プリーツ加工機、ロータリー式プリーツ加工機などを用いることができる。
【0032】
本発明の積層構造体の用途は何ら制限されるものではないが、超極細繊維からなる層を含むため、低圧力損失ならびに高捕集効率といった特性を有するため、フィルターとしての使用が好まれる。また、2層以上の繊維構造体は、その片側あるいは両側に熱圧着部を有するため、プリーツ形状への加工も容易であり、プリーツ形状のフィルターろ材として使用することがより好ましい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、以下の例によって、本発明が限定されることはない。なお、実施例中の各特性値は下記の方法で測定した。
【0034】
(1)繊維径
超極細繊維層から任意にサンプリングした繊維100本について、走査型電子顕微鏡JSM6330F(JEOL社製)にて測定し、繊維径の平均値を求めた。なお測定は、30,000倍の倍率で行った。
【0035】
(2)剛軟度
JIS L1096記載のカンチレバー法に準じて求めた。
【0036】
(3)熱圧着部の厚みの非熱圧着部の厚みに対する比率
熱圧着部および非熱圧着部の厚みは、積層構造体の断面をJSM6330F(JEOL社製)にて100倍の倍率で観察し、任意にサンプリングした部分10個について測定し、平均値を求めた。測定した平均値より、熱圧着部の非熱圧着部に対する厚みの割合を算出した。
【0037】
(4)フィルター性能評価
実施例および比較例のフィルターを平板に再加工したフィルター用い、0.3μmのNaCl粒子の試験用粉塵含有空気を面速度5.3cm/sになるように試験用フィルターに流し、フィルター前後の圧力差を微差圧計にて測定し、さらにフィルター上流側および下流側におけるNaCl粒子濃度CINおよびCOUTを、それぞれパーティクルカウンタによって測定し、下記式によって捕集効率を求めた。
捕集効率(%)=(1−CIN/COUT)×100
【0038】
(5)プリーツ加工性の評価
プリーツ加工性の評価は、プリーツ先端が均一で鋭角なものを○、プリーツ先端がやや均一で鋭角なものを△、プリーツ先端が不均一で一部鈍角なものを×とした。
【0039】
(6)層間剥離の評価
プリーツ加工後における熱圧着部の層間剥離の評価は、熱圧着部が剥離していないものを○、熱圧着部が剥離しているものを×とした。
【0040】
(7)毛羽立ちの評価
プリーツ部の毛羽立ちの評価は、毛羽立ちがないものを○、少しの毛羽立ちはあるが目立たないものを△、毛羽立ちが目立つものを×として、判定を行った。
【0041】
[実施例1]
不織布層には、平均繊維径25μmで、目付け50g/mのポリプロピレンからなるスパンボンド不織布を使用した。
界面重合法により目的のポリマーを製造した。すなわち、イソフタル酸クロライド14.2gを金属ナトリウムにて脱水したテトラヒドロフラン100mlに溶解し、攪拌しながら、メタフェニレンジアミン7.41gをテトラヒドロヒラン100mlに溶解した溶液を細流として徐々に加えていくと白濁した乳化液を作製した。攪拌を約5分継続した後、炭酸ソーダ14.8gおよび食塩28.0gを300mlの水に溶かした水溶液を速やかに加え、約5分間激しく攪拌した。得られた白色重合体を静置して沈殿させ、透明な水溶液相を除去、ろ過することで芳香族ポリアミドポリマー(ポリメタフェニレンイソフタルアミド)を得た。
【0042】
エレクトロスピニングは特開2006−336173号公報記載の方法に準じ、超極細繊維を製造した。すなわち、得られた芳香族ポリアミドポリマー(ポリメタフェニレンイソフタルアミド)をN,N−ジメチルアセトアミドに、10重量%となるように溶解し、1kV/cmとなるように電界をかけてエレクトロスピニングを20分行い、下層となるスパンボンド不織布上に超極細繊維層を形成した。この超極細繊維層の目付は、0.1g/mであった。
得られた超極細繊維を走査型電子顕微鏡にて観察し、繊維径の測長を行い、その平均値を表1に示した。
【0043】
次にこの積層体を、金属製で回転方向と直交する方向に線状の彫刻がなされた加熱ローラ(上ローラ)と平滑な耐熱性樹脂ローラ(下ローラ)を用いて、エンボスの熱圧着部の幅が60mm、積層体における熱圧着部の面積比率が10%となるエンボス加工を上ローラの温度を160℃、上下ローラ間の線圧0.5t/30cm、加圧時の上下ローラ間の間隔を0.05mmとして行い、熱圧着部を有する超極細繊維層ならびに不織布層からなる2層繊維構造体を得た。
得られた2層繊維構造体の剛軟度を測定し、レシプロ式プリーツ加工機にて熱圧着部の間隔でプリーツ加工した。
得られた2層繊維構造体はプリーツ加工性に優れ、層間の剥離も認められず、超極細繊維の毛羽立ちも観察されなかった。結果を表1に示す。
【0044】
[実施例2]
上ローラをエンボスの熱圧着部の幅が80mm、積層体における熱圧着部の面積比率が20%となる加熱ローラに変更した以外は実施例1と同様に2層積層構造体を製造した。得られた2層繊維構造体はプリーツ加工性に優れ、層間の剥離も認められず、超極細繊維の毛羽立ちも観察されなかった。これらの結果を表1に示す。
【0045】
[実施例3]
上ローラを金属製で回転方向と直交する方向に波状の彫刻がなされた、エンボスの熱圧着部の幅が80mm、積層体における熱圧着部の面積比率が20%となる加熱ローラに変更した以外は実施例1と同様に2層積層構造体を製造した。得られた2層繊維構造体はプリーツ加工性に優れ、層間の剥離も認められず、超極細繊維の毛羽立ちも観察されなかった。これらの結果を表1に示す。
【0046】
[実施例4〜5]
エレクトロスピニング時間を変更した以外は実施例1と同様に2層からなる繊維構造体を製造した。得られた2層繊維構造体はプリーツ加工性に優れ、層間の剥離も認められず、超極細繊維の毛羽立ちも観察されなかった。これらの結果を表1に示す。
【0047】
[実施例6]
不織布層の目付け70g/mを変更した以外は実施例1と同様に2層からなる繊維構造体を製造した。得られた2層繊維構造体はプリーツ加工性に優れ、層間の剥離も認められず、超極細繊維の毛羽立ちも観察されなかった。これらの結果を表1に示す。
【0048】
[実施例7]
芳香族ポリアミドポリマー(ポリメタフェニレンイソフタルアミド)をN,N−ジメチルアセトアミドに、16重量%となるように溶解させる以外は実施例1と同様に2層からなる繊維構造体を製造した。得られた2層繊維構造体はプリーツ加工性に優れ、層間の剥離も認められず、超極細繊維の毛羽立ちも観察されなかった。これらの結果を表1に示す。
【0049】
[実施例8]
上ローラを、積層体における熱圧着部の面積比率が40%となる加熱ローラに変更した以外は実施例1と同様に2層積層構造体を製造した。得られた2層繊維構造体はプリーツ加工性に優れ、層間の剥離も認められず、超極細繊維の毛羽立ちも観察されなかった。圧力損失がやや高くなったが実用的なレベルであった。これらの結果を表1に示す。
【0050】
[実施例9]
上ローラを、金属製で回転方向と直交する方向に図2に示す波状の彫刻がなされたもので、熱圧着部の幅(a)が60mm、熱圧着部に接する接線の幅(b)が90mm、a/bが2/3、積層体における熱圧着部の面積比率が40%となる加熱ローラに変更した以外は実施例1と同様に2層積層構造体を製造した。得られた2層繊維構造体はプリーツ加工性に優れ、層間の剥離も認められず、超極細繊維の毛羽立ちも観察されなかった。これらの結果を表1に示す。
【0051】
[実施例10]
上ローラを、金属製で回転方向と直交する方向に図3に示すジグザク状の彫刻がなされたもので、熱圧着部の幅(a)が60mm、熱圧着部に接する接線の幅(b)が90mm、a/bが2/3、積層体における熱圧着部の面積比率が40%となる加熱ローラに変更した以外は実施例1と同様に2層積層構造体を製造した。得られた2層繊維構造体はプリーツ加工性に優れ、層間の剥離も認められず、超極細繊維の毛羽立ちも観察されなかった。これらの結果を表1に示す。
【0052】
[比較例1]
実施例1と同様の製造方法に従い、エンボス加工を実施しない以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた2層繊維構造体はプリーツ加工性に劣り、層間で剥離が発生しやすく、超極細繊維の毛羽立ちが観察された。この結果を表1に示した。
【0053】
[比較例2]
上ローラを、積層体の熱圧着部の面積比率が7.8%、エンボス熱圧着数が62dot/cm(1dot当たりの熱圧着面積0.0013cm)となるよう点状(円形)の加熱ロールに変更する以外は実施例1と同様に2層積層構造体を製造した。得られた2層繊維構造体は、層間で剥離はないものの、プリーツ加工性に劣り、超極細繊維の毛羽立ちが観察された。これらの結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、高捕集効率、低圧力損失、微細粒子の捕集能を有する繊維構造体のプリーツ加工が容易になり、さらにプリーツ部における超極細繊維の毛羽立ちが抑制され、例えば、プリーツ加工を施し、フィルターユニットに加工した場合の圧力損失が低くなり、高捕集効率のフィルターユニットを得られるため繊維産業に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】線状の熱圧着部を有する本発明の積層構造体の表面の概略図である。
【図2】波状の熱圧着部を有する本発明の積層構造体の表面の概略図である。
【図3】ジグザグ状の熱圧着部を有する本発明の積層構造体の表面の概略図である。
【図4】本発明の積層構造体の断面の概略図である。
【符号の説明】
【0057】
A 熱圧着部
a 熱圧着部の幅
b 熱圧着部に接する2本の接線間の幅
c 熱圧着部の厚み
d 非熱圧着部の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上からなる積層構造体であって、少なくとも、直径10nm〜500nmの超極細繊維の繊維構造体からなる超極細繊維層と、一部あるいは全部が熱可塑性繊維からなる不織布または熱可塑性樹脂が付着した不織布からなる不織布層とからなり、かつ、該積層構造体の少なくとの一方の面において、線状、波状、または、ジグザグ状の熱圧着部が形成されており、該熱圧着部が複数並列に並んで配されていることを特徴とする積層構造体。
【請求項2】
波状またはジグザク状の熱圧着部に接する2本の接線間の幅が、熱圧着部の幅の1/2〜3/4である請求項1記載の積層構造体。
【請求項3】
熱圧着部の厚みが、熱圧着されていない部分の厚みの5〜70%である請求項1記載の積層構造体。
【請求項4】
積層構造体の熱圧着部を有する面において、該面全体に対する熱圧着部の面積比率が0.1〜50%である請求項1記載の積層構造体。
【請求項5】
繊維構造体のカンチレバー法による剛軟度が7cm以上である請求項1記載の積層構造体。
【請求項6】
熱圧着部が、一対のエンボスロール、または、エンボスロールとフラットロールによる熱圧着によって成形されている請求項1記載の積層構造体。
【請求項7】
熱圧着部においてプリーツ状に折り曲げられている請求項1記載の積層構造体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層構造体からなるフィルターろ材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−58328(P2010−58328A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224928(P2008−224928)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】