説明

積層防湿シート

【課題】優れた層間強度と水蒸気バリア性とを兼ね備えた積層防湿シートを提供する。
【解決手段】耐候性フィルム層、接着剤(I)層、水蒸気バリアフィルム層、接着剤(II)層及びシーラント層の少なくとも5層をこの順に有し、前記水蒸気バリアフィルム層が、基材の片面上に無機薄膜層を積層してなる水蒸気バリアフィルムからなり、無機薄膜層側の面が前記耐候性フィルム層側に配置されている積層防湿シートであって、前記接着剤(I)層を構成する接着剤(I)の25℃、10Hz、歪0.1%での貯蔵弾性率E1が20MPa以下であり、前記接着剤(II)層を構成する接着剤(II)の25℃、10Hz、歪0.1%での貯蔵弾性率E2が5MPa以上であり、かつE2>E1である、積層防湿シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層防湿シートに関し、詳しくは太陽電池等の電子デバイスに用いられる積層防湿シートに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルム基材の表面に酸化ケイ素等の無機薄膜を形成した水蒸気バリアフィルムは、他のプラスチックフィルムと積層され、さまざまな包装用途に用いられている。近年は、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、有機TFT、有機半導体センサー、有機発光デバイス等の有機デバイス、電子ペーパー、フィルムコンデンサー、無機EL素子、カラーフィルター等で使用する基材フィルムや表面保護材、真空断熱材等としての新しい用途にも使用されている。
例えば、太陽電池用の表面保護シートの一般的な積層構造の一態様としては、(外側)耐候性フィルム層/接着剤層/水蒸気バリアフィルム層/接着剤層/シーラント層(内側)の順序で積層されたものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、二軸延伸ポリエステルフィルムを基材とする防湿フィルムにポリウレタン系接着剤(主剤タケラックA511/硬化剤タケネートA50=10/1溶液)を使用して接着剤層を設け、順次フィルムを積層し太陽電池用表面保護材を製作し、85℃、85%湿度下で1000時間加速試験後のバリアと層間強度を評価し、両特性の劣下防止の提案を行なっている。
また、特許文献2では、同じく二軸延伸ポリエステルフィルムを基材とする防湿フィルムに二液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いてPVFフィルムを貼り合わせた後、プレッシャークッカーテスト(PCT)(高温高圧による過酷環境試験、105℃92時間)前後の防湿性能と層間強度を評価、特性の劣下防止の提案を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−188072号公報
【特許文献2】特開2009−49252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、太陽電池等の電子デバイスに用いられる積層防湿シートについては、耐候性、防湿性、耐久性等に関してより高い性能が求められている。しかしながら、上記の特許文献に記載された方法を用いても、優れた層間強度と水蒸気バリア性とを兼ね備えた積層防湿シートを得るには十分ではない。
【0006】
したがって、本発明の課題は、優れた層間強度と水蒸気バリア性とを兼ね備えた積層防湿シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、従来の耐候性フィルム層/接着剤層/水蒸気バリアフィルム層/接着剤層/シーラント層の順序で積層された積層防湿シートにおいて、シートの端面から水蒸気がシートの内側に侵入して水蒸気バリア性に悪影響を与える場合があることを見出した。そこで鋭意検討を重ねた結果、水蒸気バリアフィルム層とシーラント層とを貼り合わせる接着剤として貯蔵弾性率の高い接着剤を用いることで、接着剤層自体の水蒸気バリア性を高め、シート端面からの水蒸気の侵入を防止できることを見出した。
一方、上記の特許文献に記載されているように、水蒸気バリアフィルム層には、基材の片面上に無機薄膜層が形成されている。本発明者らは、水蒸気バリアフィルム層の無機薄膜層側の面と耐候性フィルム層とを貼り合わせる接着剤として貯蔵弾性率の高い接着剤を用いると、比較的硬く可撓性が低いために、層間強度が十分でなく剥離が生じる場合があることを見出した。
前記の5層構成の積層防湿シートの2つの接着剤層における接着剤は、生産性の点から、同じものを使用することが通例である。しかしながら、本発明者らは、更に鋭意検討を重ねた結果、前記の5層構成の積層防湿シートの2つの接着剤層において、それぞれ異なる性能を有する接着剤を用いるという新規な発想に基づき、優れた層間強度と水蒸気バリア性とを両立できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づきなされるに至った発明である。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の積層防湿シートを提供するものである。
耐候性フィルム層、接着剤(I)層、水蒸気バリアフィルム層、接着剤(II)層及びシーラント層の少なくとも5層をこの順に有し、前記水蒸気バリアフィルム層が、基材の片面上に無機薄膜層を積層してなる水蒸気バリアフィルムからなり、無機薄膜層側の面が前記耐候性フィルム層側に配置されている積層防湿シートであって、前記接着剤(I)層を構成する接着剤(I)の25℃、10Hz、歪0.1%での貯蔵弾性率E1が20MPa以下であり、前記接着剤(II)層を構成する接着剤(II)の25℃、10Hz、歪0.1%での貯蔵弾性率E2が5MPa以上であり、かつE2>E1である、積層防湿シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層防湿シートは、優れた層間強度と水蒸気バリア性とを兼ね備える。本発明の積層防湿シートを太陽電池等の電子デバイス用の表面保護部材として適用することで、太陽電池等の電子デバイスの性能劣化を防止し、電子デバイスの耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の積層防湿シートは、耐候性フィルム層、接着剤(I)層、水蒸気バリアフィルム層、接着剤(II)層及びシーラント層の少なくとも5層をこの順に有する。
以下、各層について詳細に説明する。
【0011】
(耐候性フィルム層)
耐候性フィルム層を構成するフィルムとしては、耐候性に優れるものであれば特に限定されず任意のフィルムを使用することができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3−フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂フィルム、或いは、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂に紫外線吸収剤を練り込んだ樹脂組成物を成膜したもの等が好ましく用いられる。上記樹脂は1種で用いることもできるが2種以上組み合わせて使用することもできる。
これらの中でも、長期耐久性の観点からは、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体(FEP)がより好ましく用いられる。また、長期耐候性及びフィルム収縮率の観点からは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂に紫外線吸収剤を塗布及び練り込んだ樹脂組成物を成膜したものが好ましく用いられる。中でもフィルム物性の点から、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムや、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンナフタレートと他のプラスチックの共押出二軸延伸フィルムが好ましい。
また、太陽電池保護材への使用を考えると可撓性に富み、耐熱性、防湿性、紫外線耐久性に優れる性能を有する耐候性フィルムであることが好ましく、フッ素系フィルムや耐加水分解性ポリエステルフィルムが好ましく用いられる。
【0012】
耐候性フィルムの厚さは、一般に20〜200μm程度であり、フィルムの取扱いやすさ及びコストの点から20〜100μmが好ましく、20〜50μmがより好ましい。
【0013】
(接着剤(I)層)
接着剤(I)層は、耐候性フィルム層と水蒸気バリアフィルム層とを貼り合わせる役割を有する。本発明の積層防湿シートにおける接着剤(I)層は、水蒸気バリアフィルム層の外側に配置されているため、水蒸気バリア性は水蒸気バリアフィルム層によって担保されている。そのため、接着剤(I)層には、層自体の水蒸気バリア性よりもむしろ層間強度に優れていることが求められる。
層間強度の観点から、接着剤(I)層を構成する接着剤(I)の25℃、10Hz、歪0.1%での貯蔵弾性率E1は、20MPa以下であり、好ましくは18MPa以下、より好ましくは10MPa以下である。貯蔵弾性率E1の下限は特に限定されないが、接着性等の観点から、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、更に好ましくは5MPa以上である。
なお、貯蔵弾性率E1は、粘弾性測定装置(例えば、アイティ計測(株)製、商品名:粘弾性スペクトロメーターDVA−200)等を用いて測定することができる。
【0014】
接着剤(I)層を構成する接着剤(I)としては、特定の貯蔵弾性率E1を有するものであれば特に限定されない。接着剤の種類は特に限定されず、例えば、ポリウレタン系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ポリオレフィン系接着剤等の任意の接着剤を用いることができる。本発明では、接着剤(I)としては、特定の貯蔵弾性率を有すると共に、十分な耐候性を有し、長期間の屋外使用で接着強度が維持され、かつ硬化後の構造変化が少なく安定であること等の観点から、ポリウレタン系接着剤が好ましい。
【0015】
また、接着剤(I)としては、貯蔵弾性率E1を特定の範囲に制御する観点から、2液型の接着剤であることが好ましい。2液型の接着剤の場合、特定の貯蔵弾性率E1を有する接着剤(I)は、主剤及び硬化剤の種類及び配合比を適宜選択して調製することができる。
【0016】
特定の貯蔵弾性率E1を有する接着剤(I)を調製するためには、接着剤塗布、硬化によって架橋が十分に進行し、かつ残存する未架橋の官能基が少ないことが好ましい。ポリウレタン系接着剤の主剤としては、塗膜形成性と硬化時の反応性のバランスを考慮し、分子量400〜20000のポリオールを好ましく使用でき、更に分子量600〜10000のポリオールをより好ましく使用することができる。
接着剤硬化時に架橋反応が十分に進行するためには、主剤のポリオールの水酸基と硬化剤のイソシアナート基とが互いに十分接近しなくてはならない。すなわち、主剤ポリオールのポリマー鎖間に硬化剤が浸透する必要がある。そのためには硬化剤の分子量はポリオールより小さい方が好ましく、硬化剤に含まれるジイソシアナート又はポリイソシアナートの分子量は300〜10000が好ましく、より好ましくは分子量1000〜5000である。
【0017】
十分な架橋密度を得、かつ残存する官能基数を抑えるために、異なる分子量の主剤と硬化剤を用いるという考え方に基づいて、例えば、主剤として分子量の異なるポリオールを複数種混合して用いる方法も好ましく用いることができる。また、逆に、主剤のポリオールの分子量を、硬化剤ポリイソシアナートの分子量より小さくすることも可能である。
以上のような設計に基づいた接着剤の物性としては、(主剤の粘度/硬化剤の粘度)若しくは(硬化剤の粘度/主剤の粘度)が5以上であることが好ましく、より好ましくは10以上である。また主剤の粘度は、100〜1500mPa・s(25℃)が好ましく、より好ましくは400〜1300mPa・s(25℃)である。硬化剤の粘度としては30〜3000mPa・s(25℃)を好ましく使用できる。
【0018】
接着剤の主剤として具体的には、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオールあるいはポリエステルポリオールを含む組成物等が挙げられるが、熱安定性、湿度安定性等の観点から、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール及びポリエステルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものがより好ましい。また、エステル基ひとつ当たりの分子量が120以上であるポリエステルポリオールも好ましく使用できる。
上記組成物のうち、本発明においては、特に、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリウレタンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を好ましくは30質量%以上、より好ましくは30〜70質量%含有するものが使用できる。
他の成分は0〜30質量%加えることが好ましく、当該他の成分として密着性を向上させるためのアクリル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、ポリオレフィン等が好ましい。また、高耐寒性、耐加水分解性に優れたスチレン−ブタジエンゴム等を好ましく使用できる。
【0019】
ポリカーボネートポリオールの組成物は、例えばメチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネート等、及びエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(NPG)、シクロヘキサンジオール等のジオールを含むものを挙げることができる。
【0020】
ポリエーテルポリオールの組成物は、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドを挙げることができる。これらをアルカリ触媒又は酸触媒を触媒として開環重合を行うことでポリエーテルポリオールを得ることができる。開環重合の出発物質となる活性水素含有化合物としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−へキサンジオール等の多価アルコールを用いることができる。
【0021】
アクリルポリオールの組成物は、アクリル酸誘導体モノマーを単独、また他のモノマーと共重合させて得ることができる。アクリル酸モノマーとしては、例えばヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等を挙げることができる。好ましくは、例えばメチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、脂環式構造を有するシクロヘキシルメタクリレート等のモノマーと共重合させたアクリルポリオールが挙げられる。更に、共重合させるモノマーとして、イソシアナートや無水カルボン酸等と反応して架橋するエポキシ基を側鎖に有する、例えば4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルのような機能性モノマーから任意に選び設計することができる。
【0022】
ポリウレタンポリオールの組成物は、ジオールとジイソシアナートを、イソシアナート基に対する水酸基の比が1以上の割合でウレタン化反応させることにより得ることができる。ポリウレタンポリオールの組成物として、ジオール成分、ジイソシアナート成分を任意に選ぶことができる。
ジオール成分、ジイソシアナート成分は、ポリウレタンポリオールの流動性や溶剤への溶解性等を考慮して選択することができる。ジオール成分として好ましくは、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の1級水酸基を有するジオールが挙げられる。また、イソシアナート成分としては、脂肪族ジイソシアナート、脂環系ジイソシアナート、芳香族イソシアナートが挙げられる。
【0023】
ポリエステルポリオールの組成物は、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、イソフタル酸(IPA)、テレフタル酸(TPA)等のジカルボン酸化合物、及びエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール等のジオール、又はポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールを含むものが挙げられる。
【0024】
ポリエステルポリオールを原料とする接着剤は基材との密着性が高いという点で好ましいが、エステル結合の加水分解による熱劣下を抑制する観点から、加水分解点となり得るエステル結合基数が少ないポリエステルポリオールを選択することが好ましい。例えばネオペンチルグリコール(NPG)等のアルキル鎖の長いグリコール、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環構造をもつグリコールの組成物とすることが好ましい。
更に、例えばポリテトラメチレングリコール(PTMG)のように主鎖構造にポリエーテル構造を含む、加水分解ポリエステルポリオールを選択することが好ましい。このようなポリエステルポリオールとしては、エステル基1個当たりの分子量が、好ましくは50〜8000、より好ましくは100〜5000、更に好ましくは120〜3000である。
【0025】
硬化剤としてはジイソシアネートが好ましく、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族系、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族系、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)等の脂環系がいずれも挙げられる。
硬化後に高い耐熱性をもたせる硬化剤として、例えば芳香族系ジイソシアネートであるXDI、又は脂環系ジイソシアネートであるIPDI等が好ましい。更に、接着剤の黄変を防ぐためには脂環系ジイソシアネートであるIPDI等がより好ましい。
【0026】
主剤がポリカーボネートポリオールを含む場合は、高い耐熱性、高い防湿性という点で優れているが、硬化時においても十分な架橋密度が得られる観点から、柔軟なメチレン鎖を有するHDIを硬化剤として組み合わせることが好ましい。
また、より熱的に安定な接着剤層を得るために、主剤にエポキシ系化合物を含んだものを用いることが好ましい。
接着剤(I)の主剤と硬化剤との好ましい配合比(質量比)は、主剤/硬化剤=5〜25、より好ましくは15〜20であり、(−OH基/−NCO基)=0.05〜1.2、より好ましくは0.1〜1である。
【0027】
本発明における接着剤には、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。紫外線吸収剤の添加量は、接着剤中、通常0.01〜2.0質量%程度であり、0.05〜0.5質量%添加することが好ましい。
【0028】
上記の紫外線吸収剤以外に耐候性を付与する耐候安定剤として、ヒンダードアミン系光安定化剤が好適に用いられる。ヒンダードアミン系光安定化剤は、紫外線吸収剤のようには紫外線を吸収しないが、紫外線吸収剤と併用することによって著しい相乗効果を示す。ヒンダードアミン系光安定化剤の添加量は、接着剤中、通常、0.01〜0.5質量%程度であり、0.05〜0.3質量%添加することが好ましい。
【0029】
接着剤層(I)は、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、その他のコート法、あるいは、印刷法等によって設けることができる。接着剤(I)の塗布量としては、0.1〜10g/m2(乾燥状態)程度が好ましい。
【0030】
(水蒸気バリアフィルム層)
本発明の積層防湿シートにおける水蒸気バリアフィルム層は、基材の片面上に無機薄膜層が積層されてなる水蒸気バリアフィルムからなる。
【0031】
<基材>
上記基材としては、透明基材フィルムであることが好ましく、具体的には、熱可塑性高分子フィルムが好ましく、その材料としては、通常の包装材料に使用しうる樹脂であれば特に制限なく用いることができる。
具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体又は共重合体等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体部分加水分解物(EVOH)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、フッ素樹脂、アクリレート樹脂、生分解性樹脂等が挙げられる。これらの中では、フィルム物性、コスト等の点から、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンが好ましい。中でも、表面平滑性、フィルム強度、耐熱性等の点から、ポリエステルがより好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が特に好ましい。
【0032】
また、上記基材フィルムは、公知の添加剤、例えば、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤等を含有することができる。
【0033】
上記基材としての熱可塑性高分子フィルムは、上記の原料を用いて成形してなるものであるが、基材として用いる際は、未延伸であってもよいし延伸したものであってもよい。また、他のプラスチック基材と積層されていてもよい。
かかる基材フィルムは、従来公知の方法により製造することができ、例えば、原料樹脂を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押出して、急冷することにより実質的に無定型で配向していない未延伸フィルムを製造することができる。また、多層ダイを用いることにより、1種の樹脂からなる単層フィルム、1種の樹脂からなる多層フィルム、多種の樹脂からなる多層フィルム等を製造することができる。
【0034】
この未延伸フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、フィルムの流れ(縦軸)方向又はフィルムの流れ方向とそれに直角な(横軸)方向に延伸することにより、少なくとも一軸方向に延伸したフィルムを製造することができる。延伸倍率は任意に設定できるが、150℃熱収縮率が、0.01〜5%、更には0.01〜2%であることが好ましい。中でもフィルム物性の点から、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムや、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンナフタレートと他のプラスチックの共押出二軸延伸フィルムが好ましい。
【0035】
なお、上記基材フィルムには、無機薄膜との密着性向上のため、アンカーコート剤を塗布することが好ましい。アンカーコート剤としては、溶剤性又は水性のポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル変性樹脂、ビニルアルコール樹脂、ビニルブチラール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ニトロセルロース樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、メチレン基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコーン樹脂及びアルキルチタネート等を単独、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。また、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、安定剤、潤滑剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤等の添加剤を含有させてもよく、また、それらの添加剤を上記樹脂と共重合させてもよい。
【0036】
アンカーコート層の厚みは無機薄膜との密着性向上の観点から、10〜200nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。その形成方法としては、公知のコーティング方法が適宜採択される。例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター、スプレイあるいは刷毛を用いたコーティング方法等の方法がいずれも使用できる。また、蒸着フィルムを樹脂液に浸漬して行ってもよい。塗布後は、80〜200℃程度の温度での熱風乾燥、熱ロール乾燥等の加熱乾燥や、赤外線乾燥等の公知の乾燥方法を用いて溶媒を蒸発させることができる。また、耐水性、耐久性を高めるために、電子線照射による架橋処理を行う事もできる。また、アンカーコート層の形成は、基材フィルムの製造ラインの途中で行う方法(インライン)でも、基材フィルム製造後に行う(オフライン)方法でも良い。
【0037】
<無機薄膜層>
積層防湿フィルムを構成する無機薄膜層としては、アルミニウム等の金属のコーティング膜が知られているが、太陽電池等の電子デバイスに適用した場合、電流がリークする等の恐れがなく透明性に優れることから、シリカ、アルミナ等の無機酸化物のコーティング膜が好ましく用いられる。
【0038】
上記無機酸化物コーティング層の形成方法としては、蒸着法、コーティング法等の方法がいずれも使用できるが、ガスバリア性の高い均一な薄膜が得られるという点で蒸着法が好ましい。この蒸着法には、物理気相蒸着(PVD)、あるいは化学気相蒸着(CVD)等の方法がいずれも含まれる。物理気相蒸着法には、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等が挙げられ、化学気相蒸着法には、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat−CVD)等が挙げられる。
【0039】
無機酸化物コーティング層を構成する無機物質としては、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、水素化炭素等、あるいはこれらの酸化物、炭化物、窒化物又はそれらの混合物が挙げられるが、透明であることから好ましくは酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水素化炭素を主体としたダイアモンドライクカーボンである。特に、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化アルミニウムは、高いガスバリア性が安定に維持できる点で好ましい。
【0040】
上記コーティング膜の厚さは、安定な防湿性能の発現の点から、40〜1000nmであることが好ましく、50〜800nmがより好ましく、50〜600nmが更に好ましい。また、上記基材フィルムの厚さは、一般に5〜100μm程度であり、生産性や取り扱いやすさの点から8〜50μmが好ましく、10〜25μmが更に好ましい。
【0041】
(接着剤(II)層)
本発明の積層防湿シートにおける接着剤(II)層は、水蒸気バリアフィルム層とシーラント層とを貼り合わせる役割を有するとともに、シート端面からの水蒸気の侵入を防止する役割を有する。
接着剤(II)層は、水蒸気バリアフィルム層の内側に配置されているため、接着剤層自体の水蒸気バリア性が低いと、シート端面から水蒸気が侵入するおそれがある。そこで、本発明の積層防湿シートにおける接着剤(II)層には、層自体の水蒸気バリア性が求められる。
【0042】
水蒸気バリア性の観点から、接着剤(II)層を構成する接着剤(II)の25℃、10Hz、歪0.1%での貯蔵弾性率E2は、5MPa以上であり、好ましくは10MPa以上、より好ましくは20MPa以上である。貯蔵弾性率E2の上限は特に限定されないが、層間強度等の観点から、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下である。
なお、貯蔵弾性率E2についても、貯蔵弾性率E1と同様に、粘弾性測定装置(例えば、アイティ計測(株)製、商品名:粘弾性スペクトロメーターDVA−200)等を用いて測定することができる。
【0043】
接着剤(II)層を構成する接着剤(II)としては、特定の貯蔵弾性率E2を有するものであれば特に限定されない。接着剤の種類は特に限定されず、前記接着剤(I)で説明したものの中から適宜選択することができる。具体的には、接着剤(II)としては、ポリウレタン系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ポリオレフィン系接着剤等の任意の接着剤を用いることができ、中でもポリウレタン系接着剤が好ましい。
【0044】
また、接着剤(II)としては、貯蔵弾性率E2を特定の範囲に制御する観点から、2液型の接着剤であることが好ましい。2液型の接着剤の場合、特定の貯蔵弾性率E2を有する接着剤(II)は、主剤及び硬化剤の種類及び配合比を適宜選択して調製することができ、主剤及び硬化剤については前記接着剤(I)で説明したものの中から適宜選択することができる。例えば、接着剤の主剤として具体的には、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオールあるいはポリエステルポリオールを含む組成物等が挙げられるが、熱安定性、湿度安定性等の観点から、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール及びポリエステルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものがより好ましい。
【0045】
接着剤(II)の主剤と硬化剤との好ましい配合比(質量比)は、主剤/硬化剤=5〜25、より好ましくは6〜12であり、(−OH基/−NCO基)=0.05〜1.2、より好ましくは0.1〜1である。
【0046】
接着剤層(II)は、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、その他のコート法、あるいは、印刷法等によって設けることができる。接着剤(II)の塗布量としては、0.1〜10g/m2(乾燥状態)程度が好ましい。
【0047】
本発明の積層防湿シートにおいて、優れた層間強度と水蒸気バリア性を両立させるためには、水蒸気バリアフィルム層の外側と内側とで用いられる接着剤にそれぞれ要求される性能が異なることを考慮しなければならない。このような観点からは、貯蔵弾性率E2>貯蔵弾性率E1の関係を満たすことが求められる。
また、上記観点から、貯蔵弾性率E1及びE2の関係が下記条件(1)を満たすことが好ましい。
(E2−E1)/E2≧0.3 (1)
上記条件を満たすためには、接着剤(I)層を構成する接着剤(I)は比較的軟らかいことが要求されると共に、接着剤(II)層を構成する接着剤(II)は比較的硬いことが要求される。すなわち、接着剤(I)が比較的軟らかいことで、耐候性フィルム層と水蒸気バリアフィルム層との間で剥離の際にかかる応力を緩和することができ、層間強度を向上させることができる。一方、接着剤(II)は比較的硬いことが要求される。このことはすなわち2液型接着剤の架橋がより緻密である、または接着剤中のポリマー鎖の凝集力が大きいことと同義であり、そのような接着剤(II)は、接着剤中を透過する水蒸気を抑制することができ、水蒸気バリア性を向上させることができる。このような観点から、貯蔵弾性率E1及びE2の関係は下記条件(2)を満たすことがより好ましい。
(E2−E1)/E2≧0.5 (2)
【0048】
(シーラント層)
シーラント層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン共重合体、飽和ポリエステル等のヒートシール性を有する樹脂であれば目的に応じて使用することができる。このシーラント層は、フィルム化した材料を、接着剤(II)層を介してラミネートして設けてもよいし、溶融した樹脂を、接着剤(II)層を介して押出しコーティングによりラミネートしてもよい。
シーラント層の厚さは、一般に20〜200μm程度であり、封止性能及びコストの観点から、30〜150μmが好ましく、50〜100μmがより好ましい。
【0049】
本発明の積層防湿シートの各層には、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、諸物性(柔軟性、耐熱性、透明性、接着性等)や成形加工性あるいは経済性等を更に向上させる目的で、例えば、ポリオレフィン系樹脂や各種エラストマー(オレフィン系、スチレン系等)、カルボキシル基、アミノ基、イミド基、水酸基、エポキシ基、オキサゾリン基、チオール基、シラノール基等の極性基で変性された樹脂及び粘着付与樹脂等を含有することができる。
【0050】
該粘着付与樹脂としては、石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、又はそれらの水素添加誘導体等が挙げられる。具体的には、石油樹脂としては、シクロペンタジエン又はその二量体からの脂環式石油樹脂やC9成分からの芳香族石油樹脂があり、テルペン樹脂としてはβ−ピネンからのテルペン樹脂やテルペン−フェノール樹脂が、また、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン樹脂、グリセリンやペンタエリスリトール等で変性したエステル化ロジン樹脂等を例示することができる。また、該粘着付与樹脂は主に分子量により種々の軟化温度を有するものが得られるが、軟化温度が100〜150℃、好ましくは120〜140℃の脂環式石油樹脂の水素添加誘導体が特に好ましい。粘着付与樹脂の配合量は、通常、樹脂組成物を100質量%とした場合、20質量%以下が好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
【0051】
また、積層防湿シートには、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。該添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤(耐候安定剤)、光拡散剤、造核剤、顔料(例えば白色顔料)、難燃剤、変色防止剤等が挙げられる。本発明においては、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤から選ばれる少なくとも一種の添加剤が添加されていることが好ましい。また、本発明においては、例えば、高度の耐熱性を要求される場合は架橋剤及び/又は架橋助剤を配合してもよい。
【0052】
シランカップリング剤の例としては、ビニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基のような不飽和基、アミノ基、エポキシ基等とともに、アルコキシ基のような加水分解可能な基を有する化合物を挙げることができる。シランカップリング剤の具体例としては、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を例示することができる。本発明においては、接着性が良好であり、黄変等の変色が少ないこと等からγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく用いられる。該シランカップリング剤の添加量は、積層防湿シートを構成する各フィルム中、通常、0.1〜5質量%程度であり、0.2〜3質量%添加することが好ましい。また、シランカップリング剤と同様に、有機チタネート化合物等のカップリング剤も有効に活用できる。
【0053】
酸化防止剤としては、種々の市販品が適用でき、モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の各種酸化防止剤を挙げることができる。モノフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール等を挙げることができる。ビスフェノール系酸化防止剤としては、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔{1,1−ジメチル−2−{β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル}2,4,9,10−テトラオキサスピロ〕5,5−ウンデカン等を挙げることができる。
【0054】
高分子フェノール系酸化防止剤としては、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ビドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−{メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキスフェニル)プロピオネート}メタン、ビス{(3,3’−ビス−4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グルコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トリフェノール(ビタミンE)等を挙げることができる。
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオプロピオネート等を挙げることができる。
【0055】
ホスファイト系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(モノ及び/又はジ)フェニルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナスレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等を挙げることができる。
【0056】
本発明においては、酸化防止剤の効果、熱安定性、経済性等からフェノール系及びホスファイト系の酸化防止剤が好ましく用いられ、両者を組み合わせて用いることが更に好ましい。該酸化防止剤の添加量は、積層防湿シートを構成する各層中、通常、0.1〜1質量%程度であり、0.2〜0.5質量%添加することが好ましい。
【0057】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系等の各種紫外線吸収剤を挙げることができ、種々の市販品が適用できる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−クロロベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0058】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニル置換ベンゾトリアゾール化合物であって、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
またトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノール等を挙げることができる。
サリチル酸エステル系紫外線吸収剤としては、フェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート等を挙げることができる。
【0059】
光安定化剤としては、ヒンダードアミン系光安定化剤等を挙げることができる。ヒンダードアミン系光安定化剤としては、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ}]、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セパレート、2−(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等を挙げることができる。
【0060】
本発明に用いられる積層防湿シートを構成する耐候性フィルム、水蒸気バリアフィルム及びシーラントフィルムの製膜方法としては、公知の方法、例えば単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等の溶融混合設備を有し、Tダイを用いる押出キャスト法やカレンダー法等を採用することができ、特に限定されるものではないが、本発明においては、ハンドリング性や生産性等の面からTダイを用いる押出キャスト法が好適に用いられる。Tダイを用いる押出キャスト法での成形温度は、用いる樹脂組成物の流動特性や製膜性等によって適宜調整されるが、概ね130〜300℃、好ましくは、150〜250℃である。シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種添加剤は、予め樹脂とともにドライブレンドしてからホッパーに供給してもよいし、予め全ての材料を溶融混合してペレットを作製してから供給してもよいし、添加剤のみを予め樹脂に濃縮したマスターバッチを作製し供給しても構わない。
【0061】
本発明の積層防湿シートは、上述の製膜された各フィルムを、接着剤(I)及び(II)をそれぞれ用いて、例えば100〜140℃の温度で接着剤を乾燥させ、0〜80℃の温度下、ドライラミネートにより貼り合わせて製造することができる。また、接着剤を十分飽和架橋度に到達させることの観点から、得られた積層体は30〜80℃の温度で、1〜7日間養生を行うことが好ましい。
【0062】
本発明の積層防湿シートの厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは30〜500μm程度、より好ましくは50〜300μm程度、更に好ましくは80〜150μm程度である。
【0063】
このようにして得られる本発明の積層防湿シートは、加速試験であるJIS C60068−2−66に準じるプレッシャークッカーテスト(条件:120℃、32時間)後の耐候性フィルム層と水蒸気バリアフィルム層との層間強度として、好ましくは4N/15mm以上、より好ましくは6N/15mm以上、更に好ましくは8N/15mm以上を達成することができる。層間強度が上記特定値を満たすということは、太陽電池モジュール等に適用した際に積層防湿シートがデラミネーションを引き起こす可能性が低く、本発明の積層防湿シートが耐久性に優れることを意味する。
なお、層間強度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0064】
また、本発明の積層防湿シートは、加速試験であるJIS C60068−2−66に準じるプレッシャークッカーテスト(条件:120℃、32時間)後の水蒸気透過率として、好ましくは0.20[g/m2・日]以下、より好ましくは0.15[g/m2・日]以下、更に好ましくは0.10[g/m2・日]以下を達成することができる。水蒸気透過率が上記特定値を満たすということは、太陽電池モジュール等に適用した際に水蒸気の侵入を十分に防止することができ、本発明の積層防湿シートが水蒸気バリア性に優れることを意味する。
なお、防湿性能はJIS Z0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z0208「防湿包装材量の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に準じ評価することができる。
【0065】
本発明の積層防湿シートは、長期耐久性を必要とされる太陽電池用途、特に太陽電池用表面保護部材に用いられることが、湿気ないし水の透過による発電素子の劣下、内部の導線や電極の発錆を防止することができ、長期に渡る起電力の保持を達成できることから好ましい。
【0066】
太陽電池用積層防湿シートは、該積層防湿シートの構成、特に、無機薄膜層に前記特定のポリウレタン系接着剤を介して前記特定のプラスチックフィルムを張り合わせることにより、高温条件下においても防湿性、層間強度が劣下しない柔軟性と防湿性に優れた積層防湿シートを実現し、同時に太陽電池の性能低下を防止し、太陽電池の軽量化、耐久性、意匠性の向上を図ることができ、有効な太陽電池用積層防湿シートを提供することができる。
【0067】
<太陽電池モジュール、太陽電池の製造方法>
前記積層防湿シートは、そのまま、あるいはガラス板等と貼り合わせて太陽電池用表面保護部材として用いることができる。本発明の積層防湿シートを用いて本発明の太陽電池モジュール及び/又は太陽電池を製造するには、公知の方法により、作成すればよい。
【0068】
本発明の積層防湿シートを太陽電池用フロントシート、バックシート等の表面保護部材の層構成に使用し、太陽電池素子を封止材とともに固定することにより太陽電池モジュールを製作することができる。このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができ、好ましくは、本発明の積層防湿シートを前面保護材として使用した場合、封止材と、太陽電池素子と、下部保護材とを用いて作製された太陽電池モジュールが挙げられ、具体的には、上部保護材(本発明の積層防湿シート)/封止材(封止樹脂層)/太陽電池素子/封止材(封止樹脂層)/下部保護材の構成のもの、下部保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子上に封止材と上部保護材(本発明の積層防湿シート)を形成させるような構成のもの、上部保護材(本発明の積層防湿シート)の内周面上に形成させた太陽電池素子、例えばフッ素樹脂系透明保護材上にアモルファス太陽電池素子をスパッタリング等で作製したものの上に封止材と下部保護材を形成させるような構成のもの等を挙げることができる。上記上部保護材として本発明の積層防湿シートの外側にガラス板を貼り合わせることは任意である。
【0069】
太陽電池素子としては、例えば、単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、アモルファスシリコン型、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル等のIII−V族やII−VI族化合物半導体型、色素増感型、有機薄膜型等が挙げられる。
本発明における表面保護材を用いて、太陽電池モジュールを形成する場合、前記太陽電池発電素子の種類により防湿性が1.0[g/(m2・日)]未満程度の低防湿フィルムから0.01[g/(m2・日)]未満程度の高防湿フィルムまで素子のタイプに応じて適宜選択し、耐候性フィルム等と接着剤を使用し積層して形成する。
【0070】
本発明の積層防湿シートを用いて作製された太陽電池モジュールを構成する各部材については、特に限定されるものではないが、封止材としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体を挙げることができる。下部保護材としては、金属や各種熱可塑性樹脂フィルム等の単層もしくは多層のシートであり、例えば、錫、アルミ、ステンレス等の金属、ガラス等の無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィン等の単層もしくは多層の保護材を挙げることができる。上部及び/又は下部の保護材の表面には、封止材や他の部材との接着性を向上させるためにプライマー処理やコロナ処理等公知の表面処理を施すことができる。
【0071】
本発明の積層防湿シートを用いて作製された太陽電池モジュールを既述した上部保護材(本発明の積層防湿シート)/封止材/太陽電池素子/封止材/下部保護材のような構成のものを例として説明する。太陽光受光側から順に、本発明の積層防湿シート、封止樹脂層、太陽電池素子、封止樹脂層、バックシートが積層されてなり、更に、バックシートの下面にジャンクションボックス(太陽電池素子から発電した電気を外部へ取り出すための配線を接続する端子ボックス)が接着されてなる。太陽電池素子は、発電電流を外部へ電導するために配線により連結されている。配線は、バックシートに設けられた貫通孔を通じて外部へ取り出され、ジャンクションボックスに接続されている。
【0072】
太陽電池モジュールの製造方法としては、公知の製造方法が適用でき、特に限定されるものではないが、一般的には、本発明の積層防湿シート、封止樹脂層、太陽電池素子、封止樹脂層、下部保護材の順に積層する工程と、それらを真空吸引し加熱圧着する工程を有する。また、バッチ式の製造設備やロール・ツー・ロール式の製造設備等も適用することができる。
【0073】
本発明の積層防湿シートを用いて作製された太陽電池モジュールは、適用される太陽電池のタイプとモジュール形状により、モバイル機器に代表される小型太陽電池、屋根や屋上に設置される大型太陽電池等屋内、屋外に関わらず各種用途に適用することができる。
【0074】
本発明の太陽電池モジュール及び/又は太陽電池は、この太陽電池用保護シート、封止材、発電素子、封止材、裏面保護シートを、常法に従って、真空ラミネーターで、温度が好ましくは130〜180℃、より好ましくは130〜150℃、脱気時間2〜15分、プレス圧力0.5〜1atm、プレス時間が好ましくは8〜45分、より好ましくは10〜40分で加熱加圧圧着することにより容易に製造することができる。
【実施例】
【0075】
以下に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、これらの実施例及び比較例により本発明は制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるシートについての種々の物性の測定及び評価は次のようにして行った。なお、本実施例においては、熱ラミネート条件は150℃で30分とした。
【0076】
<物性測定>
(1)接着剤層の貯蔵弾性率E1及びE2
調製された各接着剤塗液を、固形分塗工量20g/m2となるようにシリコーン離型PETフィルムに塗布し、40℃で4日間養生し接着剤層を作成した。その後、接着剤層のみを取り出し、所定の厚みに重ね、粘弾性測定装置(アイティ計測(株)製、商品名:粘弾性スペクトロメーターDVA−200)を用いて、試料(縦4mm、横60mm、厚み200μm)を振動周波数10Hz、歪0.1%、昇温速度3℃/分、チャック間25mmで横方向について、−100℃から180℃まで測定し、得られたデータから150℃における引張り貯蔵弾性率[MPa]を求めた。なお、昇温時にサンプル形状変化から150℃での測定が困難な場合、貯蔵弾性率は0とした。
【0077】
(2)耐候性フィルム層と水蒸気バリアフィルム層との層間強度
積層防湿シートを測定幅15mmの短冊状に切り出し、積層シートの耐候性フィルム側から耐候性フィルムのみが切れるくらいの深さに切れ目を入れ、引っ張り試験機((株)オリエンテック製、商品名:STA−1150)を用いて300mm/minで耐候性フィルムのみを剥がすことで、耐候性フィルム層と水蒸気バリアフィルム層との間の層間強度(N/15mm)を測定した。
【0078】
(3)防湿性能
養生後の各積層防湿シート(1〜5)の防湿性能は、JIS Z0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に順じ、次の手法で評価した。
透湿面積10.0cm×10.0cm角の各サンプルを2枚用い、吸湿剤として無水塩化カルシウム約20gを入れ四辺を封じた袋を作製し、その袋を温度40℃相対湿度90%の恒温恒湿装置に入れ、72時間以上の間隔でおよそ200日目まで質量測定し、4日目以降の経過時間と袋質量との回帰直線の傾きから水蒸気透過率を算出した。水蒸気透過率が低いほど、水蒸気バリア性に優れる。
【0079】
<構成フィルム>
[耐候性フィルム]
厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名:テオネックスQ51C)を使用した。
[シーラントフィルム]
厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績(株)製、商品名:P1146)を使用した。
【0080】
[水蒸気バリアフィルム]
基材フィルムとして、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名:テオネックスQ51C12)を用い、そのコロナ処理面に、下記のコート液を塗布乾燥して厚さ0.1μmのコート層を形成した。
次いで、真空蒸着装置を使用して1.33×10-3Pa(1×10-5Torr)の真空下でSiOを加熱蒸発させ、コート層上に厚さ50nmのSiOx(x=1.5)薄膜を有する水蒸気バリアフィルム(無機薄膜層フィルム)を得た。作成した水蒸気バリアフィルムの防湿性能は0.01[g/m2・day]であった。
【0081】
(コート液)
ポリビニルアルコール樹脂(日本合成(株)製、商品名:ゴーセノール、ケン化度:97.0〜98.8mol%、重合度:2400)220gをイオン交換水2810gに加え加温溶解した水溶液に、20℃で撹拌しながら35%塩酸645gを加えた。次いで、10℃でブチルアルデヒド3.6gを撹拌しながら添加し、5分後に、アセトアルデヒド143gを撹拌しながら滴下し、樹脂微粒子を析出させた。次いで、60℃で2時間保持した後、液を冷却し、炭酸水素ナトリウムで中和し、水洗、乾燥し、ポリビニルアセトアセタール樹脂粉末(アセタール化度75mol%)を得た。
また、架橋剤としてイソシアネート樹脂(住友バイエルウレタン(株)製、商品名:スミジュールN−3200)を用い、水酸基に対するイソシアネート基の当量比が1:2になるように混合した。
【0082】
[接着剤塗液]
(接着剤塗液(a))
ポリエステルポリオール成分を含む主剤としてIS801(商品名、東洋インキ製造(株)製、エステル基1つあたりの分子量は105、粘度1700[mPa・sec])を用い、脂肪族系のヘキサメチレンジイソシアナート成分と脂環系のイソホロンジイソシアナートを含む硬化剤としてCR001(商品名、東洋インキ製造(株)製)を用いた。
上記の主剤IS801と硬化剤CR001とを質量比で10:1となるように混合し、固形分濃度が30質量%となるように酢酸エチルで希釈して接着剤塗液(a)を調製した。
【0083】
(接着剤塗液(b))
上記の主剤IS801と硬化剤CR001とを質量比で10:0.5となるように混合し、固形分濃度が30質量%となるように酢酸エチルで希釈して接着剤塗液(b)を調製した。
【0084】
(接着剤塗液(c))
ポリカーボネートポリオール成分を含む主剤としてA1102(商品名、三井化学ポリウレタン(株)製)を用い、脂肪族系のヘキサメチレンジイソシアナート成分を含む硬化剤としてA3070(商品名、三井化学ポリウレタン(株)製)を用いた。
上記の主剤A1102と硬化剤A3070とを質量比で16:1となるように混合し、固形分濃度が30質量%となるように酢酸エチルで希釈して接着剤塗液(c)を調製した。
【0085】
(接着剤塗液(d))
ポリウレタンポリオール成分を含む主剤としてHD1013(商品名、ロックペイント(株)製)を用い、脂肪族系のヘキサメチレンジイソシアナート成分を含む硬化剤としてH62(商品名、ロックペイント(株)製)を使用した。
上記の主剤HD1013と硬化剤H62とを質量比で10:1.5となるように混合し、固形分濃度が30質量%となるように酢酸エチルで希釈して接着剤塗液(d)を調製した。
【0086】
(接着剤塗液(e))
上記の主剤HD1013と硬化剤H62とを質量比で10:0.5となるように混合し、固形分濃度が30質量%となるように酢酸エチルで希釈して接着剤塗液(d)を調製した。
【0087】
(接着剤塗液(f))
ポリエステルポリオール成分を含む主剤としてA1143(商品名、三井化学ポリウレタン(株)製)を用い、脂環系のイソホロンジイソシアナートと芳香族系のキシリレンジイソシアナートとを含む硬化剤としてタケネートA−50(商品名、三井化学(株)製)を使用した。
上記の主剤A1143と硬化剤タケネートA−50とを質量比で9:1となるように混合し、固形分濃度が30質量%となるように酢酸エチルで希釈して接着剤塗液(f)を調製した。
【0088】
実施例1
耐候性フィルムに、接着剤(I)として接着剤塗液(b)を固形分5g/m2となるように塗布乾燥し、水蒸気バリアフィルムの無機薄膜層側とドライラミネートで貼り合わせて積層体A−1を得た。次いで、積層体A−1の水蒸気バリアフィルムに、接着剤(II)として接着剤塗液(a)を固形分5g/m2となるように塗布乾燥し、シーラントフィルムをドライラミネートで貼り合わせ、60℃5日間養生し、積層防湿シート(1)を作成した。
積層防湿シート(1)について、プレッシャークッカーテスト(条件:120℃、32時間)を行った後、水蒸気透過率の測定及び耐候性フィルム層と水蒸気バリアフィルム層との間の層間強度の測定を行った。
【0089】
実施例2
接着剤(I)として接着剤塗液(e)を使用し、接着剤(II)として接着剤塗液(d)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、積層防湿シート(2)を作成し、積層防湿シート(2)における耐候性フィルム層と水蒸気バリアフィルム層との層間強度及び積層防湿シート(2)の水蒸気透過率を測定した。
【0090】
実施例3
接着剤(I)として接着剤塗液(c)を使用し、接着剤(II)として接着剤塗液(a)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、積層防湿シート(3)を作成し、積層防湿シート(3)における耐候性フィルム層と水蒸気バリアフィルム層との層間強度及び積層防湿シート(3)の水蒸気透過率を測定した。
【0091】
比較例1
接着剤(I)として接着剤塗液(a)を使用し、接着剤(II)として接着剤塗液(a)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、積層防湿シート(4)を作成し、積層防湿シート(4)における耐候性フィルム層と水蒸気バリアフィルム層との層間強度及び積層防湿シート(4)の水蒸気透過率を測定した。
【0092】
比較例2
接着剤(I)として接着剤塗液(f)を使用し、接着剤(II)として接着剤塗液(f)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、積層防湿シート(5)を作成し、積層防湿シート(5)における耐候性フィルム層と水蒸気バリアフィルム層との層間強度及び積層防湿シート(5)の水蒸気透過率を測定した。
【0093】
【表1】

【0094】
接着剤(I)及び(II)として、共に貯蔵弾性率が比較的高い接着剤を用いた比較例1のシートは、水蒸気透過率が低く水蒸気バリア性に優れるものの、耐候性フィルム層と水蒸気バリアフィルム層との層間強度が著しく低い。また、接着剤(I)及び(II)として、共に貯蔵弾性率が比較的低い接着剤を用いた比較例2のシートは、耐候性フィルム層と水蒸気バリアフィルム層との層間強度が十分であるものの、水蒸気透過率が高く水蒸気バリア性に劣る。
これに対し、接着剤(I)として貯蔵弾性率が比較的低い接着剤を用いるとともに接着剤(II)として貯蔵弾性率が比較的高い接着剤を用いた実施例1〜3の積層防湿シートは、十分な層間強度と十分な水蒸気バリア性とを両立できる。したがって、本発明の積層防湿シートは、優れた層間強度と水蒸気バリア性とを兼ね備える。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の積層防湿シートは、優れた層間強度と水蒸気バリア性とを兼ね備える。したがって、本発明の積層防湿シートは、太陽電池等の電子デバイス用の表面保護部材として好適に適用することができ、これにより太陽電池等の電子デバイスの性能劣化を防止し、電子デバイスの耐久性を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐候性フィルム層、接着剤(I)層、水蒸気バリアフィルム層、接着剤(II)層及びシーラント層の少なくとも5層をこの順に有し、前記水蒸気バリアフィルム層が、基材の片面上に無機薄膜層を積層してなる水蒸気バリアフィルムからなり、無機薄膜層側の面が前記耐候性フィルム層側に配置されている積層防湿シートであって、前記接着剤(I)層を構成する接着剤(I)の25℃、10Hz、歪0.1%での貯蔵弾性率E1が20MPa以下であり、前記接着剤(II)層を構成する接着剤(II)の25℃、10Hz、歪0.1%での貯蔵弾性率E2が5MPa以上であり、かつE2>E1である、積層防湿シート。
【請求項2】
前記の貯蔵弾性率E1及びE2の関係が下記条件(1)を満たす、請求項1に記載の積層防湿シート。
(E2−E1)/E2≧0.3 (1)
【請求項3】
前記の接着剤(I)及び(II)が、いずれもポリウレタン系接着剤である、請求項1又は2に記載の積層防湿シート。
【請求項4】
前記の接着剤(I)及び(II)がいずれも2液型の接着剤であり、その主剤が、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール及びポリエステルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の積層防湿シート。
【請求項5】
前記水蒸気バリアフィルム層を構成する基材がポリエステルフィルムである、請求項1〜4のいずれかに記載の積層防湿シート。
【請求項6】
太陽電池用表面保護部材に用いられる、請求項1〜5のいずれかに記載の積層防湿シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の積層防湿シートを有する太陽電池用表面保護部材。

【公開番号】特開2012−213937(P2012−213937A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81280(P2011−81280)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】