説明

積層物品の製造方法

【課題】積層体と該積層体に部分的に接合された表層シートを有する積層物品を製造するに際し、表層シートにたわみやしわが発生することを防止することができると共に、レーザー光による加工が、前記積層体における表層シートの対向面に対して悪影響を与えることも防止することができる、積層物品の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の積層物品の製造方法は、複数のシートが積層一体化された積層体と、該積層体上に、部分的に接合された状態で配されている表層シートとを有する積層物品の製造方法であり、複数のシートが積層一体化された積層体6A上に表層シート7Aを重ねた構成を有する被加工体1Aにおける、表層シート7Aが積層体6Aに接合されていない部分76に対して、該表層シート7A側からレーザー光Rを照射し、該表層シート7Aのみに開孔加工、切断加工又はミシン目加工を施す工程を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、連続搬送される帯状シートにレーザー光を用いて開孔加工等を施すことが知られている。例えば、特許文献1には、不織布単体もしくは不織布を含む積層体に、レーザー光を照射し、ミシン目、抜き、断裁等の加工を施すことが記載されている。
しかし、開孔加工を施した不織布を他の部材に重ねた製品を製造する際に、開孔加工を施した不織布を、更に搬送させた後、他の部材に重ねて切断すると、開孔加工を施した不織布に、たわみやしわが発生し易く、所定位置へ加工部分を精度良く配置することが難しく、性能上及び外観の不良の原因となり易い。
【0003】
また、特許文献2には、基材及び該基材上に設けられた粘着剤層を有する粘着シート上に、該粘着剤層を介して被加工物が固定された構成の積層体に対して、被加工物側からレーザー光を照射し、該被加工物に対して、孔あけ加工、マーキング、溝加工、スクライビング加工、又はトリミング加工等を施すことが記載されている。
しかし、特許文献2においては、レーザー加工にあたり、被加工物の下に粘着シートを配する必要があるため、当該技術を、積層物品の一部のシートにレーザー加工を施す場合に適用すれば、当該積層物品の層間に該粘着シートを挿入、剥離する工程が必要となる。また、粘着シートは、通常、最終製品に不要な材料でありコストアップにも繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−227062号公報
【特許文献2】特開2005−279698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る積層物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数のシートが積層一体化された積層体と、該積層体上に、部分的に接合された状態で配されている表層シートとを有する積層物品の製造方法であって、複数のシートが積層一体化された積層体上に、前記表層シートを重ねた構成を有する被加工体における、前記表層シートが前記積層体に接合されていない部分に対して、該表層シート側からレーザー光を照射し、該表層シートのみに開孔加工、切断加工又はミシン目加工を施す工程を具備する、積層物品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の積層物品の製造方法によれば、積層体と該積層体に部分的に接合された表層シートを有する積層物品を製造するに際し、表層シートにたわみやしわが発生することを効果的に防止することができると共に、レーザー光による加工が、前記積層体における表層シートの対向面に対して悪影響を与えることも効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の一実施態様で製造する加温具の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の加温具の分解斜視図である。
【図3】図3は、図1の加温具の表層シートを左右に分割して一対の耳掛け片を生じさせた状態を示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明の一実施態様における加温具(積層物品)の製造工程のを示す概略図である。
【図5】図5は、積層体上に重ねた状態の表層シートにレーザー光による加工を施す様子を示す概略図である。
【図6】図6は、レーザー光を照射する部位の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。
本発明の一実施態様においては、本発明における積層物品として、図1に示す加温具1を製造する。
加温具1は、図2に示すように、複数のシート2〜5が積層一体化された積層体6と、該積層体6上に、部分的に接合された状態で配されている表層シート7とを有する。表層シート7は、接合部71において、積層体6に接合されている一方、それ以外の部位においては、積層体6に接合されていない。
【0010】
積層体6は、図2に示すように、2枚のシート状発熱体3,3と、シート状発熱体3,3を挟む、非通気性の第1シート2及び通気性の第2シート4と、積層体6における肌に当接させる面を形成する第3シート5とを有しており、第1〜第3シート2,4及び5は、シート状発熱体3,3を囲む外周シール部61において互いに接合されている。
シート状発熱体3,3は、被酸化性金属粉末、繊維材料及び電解質等を含有し、空気中の酸素と被酸化性金属粉末との酸化反応により発熱する。
他方、表層シート7には、表層シート7を、図3に示すように左右の耳掛け片70A,70Bに分割するためのミシン目72と、耳掛け片70A,70Bを耳に掛けるための耳掛け孔73と、耳掛け孔73の周縁から延びる2種類の切り込み74,75とが形成されている。加温具1においては、耳掛け孔73が、身体に係合可能な係合部として機能する。
【0011】
そして、加温具1を使用する際には、表層シート7を、図3に示すように、ミシン目72の位置で左右に分割して一対の耳掛け片70A,70Bを生じさせ、それらの耳掛け片70A,70Bの耳掛け用孔73を左右両耳に掛けることで、積層体6の第3シート5からなる面を目に当てた状態に固定する。
【0012】
加温具1の好ましい製造方法の一例を、図4を参照して説明すると、シート状発熱体3の製造中間体である2本の帯状中間体31,31を、カッターロール11aと受けロール11bとを備えた切断装置11に導入し、順次、所定長さに切断して毎葉の中間体32を得る。毎葉の中間体32,32は、受けロール11bの周面に吸着保持されつつ搬送されて、帯状の第1シート2A上に順次配置される。帯状又は毎葉の中間体31,32は、例えば、被酸化性金属粉末及び繊維状物等を含有する帯状のシート状物であり、シート状発熱体3の製造中間体である。
【0013】
毎葉の中間体32は、バキュームコンベア12等により、塗布液の塗布部13に搬送される。塗布液の塗布部13においては、毎葉の中間体32に対して、電解質を含む塗布液13aが塗布される。中間体32は、電解質を含む塗布液13aが塗布されることで、シート状発熱体3となる。塗布液13aの塗布手段としては、塗布液を塗布し得る各種公知の液塗布手段を用いることができる。例えば、ノズルによる滴下又は噴霧、ブラシによる塗布、ダイコーティング等が用いられるが、周囲への塗布液の飛散やそれによる製造設備の汚染防止等の点からノズルによる滴下もしくは噴霧することが好ましい。
【0014】
次いで、帯状の第1シート2Aにおける、シート状発熱体3が配置されている面側に、帯状の第2のシート4A及び帯状の第3シート5Aが順次合流されて、それらが、外周シール装置14に導入される。外周シール装置14においては、シールロール14aとアンビルロール14bとの間で、帯状の第1シート2A,帯状の第2シート4A及び帯状の第3シート5Aが、加熱及び加圧され、これらの第1〜第3シートが、シート状発熱体3,3を囲む外周部分において互いに接合される。この接合により、前述した加温具1の外周シール部61が形成されると共に、複数のシート2A,4A及び5Aが積層一体化された帯状の積層体6Aが得られる。
【0015】
そして、この帯状の積層体6Aに対して、帯状の表層シート7Aを合流させることにより、帯状の積層体6Aに帯状の表層シート7Aを重ねた構成を有する被加工体1Aを得、その被加工体1Aを、表層シートシール装置15に導入する。
表層シートシール装置15においては、シールロール15aとアンビルロール15bとの間で、被加工体1Aの長手方向の両側部が、加熱及び加圧され、帯状の第1シート2Aと帯状の表層シート7Aとが互いに接合される。この接合により、被加工体1Aの両側部に、図5に示すような、帯状の積層体6Aと帯状の表層シート7Aとが部分的に接合された表層シート接合部71Aが形成される。この表層シート接合部71Aは、個々の加温具1に分割されたときに、その一部が、前述した接合部71を構成する。
【0016】
本実施態様においては、この接合部71Aが形成された被加工体1Aに対して、図5に示すように、レーザー光照射装置16を用いて、表層シート7A側からレーザー光Rを照射し、表層シート7Aに対して、開孔加工、切断加工及びミシン目加工を施す。
レーザー光Rは、被加工体1Aにおける、表層シート7が帯状の積層体6Aに接合されていない部分76(以下、非接合部分76ともいう)に対して照射する。図5に示す実施態様における非接合部分76は、被加工体1Aの長手方向の両側に形成された左右の表層シート接合部71Aどうし間の部分である。
【0017】
本実施態様における開孔加工は、帯状の表層シート7Aに対して、前述した耳掛け孔73を形成する加工であり、耳掛け孔73の開孔周縁の形状と同形状となるように、表層シート7Aを環状に切断する。この開孔加工による切断線又は切断予定線を、図5に符号73Aで示す。本実施態様における切断加工は、前述した切り込み74,75を形成する加工であり、切り込み74,75の形状と同形状となるように、表層シート7Aを切断する。本実施形態におけるミシン目加工は、帯状の表層シート7Aに対して、前述したミシン目72を形成する加工であり、表層シート7Aにおける、幅方向の中央部を、長手方向に沿って間欠的に切断して所定長さのミシン目を形成する。
【0018】
本実施形態における上記の開孔加工、切断加工及びミシン目加工は、複数本のレーザー光を、それぞれ表層シート7Aの平面方向に移動(走査)させて行っても良いし、一本のレーザー光を走査させて行っても良い。一例を挙げれば、帯状の表層シート7Aの長手方向の左右両側のうちの一方の側の耳掛け孔73及びそれに連続する切り込み74,75を、1本のレーザー光を走査させて形成し、他方の側の耳掛け孔73及びそれに連続する切り込み74,75を、別の1本のレーザー光を走査させて形成し、耳掛け孔73どうし間のミシン目72を、更にそれらとは別のレーザー光を走査させて形成することができる。ミシン目72の形成は、レーザー光を走査させずにレーザー光を間欠照射して形成することもできる。また、一つのレーザー光照射装置16から照射したレーザー光により、一方又は双方の耳掛け孔73とミシン目72とを形成することもでき、該レーザー光により総ての加工を行うこともできる。
【0019】
また、本実施形態における上記の開孔加工、切断加工及びミシン目加工は、被加工体1Aを一定速度で連続搬送しながら行っても良いし、被加工体1Aを一時的に停止又は減速して行っても良い。
【0020】
本実施形態によれば、単独で搬送している状態の表層シート7Aにレーザー光を照射するのではなく、積層体6Aと積層した状態の表層シート7Aに対してレーザー光を照射するため、単独状態の表層シート7Aに、開孔等を形成した場合とは異なり、表層シート7Aに、たわみやしわが発生しにくく、性能及び/又は外観の不良の問題も生じにくい。そのため、性能及び/又は外観の良い加温具1等を、歩留まり良く効率的に製造できる。
【0021】
このような効果は、帯状の表層シート7Aとして、幅方向に伸縮性を有するものを用いる場合に一層有用である。即ち、幅方向の伸縮性を有しないシートの場合には、開孔加工等の後の搬送において、たわみやしわが発生した場合には、太鼓状のロールやエキスパンダロール等を用いて、幅方向に張力を与えて対処することも考えられる。しかし、幅方向に伸縮性を有する場合には、幅方向に張力を与えると、所定の位置に開孔等を形成した後に、該開孔等の位置をずれさせることになり、例えば、開孔等の位置ずれや外観不良による歩留まりの低下を招くこともあるが、本発明の場合には、表層シート7Aが幅方向に伸縮性を有するものであっても、たわみやしわの発生を防止ないし軽減できる。
ここで、幅方向に伸縮性を有するか否かは、以下のようにして判断することができる。即ち、本実施形態によれば、表層シート7Aは左右両耳に係合且つ適正なフィット感を得ることが重要であることから伸縮性が有用であり、その判断方法はJIS K 7161に規定するプラスチック引張特性の試験方法に準じ、伸度50%〜130%の時、荷重が2N以上のものを伸縮性を有するシートと規定した。
【0022】
幅方向の伸縮性を有しないシートには、長手方向にも伸縮性を有するものであっても良いし、長手方向には伸縮性を有しないものであっても良い。
【0023】
また、本実施態様におけるレーザー光による加工は、被加工体1Aにおける前記非接合部分76に対してレーザー光を照射して行う。そのため、表層シート7Aに対する加工を確実に行うことができる一方、積層体6Aにおける、表層シート7Aに対向する面に、レーザー光による変化を与えにくい。即ち、被加工体1Aにおける非接合部分76は、接合部71に比して、表層シート7Aとその下の積層体6Aとの間の距離が大きいため、レーザー光の焦点位置と照射速度により、表層シート7Aのみを容易に溶融し切断することができる。
【0024】
レーザー光による変化としては、例えば、積層体6Aを構成するシートまで切断してしまったり、積層体6Aを構成するシートに硬化した部分が生じたり、積層体6Aを構成するシートから樹脂溶融付着物が生じる等である。ここで、樹脂溶融付着物とは、例えば、積層体6Aへレーザー光が照射された場合、積層体6Aを構成する帯状シート5Aが溶融し、例えば樹脂が蒸散し又は炭化物となり照射部周囲に付着することを指す。
積層体6Aを構成するシートの切断は、積層体6Aに保持されていたシート状発熱体3における温度制御が不能となったり、異常発熱となったり、肌に当たる面の肌触りを悪化させたりする恐れがある。積層体6Aを構成するシートの硬化は、肌に当たる面の肌触りが悪化させたり、身体へのフィット感を損なう恐れがある。樹脂溶融付着物の発生は、商品の品質、外観に関して消費者等に不安を与えたりする恐れがある。
【0025】
積層体6Aに、レーザー光により上記のような変化を与えにくくする観点から、積層体6Aにおける表層シート7Aの対向面は、表層シート7Aよりも密度が低いシート5Aから構成することが好ましい。
ここで、表層シート7A及びその対向面を形成するシート(本実施態様においては第3シート5A)の密度は、下記のようにして測定する。
【0026】
〔密度の測定方法〕
密度は、JIS K7112 プラスチックー非発泡プラスチックの密度および比重の測定方法に従って測定する。
本実施形態では、下記式(1)で表されるように単位面積あたりの重量をシート厚みで除したものを密度と規定している。
密度=単位面積あたりの重量(坪量(g/m2))/厚さ(mm)×1000・・(1) 厚みはJIS L1906 一般長繊維不織布試験法に準拠し、荷重面積100cm2、荷重300Paで測定する。
【0027】
また、表層シート7Aの密度aと、その対向面を形成するシート(本実施態様においては第3シート5A)の密度bの比(a/b)は、0.5〜5であることが好ましく、より好ましくは1.5〜3.5である。
また、表層シート7A及び第3シート5Aは、何れも不織布からなることが好ましいが、表層シート7Aの密度aは、0.2〜0.5g/m3であることが好ましく、第3シート5Aの密度bは、0.1〜0.3g/m3であることが好ましい。
【0028】
レーザー光による加工は、光エネルギーを熱エネルギーに変換、溶融蒸発させる。加工対象の不織布の密度が低いということはパッキング性が低いということであるから、レーザー照射面積あたりの繊維に衝突する確立が小さくなる。また、繊維間距離が広い為、熱伝導率が低いなどの理由から難加工となる。これに対して、高密度の不織布は、レーザーの加工性に優れている。
【0029】
表層シート7A,7としては、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、メルトブロー不織布、スパンレース不織布等の各種製法による不織布を用いることができるが、高密度の不織布使用がレーザー加工の観点から、スパンボンド不織布を用いることが好ましい。表層シート7A,7としては、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層一体化したシート、多層不織布等を用いることもできる。
第3シート5A、5としては、ニードルパンチ不織布、エアスルー不織布、メルトブロー不織布、スパンレース不織布等の各種製法による不織布を用いることができるが、低密度の不織布使用がレーザー加工の観点から、ニードルパンチ不織布を用いることが好ましい。
【0030】
積層体6Aに、レーザー光により上記のような変化を与えにくくする観点から、表層シート7Aは、積層体6Aにおける表層シート7Aの対向面を構成するシート(本実施態様においては第3シート5A)よりもレーザー光Rを吸収し易いものを用いる。
表層シート7Aや第3シート5A等のシートに関し、レーザー光を吸収し易いか否かは、該シートの材質と、使用するレーザー光の波長との関係で決まる。
表層シート7Aを、第3シート5Aよりもレーザー光を吸収し易いものとするには、該シートの材質や色を、該レーザー光を吸収し易い材質や色とする方法の他、レーザー光を吸収し易い顔料や添加物を配合する等の方法が挙げられる。
【0031】
表層シート7Aが、合成樹脂製の不織布である場合、レーザーとしては、CO2レーザー、YAGレーザー、LDレーザー(半導体レーザー)、YVO4レーザー、ファイバーレーザー等を用いることが好ましい。また、シートが、合成樹脂として、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等を含む場合、該シートに吸収され該シートを良好に発熱させ得る波長としては、例えば、8.0〜15μmを用いることが好ましく、大容量のレーザー装置が存在するCO2レーザーの発振波長の10.6μmを用いることが特に好ましい。
【0032】
また、積層体6Aに、レーザー光により上記のような変化を与えにくくする観点から、図6に示すように、被加工体1Aの厚み方向における、表層シート7Aの位置に、レーザー光の焦点が位置するようにすることが好ましい。
なお、レーザー光照射装置16としては、例えば、レーザー発生源、レンズ、レーザー光の照射方向を変更し、レーザーによる切断ポイントを移動させるガルバノミラー等から構成されているもの等を用いることができる。また、レーザー光を移動する機構は、各種公知の機構を特に制限なく用いることができる。レーザー発生源を、被加工体1Aの流れ方向又は幅方向に移動させる駆動機構と、レーザー光を、被加工体1Aの幅方向又は流れ方向に移動させるミラー駆動機構を備えたもの等を用いることもできる。
【0033】
また、表層シート7Aのみを効率よく製造するには、レーザー光の照射強度と走査速度をコントロールすることが好ましく、例えば、CO2レーザーの照射の条件としては、材質がポリプロピレンで製造されたスパンボンド不織布、表層シート7Aを連続搬送中に2本のレーザー光を使用して製造する場合、レーザーの走査速度は500m/分以上が好ましく、より好ましくは800m/分以上であり、レーザー出力は16kW以下が好ましく、より好ましくは10kW以下である。これらの照射条件は製造する材料の物性や搬送速度により変化するのでこの限りではない。
【0034】
上述のようにしてレーザー光による加工を行った後、前述した耳掛け孔73を形成する開孔加工を行った場合のように、トリムとして除去すべき部分が生じる場合には、当該部分を吸引等により除去するトリム除去装置17によりトリムを除去する。
そして、被加工体1Aを、カットロール(ダイカットロール)18aとアンビルロール18bとを備えたロータリーダイカッターからなる外形切断装置18に導入し、被加工体1Aを、個々の加温具1の外形形状に切断して、上記の加温具1を得る。
その後、加温具1は、被加工体1Aの残りの部分から分離された後、2つ折りされ、次いで、外気を遮断可能な密封袋に収容された後、市販等される。
【0035】
本実施態様に用いる各種材について説明する。
シート状発熱体3又はその製造中間体31,32等に含まれる被酸化性金属粉末としては、例えば、鉄粉、アルミニウム粉、亜鉛粉、マンガン粉、マグネシウム粉、カルシウム粉等が挙げられ、これらの中でも取り扱い性、安全性、製造コストの点から鉄粉が好ましく用いられる。被酸化性金属粉末には、繊維状物への定着性、反応のコントロールが良好なことから粒径(以下、粒径というときには、粉末の形態における最大長さをいう。)が0.1〜300μmのものを用いることが好ましく、粒径が0.1〜150μmものを50重量%以上含有するものを用いることがより好ましい。
【0036】
シート状発熱体3又はその製造中間体31,32等に含まれる繊維状物としては、例えば、天然のセルロース繊維、セルロースの化学繊維、合成繊維等が挙げられる。天然のセルロース繊維としては、各種の植物繊維、木材パルプ、非木材パルプ、木綿、麻、麦藁、ヘンプ、ジュート、カポック、やし、いぐさ等を用いることができる。これらの天然セルロース繊維のうち、容易に入手できる等の観点から、木材パルプを用いることが好ましい。セルロースの化学繊維としては、例えばレーヨン及びアセテートを用いることができる。
【0037】
シート状発熱体3又はその製造中間体31,32の形態としては、例えば、湿式抄造により得られたシート状物や、発熱粉体を紙等で挟持してなる積層体等が挙げられる。そのようなシート状物は、例えば本出願人の先の出願に係る特開2003−102761号公報に記載の湿式抄造法や、ダイコーターを用いたエクストルージョン法を用いて製造することができる。
シート状発熱体3又はその製造中間体31,32には、必要に応じ、更に、保水剤(例えば、バーミキュライト、ケイ酸カルシウム、シリカゲル、シリカ系多孔質物質、アルミナ、パルプ、木紛、吸水ポリマー等)、反応促進剤(例えば、活性炭、カーボンブラック、黒鉛等)等を含有させることができる。
【0038】
塗布液に含む電解質としては、被酸化性金属粉末の表面に形成された酸化物の溶解が可能なものが用いられる。その例としてはアルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物又は水酸化物等が挙げられる。これらの中でも、導電性、化学的安定性、生産コストに優れる点からアルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の塩化物が好ましく用いられ、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄が好ましく用いられる。
【0039】
塗布液には、例えばシート状発熱体の発熱によって放出され、皮膚から吸収され、局所及び全身への生理活性作用を奏する、メントール等の薬剤等を含有させることも好ましい。
【0040】
非通気性の第1シート2A,2としては、各種公知の非通気性のシート材を用いることができ、例えば、樹脂フィルム、又は樹脂フィルムと不織布等との積層体等が好ましく用いられる。通気性の第2シート4A,4としては、樹脂フィルムは、透湿性ものでも透湿性を有しないものであっても良い。各種公知の通気性のシート材を用いることができ、例えば、不織布、透湿性フィルム等が好ましく用いられる。
【0041】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
例えば、レーザー光による表層シート7Aの加工は、開孔加工、切断加工及びミシン目加工の何れか1種のみを行ってもよいし、任意の2種以上の加工を同時に施しても良い。例えば、上述した実施形態における、切り込み74,75は形成しなくてもよいし、また、ミシン目72は、ミシン目72に代えて、スリットや、スリットとミシン目を複合した切断誘導線をレーザー光により形成してもよい。
【0042】
また、本発明で製造する積層物品が身体を加温する加温具の場合、人体における適用部位としては、目の他、例えば肩、首、腰、肘、膝、太腿、下腿、腹、下腹部、手、足裏などが挙げられる。また、人体のほかに、各種の物品に適用されてその加温や保温等に用いられる加温具等であっても良い。
また、本発明で製造する積層物品は、加温具の他、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品、化粧用シートやハウスホールド用物品等であっても良い。
【0043】
また、表層シート7Aに対するレーザー光による加工は、幅方向の一部が、積層体6Aに接合された状態の表層シート7Aにおける該幅方向の積層体6Aに接合されていない部分に対して施すことが好ましいが、幅方向の全域が積層体6Aに接合されていない状態の表層シート7Aに対してレーザー光による加工を行っても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 加温具
1A 被加工体
2 第1シート
2A 帯状の第1シート
3 シート状発熱体
4 第2シート
4A 帯状の第2シート
5 第3シート
5A 帯状の第3シート
6 積層体
6A 帯状の積層体
61 外周シール部
7 表層シート
7A 帯状の表層シート
70A,70B 耳掛け片
11 切断装置
12 バキュームコンベア
13 塗布液の塗布部
14 外周シール装置
15 表層シートシール装置
16 レーザー光照射装置
17 トリム除去装置
18 外形切断装置
R レーザー光
72 ミシン目
73 耳掛け用孔
74,75 切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシートが積層一体化された積層体と、該積層体上に、部分的に接合された状態で配されている表層シートとを有する積層物品の製造方法であって、
複数のシートが積層一体化された積層体上に、前記表層シートを重ねた構成を有する被加工体における前記表層シートが前記積層体に接合されていない部分に対して、該表層シート側からレーザー光を照射し、該表層シートのみに開孔加工、切断加工又はミシン目加工を施す工程を具備する、積層物品の製造方法。
【請求項2】
前記積層体における前記表層シートの対向面を、前記表層シートよりも密度が低いシートから構成する、請求項1記載の積層物品の製造方法。
【請求項3】
前記表層シートとして、前記積層体における該表層シートの対向面を構成するシートよりも前記レーザー光を吸収し易いものを用いる、請求項1記載の積層物品の製造方法。
【請求項4】
前記表層シート及び前記積層体における該表層シートの対向面を構成するシートが何れも不織布である、請求項1〜3の何れか1項記載の積層物品の製造方法。
【請求項5】
前記積層物品が、身体に当接させて用いる加温具であり、前記積層体は、シート状発熱体を具備し、前記表層シートに、前記開孔加工、切断加工又はミシン目加工を施すことにより、前記身体に係合可能な係合部を形成する、請求項1〜4の何れか1項記載の積層物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−117164(P2012−117164A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266046(P2010−266046)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】