説明

積層2軸延伸ポリアミド系フィルム

【課題】 耐衝撃性及び耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性に優れ、食品包装等の包装材料として使用したときに、商品の輸送時、保管時における破袋防止等に効果があり、さらに業務用途等の大型重量袋の落下破袋防止にも効果のある各種の包装用途に適した積層2軸延伸ポリアミド系フィルムを提供すること。
【解決手段】 脂肪族ポリアミド重合体97〜80重量%と熱可塑性エラストマー3〜20重量%との混合重合体からなるA層の少なくとも一方の面に、脂肪族ポリアミド重合体99.5〜0.5重量%と半芳香族ポリアミド重合体0.5〜99.5重量%との混合ポリアミド重合体からなるB層が積層されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性及び耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性に優れ、食品包装等の包装材料として使用したときに、商品の輸送時、保管時における破袋防止等に効果があり、さらに業務用途等の大型重量袋の落下破袋防止にも効果のある各種の包装用途に適した積層2軸延伸ポリアミド系フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ナイロン6やナイロン66に代表される脂肪族ポリアミドからなる未延伸フイルムや延伸フイルムは、耐衝撃性や耐屈曲疲労性に優れており各種の包装材料フィルムが使用されている。
【0003】
また、スープ、調味料等の液体充填包装向けに、さらに、耐屈曲疲労性、耐衝撃性を向上させるため、単層構成で脂肪族ポリアミドに各種エラストマー(ゴム成分)を混合し、より柔軟化した耐ピンホール用延伸ポリアミド系フィルムが広く使用されている。
【0004】
上記従来の耐ピンホール用フィルムにおいて、脂肪族ポリアミドにポリオレフィン系エラストマーを混合したフィルムは、常温での耐屈曲疲労性、耐衝撃性は良好であるが、低温環境下になると耐屈曲疲労性、耐衝撃性は不良化し、商品輸送時における屈曲疲労によりピンホールが起こりやすいという問題がある。商品の包装材料にピンホールが発生すると、内容物の漏れによる汚染、内容物の腐敗やカビの発生等の原因となり、商品価値の低下につながる。
【0005】
一方、脂肪族ポリアミドにポリアミド系エラストマーを混合したフィルムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
前記フィルムは、低温環境下での耐屈曲疲労性、耐衝撃性は良好であり、低温環境下でも屈曲疲労によるピンホール発生は起きにくい。
【特許文献1】特開平11−254615号公報
【0006】
しかし、脂肪族ポリアミド中でのポリアミド系エラストマーの分散径が大きいため、製袋品を落下させたときの衝撃がポリアミド系フィルム中に大きな粒径をもって分散したポリアミド系エラストマー粒子を次々に伝播して厚み方向で裂けやすくなる傾向がある。そのために、ポリアミド系エラストマーを混合した耐ピンホールポリアミドフイルムを用いた大型重量袋では落下破袋が発生しやすくなる。
【0007】
さらに、製袋加工時の取扱い性向上、袋への内容物充填時の作業性向上のために製袋品の腰を付与する目的で、ヒートシール用のポリエチレン樹脂層の厚みを増加させた、又は、より硬いポリエチレン樹脂を選択したポリアミド系フィルム/ポリエチレン樹脂構成の製袋品では、製袋品の腰が硬くなるためにピンホールが空き易くなってしまう。そのため、これらに用いられるポリアミド系フィルムには、より一層の耐ピンホール性が要求される。
【0008】
また、業務用の1リットル以上の容積を有する大型重量袋やダンボール箱内に大型プラスチック袋を収納し保管、運搬する包装形態であるバッグ・イン・ボックスの需要も伸びている。これらに用いられるポリアミド系フィルムとしては先に記した耐屈曲疲労性、耐衝撃性に加えて、大容量の液状物を包装するため、強い耐落下破袋性、フィルム厚み方向の強い凝集破壊強度を必要とされる。
【0009】
このように、現行の耐ピンホールポリアミドフイルムでの、拡大された要求特性への対応度合いとしては、ポリオレフィン系エラストマー混合ポリアミド系フィルムでは低温環境下での耐屈曲疲労性、耐衝撃強度が劣り、ポリアミド系エラストマー混合ポリアミド系フィルムでは低温環境下でも耐屈曲疲労性、耐衝撃強度は良好な傾向だが、耐落下破袋性、フィルム厚み方向の強い凝集破壊強度では満足できるレベルを達成できないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の現行耐ピンホール用途ポリアミド系フィルムの有する問題点に鑑み、耐衝撃性及び耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性に優れ、食品包装等の包装材料として使用したときに、商品の輸送時、保管時における破袋防止等に効果があり、さらに業務用途等の大型重量袋の落下破袋防止にも効果のある各種の包装用途に適した積層2軸延伸ポリアミド系フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムは、脂肪族ポリアミド重合体97〜80重量%と熱可塑性エラストマー3〜20重量%との混合重合体からなるA層の少なくとも一方の面に、脂肪族ポリアミド重合体99.5〜0.5重量%と半芳香族ポリアミド重合体0.5〜99.5重量%との混合ポリアミド重合体からなるB層が積層されてなり、かつ衝撃強度が0,95J以上、ピンホール数が5個以下、ラミネート強度が5.5N/15mm以下であることを特徴とする。
【0012】
この場合において、A層の厚みがA層及びB層の合計厚みの20〜93%であり、B層の厚みが少なくとも1μm以上であることが好ましい。
【0013】
また、A層を構成する熱可塑性エラストマーがポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー又はアイオノマー重合体から選ばれた1種又は2種以上のエラストマーであることが好ましい。
【0014】
また、B層が脂肪族ポリアミド重合体99.5〜50.0重量%と半芳香族ポリアミド重合体0.5〜50.0重量%との混合ポリアミド重合体からなることが好ましい。
【0015】
また、B層が半芳香族ポリアミド重合体99.5〜50.0重量%と脂肪族ポリアミド重合体0.5〜50.0重量%との混合ポリアミド重合体からなることが好ましい。
【0016】
また、A層及び/又はB層を構成するポリアミド重合体が、脂肪族アマイド及び/又は脂肪族ビスアマイドを0.01〜0.40重量%含有してなることが好ましい。
【0017】
また、A層を構成する混合重合体が酸化防止剤を0.01〜0.1重量%含有してなることが好ましい。
【0018】
また、A層を構成する混合重合体が含有する酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤であることが好ましい。
【0019】
さらにまた、A層を構成する混合重合体が含有するフェノール系酸化防止剤が、完全ヒンダードフェノール系化合物又は部分ヒンダードフェノール系化合物から選ばれた1種又は2種以上のフェノール系化合物であることが好ましい。
【0020】
かかる本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムは、脂肪族ポリアミド重合体中に耐ピンホール素材としての熱可塑性エラストマーが分散している構造をもつA層が主に耐衝撃性及び耐屈曲疲労性の発現に寄与し、特に低温環境下において優れた耐屈曲疲労性を与える。また、脂肪族ポリアミド重合体と半芳香族ポリアミド重合体との混合ポリアミド重合体からなるB層が主に優れたフィルム厚み方向の凝集強度をもち、落下時の製袋品に加わる衝撃を受け止める破袋防止性の発現に寄与し、それぞれの特性の相乗効果によって高い耐屈曲疲労性と破袋防止性を両立するものである。そして、優れた耐衝撃性及び耐屈曲疲労性を有し、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性が良好であると共に、優れたフィルム厚み方向の耐凝集破壊強度を有し、耐落下破袋強度が良好である。
【0021】
上記のような特性を有することから、食品包装、液体包装等の包装材料として用いたときに、輸送中、特に、低温輸送時、保管時における衝撃や振動による屈曲疲労による破袋の防止に効果があり、また、製袋品の輸送時、保管時における落下においても破袋防止に効果がある。
さらに業務用途等の大型重量袋としての使用においても落下破袋防止、ピンホール発生防止にも有効である。さらに、製袋加工時及び製袋加工品への商品充填時のブロッキング、滑り不良を防ぎ、安定した作業性を与え、各種の包装材料として有効に使用することができる。
特に、前記業務用途等の大型重量袋として使用するには、衝撃強度が0.95J以上、ピンホール数が5個以下、ラミネート強度が5.5N/15mm以下であることが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムは、耐衝撃性及び耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性に優れ、食品包装等の包装材料として使用したときに、商品の輸送時、保管時における破袋防止等に効果があり、さらに、業務用途等の大型重量袋の落下破袋防止にも効果のある各種の包装材料として有効に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明における積層2軸延伸ポリアミド系フィルムの実施の形態を詳細に説明する。
本発明において、A層は脂肪族ポリアミド重合体97〜80重量%と熱可塑性エラストマー3〜20重量%との混合重合体からなる。かかるA層は、耐衝撃性及び耐屈曲疲労性に優れる脂肪族ポリアミド重合体中に耐ピンホール素材としての熱可塑性エラストマーが分散している構造をもつことで、さらに優れた耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性の改善に寄与する。ここで、A層を構成する熱可塑性エラストマーの混合量が3%未満では現行の耐ピンホール性ポリアミド延伸フィルムを越える高度に要求された耐屈曲疲労性を得ることができない。また、混合量が20%を超えると透明性不良及び耐屈曲疲労性の飽和に陥る。次に、脂肪族ポリアミド重合体及び半芳香族ポリアミド重合体との混合ポリアミド重合体からなるB層は、半芳香族ポリアミド重合体を混合することで接着性低下、ポリアミド高分子間の分子間力低下につながる水分の影響を低下させることにより、フィルム厚み方向に強い凝集強度をもち、そのB層はA層の少なくとも片面に積層されている構造をとる。
【0024】
本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムが製袋品に加工される場合、B層外面にヒートシール素材をラミネートした構成となり、製袋品が落下した場合、その衝撃は袋の内容部からシール部に伝播する。本発明構成では凝集強度の強いB層で衝撃を受け止め、外部のA層まで衝撃を伝播させないことで高い破袋防止性を発現する。
【0025】
この場合において、B層の厚みが大きくフィルム総厚みを占めた場合、高い破袋防止性を確保するが耐屈曲疲労性は大きく低下する。これと反対にA層の厚みがフィルム総厚みをほぼ占有した場合、耐屈曲疲労性は優れているものの破袋防止性が確保できない。
従って、本発明において、A層の厚みを、A層及びB層の合計厚みの20〜93%とし、
特に60〜90%が好ましい。また、B層の厚みを少なくとも1μm以上とすることで、耐屈曲疲労性と破袋防止性の両立を効果的に発現しうる。
【0026】
本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムのA層を構成する脂肪族ポリアミド重合体としてはフィルム成形材料として使用することができ上記構造を形成するのに適切であれば特に制限されず広範なものが含まれる。例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6・10などの脂肪族ポリアミド単独重合体、あるいはこれらと共重合可能なモノマーが10重量%以下、好ましくは1〜10重量%の共重合体、例えば、ナイロン6/6・6共重合体、ナイロン6/12、ナイロン6/6・10共重合体、ナイロン6・6/6・10共重合体などのような脂肪族ポリアミド共重合体で代表される脂肪族ポリアミド又はε−カプロラクタムを主成分としこれとヘキサメチレンジミンとイソフタル酸とのナイロン塩やメタキシリレンジアミンとアジピン酸とのナイロン塩などとを共重合させた少量の芳香族を含むポリアミド共重合体等を使用することができる。
【0027】
A層に混合される熱可塑性エラストマーは、ゴム状弾性を有する物質としての熱可塑性を有する材料のことであり、上記構造を形成するのに適切であれば特に制限されない。より具体的には、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、アイオノマー重合体等のほか、これらのエラストマーの混合物などが挙げられる。熱可塑性エラストマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
本発明では、熱可塑性エラストマーは、本発明の趣旨を損なわない範囲において改質が行われてもよい。例えば、前記例示の熱可塑性エラストマーの変性体であってもよい。熱可塑性エラストマーにおける改質としては、例えば、共重合やグラフト変性による改質、極性基の付与による改質などが挙げられる。極性基の付与は、グラフト変性により行われていてもよい。このような極性基としては、例えば、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、アミノ基、オキソ基などが挙げられる。極性基は1種類で又は複数の種類を組み合わせて付与することができる。従って、極性基が付与された変性体には、例えば熱可塑性エラストマーのエポキシ変性体、カルボキシ変性体、酸無水物変性体、ヒドロキシ変性体、アミノ変性体などが含まれる。
【0029】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー及びアイオノマー重合体を好適に用いることができる。
【0030】
前記ポリアミド系エラストマーとしては、ポリアミド成分によって構成されるハードセグメントとポリオキシアルキレングリコール成分によって構成されるソフトセグメントからなるポリアミド系ブロック共重合体が挙げられる。ハードセグメントのポリアミド成分は、(1)ラクタム、(2)ω−アミノ脂肪族カルボン酸、(3)脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸又は(4)脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸よりなる群から選択され、具体的には、ε−カプロラクタムの如きラクタム、アミノヘプタン酸の如き脂肪族ジアミン、アジピン酸の如き脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸を例示することができる。また、上記ポリアミド系ブロック共重合体のソフトセグメントを構成するポリオキシアルキレングリコールは、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシ−1,2−プロピレングリコール等が挙げられる。
【0031】
ポリアミド系ブロック共重合体の融点はポリアミド成分によって構成されるハードセグメントとポリオキシアルキレングリコール成分によって構成されるソフトセグメントの種類と比率によって決められるが、通常は、120℃から180℃の範囲のものが使用される。
【0032】
ポリアミド系ブロック共重合体を積層2軸延伸ポリアミド系フィルムの構成成分にすることにより、積層2軸延伸ポリアミド系フィルムの耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性の改善に効果がある。
【0033】
また、ポリオレフィン系エラストマーとしては、特に制限されず、ポリオレフィンをハードセグメントとし、各種ゴム成分をソフトセグメントとするブロック共重合体などが挙げられる。ハードセグメントを構成するポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンなど、炭素数2〜20程度のα−オレフィン等の単独重合体又は共重合体などが挙げられる。ポリオレフィン単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。好ましいオレフィンにはエチレン、プロピレンが含まれる。また、ソフトセグメントを構成するゴム成分としては、例えば、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム(NR)、ニトリルゴム(NBR;アクリルニトリル−ブタジエンゴム)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、水素添加NBR(H‐NBR)、アクリロニトリル−イソプレンゴム(NIR)、アクリロニトリル−イソプレン−ブタジエンゴム(NBIR)などが挙げられる。これらのゴム成分には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸をコモノマーとして含有させたカルボキシル化ゴム等の酸変性ゴムやその他の変性ゴム、水添物なども含まれる。これらのゴム成分は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
また、アイオノマー重合体としては、特に制限されず、ポリオレフィンをハードセグメントとし不飽和カルボン酸で酸変性させた各種ゴム成分をソフトセグメントとし、さらに金属イオンにて中和してなるブロック共重合体などが挙げられる。好ましいアイオノマー重合体としてはエチレンとメタクリル酸、又はエチレンとメタクリル酸とアクリル酸エステルとからなる共重合樹脂を、Na+、K+、Zn2+を含む金属イオンで中和してなることを特徴とするアイオノマー重合体が含まれる。
【0035】
前記のA層を構成する混合重合体は、上記脂肪族ポリアミド重合体と熱可塑性エラストマーと混合物である。この混合重合体は、バージン原料の上記、脂肪族ポリアミド重合体と熱可塑性エラストマーを混合したものであってよいし、また、本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムを製造する際に生成する規格外フィルムや切断端材(耳トリム)として発生する屑材、及びその再生レジンとバージン原料を加えて調整したものであってもよい。
【0036】
本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムのA層を構成する混合重合体には、フェノール系酸化防止剤が0.01〜0.1重量%含有されてもよい。A層の混合重合体として、屑材、及び再生レジン等の回収再生原料を使用する場合、回収再生原料の熱劣化等による製膜操業性不良を低減し安定した製膜操業性を実現するには、酸化防止剤を0.01〜0.1重量%含有することが好ましい。
【0037】
酸化防止剤をA層の混合重合体に混合する割合が上記の範囲の上限を超えると、積層2軸延伸ポリアミド系フィルム表面への析出等による白化、ポリエチレン、ポリプロピレンシーラントとのラミネート加工時の接着性不良となり、上記の範囲の下限を下回ると、A層の混合重合体として、屑材、及び再生レジン等の回収再生原料を使用する場合の、回収再生原料の熱劣化等による製膜操業性不良が発生することがある。
【0038】
本発明においてA層の混合重合体に含有させることができる酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤が好ましい。本発明においてA層の混合重合体に含有させるフェノール系酸化防止剤は、完全ヒンダードフェノール系化合物、若しくは、部分ヒンダードフェノール系化合物が好ましい。例としては、テトラキス−〔メチレン‐3‐(3´,5´‐ジ‐t‐ブチル‐4´‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が挙げられる。
【0039】
上記フェノール系酸化防止剤を積層2軸延伸ポリアミド系フィルムのA層の混合重合体に含有させることにより、積層2軸延伸ポリアミド系フィルムの製膜操業性を向上する。特に、フィルム屑材、再生レジン等を用いた回収再生原料混合系では、熱可塑性エラストマーの回収再生による熱劣化が起き易く、これを起因とする製膜操業不良が発生するため、操業効率低下による生産コスト上昇、及び、回収再生原料の使用量の低下による操業性維持のための原料費上昇による生産コスト上昇を招く傾向にある。これに対して、上記フェノール系酸化防止剤を、回収再生原料類を含むポリアミド系2軸延伸フィルムのA層の混合重合体に含有させることで、熱可塑性エラストマーをはじめとする各種重合体の熱劣化を抑制し、安定した製膜操業性を実現する。このことから、操業性向上、及び、回収再生原料の使用量増加による原料費低減により、生産コストの低減が可能となる。
【0040】
本発明において、B層を構成するポリアミド重合体を脂肪族ポリアミド重合体99.5〜0.5重量%と半芳香族ポリアミド重合体0.5〜99.5重量%との混合ポリアミド重合体の組成とすることで、製袋品落下時の衝撃によるフィルム内部での凝集破壊を防止し、内容物を充填した後の製袋品の落下時における破袋防止効果をもたらすことができる。
【0041】
また、B層を構成するポリアミド重合体を脂肪族ポリアミド重合体99.5〜0.5重量%と半芳香族ポリアミド重合体0.5〜99.5重量%との混合ポリアミド重合体の組成とすることで、B層表面に凹凸を形成し、製袋加工時のブロッキング等を防止する滑り性が付与される。
【0042】
なかでも、B層を構成するポリアミド重合体が脂肪族ポリアミド重合体及び半芳香族ポリアミド重合体との混合ポリアミド重合体で脂肪族ポリアミド重合体99.5〜50.0重量%と半芳香族ポリアミド重合体0.5〜50.0重量%%との混合ポリアミド重合体の組成である場合においては、B層を構成する混合ポリアミド重合体は比較的柔軟であるため、本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルム全体としては耐屈曲疲労性の発現に、より効果的である。ただし、B層を構成する混合ポリアミド重合体が柔軟であることより、B層の厚みが薄い場合においては上記目的の落下時に発生する衝撃の伝播防止が充分でないことがあり、結果として落下による破袋が発生してしまう可能性がある。そのため、上記のように、脂肪族ポリアミド重合体と半芳香族ポリアミド重合体との混合ポリアミド重合体で半芳香族ポリアミド重合体の混合量が少ない場合においては、シーラント素材と貼りあわせる側のB層厚みは2μm以上であることがより好ましい。
【0043】
上記のように、本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムの耐屈曲疲労性を重視した構成において、B層を構成するポリアミド重合体の脂肪族ポリアミド重合体と半芳香族ポリアミド重合体の配合比率は、脂肪族ポリアミド重合体99.5〜0.5重量%と半芳香族ポリアミド重合体0.5〜99.5重量%との混合ポリアミド重合体であって、特に、脂肪族ポリアミド重合体99〜90重量%と半芳香族ポリアミド重合体1〜10重量%との混合ポリアミド重合体であるのが好ましい。
【0044】
一方、B層を構成する混合ポリアミド重合体が脂肪族ポリアミド重合体と半芳香族ポリアミド重合体との混合ポリアミド重合体で半芳香族ポリアミド重合体の混合量が多い場合、即ち、脂肪族ポリアミド重合体0.5〜50.0重量%と半芳香族ポリアミド重合体99.5〜50.0重量%%との混合ポリアミド重合体の組成である場合においては、B層を構成する混合ポリアミド重合体は硬くなるため、本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルム全体としては落下時に発生する衝撃の伝播防止に効果があり破袋防止性の発現に効果的である。先の脂肪族ポリアミド重合体含量の多い層構成に比較し、半芳香族ポリアミド重合体含量の多い樹脂構成でB層厚みが厚い場合においては、耐屈曲疲労性の発現の効果を低下させてしまう。従って、半芳香族ポリアミド重合体含量の多いB層構成の場合、B層厚みを薄くし、A層厚みのフィルム総厚みに対する占有率を高くし、破袋防止性と良好な耐屈曲疲労性を両立する。この場合A層の厚みが、A層及びB層の合計厚みの20〜96%であり、B層の厚みが少なくとも1μm以上である層構成の範囲内で破袋防止性と良好な耐屈曲疲労性を両立する構成を選択し得る。
【0045】
また、B層を構成する混合ポリアミド重合体が脂肪族ポリアミド重合体及び半芳香族ポリアミド重合体との混合ポリアミド重合体で半芳香族ポリアミド重合体の混合量が多い場合、即ち、脂肪族ポリアミド重合体0.5〜50.0重量%と半芳香族ポリアミド重合体99.5〜50.0重量%%との混合ポリアミド重合体の組成である場合においては、B層はその構成するメタキシリレン基含有ポリアミド重合体の低吸湿性により、大気中の湿度を吸湿して発生する表面滑り性の不良化、また、吸湿による皺の発生等を防ぎ、上記構成を有する積層2軸延伸ポリアミド系フィルムを製袋加工に供する場合に、上記の優れた破袋防止性と耐屈曲疲労性を両立すると共に、良好なハンドリング性を提供することができる。
【0046】
本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムのB層を構成する脂肪族ポリアミド重合体としてはフィルム成形材料として使用することができ上記構造を形成するのに適切であれば特に制限されず広範なものが含まれる。例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン12、ナイロン6・10などの脂肪族ポリアミド単独重合体、あるいはこれらと共重合可能なモノマー10重量%以下、好ましくは1〜10重量%の共重合体、例えば、ナイロン6/6・6共重合体、ナイロン6/12、ナイロン6/6・10共重合体、ナイロン6・6/6・10共重合体などのような脂肪族ポリアミド共重合体で代表される脂肪族ポリアミド又はε−カプロラクタムを主成分としこれとヘキサメチレンジミンとイソフタル酸とのナイロン塩やメタキシリレンジアミンとアジピン酸とのナイロン塩などとを共重合させた少量の芳香族を含むポリアミド共重合体等を使用することができる。
【0047】
また、B層を構成する半芳香族ポリアミド重合体は、特に制限されず広範なものが含まれる。より具体的にはメタキシリレン基含有ポリアミド重合体、フタル酸基含有ポリアミド重合体などが挙げられる。半芳香族ポリアミド重合体は単独で又は2種以上の組み合わせで使用することができる。上記のメタキシリレン基含有ポリアミド重合体としては、メタキシリレンジアミン、若しくは、メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる混合キシリレンジアミンを主たるジアミン成分とし、炭素数6〜12のα、ω−脂肪族ジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とするメタキシリレン基含有ポリアミド重合体において、パラキシリレンジアミンは全キシリレンジアミン中30%以下であるのが好ましく、また、キシリレンジアミンと脂肪族ジカルボン酸とから構成された構成単位は分子鎖中において少なくとも70モル%以上であるのが好ましい。
【0048】
また、B層を構成する上記のフタル酸基含有ポリアミド重合体としては、炭素数6〜12のα、ω−脂肪族ジアミンを主たるジアミン成分とし、テレフタル酸、若しくは、テレフタル酸及びイソフタル酸からなる混合フタル酸を主たるジカルボン酸成分とするフタル酸基含有ポリアミド重合体である。又は、フタル酸基含有ポリアミド重合体又は上記のようなフタル酸と脂肪族ジアミンからなるナイロン塩と、脂肪族ポリアミド又はε−カプロラクタムを共重合させたポリアミド共重合体を使用することができる。この場合、脂肪族ポリアミド成分は上記共重合ポリアミド重合体中30%以下であるのが好ましい。
【0049】
本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムのA層及び/又はB層を構成するポリアミド重合体中に、滑り性付与を目的として脂肪族アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドを含有させることができる。本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムのA層及び/又はB層を構成するポリアミド重合体中に含有させる脂肪族アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドとしては、エルカ酸アマイド、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイドなどが挙げられる。
【0050】
この場合の、A層及び/又はB層を構成するポリアミド重合体中に含有させる脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドの含有量は、好ましくは0.01〜0.40重量%であり、さらに好ましくは0.05〜0.2重量%である。脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドの含有量が0.01重量%未満となると滑り性が悪く、印刷やラミネート等における加工適性が不良となり、0.40重量%を越えると経時的にフィルム表面へのブリードにより表面に斑を生ずることがあり、品質上好ましくない。
【0051】
本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムは、常温や低温環境下における耐屈曲疲労性に優れ、耐衝撃性にも優れた特性を示すと共に、印刷やラミネート、製袋加工等の加工適性も良好である。さらに食品包装等の包装材料として使用したときに、商品の輸送時、保管時における破袋防止等に効果があり、さらに業務用途等の大型重量袋の落下破袋防止にも効果のある各種の包装材料に好適な積層2軸延伸ポリアミド系フィルムである。
特に、前記業務用途等の大型重量袋として使用するには、衝撃強度が0.95J以上、ピンホール数が5個以下、ラミネート強度が5.5N/15mm以下であることが望ましいことがわかった。
このとき衝撃強度が1.2J、ピンホール数が0個、ラミネート強度が7N/15mmであれば業務用途等の大型重量袋として使用するには十分である。
【0052】
本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムの厚みは特に制限されるものではないが、包装材料として使用する場合、通常100μm以下であり、一般には5〜50μmの厚みのものが使用される。
【0053】
A層、B層を構成する各種ポリアミド重合体、熱可塑性エラストマー等を混合する方法には特に制限はないが、通常はチップ状の重合体をV型ブレンダーなどを用いて混合した後、溶融し成形する方法が用いられる。
【0054】
本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムのA層とB層を構成するポリアミド重合体には必要に応じて他の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル系重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系重合体等をその特性を害さない範囲で含有させてもよい。
【0055】
また、帯電防止剤や防曇剤、紫外線吸収剤、染料、顔料等の各種の添加剤を必要に応じて、ポリアミド重合体からなるA層及び/又はB層の一方又は両方の層に含有させることができる。
【0056】
本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムは公知の製造方法により製造することができる。例えば、各層を構成する重合体を別々の押出機を用いて溶融し、1つのダイスから共押出しにより製造する方法、各層を構成する重合体を別々にフィルム状に溶融押出ししてからラミネート法により積層する方法、及びこれらを組み合せた方法など任意の公知の方法をとることができ、延伸方法としては、フラット式逐次2軸延伸方法、フラット式同時軸延伸方法、チューブラー法等の公知の方法を用いて縦方向に2〜5倍、横方向に3〜6倍延伸し、必要により熱固定する。かくして、積層フィルムの透明性、酸素ガスバリアー性や加工適性を向上させることができる。
【実施例】
【0057】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、フィルムの評価は次の測定法によって行った。
【0058】
(1)衝撃強度
東洋精機製作所社製のフイルムインパクトテスターを使用し、温度23℃、相対湿度65%の環境下で測定した。
【0059】
(2)耐屈曲疲労性(ピンホール数)
理学工業社製のゲルボフレックステスターを使用し、下記の方法により耐屈曲疲労性を測定した。
実施例で作製したフィルムにポリエステル系接着剤を塗布後、線状低密度ポリエチレンフイルム(L−LDPEフィルム:東洋紡績社製、L4102)40μmをドライラミネートし、40℃の環境下で3日間エージングを行いラミネートフイルムとした。得られたラミネートフイルムを12インチ×8インチに裁断し、直径3.5インチの円筒状にし、円筒状フィルムの一端をゲルボフレックステスターの固定ヘッド側に、他の端を可動ヘッド側に固定し、初期の把持間隔を7インチとした。
ストロークの最初の3.5インチで440度のひねりを与え、その後2.5インチは直線水平運動で全ストロークを終えるような屈曲疲労を、40回/minの速さで500回行い、ラミネートフイルムに発生したピンホール数を数えた。なお、測定は5℃の環境下で行った。
【0060】
(3)ラミネート強度
フィルム厚み方向の耐凝集破壊強度把握のためラミネート強度を測定した。
実施例で製造したフィルムにポリエステル系接着剤を塗布後、線状低密度ポリエチレンフイルム(L−LDPE:東洋紡績社製、L4102:厚み40μm)をドライラミネートし、40℃の環境下で3日間エージングを行いラミネートフイルムとした。ラミネート強度測定用にラミネートフイルムを短冊状に切断し、一端をポリアミド系積層2軸延伸フィルムと線状低密度ポリエチレンフイルムとに界面で剥離し、ラミネート強度を測定した。
【0061】
(実施例1)
2種3層の共押出しTダイ設備を使用し、次のような構成の未延伸シートを得た。B層/A層/B層の構成で、未延伸シートのトータル厚みは190μmであり、トータル厚みに対するA層の厚み比率は70%である。
A層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)が95.9重量%とNy−12をポリアミド成分とするポリアミド系ブロック共重合体(アルケマ社製、PEBAX4033SN01)が4重量%からなり、さらにフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、Irganox1010)0.1重量%を含有してなる混合重合体組成物。
B層を構成する組成物:ナイロン6が96.85重量%とポリメタキシレンアジパミド(東洋紡績社製、T600)が3.0重量%、及び高脂肪酸アマイドが0.15重量%からなる重合体組成物。
【0062】
得られた未延伸シートを縦方向に3.15倍延伸し、続いて横方向に3.8倍延伸することにより15μmの2軸延伸フィルムを作製し、さらに、線状低密度ポリエチレンフイルム(L−LDPEフィルム:東洋紡績社製、L4102)40μmとドライラミネートする側のB層表面にコロナ放電処理を実施した。得られた2軸延伸フィルムの衝撃強度、ピンホール数、ラミネート強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0063】
(実施例2)
実施例1の記載において以下のように代えた他は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
A層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)が89.9重量%とNy−12をポリアミド成分とするポリアミド系ブロック共重合体(アルケマ社製、PEBAX4033SN01)が10重量%、さらにフェノール系酸化防止剤を0.1重量%を含有してなる混合重合体組成物。
【0064】
得られた2軸延伸フィルムの衝撃強度、ピンホール数、ラミネート強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0065】
(実施例3)
実施例1の記載において以下のように代えた他は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
A層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績会社製、T814)が83.9重量%とNy−6をポリアミド成分とするポリアミド系ブロック共重合体(アルケマ社製、PEBAX MH1657)が16重量%、さらにフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、Irganox1010)を0.1重量%を含有してなる混合重合体組成物。
【0066】
得られた2軸延伸フィルムの衝撃強度、ピンホール数、ラミネート強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0067】
(実施例4)
実施例1の記載において以下のように代えた他は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
A層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)が89.9重量%とエチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デユポン・ポリケミカル社製、ニュクレルN0903HC)が10重量%、さらにフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、Irganox1010)0.1重量%を含有してなる混合重合体組成物。
【0068】
得られた2軸延伸フィルムの衝撃強度、ピンホール数、ラミネート強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0069】
(実施例5)
実施例1の記載において以下のように代えた他は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
A層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)が89.9重量%とエチレン−エチルアクリレート共重合体(三井・デユポン・ポリケミカル社製、EVAFLEX−EEA A−703)が10重量%、さらにフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、Irganox1010)0.1重量%を含有してなる混合重合体組成物。
【0070】
得られた2軸延伸フィルムの衝撃強度、ピンホール数、ラミネート強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0071】
(実施例6)
実施例1の記載において以下のように代えた他は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
A層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)が89.9重量%と金属イオン含有エチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デユポン・ポリケミカル社製、ハイミラン1605)が10重量%、さらにフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、Irganox1010)0.1重量%を含有してなる混合重合体組成物。
【0072】
得られた2軸延伸フィルムの衝撃強度、ピンホール数、ラミネート強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0073】
(実施例7)
実施例1の記載において以下のように代えた他は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
トータル厚みに対するA層の厚み比率:81%
A層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)が95.9重量%とNy−12をポリアミド成分とするポリアミド系ブロック共重合体(アルケマ社製、PEBAX2533SN01)が4重量%、さらにフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、Irganox1010)0.1重量%を含有してなる混合重合体組成物。
B層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)が49.85重量%とポリメタキシレンアジパミド(三菱瓦斯化学社製、S6007)が50重量%、及び高脂肪酸アマイドが0.15重量%からなる重合体組成物。
【0074】
得られた2軸延伸フィルムの衝撃強度、ピンホール数、ラミネート強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0075】
(実施例8)
実施例1の記載において以下のように代えた他は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
トータル厚みに対するA層の厚み比率:86%
A層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)が94.9重量%とNy−12をポリアミド成分とするポリアミド系ブロック共重合体(アルケマ社製、PEBAX2533SN01)が5重量%、さらにフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、Irganox1010)0.1重量%を含有してなる混合重合体組成物。
B層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)が9.85重量%とポリメタキシレンアジパミド(三菱瓦斯化学社製、S6007)が90重量%、及び高脂肪酸アマイドが0.15重量%からなる重合体組成物。
【0076】
得られた2軸延伸フィルムの衝撃強度、ピンホール数、ラミネート強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0077】
(比較例1)
実施例1の記載において以下のように代えた他は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。単層押出しTダイ設備を使用し、次のような構成の未延伸シートを得た。単層構成で、未延伸シートのトータル厚みは190μmである。
構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)が96.85重量%とポリメタキシリレンアジパミド(東洋紡績社製、T600)が3.0重量%、及び高脂肪酸酸アマイドが0.15重量%からなる重合体組成物。
【0078】
得られた2軸延伸フィルムの衝撃強度、ピンホール数、ラミネート強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0079】
(比較例2)
実施例1の記載において以下のように代えた他は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。単層押出しTダイ設備を使用し、次のような構成の未延伸シートを得た。単層構成で、未延伸シートのトータル厚みは190μmである。
構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)が96.85重量%とNy−12をポリアミド成分とするポリアミド系ブロック共重合体(アルケマ社製、PEBAX4033SN01)が3.0重量%、及び高脂肪酸アマイドが0.15重量%からなる重合体組成物。
【0080】
得られた2軸延伸フィルムの衝撃強度、ピンホール数、ラミネート強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0081】
(比較例3)
実施例1の記載において以下のように代えた他は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
トータル厚みに対するA層の厚み比率:86%
A層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)が95.9重量%とNy−12をポリアミド成分とするポリアミド系ブロック共重合体(アルケマ社製、PEBAX4033SN01)が4.0重量%、さらにフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、Irganox1010)を0.1重量%を含有してなる混合重合体組成物。
【0082】
得られた2軸延伸フィルムの衝撃強度、ピンホール数、ラミネート強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0083】
(比較例4)
実施例1の記載において以下のように代えた他は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
トータル厚みに対するA層の厚み比率:73%
A層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)が89.9重量%とNy−12をポリアミド成分とするポリアミド系ブロック共重合体(アルケマ社製、PEBAX4033SN01)が10.0重量%、さらにフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、Irganox1010)を0.1重量%含有してなる混合重合体組成物。
B層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)が49.85重量%とポリメタキシレンアジパミド(三菱瓦斯化学社製、S6007)が50重量%及び高脂肪酸アマイドが0.15重量%からなる重合体組成物。
【0084】
得られた2軸延伸フィルムの衝撃強度、ピンホール数、ラミネート強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0085】
(比較例5)
実施例1の記載において以下のように代えた他は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
トータル厚みに対するA層の厚み比率:86%
A層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)が89.9重量%とNy−12をポリアミド成分とするポリアミド系ブロック共重合体(アルケマ社製、PEBAX4033SN01)が10.0重量%、さらにフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、Irganox1010)を0.1重量%を含有してなる混合重合体組成物。
B層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)が49.85重量%とポリメタキシレンアジパミド(三菱瓦斯化学社製、S6007)が50重量%、及び高脂肪酸アマイドが0.15重量%からなる重合体組成物。
【0086】
得られた2軸延伸フィルムの衝撃強度、ピンホール数、ラミネート強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
以上、本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムについて、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムは、耐衝撃性及び耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性に優れているという特性を有していることから、食品包装等の包装材料の用途に好適に用いることができるほか、例えば、業務用途等の大型重量袋の用途にも用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリアミド重合体97〜80重量%と熱可塑性エラストマー3〜20重量%との混合重合体からなるA層の少なくとも一方の面に、脂肪族ポリアミド重合体99.5〜0.5重量%と半芳香族ポリアミド重合体0.5〜99.5重量%との混合ポリアミド重合体からなるB層が積層されてなり、かつ衝撃強度が1.5J以上、ピンホール数が5個以下、ラミネート強度が5.5N/15mm以下であることを特徴とする積層2軸延伸ポリアミド系フィルム。
【請求項2】
A層の厚みがA層及びB層の合計厚みの20〜93%であり、B層の厚みが少なくとも1μm以上であることを特徴とする請求項1記載の積層2軸延伸ポリアミド系フィルム。
【請求項3】
A層を構成する熱可塑性エラストマーがポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー又はアイオノマー重合体から選ばれた1種又は2種以上のエラストマーであるであることを特徴とする請求項1又は2記載の積層2軸延伸ポリアミド系フィルム。
【請求項4】
B層が脂肪族ポリアミド重合体99.5〜50.0重量%と半芳香族ポリアミド重合体0.5〜50.0重量%との混合ポリアミド重合体からなることを特徴とする請求項1、2又は3記載の積層2軸延伸ポリアミド系フィルム。
【請求項5】
B層が半芳香族ポリアミド重合体99.5〜50.0重量%と脂肪族ポリアミド重合体0.5〜50.0重量%との混合ポリアミド重合体からなることを特徴とする請求項1、2又は3記載の積層2軸延伸ポリアミド系フィルム。
【請求項6】
A層及び/又はB層を構成するポリアミド重合体が、脂肪族アマイド及び/又は脂肪族ビスアマイドを0.01〜0.40重量%含有してなることを特徴とする請求項1、2、4又は5記載の積層2軸延伸ポリアミド系フィルム。
【請求項7】
A層を構成する混合重合体が酸化防止剤を0.01〜0.1重量%含有してなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の積層2軸延伸ポリアミド系フィルム。
【請求項8】
酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤であることを特徴とする請求項7記載の積層2軸延伸ポリアミド系フィルム。
【請求項9】
フェノール系酸化防止剤が完全ヒンダードフェノール系化合物又は部分ヒンダードフェノール系化合物から選ばれた1種又は2種以上のフェノール系化合物であることを特徴とする請求項8記載の積層2軸延伸ポリアミド系フィルム。

【公開番号】特開2006−205711(P2006−205711A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181904(P2005−181904)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】