説明

積雪量計測装置及び方法

【課題】滑らかな積雪面の位置を計測するステレオ画像計測装置及び方法を提供する。
【解決手段】ランダムドットパターン4を積雪面5に投影し、該積雪面5が撮像された画像を撮像装置(例えば、カメラ)群1によって取得し、該画像に係る対応点を検出してステレオ画像計測を施して、該積雪面5の位置に係る三次元座標を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積雪量計測装置及び方法であって、例えば、立体計測技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、駅舎,校舎,民家などの屋根上の積雪を下ろす時期(即ち、雪下ろし時期)を決定するためには、屋根上に積雪量を計測する必要がある。
【0003】
例えば、積雪量を計測する方法(以後、積雪量計測方法と称する)には、以下の3つの方法が知られている。
【0004】
第1の積雪量計測方法は、定規によって計測する方法であって、その方法の概要は次の通りである。観測者が計測場所に定規を垂直に指し込み、該定規の目盛りを読み取る。または、計測場所において目盛りを付けた柱を垂直に設置し、観測者が該柱の目盛りを読み取る。
【0005】
第2の積雪量計測方法は、圧力計測によって積雪量を換算する方法であって、その方法の概要は次の通りである。不凍液を注入した袋状シートを計測場所に設置し、そのシート上の積雪の重みによって該シートにかかる圧力変化を計測し、その圧力変化を積雪量へ換算する(例えば、特許文献1)。
【0006】
第3の積雪量計測方法は、超音波によって計測する方法であって、その方法の概要は次の通りである。積雪量を考慮して、特定の高さ(例えば、5メートル程度)の支柱を設置し、さらに、その支柱に超音波発信器を積雪(即ち、計測対象)に向けて据付ける。そして、前記の超音波発信器によって発信された超音波が、積雪面によって跳ね返ってくるまでの時間を積雪量へ換算する。
【0007】
なお、一般的に、屋根上の積雪量計測方法には、前記の第1の積雪量計測方法に類似した方法であって、計測場所である屋根上に垂直に設置した柱の目盛りを、観測者が読み取る方法が用いられる。
【0008】
また、カメラ(例えば、CCD(Charge Coupled Devices)カメラ)を用いて、立体計測を行う方法も、広く知られている。特に、2台のカメラを用いてステレオ画像を取得し、該ステレオ画像に対してステレオ画像計測を施す立体計測方法は、市場で注目されている。
【0009】
前記の立体計測方法では、ステレオ画像の一方の画像における点に対応する他方の画像における点(即ち、対応点)を検出することが重要な作業である。なお、前記立体計測方法は、三角測量法が基本原理である(例えば、非特許文献1参照)。
【0010】
前記の立体計測方法を応用したシステムや方法も、一般に広く知られている。例えば、ステレオ画像計測法によって指標点の三次元座標を抽出するシステム(例えば、特許文献2参照),ステレオ画像における相関マッチングによって線形図形端点を特定する方法(例えば、特許文献3参照),レーザ光投影によって物体上に特徴点を作成する方法(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【特許文献1】実開平03−074384(第3頁14行〜第4頁14行等)。
【特許文献2】特開平08−219783(段落[0008]〜[0010]等)。
【特許文献3】特開平08−254416(段落[0006]〜[0007]等)。
【特許文献4】特開2000−205821(段落[0034]〜[0035]等)。
【非特許文献1】画像処理ハンドブック編集委員会編,「画像処理ハンドブック」,初版,株式会社昭晃堂,1987,p.392−397。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述の第1乃至第3の積雪量計測方法によって、屋根上の積雪量計測を行うと、その各々の方法に対して、次のような問題が発生する。
【0012】
第1の積雪量計測方法では、観測者が屋根上から落下する危険性を考慮し、観測者自らが定規を測定場所に差し込む方法を採用しない。代わりに、観測者が、計測場所である屋根上に垂直に設置した柱の目盛りを遠隔(即ち、危険性が生じない程度に遠隔)から読み取る方法を採っている。例えば、望遠鏡などを用いて、遠隔から前記の柱の目盛りを読み取る方法である。
【0013】
第2の積雪量計測方法では、傾斜している屋根で計測する場合、袋状シート内の不凍液が不均一に分布するため、積雪量を正しく計測することが困難である。
【0014】
第3の積雪量計測方法では、自動的に計測を行うことができるため、観測者に対する負担が、大幅に軽減される。さらに、前記の第3の積雪量計測方法による計測値は、一般的に、信頼性も高い。しかし、屋根より高い(例えば、前記のように屋根より5メートル高い)位置に、超音波発信器を設置する必要がある。そのような超音波発信器を屋根上に設置することは、強風などの天候を考慮すると、現実的ではない。
【0015】
また、屋根上に設置された柱の目盛りを遠隔から正確に読み取ることは、観測者にとって困難なことである。そして、観測者の目視による計測は、観測者にとって大きな負担である。さらに、このような方法では、計測値の信頼性も低くなってしまう。
【0016】
前述の立体計測方法を応用したシステムや方法では、積雪面のように滑らかで、かつ、光を乱反射する面における座標(例えば、対応点)検出には、適さない場面が多い。これは、滑らかな面では、エッジ検出が困難であるため、対応点が検出し難いためである。なお、前記の滑らかな面は、該面を撮像した画像のコントラストが低くなり、かつ、特徴的な模様(即ち、一様でない模様)を有さない面である。
【0017】
本発明は、前記課題に基づいてなされたものであって、滑らかな積雪面の位置を計測する積雪量計測装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題の解決を図るために、請求項1記載の発明は、複数の撮像装置に接続された積雪量計測装置であって、前記の複数の撮像装置が撮像できる位置に存在する積雪面に対して、ランダムドットパターンを投影する手段と、それらの撮像装置によって該ランダムドットパターンを含む画像を各々取得する手段と、その各々取得した画像に係る対応点を検出してステレオ画像計測を施し、該積雪面の位置に係る三次元座標を取得する手段と、を有することを特徴とする。
【0019】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記の積雪面の位置に係る三次元座標と他面の位置に係る三次元座標の差を求める手段を含むことを特徴とする。
【0020】
請求項3記載の発明は、複数の撮像装置が撮像できる位置に存在する積雪面に対して、ランダムドットパターンを投影するステップと、それらの撮像装置によって該ランダムドットパターンを含む画像を各々取得するステップと、その各々取得した画像に係る対応点を検出してステレオ画像計測を施し、該積雪面の位置に係る三次元座標を取得するステップと、を有することを特徴とする。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記の積雪面の位置に係る三次元座標と他面の位置に係る三次元座標の差を求めるステップを含むことを特徴とする。
【0022】
前記の請求項1,3記載の発明によれば、ランダムドットパターンに基づく積雪量計測を行うことができる。
【0023】
前記の請求項2,4記載の発明によれば、三次元座標系における積雪面の位置と他面の位置との差を取得できる。
【発明の効果】
【0024】
以上示したように請求項1の発明によれば、請求項1,3記載の発明によれば、積雪面に手を加える(例えば、塗装する)ことなく、かつ、観測者が該積雪面に接触することなく、積雪面の位置に係る三次元座標を取得できる。
【0025】
請求項2,4記載の発明によれば、三次元座標系における積雪面と他面の相対的な位置関係を取得できる。
【0026】
これらを以って立体計測技術の分野に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態における積雪量計測装置及び方法を図面等に基づいて詳細に説明する。
【0028】
本実施の形態は、ランダムドットパターン(例えば、コントラストの高いランダムドットパターン)を積雪面に投影し、該積雪面が撮像された画像を複数の撮像装置(例えば、カメラ)によって取得し、該画像に係る対応点を検出してステレオ画像計測を施して、該積雪面の位置に係る三次元座標を取得する積雪量計測装置及び方法である。なお、前記のランダムドットパターンを投影する手段には、投光器や投影機を用いる手段を想定できる。
【0029】
本実施の形態における構成を図1に基づいて以下に説明する。
【0030】
本実施の形態は、図1中のカメラ(即ち、計測場所の画像を撮像する撮像装置;例えば、2台以上のカメラ)群1,投光器(測定場所にランダムドットパターンを投影する投光器;即ち、投影装置)2,積雪量計算機(該カメラ1によって撮像された画像から積雪量を計算する計算機)3,投影面(ランダムドットパターンが投影された面、または、ランダムドットパターンそのもの)4,積雪面5,屋根上面(積雪量計測における基準面(他面))6によって構成される。
【0031】
なお、前記の投影面4の形状,位置は、ランダムドットパターンを投影された積雪面(即ち、積雪面5)と同一の形状,位置である。また、図1中では、カメラ群1はカメラ1aとカメラ1bから構成されており、該カメラ1aとカメラ1bは、積雪量計算機3に各々接続されている。
【0032】
さらに、前記の積雪量計算機3は、前記のカメラ群1から送られた画像に対して、ステレオ画像計測を施し、積雪面の3次元座標を計算するステレオ画像計測手段を有するものとする。
【0033】
本実施の形態における手順を以下に説明する。
【0034】
まず、投光器2によって、ランダムドットパターンを屋根上の積雪面5に投影する。即ち、投影面4が積雪面5に形成される。
【0035】
次に、カメラ群1は、所定の位置姿勢から前記の投影面4を含む画像を撮像する。そして、前記カメラ群1は、積雪量計算機3に対して、該画像に関するデータ(以下、画像データと称する)を送信する。
【0036】
次に、積雪量計算機3は、その送信された画像データに対し、ステレオ画像計測を施して(即ち、ステレオ画像計測に係る計算を行って)、積雪量を取得する。
【0037】
なお、積雪面5は一様なパターンを有する面であるため、一般的に、該積雪面5に対応点探索を適応することは困難である。即ち、前記の積雪面5のままではステレオ画像計測に適さない。
【0038】
そこで、ランダムドットパターンを積雪面5に投影して投影面4を形成する。即ち、積雪面5上に一様でない模様が投影されることによって、対応点探索及びステレオ画像計測が可能となる。
【0039】
以下に、ステレオ画像計測方法に基づく積雪量計測方法の手順を詳細に説明する。
【0040】
前記のステレオ画像計測方法は、三角測量法に基づく計測方法である。例えば、カメラ1a,1bのそれぞれの位置姿勢が既知である場合、それらのカメラ1a,1bで各々撮像した画像上で同じ場所を見た点(即ち、対応点)を三角測量法によって検出して、該対応点の位置を求めることができる。
【0041】
図1中では、一様で無いランダムドットパターンを積雪面5に対して投影し、カメラ群1によって撮像された画像(即ち、計測したい点を含む画像)中で、特定の小領域内に存在する模様が同一の点を、該画像上で求め(例えば、相互相関値を調べて求め)、該点を対応点と見做す。その対応点から三角測量法によって、対応点の実際の位置を求めるものである。
【0042】
次に、前記のような対応点を、前記の画像上の複数個所に渡って求め、積雪面5の位置(即ち、三次元座標)を求める。
【0043】
そして、前記の求めた積雪面5の位置と、屋根上面6の位置と、の差を求めて、積雪量を換算する。
【0044】
以上のような本実施の形態によれば、観測者が、目盛りを読み取ることなく、画像(例えば、カメラによって撮像された画像)によって積雪量を自動計測するため、該観測者が屋根上から落下することを考慮しなくても良い。
【0045】
また、積雪量計算機が通信回線に接続され、該通信回線を介し該積雪量計算機を制御されて計測を行うこともできる。
【0046】
さらに、前記観測者は遠隔からの計測によって負担を感じることもない。そのため、前記観測者は、定点観測を行うことができ、積雪量の時系列に係る変化をデータとして取得できる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、信頼性の高い計測値を取得できる。さらに、ランダムドットが投影された範囲であれば、どの面でも計測できる。即ち、屋根上の広範囲な積雪量のデータを取得できる。
【0048】
他にも、超音波計測器のセンサに関する構造上の制約(例えば、該センサを下向けにすること)が無いため、投光器とカメラの設置場所も広範囲に選択できる。即ち、前記の投光器とカメラを屋根が見える位置に投光器とカメラを設置すればよい。例えば、前記の設置場所には、屋根の近くにある支柱(例えば、電柱),屋根の近くにある別棟(例えば、駅ホーム近くの事務棟)などを選択できる。
【0049】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施の形態における積雪量計測装置の構成図。
【符号の説明】
【0051】
1…カメラ群
1a,1b…カメラ
2…投光器
3…積雪量計算機
4…投影面
5…積雪面
6…屋根上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撮像装置に接続された積雪量計測装置であって、
前記の複数の撮像装置が撮像できる位置に存在する積雪面に対して、ランダムドットパターンを投影する手段と、
それらの撮像装置によって該ランダムドットパターンを含む画像を各々取得する手段と、
その各々取得した画像に係る対応点を検出してステレオ画像計測を施し、該積雪面の位置に係る三次元座標を取得する手段と、
を有することを特徴とする積雪量計測装置。
【請求項2】
前記の積雪面の位置に係る三次元座標と他面の位置に係る三次元座標の差を求める手段を含むことを特徴とする請求項1記載の積雪量計測装置。
【請求項3】
複数の撮像装置が撮像できる位置に存在する積雪面に対して、ランダムドットパターンを投影するステップと、
それらの撮像装置によって該ランダムドットパターンを含む画像を各々取得するステップと、
その各々取得した画像に係る対応点を検出してステレオ画像計測を施し、該積雪面の位置に係る三次元座標を取得するステップと、
を有することを特徴とする積雪量計測方法。
【請求項4】
前記の積雪面の位置に係る三次元座標と他面の位置に係る三次元座標の差を求めるステップを含むことを特徴とする請求項3記載の積雪量計測方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−256635(P2008−256635A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101397(P2007−101397)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】