説明

積層研磨パッド用ホットメルト接着剤シート、及び積層研磨パッド用接着剤層付き支持層

【課題】 本発明は、長時間の研磨により高温になる場合であっても研磨層と支持層との間で剥離しにくい積層研磨パッド用ホットメルト接着剤シートを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の積層研磨パッド用ホットメルト接着剤シートは、研磨層と支持層とを積層するために用いられ、前記ホットメルト接着剤は、ポリエステル系ホットメルト接着剤であり、ベースポリマーであるポリエステル樹脂100重量部に対して、1分子中にグリシジル基を2つ以上有するエポキシ樹脂を2〜10重量部含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ、反射ミラー等の光学材料やシリコンウエハ、ハードディスク用のガラス基板、アルミ基板、及び一般的な金属研磨加工等の高度の表面平坦性を要求される材料の平坦化加工を安定、かつ高い研磨効率で行うことが可能な積層研磨パッドを作製するために用いられるホットメルト接着剤シート、及び積層研磨パッド用接着剤層付き支持層に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する際には、ウエハ表面に導電性膜を形成し、フォトリソグラフィー、エッチング等をすることにより配線層を形成する形成する工程や、配線層の上に層間絶縁膜を形成する工程等が行われ、これらの工程によってウエハ表面に金属等の導電体や絶縁体からなる凹凸が生じる。近年、半導体集積回路の高密度化を目的として配線の微細化や多層配線化が進んでいるが、これに伴い、ウエハ表面の凹凸を平坦化する技術が重要となってきた。
【0003】
従来、高精度の研磨に使用される研磨パッドとしては、一般的にポリウレタン樹脂発泡体シートが使用されている。しかし、ポリウレタン樹脂発泡体シートは、局部的な平坦化能力には優れているが、クッション性が不足しているためにウエハ全面に均一な圧力を与えることが難しい。このため、通常、ポリウレタン樹脂発泡体シートの背面に柔らかいクッション層が別途設けられ、積層研磨パッドとして研磨加工に使用されている。
【0004】
しかし、従来の積層研磨パッドは、一般に研磨層とクッション層とを両面テープで貼り合わせているが、研磨中に研磨層とクッション層との間にスラリーが侵入して両面テープの耐久性が低下し、研磨層とクッション層とが剥離しやすくなるという問題がある。
【0005】
上記問題を解決する方法として、例えば、以下の技術が提案されている。
【0006】
特許文献1には、プラスチックフィルムと研磨パッドとを反応性ホットメルト接着剤を用いて接着することが開示されている。
【0007】
特許文献2には、ベース層と研磨層とがホットメルト接着剤層により接着された研磨パッドが開示されている。
【0008】
特許文献3には、研磨層と下地層とが、両面テープによって接着される研磨パッドであって、研磨層の裏面と両面テープとの間に、ホットメルト接着剤からなり、研磨スラリーを遮断する止水層を設ける技術が開示されている。
【0009】
特許文献4には、研磨層と下層とが、EVAを含むホットメルト接着剤により接合された研磨パッドが開示されている。
【0010】
しかし、特許文献1〜4に記載されているホットメルト接着剤は、耐熱性が低く、長時間の研磨により高温になる場合には、接着性が低下して研磨層とクッション層等とが剥離しやすくなるという問題があった。
【0011】
【特許文献1】特開2002−224944号公報
【特許文献2】特開2005−167200号公報
【特許文献3】特開2009−95945号公報
【特許文献4】特開2010−525956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、長時間の研磨により高温になる場合であっても研磨層と支持層との間で剥離しにくい積層研磨パッド用ホットメルト接着剤シート(以下、ホットメルト接着剤シートともいう。)、及び積層研磨パッド用接着剤層付き支持層(以下、接着剤層付き支持層ともいう。)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示すホットメルト接着剤シート又は接着剤層付き支持層により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、研磨層と支持層とを積層するために用いられる積層研磨パッド用ホットメルト接着剤シートにおいて、前記ホットメルト接着剤は、ポリエステル系ホットメルト接着剤であり、ベースポリマーであるポリエステル樹脂100重量部に対して、1分子中にグリシジル基を2つ以上有するエポキシ樹脂を2〜10重量部含有することを特徴とする積層研磨パッド用ホットメルト接着剤シート、に関する。
【0015】
エポキシ樹脂の添加量が2重量部未満の場合には、長時間の研磨により高温になった際に、研磨時に生じる「ずり」に対するホットメルト接着剤シートの耐久性が不十分になるため、研磨層と支持層との間で剥離しやすくなる。一方、10重量部を超える場合には、ホットメルト接着剤の硬度が高くなりすぎて接着性が低下するため、研磨層と支持層との間で剥離しやすくなる。
【0016】
ベースポリマーであるポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂を用いることにより、スラリーに対する耐薬品性が向上し、ホットメルト接着剤シートの接着力が低下しにくくなる。
【0017】
また、ポリエステル系ホットメルト接着剤は、融点が100〜200℃であり、比重が1.1〜1.3であり、メルトフローインデックスが、温度150℃及び荷重2.16kgの条件にて16〜26g/10minであることが好ましい。
【0018】
前記ホットメルト接着剤シートは、易接着処理が施された基材の両面に前記ホットメルト接着剤からなる接着剤層を有する両面テープであることが好ましい。前記易接着処理は、コロナ処理又はプラズマ処理であることが好ましい。基材の両面に易接着処理を施しておくことにより、長時間の研磨により高温になる場合であっても、優れた接着性が得られる。
【0019】
また本発明は、支持層の片面に、ベースポリマーであるポリエステル樹脂100重量部に対して、1分子中にグリシジル基を2つ以上有するエポキシ樹脂を2〜10重量部含有するポリエステル系ホットメルト接着剤を塗布し、硬化して得られる接着剤層を有する積層研磨パッド用接着剤層付き支持層、に関する。支持層上に直接ホットメルト接着剤を塗布し、硬化させることにより、支持層と接着剤層とが剥がれ難い接着剤層付き支持層が得られる。
【0020】
ベースポリマーであるポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂を用いることにより、スラリーに対する耐薬品性が向上し、接着剤層の接着力が低下しにくくなる。
【0021】
また、ポリエステル系ホットメルト接着剤は、融点が100〜200℃であり、比重が1.1〜1.3であり、メルトフローインデックスが、温度150℃及び荷重2.16kgの条件にて16〜26g/10minであることが好ましい。
【0022】
前記支持層は、前記接着剤層が設けられる面にスキン層を有するポリウレタン発泡シートであることが好ましい。支持層として、スキン層を有するポリウレタン発泡シートを用いることにより、厚さが均一で表面平滑性に優れる接着剤層を支持層上に形成することができる。
【0023】
前記ポリウレタン発泡シートは、熱硬化性ポリウレタンにより形成されていることが好ましい。支持層上にホットメルト接着剤を塗布する際には、ホットメルト接着剤を高温でメルトさせるため、耐熱性の観点から支持層の原料として熱硬化性ポリウレタンを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明のホットメルト接着剤シート又は接着剤層付き支持層を用いることにより、長時間の研磨により高温になる場合であっても、研磨時に生じる「ずり」に対するホットメルト接着剤シートの耐久性が向上し、研磨層と支持層との間で剥離しにくい積層研磨パッドが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明における研磨層は、微細気泡を有する発泡体であれば特に限定されるものではない。例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ハロゲン系樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、ポリスチレン、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、エポキシ樹脂、感光性樹脂などの1種または2種以上の混合物が挙げられる。ポリウレタン樹脂は耐摩耗性に優れ、原料組成を種々変えることにより所望の物性を有するポリマーを容易に得ることができるため、研磨層の形成材料として特に好ましい材料である。以下、前記発泡体を代表してポリウレタン樹脂について説明する。
【0026】
前記ポリウレタン樹脂は、イソシアネート成分、ポリオール成分(高分子量ポリオール、低分子量ポリオール)、及び鎖延長剤からなるものである。
【0027】
イソシアネート成分としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を特に限定なく使用できる。イソシアネート成分としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらは1種で用いても、2種以上を混合しても差し支えない。
【0028】
高分子量ポリオールとしては、ポリウレタンの技術分野において、通常用いられるものを挙げることができる。例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール等に代表されるポリエーテルポリオール、ポリブチレンアジペートに代表されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応物などで例示されるポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させ、次いでえられた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させたポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシル化合物とアリールカーボネートとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
ポリオール成分として上述した高分子量ポリオールの他に、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等の低分子量ポリオールを併用することができる。また、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、及びジエチレントリアミン等の低分子量ポリアミンを併用することもできる。また、モノエタノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、及びモノプロパノールアミン等のアルコールアミンを併用することもできる。これら低分子量ポリオール、低分子量ポリアミン等は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。低分子量ポリオールや低分子量ポリアミン等の配合量は特に限定されず、製造される研磨パッド(研磨層)に要求される特性により適宜決定される。
【0030】
ポリウレタン樹脂発泡体をプレポリマー法により製造する場合において、プレポリマーの硬化には鎖延長剤を使用する。鎖延長剤は、少なくとも2個以上の活性水素基を有する有機化合物であり、活性水素基としては、水酸基、第1級もしくは第2級アミノ基、チオール基(SH)等が例示できる。具体的には、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)(MOCA)、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2,3−ジクロロアニリン)、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトライソプロピルジフェニルメタン、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、N,N’−ジ−sec−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、m−キシリレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等に例示されるポリアミン類、あるいは、上述した低分子量ポリオールや低分子量ポリアミンを挙げることができる。これらは1種で用いても、2種以上を混合しても差し支えない。
【0031】
本発明におけるイソシアネート成分、ポリオール成分、及び鎖延長剤の比は、各々の分子量や研磨パッドの所望物性などにより種々変え得る。所望する研磨特性を有する研磨パッドを得るためには、ポリオール成分と鎖延長剤の合計活性水素基(水酸基+アミノ基)数に対するイソシアネート成分のイソシアネート基数は、0.80〜1.20であることが好ましく、さらに好ましくは0.99〜1.15である。イソシアネート基数が前記範囲外の場合には、硬化不良が生じて要求される比重及び硬度が得られず、研磨特性が低下する傾向にある。
【0032】
ポリウレタン樹脂発泡体は、溶融法、溶液法など公知のウレタン化技術を応用して製造することができるが、コスト、作業環境などを考慮した場合、溶融法で製造することが好ましい。
【0033】
ポリウレタン樹脂発泡体の製造は、プレポリマー法、ワンショット法のどちらでも可能であるが、事前にイソシアネート成分とポリオール成分からイソシアネート末端プレポリマーを合成しておき、これに鎖延長剤を反応させるプレポリマー法が、得られるポリウレタン樹脂の物理的特性が優れており好適である。
【0034】
ポリウレタン樹脂発泡体の製造方法としては、中空ビーズを添加させる方法、機械的発泡法、化学的発泡法などが挙げられる。
【0035】
特に、ポリアルキルシロキサンとポリエーテルの共重合体であって活性水素基を有しないシリコン系界面活性剤を使用した機械的発泡法が好ましい。
【0036】
なお、必要に応じて、酸化防止剤等の安定剤、滑剤、顔料、充填剤、帯電防止剤、その他の添加剤を加えてもよい。
【0037】
ポリウレタン樹脂発泡体は独立気泡タイプであってもよく、連続気泡タイプであってもよい。
【0038】
ポリウレタン樹脂発泡体の製造は、各成分を計量して容器に投入し、撹拌するバッチ方式であっても、また撹拌装置に各成分と非反応性気体を連続して供給して撹拌し、気泡分散液を送り出して成形品を製造する連続生産方式であってもよい。
【0039】
また、ポリウレタン樹脂発泡体の原料となるプレポリマーを反応容器に入れ、その後鎖延長剤を投入、撹拌後、所定の大きさの注型に流し込みブロックを作製し、そのブロックを鉋状、あるいはバンドソー状のスライサーを用いてスライスする方法、又は前述の注型の段階で、薄いシート状にしても良い。また、原料となる樹脂を溶解し、Tダイから押し出し成形して直接シート状のポリウレタン樹脂発泡体を得ても良い。
【0040】
前記ポリウレタン樹脂発泡体の平均気泡径は、30〜80μmであることが好ましく、より好ましくは30〜60μmである。この範囲から逸脱する場合は、研磨速度が低下したり、研磨後の被研磨材(ウエハ)のプラナリティ(平坦性)が低下する傾向にある。
【0041】
前記ポリウレタン樹脂発泡体の比重は、0.5〜1.3であることが好ましい。比重が0.5未満の場合、研磨層の表面強度が低下し、被研磨材のプラナリティが低下する傾向にある。また、1.3より大きい場合は、研磨層表面の気泡数が少なくなり、プラナリティは良好であるが、研磨速度が低下する傾向にある。
【0042】
前記ポリウレタン樹脂発泡体の硬度は、アスカーD硬度計にて、40〜75度であることが好ましい。アスカーD硬度が40度未満の場合には、被研磨材のプラナリティが低下し、また、75度より大きい場合は、プラナリティは良好であるが、被研磨材のユニフォーミティ(均一性)が低下する傾向にある。
【0043】
研磨層の被研磨材と接触する研磨表面は、スラリーを保持・更新するための凹凸構造を有することが好ましい。発泡体からなる研磨層は、研磨表面に多くの開口を有し、スラリーを保持・更新する働きを持っているが、研磨表面に凹凸構造を形成することにより、スラリーの保持と更新をさらに効率よく行うことができ、また被研磨材との吸着による被研磨材の破壊を防ぐことができる。凹凸構造は、スラリーを保持・更新する形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、XY格子溝、同心円状溝、貫通孔、貫通していない穴、多角柱、円柱、螺旋状溝、偏心円状溝、放射状溝、及びこれらの溝を組み合わせたものが挙げられる。また、これらの凹凸構造は規則性のあるものが一般的であるが、スラリーの保持・更新性を望ましいものにするため、ある範囲ごとに溝ピッチ、溝幅、溝深さ等を変化させることも可能である。
【0044】
研磨層の形状は特に制限されず、円形状であってもよく、長尺状であってもよい。研磨層の大きさは使用する研磨装置に応じて適宜調整することができるが、円形状の場合には直径は30〜150cm程度であり、長尺状の場合には長さ5〜15m程度、幅60〜250cm程度である。
【0045】
研磨層の厚みは特に限定されるものではないが、通常0.8〜4mm程度であり、1.2〜2.5mmであることが好ましい。
【0046】
研磨層には、研磨を行っている状態で光学終点検知をするための透明部材が設けられていてもよい。透明部材は、研磨層に設けた開口部に嵌め込み、研磨層下のホットメルト接着剤シートに接着させることにより固定する。
【0047】
積層研磨パッドは、研磨層と支持層とをホットメルト接着剤シートで貼り合わせて作製する。
【0048】
前記支持層は、研磨層の特性を補うものである。支持層としては、研磨層より弾性率が低い層(クッション層)を用いてもよく、研磨層より弾性率が高い層(高弾性層)を用いてもよい。クッション層は、CMPにおいて、トレードオフの関係にあるプラナリティとユニフォーミティの両者を両立させるために必要なものである。プラナリティとは、パターン形成時に発生する微小凹凸のある被研磨材を研磨した時のパターン部の平坦性をいい、ユニフォーミティとは、被研磨材全体の均一性をいう。研磨層の特性によって、プラナリティを改善し、クッション層の特性によってユニフォーミティを改善する。高弾性層は、CMPにおいて、スクラッチの発生を抑制するために柔らかい研磨層を用いた場合に、研磨パッドの平坦化特性を向上させるために用いられる。また、高弾性層を用いることにより、被研磨材のエッジ部の削り過ぎを抑制することが可能である。
【0049】
前記クッション層としては、例えば、ポリエステル不織布、ナイロン不織布、及びアクリル不織布などの繊維不織布;ポリウレタンを含浸したポリエステル不織布のような樹脂含浸不織布;ポリウレタンフォーム及びポリエチレンフォームなどの高分子樹脂発泡体;ブタジエンゴム及びイソプレンゴムなどのゴム性樹脂;感光性樹脂などが挙げられる。
【0050】
前記高弾性層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及びポリエチレンナフタレートフィルムなどのポリエステルフィルム;ポリエチレンフィルム、及びポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム;ナイロンフィルムなどが挙げられる。
【0051】
研磨層に透明部材を設ける場合には、支持層に光を透過させるための開口部を設けておくことが好ましい。
【0052】
ホットメルト接着剤シートは、ホットメルト接着剤からなる接着剤層であってもよく、基材の両面に前記接着剤層が設けられた両面テープであってもよい。
【0053】
前記接着剤層の材料であるポリエステル系ホットメルト接着剤は、ベースポリマーであるポリエステル樹脂100重量部に対して、1分子中にグリシジル基を2つ以上有するエポキシ樹脂を2〜10重量部含有する。
【0054】
前記ポリエステル樹脂としては、酸成分及びポリオール成分の縮重合等により得られる公知のものを用いることができるが、特に結晶性ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0055】
酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。これらは、1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0056】
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、α−ナフタレンジカルボン酸、β−ナフタレンジカルボン酸、及びそのエステル形成体等が挙げられる。
【0057】
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデシレン酸、ドデカン二酸、及びそのエステル形成体等が挙げられる。
【0058】
脂環族ジカルボン酸の具体例としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0059】
また、酸成分として、マレイン酸、フマル酸、ダイマー酸等の不飽和酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸等を併用してもよい。
【0060】
ポリオール成分としては、脂肪族グリコール、脂環族グリコール等の2価アルコール及び多価アルコールが挙げられる。これらは、1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0061】
脂肪族グリコールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、2,2,3−トリメチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
【0062】
脂環族グリコールの具体例としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等が挙げられる。
【0063】
多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0064】
結晶性ポリエステル樹脂は、公知の方法により合成することができる。例えば、原料及び触媒を仕込み、生成物の融点以上の温度で加熱する溶融重合法、生成物の融点以下で重合する固相重合法、溶媒を使用する溶液重合法等があり、いずれの方法を採用してもよい。
【0065】
結晶性ポリエステル樹脂の融点は100〜200℃であることが好ましい。融点が100℃未満の場合は、研磨時の発熱によってホットメルト接着剤の接着力が低下し、200℃を超える場合には、ホットメルト接着剤を溶融させる際の温度が高くなるため、積層研磨パッドに反りが生じて研磨特性に悪影響を与える傾向にある。
【0066】
また、結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量は5000〜50000であることが好ましい。数平均分子量が5000未満の場合は、ホットメルト接着剤の機械的特性が低下するため、十分な接着性及び耐久性が得られず、50000を超える場合には、結晶性ポリエステル樹脂を合成する際にゲル化が生じる等の製造上の不具合が発生したり、ホットメルト接着剤としての性能が低下する傾向にある。
【0067】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、及びテトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンベースなどのポリフェニルベースエポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、複素芳香環(例えば、トリアジン環など)を含有するエポキシ樹脂などの芳香族エポキシ樹脂;脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂などの非芳香族エポキシ樹脂が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
これらのうち、研磨時における研磨層との接着性の観点から、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0069】
前記エポキシ樹脂は、ベースポリマーであるポリエステル樹脂100重量部に対して、2〜10重量部添加することが必要であり、好ましくは3〜7重量部である。
【0070】
ポリエステル系ホットメルト接着剤は、オレフィン系樹脂等の軟化剤、粘着付与剤、充填剤、安定剤、及びカップリング剤などの公知の添加剤を含有していてもよい。またタルクなどの公知の無機フィラー等を含有してもよい。
【0071】
ポリエステル系ホットメルト接着剤は、少なくとも前記ポリエステル樹脂、及び前記エポキシ樹脂等を任意の方法により混合して調製する。例えば、単軸押出機、噛合い形同方向平行軸二軸押出機、噛合い形異方向平行軸二軸押出機、噛合い形異方向斜軸二軸押出機、非噛合い形二軸押出機、不完全噛合い形二軸押出機、コニーダー形押出機、プラネタリギヤ形押出機、トランスファミックス押出機、ラム押出機、ローラ押出機等の押出成形機又はニーダー等により、各原料を混合して調製する。
【0072】
ポリエステル系ホットメルト接着剤の融点は、100〜200℃であることが好ましい。
【0073】
また、ポリエステル系ホットメルト接着剤の比重は、1.1〜1.3であることが好ましい。
【0074】
また、ポリエステル系ホットメルト接着剤のメルトフローインデックス(MI)は、150℃、荷重2.16kgの条件にて、16〜26g/10minであることが好ましい。
【0075】
研磨層と支持層とを貼り合わせる方法は特に制限されず、例えば、ホットメルト接着剤シートを支持層(又は研磨層)上に積層し、ヒーターにより接着剤を加熱溶融させ、その後、溶融した接着剤上に研磨層(又は支持層)を積層してプレスする方法が挙げられる。プレス圧力は特に制限されないが、0.1〜1.0MPa程度である。
【0076】
ホットメルト接着剤からなる接着剤層の厚みは10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは30〜100μmである。接着剤層の厚みが10μm未満の場合は、長時間の研磨により高温になった際に、研磨時に生じる「ずり」に対するホットメルト接着剤シートの耐久性が不十分になるため、研磨層と支持層との間で剥離しやすくなる。一方、200μmを超えると、透明性が低下するため、光学終点検知用の透明部材を設けた積層研磨パッドの検知精度に支障が生じる。
【0077】
ホットメルト接着剤からなる接着剤層の代わりに、基材の両面に前記接着剤層を有する両面テープを用いてもよい。基材により支持層側へのスラリーの浸透を防止し、支持層と接着剤層との間での剥離を防止することができる。
【0078】
基材としては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリエチレンナフタレートフィルムなどのポリエステルフィルム;ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム;ナイロンフィルムなどが挙げられる。これらのうち、水の透過を防ぐ性質に優れるポリエステルフィルムを用いることが好ましい。
【0079】
基材の表面には、コロナ処理、プラズマ処理などの易接着処理を施してもよい。
【0080】
基材の厚みは特に制限されないが、透明性、柔軟性及び剛性等の観点から10〜180μmであることが好ましい。
【0081】
両面テープを用いる場合、前記接着剤層の厚みは10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは30〜100μmである。
【0082】
また、積層研磨パッドは、研磨層と接着剤層付き支持層とを貼り合わせて作製してもよい。
【0083】
接着剤層付き支持層は、前記支持層の片面に、前記ポリエステル系ホットメルト接着剤を塗布し、硬化して接着剤層を支持層上に直接形成したものである。支持層としては、接着剤層が設けられる面にスキン層を有するポリウレタン発泡シートを用いることが好ましい。また、ポリウレタン発泡シートは、熱硬化性ポリウレタンにより形成されていることが好ましい。また、接着剤層の厚みは、前記と同様の理由により10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは30〜100μmである。
【0084】
研磨層と接着剤層付き支持層とを貼り合わせる方法は特に制限されず、例えば、ヒーターにより接着剤層付き支持層の接着剤層を加熱溶融させ、その後、溶融した接着剤上に研磨層を積層してプレスする方法が挙げられる。プレス圧力は特に制限されないが、0.1〜1.0MPa程度である。
【0085】
積層研磨パッドは、プラテンと接着する面に両面テープが設けられていてもよい。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0087】
[測定、評価方法]
(数平均分子量の測定)
数平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)にて測定し、標準ポリスチレンにより換算した。
GPC装置:島津製作所製、LC−10A
カラム:Polymer Laboratories社製、(PLgel、5μm、500Å)、(PLgel、5μm、100Å)、及び(PLgel、5μm、50Å)の3つのカラムを連結して使用
流量:1.0ml/min
濃度:1.0g/l
注入量:40μl
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
【0088】
(融点の測定)
ポリエステル系ホットメルト接着剤の融点は、TOLEDO DSC822(METTLER社製)を用い、昇温速度20℃/minにて測定した。
【0089】
(比重の測定)
JIS Z8807−1976に準拠して行った。ポリエステル系ホットメルト接着剤からなる接着剤層を4cm×8.5cmの短冊状(厚み:任意)に切り出したものを比重測定用試料とし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定には比重計(ザルトリウス社製)を用い、比重を測定した。
【0090】
(メルトフローインデックス(MI)の測定)
ASTM−D−1238に準じて150℃、2.16kgの条件で、ポリエステル系ホットメルト接着剤のメルトフローインデックスを測定した。
【0091】
(接着強度の測定)
作製した積層研磨パッドから幅25mm×長さ200mmのサンプルを3枚切り取り、各サンプルの研磨層と支持層を引張り角度180°、引張り速度300mm/minで引張り、この時の接着強度(N/25mm)を測定した。サンプル3枚の平均値を表1に示す。また、その時のサンプルの剥離状態を確認した。また、スラリー(キャボット社製、W2000)に、濃度が4重量%になるように過酸化水素水を添加して研磨スラリーを調製した。80℃に調整した前記研磨スラリーにサンプルを8時間浸漬し、その後、前記と同様の方法で接着強度の測定を行い、剥離状態を確認した。当該操作を5回繰り返した。
【0092】
製造例1
容器にトルエンジイソシアネート(2,4−体/2,6−体=80/20の混合物)1229重量部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート272重量部、数平均分子量1018のポリテトラメチレンエーテルグリコール1901重量部、ジエチレングリコール198重量部を入れ、70℃で4時間反応させてイソシアネート末端プレポリマーを得た。
該プレポリマー100重量部及びシリコン系界面活性剤(東レダウコーニングシリコン製、SH−192)3重量部を重合容器内に加えて混合し、80℃に調整して減圧脱泡した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように激しく約4分間撹拌を行った。そこへ予め70℃に温度調整したエタキュア300(アルベマール社製、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミンと3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミンとの混合物)21重量部を添加した。該混合液を約1分間撹拌した後、パン型のオープンモールド(注型容器)へ流し込んだ。この混合液の流動性がなくなった時点でオーブン内に入れ、100℃で16時間ポストキュアを行い、ポリウレタン樹脂発泡体ブロックを得た。
約80℃に加熱した前記ポリウレタン樹脂発泡体ブロックをスライサー(アミテック社製、VGW−125)を使用してスライスし、ポリウレタン樹脂発泡体シート(平均気泡径:50μm、比重:0.86、硬度:52度)を得た。次に、バフ機(アミテック社製)を使用して、厚さ2mmになるまで該シートの表面バフ処理をし、厚み精度を整えたシートとした。このバフ処理をしたシートを直径60cmの大きさで打ち抜き、溝加工機(テクノ社製)を用いて表面に溝幅0.25mm、溝ピッチ1.5mm、溝深さ0.6mmの同心円状の溝加工を行って研磨層を作製した。
【0093】
実施例1
両面コロナ処理した厚さ50μmのPETフィルム(東洋紡績(株)社製、E5200)の上に、結晶性ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)社製、バイロンGM420)100重量部、及び1分子中にグリシジル基を2つ以上有するo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)社製、EOCN4400)5重量部を含むポリエステル系ホットメルト接着剤からなる接着剤層(厚み50μm)を形成し、赤外ヒーターを用いて接着剤層表面を150℃に加熱して接着剤層を溶融させた。その後、圧力0.6MPaのラミネート機を用いて、搬送速度1m/minにて、溶融させた接着剤層上に製造例1で作製した研磨層を積層し、圧着させて積層体A(研磨層/接着剤層/PETフィルム)を得た。
離型フィルム上に、前記接着剤層(厚み50μm)を形成し、赤外ヒーターを用いて接着剤層表面を150℃に加熱して接着剤層を溶融させた。その後、圧力0.6MPaのラミネート機を用いて、搬送速度1m/minにて、離型フィルムを剥離しながら溶融させた接着剤層に前記積層体Aと発泡ウレタンからなる支持層(日本発条社製、ニッパレイEXT)とを積層し、圧着させて積層体B(研磨層/接着剤層/PETフィルム/接着剤層/支持層)を得た。
その後、積層体Bの支持層にラミネート機を使用して感圧式両面テープ(3M社製、442JA)を貼り合わせて積層研磨パッドを作製した。
なお、ポリエステル系ホットメルト接着剤の融点は142℃、比重は1.22、メルトフローインデックスは21g/10minであった。
【0094】
実施例2
両面コロナ処理した厚さ50μmのPENフィルム(帝人デュポンフィルム(株)社製、テオネックスQ83)の上に、実施例1記載のポリエステル系ホットメルト接着剤からなる接着剤層(厚み50μm)を形成し、その後、実施例1と同様の方法で積層研磨パッドを作製した。
【0095】
実施例3
実施例1において、結晶性ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)社製、バイロンGM420)100重量部、及び1分子中にグリシジル基を2つ以上有するo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)社製、EOCN4400)2重量部を含むポリエステル系ホットメルト接着剤を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層研磨パッドを作製した。なお、ポリエステル系ホットメルト接着剤の融点は140℃、比重は1.24、メルトフローインデックスは26g/10minであった。
【0096】
実施例4
実施例1において、結晶性ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)社製、バイロンGM420)100重量部、及び1分子中にグリシジル基を2つ以上有するo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)社製、EOCN4400)10重量部を含むポリエステル系ホットメルト接着剤を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層研磨パッドを作製した。なお、ポリエステル系ホットメルト接着剤の融点は145℃、比重は1.19、メルトフローインデックスは16g/10minであった。
【0097】
実施例5
片面にスキン層を有する熱硬化性ポリウレタン発泡シート(日本発条社製、ニッパレイEXT、厚み0.8mm)のスキン層上に、結晶性ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)社製、バイロンGM420)100重量部、及び1分子中にグリシジル基を2つ以上有するo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)社製、EOCN4400)5重量部を含むポリエステル系ホットメルト接着剤を塗布し、硬化させて接着剤層(厚み75μm)を形成し、接着剤層付き発泡シートを作製した。
赤外ヒーターを用いて接着剤層付き発泡シートの接着剤層表面を150℃に加熱して接着剤層を溶融させた。その後、圧力0.6MPaのラミネート機を用いて、搬送速度0.8m/minにて、溶融させた接着剤層上に製造例1で作製した研磨層を積層し、圧着させて積層体(研磨層/接着剤層/発泡シート)を得た。
その後、積層体の発泡シートにラミネート機を使用して感圧式両面テープ(3M社製、442JA)を貼り合わせて積層研磨パッドを作製した。
なお、ポリエステル系ホットメルト接着剤の融点は142℃、比重は1.22、メルトフローインデックスは21g/10minであった。
【0098】
比較例1
実施例1において、結晶性ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)社製、バイロンGM420)100重量部、及び1分子中にグリシジル基を2つ以上有するo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)社製、EOCN4400)1重量部を含むポリエステル系ホットメルト接着剤を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層研磨パッドを作製した。なお、ポリエステル系ホットメルト接着剤の融点は139℃、比重は1.25、メルトフローインデックスは29g/10minであった。
【0099】
比較例2
実施例1において、結晶性ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)社製、バイロンGM420)100重量部、及び1分子中にグリシジル基を2つ以上有するo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)社製、EOCN4400)18重量部を含むポリエステル系ホットメルト接着剤を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層研磨パッドを作製した。なお、ポリエステル系ホットメルト接着剤の融点は147℃、比重は1.18、メルトフローインデックスは15g/10minであった。
【0100】
【表1】

【0101】
実施例1〜5の積層研磨パッドは、高温の研磨スラリーに長時間浸漬した場合であっても接着剤層での界面剥離は起こらなかった。一方、比較例1及び2の積層研磨パッドは、初期接着力が低く、高温の研磨スラリーに長時間浸漬すると接着剤層での界面剥離が生じた。これらの結果から、本発明のホットメルト接着剤シートを用いて積層研磨パッドを製造すると、長時間の研磨により高温になる場合であっても、安定した研磨性能が得られると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨層と支持層とを積層するために用いられる積層研磨パッド用ホットメルト接着剤シートにおいて、前記ホットメルト接着剤は、ポリエステル系ホットメルト接着剤であり、ベースポリマーであるポリエステル樹脂100重量部に対して、1分子中にグリシジル基を2つ以上有するエポキシ樹脂を2〜10重量部含有することを特徴とする積層研磨パッド用ホットメルト接着剤シート。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂である請求項1記載の積層研磨パッド用ホットメルト接着剤シート。
【請求項3】
前記ポリエステル系ホットメルト接着剤は、融点が100〜200℃であり、比重が1.1〜1.3であり、メルトフローインデックスが、温度150℃及び荷重2.16kgの条件にて16〜26g/10minである請求項1又は2記載の積層研磨パッド用ホットメルト接着剤シート。
【請求項4】
前記ホットメルト接着剤シートは、易接着処理が施された基材の両面に前記ホットメルト接着剤からなる接着剤層を有する両面テープである請求項1〜3のいずれかに記載の積層研磨パッド用ホットメルト接着剤シート。
【請求項5】
前記易接着処理が、コロナ処理又はプラズマ処理である請求項4記載の積層研磨パッド用ホットメルト接着剤シート。
【請求項6】
支持層の片面に、ベースポリマーであるポリエステル樹脂100重量部に対して、1分子中にグリシジル基を2つ以上有するエポキシ樹脂を2〜10重量部含有するポリエステル系ホットメルト接着剤を塗布し、硬化して得られる接着剤層を有する積層研磨パッド用接着剤層付き支持層。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂である請求項6記載の積層研磨パッド用接着剤層付き支持層。
【請求項8】
前記ポリエステル系ホットメルト接着剤は、融点が100〜200℃であり、比重が1.1〜1.3であり、メルトフローインデックスが、温度150℃及び荷重2.16kgの条件にて16〜26g/10minである請求項6又は7記載の積層研磨パッド用接着剤層付き支持層。
【請求項9】
前記支持層は、前記接着剤層が設けられる面にスキン層を有するポリウレタン発泡シートである請求項6〜8のいずれかに記載の積層研磨パッド用接着剤層付き支持層。
【請求項10】
前記ポリウレタン発泡シートは、熱硬化性ポリウレタンにより形成されている請求項9記載の積層研磨パッド用接着剤層付き支持層。

【公開番号】特開2012−232404(P2012−232404A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−67537(P2012−67537)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】