説明

積層構造体及びその製造方法

【課題】紫外線照射による表面自由エネルギーの変化が大きい積層構造体並びに該積層構造体を有する電子素子アレイ、画像表示媒体及び画像表示装置を提供する。
【解決手段】積層構造体10は、基板11上に、ポリイミドを含む濡れ性変化層12及び導電体層13が順次積層されており、ポリイミドは、ポリアミド酸を脱水閉環させて得られ、ポリアミド酸は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を開環重付加させて得られ、ジアミンは、一般式(1)で表される化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造体、積層構造体の製造方法、電子素子アレイ、画像表示媒体、画像表示装置、ジアミン、ポリアミド酸及びポリイミドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機半導体材料を用いた有機薄膜トランジスタが精力的に研究されている。有機半導体材料を用いる利点として、フレキシビリティが高いこと、大面積化できること、製造プロセスが単純化できること、製造装置が安価であること等が挙げられる。
【0003】
有機薄膜トランジスタの特性を示すパラメータとして、電流のオンオフ比が用いられている。有機薄膜トランジスタにおいて、飽和領域でのソース・ドレイン電極間に流れるオン電流Idsは、式
ds=μCinW(V−VTH/2L
(式中、μは、電界効果移動度であり、Cinは、ゲート絶縁膜の単位面積当たりのキャパシタンスであり、式
in=εε/d
(式中、εは、ゲート絶縁膜の比誘電率であり、εは、真空の誘電率であり、dは、ゲート絶縁膜の厚さである。)
で表され、Wは、チャネル幅であり、Lは、チャネル長であり、Vは、ゲート電圧であり、VTHは、閾値電圧である。)
で表される。この式から、オン電流を大きくするためには、μを大きくすること、Lを小さくすること、Wを大きくすることが有効であることがわかる。このとき、μは、有機半導体材料の特性によるところが大きい。一方、L及びWは、有機薄膜トランジスタの構造に由来する。なお、一般に、Lを小さくするために、ソース・ドレイン電極間の距離を小さくするが、有機薄膜トランジスタは、μが小さいため、Lは、10μm以下、好ましくは、5μm以下が求められている。
【0004】
このようなソース・ドレイン電極のパターンは、インクジェット印刷法を用いて形成することが望まれている。インクジェット印刷法を用いると、パターンを直接描画することができるため、材料使用効率が高くなり、製造プロセスの簡略化及び低コスト化を実現することができる。しかしながら、インクジェット印刷法は、吐出量の少量化が困難であること、機械的な誤差等による着弾精度を考慮すると、30μm以下のパターンを形成することが困難である。
【0005】
そこで、紫外線を照射することにより表面自由エネルギーが変化する材料を含む濡れ性変化層に紫外線を照射して表面自由エネルギーを変化させた後、インクジェット印刷法を用いて、濡れ性変化層にソース・ドレイン電極のパターンを形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、紫外線を照射することによる表面自由エネルギーの変化をさらに大きくすることが望まれている。
【0007】
一方、特許文献2には、ベンゾフェノン構造を有するジアミンを用いて合成されるポリイミドの薄膜に紫外線を照射することによる溶解性の変化を利用して、パターニング可能な電子材料用薄膜やフォトレジスト等への応用展開が可能であることが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、紫外線を照射することによる表面自由エネルギーの変化が大きい積層構造体並びに該積層構造体を有する電子素子アレイ、画像表示媒体及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、紫外線を照射することによる表面自由エネルギーの変化が大きいポリイミド、該ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸及び該ポリイミドの構成単位となるジアミンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の積層構造体は、基板上に、ポリイミドを含む濡れ性変化層及び導電体層が順次積層されており、前記ポリイミドは、ポリアミド酸を脱水閉環させて得られ、前記ポリアミド酸は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を開環重付加させて得られ、前記ジアミンは、一般式
【0011】
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数が6以上20以下のアルキル基又は炭素数が6以上20以下のアルコキシ基である。)
で表される化合物又は一般式
【0012】
【化2】

(式中、Rは、炭素数が6以上20以下のアルキル基又は炭素数が6以上20以下のアルコキシ基である。)
で表される化合物を含む。
【0013】
本発明の積層構造体の製造方法は、基板上に、ポリイミドを含む濡れ性変化層を形成する工程と、前記濡れ性変化層の所定の領域に紫外線を照射する工程と、該濡れ性変化層の紫外線が照射された領域に導電体層を形成する工程を有し、前記ポリイミドは、ポリアミド酸を脱水閉環させて得られ、前記ポリアミド酸は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を開環重付加させて得られ、前記ジアミンは、一般式
【0014】
【化3】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数が6以上20以下のアルキル基又は炭素数が6以上20以下のアルコキシ基である。)
で表される化合物又は一般式
【0015】
【化4】

(式中、Rは、炭素数が6以上20以下のアルキル基又は炭素数が6以上20以下のアルコキシ基である。)
で表される化合物を含む。
【0016】
本発明の電子素子アレイは、本発明の積層構造体を有する。
【0017】
本発明の画像表示媒体は、本発明の電子素子アレイを有する。
【0018】
本発明の画像表示装置は、本発明の画像表示媒体を有する。
【0019】
本発明のジアミンは、一般式
【0020】
【化5】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数が6以上20以下のアルキル基又は炭素数が6以上20以下のアルコキシ基である。)
で表される化合物である。
【0021】
本発明のポリアミド酸は、本発明のジアミンを含むジアミンと、テトラカルボン酸二無水物を開環重付加させて得られる。
【0022】
本発明のポリイミドは、本発明のポリアミド酸を脱水閉環させて得られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、紫外線を照射することによる表面自由エネルギーの変化が大きい積層構造体並びに該積層構造体を有する電子素子アレイ、画像表示媒体及び画像表示装置を提供することができる。
【0024】
また、本発明によれば、紫外線を照射することによる表面自由エネルギーの変化が大きいポリイミド、該ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸及び該ポリイミドの構成単位となるジアミンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の積層構造体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の電子素子アレイの一例を示す図である。
【図3】本発明の画像表示媒体の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の画像表示装置の一例を示す斜視図である。
【図5】ジアミン(1)のHNMRスペクトルである。
【図6】ジアミン(1)のIRスペクトルである。
【図7】ポリイミド(1)のHNMRスペクトルである。
【図8】ポリイミド(1)のDSCサーモグラムである。
【図9】実施例3及び比較例3の接触角の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0027】
図1に、本発明の積層構造体の一例を示す。積層構造体10は、基板11上に、本発明のポリイミドを含む濡れ性変化層12が形成されている。このとき、濡れ性変化層12は、紫外線が照射されて、表面自由エネルギーが大きくなった紫外線照射領域12aと、紫外線が照射されていない紫外線非照射領域12bからなる。なお、紫外線照射領域12aの間には、幅が1〜5μmである紫外線非照射領域12bが形成されている。また、濡れ性変化層12の紫外線照射領域12a上には、導電体層13が形成されており、積層構造を有する。これにより、微細なパターンを有する導電体層13を簡便に形成することができる。
【0028】
基板11を構成する材料としては、特に限定されないが、ガラス;ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の樹脂;SUS等の金属等が挙げられ、フレキシビリティが要求される場合には、樹脂が好ましい。
【0029】
本発明のポリイミドは、本発明のポリアミド酸を、公知の方法を用いて、脱水閉環させて得られ、アミド結合の一部が残留しているものを含む。また、本発明のポリアミド酸は、本発明のジアミンを含むジアミンと、テトラカルボン酸二無水物を、公知の方法を用いて、開環重付加させて得られる。
【0030】
本発明のジアミンは、一般式(1)で表される化合物である。このとき、R及びRにおけるアルキル基及びアルコキシ基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。また、R及びRにおけるアルキル基及びアルコキシ基は、シクロアルキル基又はシクロアルキレン基を含んでいてもよい。
【0031】
及びRにおけるアルキル基及びアルコキシ基の炭素数が1〜5であると、濡れ性変化層12に紫外線を照射することによる表面自由エネルギーの変化が不十分となり、21以上であると、本発明のポリイミドの非プロトン性極性有機溶媒に対する溶解性が不十分となる。
【0032】
以下、本発明のジアミンの合成方法について説明する。
【0033】
一般式(1)において、R及びRがn−ドデシル基である、化学式
【0034】
【化6】

で表されるジアミン(1)の合成方法について説明する。まず、化学式
【0035】
【化7】

で表される1,4−ジドデシルベンゼンと、化学式
【0036】
【化8】

で表される3,5−ジニトロベンゾイルクロリドを求電子置換させ、化学式
【0037】
【化9】

で表されるジニトロ体(1)を得る。次に、ジニトロ体(1)を接触還元させ、ジアミン(1)を得る。
【0038】
次に、一般式(1)において、R及びRがn−ドデコキシ基であり、化学式
【0039】
【化10】

で表わされるジアミン(2)の合成方法について説明する。まず、化学式
【0040】
【化11】

で表わされるヒドロキノンの二カリウム塩と、1−ブロモドデカンを求核置換させ、化学式
【0041】
【化12】

で表わされるエーテル体(1)を得る。次に、エーテル体(1)と、3,5−ジニトロベンゾイルクロリドを求電子置換させ、化学式
【0042】
【化13】

で表されるジニトロ体(2)を得る。さらに、ジニトロ体(2)を接触還元させ、ジアミン(2)を得る。
【0043】
本発明のポリアミド酸を合成する際に用いられるジアミンは、本発明のジアミン以外に、芳香環式ジアミンをさらに含むことが好ましい。
【0044】
芳香環式ジアミンとしては、特に限定されないが、p−フェニレンジアミン、4,4−メチレンジアミン、4,4−オキシジアニリン、m−ビス(アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、p−ビス(アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2−ビス(アミノフェノキシ)フェニルプロパン、2,2−ビス(アミノフェノキシ)フェニルヘキサフルオロプロパン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0045】
また、ジアミンは、芳香環式ジアミンの代わりに、又は、芳香環式ジアミンと共に、一般式
【0046】
【化14】

(式中、nは1〜10の整数である。)
で表されるジアミノシロキサンをさらに含んでもよい。
【0047】
ジアミンの総量に対する本発明のジアミンのモル比は、通常、0.1〜0.7であり、0.2〜0.5が好ましい。ジアミンの総量に対する本発明のジアミンのモル比が0.1未満であると、濡れ性変化層12に紫外線を照射することによる表面自由エネルギーの変化が不十分となることがあり、0.7を超えると、本発明のポリイミドの非プロトン性極性有機溶媒に対する溶解性が不十分となることがある。
【0048】
本発明のポリアミド酸を合成する際に用いられるテトラカルボン酸二無水物は、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むことが好ましい。
【0049】
脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロオクテン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0050】
また、テトラカルボン酸二無水物は、脂環式テトラカルボン酸二無水物の代わりに、又は、脂環式テトラカルボン酸二無水物と共に、芳香環式テトラカルボン酸二無水物を含んでもよい。
【0051】
芳香環式テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、ビフタル酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0052】
テトラカルボン酸二無水物二無水物の総量に対する脂環式テトラカルボン酸二無水物のモル比は、通常、0.2〜1であり、0.5〜1が好ましい。テトラカルボン酸二無水物二無水物の総量に対する脂環式テトラカルボン酸二無水物のモル比が0.2未満であると、濡れ性変化層12に紫外線を照射することにより絶縁性が低下することがある。
【0053】
本発明のポリアミド酸は、数平均分子量が5×10〜5×10であることが好ましい。これにより、本発明のポリイミドのガラス転移点を200〜350℃にすることができる。
【0054】
なお、数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定されるポリスチレン換算の分子量である。
【0055】
濡れ性変化層12は、本発明のポリアミド酸が非プロトン性極性有機溶媒中に溶解している塗布液を基板11に塗布した後、本発明のポリアミド酸を脱水閉環させることにより形成することができる。
【0056】
非プロトン性極性有機溶媒としては、特に限定されないが、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0057】
塗布液を基板11に塗布する方法としては、特に限定されないが、ディップコート法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、インクジェット法、スプレー法、刷毛塗り法等が挙げられる。
【0058】
本発明のポリアミド酸を脱水閉環させる反応率は、90〜100%であることが好ましく、95〜100%がさらに好ましい。反応率が90%未満であると、濡れ性変化層12を有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜として用いる場合に、濡れ性変化層12が有機半導体層と良好な界面を形成できないことがある。その結果、有機薄膜トランジスタの閾値電圧の変動が大きくなる。
【0059】
なお、反応率は、ジメチルスルホキシド(DMSO)−dに溶解させて、ポリイミドのHNMRを測定し、残留したアミド結合の比率をピークの面積比から算出することにより測定することができる。
【0060】
本発明のポリイミドは、非プロトン性極性有機溶媒に可溶であることが好ましい。この場合、濡れ性変化層12は、本発明のポリイミドが非プロトン性極性溶媒中に溶解している塗布液を基板11に塗布することにより形成することができる。このとき、塗布液は、本発明のポリアミド酸をさらに含んでいてもよい。
【0061】
濡れ性変化層12は、側鎖にアルキル基又はアルコキシ基を有する本発明のポリイミドを含むため、疎水性となり、表面自由エネルギーが小さい。
【0062】
一方、濡れ性変化層12に紫外線を照射すると、本発明のポリイミドが光分解するため、親水性となる、即ち、表面自由エネルギーが大きくなると考えられる。本発明のポリイミドが光分解すると、ラジカルが生成し、生成したラジカルは、直ちに、雰囲気に含まれる水分と反応し、カルボキシル基やヒドロキシル基が生成する。
【0063】
なお、濡れ性変化層12は、本発明のジアミンの代わりに、一般式(2)で表される化合物を用いる以外は、本発明のポリイミドと同一のポリイミドを、本発明のポリイミドの代わりに、又は、本発明のポリイミドと共に、含んでもよい。
【0064】
このとき、一般式(2)で表される化合物のRにおけるアルキル基及びアルコキシ基は、一般式(1)で表される化合物のRにおけるアルキル基及びアルコキシ基と同様である。
【0065】
また、濡れ性変化層12は、絶縁性樹脂をさらに含んでいてもよい。
【0066】
絶縁性樹脂としては、特に限定されないが、ポリイミド、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、シルセスキオキサン、ポリビニルフェノール、ポリカーボネート、フッ素系樹脂、ポリ(p−キシリレン)等が挙げられる。
【0067】
さらに、濡れ性変化層12は、成膜性樹脂をさらに含んでいてもよい。
【0068】
濡れ性変化層12の厚さは、通常、30nm〜3μmであり、50nm〜1μmが好ましい。濡れ性変化層12の厚さが30nm未満であると、均一に形成することが困難になることがあり、3μmを超えると、表面の形状が悪化することがある。
【0069】
導電体層13は、導電性材料を含む塗布液を塗布した後、加熱したり、紫外線を照射したりすることにより形成することができる。
【0070】
導電性材料としては、特に限定されないが、金、銀、銅、アルミニウム、カルシウム等の金属;カーボンブラック、フラーレン類、カーボンナノチューブ等の炭素材料;ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフルオレン及びこれらの誘導体等の有機π共役ポリマー等が挙げられ、二種以上併用してもよい。また、ゲート電極及びソース・ドレイン電極を形成する際に、それぞれ異なる導電性材料を用いてもよい。
【0071】
導電性材料を含む塗布液としては、特に限定されないが、導電性材料又はその前駆体が溶媒中に溶解している溶液、導電性材料又はその前駆体が溶媒中に分散している分散液等が挙げられる。
【0072】
溶媒としては、特に限定されないが、濡れ性変化層12のダメージが小さいことから、水、各種アルコール類等が挙げられる。また、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、n−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素等の溶媒も、濡れ性変化層12のダメージが小さい範囲において、用いることができる。
【0073】
導電性材料を含む塗布液としては、銀、金、ニッケル、銅等の金属粒子が有機溶媒又は水中に分散している分散液、ドープドPANI(ポリアニリン)の水溶液、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)にPSS(ポリスチレンスルホン酸)をドープした導電性高分子の水溶液等が挙げられる。
【0074】
導電性材料を含む塗布液を塗布する方法としては、特に限定されないが、スピンコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法等が挙げられる。中でも、濡れ性変化層12の表面自由エネルギーの影響を受けやすいことから、インクジェット法が好ましい。
【0075】
インクジェットプリンタに使用されるレベルの通常のインクジェットヘッドは、解像度が30μm、位置合わせ精度が±15μm程度であるが、濡れ性変化層12における表面自由エネルギーの差を利用することにより、微細なパターンを有する導電体層13を形成することができる。
【0076】
本発明の積層構造体は、有機薄膜トランジスタのゲート電極及びその配線、ソース・ドレイン電極及びその配線等に適用することができる。
【0077】
図2に、本発明の電子素子アレイの一例として、薄膜トランジスタアレイを示す。薄膜トランジスタアレイ30は、ボトムゲート型の薄膜トランジスタ20を複数有する。なお、図2(a)及び(b)は、それぞれ断面図及び上面図である。また、図2において、図1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0078】
薄膜トランジスタ20は、基板11上に、ゲート電極21が形成されている。また、ゲート電極21が形成された基板11上に、ゲート絶縁膜として、濡れ性変化層12が形成されており、濡れ性変化層12の紫外線照射領域に、ソース・ドレイン電極として、導電層13が形成されている。さらに、ソース・ドレイン電極間のチャネル領域に半導体層22が形成されている。これにより、微細なパターンを有するゲート電極及びソース・ドレイン電極を簡便に形成することができる。
【0079】
半導体層22は、無機半導体層及び有機半導体層のいずれであってもよいが、薄膜トランジスタの製造プロセスを簡略化、低コスト化できることから、有機半導体層が好ましい。
【0080】
無機半導体層を構成する材料としては、特に限定されないが、CdSe、CdTe、Si等が挙げられる。
【0081】
無機半導体層を形成する方法としては、特に限定されないが、スパッタ等の真空プロセスを用いる方法、ゾル・ゲル法等が挙げられる。
【0082】
有機半導体層を構成する材料としては、特に限定されないが、ペンタセン、アントラセン、テトラセン、フタロシアニン等の有機低分子;ポリアセチレン系導電性高分子;ポリ(p−フェニレン)及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体等のポリフェニレン系導電性高分子;ポリピロール及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリフラン及びその誘導体等の複素環系導電性高分子;ポリアニリン及びその誘導体等のイオン性導電性高分子等が挙げられる。
【0083】
有機半導体層を形成する方法としては、特に限定されないが、スピンコート法、スプレーコート法、印刷法、インクジェット法等が挙げられる。
【0084】
なお、ゲート電極21を形成する代わりに、基板11上に、濡れ性変化層12を形成し、濡れ性変化層12の紫外線照射領域に、ゲート電極として、導電層13を形成してもよい。
【0085】
このとき、二つの濡れ性変化層12に含まれる本発明のポリイミドは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、二つの導電体層13に含まれる導電性材料は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0086】
また、濡れ性変化層12の体積抵抗率が小さい場合は、濡れ性変化層12よりも体積抵抗率が大きい絶縁体層及び濡れ性変化層12を順次積層することにより、ゲート絶縁膜を形成してもよい。このようなゲート絶縁膜に紫外線を照射すると、濡れ性変化層12が紫外線を吸収するため、絶縁体層の絶縁性の低下を抑制することができる。
【0087】
絶縁体層を構成する材料としては、特に限定されないが、ポリイミド、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、シルセスキオキサン、ポリビニルフェノール、ポリカーボネート、フッ素系樹脂、ポリ(p−キシリレン)等が挙げられる。
【0088】
絶縁体層を形成する方法としては、特に限定されないが、転写印刷法、スピンコート法、ディップコート法等が挙げられる。
【0089】
図3に、本発明の画像表示媒体の一例として、電気泳動パネルを示す。電気泳動パネル40は、透明な基板41上に透明な電極42が形成されており、電極42上に、電気泳動素子としてのマイクロカプセル43aと、バインダー43bからなる画像表示層43が形成されている。このとき、マイクロカプセル43aは、例えば、白色の酸化チタン粒子及びオイルブルーで着色されたアイソパーL(エクソンモービル化学社製)を内包する。さらに、画像表示層43と、アクティブマトリックス基板としての薄膜トランジスタアレイ30が接合されている。
【0090】
なお、本発明の画像表示媒体は、電気泳動パネルに限定されず、アクティブマトリックス基板と、液晶素子、有機EL素子等の画像表示素子を組み合わせた、液晶パネル、有機ELパネル等であってもよい。また、本発明の画像表示媒体は、電子ペーパーとして用いることができる。
【0091】
このとき、本発明のポリイミドは、積層構造体以外に、液晶素子における液晶配向膜、有機EL素子におけるバンクにも適用することができる。
【0092】
図4に、本発明の画像表示装置の一例として、ポケットPCを示す。ポケットPC50は、フラット画面として、電気泳動パネル40を有し、入力部51から画像情報を入力することにより、画像が表示される。
【0093】
なお、本発明の電子素子アレイは、画像表示媒体以外に、太陽電池、RFIDタグ等に適用することができる。
【0094】
また、本発明の画像表示媒体は、画像表示装置以外に、複写機等に適用することができ、自動車、飛行機等の移動交通媒体のシート部、フロントガラス面等に埋め込むこともできる。
【実施例】
【0095】
[実施例1]
(ジアミンの合成)
1,4−ジドデシルベンゼン1g、3,5−ジニトロベンゾイルクロリド0.61g及びニトロメタンを2口フラスコに入れ、氷水浴で10℃以下に冷却した後、攪拌しながら塩化アルミニウム1.6gを滴下した。次に、100℃で24時間加熱還流した後、室温まで冷却した。さらに、ジクロロメタンを少量加えて、析出した生成物を溶解させた後、油層を洗浄し、真空乾燥させ、ジニトロ体(1)を得た。
【0096】
ジニトロ体(1)3.48gを耐圧ビンに入れた後、エタノール及びテトラヒドロフランを加えた。次に、パラジウム炭素を少量加えた後、接触還元装置を用いて約2時間接触還元させた。さらに、パラジウム炭素を除去した後、真空乾燥させた。得られた生成物をカラムで精製し、ジアミン(1)を得た。
【0097】
図5、6に、ジアミン(1)のHNMRスペクトル、IRスペクトルを示す。
【0098】
(ポリアミド酸の合成)
ジアミン(1)0.5mol及び化学式
【0099】
【化15】

で表されるジアミン0.5molを容器に入れた後、N−メチル−2−ピロリドンを加え、溶解させた。次に、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら化学式
【0100】
【化16】

で表されるテトラカルボン酸二無水物1molを滴下し、室温で24時間開環重付加させて、化学式
【0101】
【化17】

で表されるポリアミド酸(1)を得た。ポリアミド酸(1)は、数平均分子量が5500であった。
【0102】
(ポリイミドの合成)
ポリアミド酸(1)にN−メチル−2−ピロリドンを加えた後、ピリジン及び無水酢酸を添加し、アルゴン雰囲気下、120℃で4時間脱水閉環させた。得られた反応液を、攪拌しているメタノール中に滴下して沈殿させた後、減圧濾過し、真空乾燥させ、化学式
【0103】
【化18】

で表されるポリイミド(1)を得た。
【0104】
図7、8に、ポリイミド(1)のHNMRスペクトル、DSCサーモグラムを示す。
【0105】
(接触角)
スピンコート法を用いて、無機アルカリガラス製の基板11上に、ポリイミド(1)の10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液を塗布した後、オーブンを用いて、不活性ガス雰囲気下、200℃で焼成し、厚さが100nmの濡れ性変化層12を形成した。
【0106】
高圧水銀ランプを用いて、波長が254nmの紫外線を濡れ性変化層12に照射した後、銀ナノ粒子を水系の分散媒中に分散させた分散液(以下、銀ナノインクという)の接触角を、液滴法を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
【0107】
(パターニング性)
スピンコート法を用いて、無機アルカリガラス製の基板11上に、ポリイミド(1)の10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液を塗布した後、オーブンを用いて、不活性ガス雰囲気下、200℃で焼成し、厚さが100nmの濡れ性変化層12を形成した。次に、高圧水銀ランプを用いて、5μm間隔のライン形状のフォトマスク越しに、波長が254nmの紫外線を濡れ性変化層12に照射した。さらに、インクジェット法を用いて、紫外線照射領域に銀ナノインクを塗布した後、オーブンを用いて、不活性ガス雰囲気下、200℃で焼成することにより、導電体層13を形成し、積層構造体10を得た(図1参照)。
【0108】
金属顕微鏡を用いて、導電体層13を観察し、パターニング性を評価した。評価結果を表1に示す。なお、5μm間隔のライン形状の導電体層13が90%以上形成されているものを○、10%以上90%未満形成されているものを△、10%未満形成されているものを×として、判定した。
【0109】
[実施例2]
(ジアミンの合成)
ヒドロキノン10g、炭酸カリウム75.31g及びN,N−ジメチルホルムアミドを三口セパラブルフラスコに入れ、アルゴン雰囲気下、オイルバスで70℃に加熱した後、攪拌しながら1−ブロモドデカン45gを滴下し、70℃で24時間攪拌した。次に、室温まで冷却した後、反応液を純水中に投入して沈殿させた。さらに、沈殿をろ過した後、洗浄する操作を繰り返した。次に、酢酸エチルとエタノールの混合液で再結晶した後、真空乾燥させ、エーテル体(1)を得た。
【0110】
エーテル体(1)1g、3,5−ジニトロベンゾイルクロリド0.61g及び二硫化炭素を二口フラスコに入れ、氷水浴で10℃以下に冷却した後、攪拌しながら塩化アルミニウム1.6gを滴下した。次に、40℃で24時間加熱還流した後、室温まで冷却した。さらに、反応液を氷水と塩酸の混合液でクエンチした後、分液漏斗を用いて、油層を、純水及び水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、真空乾燥させ、ジニトロ体(2)を得た。
【0111】
ジニトロ体(1)の代わりに、ジニトロ体(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ジアミン(2)を得た。
【0112】
(ポリアミド酸の合成)
ジアミン(1)の代わりに、ジアミン(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、化学式
【0113】
【化19】

で表されるポリアミド酸(2)を得た。ポリアミド酸(2)は、数平均分子量が6500であった。
【0114】
(ポリイミドの合成)
ポリアミド酸(1)の代わりに、ポリアミド酸(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、化学式
【0115】
【化20】

で表されるポリイミド(2)を得た。
【0116】
(接触角)
ポリイミド(1)の10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液の代わりに、ポリイミド(2)の10質量%γ−ブチルラクトン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、銀ナノインクの接触角を測定した。測定結果を表1に示す。
【0117】
(パターニング性)
ポリイミド(1)の10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液の代わりに、ポリイミド(2)の10質量%γ−ブチルラクトン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、パターニング性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0118】
[比較例1]
(ポリアミド酸の合成)
ジアミン(1)の代わりに、化学式
【0119】
【化21】

で表されるジアミンを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド酸を得た。ポリアミド酸は、数平均分子量が10000であった。
【0120】
(ポリイミドの合成)
ポリアミド酸(1)の代わりに、得られたポリアミド酸を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリイミドを得た。
【0121】
(接触角)
ポリイミド(1)の10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液の代わりに、得られたポリイミドの10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、銀ナノインクの接触角を測定した。測定結果を表1に示す。
【0122】
(パターニング性)
ポリイミド(1)の10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液の代わりに、得られたポリイミドの10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、パターニング性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0123】
[比較例2]
(ポリアミド酸の合成)
ジアミン(1)の代わりに、化学式
【0124】
【化22】

で表されるジアミンを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド酸を得た。ポリアミド酸は、数平均分子量が9000であった。
【0125】
(ポリイミドの合成)
ポリアミド酸(1)の代わりに、得られたポリアミド酸を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリイミドを得た。
【0126】
(接触角)
ポリイミド(1)の10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液の代わりに、得られたポリイミドの10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、銀ナノインクの接触角を測定した。測定結果を表1に示す。
【0127】
(パターニング性)
ポリイミド(1)の10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液の代わりに、得られたポリイミドの10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、パターニング性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0128】
【表1】

表1から、実施例1の濡れ性変化層12は、波長が254nmの紫外線を2J/cm照射すると、ポリイミド(1)が光分解するため、銀ナノインクの接触角が33°から5°まで低下することがわかる。
【0129】
また、実施例2の濡れ性変化層12は、波長が254nmの紫外線を2J/cm照射すると、ポリイミド(2)が光分解するため、銀ナノインクの接触角が32°から5°まで低下することがわかる。
【0130】
これに対して、比較例1の濡れ性変化層は、波長が254nmの紫外線を5J/cm照射しても、銀ナノインクの接触角が26°から6°まで低下することがわかる。
【0131】
また、比較例2の濡れ性変化層は、波長が254nmの紫外線を5J/cm照射しても、銀ナノインクの接触角が35°から9°まで低下することがわかる。
【0132】
その結果、実施例1、2の濡れ性変化層12は、比較例1、2の濡れ性変化層よりも、波長が254nmの紫外線を照射することによる表面自由エネルギーの変化が大きいことがわかる。
【0133】
また、表1から、パターニング性の評価結果は、接触角の変化の評価結果と相関していることがわかる。
【0134】
[実施例3]
(ポリアミド酸の合成)
ジアミン(1)の代わりに、化学式
【0135】
【化23】

で表されるジアミン(3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、化学式
【0136】
【化24】

で表されるポリアミド酸(3)を得た。ポリアミド酸(3)は、数平均分子量が6000であった。
【0137】
(ポリイミドの合成)
ポリアミド酸(1)の代わりに、ポリアミド酸(3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、化学式
【0138】
【化25】

で表されるポリイミド(3)を得た。
【0139】
(接触角)
ポリイミド(1)の10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液の代わりに、ポリイミド(3)の10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、銀ナノインクの接触角を測定した。測定結果を図9に示す。
【0140】
(パターニング性)
ポリイミド(1)の10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液の代わりに、ポリイミド(3)の10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、パターニング性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0141】
[比較例3]
(ポリアミド酸の合成)
ジアミン(1)の代わりに、化学式
【0142】
【化26】

で表されるジアミンを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド酸を得た。ポリアミド酸は、数平均分子量が7000であった。
【0143】
(ポリイミドの合成)
ポリアミド酸(1)の代わりに、得られたポリアミド酸を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリイミドを得た。
【0144】
(接触角)
ポリイミド(1)の10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液の代わりに、得られたポリイミドの10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、銀ナノインクの接触角を測定した。測定結果を図9に示す。
【0145】
(パターニング性)
ポリイミド(1)の10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液の代わりに、得られたポリイミドの10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、パターニング性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0146】
【表2】

図9から、実施例3の濡れ性変化層12は、波長が254nmの紫外線を2J/cm照射すると、ポリイミド(3)が光分解するため、銀ナノインクの接触角が25°から5°まで低下することがわかる。
【0147】
これに対して、比較例3の濡れ性変化層は、波長が254nmの紫外線を9J/cm照射すると、銀ナノインクの接触角が28°から5°まで低下することがわかる。
【0148】
その結果、実施例3の濡れ性変化層12は、比較例3の濡れ性変化層よりも、低い紫外線照射量で表面自由エネルギーが変化することがわかる。
【0149】
また、図9及び表2から、パターニング性の評価結果は、接触角の変化の評価結果と相関していることがわかる。
【0150】
[薄膜トランジスタアレイ1の作製]
メタルマスクを用いて、真空下でアルミニウムを蒸着することにより、ガラス製の基板11上に、厚さが50nmのゲート電極21を形成した後、ゲート電極21が形成された基板11上に、厚さが500nmのパリレンからなるゲート絶縁膜を形成した。次に、ゲート絶縁膜が形成された基板11上に、スピンコート法を用いて、実施例3のポリイミド(3)のN−メチル−2−ピロリドン溶液を塗布した後、オーブンを用いて、不活性ガス雰囲気下、200℃で焼成し、厚さが100nmの濡れ性変化層12を形成した。さらに、高圧水銀ランプを用いて、フォトマスク越しに波長が254nmの紫外線を1J/cm濡れ性変化層12に照射した。次に、インクジェット法を用いて、紫外線照射領域に銀ナノインクを塗布した後、オーブンを用いて、不活性ガス雰囲気下、200℃で焼成することにより、導電体層13(チャネル長が5μmのソース電極及びドレイン電極)を形成した。さらに、マイクロコンタクトプリント法を用いて、ソース電極及びドレイン電極の間のチャネル領域に、化学式
【0151】
【化27】

で表される化合物のキシレン溶液を塗布した後、オーブンを用いて、100℃で加熱することにより、厚さが30nmの半導体層22を形成し、薄膜トランジスタアレイ1を得た(図2参照)。薄膜トランジスタアレイ1は、32×32個の薄膜トランジスタ20を500μmピッチで有する。
【0152】
[薄膜トランジスタアレイ2の作製]
スピンコート法を用いて、無機アルカリガラス製の基板11上に、実施例3のポリイミド(3)のN−メチル−2−ピロリドン溶液を塗布した後、オーブンを用いて、不活性ガス雰囲気下、180℃で焼成し、厚さが80nmの濡れ性変化層を形成した。次に、高圧水銀ランプを用いて、フォトマスク越しに波長が254nmの紫外線を1J/cm濡れ性変化層に照射した。さらに、インクジェット法を用いて、紫外線照射領域に銀ナノインクを塗布した後、オーブンを用いて、不活性ガス雰囲気下、180℃で焼成することにより、ゲート電極21を形成した。次に、スピンコート法を用いて、実施例3のポリイミド(3)及びポリイミドCT4112(京セラケミカル社製)のN−メチル−2−ピロリドン溶液を塗布した後、オーブンを用いて、不活性ガス雰囲気下、180℃で焼成することにより、厚さが800nmの濡れ性変化層12(ゲート絶縁膜)を形成した。さらに、高圧水銀ランプを用いて、フォトマスク越しに波長が254nmの紫外線を1J/cm濡れ性変化層12に照射した。次に、インクジェット法を用いて、紫外線照射領域に銀ナノインクを塗布した後、オーブンを用いて、不活性ガス雰囲気下、150℃で焼成することにより、導電体層13(チャネル長が5μmのソース電極及びドレイン電極)を形成した。さらに、薄膜トランジスタアレイ1と同様にして、ソース電極及びドレイン電極の間のチャネル領域に、厚さが30nmの半導体層22を形成し、薄膜トランジスタアレイ2を得た。薄膜トランジスタアレイ2は、32×32個の薄膜トランジスタ20を500μmピッチで有する。
【0153】
[薄膜トランジスタアレイ3の作製]
実施例3のポリイミド(3)のN−メチル−2−ピロリドン溶液の代わりに、比較例3のポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液を用い、波長が254nmの紫外線を9J/cm濡れ性変化層に照射した以外は、薄膜トランジスタアレイ1と同様にして、薄膜トランジスタアレイ3を得た。
【0154】
表3に、薄膜トランジスタアレイのトランジスタ特性の評価結果を示す。
【0155】
【表3】

表3から、薄膜トランジスタアレイ1、2は、電界効果移動度が大きいことに加え、ゲートリーク電流が小さく、オンオフ比が大きいことがわかる。
【0156】
これに対して、薄膜トランジスタアレイ3は、電界効果移動度が小さいことに加え、ゲートリーク電流が大きく、オンオフ比が小さい。これは、波長が254nmの紫外線の照射量が多いためであると考えられる。
【0157】
[電気泳動パネルの作製]
薄膜トランジスタアレイ2を用いて、電気泳動パネル(図3参照)を作製した。具体的には、酸化チタン粒子とオイルブルーで着色したアイソパーを内包するマイクロカプセル43aと、ポリビニルアルコール43bの水溶液を混合した塗布液を、ポリカーボネート製の透明基板41上に形成されたITO製の透明電極42上に塗布して、マイクロカプセル43aとポリビニルアルコール43bからなる画像表示層43を形成した。さらに、画像表示層43と、薄膜トランジスタアレイ30を、基板11及び透明基板41が最外面となるように接着させ、電気泳動パネル40を得た。
【0158】
電気泳動パネル40のゲート電極21に繋がるバスラインに走査信号用のドライバーICを接続し、ソース電極に繋がるバスラインにデータ信号用のドライバーICを接続し、0.5秒毎に画面の切り替えを行ったところ、良好な静止画像を表示することができた。
【符号の説明】
【0159】
10 積層構造体
11 基板
12 濡れ性変化層
12a 紫外線照射領域
12b 紫外線非照射領域
13 導電体層
20 薄膜トランジスタ
21 ゲート電極
22 半導体層
30 薄膜トランジスタアレイ
40 電気泳動パネル
50 ポケットPC
【先行技術文献】
【特許文献】
【0160】
【特許文献1】特開2008−41951号公報
【特許文献2】特開平11−140186号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、ポリイミドを含む濡れ性変化層及び導電体層が順次積層されており、
前記ポリイミドは、ポリアミド酸を脱水閉環させて得られ、
前記ポリアミド酸は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を開環重付加させて得られ、
前記ジアミンは、一般式
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数が6以上20以下のアルキル基又は炭素数が6以上20以下のアルコキシ基である。)
で表される化合物又は一般式
【化2】

(式中、Rは、炭素数が6以上20以下のアルキル基又は炭素数が6以上20以下のアルコキシ基である。)
で表される化合物を含むことを特徴とする積層構造体。
【請求項2】
前記ジアミンは、芳香環式ジアミンをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の積層構造体。
【請求項3】
前記テトラカルボン酸二無水物は、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むことを特徴とする1又は2に記載の積層構造体。
【請求項4】
前記ポリアミド酸は、数平均分子量が5×10以上5×10以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項5】
基板上に、ポリイミドを含む濡れ性変化層を形成する工程と、
前記濡れ性変化層の所定の領域に紫外線を照射する工程と、
該濡れ性変化層の紫外線が照射された領域に導電体層を形成する工程を有し、
前記ポリイミドは、ポリアミド酸を脱水閉環させて得られ、
前記ポリアミド酸は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を開環重付加させて得られ、、
前記ジアミンは、一般式
【化3】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数が6以上20以下のアルキル基又は炭素数が6以上20以下のアルコキシ基である。)
で表される化合物又は一般式
【化4】

(式中、Rは、炭素数が6以上20以下のアルキル基又は炭素数が6以上20以下のアルコキシ基である。)
で表される化合物を含むことを特徴とする積層構造体の製造方法。
【請求項6】
前記基板上に、可溶性を有する前記ポリイミド及び/又は前記ポリアミド酸を含む塗布液を塗布して前記濡れ性変化層を形成することを特徴とする請求項5に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の積層構造体を有することを特徴とする電子素子アレイ。
【請求項8】
請求項7に記載の電子素子アレイを有することを特徴とする画像表示媒体。
【請求項9】
請求項8に記載の画像表示媒体を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項10】
一般式
【化5】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数が6以上20以下のアルキル基又は炭素数が6以上20以下のアルコキシ基である。)
で表される化合物であることを特徴とするジアミン。
【請求項11】
請求項10に記載のジアミンを含むジアミンと、テトラカルボン酸二無水物を開環重付加させて得られることを特徴とするポリアミド酸。
【請求項12】
請求項11に記載のポリアミド酸を脱水閉環させて得られることを特徴とするポリイミド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−254568(P2012−254568A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129010(P2011−129010)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】