説明

積層造型法により作成された成形型

【課題】優れた離型性と高い機械強度、耐久性、耐摩耗性を同時に実現でき、従来の方法に比べて成形型の作成工程を短縮することができる成形型を提供する。
【解決手段】球状カーボンと樹脂粉末を必須成分とする複合材料粉末を用いて、積層造型法により作成された成形型。特には、前記造型法が粉末焼結法であり、前記球状カーボンが複合材料粉末中に10〜80質量%含有する。また本発明の成形型は射出成形、発泡成形、RIM成形、注型、真空注型、真空成形、RTM成形、粉末成形、ブロー成形、圧縮成形、プレス成形、押出成形、FRP成形に用いる型として好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造型法により作成された成形型に関する。より詳細には、球状カーボンと樹脂粉末を必須成分とする複合材料粉末を使用し、積層造型法により作成された成形型であり、従来の成形型に比べて強度、耐摩耗性、耐久性及び離型性に優れ、成形型の工程時間を短縮することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、試作品及び少量品用途向けに、光硬化性樹脂を硬化させて立体形状を作成する光造形法により成形型を製造する方法(例えば、特許文献1参照。)や、粉末焼結法により成形型を作成する方法(例えば、非特許文献1参照。)が知られている。さらに近年では光造形法または粉末焼結法で型表面及びリブを作成後、補強し強度を上げる方法も報告されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
粉末焼結法の複合材料粉末としては、ガラスビーズ、アルミニウム粉末等の繊維状フィラーを樹脂粉末と混合し造型することで、樹脂粉末単独の場合よりも成形物の強度を向上させる方法も知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−205157号公報
【特許文献2】特開2003−94443号公報
【特許文献3】特表平11−509485号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】早野誠治著 「粉末焼結積層造形法による金型制作技術」 成型加工 社団法人プラスチック成形加工学会 2001年12月20日 第13巻 第12号 p.771−776
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の光造形法により作成された成形型は、機械強度が低いため、光造形法により作成された成形型を使用し、一般的な圧力で成形すると、成形型が破損または変形してしまう。また、非特許文献1記載の成形型では、成形型の工程数が多いため時間がかかり、この成形型を使用して成形した場合、成形型と成形物との離型性が悪く、成形物にバリが発生してしまうこともある。さらに、特許文献2記載の補強された成形型では、成形型の強度の向上が見られるものの、成形型の工程数が多いため、成形型を作成するのに時間が掛かってしまう。
【0007】
また、特許文献3に記載の複合材料粉末を用いて、積層造型法により作成された成形型は、強度は得られるものの、この成形型を使用し成形した場合、成形型と成形物との離型性が悪いため、成形型として使用には制限があった。
【0008】
本発明は、上記従来技術が有する問題点を解決するためのものであり、成形型の作成時間が短縮され、かつ強度、離型性、耐久性及び耐摩耗性が向上した成形型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、球状カーボンと樹脂粉末を必須成分とする複合材料粉末を使用し、積層造型法より作成された成形型であることを特徴とする。
【0010】
本発明の積層造型法は、粉末焼結法であることが好ましい。
【0011】
本発明の球状カーボンは、複合材料粉末中の10〜80質量%であることが好ましい。
【0012】
本発明の成形型は、射出成形、発泡成形、RIM成形、注型、真空注型、真空成形、RTM成形、粉末成形、ブロー成形、圧縮成形、プレス成形、押出成形、FRP成形に使用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
球状カーボンと樹脂粉末を複合材料粉末の必須成分として使用し、積層造型法により作成された本発明の成形型は、優れた離型性、高い機械強度、耐久性、及び耐摩耗性を同時に実現でき、従来の成形型と比べて、成形型の作成工程を短縮することができる。そのため本発明の成形型は、射出成形、発泡成形、RIM成形、注型、真空注型、真空成形、RTM成形、粉末成形、ブロー成形、圧縮成形、プレス成形、押出成形、FRP成形に用いる型として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例に用いた射出成形型を示す概念図
【図2】実施例に用いた射出成形型及び母型の配置を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本発明の成形型に用いられる複合材料粉末について説明する。本発明の成形型に用いられる複合材料粉末は球状カーボンと樹脂粉末を必須成分とする。
【0016】
本発明の成形型に用いられる複合材料粉末を構成する球状カーボンとしては、その形状が真球状であり、球形度((粒子の投影面積に等しい円の直径)/(粒子の投影像に外接する最小円の直径)で測る指数)が0.7〜1.0であるものであり、例えば球状熱硬化性硬化物を400〜1000℃、窒素雰囲気下で炭化することによって得ることができる。具体的には群栄化学工業株式会社製のGCタイプが好ましい。球状カーボンは表面が不活性であるため、これを使用した成形型は離型性が良い。さらに、球状カーボンは自己潤滑性を有すため、これを使用した成形型は耐磨耗性に優れるため、この成形型を使用し成形した成形品は、バリが出にくいものとなる。
【0017】
また、本発明の成形型に用いられる複合材料中の球状カーボンの含有量は、好ましくは10質量%から80質量%、さらに好ましくは20質量%から60質量%である。この範囲の場合、成形型の成形性に優れるうえ、成形型の強度及び弾性率が向上するため、本発明の成形型を使用して成形した場合、成形時の圧力では変形せずに、耐久性に優れる。
【0018】
本発明の成形型に用いられる複合材料を構成する球状カーボンは、カップリング剤等で表面処理を行うことができる。表面処理を行うことで成形時に球状骨材と樹脂の接着性が向上し、添加量は0.05〜0.1質量%が好ましく、2種以上混合して使用してもよい。
【0019】
本発明の成形型に用いられる複合材料粉末を構成する樹脂粉末は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、好ましくはポリアミド、ポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアリールエーテルケトン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、さらに好ましくはポリアミドであり、2種以上混合して使用してもよい。
【0020】
本発明の成形型に用いられる複合材料は必要によって、帯電防止剤、滑剤といった助剤を添加することができる。帯電防止剤、滑剤を添加することで粉末の流動性が向上し、成形し易くなる。帯電防止剤、滑剤として、好ましくは、界面活性剤、シリコーン樹脂、金属石鹸である。また、添加量は0.05〜0.1質量%が好ましく、2種以上混合して使用してもよい。
【0021】
本発明の成形型を作成する積層造型法とは、別名ラピットプロトタイピング技術とも呼ばれ、電子的な立体情報からスライスデータと呼ばれる3次元の立体を輪切りにした情報に分割し、この情報に基づいた形に実際の材料を形成し、これを順次積重ねることで実際の立体を作る技術である。積層造型法としては、光造形法、粉末焼結法、インクジェット法、シート積層法、押出し法などの造型方法が挙げられるが、本発明の成形型を作成する方法では、粉末焼結法であることが好ましい。粉末焼結法は、他の積層造形法と比べて、得られる造形物の強度が高い。そのため成形時に大きな圧力が加わる成形型に適している。また、粉末焼結法は造形の際に造形物を支えるサポートを必要としないため、従来の成形型と比べて成形型の作成時間を短縮することができる。
【0022】
本発明の成形型は、上記複合材料粉末を使用することで、成形物との離型性が良く、機械強度、耐久性及び耐磨耗性が高く、上記積層造型法により作成することで成形型の作成時間を短縮することができるため、用途は特に制限されず従来の成形型と同様に各種成形型用途に使用することができ、各種成形品、特には試作品の製造に好適である。特にプラスチックの射出成形用、発泡成形用、RIM成形(Reaction Injection Molding)用、注型用、真空注型用、真空成形用、RTM成形(Resin Transfer Molding)用、粉末成形用、ブロー成形用、圧縮成形用、プレス成形用、押出成形用、FRP成形用の成形型として有効に使用できる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0024】
[実施例1]
球状カーボン(群栄化学工業社製:GC−050)50質量部と球状ポリアミド12(EOS社製:PA2200)50質量部をスクリュー型ミキサーで5分間混合した試料を用いてレーザー焼結機(EOS社製:EOSINT P380)で、図1に示す形状の射出成形型(1、2)を作成した。この成形型の作成日数を表1に示した。
【0025】
[実施例2]
球状カーボン(群栄化学工業社製:GC−050)70質量部と球状ポリアミド12(EOS社製:PA2200)30質量部をスクリュー型ミキサーで5分間混合した試料を用いてレーザー焼結機(EOS社製:EOSINT P380)で図1に示す形状の射出成形型(1、2)を作成した。この成形型の作成日数を表1に示した。
【0026】
[実施例3]
球状カーボン(群栄化学工業社製:GC−050)40質量部と球状ポリアミド12(EOS社製:PA2200)60質量部をスクリュー型ミキサーで5分間混合した試料を用いてレーザー焼結機(EOS社製:EOSINT P380)で図1に示す形状の射出成形型(1、2)を作成した。この成形型の作成日数を表1に示した。
【0027】
[比較例1]
球状カーボン(群栄化学工業社製:GC−050)8質量部と球状ポリアミド12(EOS社製:PA2200)92質量部をスクリュー型ミキサーで5分間混合した試料を用いてレーザー焼結機(EOS社製:EOSINT P380)で射出成形用の図1に示す形状の射出成形型(1、2)を作成した。この成形型の作成日数を表1に示した。
【0028】
[比較例2]
球状カーボン(群栄化学工業社製:GC−050)90質量部と球状ポリアミド12(EOS社製:PA2200)10質量部をスクリュー型ミキサーで5分間混合した試料を用いてレーザー焼結機(EOS社製:EOSINT P380)で図1に示す形状の射出成形型(1、2)を作成しようと試みたが、作成出来ずに崩れてしまった。
【0029】
[比較例3]
ガラスビーズ30質量部と球状ポリアミド12(EOS社製:PA2200)70質量部をスクリュー型ミキサーで5分間混合した試料を用いてレーザー焼結機(EOS社製:EOSINT P380)で図1に示す形状の射出成形型(1、2)を作成した。この成形型の作成日数を表1に示した。
【0030】
[比較例4]
ガラスビーズ50質量部とアクリレート50質量部をスクリュー型ミキサーで5分間混合した試料を用いて、光造形法にて図1に示す形状の射出成形型(1、2)を作成した。この成形型の作成日数を表1に示した。
【0031】
[比較例5]
アルミ合金(Al−Mg)のブロックをマシニングセンサーで切削加工し、図1に示す形状の射出成形型(1、2)を作成した。この成形型の作成日数を表1に示した。
【0032】
[射出成形試験]
実施例1〜3、比較例1、3〜5で作成した射出成形用成形型をそれぞれ図2のように射出成形機に取り付け、射出温度230℃、射出圧力800kgf/cm2の条件下で、ABS樹脂の射出成形を行い、ショット数、離型性、成形型の状態について表1にまとめた。
【0033】
[曲げ強度試験]
実施例1〜3、比較例1、3、4で作成した射出成形用成形型の一部を採取してテストピースを作成した。このテストピースを用いて、JISK7171に記載の方法で曲げ強度を測定し、結果を表1にまとめた。
【0034】
【表1】

【0035】
表1より、実施例1〜3において作成された本発明の成形型は、曲げ強度も高く、射出成形試験において、100個の成形品を製造した後も、成形型にバリや破損が生じず、比較例4及び5において作成された成形型と比べて、製作日数を短縮することができた。一方、比較例1及び3において作成された成形型では、曲げ強度は高いものの、射出成形試験において、成形物が成形型から抜けず、1ショットで断念した。また、比較例4で作成された成形型では、曲げ強度が低いため、1ショットで射出成形圧力に耐えられず破損してしまった。さらに、比較例5で作成された成形型は、製作日数に時間が掛かり、30ショット毎に離型剤を塗布しなければならず、53ショット目から成形型にバリが発生してしまった。以上より、本発明の成形型は、従来の成形型と比べて作成日数が短くすることが可能である。また本発明の成形型は、従来の成形型に比べて、曲げ強度、離型性、耐久性及び耐磨耗性が高い。
【符号の説明】
【0036】
1 射出成形用型(固定側)
2 射出成形用型(可動側)
3 母型(固定側)
4 母型(可動側)
5 スプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状カーボンと樹脂粉末を必須成分とする複合材料粉末を使用し、積層造型法により作成された成形型。
【請求項2】
前記積層造型法が粉末焼結法であることを特徴とする請求項1記載の成形型。
【請求項3】
球状カーボンを複合材料粉末中に10〜80質量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の成形型。
【請求項4】
射出成形、発泡成形、RIM成形、注型、真空注型、真空成形、RTM成形、粉末成形、ブロー成形、圧縮成形、プレス成形、押出成形、FRP成形に用いる型であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形型。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−234800(P2010−234800A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5414(P2010−5414)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000165000)群栄化学工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】