説明

積算計のパルス出力確認方法および積算計

【課題】パルスが設定されたとおりに正常に出力されているかどうかを確認する。
【解決手段】積算熱量計は、返り管10bを流れる熱媒体の流量を測定する流量測定部1と、送り管10aを流れる熱媒体の温度を検出する温度センサ2aと、返り管10bを流れる熱媒体の温度を検出する温度センサ2bと、温度センサ2a,2bから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器3と、熱媒体の流量と熱負荷前後の温度差とから熱量を演算して積算し、単位熱量が積算されるごとに熱量パルス信号を出力する演算部4と、熱量を表示する表示部5と、熱量パルス信号を分周する出力分周部7と、出力分周部7から出力されるパルスに応じて点滅するLED等の発光部8とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱量、流量などの物理量を測定して積算し、あらかじめ定められた単位量が積算されるごとにパルスを出力する積算熱量計や流量計などの積算計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、積算熱量計や、水道メータなどの流量計においては、熱量あるいは流量に対応するパルス出力により熱量や流量を計測し、表示するようにしている。すなわち、積算熱量計や流量計からのパルス信号を遠隔カウンタで積算することにより、積算熱量計や流量計の指針値を離れた地点から確認できるようにしている。具体的には、積算熱量計のマイクロコンピュータが流量信号を受け、あらかじめ決められた単位熱量が積算されるごとにパルスを出力するようにしている。同様に、流量計の場合には、あらかじめ決められた単位流量が積算されるごとにパルスを出力するようにしている。
【0003】
そして、特許文献1に開示された流量計では、遠隔カウンタとの接続時における動作確認時、あらかじめ定められた単位流量より小さい積算単位の単位パルス設定ができるようにして、ごく少ない流量で動作確認を行えるようにしていた。また、特許文献2に開示された電子式指示計器では、表示部にパルス出力の設定項目、選択内容を表示できるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−224390号公報
【特許文献2】特開2010−32366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の方法によると、単位熱量あるいは単位流量が積算されるごとにパルスを出力するのか否か等の設定項目は遠隔カウンタで確認可能であるが、現地でパルスの状態を確認する手段がなく、積算熱量計や流量計からパルスが正しく出力されているのか否かを確認することはできないため、積算熱量計や流量計の表示と遠隔カウンタの表示とが異なる場合、原因推定に時間がかかるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、パルスが設定されたとおりに正常に出力されているかどうかを確認することができるパルス出力確認方法および積算計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の積算計のパルス出力確認方法は、対象となる物理量を測定して積算し、あらかじめ定められた単位量が積算されるごとにパルスを出力する測定ステップと、この測定ステップで積算された積算量を表示する表示ステップと、前記測定ステップによって出力されるパルスを分周する出力分周ステップと、この分周したパルスに応じて発光手段を点滅させる発光ステップとを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の積算計のパルス出力確認方法の1構成例において、前記測定ステップは、対象となる物理量として熱媒体の消費熱量を測定して積算し、あらかじめ定められた単位熱量が積算されるごとにパルスを出力することを特徴とするものである。
また、本発明の積算計のパルス出力確認方法の1構成例において、前記測定ステップは、対象となる物理量として流体の流量を測定して積算し、あらかじめ定められた単位流量が積算されるごとにパルスを出力することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の積算計は、対象となる物理量を測定して積算し、あらかじめ定められた単位量が積算されるごとにパルスを出力する測定手段と、この測定手段によって積算された積算量を表示する表示手段と、前記測定手段から出力されるパルスを分周する出力分周手段と、この出力分周手段から出力されるパルスに応じて点滅する発光手段とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、あらかじめ定められた単位量に応じたパルスレートで出力されるパルスを分周し、分周後のパルスで発光手段を点滅させる。これにより、積算計を点検しようとする作業員は、発光手段の単位時間(1秒)あたりの点滅回数を目視で数え、表示される積算量と比較することで、積算計からパルスが設定されたとおりに正常に出力されているかどうかを確認することができる。その結果、本発明では、積算計の表示と遠隔カウンタの表示とが異なるといったトラブルが発生した時の原因推定作業の効率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る積算熱量計の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る積算熱量計の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[発明の原理]
本発明では、積算熱量計のパルスレートに比例して点滅するLEDを積算熱量計に設置する。パルス出力の正常/異常判断は、LEDの単位時間あたりの点滅回数を目視で数え、積算熱量計の熱量表示値と比較して行なう。LEDの点滅回数は、最も目視点検が容易となるように決定する。
【0012】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る積算熱量計の構成を示すブロック図である。積算熱量計は、例えば地域冷暖房システムに設けられている。地域冷暖房システムは、熱供給器(不図示)により熱エネルギーを与えられた温水等の熱媒体を、送り管10aを通じて熱負荷となる熱交換器(不図示)へ配送し、この熱交換器にて冷暖房のための熱エネルギーを消費した熱媒体を、返り管10bを通じて再び熱供給器へ返送するようになっている。
【0013】
本実施の形態の積算熱量計は、返り管10bを流れる熱媒体の流量を測定する流量測定部1と、送り管10aを通じて熱交換器へ流入する熱媒体の温度を検出する温度センサ2aと、返り管10bを通じて熱供給器へ戻る熱媒体の温度を検出する温度センサ2bと、温度センサ2a,2bから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器3と、熱媒体の流量と熱負荷前後の温度差とから熱量を演算して熱量パルス信号を出力する演算部4と、演算部4が演算した熱量を表示する表示部5と、熱量パルス信号を外部機器である遠隔カウンタ等へ出力するための通信インターフェース部6と、熱量パルス信号を分周する出力分周部7と、出力分周部7から出力されるパルスに応じて点滅するLED等の発光部8とから構成される。流量測定部1と温度センサ2a,2bとA/D変換器3と演算部4とは、測定手段を構成している。
【0014】
図2は本実施の形態の積算熱量計の動作を示すフローチャートである。流量測定部1は、返り管10bを流れる熱媒体の流量を測定する(ステップS1)。流量測定部1は、測定した流量値を示す流量信号を出力する。なお、流体の流量を求める方法は周知であるので、詳細な説明は省略する。
【0015】
一方、温度センサ2aは、送り管10aを流れる熱媒体の温度を検出し、温度センサ2bは、返り管10bを流れる熱媒体の温度を検出する(ステップS2)。A/D変換器3は、温度センサ2a,2bから出力されるアナログの温度信号をデジタル信号に変換する。
【0016】
次に、演算部4は、流量測定部1によって測定された熱媒体の流量と熱負荷前後の温度差(すなわち、温度センサ2aによって測定された熱媒体の温度と温度センサ2bによって測定された熱媒体の温度との差)とを乗算し、この乗算結果に所定の熱量換算係数を乗じることで、消費熱量を演算する(ステップS3)。演算部4が演算した熱量は表示部5によって表示される。さらに、演算部4は、熱量を積算し、積算結果があらかじめ定められた単位熱量に達したときに(ステップS4においてYES)、パルスを出力する(ステップS5)。こうして、単位熱量が積算されるごとに熱量パルス信号が出力される。演算部4から出力される熱量パルス信号は、通信インターフェース部6を介して遠隔カウンタ等へ出力される。
【0017】
出力分周部7は、演算部4から出力される熱量パルス信号を分周する。発光部8は、出力分周部7から出力されるパルスに応じて点滅する。このとき、出力分周部7は、熱量パルス信号を、目視点検が容易となるように分周する。例えば積算熱量計の口径が25Aの場合、一般的な使用領域が流速2m/sec、温度差5℃程度、瞬時熱量75MJ/h(20kJ/sec)で動作することが多いことを勘案し、目視点検がし易いように1秒間あたり1回、発光部8が発光するようにする。積算熱量がkJに達する度に熱量パルス信号が出力されるとすると、瞬時熱量が20kJ/secの場合には1秒間あたり20パルスの熱量パルス信号が出力されることになる。したがって、出力分周部7で熱量パルス信号を1/20に分周すれば、1秒間あたり1回の頻度で発光部8が発光する。
【0018】
また、積算熱量計の口径が40Aの場合、瞬時熱量190MJ/h(53kJ/sec)で動作することが多い。積算熱量がkJに達する度に熱量パルス信号が出力されるとすると、瞬時熱量が53kJ/secの場合には1秒間あたり53パルスの熱量パルス信号が出力される。したがって、出力分周部7で熱量パルス信号を1/53に分周すれば、1秒間あたり1回の頻度で発光部8が発光する。以上のような出力分周部7は、フリップフロップ回路によって実現することができる。
【0019】
以上、説明したように、本実施の形態では、単位熱量に応じたパルスレートで出力される熱量パルス信号を分周し、分周後のパルス信号で発光部8を点滅させる。これにより、積算熱量計を点検しようとする作業員は、発光部8の単位時間(1秒)あたりの点滅回数を目視で数え、表示部5に表示される熱量表示値と比較することで、熱量パルス信号が設定されたとおりに正常に出力されているかどうかを確認することができる。その結果、本実施の形態では、積算熱量計の熱量表示と遠隔カウンタの熱量表示とが異なるといったトラブルが発生した時の原因推定作業の効率を大幅に向上させることができる。
【0020】
なお、本実施の形態では、積算熱量計を例に挙げて説明しているが、本発明は積算熱量計と同様のパルス出力を持つ流量計、例えば水道メータ、電気メータ、ガスメータにも適用可能である。
本実施の形態で説明した演算部4は、CPU、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、熱量、流量などの物理量を測定して積算する積算熱量計や流量計などの積算計に適用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1…流量測定部、2a,2b…温度センサ、3…A/D変換器、4…演算部、5…表示部、6…通信インターフェース部、7…出力分周部、8…発光部、10a…送り管、10b… 返り管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象となる物理量を測定して積算し、あらかじめ定められた単位量が積算されるごとにパルスを出力する測定ステップと、
この測定ステップで積算された積算量を表示する表示ステップと、
前記測定ステップによって出力されるパルスを分周する出力分周ステップと、
この分周したパルスに応じて発光手段を点滅させる発光ステップとを備えることを特徴とする積算計のパルス出力確認方法。
【請求項2】
請求項1記載の積算計のパルス出力確認方法において、
前記測定ステップは、対象となる物理量として熱媒体の消費熱量を測定して積算し、あらかじめ定められた単位熱量が積算されるごとにパルスを出力することを特徴とする積算計のパルス出力確認方法。
【請求項3】
請求項1記載の積算計のパルス出力確認方法において、
前記測定ステップは、対象となる物理量として流体の流量を測定して積算し、あらかじめ定められた単位流量が積算されるごとにパルスを出力することを特徴とする積算計のパルス出力確認方法。
【請求項4】
対象となる物理量を測定して積算し、あらかじめ定められた単位量が積算されるごとにパルスを出力する測定手段と、
この測定手段によって積算された積算量を表示する表示手段と、
前記測定手段から出力されるパルスを分周する出力分周手段と、
この出力分周手段から出力されるパルスに応じて点滅する発光手段とを備えることを特徴とする積算計。
【請求項5】
請求項4記載の積算計において、
前記測定手段は、対象となる物理量として熱媒体の消費熱量を測定して積算し、あらかじめ定められた単位熱量が積算されるごとにパルスを出力することを特徴とする積算計。
【請求項6】
請求項4記載の積算計において、
前記測定手段は、対象となる物理量として流体の流量を測定して積算し、あらかじめ定められた単位流量が積算されるごとにパルスを出力することを特徴とする積算計。

【図1】
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【図2】
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