説明

積層電池および積層電池システム

【課題】従来の捲回電池は、電池内部の温度の上昇を抑制することが困難であった。電池内部に冷媒を流したパイプ等を設ければ、電池寸法が大きくなる。更には、従来の電池は電池価格に大きな影響を及ぼす負極の量が多く、電池価格の低減を図ることが困難であった。
【解決手段】正極および負極を筒状外装体の軸方向に積層して、正極もしくは負極の一方の電極の外径を外装体の内径より大きくすることにより、正極もしくは負極を外装体に密に接触させることにより、電極の熱伝達の向上を図り、電池の温度上昇を抑制する。更には、負極規制とすることにより高価な水素吸蔵合金の使用量を減らして、電池価格の低減を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の冷却構造に関し、詳しくは、電池における冷却性能の向上を図った積層電池および積層電池システム関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池には、円筒型電池、角型電池など種々の形状の電池が開発され広く使用されている。そして、比較的小容量の電池には、耐圧性や封口の容易さの点から円筒型が採用され、比較的大容量の電池には、取扱いの容易性から角型が採用されている。
【0003】
また蓄電池の電極構造に着目すれば、大別して、積層タイプと捲回タイプの2つのタイプが広く使用されている。すなわち積層タイプの電池は、正極と負極がセパレータを介して交互に積層されてなる電極群が電池ケースに収納されている。積層タイプの電池の多くは角型の電池ケースを有している。一方捲回タイプの電池は、正極と負極がセパレータを挟みつつ渦巻状に巻き取られた状態で電池ケースに収納されている。捲回タイプの電池ケースは円筒型のものもあるし角型のものもある。
【0004】
特許文献1および特許文献2に、円筒型捲回電池に関する技術が開示されている。すなわち、図1において、蓄電池1は、電池ケース2内に配置された正極3、負極4、セパレータ5および電解液を主な構成要素としている。そして電池ケース2は、上部に開口部2aを有する概ね円筒状の容器であり、その底面部が負極端子にとなっている。帯状の正極3と負極4とはセパレータ5を挟みつつ渦巻き状に巻き取られた状態で電池ケース2内に収納されている。また、電池ケースの開口部2aは、電池ケース2内に電解液が注入された状態で、封口板7により液密に封鎖されている。なお、封口板7の上面に設けたキャップ6が正極端子となる。正極端子は図示しないリード線により正極3に接続されている。
【0005】
蓄電池の冷却構造については種々の方法が提案されている。その多くは、蓄電池を複数個組み合わせてモジュール化した組電池に関するものである。これは蓄電池をモジュール化して大容量化すると、蓄電池の温度上昇が問題となるからである。組電池の冷却構造については、組電池を収納した容器の表面に突起を設けて冷却空気の流れに乱れを生じさせて放熱をよくする方法(例えば、特許文献3)、隣り合う組電池の間に穴開きの金属製の冷却板を介在させて冷却空気の通路を設ける方法(例えば、特許文献3、4)もしくは収納容器の外部に突出する冷却フィンを設ける方法(例えば、特許文献5)等が提案されている。
【0006】
特許文献6には、正極と負極の間にセパレータを介在させた角型積層電池ユニットにおいて、当該電池ユニットの間に冷却板を設けて、その冷却板に冷媒の流路を設けてなる電池ユニット積層体の冷却構造が開示されている。
特許文献7には、シート状のヒートシンクを正極と負極に配して、セパレータと共に捲回してなる円筒型捲回電池の発明が開示されている。
【0007】
アルカリ蓄電池(例えば、ニッケル水素電池)においては、一般的に、あらかじめ負極の充電容量を正極の充電容量よりも大きく設定しておくことで、密閉化を可能にしている。この、負極における正極の充電容量を上回る分を、充電リザーブと呼ぶ(例えば、非特許文献1の19頁)。満充電の状態からさらに充電が行われる過充電時には、正極において下記(1)の反応により酸素ガスが発生する。
OH-→1/4O2+ 1/2H2O+ e- (1)
【0008】
正極で発生した酸素ガスは、下記(2)の反応により負極の水素吸蔵合金(M)中の水素と反応してH2Oとなるので、電池内部の圧力上昇が抑えられ、電池を密閉構造とすることができる。ここに、Mは水素吸蔵合金である。
MH + 1/4O2 →M + 1/2H2O (2)
【0009】
一方、放電時においても正極規制となるように、負極に予め多目の放電容量(つまり水素)を設けておく。これを放電リザーブと呼ぶ(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−198044号公報
【特許文献2】特開2004−103350号公報
【特許文献3】特開2009−016285号公報
【特許文献4】特開2003−007355号公報
【特許文献5】特開2001−143769号公報
【特許文献6】国際公開2008/099609号公報
【特許文献7】特開平11−144771号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】田村英雄監修 「電子とイオンの機能化学シリーズVol.1 ニッケル水素二次電池のすべて」エヌ・ティー・エス発行 2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
電池の構成要素のひとつであるセパレータは、正極と負極の短絡を防止し、電解液を保持して正極と負極間のイオン伝導を行う役割を有し、電池にとって重要なパーツであるところ、ポリアミド繊維またはポリオレフィン繊維等の合成繊維の不織布を素材として採用しているので、正極や負極(以下、総称して電極という)の電極と比べてその熱伝導度は小さく、熱を伝え難い。
【0013】
図1に示す捲回電池の冷却構造に言及すれば、電池内部で発生した熱は電池ケースから放熱される必要がある。しかし、捲回電池は電極とセパレータが多重に積層されている。多層に重ねられたセパレータを経て良好に熱伝達を行うことは困難である。図2は、電池表面(ケース)から中心部に向けての電池内部の温度勾配の状況を説明するための模式図である。図2によれば、円筒型捲回電池においてケースおよび電極は熱伝導度が高いので大きな温度勾配は生じないが、セパレータは熱伝導度が低いので大きな温度勾配を生じる。このため、中心部に行くほど高温となっていることがわかる。
【0014】
すなわち、捲回電池の電池ケースの表面温度は周囲温度に近いものの、中心部分の温度は高く、特に充放電状態においてはかなり高温となる。電池ケースの外側を冷却しても、電池内部は必要な程度に冷却されず高温となる。電極は温度が高くなると動作しなくなる。一般に、蓄電池に使用されている水素吸蔵合金においては(例えば、ミッシュメタル合金あるいはランタン・ニッケル合金など)、60℃以上になると充電しなくなる。
【0015】
電池の冷却方法として、電池ケースの表面に突起を設けて熱の放散を良くする方法(例えば、特許文献3)、組電池の間に穴開きの金属板を設けて冷却空気を流して冷却する方法(例えば、特許文献3,4)もしくは冷却フィンを設ける方法(例えば、特許文献5)が提案されているが、これらはいずれも電池ケースの表面を冷却するのには有効であるが、セパレータによる温度勾配が存在するので、捲回電池においては効果的な冷却方法ということができない。
【0016】
ヒートシンクを電極と共に捲回する方法(例えば、特許文献7)や、冷却水が流れるパイプを電池内部に収納する方法が提案されている。これらの方法は、電池ケースの表面を冷却するよりは効果的な冷却方法といえるかもしれないが、冷却のためのスペースを必要とし、電池寸法が大きくなり、体積当りの電気容量が低下する。
【0017】
一般にアルカリ蓄電池においては、密閉化を行うために正極規制を採用しており、正極に比べて多くの負極を必要としている。例えば、ニッケル水素電池の負極には、レアメタルである水素吸蔵合金が使用されており、高価であるとともに原料の安定供給の問題もある。負極のコストは、電極全体の80%を占めるといわれており、負極の電池価格に及ぼす影響は大きい。
【0018】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、電池内部の温度上昇を抑制するとともに、冷却のために電池内に余分なスペースを必要としないことを解決すべき課題としている。さらには、電池価格に大きな影響を及ぼす負極のコストを低減させることにより、電池価格の低減を図る。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記した目的を達成するために、本発明に係る積層電池は、筒状金属製の外装体の内部に、正極と、水素吸蔵合金を含む負極と、前記正極と前記負極との間に配されたセパレータとが、前記外装体の軸方向に沿って積層されている積層電池であって、前記正極と前記負極と前記セパレータを前記外装体の軸方向に沿って貫通する、金属製で棒状部分を有する複数の集電体と、前記正極および前記負極の少なくともいずれか一方が、前記外装体の内面に当接し、前記集電体のうち、前記正極に当接する集電体と、前記負極に当接する集電体を、備えている(請求項1)。また、
本発明に係る積層電池は、有底円筒缶の第1外装体の内部に、正極と、水素吸蔵合金を含む負極と、前記正極と前記負極の間に介在するセパレータとが、前記第1外装体の軸方向に沿って積層されており、かつ、前記正極、前記負極および前記セパレータを、前記第1外装体の軸方向に沿って貫通している第1集電体とを備えた第1積層電池と、有底円筒缶の第2外装体の内部に、前記正極と、前記負極と、前記セパレータとが、前記第2外装体の軸方向に沿って積層されており、かつ、前記正極、前記負極および前記セパレータを、前記第2外装体の軸方向に沿って貫通している第2集電体とを備えた第2積層電池とを、前記第1外装体の開口部と前記第2外装体の開口部とを、絶縁部材を介して、対向させて接続した積層電池であって、前記第2外装体の底部と第1集電体とが当接して、第2外装体が正極端子として機能し、前記第1外装体の底部と第2集電体とが当接して、第1外装体が負極端子として機能する(請求項2)。
【0020】
この構成によれば、セパレータは電解液を保持していて、正負極間の絶縁を図るとともに、イオンの透過を可能にしている。外装体は金属でできており、外装体に接触している方の電極の端子として機能する。正負極およびセパレータは、好ましくはシート状に形成されている。外装体は中空であって、各電極は外装体の軸方向に積層されて外装体内部に収納されている。電極が外装体の内面に接触しているので、電極で発生する熱は、直接外装体に伝えられる。途中に熱の不良導体を介さないので温度勾配は小さい。
捲回電池の温度勾配が大きいのは、外装体と電極の間に幾重もの熱を伝え難いセパレータが介在しているのと、その構造上大きな力で捲回することができないので電極間の熱の移動を大きくすることができないからである。
【0021】
捲回電池の総括熱伝達係数(U1)は、後述するように、数1で示される。一方、本発明に係る積層電池の総括熱伝達係数(U2)は、数2で示される。両者を比較すると、捲回数nの項において大きな差が生じることが分かる。具体的な数値を代入しての説明は、実施形態で詳述するが、捲回電池の捲回数nが大きいほど、総括熱伝達係数は小さくなる。
【0022】
以上のように、本発明に係る積層電池の温度勾配は小さく、積層電池の中心部における温度上昇を小さくすることができる。このため電池内部に冷媒を流すためのパイプ等を設ける必要がないのでコンパクトな構造で温度上昇を抑えることができる。更には、外装体の冷却は比較的容易に行うことができるので、効果的に電池内部の温度上昇を抑えることが可能となる。
【0023】
更に、この構成によれば、前記正極と前記負極と前記セパレータにはそれぞれ2つの穴が設けられていて、第1積層電池の正極は、第2集電体に接続されていて、負極は第1集電体に接続されている。また、第2積層電池の正極は、第2集電体に接続され、負極は第1集電体に接続されている。これにより、第1集電体が負極端子として機能し、第2集電体が正極端子として機能する。
【0024】
本発明に係る積層電池は、前記正極と前記負極が前記外装体に当接し、前記正極および前記負極が熱伝導度の高い絶縁材で覆われており、前記正極に当接する前記集電体が正極端子として機能し、前記負極に当接する前記集電体が負極端子として機能する(請求項3)。
この構成によれば、外装体が熱伝導度の高い絶縁材であることが好ましい。また、外装体の内方に熱伝導度の高い絶縁材を有していて、鉄等の構造材をその外方に有していてもよい。熱伝導度の高い絶縁材としては、アルミナ、チタニア、アルミナ・チタニア等のセラミックスが上げられる。これらセラミックスは良好な絶縁性と絶縁耐力(約100V/mm)、高い熱伝導率(約7x10−3cal/cm/sec・℃)、大きな機械的強度(ロックウエル硬度50以上)を有している。熱伝導度の高い絶縁材として、ダイヤモンドであってもよい。構造材としては鉄の他にチタンやカーボンやアルミであってもよい。ここに、高い導電性とは、少なくとも2x10−3cal/cm/sec・℃以上であることが好ましい。
【0025】
本発明に係る積層電池は、前記負極の充電容量が前記正極の充電容量より小さいことが好ましい(請求項4)。当該積層電池は、いわゆる負極規制となっている。ここに、各充電容量は、単に、正極容量もしくは負極容量と称されることがある。
ここに、正極容量および負極容量は電気容量のことであり、アンペアアワー(Ah)単位で表される。この構成によれば、従来の蓄電池が正極規制であるところ、本発明に係る積層電池は、負極に含まれる水素吸蔵合金の量が前記正極に含まれる正極活物質の量より少ない負極規制となっている。
【0026】
したがって、充電が進んだ状態では、正極が満充電になる前に、負極が満充電になる。充電を継続すれば負極は過充電になり、負極から水素ガスが発生する。過充電時に負極から水素ガスが発生する反応を反応式(3)に示す。
+ +e- → 1/2H2 (3)
【0027】
本発明に係る積層電池は、発生した水素ガスを貯蔵する水素ガス貯蔵室を備えていることが好ましい。あるいは、水素ガスは積層電池内の電極やセパレータに蓄積されてもよい。蓄積もしくは貯蔵された水素ガスは負極に吸蔵されて、放電に際して有効に使用される。なお、保存された水素ガスが外部に漏れないように外装体は密閉構造となっている。
【0028】
このようにして外装体の内部に蓄積された水素ガスは、積層電池の放電に際して負極の水素吸蔵合金に吸蔵されて放電のエネルギー源となる。放電の際の反応を反応式を(4)に示す。
負極 1/2H2 → H+ + e-
正極 NiOOH+e-+H+ → Ni(OH)2 (4)
全体 NiOOH+1/2H2 → Ni(OH)2
【0029】
ニッケル水素電池において、負極は電極価格の80%を占めるといわれており、高価である。ランタン等のレアメタルは地球上において偏在して、入手が難しくなるといわれている。通常の正極規制の蓄電池が正極の1.5倍から2倍の負極の量を必要とする。しかし、本発明によれば、高価な負極の量を減らすことが可能になり安価な積層電池を得ることができる。過充電により蓄えられた水素ガスを放電の際に利用することができるので、負極の量を減らしても電池容量が低下することはない。
【0030】
本発明に係る積層電池システムは、複数の当該積層電池が、対向して設けられた集電板の間に配置されていて、一方の前記集電板に前記積層電池の第1外装体が当接して、前記第1外装体と前記集電板とが電気的に接続され、他方の前記集電板に前記積層電池の第2外装体が当接して前記第2外装体と前記集電板とが電気的に接続されている(請求項5)。そして、前記集電板に平行な方向の冷却空気を送る手段を設けられている(請求項6)。
この構成によれば、集電板が電池システムの構造材になると共に、積層電池を電気的に接続する部材になり、かつ、放熱板として作用する。集電板に送風機等から冷却空気を送れば、積層電池の冷却に効果的である。
【0031】
本発明に係る積層電池は、熱伝導度の高い絶縁材からなる筒状の外装体の内部に、 正極と、水素吸蔵合金を含む負極と、前記正極と前記負極の間に介在するセパレータから構成された電極体が、前記外装体の軸方向に複数積層されていて、かつ、隣接する前記電極体の間に金属製の隔壁が設けられていて、前記正極と前記負極の外縁部が前記外装体の内面に当接している(請求項7)。また本発明に係る積層電池は、前記外装体が蓋付有底の円筒であることが好ましい(請求項8)。
この構成によれば、外装体全体が熱伝導度の高い絶縁材であってもよい。また、外装体が熱伝導度の高い絶縁材を内方に有し、鉄等の構造材を外方に有する二重構造であってもよい。熱伝導度の高い絶縁材としては、アルミナ、チタニア、アルミナ・チタニア等のセラミックスが上げられる。ダイヤモンドであってもよい。構造材としては鉄の他にチタンやカーボンやアルミであってもよい。
また、正極および負極の外方寸法は外装体の内方寸法より大きく作られており、正極と負極は共に外装体の密に接触しているので、正極および負極で発生した熱は高い熱伝達率で外装体に伝えられ、積層電池内部の温度上昇を抑制することが可能となる。このような事情は、請求項1に係る課題を解決する手段のところで説明したのと同様である。
隔壁は、正極と負極とセパレータから構成される電極の間に配置されている。金属製の隔壁は電子は通すがイオンは通さない。よって、正負極の積層数に応じて、積層電池の出力電圧は高くなる。
【0032】
本発明に係る積層電池は、前記負極の充電容量が前記正極の充電容量より小さいことが好ましい(請求項9)。当該電池は負極規制であるので、正極が満充電になる前に、負極が満充電になり、充電を継続すれば負極から水素ガスが発生する。
【0033】
初期活性化後に、別途用意した酸素ガス供給源から前記外装体の内部に酸素ガスを供給して、前記負極に吸蔵された水素と反応させることにより前記外装体の内部圧力の低減を図ることが好ましい(請求項10)。
この構成によれば、初期活性化後の積層電池に酸素ガスを供給すれば、積層電池内の空気はパージされて酸素ガスで充填される。酸素ガスは積層電池の負極に吸蔵されている水素と反応して水になる。この結果、密閉構造を有する外装体の内部は負圧となり、外装体の側壁が少し内方に変形して、電極との接触がよくなる。強く接触すれば、熱伝達がよくなるし、電気抵抗も小さくなる。
【0034】
本発明に係る半導体デバイスは、複数のN型半導体とP型半導体を備えた半導体デバイスにおいて、円筒形の外装体の内部に、複数の前記半導体が前記外装体の軸方向に積層されていて、冷媒を流すための通路を有する導電性の集電体が前記半導体を前記外装体の軸方向に貫通している(請求項11)。
【0035】
本発明に係る半導体デバイスは、筒状の外装体の内部に、エミッター層と、コレクター層と、ベース層が、前記外装体の軸方向に積層されていて、エミッター層はP型もしくはN型半導体いずれか一方であって、エミッター層とコレクター層に挟持されたベース層はエミッター層と異なる型の半導体であって、コレクター層はエミッター層と同じ型の半導体であり、エミッター層、コレクター層、ベース層のいずれか1が前記外装体の内面に当接して電気的に接続された第1層であり、他が前記外装体に接触していない第2層および第3層であり、かつ、導電性の第1集電体および第2集電体が、前記第1層と前記第2層と前記第3層を前記外装体の軸方向に貫通して挿入されていて、第1集電体は第2層に接触して電気的に接続されており、第1層および第3層は第1集電体に接触しておらず、第2集電体は第3層と接触して電気的に接続されており、第1層および第2層は第2集電体に接触していないことが好ましい(請求項12)。
この構成において、エミッターはN型またはP型いずれか一方の半導体であり、ベースはN型またはP型の半導体であってエミッターと異なる型(エミッターがN型ならP型)の半導体であり、コレクターはN型またはP型半導体であってエミッターと同じ型の半導体である。これにより、NPNトランジスタまたはPNPトランジスタが構成される。組み合わせの一例を表1に示す。
【表1】

【0036】
本発明に係る半導体デバイスは、円筒形の外装体の内部に、N型半導体と、P型半導体とが、前記外装体の軸方向に積層されており、導電性の集電体が、前記半導体を前記外装体の軸方向に貫通して挿入されており、前記N型半導体とP型半導体のうち一方の半導体は、前記外装体の内面に当接して電気的に接続されているが前記集電体には接触しておらず、かつ、他方の半導体は前記集電体に接触して電気的に接続されているが前記外装体の内面に接触しておらず、前記集電体には冷媒を流すための通路が設けられていることが好ましい(請求項13)。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、冷却のために余分なスペースを必要とせずに、電池内部の温度上昇を抑制することを可能にする。さらには、電池価格に大きな影響を及ぼす負極の量を減らすことにより、電池価格の低減を図ることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】円筒型積層電池の一部を破断した概略斜視図である。
【図2】円筒型捲回電池の温度勾配の状況を模式的に示す図である。
【図3】第一実施形態に係る円筒型積層電池を示す概略構成図である。(a)は軸方向断面図であり、(b)は正極、負極の平面図である。
【図4】第一実施形態に係る円筒型積層電池を用いた電池システムの概略構成図である。(a)は組電池を構成した場合の構成を説明する図であり、(b)は組電池を構成するための放熱板の平面図である。
【図5】第一実施形態に係る円筒型積層電池の変形例を示す概略構成図である。
【図6】第二実施形態に係る積層電池の概略構成図であり、軸方向断面を示す図である。
【図7】積層電池に酸素ガスを充填する場合の機器構成を説明する図である。
【図8】第三実施形態に係るトランジスタを示す概略構成図である。
【図9】第四実施形態に係るダイオードを示す概略構成図である。
【図10】積層電池の温度上昇試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態の説明にあたり、説明の都合上ニッケル水素電池について述べるが、蓄電池のタイプはこれに限定されるものでなく、リチウムイオン電池、亜鉛マンガン電池、ニッケル鉄電池、ニッケルカドミウム等の蓄電池であってもよい。
本発明の各実施形態について説明するのに先立ち、全ての実施形態に共通する電極の作り方について説明を行う。
<電極の製造について>
【0040】
負極は、ニッケル水素二次電池(以下、単にニッケル水素電池という)で一般的に用いられているランタン・ニッケルのような水素吸蔵合金を主要な物質として含んでいる。正極の活物質としては、ニッケル水素電池で一般的に用いられているものであればよく、特に限定されない。負極と正極との間にセパレータとともに介在させる電解液としては、ニッケル水素電池で一般的に用いられているアルカリ系水溶液、例えば、KOH水溶液、NaOH水溶液、LiOH水溶液などを用いることができる。
【0041】
負極としては、例えば、水素吸蔵合金、導電性フィラー、および樹脂に溶剤を加えてペースト状にしたものを、基板上に塗布して板状に成形し硬化させたものを使用することができる。同様に、正極としては、正極活物質、導電性フィラー、および樹脂に溶剤を加えてペースト状にしたものを、基板上に塗布して板状に成形し硬化させたものを使用することができる。
【0042】
導電性フィラーとしては、炭素繊維、炭素繊維にニッケルメッキを施したもの、炭素粒子、炭素粒子にニッケルメッキを施したもの、有機繊維にニッケルメッキを施したもの、繊維状ニッケル、ニッケル粒子、ニッケル箔のいずれかを単独で、または組み合わせて用いることができる。樹脂としては、軟化温度120℃までの熱可塑性樹脂、硬化温度が常温から120℃までの樹脂、120℃以下の温度で溶剤に溶解する樹脂、水に可溶な溶剤に溶解する樹脂、アルコールに可溶な溶剤に溶解する樹脂などを用いることができる。基板としては、ニッケル板のような電気伝導性のある金属板を用いることができる。
【0043】
セパレータは、イオン(H+)を透過させるが電子を透過させない素材を使用している。セパレータを形成する素材としては、例えば、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維などのポリオレフィン系繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリフルオロエチレン系繊維、ポリアミド系繊維などを使用することができる。セパレータには電解液が保持されている。
<第一実施形態>
【0044】
図3に本発明の第一実施形態に係る円筒型積層電池(以下、単に積層電池という)の軸方向の概略断面図を示す。図3に示す積層電池41は、外装体45と集電体47と外装体内部に収納される電極体43を主な構成要素として備えた2つの電池41−1、41−2を、絶縁体からなる接続ピース44を介して接続してなる電池である。
【0045】
第1電池41−1および第2電池41−2において、外装体45−1、45−2は、鉄製の有底の円筒で構成されている。導電性を有しておれば、鉄以外の金属であってもよい。
【0046】
電極体43−1、43−2は、正極活物質を含む正極43−1a、43−2aと、水素吸蔵合金を含む負極43−1b、43−2bと、正極43−1a、43−2aと負極43−1b、43−2bの間に介在してイオンは透過するが電子を透過させないセパレータ43−1c、43−2cから構成されている。そして、電極体43−1は、第1外装体45−1の軸方向(図3のX方向)に積層して第1外装体45−1の内方に収納されており、電極体43−2は、第2外装体45−2の軸方向(図3のX方向)に積層して第2外装体45−2の内方に収納されている。正極43−1a、43−2a、負極43−1b、43−2b、セパレータ43−1c、43−2cはいずれも2つの穴の開いた、円盤状の形状を有している。
【0047】
集電体47−1、47−2は、鉄にニッケルメッキを施した導電性の材料でできており、棒状の軸部47−1a、47−2aと軸部47−1a、47−2aの一端に取付けられた止め部47−1b、47−2bとを有している。集電体の軸部47−1a、47−2aは、それぞれ、電極体43−1、43−1を、外装体45−1,45−2の軸方向(図3のX方向)に貫通している。
【0048】
第1電池41−1において、正極43−1aの外径は外装体45−1の内径よりも小さく、正極の外縁部43−1acと外装体の内面45−1aは接触していない(図3(b)参照)。一方、負極43−1bの外径は外装体45−1の内径より大きく、負極の外縁部43−1bcは外装体45−1の内面45−1aと接触している。負極43−1bは、外装体45−1に電気的に接続されている。
【0049】
正極43−1aに設けた一方の穴43−1abの径は、軸部47−1aの外径より小さく、正極の穴43−1abの周縁部は軸部47−1aと接触している。正極43−1aと第1集電体47−1は、電気的に接続されている。一方、正極43−1aに設けた他方の穴43−1aaの径は、軸部47−2aの外径より大きく、正極の穴43−1aaの周縁部は軸部47−2aと接触していない。正極43−1aと第2集電体47−2は、電気的に絶縁されている。
【0050】
そして、負極43−1bに設けた一方の穴43−1bbの径は、軸部47−2aの外径より小さく、負極の穴43−1bbの周縁部は軸部47−2aと接触している。負極43−1bと第2集電体47−2は、電気的に接続されている。一方、負極43−1bに設けた他方の穴43−1baの径は、軸部47−1aの外径より大きく、負極の穴43−1baの周縁部は軸部47−1aと接触していない。負極43−1bと第1集電体47−1は、電気的に絶縁されている。
【0051】
第2電池41−2において、正極43−2aの外径は外装体45−2の内径よりも大きく、正極の外縁部43−2acは外装体45−2の内面45−2aと接触している。正極43−2aは、外装体45−2に電気的に接続されている。一方、負極43−2bの外径は外装体45−2の内径より小さく、負極の外縁部43−2bcと外装体の内面45−2aは接触していない。
【0052】
正極43−2aに設けた一方の穴43−2aaの径は、軸部47−1aの外径より小さく、正極の穴43−2aaの周縁部は軸部47−1aと接触している。正極43−2aと第1集電体47−1は、電気的に接続されている。一方、正極43−2aに設けた他方の穴43−2abの径は、軸部47−2aの外径より大きく、正極の穴43−2abの周縁部は軸部47−2aと接触していない。正極43−2aと第2集電体47−2は、電気的に絶縁されている。
【0053】
そして、負極43−2bに設けた一方の穴43−2baの径は、軸部47−2aの外径より小さく、負極の穴43−2baの周縁部は軸部47−2aと接触している。負極43−2bと第2集電体47−2は、電気的に接続されている。一方、負極43−2bに設けた他方の穴43−2bbの径は、軸部47−1aの外径より大きく、負極の穴43−2bbの周縁部は軸部47−1aと接触していない。負極43−2bと第1集電体47−1は、電気的に絶縁されている。
【0054】
第1外装体45−1と第2集電体の止め部47−2bが外装体45−1の底部において接触している。また、第2外装体45−2と第1集電体の止め部47−1bが外装体45−2の底部において接触している。第1外装体45−1と第2集電体47−2は負極に接触しており、負極端子として機能しうる。また、第2外装体45−2と第2集電体47−2は正極に接触しており、正極端子として機能しうる。
以上より、積層電池41において、第1外装体45−1が負極端子となり、第2外装体45−2が正極端子となる。
【0055】
以上述べたように、本発明は、2つの電池41−1、41−2において、接続ピース44を境にして、電極43−1a、43−2a、43−1b、43−2bの外径寸法と穴の寸法を入れ替えることにより、積層された電極体を共通に使用していることを特徴としている。
【0056】
図4(a)に積層電池41を用いて組電池を構成した場合の接続図を示す。鋼板にニッケルメッキを施した放熱板49(図4(b)参照)に、積層電池41の外装体45−1、45−2を取付ける穴49aを設ける。すなわち、対向する一方の放熱板の穴49aに外装体45−1を取り付け、対向する他方の放熱板の穴49Aには異なる極性を有する外装体45−2を取付ける。同じ極性を有する放熱板49を図示せぬケーブルで接続して電池システムを構成する。積層電池41で発生した熱は放熱板49に伝えられて、別途設けた送風機49bからの冷却風で冷却されることとなる。また、放熱板は積層電池41の直並列接続の導電体としても作用する。
<変形例>
【0057】
図5に本発明の第一実施形態の変形例に係る積層電池の軸方向の概略断面図を示す。図3と共通する部分は、特に明記しない場合は同じ符号を付したものとして説明する。外装体45は、熱伝導度の高い絶縁材46を内方に有し、鉄等の構造材からなる円筒缶42を外方に有する二重構造となっている。すなわち、円筒缶42の内面42aに、アルミナよりなるセラミックス層(絶縁体46)がプラズマ溶射により形成されている。絶縁体46は熱伝導度の高い材料でできているので、電極体43−1,43−2で発生した熱は小さな温度勾配で円筒缶42に伝えられるので、積層電池41'の内部の温度上昇を抑制することが可能となる。絶縁体46は、熱伝導度の高く絶縁性を有したものであればよく、チタニア、アルミナ・チタニア等のセラミックスやダイヤモンドであってもよい。
【0058】
電極体43は、絶縁体46で覆われているので、図3に示したような接続ピース44は必要としない。集電体の止め部47−1b、47−2bに軸部47−1a、47−2aの反対側に突出する端子部47−1c、47−2cを設けて、これら端子部47−1c、47−2cを外装体45に設けた絶縁材からなる軸受48−1、48−2を介して積層電池41'の外方に取り出して、正極端子および負極端子とした。
<第二実施形態>
【0059】
図6に本発明の第二実施形態に係る円筒型積層電池(以下、単に積層電池という)の軸方向の概略断面図を示す。図6に示す積層電池51は、外装体55と外装体内部に収納された集電端子57と電極体53を主な構成要素として備えている。外装体55は、有底の円筒缶52と、円筒缶内面52aに配置された絶縁体59と、円筒缶52の開口部52cに取付けられた円盤状の蓋部材56とから構成されている。円筒缶52と蓋部材56は鉄でできているが、鉄の他にチタンやカーボンやアルミ等であってもよい。蓋部材56の外径は円筒缶52の開口部52cの内径より少し大きく、蓋部材56は電極体53収納後に円筒缶開口部52cにおいて絞まり嵌めされている。
【0060】
電極体53は、正極活物質を含む正極53aと、水素吸蔵合金を含む負極53bと、正極53aと負極53bの間に介在してイオンは透過するが電子を透過させないセパレータ53cから構成されている。なお、電解液(図示せず)は、セパレータ53cに保持されている。係る電極体53が、円筒缶52の軸方向(図6のX方向)に積層され、外装体55の内方に収納されている。ここに、隣接する電極体53の間には、一方の電極体の正極53aと隣接する電極体の負極53を挟む形で、鉄にニッケルメッキを施した隔壁54が介在している。隔壁54は金属であるので電子(電気)は通すがイオンは通さないので、隣接する電極体53は電気的に互いに直列に接続されることになる。積層電池51の出力電圧は、電極体53の積層数により定まる。本実施形態において、1つの電極体53からなる単位電池の端子電圧は1.2Vであり、本実施形態に係る積層電池51は、50個の単位電池を積層してなるので、その出力電圧は60Vとなる。
【0061】
集電端子57は、円盤状に形成された板部57bと、板部57bの中央から棒状に突出した軸部57aを有している。外装体55の内部であって、集電端子の板部57bが対向する形で配置された空間に、複数の電極体53と隔壁54とが、積層されて挿入されている。そして、軸部57bは、それぞれ蓋部材56中央および円筒缶底部52bの中央に設けた穴58a、58bを貫通して、積層電池51の外方に突き出していて、それぞれ正極端子57caおよび負極端子57cbとして機能する。軸部57aが貫通す貫通する穴58a、58bには軸受58が装着されている。軸受58は絶縁性材料でできており、軸部57bが外装体55と接触して電気的に短絡するのを防止する。集電端子57は、鉄にニッケルメッキを施した導電性の材料でできており、ニッケルメッキを施すことにより、集電端子57がセパレータ53cに含まれる電解液により腐食されるのを防止する。
【0062】
隔壁54、正極53a、負極53b、セパレータ53cはいずれも円盤状の形状を有しており、正極53aおよび負極53bの外径は外装体55の内径よりも大きく、電極体53の外縁部53aa、53baは外装体55の内面55aに圧力を持って接触している。好ましくは、正極53aおよび負極53bの外径は外装体55の内径よりも100μm大きい。
【0063】
円筒缶52の内面52aに、アルミナよりなるセラミックス層をプラズマ溶射により絶縁体59を形成させた。絶縁体59は、正極53aと負極53bとが電気的に短絡するのを防止している。絶縁体59は熱伝導度の高い材料でできているので、電極53a、53bで発生した熱は小さな温度勾配で円筒缶52に伝えられるので、積層電池内部の温度上昇を抑制することが可能となる。絶縁体59は、熱伝導度の高く絶縁性を有したものであればよく、チタニア、アルミナ・チタニア等のセラミックスが上げられる。これらは良好な絶縁性と絶縁耐力(約100V/mm)、高い熱伝導率(約7x10−3cal/cm/sec・℃)、大きな機械的強度(ロックウエル硬度50以上)を有している。絶縁体59を形成するこれらセラミックス層は、プラズマ溶射法をもちいて加工した。絶縁体59は熱伝導度の高い絶縁材であればよく、ダイヤモンドであってもよい。
【0064】
<共通する実施形態>
以上に説明した、第一および第二実施形態に共通する実施態様について、まとめて以下に説明する。図7は、本発明に係る積層電池に酸素ガスを充填する場合の機器構成を説明する図である。積層電池121には、酸素ガスの注入の受け口となる接続口123が設けられていて、配管124aの先端に取り付けられたニップル125が気密に接続可能となっている。一方、酸素ガスが充填されている酸素ボンベ127は配管124bを介してバルブ122の一方の接続口に接続されていて、バルブ122の他方の接続口には配管124aが接続されている。配管124bには圧力計126が設けられていて、酸素ガスの圧力が監視可能となっている。
バルブ122を開くことにより、酸素ボンベ125からの酸素ガスは配管124を経由して、初期活性化後の積層電池121に供給される。供給された酸素ガスは、積層電池内の空気をパージして、積層電池121は酸素ガスで充填される。酸素ガスは積層電池121の負極に吸蔵されている水素と反応して水になる。この結果、密閉構造を有する積層電池121の内部は負圧となり、積層電池の外装体128の側壁128aが少し内方に変形して、外装体120の内部に収納された電極体129との接触がよくなる。強く接触すれば、熱伝達がよくなるし、電気抵抗も小さくなる。
【0065】
次に第一実施形態の作用および効果について説明する。なお、冷却構造については、第二、第三および第四実施形態についても共通する事項であり、負極規制については、第二実施形態に共通する事項である。
<冷却構造について>
負極43−1bおよび正極43−2aの外方寸法(円の場合は外径)は外装体45の内方寸法(円筒の場合は内径)より大きいので、負極の外縁部43−1bcおよび正極の外縁43−2bcは、それぞれ、外装体の内面45−1a、45−2aに強く押し当てられ、密に接触している。正極43−1bおよび負極43−2aで発生した熱は直接外装体45に伝えられる。また、正極43−1aおよび負極43−2bで発生した熱は、それぞれ、セパレータ43−1c、43−2cを介して負極43−1bおよび正極43−2aに伝えられる。セパレータは熱を伝えにくいが、薄く、1枚のみであるので、熱の伝導に大きな妨げとならない。以上のようにして、電極43−1a,1b、2a、2bで発生した熱は小さな温度勾配で外装体45に伝えられる。
【0066】
これにより、簡単な構造で電池内部の温度上昇を抑えることができる。更には、外装体45は外部に露出しているので冷却は比較的容易に行うことができ、従来の捲回電池に比べて、効果的に温度上昇を抑えることが可能となる。ここで、本発明の実施形態に係る積層電池と従来型の捲回電池の温度上昇の相違を計算例で示す。
捲回電池の総括熱伝達係数(U1)は、数1で示されるところ、本発明に係る積層電池の総括熱伝達係数(U2)は、数2で示される。
【0067】
【数1】

【0068】
【数2】

ここで、18650型電池を例に取り計算してみる。捲回電池の諸元は、
【0069】
t = 0.5mm , t+ = t- = ts = 10μm , k = k+ = k- = 40Wm-2 deg-1
h0 = 100 Wm-2 deg-1 , h1 = 1 Wm-2 deg-1 , ks = 1 Wm-2 deg-1 , n = 9/0.03 = 300
となり、これらの値を数1に代入して、U1 = 0.0011 Wm-2 deg-1を得る。
一方、本実施形態に係る積層電池の諸元は、
【0070】
h0 = 100 Wm-2 deg-1 , t = 0.5mm , k = 40Wm-2 deg-1
h1 = 10000 Wm-2 deg-1 , t* = 0.009m , k* = 40Wm-2 deg-1
であるので、これらの値を数2に代入して、U2 = 100 Wm-2 deg-1を得る。
両者を比較すると、本発明に係る冷却構造は、従来の捲回電池比べて10万倍近く熱伝達に優れているといえる。
【0071】
<負極規制について>
従来の二次電池は正極規制であり、負極の充電容量(Ah)は、正極の1.7倍となっている。一方、本発明の実施形態に係る積層電池において、負極の充電容量は正極の80%となっている。
【0072】
ここで正極の電気容量を1000mAhとして話をすると、正極規制のタイプの電池は、1000mAh以上充電すると正極から酸素ガスが発生するが、負極から水素ガスが発生することはない。正極から発生した酸素ガスは負極に吸蔵されている水素と反応して水になるので圧力上昇が抑制され密閉化が可能となっている。
【0073】
一方、負極規制のタイプの電池は、過充電状態になれば、負極から水素ガスが発生する。すなわち、800mAh以上充電すれば負極から水素ガスが発生する((3)の反応式参照)。この発生した水素ガスは負極に吸蔵されるが、負極に吸蔵されない水素ガスは電池内部に蓄えられて電池内部の圧力が上昇する。電池内部に水素ガス貯蔵室があれば、水素ガスは電池内に多く蓄積される。積層電池の外装体45は密閉構造となっているので、蓄積された水素ガスが外部に漏れることはない。
【0074】
積層電池の放電に際して、負極に吸蔵合金されている水素が水素イオンと電子を放出するが、積層電池内に蓄積された水素ガスが水素吸蔵合金に吸蔵され、負極の満充電状態が続く(放電の際の反応式(4)参照)。水素ガスは放電に際して負極を充電するので無駄になることはない。水素吸蔵合金はいわば触媒的な作用をするので、充放電において負極の体積変化は小さく、負極の劣化を防ぎ、高寿命化が可能となる。
【0075】
負極は電極価格の80%を占めるといわれており、高価である。本発明によれば、正極規制の電池が正極の1.7倍の負極を必要とするところ、負極の量を正極の80%とすることにより、電極の価格は1/2にすることが可能となる。負極の量を減らしても、過充電により蓄えられた水素ガスを利用することにより電池容量が低下することはない。
<第三実施形態>
【0076】
図8は、本発明の第三実施形態に係るトランジスタを示す概略構成図である。図8に示すトランジスタ180は、外装体と集電体と外装体内部に収納される半導体を主な構成要素として備えている。外装体181は、円管182と、円管182の開口部182cに取付けられた円盤状の蓋部材186とから構成されている。円管182と蓋部材186は鉄でできているが、他の金属であってもよい。蓋部材186の外径は円管182の開口部182cの内径より少し大きく、蓋部材186は半導体183,184,185の収納後に円管開口部182cにおいて絞まり嵌めされている。
【0077】
半導体183,184,185は、円管182の軸方向(図8のX方向)に積層して外装体181の内部に収納されている。半導体183、半導体185、半導体184はいずれも2つの穴の開いた、円盤状の形状を有している。半導体183の外径は円管182の内径よりも大きく、半導体183の外縁部183cは円管182の内面182aと接触しており、半導体183は円管182に電気的に接続されている(図8(b)参照)。一方、半導体184と半導体185の外径は円管182の内径より小さく、半導体184、185は円管182に接触していない。
【0078】
2つの棒状の集電体187、189はいずれも、鉄にニッケルメッキを施した導電性の材料でできており、軸部187a、189aと軸部187a、189aの両端に位置する端部187b、189bとを有している。ニッケルメッキを施すことにより、接触面における電気抵抗を小さくすることができる。集電体187、189の軸部187a、189aは、半導体183、184,185を、外装体181の軸方向(図8のX方向)に貫通している。軸部187a、189aの外径は、いずれも半導体183に設けた穴183a、183bの径より小さいので、半導体183は集電体187、189と接触していない。電気的に絶縁状態にある。
【0079】
一方、軸部187aの外径は、半導体184に設けた穴184aの径より大きく、集電体187は半導体の穴184aの周縁部に接触している。半導体184と集電体187は、電気的に接続されている。また、軸部187aの外径は、半導体185に設けた穴185aの径より小さく、半導体185とは接触していない。半導体185と集電体187は、電気的に絶縁されている。更に、軸部189aの外径は、半導体184に設けた穴184bの径より小さく、集電体189は半導体184と接触していない。半導体184と集電体189は、電気的に絶縁されている。また、軸部189aの外径は、半導体185に設けた穴185bの径より大きいので、集電体189は半導体の穴185bの周縁部に接触している。半導体185と集電体189は、電気的に接続されている。
【0080】
集電体の端部187b、189bは蓋部材に設けられた穴を貫通して、トランジスタ180の外方に突出して、それぞれベース端子187bおよびコレクター端子189bとして機能する。円管182はエミッター端子として機能する。ベース端子187b、コレクター端子189bおよび円管182が、蓋部材186を介して互いに電気的に接続されて短絡するのを防止するために、ベース端子187bおよびコレクター端子189bと蓋部材186の間には絶縁材188が設けられている。トランジスタ180はコレクター端子189bをコレクターとし、ベース端子187bをベースとし、円管をエミッターとするトランジスタとして作用する。また、半導体183で発生する熱は直接円管182に伝えられ、半導体184、185で発生する熱は半導体183を介して円管182に伝えられるので、半導体183,184,185の温度上昇は抑制される。
【0081】
本実施形態において、半導体183と半導体185をN型半導体とし、半導体184をP型半導体としてもよく、また、半導体183と半導体185をP型半導体とし、半導体184をN型半導体としてもよい。前者はNPNトランジスタになり、後者はPNPトランジスタとなる。
<第四実施形態>
【0082】
図9は、本発明の第四実施形態に係るダイオードを示す概略構成図である。図9に示すダイオード191は、外装体と集電体と外装体内部に収納される半導体を主な構成要素として備えている。外装体195は、円管192と、円管192の開口部192cに取付けられた円盤状の蓋部材196とから構成されている。円管192と蓋部材196は鉄でできているが、他の金属であってもよい。蓋部材196の外径は円管192の開口部192cの内径より少し大きく、蓋部材196は半導体193,194の収納後に円管開口部192cにおいて絞まり嵌めされている。
【0083】
半導体193,194は、円管192の軸方向(図9のX方向)に積層して外装体195の内方に収納されている。半導体193、半導体194はいずれも中央に穴の開いた、円盤状の形状を有している。半導体193の外径は円管192の内径よりも大きく、半導体の外縁部193bは円管192の内面192aと接触している。半導体193と円管192は電気的に接続されている。一方、半導体194の外径は円管192の内径より小さく、半導体の外縁部194bは円管の内面192aに接触していない。
【0084】
集電体197は、鉄にニッケルメッキを施した導電性の材料の円管でできており、外装体195の内部ある中央部197aと外装体195の外部にある端部197bとを有している。ニッケルメッキを施すことにより、接触面における電気抵抗を小さくすることができる。集電体197の中央部197aは、半導体193、194を、外装体195の軸方向(図9のX方向)に貫通している。
【0085】
中央部197aの外径は、半導体193に設けた穴193aの径より小さいので、半導体の穴193aの周縁部は集電体197と接触していない。半導体193と集電体197は、電気的に絶縁されている。一方、中央部197aの外径は、半導体194に設けた穴194aの径より大きいので、集電体197は半導体の穴194aの周縁部に接触している。半導体193と集電体197は、電気的に接続されている。
【0086】
半導体193がP型半導体で構成され、半導体194がN型半導体で構成されている。集電体の端部197bは蓋部材に設けられた穴を貫通して、ダイオード191の外方に突出してカソード端子197bとして機能する。円管192はアノード端子として機能する。集電体197と円管192が、蓋部材196を介して互いに電気的に接続されて短絡するのを防止するために、集電体197と蓋部材196の間には絶縁材198が設けられている。
【0087】
円管で構成された集電体197の内部には、冷媒を流すための通路が形成されている。半導体193で発生する熱は円管192に伝えられ、半導体194で発生する熱は集電体197に伝えられる。円管192および集電体197を冷却空気等で冷却することにより、半導体の温度上昇は抑制される。
【0088】
本実施形態において、半導体193をP型半導体で構成し、半導体194をN型半導体で構成したが、半導体193をN型半導体で構成し、半導体194をP型半導体で構成してもよい。この場合は、集電体の端部197bはアノード端子として機能し、円管192はカソード端子として機能する。
<試験結果>
【0089】
本発明の実施例1に係る積層電池を、0.5C〜8Cで充電を行い、満充電後に積層電池の内部温度と表面温度を調べた。温度計測は、電池内部温度については集電体に熱電対を取付けて計測し、電池表面温度は積層電池の外装体の表面の温度を熱電対で計測した。環境条件は、室温が15℃で、ファンで1m/sの送風した状態とした。
【0090】
表2に、各充電レート(0.5C、1C、2C、5C、8C)でSOCが100%となるよう充電した後の、電池温度と室温の差の最大値を示す。すなわち、表2の左側の欄は電池表面温度と室温の差で最も大きかった値であり、右側の欄が電池内部温度と室温と差で最も大きかった値である。いずれの充電レートにおいても、2C以下の充電レートにおいては、電池の表面と室温の温度差および電池の中心と室温の温度差は5℃未満であり、8C充電においては、それら温度差が30℃未満であった。
【0091】
【表2】

【0092】
図10に各充電レートで充電後の電池内部温度と室温の差をグラフにしたものを示す。2C以下の充電レートでは、電池内部と室温との温度差の上昇は4℃以下であり、非常に小さい。これは、充電に伴う発熱と同時に放熱しているため、電池に蓄熱が行われなかったためと思われる。
【0093】
5C充電と8C充電においては、電池内部と室温との温度差が認められる。しかし、わずか20分足らずで、電池内部と室温との温度差は5℃未満となり、放熱性に優れていることがわかる。
この試験結果から、本発明の第一実施形態に係る積層電池は電池内の熱伝導度が大きく、充電により温度が上昇しても、すぐに温度が下がることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明に係る積層電池は、産業用のみならず民生用の蓄電装置としてとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0095】
1 蓄電池
2 電池ケース
3 正極
4 負極
5 セパレータ
6 キャップ
7 封口板
41 円筒型積層電池
42 円筒缶
43 電極体(a:正極、b:負極、c:セパレータ)
44 接続ピース
45 外装体
46 絶縁体
47 集電体
48 軸受
49 放熱板
51 円筒型積層電池
52 円筒缶(a:側部内面)
53 電極体(a:正極、b:負極、c:セパレータ)
54 隔壁
55 外装体
56 蓋部材
57 集電端子
58 軸受
59 絶縁体
121 積層電池
122 バルブ
123 接続口
124 配管
125 ニップル
126 圧力計
127 酸素ボンベ
128 外装体
129 電極体
180 トランジスタ
181 外装体
182 円管
183、184、185 半導体
186 蓋部材
187 集電体
188 絶縁材
189 集電体
191 ダイオード
192 円管
193、194 半導体
195 外装体
196 蓋部材
197 集電体
198 絶縁材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状金属製の外装体の内部に、正極と、水素吸蔵合金を含む負極と、前記正極と前記負極との間に配されたセパレータとが、前記外装体の軸方向に沿って積層されている積層電池であって、
前記正極と前記負極と前記セパレータを前記外装体の軸方向に沿って貫通する、金属製で棒状部分を有する複数の集電体と、
前記正極および前記負極の少なくともいずれか一方が、前記外装体の内面に当接し、
前記集電体のうち、前記正極に当接する集電体と、前記負極に当接する集電体を、
備えた積層電池。
【請求項2】
有底円筒缶の第1外装体の内部に、正極と、水素吸蔵合金を含む負極と、前記正極と前記負極の間に介在するセパレータとが、前記第1外装体の軸方向に沿って積層されており、かつ、前記正極、前記負極および前記セパレータを、前記第1外装体の軸方向に沿って貫通している第1集電体とを備えた第1積層電池と、
有底円筒缶の第2外装体の内部に、前記正極と、前記負極と、前記セパレータとが、前記第2外装体の軸方向に沿って積層されており、かつ、前記正極、前記負極および前記セパレータを、前記第2外装体の軸方向に沿って貫通している第2集電体とを備えた第2積層電池とを、
前記第1外装体の開口部と前記第2外装体の開口部とを、絶縁部材を介して、対向させて接続した積層電池であって、
前記第2外装体の底部と第1集電体とが当接して、第2外装体が正極端子として機能し、
前記第1外装体の底部と第2集電体とが当接して、第1外装体が負極端子として機能する、請求項1に記載の積層電池。
【請求項3】
前記正極と前記負極が前記外装体に当接し、
前記正極および前記負極が熱伝導度の高い絶縁材で覆われており、
前記正極に当接する前記集電体が正極端子として機能し、
前記負極に当接する前記集電体が負極端子として機能する、請求項1に記載の積層電池。
【請求項4】
前記負極の充電容量が前記正極の充電容量より小さい請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層電池。
【請求項5】
請求項2に記載の積層電池を複数接続してなる電池システムであって、
複数の当該積層電池が、対向して設けられた集電板の間に配置されていて、一方の前記集電板に前記積層電池の第1外装体が当接して、前記第1外装体と前記集電板とが電気的に接続され、他方の前記集電板に前記積層電池の第2外装体が当接して前記第2外装体と前記集電板とが電気的に接続されている積層電池システム。
【請求項6】
前記集電板に平行な方向の冷却空気を送る手段を設けた請求項5に記載の積層電池システム。
【請求項7】
熱伝導度の高い絶縁材からなる筒状の外装体の内部に、
正極と、水素吸蔵合金を含む負極と、前記正極と前記負極の間に介在するセパレータから構成された電極体が、前記外装体の軸方向に複数積層されていて、かつ、
隣接する前記電極体の間に金属製の隔壁が設けられていて、前記正極と前記負極の外縁部が前記外装体の内面に当接している積層電池。
【請求項8】
前記外装体が蓋付有底の円筒である請求項7に記載の積層電池。
【請求項9】
前記負極の充電容量が前記正極の充電容量より小さい請求項7または8のいずれか一項に記載の積層電池。
【請求項10】
初期活性化後に、別途用意した酸素ガス供給源から外装体の内部に酸素ガスを供給して、負極に吸蔵された水素と反応させることにより前記外装体の内部圧力の低減を図った請求項1〜3、7、8のいずれか一項に記載の積層電池。
【請求項11】
複数のN型半導体とP型半導体を備えた半導体デバイスにおいて、
円筒形の外装体の内部に、複数の前記半導体が前記外装体の軸方向に積層されていて、
冷媒を流すための通路を有する導電性の集電体が前記半導体を前記外装体の軸方向に貫通している半導体デバイス。
【請求項12】
筒状の外装体の内部に、エミッター層と、コレクター層と、ベース層が、前記外装体の軸方向に積層されていて、
エミッター層はP型もしくはN型半導体いずれか一方であって、エミッター層とコレクター層に挟持されたベース層はエミッター層と異なる型の半導体であって、コレクター層はエミッター層と同じ型の半導体であり、
エミッター層、コレクター層、ベース層のいずれか1が前記外装体の内面に当接して電気的に接続された第1層であり、他が前記外装体に接触していない第2層および第3層であり、かつ、
導電性の第1集電体および第2集電体が、前記第1層と前記第2層と前記第3層を前記外装体の軸方向に貫通して挿入されていて、第1集電体は第2層に接触して電気的に接続されており、第1層および第3層は第1集電体に接触しておらず、第2集電体は第3層と接触して電気的に接続されており、第1層および第2層は第2集電体に接触していない請求項11に記載の半導体デバイス。
【請求項13】
円筒形の外装体の内部に、N型半導体と、P型半導体とが、前記外装体の軸方向に積層されており、
導電性の集電体が、前記半導体を前記外装体の軸方向に貫通して挿入されており、
前記N型半導体とP型半導体のうち一方の半導体は、前記外装体の内面に当接して電気的に接続されているが前記集電体には接触しておらず、かつ、他方の半導体は前記集電体に接触して電気的に接続されているが前記外装体の内面に接触しておらず、
前記集電体には冷媒を流すための通路が設けられている請求項11に記載の半導体デバイス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−80698(P2013−80698A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−203739(P2012−203739)
【出願日】平成24年9月15日(2012.9.15)
【出願人】(511146037)エクセルギー工学研究所株式会社 (2)
【Fターム(参考)】