説明

積層構造体の製造方法

本発明は、積層構造体の製造方法に関する。この方法は、少なくとも第一及び第二の可撓性構造体を準備するステップと、前記第一及び第二の可撓性構造体の少なくとも一部にコーティングを施して、第一の被覆可撓性構造体と第二の被覆可撓性構造体とを得るステップと、前記第一の被覆可撓性構造体の被覆面と前記第二の被覆可撓性構造体の被覆面とを合わせて、前記第一の被覆可撓性構造体と前記第二の被覆可撓性構造体とを一緒にプレスし、前記第一の被覆可撓性構造体と前記第二の被覆可撓性構造体との間で冷間圧接をなすステップとを含む。本発明は、更に、冷間圧接により結合される第一の可撓性構造体及び第二の可撓性構造体を含む積層構造体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造体の製造方法に関する。更に、本発明は、この方法により得られた積層構造体及びそのような積層構造体のコンデンサ又は超伝導体としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの被覆可撓性基板の積層構造体を得るために、しばしば、膠又は有機樹脂のような接着剤が使用される。しかしながら、この方法は、接着剤がコーティングを損傷し得るという欠点を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、従来技術の問題を回避して、積層構造体を製造する方法を提供することである。もう一つの課題は、積層構造体を提供することであり、またそのような積層構造体のコンデンサ又は超伝導体としての使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第一の態様により、積層構造体の製造方法が提供される。この方法は以下のステップを含む。
少なくとも第一及び第二の可撓性構造体を準備するステップ。
第一及び第二の可撓性構造体の少なくとも一部にコーティングを施して、第一の被覆可撓性構造体と第二の被覆可撓性構造体とを得るステップ。
第一の被覆可撓性構造体の被覆面と第二の被覆可撓性構造体の被覆面とを合わせ、第一の被覆可撓性構造体と第二の被覆可撓性構造体とを一緒にプレスし、第一の被覆可撓性構造体と第二の被覆可撓性構造体との間で冷間圧接をするステップ。
【0005】
第一及び第二の可撓性構造体上のコーティングは、例えば、湿式化学堆積法又は真空堆積法などの当技術分野で公知の任意の技術により適用することができる。有利には、第一及び第二の可撓性構造体上のコーティングは、例えばマグネトロンスパッタリング、イオンビームスパッタリング及びイオンアシストスパッタリングといったスパッタリング等の真空堆積法や、蒸着、レーザーアブレーション、又はプラズマ化学気相成長法等の化学蒸着法によりなされる。
【0006】
金属コーティングは、金属又は金属合金を含んでもよい。好ましい金属層は、例えば、Al、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Ir、Pt、Au、Pb又はこれらの合金を含む。
【0007】
第一の可撓性構造体に施されたコーティングは、第二の可撓性構造体に施されたコーティングと全く同じであるのが好ましい。
【0008】
第一の可撓性構造体上のコーティングと第二の可撓性構造体上のコーティングは、1つの堆積源又は2つの異なる堆積源により施すことができる。1つの堆積源によることが好ましい。
【0009】
2つのクリーンな金属表面を密接に接触させると、冷間圧接が生じ得る。
冷間圧接を得るために、金属表面は、例えば酸化物、窒化物、吸収されたガス又は有機汚染物質に汚染されていてはいけない。更に、金属表面は、原子が界面で密接に接触するのに十分である高い機械力で接合させねばならない。
【0010】
汚染物の除去は、金属表面をクリーニングすることにより達成できる。
【0011】
有利な実施形態では、第一及び第二の被覆可撓性構造体のコーティング及び冷間圧接の適用は、コーティングステップと冷間圧接ステップとの間で真空を破らずに、真空で遂行される。
【0012】
工程ステップを通じて真空を保持することにより、酸化物や他の汚染物が表面に生じるのを妨げる。更に、異なる工程ステップを1つの工程チャンバ中で実施することにより、可撓性構造体を、異なる工程チャンバの間で、再配置させるか又は行き来させる必要性が排除される。
【0013】
第一及び第二の可撓性構造体は、例えば、可撓性金属基板又は可撓性ポリマー基板として、当技術で公知の任意の可撓性基板を含んでよい。
【0014】
有利な可撓性金属基板は、例えば、金属のテープもしくは箔、又は金属化されたテープもしくは箔を含む。金属は、有利には、鋼、ニッケルもしくはニッケル合金、又はチタンもしくはチタン合金を含む。
【0015】
金属基板は、有利には、厚さ1〜100μm、例えば10μmを有する。
【0016】
金属化されたテープ又は箔は、有利には、その両側が金属層で被覆されたポリマーのテープ又は箔を含む。
【0017】
有利な可撓性ポリマー基板は、例えば、ポリマーのテープ又は箔を含み、例えば、ポリエステル(PET)、配向ポリプロピレン(OPP)及び二配向ポリプロピレン(BOPP)等のポリプロピレン、ポリエーテルイミド又はポリイミド(例えばKapton(登録商標)又はUpilex(登録商標)として知られている)のテープ又は箔を含む。
【0018】
有利な実施形態では、第一及び/又は第二の可撓性構造体は、被覆可撓性基板を含み、例えば、セラミック層で被覆された金属のテープもしくは箔又は金属化されたテープもしくは箔、又は金属層で被覆されたポリマーの箔もしくはテープを含む。
【0019】
第一及び第二の可撓性構造体は、同じ材料を含んでもよいし又は異なる材料を含んでもよい。
【0020】
セラミック層は、有利には、酸化物、チタン酸塩、ニオブ酸塩、ジルコン酸塩及び高温超伝導体、例えば(Re)−Ba−Cu−オキシドからなる群から選択される。(Re)は、希土類元素、例えば元素Y又はNd、を1つ以上含んでもよい。コンデンサのために使用される代表的なチタン酸塩は、CaTiO3、SrTiO3、BaTiO3及びPbTiO3、(Ba,Sr)TiO3、PbZr(1-X)TiX3、Sr(1-X)BiXTiO3、NbXTiO3、BiBi2NbTiO9、BaBi4Ti415、Bi4Ti312、SrBi4Ti415、BaBi4Ti415、PbBi4Ti415又はPbBi4Ti415を含む。ニオブ酸塩は、CaBi2Nb29、SrBi2Nb29、BaBi2Nb29、PbBi2Nb29、(Pb,Sr)Bi2Nb29、(Pb,Ba)Bi2Nb29、(Ba,Ca)Bi2Nb29、(Ba,Sr)Bi2Nb29、BaBi2Nb29、PbBi2Nb29、SrBi2Nb29、Ba0.75Bi2.25Ti0.25Nb1.759、Ba0.5Bi2.5Ti0.5Nb1.59、Ba0.25Bi2.75Ti0.75Nb1.259、Bi3TiNbO9、Sr0.8Bi2.2Ti0.2Nb1.89、Sr0.6Bi2.4Ti0.4Nb1.69、Bi3TiNbO9、Pb0.75Bi2.25Ti0.25Nb1.759、Pb0.5Bi2.5Ti0.5Nb1.59、Pb0.25Bi2.75Ti0.75Nb1.259又はBi3TiNbO9を含む。代表的酸化物は、Ta25、SiO2、Al23、TiO2及び(Re)−Ba−Cu−オキシドを含む。ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)及びジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PZLT)を含むセラミック層も使用することができる。
【0021】
セラミック層は、多数の異なる技術、例えば、マグネトロンスパッタリング、イオンビームスパッタリング及びイオンアシストスパッタリング等のスパッタリング、蒸着、レーザーアブレーション、化学蒸着法、又はプラズマ化学気相成長法により堆積させることができる。
【0022】
場合により、第一及び/又は第二の可撓性構造体は、可撓性基板とセラミック層との間に中間層を含む。この中間層は、例えば緩衝層を含む。緩衝層は、貴金属層などの金属層や、イットリウム安定化ジルコニウム層、CeO2層又はY23層などの酸化物層を含んでもよい。
【0023】
前記の方法は、コンデンサの製造又は超伝導体の製造に特に好適である。
【0024】
本発明に係る方法の大きな利点は、積層構造体が、膠などの有機接着剤を使用せずに製造できることである。
【0025】
セラミック層、より詳細には、超伝導体に使用されるセラミック層は、脆性層であり、材料を曲げることにより深刻な亀裂を被ることもある。本発明に係る方法は、セラミック層を積層構造体に加えることにより、セラミック層上への応力を減じさせることができる。種々の層の厚さ及び/又は種々の層のヤング率を選択することにより、セラミック層を、いわゆる中立軸に近づけることができる。中立軸は、湾曲下で圧縮も伸長も受けない層構造体の軸と定義される。
【0026】
更に、本発明に係る方法は、第一及び第二の可撓性構造体とコーティング層との間に良好な電気的及び機械的接触を得ることを可能にする。
【0027】
本発明の第二の態様により、積層構造体が提供される。積層構造体は、第一の可撓性構造体と第二の可撓性構造体とを含む。第一の可撓性構造体と第二の可撓性構造体は金属層により相互に結合される。金属コーティングを第一の可撓性構造体の少なくとも一部に施し、かつ金属コーティングを第二の可撓性構造体の少なくとも一部に施し、第一の可撓性構造体の被覆面と第二の可撓性構造体の被覆面とを合わせ、第一の可撓性構造体と第二の可撓性構造体とを一緒にプレスして、第一の可撓性構造体と第二の可撓性構造体との間で冷間圧接をすることによって、金属層を形成することができる。
【0028】
冷間圧接をなす金属コーティングは、汚染物を含まない。
【0029】
本発明に係る積層構造は、膠などの有機接着剤を使用しない。有機接着剤は、基板又は基板上に施されたコーティングを損ない得るので、このことは大きな利点である。
【0030】
本発明の第三の態様により、積層構造体のコンデンサとしての使用が提供される。
【0031】
有利なコンデンサは、前記の積層構造体を含む巻回型コンデンサである。
【0032】
巻回型コンデンサは、当技術分野で公知である。一般に、これらのコンデンサでは、1組の金属化されたポリマーフィルムを一緒にロールに巻き込んでいる。金属化されたフィルムは、ポリマーフィルム上に導電材料の薄層を堆積させることにより得られる。
【0033】
しかしながら、このタイプのコンデンサには、多数の欠点がみられる。ポリマーフィルムは、限定された比誘電率εrを特徴とする。また、ポリマーフィルム(誘電体(dielectricum))の厚さは、ある最小値、一般に0.7μmより低いことはありえない。コンデンサの静電容量は、以下の式により割り出されるので、中位の静電容量値に達しうるだけである。
【0034】
【数1】

S:コンデンサの面積。
d:誘電材料の厚さ(2つの金属層の間の分離距離)。
ε0:真空の誘電率。
εr:誘電体の比誘電率。
【0035】
本発明に係る好ましい巻回型コンデンサは、第一及び第二の可撓性基板を有する積層構造体を備える。第一及び第二の可撓性基板は、金属基板及びセラミック層(誘電層)を備える。セラミック層を真空堆積法により堆積させるのは有利である。第一及び第二の基板は、金属層により相互に結合される。
【0036】
金属コーティングを第一の可撓性構造体の少なくとも一部に施し、かつ金属コーティングを第二の可撓性構造体の少なくとも一部に施し、第一の可撓性構造体の被覆面と第二の被覆可撓性構造体の被覆面とを合わせ、第一の可撓性構造体と第二の可撓性構造体とを一緒にプレスして、第一の可撓性構造体と第二の可撓性構造体との間で冷間圧接をすることによって金属層を形成するのが好ましい。
【0037】
第一及び第二の可撓性構造体上へのコーティングは、例えば、湿式化学堆積法又は真空堆積法のような、当技術分野で公知の任意の技術により施すことができる。有利には、第一及び第二の可撓性構造体上へのコーティングは、例えばマグネトロンスパッタリング、イオンビームスパッタリング及びイオンアシストスパッタリングといったスパッタリング等の真空堆積法、蒸着、レーザーアブレーション、又はプラズマ化学気相成長法等の化学蒸着法により実施される。
【0038】
金属コーティングは、任意の金属又は金属合金を含んでもよい。好ましい金属層は、例えば、Al、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Ir、Pt、Au、Pb又はこれらの合金を含む。
【0039】
第一の可撓性構造体に施されたコーティングは、第二の可撓性構造体に施されたコーティングと全く同じであるのが好ましい。
【0040】
第一の可撓性構造体上へのコーティングと第二の可撓性構造体上へのコーティングは、1つの堆積源又は2つの異なる堆積源により施すことができる。1つの堆積源によることが好ましい。
【0041】
本発明に係る巻回型コンデンサは、多くの利点を示す。これらの利点のあるものは、セラミック層の堆積にかかわっている。
【0042】
先ず第一に、高い比誘電率εrを有する誘電材料を、真空堆積により得ることができる。先に記載のように、誘電材料の比誘電率εrは20より高いのが有利である。また一方、ずっと高い比誘電率εrを有する誘電材料を得ることができる。誘電材料の代表的範囲は、20から100まで、100から1000まで、1000から10000まで、10000から20000までであり、20000より高いことすらある。
【0043】
第二の利点は、誘電層の薄層が堆積し得ることである。誘電材料の厚さは、公知の金属化されたフィルムコンデンサの誘電材料の厚さ(即ちポリマーフィルムの厚さ)よりはるかに薄くてよい。
【0044】
公知の金属化フィルムコンデンサで到達できる最小の厚さは、一般に0.7μmであることが受け入れられている。真空堆積により0.001μmの層が析出され得る。一般に、真空堆積誘電層の厚さは0.001〜10μm、例えば1μm、0.1μm又は0.01μmである。
【0045】
比誘電率εrの増加と誘電材料の厚さの減少の両方は、コンデンサの静電容量にプラスの影響を及ぼす。
【0046】
真空堆積法により堆積された誘電材料の第三の利点は、得ることのできる誘電材料が高品質であることと、誘電材料の厚さの制御がたやすいことである。
【0047】
更に、誘電材料を金属基板上へ堆積させることにより、金属化ポリマーフィルムと比較して、より高温を達成することができる。
【0048】
本発明に係る巻回型コンデンサにおいて、第一及び第二の構造体は、金属層により結合される。このことは、膠などの有機接着剤の使用が回避されることを意味する。
【0049】
本発明の第四の態様により、積層構造の超伝導体としての使用が提供される。
【0050】
添付図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
図1は、本発明に係る方法の概略図である。セラミック層で被覆された金属箔を含む2つの可撓性構造体12が真空チャンバ内に用意される。2つの可撓性構造体12は、堆積源16からの金属コーティング層14で被覆される。引き続いて、この2つの被覆可撓性構造体は、2つのローラー18の間で一緒にプレスされることにより1つにされる。2つの被覆面の間で冷間圧接がなされる。
【0052】
可撓性構造体12のコーティングと、コーティング層14を用いる2つの可撓性構造体の一体化とは、真空を破らずに真空チャンバ内で行うのが好ましい。
【0053】
場合により、この方法において、加熱、コーティング、切断、他の積層工程等の他の加工ステップを引き続き行ってもよい。
【0054】
図2は、3つの可撓性構造体22を一体化する本発明に係る方法の概略図であり、析出源26からの金属コーティング24を2つの連続可撓性構造体22の各間に施し、2つのローラー28の間でこれらを一緒にプレスすることによりなされる。
【0055】
積層構造体の可撓性構造体の数を増加できることは、当業者にとり明白である。一般に、積層構造体の可撓性構造体の数は、2から10までの範囲にある。
【0056】
図3〜図7は、コンデンサの種々の実施形態を示す。積層された可撓性構造体31、33は、図3〜図7の(a)に示されている。図3〜図7の(b)は、金属コーティング層36により相互に結合された可撓性構造体31、33を含む積層構造体35を示す。図3〜図7の(c)は、電極39を含む積層構造体35のスタック37を示す。
【0057】
可撓性構造体31、33は、可撓性基板40及びセラミック層42を含む。場合により、可撓性構造体31又は33のうちの片方又は両方は、基板40とセラミック層42との間に緩衝層44を含む。緩衝層44は、例えばPd、Pt、Au又はAgの層といった貴金属層等の金属層を含む。第一及び第二の可撓性構造体中に緩衝層44を含む実施形態の例を、図5に挙げる。
【0058】
図3〜図6に示す実施形態では、可撓性基板は、金属のテープ又は金属化されたテープを含む。図7に示す実施形態では、第一の可撓性構造体の可撓性基板は、ポリマーのテープを含む。
【0059】
本発明に係るコンデンサの魅力を示すために、本発明に係るコンデンサの容積あたりの静電容量を、当技術分野で公知の金属化フィルムコンデンサの容積あたりの静電容量と比較する。容積あたりの静電容量は、以下の式で定義される。
【0060】
【数2】

ε0:真空の誘電率。
εr:誘電材料の比誘電率。
d:誘電材料の厚さ(2つの金属層間の分離距離)。
cap:dd+de(deは、金属層(電極)の厚さ)。
【0061】
金属化フィルムコンデンサは、金属化ポリマーフィルムを含み、これはロールに巻かれてコンデンサを形成する。金属化ポリマーフィルムは、導電材料の薄層をポリマーフィルム上に堆積させて、形成される。一例として考慮される金属化フィルムコンデンサは、比誘電率εr1が3のポリマーフィルム(誘電体)を含む。ポリマーフィルムの厚さdd1として、当技術分野で公知の最も薄い厚さ0.7μmが考慮される。
【0062】
スパッタリングによりポリマーフィルム上に金属層を堆積させる場合は、金属層の厚さは非常に薄いと考えることができる。そのため、前記計算のdcapは、dd1に等しいと考えられる。金属化フィルムコンデンサの容積あたりの静電容量は、以下のようにして計算することができる。
【0063】
【数3】

【0064】
本発明に係るコンデンサとして、金属基板とこの金属基板上に堆積された誘電材料とをそれぞれ含む第一の構造体と第二の構造体とを備えるコンデンサを考える。誘電材料は、比誘電率εr2500、誘電材料の厚さdd20.01μmを有する。金属基板(電極)は、厚さ10μmを有する。容積あたりの静電容量は以下の式で表せる。
【0065】
【数4】

【0066】
前記例から、第二のコンデンサの容積あたりの静電容量は、第一のコンデンサの容積あたりの静電容量よりほぼ800倍高いという結論を得ることができる。
【0067】
前記計算が例としてのみ考えられることは明白である。本発明に係るコンデンサの誘電材料の比誘電率εrが例中で得られたものよりずっと高く、誘電材料の厚さが例中で考慮される厚さより低いこともあるので、本発明により、容積当り一層高い静電容量を有するコンデンサを得ることができる。
【0068】
図8は、高温超伝導体として使用される本発明に係る積層構造体を示す。
【0069】
(Re)−Ba−Cu−オキシドなどの高温超伝導体(HTS)は、脆性セラミック材料である。脆性超伝導体の亀裂は、電流伝導容量のドラマチックな減少(臨界電流Jc)を引き起こしうる。Jcのこの減少を回避するために、非積層被覆導体の曲げ半径は、積層構造体中のHTSコーティングの厚さに依存する臨界値より大でなくてはならない。この影響を最小にすることは可能であり、そのことにより、より小さな曲げ半径で曲げられる導体を得ることができる。積層構造中にHTSコーティングを加えることによりこの影響を最小にすることは可能であり、そのことにより、より小さな曲げ半径で曲げられる導体を得ることができる。
【0070】
図8は、HTSへの曲げ応力が最小である積層構造80の例を示す。積層構造体80は、2つの可撓性構造体81及び82を含む。各可撓性構造体は、可撓性基板、例えば金属箔又はポリマー箔83、84と、HTSコーティング85、86とを含む。金属箔83、84と、HTSコーティング85、86との間に、緩衝層87、88が堆積される。2つの可撓性構造体81と82は、コーティング層89により一体化される。
【0071】
可撓性基板83、84の存在により、HTSコーティング85、86は、いわゆる中立軸にさらに近づけられる。中立軸は、各層の厚さ及びヤング率εにより決定される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】積層構造体を製造するための本発明に係る方法の概略的な説明図である。
【図2】積層構造体を製造するための本発明に係る方法の概略的な説明図である。
【図3】コンデンサの種々の実施形態を示す図である。
【図4】コンデンサの種々の実施形態を示す図である。
【図5】コンデンサの種々の実施形態を示す図である。
【図6】コンデンサの種々の実施形態を示す図である。
【図7】コンデンサの種々の実施形態を示す図である。
【図8】高温超伝導体として使用される本発明に係る積層構造体を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層構造体を製造する方法であって、
少なくとも第一及び第二の可撓性構造体を準備するステップと、
前記第一及び前記第二の可撓性構造体の少なくとも一部に金属コーティングを施して、第一の被覆可撓性構造体と第二の被覆可撓性構造体とを得るステップと、
前記第一の被覆可撓性構造体の被覆面と前記第二の被覆可撓性構造体の被覆面とを合わせ、前記第一の被覆可撓性構造体と前記第二の被覆可撓性構造体とを一緒にプレスして、前記第一の被覆可撓性構造体と前記第二の被覆可撓性構造体との間で冷間圧接するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記第一及び前記第二の可撓性構造体上への前記コーティングが、真空堆積法によりなされる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程ステップが真空で遂行され、各工程ステップ間で前記真空を破らない請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一及び前記第二の可撓性構造体が、可撓性金属基板、可撓性ポリマー基板又は可撓性金属化ポリマー基板を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第一の可撓性構造体及び前記第二の可撓性構造体が、被覆可撓性基板を含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記被覆可撓性基板が、セラミック層で被覆された金属の箔又はテープを含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記セラミック層が、酸化物、チタン酸塩、ニオブ酸塩及びジルコン酸塩からなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記セラミック層が高温超伝導体を含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記被覆可撓性基板が、金属層で被覆されたポリマーの箔又はテープを含む請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記第一及び/又は前記第二の可撓性構造体が、前記可撓性基板と前記可撓性基板上に施されたコーティングとの間の中間層を含む請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記中間層が、イットリウム安定化ジルコニウム層、CeO2層又はY23層を含む緩衝層を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第一の可撓性構造体と第二の可撓性構造体とを含む積層構造体であって、前記第一の可撓性構造体と前記第二の可撓性構造体とが金属層により相互に結合され、前記金属層は、金属コーティングを前記第一の可撓性構造体の少なくとも一部に施し、かつ金属コーティングを前記第二の可撓性構造体の少なくとも一部に施し、前記第一の可撓性構造体と前記第二の可撓性構造体の被覆面を合わせ、前記第一の可撓性構造体と前記第二の可撓性構造体とを一緒にプレスして、前記第一の可撓性構造体と前記第二の可撓性構造体との間で冷間圧接をすることによって形成される積層構造体。
【請求項13】
前記積層構造体が膠不含である請求項12に記載の積層構造体。
【請求項14】
前記可撓性基板が、可撓性金属基板、可撓性ポリマー基板又は可撓性金属化ポリマー基板を含む請求項12又は13に記載の積層構造体。
【請求項15】
前記第一の可撓性構造体及び前記第二の可撓性構造体が、被覆可撓性基板を含む請求項12乃至14のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項16】
前記被覆可撓性基板が、セラミック層で被覆された金属の箔又はテープを含む請求項15に記載の積層構造体。
【請求項17】
前記セラミック層が、酸化物、チタン酸塩、ニオブ酸塩及びジルコン酸塩からなる群から選択される請求項16に記載の積層構造体。
【請求項18】
前記セラミック層が高温超伝導体を含む請求項16に記載の積層構造体。
【請求項19】
前記被覆可撓性基板が、金属層で被覆されたポリマーの箔又はテープを含む請求項15に記載の積層構造体。
【請求項20】
前記第一及び/又は前記第二の可撓性構造体が、前記可撓性基板と前記可撓性基板に施されたコーティングとの間の中間層を含む請求項15に記載の積層構造体。
【請求項21】
前記中間層が、イットリウム安定化ジルコニウム層、CeO2層又はY23層を含む緩衝層を含む請求項20に記載の積層構造体。
【請求項22】
請求項12乃至21のいずれか1項に記載の積層構造体を含むコンデンサ。
【請求項23】
前記コンデンサが、請求項12乃至21のいずれか1項に記載の積層構造体を含む巻回型コンデンサである請求項22に記載のコンデンサ。
【請求項24】
前記積層構造体が、第一の可撓性構造体と第二の可撓性構造体とを含み、前記第一の可撓性構造体及び前記第二の可撓性構造体が金属層により相互に結合され、前記金属層は、金属コーティングを前記第一の可撓性構造体に施し、かつ金属コーティングを前記第二の可撓性構造体に施し、前記第一の可撓性構造体及び前記第二の可撓性構造体の被覆面を合わせ、前記第一の可撓性構造体と前記第二の可撓性構造体とを一緒にプレスして、前記第一の可撓性構造体と前記の第二の可撓性構造体との間で冷間圧接をすることによって形成される請求項23に記載のコンデンサ。
【請求項25】
前記第一の可撓性基板及び前記第二の可撓性基板が、金属基板とセラミック層とを含み、前記セラミック層が、20より高い比誘電率εr及び1μmより薄い厚さを有する請求項24に記載のコンデンサ。
【請求項26】
請求項12乃至21のいずれか1項に記載の積層構造体を含む超伝導体。

【図1】
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【図2】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−521224(P2006−521224A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502036(P2006−502036)
【出願日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050155
【国際公開番号】WO2004/073971
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(592014377)ナムローゼ・フェンノートシャップ・ベーカート・ソシエテ・アノニム (81)
【氏名又は名称原語表記】N V BEKAERT SOCIETE ANONYME
【Fターム(参考)】