説明

穏和な強化保存剤系

任意の局所施用溶液を保存するのに有用である組成物が記載される。コンタクトレンズを保存するのに有効な量にて溶解状態で1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドとの組合わせにての1種又はそれ以上のサッカライドを含む組成物、並びにかかる溶液を作る及び用いる方法も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドとの組合わせにての1種又はそれ以上のサッカライドの、穏和な強化保存剤系の製造における使用に向けられる。より特には、本発明は、眼用溶液及び医療用具の穏和な保存を与えるための、1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドとの組合わせにて1種又はそれ以上のサッカライドを含む組成物の使用に向けられる。
【背景技術】
【0002】
今日広く用いられているコンタクトレンズは、2つの一般カテゴリーすなわちハード及びソフトに入る。ハード角膜タイプレンズは、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)のようなアクリル酸エステルの重合により製造された物質から形成される。ゲル、ヒドロゲル又はソフトタイプレンズは、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)のようなモノマーを重合することにより、あるいは連続装用レンズの場合にはケイ素を含有するモノマー又はマクロモノマーを重合することにより作られる。ハードタイプ及びソフトタイプのコンタクトレンズの両方共、正常な装用中に広範囲の微生物に曝され、そして比較的速く汚されるようになる。それ故、コンタクトレンズは、ハードであろうがソフトであろうが、日常的な洗浄及び消毒を要求する。日常的にコンタクトレンズを適正に洗浄及び消毒しないことは、装用されている時の単なる不快感から重大な眼感染症にわたる様々な問題に通じ得る。緑膿菌のようなビルレント微生物により引き起こされた眼感染症は、もし未処置のままにされるならば又はもし処置の開始前に進行段階に達するようにされるならば、感染眼の失明に通じ得る。
【0003】
米国特許第4,758,595号は、緩衝剤好ましくはホウ酸塩緩衝剤たとえばホウ酸、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム又はそれらの混合物との組合わせにてビグアニド又はその水溶性塩を含有するコンタクトレンズ用消毒剤兼保存剤を開示する。
【0004】
米国特許第4,361,548号は、ポリマーすなわち約10,000から1,000,000の範囲の分子量を有するジメチルジアリルアンモニウムクロライド(DMDAAC)の希薄水溶液を含有するコンタクトレンズ用消毒剤兼保存剤を開示する。チメロサール、ソルビン酸又はフェニル第2水銀塩のような強化剤が一緒に用いられる場合、0.00001質量パーセントくらいの低い量のDMDAACホモポリマーが用いられ得る。DMDAACとのレンズの結合及び付随する眼組織の刺激は低減されたけれども、何人かの使用者において、望ましい臨床レベルを超えることが分かった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱、過酸化水素、ビグアニド、ポリマー状ビグアニド、第4級アンモニウムポリエステル、アミドアミン及び他の化学薬剤のような様々な商業的に入手できるコンタクトレンズ用消毒系の入手可能性にもかかわらず、改善消毒及び/又は保存系に対するニーズが存続している。かかる改善消毒及び/又は保存系は、用いるのが簡単であり、広範囲の微生物に有効であり、非毒性であり及びコンタクトレンズ材料への結合の結果としての眼刺激を引き起こさない系を包含する。コンタクトレンズ消毒及び眼用組成物保存の分野において、抗微生物活性を備えた安全で有効な化学薬剤に対する特別なニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、独特の穏和な自己保存性溶液(たとえば眼用溶液及び局所施用のために有用な同様な溶液(しかしそれらに限定されない)のような)に関する。かかる自己保存性溶液は、ハード透過性コンタクトレンズを含めてあらゆるタイプのコンタクトレンズを洗浄する、浸漬する、すすぐ、濡らす及び状態調整するために、鼻腔スプレー用に、点耳剤用に、点眼剤用に、等に有用であり得る。1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドとの組合わせにて1種又はそれ以上のサッカライドを含む組成物を含有する溶液は優秀な保存効果を示す一方、コンタクトレンズ用溶液の用途の場合においてはレンズ装用者の快適さも増加する、ということがことが分かった。本発明のサッカライド/ポリサッカライド含有組成物はまた、微生物汚染に抗しての眼用溶液、製薬、人工涙、快適用点滴剤、等の保存のために有用である。
【0007】
本サッカライド/ポリサッカライド含有組成物は、非毒性であり、用いるのが簡単であり且つ眼刺激を引き起こさない局所用溶液の製造に有用な効果的保存剤である。
【0008】
従って、本発明の目的は、自己保存性眼用系の製造に有用な強化殺生物活性を備えた組成物を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、医療用具の保存において強化殺生物活性を備えた組成物を用いる方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、コンタクトレンズを保存するための眼用系において有用な強化殺生物活性を備えた組成物を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、微生物汚染から眼用系を防護するのに有用な強化殺生物活性を備えた組成物を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、眼刺激性が低減又は除去されているところの、コンタクトレンズを保存するための眼用系において有用な強化殺生物活性を備えた組成物を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、眼用系を保存するのに有用な殺生物活性を有する穏和な組成物を作る方法を提供することである。
【0014】
本発明の更に別の目的は、保存剤として殺生物活性を備えた穏和な組成物を用いる方法を提供することである。
【0015】
本発明のこれらの及び他の目的及び利点(それらのうちのいくつかは特定的に記載され、そして他のものは記載されていない)は、以下の詳細な説明及び請求項から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の組成物は、従来のハード及びソフトレンズ並びにハード及びソフトガス透過性レンズのようなあらゆるコンタクトレンズに関して用いられ得る。本発明の組成物に関しての使用のためのかかる適当なレンズは、ヒドロゲルレンズ及び非ヒドロゲルレンズの両方、並びにシリコーン含有及びフッ素含有レンズを包含する。本明細書において用いられる場合の用語「ソフトコンタクトレンズ」は、一般に、少量の力下で容易に曲がるコンタクトレンズを指す。典型的には、ソフトコンタクトレンズは、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び/又は他の親水性モノマーのようなモノマーに由来する或る割合の反復単位を有するポリマー(典型的には、架橋剤で架橋されている)から処方される。しかしながら、より最近のソフトレンズ特に連続装用用のものは、高Dkシリコーン含有物質から作られつつある。
【0017】
本発明の組成物は、1種又はそれ以上のサッカライドを含む。本発明の組成物における使用のための適当なサッカライドは、モノサッカライド、ジサッカライド、オリゴサッカライド又はポリサッカライドであり得る。適当なサッカライドは、D形又はL形のどちらかであり得る。かかる適当なサッカライドの例は、D−グルコース、メチル−α−D−グルコ−ピラノシド、マンニトール、メチル−α−D−グルコ−ピラノース、ツラノース、ガラクトース、トレハロース及びスクラロースを包含するが、しかしそれらに限定されない。1種又はそれ以上のサッカライドは、組成物の総質量を基準としておおよそ0.001からおおよそ10.0質量パーセントしかし一層好ましくは約0.005から約0.5質量パーセントの総量にて本組成物中に存在する。
【0018】
本発明の組成物はまた、1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドを含む。本発明のサッカライド/ポリサッカライド含有組成物は、自己保存性溶液の製造において有用である。自己保存性溶液は、微生物汚染から医療用具、製薬、局所施用溶液、等を防護するのに有用である。たとえば、本サッカライド/ポリサッカライド含有組成物は、コンタクトレンズを洗浄する、浸漬する、すすぐ及び/又は濡らすのに用いられるコンタクトレンズケア用溶液を保存するのに有用である。本発明の組成物は、好ましくは、有害な微生物を破壊しそしてかくして溶液の予定貯蔵寿命を通じて微生物汚染から溶液を防護するのに十分な濃度にて溶解状態にある。
【0019】
溶解状態の本発明の組成物は、コンタクトレンズに関しての使用について、生理学的に適合性がありすなわち「眼に安全」である。本明細書において用いられる場合の眼に安全は、本溶液で又は本溶液中で処理されたコンタクトレンズがすすぎなしに眼上に直接的に置かれるのに一般に適しており且つ安全であることを意味する。本溶液は、該溶液で濡らされたコンタクトレンズを介しての眼との毎日の接触について安全で且つ快適である。眼に安全な溶液は眼に対して適合性がある張度及びpHを有し、そしてISO(国際標準規格機構)標準規格及び米国FDA(食品医薬品局)規制に従って非細胞毒性である物質及びそれらの量を含む。本発明の溶液は、放出前のその製品中の微生物汚染物の不存在がかかる製品に必要な程度まで統計的に示されるべきであることにおいて無菌である。
【0020】
上記に記されたように、本発明の組成物は、1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドを含む。1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドは、組成物の総質量を基準としておおよそ0.001からおおよそ1.0質量パーセントしかし一層好ましくは約0.005から約0.1質量パーセントの総量にて本組成物中に存在する。本発明の組成物における使用のための適当なカチオン性ポリサッカライドは、たとえば、たとえば75〜125cPの2パーセント溶液粘度及び1.5から2.2パーセント窒素を有するPolymer JR 125TM(デラウェア州ウィルミントンのDow Chemical Company)、300から500cPの2パーセント溶液粘度及び1.5から2.2パーセント窒素を有するPolymer JR 400TM(Dow Chemical Company)、1,000から2,500cPの1パーセント溶液粘度及び1.5から2.2パーセント窒素を有するPolymer JR 30MTM(Dow Chemical Company)、300から500cPの2パーセント溶液粘度及び0.8から1.1パーセント窒素を有するPolymer LR 400TM(Dow Chemical Company)、1,250から2,250cPの1パーセント溶液粘度及び0.8から1.1パーセント窒素を有するPolymer LR 30MTM(Dow Chemical Company)並びに300から500cPの2パーセント溶液粘度及び0.8から1.1パーセント窒素を有するPolymer LKTM(Dow Chemical Company)のような、ポリクォターニウム−10の異型を包含するが、しかしそれらに限定されない。本発明における使用のための好ましいカチオン性ポリサッカライドは、Polymer JR 125TM又はPolymer JR 400TMである。
【0021】
上記に記載されたカチオン性ポリサッカライドは、天然の再生可能資源に由来したセルロース主鎖を含む。セルロースは、β−1,4−結合により連結されたアンヒドログルコース糖から成る直鎖ポリマーである。各アンヒドログルコース糖モノマーは、3個の利用可能なヒドロキシル(−OH)基を有する。元の状態のセルロースは、規則的な水素結合された結晶質構造を有する(容易には水に可溶でない)。セルロース主鎖上におけるヒドロキシルエチル基の付加はそのポリマーを水溶性に変え、しかして生成物を用いるのが容易になる。ヒドロキシエチルセルロースの四級化は、微生物のアニオン性表面基が引きつけられる多数のカチオン性部位の発生をもたらすことになる。本発明の組成物中に組み込まれたカチオン性ポリサッカライドの多数のカチオン性部位の故に、保存のために眼用溶液に普通は用いられる抗微生物剤は必要でない。従って、本発明の眼用溶液の使用は、より小さい組織刺激、より小さい局所毒性しか引き起こさず、より大きい使用者の快適さを与え、またより広域の殺生物スペクトルを与える。
【0022】
1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドに加えて、本発明の組成物は、随意に、組成物の総質量を基準としておおよそ0.02からおおよそ3.0質量パーセントの総量にて存在するところの、アミノアルコール緩衝剤(たとえばエタノールアミン緩衝剤(しかしそれらに限定されない)のような)のような1種又はそれ以上の緩衝剤を含み得る。適当なアミノアルコール緩衝剤は、たとえば、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(AMPD)、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパンジオール(DMAMP)、2−アミノ−2−エチルプロパノール(AEP)、2−アミノ−1−ブタノール(AB)及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、しかし好ましくはMEA、DEA又はTEAを包含するが、しかしそれらに限定されない。
【0023】
本発明の組成物はまた、随意に、洗浄効力及び快適さの点で知られた利点を有する1種又はそれ以上の界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、組成物の総質量を基準としておおよそ0.001からおおよそ5.0質量パーセントしかし一層好ましくは約0.1から約0.5質量パーセントの総量にて本組成物中に存在し得る。適当な界面活性剤は、たとえば、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)すなわち(PEO−PPO−PEO)若しくはポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)すなわち(PPO−PEO−PPO)又はそれらの組合わせに基づいたポリエーテルを包含するが、しかしそれらに限定されない。PEO−PPO−PEO及びPPO−PEO−PPOは商品名PluronicsTM、R-PluronicsTM、TetronicsTM及びR-TetronicsTM(ミシガン州ワイアンドットのBASF Wyandotte Corp.)下で商業的に入手でき、また更に米国特許第4,820,352号(参照することによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる)に記載されている。本組成物における使用のための適当な界面活性剤はレンズケア用溶液に可溶であるべきであり、濁るようになるべきでなく、また眼組織に対して非刺激性であるべきである。
【0024】
随意に、1種又はそれ以上の水溶性増粘剤を本組成物中に含めることが望ましくあり得る。増粘剤の刺激軽減効果の故に、それらは眼への衝撃を和らげるところのレンズ表面上の膜により、レンズ装用者の快適さを強化する傾向を有する。適当な増粘剤は、たとえば、ヒドロキシエチル又はヒドロキシプロピルセルロースのようなセルロースポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポビドン、ポリビニルアルコール、等を包含するが、しかしそれらに限定されない。増粘剤は、約0.01から約4.0質量パーセントの範囲の量又はそれ以下にて用いられ得る。
【0025】
溶解状態にある場合、本発明の組成物は、その溶液の最終pHを調整するために、アミノアルコール緩衝剤(もしあるとするなら)に加えて1種若しくはそれ以上の緩衝剤又は緩衝系を含む。適当な緩衝剤は、たとえば、リン酸塩緩衝剤、ホウ酸塩緩衝剤、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)緩衝剤、ビス(2−ヒドロキシエチル)−イミノ−トリス(ヒドロキシメチル)メタン(ビス−トリス)緩衝剤、重炭酸ナトリウム及びそれらの組合わせを包含するが、しかしそれらに限定されない。適当な緩衝系は、たとえば、少なくとも1種のリン酸塩緩衝剤と少なくとも1種のホウ酸塩緩衝剤を含み得、しかも該緩衝系はpHを1単位変化させるために、0.01から0.5mM好ましくは0.03から0.45mMの0.01NのHCl及び0.01から0.3mM好ましくは0.025から0.25mMの0.01NのNaOHの緩衝容量を有する。緩衝容量は、緩衝剤のみの溶液により測定される。
【0026】
本発明のレンズケア用溶液のpHは、好ましくは5.0から8.0一層好ましくは約6.0から8.0最も好ましくは約6.5から7.8の範囲内に維持される。
【0027】
本発明の組成物はまた、随意に、正常な涙液の浸透圧(0.9パーセント塩化ナトリウム溶液又は2.5パーセントグリセリン溶液に等価である)に近づけるために、1種又はそれ以上の等張化剤を含み得る。適当な等張化剤の例は、ナトリウム及びカリウムの塩化物、デキストロース、マンノース、グリセリン、カルシウム及びマグネシウムの塩化物を包含するが、しかしそれらに限定されない。これらの作用剤は、典型的には、個々に約0.01から2.5パーセント容量比質量(容量当たりの質量)そして好ましくは約0.2から約1.5パーセント容量比質量の範囲の量にて用いられる。等張化剤は、好ましくは200から450mOsm/kgそして一層好ましくは約220から約350mOsm/kgの間そして最も好ましくは約220から約320mOsm/kgの間の最終浸透価をもたらす量にて用いられる。
【0028】
本発明の組成物はまた、金属イオンと結合する1種又はそれ以上の金属イオン封鎖剤を含み得、しかして眼用溶液の場合において、さもないと金属イオンはタンパク質析出物と反応しそしてコンタクトレンズ上に集まり得る。適当な金属イオン封鎖剤は、たとえば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩を包含するが、しかしそれらに限定されない。金属イオン封鎖剤は、好ましくは、約0.01から約0.2質量パーセントの範囲の量にて用いられる。驚くべきことに、本発明の処方物において、処方物中のEDTA及び/又はその塩の増加されたレベル又は量は処方物の保存効力を増加しない、ということが認められた。
【実施例】
【0029】
本発明の組成物は、以下の例にて更に一層詳細に記載される。
例1 − サッカライド間の強度の比較
様々なサッカライド及びカチオン性ポリサッカライドの防護効力を、1種の細菌すなわち黄色ブドウ球菌(ATCC6538)について及び1種の真菌すなわちアスペルギルス・ニガー(ATCC16404)について試験した。細菌についての合格基準は、ml当たり回復された生存可能細菌数が14日において3.0logより小さくない低減があると規定した。日数14における再接種後、細菌の濃度は、日数28において少なくとも3.0log低減されるものとする。真菌についての合格基準は、ml当たり回復された生存可能酵母及び糸状菌数が14日以内において±0.5logの実験誤差内で初期濃度又はそれ以下のままにあると規定した。日数28後、糸状菌及び酵母の濃度は、±0.5logの実験誤差内で再接種後の濃度又はそれ以下のままにあるものとする。サッカライド/カチオン性ポリサッカライド防護効力試験の結果は、下記において表1に示されている。
【0030】
【表1】

【0031】
例2 − カチオン性ポリサッカライド含有試験溶液の作製
下記において表2に示された処方に従って、試験のためのカチオン性ポリサッカライド含有試料溶液を作製した。
【0032】
【表2】

【0033】
例3 − 5種のFDA/ISO接種微生物に関しての試験溶液1のISO/FDA微生物防護効力試験
5種のFDA/ISO接種微生物すなわち3種の細菌及び2種の真菌を用いて、ISO/FDA微生物防護効力について、上記の例2に従って作製された試験溶液を試験した。細菌について規定された合格基準は、ml当たり回復された生存可能細菌数が14日において3.0logより小さくない低減があることを要求する。日数14における再接種後、細菌の濃度は、日数28までに少なくとも3.0log低減されるものとする。酵母及び糸状菌について規定された合格基準は、ml当たり回復された生存可能酵母及び糸状菌数が14日以内において±0.5logの実験誤差内で初期濃度又はそれ以下のままにあることを要求する。日数28後、糸状菌及び酵母の濃度は、±0.5logの実験誤差内で再接種後の濃度又はそれ以下のままにあるものとする。対象試験溶液のISO/FDA微生物防護効力試験の結果は、下記において表3に示されている。表3において一覧表にされた結果により示されるように、試験溶液1は防護効力試験に合格した。
【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

【0036】
例4 − モノサッカライド含有試験溶液の作製
下記において表4に示された処方に従って、試験のためのモノサッカライド含有試料溶液を作製した。
【0037】
【表5】

【0038】
例5 − 5種のFDA/ISO接種微生物に関しての試験溶液2のISO/FDA微生物防護効力試験
5種のFDA/ISO接種微生物すなわち3種の細菌及び2種の真菌を用いて、ISO/FDA微生物防護効力について、上記の例4に従って作製された試験溶液を試験した。細菌について規定された合格基準は、ml当たり回復された生存可能細菌数が14日において3.0logより小さくない低減があることを要求する。日数14における再接種後、細菌の濃度は、日数28までに少なくとも3.0log低減されるものとする。酵母及び糸状菌について規定された合格基準は、ml当たり回復された生存可能酵母及び糸状菌数が14日以内において±0.5logの実験誤差内で初期濃度又はそれ以下のままにあることを要求する。日数28後、糸状菌及び酵母の濃度は、±0.5logの実験誤差内で再接種後の濃度又はそれ以下のままにあるものとする。対象試験溶液のISO/FDA微生物防護効力試験の結果は、下記において表5に示されている。表5において一覧表にされた結果により示されるように、試験溶液2は防護効力試験に不合格であった。
【0039】
【表6】

【0040】
【表7】

【0041】
例6 − モノサッカライドとカチオン性ポリサッカライドを含有する試験溶液の作製
下記において表6に示された処方に従って、試験のためのモノサッカライドとカチオン性ポリサッカライドを含有する試料溶液を作製した。
【0042】
【表8】

【0043】
例7 − 5種のFDA/ISO接種微生物に関しての試験溶液3のISO/FDA微生物防護効力試験
5種のFDA/ISO接種微生物すなわち3種の細菌及び2種の真菌を用いて、ISO/FDA微生物防護効力について、上記の例6に従って作製された試験溶液を試験した。細菌について規定された合格基準は、ml当たり回復された生存可能細菌数が14日において3.0logより小さくない低減があることを要求する。日数14における再接種後、細菌の濃度は、日数28までに少なくとも3.0log低減されるものとする。酵母及び糸状菌について規定された合格基準は、ml当たり回復された生存可能酵母及び糸状菌数が14日以内において±0.5logの実験誤差内で初期濃度又はそれ以下のままにあることを要求する。日数28後、糸状菌及び酵母の濃度は、±0.5logの実験誤差内で再接種後の濃度又はそれ以下のままにあるものとする。対象試験溶液のISO/FDA微生物防護効力試験の結果は、下記において表7に示されている。表7において一覧表にされた結果により示されるように、試験溶液3は防護効力試験に合格した。
【0044】
【表9】

【0045】
【表10】

【0046】
例8 − モノサッカライドとカチオン性ポリサッカライドを含有する試験溶液の作製
下記において表8に示された処方に従って、試験のためのモノサッカライドと低減量のカチオン性ポリサッカライドを含有する試料溶液を作製した。
【0047】
【表11】

【0048】
例9 − 5種のFDA/ISO接種微生物に関しての試験溶液4のISO/FDA微生物防護効力試験
5種のFDA/ISO接種微生物すなわち3種の細菌及び2種の真菌を用いて、ISO/FDA微生物防護効力について、上記の例8に従って作製された試験溶液を試験した。細菌について規定された合格基準は、ml当たり回復された生存可能細菌数が14日において3.0logより小さくない低減があることを要求する。日数14における再接種後、細菌の濃度は、日数28までに少なくとも3.0log低減されるものとする。酵母及び糸状菌について規定された合格基準は、ml当たり回復された生存可能酵母及び糸状菌数が14日以内において±0.5logの実験誤差内で初期濃度又はそれ以下のままにあることを要求する。日数28後、糸状菌及び酵母の濃度は、±0.5logの実験誤差内で再接種後の濃度又はそれ以下のままにあるものとする。対象試験溶液のISO/FDA微生物防護効力試験の結果は、下記において表9に示されている。表9において一覧表にされた結果により示されるように、試験溶液4は防護効力試験に合格し、しかも防護効力に対するカチオン性ポリサッカライド濃度の影響はないことを示した。
【0049】
【表12】

【0050】
【表13】

【0051】
例10 − モノサッカライド含有試験溶液の作製
下記において表10に示された処方に従って、試験のためのモノサッカライド含有試料溶液を作製した。
【0052】
【表14】

【0053】
例11 − 5種のFDA/ISO接種微生物に関しての試験溶液5のISO/FDA微生物防護効力試験
5種のFDA/ISO接種微生物すなわち3種の細菌及び2種の真菌を用いて、ISO/FDA微生物防護効力について、上記の例10に従って作製された試験溶液を試験した。細菌について規定された合格基準は、ml当たり回復された生存可能細菌数が14日において3.0logより小さくない低減があることを要求する。日数14における再接種後、細菌の濃度は、日数28までに少なくとも3.0log低減されるものとする。酵母及び糸状菌について規定された合格基準は、ml当たり回復された生存可能酵母及び糸状菌数が14日以内において±0.5logの実験誤差内で初期濃度又はそれ以下のままにあることを要求する。日数28後、糸状菌及び酵母の濃度は、±0.5logの実験誤差内で再接種後の濃度又はそれ以下のままにあるものとする。対象試験溶液のISO/FDA微生物防護効力試験の結果は、下記において表11に示されている。表11において一覧表にされた結果により示されるように、試験溶液5は防護効力試験に不合格であった。
【0054】
【表15】

【0055】
【表16】

【0056】
例12 − モノサッカライドとカチオン性ポリサッカライドを含有する試験溶液の作製
下記において表12に示された処方に従って、試験のためのモノサッカライドとカチオン性ポリサッカライドを含有する試料溶液を作製した。
【0057】
【表17】

【0058】
例13 − 5種のFDA/ISO接種微生物に関しての試験溶液6のISO/FDA微生物防護効力試験
5種のFDA/ISO接種微生物すなわち3種の細菌及び2種の真菌を用いて、ISO/FDA微生物防護効力について、上記の例12に従って作製された試験溶液を試験した。細菌について規定された合格基準は、ml当たり回復された生存可能細菌数が14日において3.0logより小さくない低減があることを要求する。日数14における再接種後、細菌の濃度は、日数28までに少なくとも3.0log低減されるものとする。酵母及び糸状菌について規定された合格基準は、ml当たり回復された生存可能酵母及び糸状菌数が14日以内において±0.5logの実験誤差内で初期濃度又はそれ以下のままにあることを要求する。日数28後、糸状菌及び酵母の濃度は、±0.5logの実験誤差内で再接種後の濃度又はそれ以下のままにあるものとする。対象試験溶液のISO/FDA微生物防護効力試験の結果は、下記において表13に示されている。表13において一覧表にされた結果により示されるように、試験溶液6は防護効力試験に合格した。
【0059】
【表18】

【0060】
【表19】

【0061】
本発明のサッカライドとカチオン性ポリサッカライドを含有する組成物は、コンタクトレンズを保存するためのコンタクトレンズケア用溶液において有用である。1種又はそれ以上のサッカライドと1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドの保存量は、使用処方物中の微生物母集団を少なくとも部分的に低減する量である。好ましくは、保存量は、代表細菌の微生物負荷量を4時間で2対数桁そして一層好ましくは1時間で1対数桁低減する量である。最も好ましくは、保存量は、投薬計画(FDA化学的消毒効力試験−1985年7月コンタクトレンズ用溶液ドラフトガイドライン)に従って推奨浸漬時間用いられる場合、コンタクトレンズ上の微生物負荷量を除去する量である。予期せぬことに、有効な溶液保存を達成するために、1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドとの組合わせにての1種又はそれ以上のサッカライドの存在下では、抗微生物剤は要求されない。
【0062】
上記に述べられたように、コンタクトレンズは、該レンズを有効量の本発明の1種又はそれ以上の組成物を含有する溶液と接触させることにより保存される。これは単にレンズを本溶液中に浸漬することにより成し遂げられ得るけれども、該溶液の数滴を最初にレンズの各側上に置きそしてこれらのレンズをある期間たとえばおおよそ20秒擦る場合、より強い洗浄が達成され得る。その場合に、レンズは引き続いて数ミリリットルの本溶液内に浸され得る。好ましくは、レンズは溶液中に少なくとも4時間浸漬するようにされる。次いで、レンズは溶液から取り出され、同じ又は異なる溶液たとえば本発明に従って作られたサッカライド及びカチオン性ポリサッカライドの保存等張食塩水ですすがれ、そして次いで眼上に戻される。
【0063】
本発明の1種又はそれ以上の組成物を含有する溶液は、眼科学の分野において慣用であるような使用のために、特定のコンタクトレンズケア用製品に処方され得る。かかる製品は、濡らし溶液、浸漬溶液、洗浄及び状態調整溶液、並びに眼内の洗浄及び状態調整溶液を包含するが、しかしそれらに限定されない。
【0064】
本発明はその特定の例と共に記載されてきたけれども、これは例示にすぎない。従って、前記の説明に照らして数多くの代替手段、改変及び変型が当業者に明らかであり、そしてそれ故かかる代替手段、改変及び変型のすべてを添付請求項の精神及び範囲内に入るように包含するよう意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液保存に有効な量にて溶解状態で1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドとの組合わせにての1種又はそれ以上のサッカライドを含む組成物。
【請求項2】
保存剤として有効な量にて1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドとの組合わせにての1種又はそれ以上のサッカライドを含む組成物。
【請求項3】
1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドが、ポリクォターニウム−10の異型から成る群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドが、ポリマー(Polymer)JR 125、ポリマー(Polymer)JR 400、ポリマー(Polymer)JR 30M、ポリマー(Polymer)LR 400、ポリマー(Polymer)LR 30 M及びポリマー(Polymer)LKから成る群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の組成物を製造する方法であって、溶液保存に有効な量にて1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドと、1種又はそれ以上のサッカライドとを組み合せることを含む方法。
【請求項6】
1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドが、ポリクォターニウム−10の異型から成る群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドが、ポリマー(Polymer)JR 125、ポリマー(Polymer)JR 400、ポリマー(Polymer)JR 30M、ポリマー(Polymer)LR 400、ポリマー(Polymer)LR 30 M及びポリマー(Polymer)LKから成る群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
1種又はそれ以上の請求項1又は2に記載の組成物を含む溶液。
【請求項9】
溶液が、1種又はそれ以上の緩衝剤又は緩衝系を含む、請求項8に記載の溶液。
【請求項10】
溶液が、1種又はそれ以上の等張化剤を含む、請求項8に記載の溶液。
【請求項11】
溶液が、1種又はそれ以上の界面活性剤を含む、請求項8に記載の溶液。
【請求項12】
溶液が、1種又はそれ以上の増粘剤を含む、請求項8に記載の溶液。
【請求項13】
請求項8に記載の溶液を用いる方法であって、コンタクトレンズの表面を該溶液と、該コンタクトレンズ上の微生物負荷量を除去するのに適した期間接触させることを含む方法。
【請求項14】
請求項8に記載の溶液を用いる方法であって、医療用具の表面を該溶液と、該医療用具上の微生物負荷量を除去するのに適した期間接触させることを含む方法。
【請求項15】
請求項8に記載の溶液を製造する方法であって、有効量の1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドを溶液に添加することを含む方法。
【請求項16】
1種又はそれ以上のサッカライドが、モノサッカライド、ジサッカライド、オリゴサッカライド及びポリサッカライドから成る群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項17】
1種又はそれ以上のサッカライドが、D−グルコース、メチル−α−D−グルコ−ピラノシド、マンニトール、メチル−α−D−グルコ−ピラノース、ツラノース、ガラクトース、トレハロース及びスクラロースから成る群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項18】
1種又はそれ以上のサッカライドが、モノサッカライド、ジサッカライド、オリゴサッカライド及びポリサッカライドから成る群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項19】
1種又はそれ以上のサッカライドが、D−グルコース、メチル−α−D−グルコ−ピラノシド、マンニトール、メチル−α−D−グルコ−ピラノース、ツラノース、ガラクトース、トレハロース及びスクラロースから成る群から選択される、請求項5に記載の方法。

【公表番号】特表2007−512906(P2007−512906A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542654(P2006−542654)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/039898
【国際公開番号】WO2005/053758
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(506076640)ボーシュ アンド ローム インコーポレイティド (99)
【Fターム(参考)】