説明

空のピコルナウイルスキャプシドを生成するための構築物

本発明は、宿主細胞において発現される場合、空のウイルスキャプシドを生成し得る構築物を提供し、上記構築物は、(i)キャプシド前駆タンパク質をコードするヌクレオチド配列;(ii)上記キャプシド前駆タンパク質を切断し得るプロテアーゼをコードするヌクレオチド配列;および(iii)上記プロテアーゼの発現を制御する制御エレメントを含み、その結果、上記構築物が上記宿主細胞において存在する場合、上記制御エレメントは、上記プロテアーゼが上記キャプシド前駆タンパク質を切断するのに十分なレベルで発現させるが、上記宿主細胞において顕著な毒性を誘導するには十分でない。本発明はまた、このような構築物を含むベクターおよび宿主細胞、ならびに空のウイルスキャプシドを生成するためのそれらの使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、宿主細胞において発現される場合、空のウイルスキャプシド、特に、空の口蹄疫ウイルス(FMDV)キャプシドを生成し得る構築物に関する。本発明はまた、このような構築物を含むベクターおよび宿主細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
口蹄疫(FMD)
FMDは、非常に感染性で、経済的に甚大な被害をもたらす、偶蹄類の動物(偶蹄目)の疾患である。この疾患は、家畜化された反芻動物、ブタおよび多数の野生生物種に罹患する。
【0003】
FMDは、世界中に広く分布している。先進領域(例えば、北米および中米、ならびに南極大陸の国々)およびオーストラリアおよびニュージーランドのような国々は、疾患から免れている一方で、FMDは、多くの発展途上国(例えば、サハラ砂漠以南のアフリカ、中東、南アジア、東南アジアおよび南米における国々)においては固有である。通常は疾患から免れている世界のいくつかの領域(例えば、FMDが1989年に根絶され、ワクチン接種が1991年以来中止された欧州)もまた存在する。しかし、PanAsian O株に起因する疾患の特別な襲来(occasional incursion)(例えば、2001年のUK/EIRE/フランス/オランダの流行(非特許文献1)および2007年の血清型O1 BFS/1967のUKでの大発生もあった。
【0004】
FMDの原因因子は、口蹄疫ウイルス(FMDV)(ピコルナウイルス科のプラス鎖の一本鎖RNAウイルス)である。FMDVは、7個の抗原性が異なる血清型、すなわち、A、O、C、Asia 1、ならびにSouth African Territories(SAT) 1、2および3として存在し、各血清型内に多くのサブタイプがある。
【0005】
上記一本鎖RNAの翻訳は、ウイルスがコードするプロテアーゼによってその後プロセシングされて、ウイルスアセンブリおよび複製に必要とされる構造タンパク質および非構造タンパク質を生成するポリプロテインを生じる。リーダー(L)プロテアーゼは、シスもしくはトランスで、そのC末端において上記P1−2Aキャプシド前駆体からそれ自体を切断する。上記2Aプロテアーゼは、そのC末端においてそれ自体を切断して、P1−2AをP2から放出する。上記P1−2Aのプロセシングは、上記3Cプロテアーゼによって実施されて、上記キャプシドタンパク質1AB(VP0としても公知)、1C(VP3)および1D(VP1)を生成する。ビリオンにおいて、1ABの切断は、1A(VP4)および1B(VP2)を生成するために起こる。
【0006】
(FMDVワクチン)
FMDに対する従来のワクチンは、化学的に不活性化された(通常は、アジリジン(例えば、バイナリーエチレンイミン(binary ethyleneimine)(BEI)の使用によって)完全ウイルスビリオンからなる。
【0007】
不活性化された完全ウイルスワクチンは、FMDを制御しかつ根絶するための作戦において重要な役割を果たす。しかし、ウイルス組織培養物から生成されたワクチンは、ワクチン製造の間にウイルス放出のリスクと関連する。ワクチン関連のFMD大発生をもたらす可能性を有する、上記ウイルスの不適切な不活性化のリスクもまた存在する。
【0008】
これらリスクを低下させるために、FMDVの空のキャプシド様粒子を使用する可能性が、考えられてきた。このような粒子は、上記FMDVの構造タンパク質を含むが、非複製的かつ非感染性である。なぜなら、上記粒子は、RNAゲノムを有さないからである。上記空のキャプシドの外部構造は、野生型ウイルスと同じであるはずであるので、空のキャプシドは、同様に抗原性であり、免疫原性であるはずである。
【0009】
空のFMDキャプシド粒子を生成するためのいくつかの試みが行われてきたが、上記生成物の収率および安定性と関連した繰り返し発生する問題があった。
【0010】
ワクチンウイルス発現系は、P1−2A−3Cカセットを発現するために使用されてきた(非特許文献2)。上記カセットの構成的発現は、不成功に終わったが、vv/FMDV組換え体は、上記カセットがバクテリオファージT7プロモーターの制御下で配置されたときに単離され得ることが見いだされた。しかし、このようなシステムは、空のキャプシドの長期間の発現のために使用できなかった。なぜなら、その後、上記P1−2A−3Cカセットの毒性が、勝っているからである。一定のT7 Pol発現が、上記P1−2A−3Cの生成を駆動するために必要とされるという論点もまたある。組織培養において小規模でこれを達成することは可能であるが、これを製造スケールに外挿することは不可能である。さらに、ワクシニア系において生成される生成物は、医療適用もしくは獣医学的適用には市販されていない。
【0011】
非特許文献3は、カイコ−バキュロウイルス発現系におけるFMDVウイルスキャプシドタンパク質の発現を報告する。P1−2Aおよび3Cのインタクトなコード領域の組換えウイルス発現を、カイコに接種するために使用し、その後、血リンパを、死につつあるカイコから集めた。これら「発現された抗原」の調製は、ウシにおいて抗FMDV抗体応答を引き起こすことを示した。しかし、上記「発現された抗原」の性質は、完全に不明であり、上記著者らは、空のキャプシドとは対照的に、それが「サブユニットワクチン」であると仮定するようである。
【0012】
非特許文献4は、FMDVの上記P12Aタンパク質および3Cタンパク質の遺伝子を個々のプロモーターから同時に発現する組換えバキュロウイルス系を記載する。上記キャプシドタンパク質が、3Cプロテアーゼによってある程度プロセシングされ、空のキャプシド粒子が、免疫電子顕微鏡によって観察され得ることを、ウェスタンブロッティングによって示した。空のキャプシドの粗製抽出物での免疫は、免疫応答を生じなかったが、FMDV特異的抗体および中和抗体のレベルは、従来の不活性化ワクチンより低かった。これは、空のキャプシド粒子のレベルを低下させることに起因すると推定される。さらなる研究から、タンパク質発現の量および昆虫細胞における空のキャプシドアセンブリを改善するために必要とされることが結論づけられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Knowlesら、Veterinary Record.(2001)148.258〜259
【非特許文献2】Abrahamsら、J.Gen Virol.(1995)76:3089〜3098
【非特許文献3】Liら、PLoS ONE(2008)28:3(5)e2273
【非特許文献4】Caoら、Veterinary Microbiology(2009)137:10〜17
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、免疫原性の安定な生成物を合理的な収量で生成する、空のウイルスキャプシドを生成するための改善された方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の局面の要旨)
本発明者らは、驚くべきことに、FMDVの空のキャプシド生成と歴史的に関連してきた低収量の理由は、上記3Cプロテアーゼのレベルが上記宿主細胞において高すぎる(これは毒性を引き起こす)ことであるということを見いだした。空のキャプシド粒子を高収量で生成するために、上記キャプシドタンパク質前駆体を切断するには十分発現され/活性であるが、上記宿主細胞において毒性を誘導するレベルでは発現されず/活性でないように、上記3Cプロテアーゼの発現および/もしくは活性のバランスをとることは必要である。
【0016】
従って、第1の局面において、本発明は、宿主細胞において発現される場合に、空のウイルスキャプシドを生成し得る構築物を提供し、上記構築物は、
(i)キャプシド前駆タンパク質をコードするヌクレオチド配列;
(ii)上記キャプシド前駆タンパク質を切断し得るプロテアーゼをコードするヌクレオチド配列;および
(iii)上記プロテアーゼの発現を制御する制御エレメント
を含み、
その結果、上記構築物が上記宿主細胞に存在する場合、上記制御エレメントは、上記プロテアーゼが、上記キャプシド前駆タンパク質を切断するのに十分であるが、上記宿主細胞において顕著な毒性を誘導するには十分でないレベルで発現させる。
【0017】
上記制御エレメントは、レトロウイルスに由来し得る。特に、上記制御エレメントは、レトロウイルスフレームシフト部位(例えば、HIV−1 フレームシフト部位)であり得る。上記HIV−1 フレームシフト部位は、翻訳されるmRNAのうちの約5%においてフレームシフトを引き起こす。
【0018】
上記フレームシフト部位は、上記キャプシド前駆タンパク質をコードするヌクレオチド配列と、上記プロテアーゼをコードするヌクレオチド配列との間に位置し得、その結果、上記構築物が翻訳されるとき、
(1)リボソームがフレームシフトを受けない場合、上記構築物は、(上記キャプシド前駆タンパク質を含むが上記プロテアーゼを含まない)短縮型生成物を生成する;しかし
(2)リボソームがフレームシフトを受ける場合、上記キャプシド前駆タンパク質および上記プロテアーゼの両方が翻訳される。
【0019】
本発明の第1の局面の構築物において、上記プロテアーゼの活性はまた、低下させられ得る。例えば、上記プロテアーゼは、そのキャプシド前駆タンパク質切断活性を低下させる少なくとも1個の変異を含み得る。
【0020】
上記プロテアーゼ(例えば、変異プロテアーゼ)は、野生型プロテアーゼより約3分の1のキャプシド前駆タンパク質切断活性を有し得る。
【0021】
発明の第1の局面に従う構築物を含む宿主細胞によって生成される空のキャプシドは、ピコルナウイルスキャプシド(例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)キャプシド)であり得る。
【0022】
空のFMDVキャプシドを生成するために、上記前駆タンパク質は、P1であり得、上記プロテアーゼは、3Cであり得る。上記3Cプロテアーゼの活性を低下させるために、上記3Cプロテアーゼは、例えば、Cys142において変異を含み得る。
【0023】
第2の局面において、本発明は、本発明の第1の局面に従う構築物を含むベクターを提供する。上記ベクターは、例えば、バキュロウイルス移入ベクター(baculovirus transfer vector);DNAベクター、プラスミドもしくはウイルスベクターであり得る。
【0024】
第3の局面において、本発明は、本発明の第1の局面に従う構築物を含む宿主細胞を提供する。第1の実施形態において、上記宿主細胞は、本発明の第2の局面に従うベクターを生成し得る。第2の実施形態において、上記宿主細胞は、空のウイルスキャプシドを生成し得る。
【0025】
上記宿主細胞は、例えば、昆虫細胞もしくは哺乳動物細胞であり得る。
【0026】
本発明のさらなる局面は、
(i)本発明の第1の局面に従う構築物を宿主細胞において発現することによって、空のウイルスキャプシドを生成し、上記宿主細胞によって生成された空のウイルスキャプシドを採取するための方法;
(ii)このような方法によって空のウイルスキャプシドを生成し、ワクチンに上記空のウイルスキャプシドを組み込むことによって、ワクチンを生成するための方法;
(iii)空のキャプシドがインビボで生成されるように、本発明の第1の局面に従う構築物を上記被験体において発現することによる、被験体における疾患を処置および/もしくは予防するための方法;
(iv)疾患の予防および/もしくは処置において使用するための、本発明の第1の局面に従う構築物もしくは本発明の第2の局面に従うベクター;
(v)疾患の予防および/もしくは処置のための医薬の製造における、本発明の第1の局面に従う構築物、もしくは本発明の第2の局面に従うベクターの使用;
(vi)ピコルナウイルスタンパク質の発現を制御するためのレトロウイルス制御エレメントの使用;ならびに
(vii)レトロウイルス制御エレメントの制御下で、ピコルナウイルスタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む構築物
に関する。
【0027】
「空のキャプシド」ベースのワクチンは、伝統的な不活性化完全病原体ワクチン(例えば、FMDに関する)より有利である。なぜなら、それは、製造のために高い安全性の封じ込め施設を必要とせず、従って、ウイルスが「漏れ出る」いかなるリスクをも軽減するからである。上記ワクチンはまた、非感染性であり、取り扱いやすく、(本発明に鑑みれば)調製するのに容易かつ安価である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、発現ベクターpOPINE5949−FSである。上記ベクターは、市販のベクターpTriEx1.1(EMD Sciences)の誘導体であるが、シームレスクローニングのために改善された。上記ベクターの顕著な特徴および診断的制限部位の部位は、示されている。FMDVの空のキャプシドの成功裏の発現に必要な重要な工程は、上記特有のNotI制限部位とBsu36I制限部位との間の上記3Cコード領域の前に上記HIV−1 フレームシフト部位をコードする配列を導入することである。結果として、上記p10もしくはCMVプロモーターに由来するすべてのmRNAは、上記P1前駆タンパク質を翻訳するが、上記3Cプロテアーゼを一部翻訳するのみである。組換えバキュロウイルスを形成するように使用される場合、ORF603とORF1629へと時計回りの間の配列は、上記ウイルスゲノムと組換わる。次いで、上記P10プロモーターは、感染した細胞において組換え生成物を生成する上記バキュロウイルス感染サイクルの一部として活性化される。
【図2】図2は、P1−2A−3B3−3C(右側トラック)もしくはP1−2A−3B3−3C163S(左側トラック)をコードする組換えバキュロウイルスの間の発現レベルの比較を示す。3C活性の不活性化は、P1の豊富な合成を奪回する。
【図3】図3は、上記P1−3C接合点においてフレームシフトを引き起こすために使用される配列を示す。その重要な特徴は、ずれが起こり、続いて、上記リボソームを小休止させるので、上記ずれを促進する偽ノットが起こる一連のウラシル(下線を付した)である。
【図4】図4は、上記FMDV配列への上記HIV−1フレームシフト配列の導入を示す。上記P1リーディングフレームは、2つのうちの上側であり、挿入は、赤で印がつけられた終止コドンにおいて上記翻訳された生成物の短縮を生じる。その挿入された配列(オレンジ色のボックス)の始まりにおけるA−1フレームシフトは、3C翻訳(下側のフレーム)を含むように上記リーディングフレームの修正を生じる。
【図5】図5は、残基142において変異した3Cプロテアーゼのインビトロ活性測定を示す。142Tおよび142Sはともに、その親配列と比較した場合に低下した活性を有することに注意する。
【図6】図6は、ピコルナウイルス系統発生を示す。密接に関連したファミリーは、共通のコードストラテジーおよび複製サイクルを共有する;十分に研究されたウイルス(例えば、ポリオウイルス(PV)および口蹄疫ウイルス(FMDV))に関して観察されてきたものは、他のメンバーに対しても適用されてきた。完全な系統発生および考察は、以下において見いだされ得る:Hughes AL.(2004)Phylogeny of the Picornaviridae and differential evolutionary divergence of picornavirus proteins.Infect Genet Evol.4:143−52。
【図7】図7は、図1における発現カセットの直線上のマップおよびその考えられる翻訳生成物を示す。上記P1生成物およびP1−2A−3B−FS−3C生成物の翻訳の示唆される相対レベルは、文献から理解され、経験的に決定されなかった。
【図8】図8は、上記3Cプロテアーゼの毒性を示す。昆虫細胞に、3Cに連結された上記FMDV P1を発現する組換えバキュロウイルスを感染させた。Aにおいて、トラック1は、残基163の活性部位Cysにおける変異体であり、P1へ自発的に分解する上記P1−3C融合タンパク質の豊富な合成は明らかである。トラック2は、野生型プロテアーゼであり;上記成熟キャプシドタンパク質VP1のP1の合成がほとんどないことは明らかである。Bにおいて、P1を発現する組換えウイルス(トラック1)および弱毒化された3Cに連結されたP1を発現する組換えウイルス(トラック2)が比較される。ここでは、高レベルの合成が維持され、上記P1前駆体は、上記成熟キャプシドタンパク質VP1に化学量論的に変換される。細胞溶解物を、10% SDS−PAGEによって分離し、そのウェスタンブロットを、多価FMDV抗血清でプローブした。ここで大部分の反応性は、VP1に対するものである。VP0およびVP3のモル量も示されるが、この血清によっては明らかにされない。
【図9】図9は、空のFMDVキャプシドのアセンブリを示す。上記3Cプロテアーゼ活性の改変が達成された、組換えバキュロウイルスに感染した昆虫細胞に由来する上記発現生成物のスクロース勾配分析。いくつかのプロセシングされていないP1前駆体(おそらく、集合した)は、上記勾配のそこに存在するのに対して、上記VP1切断生成物は、35〜45% スクロース画分において強くて幅広いピークを形成する。
【0029】
上記勾配における位置は、アセンブリされた粒子が予測され、可溶性抗原ではない。
【図10】図10は、バキュロウイルス発現によって生成される空のFMDV A血清型 キャプシドの視覚化を示す。スクロース勾配からのピーク画分をプールして濃縮し、その後、炭素コーティングしたformvar gridに吸着させ、酢酸ウラニルでネガティブ染色した。直径25nmを有する多くの粒子が見られた(2個の矢印をつけた)。粒子内部の染色は、これらが空であることを示すことに注意する。二十面体構造と一致した特に良好な角度の定義を示す粒子は、赤の矢印をつけている。
【図11】図11は、バキュロウイルス発現によって生成される空のFMDV O血清型のキャプシドの視覚化を示す。
【図12】図12は、合成キャプシドでの免疫に応答したモルモットの特異的抗体の誘導を示すグラフである。その抗体力価を、(A)ウイルス中和試験、および(B)液相ブロッキングELISAを使用して測定した。上記合成A血清型 キャプシドでのモルモットの免疫は、以前の研究において防御的であることが示されたレベルと一致した抗体力価の誘導を生じる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(詳細な説明)
(構築物)
本発明の第1の局面において、本発明は、
(i)キャプシド前駆タンパク質をコードするヌクレオチド配列;
(ii)上記キャプシド前駆タンパク質を切断し得るプロテアーゼをコードするヌクレオチド配列;および
(iii)上記プロテアーゼの発現を制御する制御エレメント
を含む構築物を提供する。
【0031】
用語「ヌクレオチド配列」とは、RNA配列もしくはDNA配列を含む。それは、一本鎖であってもよいし、二本鎖であってもよい。それは、例えば、ゲノム配列であってもよいし、組換え配列であってもよいし、mRNA配列であってもよいし、cDNA配列であってもよい。
【0032】
上記構築物は、ヌクレオチド配列である(i)および(ii)を(おそらく、連続的な様式で)含むヌクレオチド配列であり得る。ヌクレオチド配列(i)とヌクレオチド配列(ii)との間には配列の部分があり得る。上記制御エレメントは、その配列の部分に存在し得、その結果、それは、上記プロテアーゼの発現を制御するが、上記キャプシド前駆タンパク質の発現を制御せず、その発現に影響も与えない。
【0033】
上記構築物は、プラスミド、移入ベクター、もしくは宿主細胞ゲノムの一部として存在し得る(以下を参照のこと)。
【0034】
(制御エレメント)
本発明の第1の局面の構築物は、上記プロテアーゼの発現を制御する制御エレメントを含む。上記制御エレメントは、例えば、上記プロテアーゼの転写および/もしくは翻訳を少なくとも部分的に制御し得る。
【0035】
具体的には、上記制御エレメントは、上記プロテアーゼが上記キャプシド前駆タンパク質を切断するのに十分であるが、上記宿主細胞において顕著な毒性を誘導するには十分でないレベルで発現させる。
【0036】
上記キャプシド前駆タンパク質の切断は、当該分野で公知の技術を使用して分析され得る。例えば、宿主細胞からの組換えタンパク質抽出物は、ゲル電気泳動によって分離され得、その分離されたタンパク質は、ウェスタンブロッティングのためにニトロセルロース膜に転写される。抗ウイルス抗体でのウェスタンブロッティングは、プロテアーゼ媒介性切断の程度(degree and extent)を明らかにするはずである。
【0037】
例えば、FMDVに関しては、上記プロセシングされていないキャプシド前駆タンパク質(P1−P2A)は、81kDaのバンドとして現れ、切断は、VP31(47kDa)、VP3(24kDa)および/もしくはVP1(24kDa)を生成し得る。
【0038】
上記キャプシド前駆タンパク質の切断はまた、空のキャプシドの生成によって推論され得る(以下を参照のこと)。
【0039】
上記プロテアーゼによって誘導される上記宿主細胞における細胞傷害性の程度はまた、当該分野で公知の技術を使用して分析され得る。例えば、トリパンブルー排除は、例えば、0.4% トリパンブルーと細胞とを等量混合し、Countess自動化細胞カウンター(Invitrogen)によって測定される場合に、生存性のレベルを定義することによって使用され得る。
【0040】
上記毒性のレベルは、上記宿主細胞のうちの10%未満、5%未満もしくは2%未満が、上記プロテアーゼによって非生存性にされる場合には、「顕著」であるとはみなされない。上記毒性のレベルは、上記宿主細胞が、上記3Cタンパク質の同時発現の非存在下(上記プロテアーゼによる上記キャプシド前駆タンパク質の切断の効果を無視する)で達成されるレベルの80%、90%もしくは95%で上記キャプシド前駆タンパク質を発現し得る場合、「顕著」であるとみなされない。
【0041】
上記制御エレメントは、上記制御エレメントが存在しない場合に生じる発現のレベルと比較して、上記3Cプロテアーゼの発現を低下させ得る。
【0042】
上記制御エレメントは、mRNAを読む場合のパーセンテージにおいて、少なくとも1個の塩基で上記翻訳中のリボソームにスキップ(もしくは反復)させるフレームシフト部位であり得る。フレームシフトする間に、翻訳中のリボソームは、転写物中の異なる点において前もしくは後ろへと1ヌクレオチドスライドするように誘導され得、次いで、タンパク質合成は、それぞれ、その+1もしくは−1のリーディングフレームにおいて続き得る。
【0043】
プログラムされた−1リボソームフレームシフトシグナルは、十分に特徴付けられており、いくつかの細菌の−1フレームシフト事象もまた、報告された。多くのウイルス感染真核生物細胞が、プログラムされた−1リボソームフレームシフトを利用する。このことは、上記フレームシフトプロセスに関与するシスエレメントが、真核生物において機能することを示す。ウイルス系において、フレームシフトの効率は、上記ウイルスの効率的拡大のために堅調に維持されなければならない合成されたウイルスタンパク質生成物の化学量論の本質的な決定因子である。
【0044】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)−1は、GagおよびGag−Polポリプロテインの必要とされる割合を生成するためにリボソームフレームシフトを使用する。上記フレームシフトシグナルのステム−ループ構造は、上記リボソームを妨げると考えられ、その5’方向においてずれを引き起こし、これは、上記−1フレームシフトを引き起こし、次いで、翻訳は、新たなフレームにおいて続く(図3を参照のこと)。
【0045】
上記制御エレメントは、上記翻訳されるmRNAのうちの1〜20%の間、1〜10%の間、3〜7%の間もしくは約5%でフレームシフトを引き起こし得る。
【0046】
上記フレームシフト配列は、一連の約6個のウラシルを含み得、ここでずれが起こり、続いて、上記リボソームが小休止し、上記ずれを促進するようにする偽ノットを形成し得る配列が生じる。
【0047】
上記制御エレメントは、上記プロテアーゼコードヌクレオチド配列の上流かつ上記キャプシド前駆タンパク質コード配列の下流に存在し得る。
【0048】
(空のキャプシド)
「空のキャプシド」は、ウイルスの上記タンパク質殻を含むが、上記RNAゲノムもしくはDNAゲノムを欠いている実体である。空のキャプシドは、野生型ワクチンと同じ様式において抗原性でありかつ免疫原性であるはずである。なぜなら、上記空のキャプシドは、同じ構造エピトープを保持するが、上記ゲノムの欠如に起因して、感染を生じないはずだからである。
【0049】
上記空のキャプシドの生成は、当該分野で公知の技術(例えば、スクロース密度遠心分離もしくは電子顕微鏡(上記のようにAbrahamsら(1995))を使用して調査もしくは確認され得る。
【0050】
野生型ウイルス上の立体エピトープに対して特異的であるモノクローナル抗体が、上記空のキャプシドの抗原性が保持されるか否かを調査するために、使用され得る。
【0051】
(プロテアーゼ)
上記プロテアーゼは、キャプシドの生成およびアセンブリの工程としてキャプシド前駆タンパク質を切断する任意のウイルスプロテアーゼであり得る。
【0052】
上記で言及されるように、ピコルナウイルス(例えば、FMDV)に関して、上記前駆体P1の、VP0(VP2+VP4)、VP3およびVP1へのタンパク質分解的なプロセシングは、上記ウイルスプロテアーゼ3Cもしくはその前駆体3CDによって起こる。
【0053】
FMDVタイプA株に由来するFMDV野生型3Cプロテアーゼの配列は、以下に示される:
【0054】
【化1】

上記3Cプロテアーゼの結晶構造は、解明されており、変異誘発分析は、活性部位に関する情報を提供するために行われた(Sweeneyら(2007) J.Virol.81:115−124)。
【0055】
本発明の第1の局面の構築物は、そのキャプシド前駆タンパク質切断活性を低下させる少なくとも1個の変異を含み得る。
【0056】
上記変異は、例えば、上記プロテアーゼの活性部位中に存在し得る。残基163、残基46および残基84から構成される活性部位において触媒性の三つ組みが存在すると考えられている。上記変異は、これら残基のうちの1個以上の欠失もしくは置換を含み得る。上記変異は、上記キャプシド前駆タンパク質切断活性を低下させるはずであるが、完全には破壊しないはずである。
【0057】
上記3Cプロテアーゼの結晶構造から、上記ペプチド結合裂け目を折りたたみ、基質認識に寄与するβ−リボンがあることが明らかにされた(Sweeneyら(2007)(上記のとおり))。上記変異は、例えば、上記β−リボン(残基138〜150)中に存在し得る。上記変異は、例えば、残基142における置換であり得る。上記変異は、C142V、C142AもしくはC142T変異であり得る。上記変異は、C142T変異であり得る。
【0058】
上記変異は、3倍〜2倍の間、もしくは3倍〜1.5倍の間まで上記酵素についての特異性定数を低下させ得る。例えば、上記野生型酵素の特異性定数が990kcat/Kmである場合、上記変異酵素についての特異性定数は、495〜330kcat/Kmの間、もしくは660〜330kcat/Kmの間であり得る。
【0059】
変異体である上記プロテアーゼは、上記野生型プロテアーゼと比較して、上記キャプシド前駆タンパク質切断活性のうちの10〜50%、20〜40%もしくは約30%を有し得る。
【0060】
(キャプシド前駆タンパク質)
上記キャプシド前駆タンパク質は、(ピコルナウイルスについては)P1であり得る。これは、上記3Cプロテアーゼによって、VP0、VP3およびVP1へと切断される。
【0061】
あるいは、上記キャプシド前駆タンパク質は、P1−2Aであり得る。上記2A プロテアーゼは、そのC末端においてそれ自体を切断して、P1−2AをP2から放出する。
【0062】
上記キャプシド前駆タンパク質は、空のキャプシド(の一部)を形成するために上記プロテアーゼによって切断可能であり得る。上記前駆タンパク質は、プロテアーゼ切断によって生成され得る空のキャプシドを形成するために必要なタンパク質のタイプのすべてを含み得る。
【0063】
(ベクター)
第2の局面において、本発明は、本発明の第1の局面に従う構築物を含むベクターを提供する。
【0064】
上記ベクターは、例えば、プラスミド、またはバキュロウイルス移入ベクター、DNAベクターもしくはウイルスベクターであり得る。
【0065】
上記ベクターは、上記構築物を宿主細胞に移入し得る。
【0066】
上記ベクターは、上記構築物を植物、昆虫もしくは動物細胞に移入し得る。
【0067】
上記バキュロウイルス発現系は、ウイルスおよびウイルス様粒子の生成に広く使用されている。
【0068】
本発明のベクターは、例えば、上記バキュロウイルスシャトルベクターが増殖される細胞(例えば、E.coli細胞)を形質転換するために使用される1個以上の移入プラスミドであり得る。
【0069】
本発明の第1の局面の構築物は、上記移入ベクターからバキュロウイルスシャトルベクター(バクミド)へのDNAの部位特異的転移によって生成される組換えバキュロウイルスDNAであってもよいし、これを含んでいてもよい。このDNAは、昆虫細胞へとトランスフェクトされて、組換えバキュロウイルスを生成し得る。
【0070】
本発明のベクターは、得られた組換えバキュロウイルスであり得る。
【0071】
他のウイルスベクターとしては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター(レンチウイルスベクターを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
レトロウイルスは、遺伝子治療アプローチにおいて一般に使用される。上記組換えレトロウイルス(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス)は、安定な様式で宿主ゲノムへと組み込む能力を有する。それらは、上記宿主ゲノムへの組み込みを可能にする逆転写酵素を含む。レトロウイルスベクターは、多くのFDAが承認した臨床試験(例えば、SCID−X1臨床試験)において使用されてきた。
【0073】
レトロウイルス(例えば、モロニーレトロウイルス)の使用の主な欠点は、細胞が形質導入のために活発に分裂することが要件であることを含む。結果として、細胞(例えば、ニューロン)は、レトロウイルスによる感染および形質導入に非常に抵抗性である。
【0074】
レンチウイルスは、レトロウイルスのサブクラスである。それらは、近年、分裂していない細胞のゲノムに組み込むそれらの能力に起因して、遺伝子送達ビヒクル(ベクター)として適合させられてきた。RNAの形態にある上記ウイルスゲノムは、上記ウイルスが上記細胞に入って、DNAを生成する場合に逆転写され、次いで、これは、上記ウイルスインテグラーゼ酵素によってランダムな位置においてゲノムへと挿入される。上記ベクター(ここでは、プロウイルスといわれる)は、上記ゲノム中に維持され、細胞が分裂する場合に、上記細胞の子孫へと伝えられる。
【0075】
安全性の理由から、レンチウイルスベクターは、それらの複製に必要とされる遺伝子を決して保持しない。レンチウイルスを生成するために、いくつかのプラスミドが、いわゆるパッケージング細胞株(一般には、HEK 293)へとトランスフェクトされる。1個以上のプラスミド(一般には、パッケージングプラスミドといわれる)は、ビリオンタンパク質(例えば、上記キャプシドおよび上記逆転写酵素)をコードする。別のプラスミドは、上記ベクターによって送達されるべき遺伝物質を含む。このプラスミドは、一本鎖RNAウイルスゲノムを生成するために転写され、ψ(psi)配列の存在によって示される。この配列は、上記ビリオンへと上記ゲノムをパッケージするために使用される。
【0076】
レンチウイルスとは対照的に、アデノウイルスDNAは、上記ゲノムへと組み込まれず、細胞分裂の間に複製されない。それらの主な適用は、遺伝子治療およびワクチン接種にある。人は、一般に、アデノウイルス(これは、呼吸器感染胃腸感染および眼の感染を引き起こす)と接触した状態にあるので、上記アデノウイルスは、潜在的には危険な結果を伴う急激な急速な免疫応答を誘発する。この問題を克服するために、科学者らは、ヒトが免疫を有さないアデノウイルスを現在調査している最中である。
【0077】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ヒトおよびいくつかの他の霊長類の種に感染する小さなウイルスである。AAVは、疾患を引き起こすとは現在のところ知られておらず、それゆえ、上記ウイルスは、非常に軽度の免疫応答を引き起こす。AAVは、分裂している細胞にも分裂していない細胞にも感染し得、そのゲノムを上記宿主細胞のゲノムへと組み込み得る。これら特徴は、AAVを、遺伝子治療用のウイルスベクターを作り出すための非常に魅力的な候補にしている。
【0078】
(宿主細胞)
本発明はまた、本発明の第1の局面の構築物を含む宿主細胞を提供する。
【0079】
上記宿主細胞は、本発明の第2の局面に従うベクター(例えば、ウイルスベクター)を生成し得る能力がある。
【0080】
上記宿主細胞は、ウイルスベクターを生成し得る、パッケージング細胞もしくはプロデューサー細胞であり得る。
【0081】
上記宿主細胞は、本発明の第2の局面に従う組換えバキュロウイルスを生成し得るSf9昆虫細胞であり得る。
【0082】
上記宿主細胞は、空のウイルスキャプシドを生成し得る。
【0083】
上記宿主細胞は、細菌細胞、昆虫細胞、植物細胞もしくは動物細胞であり得る。
【0084】
(生成方法)
本発明は、空のウイルスキャプシドを生成するための方法を提供し、上記方法は、以下の工程:
(i)本発明の第1の局面に従う構築物を宿主細胞において発現させる工程;および
(ii)上記宿主細胞によって生成される空のウイルスキャプシドを採取する工程
を含む。
【0085】
本発明の構築物は、例えば、本発明の第2の局面のベクターでのトランスフェクションもしくは形質導入によって、上記宿主細胞 へと導入され得る。
【0086】
上記空のウイルスキャプシドが、上記宿主細胞の外側で発現される場合、それらは、上清から採取され得る。
【0087】
上記空のウイルスキャプシドが、上記宿主細胞の内部で発現される場合、それらは、例えば、
(i)上記宿主細胞の溶解(例えば、凍結融解による);ならびに、必要に応じて、
(ii)濃縮(例えば、PEG沈殿による)、および/または
(iii)精製
によって採取され得る。
【0088】
本発明はまた、このような方法によって空のウイルスキャプシドを生成する工程および上記空のウイルスキャプシドをワクチンに組み込む工程を含む、ワクチンを生成するための方法を提供する。
【0089】
上記ワクチンはまた、薬学的に受容可能な希釈剤、アジュバントもしくは賦形剤を含み得る。
【0090】
(ウイルス)
本発明は、特定のウイルスの空のキャプシドの生成に関する。
【0091】
上記ウイルスは、例えば、ピコルナウイルスであり得る。
【0092】
ピコルナウイルス属、種および血清型の例は、表1に示される:
【0093】
【表1−1】

【0094】
【表1−2】

コモウイルス科(コモウイルス属、ファバウイルス属、およびネポウイルス属)、セキウイルス科(セキウイルス属およびワイカウイルス属)および多くのまだ割り当てられていない属(ケラウイルス(Cheravirus)、サドワウイルスおよびトラドウイルス(Torradovirus)(タイプ種 トマトトラドウイルス))を含むセコウイルス上科(superfamily Secoviridae)へと分類されてきた植物ピコルナウイルスもまた存在する。
【0095】
上記ウイルスは、蜂ウイルス(例えば、イスラエル急性麻痺ウイルス;カシミア蜂ウイルス;カクゴウイルス;ミツバチヘギイダニウイルス;サックブルードウイルス;奇形羽ウイルス)であり得る。すべてのこのようなウイルスは、蜂コロニーの喪失と関連してきたので、上記コロニー喪失の原因を決定するために診断試験が必要である。
【0096】
上記ウイルスは、動物の病原体(例えば、FMDVもしくはブタ水疱病ウイルス)であり得る。上記ウイルスは、ヒト病原体(例えば、エンテロウイルス71(これは、下痢の大発生を引き起こす);コクサッキーウイルスBウイルス(糖尿病および心筋炎を引き起こす)、もしくはポリオウイルスであり得る。
【0097】
(天然の状態において)ヒトもしくは動物の病原体として作用するウイルスの空のキャプシド生成は、ワクチンおよび治療用組成物の生成に重要である。
【0098】
(ワクチン)
用語「ワクチン」とは、本明細書で使用される場合、被験体に投与される場合に、防御免疫応答を誘導もしくは刺激する調製物をいう。ワクチンは、生物に特定の疾患に対して免疫をつけ得る。
【0099】
上記ワクチンは、治療的に使用されて、現存の感染を処置し得る;もしくは予防的に使用されて、感染の可能性をブロックもしくは低下させ得るか、そして/または上記疾患にかかる可能性を予防もしくは低下させ得る。
【0100】
ワクチンは、1種以上のワクチン接種する実体、ならびに必要に応じて、1種以上のアジュバント、賦形剤、キャリアおよび希釈剤を含む。
【0101】
上記ワクチンはまた、別の活性因子(例えば、上記ワクチン接種する実体が誘導した適応免疫応答の前に初期の防御を刺激し得るもの)を含んでいてもよいし、上記別の活性因子を発現してもよい。上記因子は、抗ウイルス剤(例えば、タイプIインターフェロン)であり得る。代わりに、もしくは加えて、上記因子は、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)であり得る。
【0102】
上記ワクチン接種する実体は、例えば、本発明の第1の局面の構築物、本発明の第2の局面のベクター、もしくは本発明の第3の局面の宿主細胞によって生成される空のキャプシドによってであり得る。
【0103】
DNAワクチン接種は、タンパク質ベースのワクチンを超えるいくつかの利点を有する。例えば、DNAワクチンは、インビボで上記抗原の内因性発現を生じ、抗原性ペプチドがMHCクラスIおよびクラスII経路の両方を介して免疫系に提示されることを可能にし、それによって、CD4+ T細胞のみならず、CD8+ T細胞もまた刺激する。従って、DNAワクチンは、液性免疫応答および強力な細胞性免疫応答の両方を誘導し得る。ワクチンとしてのプラスミドDNAの使用はまた、細菌プラスミド骨格およびToll様レセプター9(TLR9)における非メチル化CpGモチーフを介して、上記宿主の先天的免疫系を誘発し得る。
【0104】
上記ワクチンは、MHCおよびサイトカイン分泌をダウンレギュレートすることによって、細胞性免疫応答を妨害し得る非構造タンパク質コード遺伝子2Bおよび2Cを欠いていてもよい(Moffatら,(2005) J Virol.79.4382−95およびMoffatら,(2007) J Virol.81.1129−39)。
【0105】
多くの市販のFMDワクチンは、異なるFMD血清型に対する網羅を提供するように多価である。その上、本発明のワクチンは、複数のワクチン接種する実体(各々は、異なる血清型および/もしくは所定の血清型内の異なるサブタイプに指向される)を含み得る。
【0106】
(疾患の処置/予防)
本発明はまた、有効量のそのようなワクチンの投与によって、被験体における疾患を処置および/もしくは予防するための方法を提供する。
【0107】
用語「予防する」とは、上記疾患への罹患を防ぐか、遅らせるか、妨げるかもしくは邪魔をすることに言及することが意図される。上記ワクチンは、例えば、感染性ウイルスが細胞に入る可能性を妨げ得るかもしくは低下させ得る。
【0108】
「処置する」とは、本明細書で使用される場合、上記疾患を改善するか、治療するか、もしくは上記疾患の症状を軽減するために、または上記疾患の進行を衰えさせるかもしくは停止させるために、罹患した被験体に関するケアに言及する。それはまた、上記ウイルスが感染した被験体を他の被験体に対して非感染性にする処置にも言及する。
【0109】
上記被験体は、上記疾患にかかりやすい任意の動物もしくは植物であり得る。上記被験体は、ヒト、昆虫(例えば、蜂)、植物、哺乳動物もしくは他の動物であり得る。
【0110】
FMDに関しては、上記被験体は、偶蹄類の動物であり得る。FMD感受性の動物としては、家畜の中では、ウシ、ヒツジ、ブタ、およびヤギ、ならびにラクダ科の動物(ラクダ、ラマ、アルパカ、グアナコおよびビクーニャ)が挙げられる。いくらかの野生動物(例えば、ハリネズミ、ヌートリア、および任意の野生の偶蹄類の動物(例えば、シカおよび動物園の動物(ゾウが挙げられる)))もまた、FMDにかかり得る。
【0111】
(投与)
非ウイルス性遺伝子送達の方法は、物理的アプローチ(キャリアなしの遺伝子送達)および化学的アプローチ(合成ベクターベースの遺伝子送達)を使用する工程を包含する。物理的アプローチ(針注入、エレクトロポレーション、遺伝子銃、超音波、および流体力学的送達が挙げられる)は、細胞膜に浸透し、細胞内遺伝子移入を促進する物理的力を使用する。上記化学的アプローチは、合成化合物もしくは天然に存在する化合物をキャリアとして使用して、上記ヌクレオチド配列を細胞内に送達する。
【0112】
最も適した送達法は、上記ヌクレオチド配列を標的細胞に送達するために使用される送達系に依存する。例えば、プラスミド投与に関しては、上記プラスミド調製物は、筋肉内に、皮内に、もしくは上記の組み合わせで投与され得る。
【0113】
ウイルスベクターは、当該分野で公知の方法(例えば、直接注射)によって被験体に投与され得る。
【0114】
(ピコルナウイルスタンパク質のレトロウイルス制御)
本発明はまた、ピコルナウイルスタンパク質の発現を制御するためのレトロウイルス制御エレメントの使用、レトロウイルス制御エレメントの制御下でピコルナウイルスタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む構築物に関する。
【0115】
上記レトロウイルス制御エレメントは、レトロウイルスフレームシフト部位(例えば、そのウイルスにおけるGagおよびGag−pol発現を制御するHIV−1 フレームシフト部位に由来するフレームシフト部位)であり得る。
【0116】
上記ピコルナウイルスタンパク質は、非構造タンパク質(例えば、プロテアーゼ)であり得る。上記ピコルナウイルスタンパク質は、キャプシド前駆タンパク質を切断し得る。上記ピコルナウイルスタンパク質は、ピコルナウイルスに由来する上記3Cプロテアーゼもしくはその前駆体3CDであり得る。
【0117】
本発明は、ここで実施例によってさらに記載される。実施例は、本発明を実施するにあたって当業者を助けるように働くことを意味され、本発明の範囲を限定するとは如何様にも意図されない。
【実施例】
【0118】
(実施例1−発現がp10プロモーターの制御下にあるベクターにおけるプロテアーゼ 3Cの変異分析)
バキュロウイルス移入ベクターpOPINE5949は、上記FMDVキャプシド前駆タンパク質P1、続いて、強力なp10バキュロウイルスプロモーターの制御下で短いスペーサー領域(2A−3B3)が接続された上記FMDV 3Cプロテアーゼをコードする(図1)。上記FMDVゲノムの残りの大部分は、失われている。組換えバキュロウイルスを生成するために使用される場合、その理論的結果は、上記成熟キャプシドタンパク質VP1−4(P1によってコードされる)を生成し、ウイルスキャプシドへとアセンブリするために自己切断するP1−2A−3B3−3C融合タンパク質の発現である。このような組換えバキュロウイルスによる感染の実際の結果は、生成物がほとんど生成されないことである。
【0119】
この少量の生成物は、3C毒性の結果である。これは、pOPINE5949内に、3Cの活性部位システイン(Cys 163)の1個の点変異の包含が、上記P1−2A−3B3−3C融合タンパク質の豊富な量の発現を可能にするという事実によって示される(図2)。これは、3C活性が、組換えFMDV合成の制御特徴であることを形式的に証明する。
【0120】
(方法)
上記Cys 163変異を、標準的な部位指向性変異誘発によって導入し、次いで、変異カセットを再度発現させた。
【0121】
(ウェスタンブロッティング)
タンパク質サンプルを、プレキャスト10% Tris.HCl SDS−ポリアクリルアミドゲル(BioRad)で分離し、セミドライブロッターを使用して、Immobilion−P膜(Millipore)に転写した。フィルタを、0.1% v/v Tween−20を含むTBS(TBS−T)、5% w/v ミルク粉末を使用して、室温で1時間にわたってブロックした。FMDV タイプAウイルスに対する一次モルモット抗体を、PBS−T、5% w/v ミルク粉末中、1:1000の希釈率で、室温において1時間にわたって使用した。TBS−Tで数回洗浄した後、上記膜を、HRP結合体化抗モルモット抗体とともに1時間にわたってインキュベートし、その結合した抗体を、BMケミルミネッセンス(Roche)によって検出した。
【0122】
(実施例2−3Cプロテアーゼ活性および発現が低下する構築物の生成)
これら2つの端の間にある上記3Cプロテアーゼの活性を調節するために、2つのアプローチを以下のように組み合わせた:
1)合成される3Cの量の低下を引き起こす、P1および3Cをコードする配列の間の3Bリンカー領域におけるフレームシフトエレメントの導入;ならびに
2)上記3C残基(Cys142)の変異(従って、3Cの活性を低下させる)。
【0123】
フレームシフトエレメントは、mRNAを読む場合に、その翻訳しているリボソームに塩基をスキップさせる(パーセント単位で)配列の一部である。十分に記載されているフレームシフトエレメントは、翻訳されるmRNAのうちの約5%において−1フレームシフトを引き起こすレトロウイルスHIV−1について記載されるものである。本発明者らは、Dinmanら(PNAS April 16,2002 vol.99 no.8 5331−5336)によって記載される配列を使用した(図3)。
【0124】
上記ベクターpOPINE5949−FSを、そのようにして、この位置でオープンリーディングフレームを集結させるような方法で上記3B3リンカー領域中に挿入された上記フレームシフト配列とともに構築した。上記フレームシフト配列の挿入は、上記P1−2A−3B3−3C mRNAの連続性を中断し、その結果、その翻訳される生成物は、上記3B3領域において短縮され、3Cは生成されない(3Cをコードする下流配列が上記メッセージ中に存在しているにも関わらず)。しかし、この領域における上記リボソームによるマイナス1フレームシフトは、上記リボソームによって束縛されるmRNAのサブセットによって、P1−2A−3B3−3C融合タンパク質発現を生じる(図4)。上記フレームシフト事象の頻度が、昆虫細胞において、哺乳動物細胞において測定されるものと同じであれば、翻訳生成物は、95% P1−2Aおよび5% P1−2A−3B3−3Cである。従って、3Cプロテアーゼの合成は、比例して低レベルである。
【0125】
上記pOPINE5949−FS配列を使用して構築した組換えバキュロウイルスは、低レベルの3Cプロテアーゼの生成と一致した切断パターンを示した(データは示さず)。しかし、全体的な合成レベルは、いくらかの細胞傷害性をなお示し、上記3Cの活性を、酵素活性においてある役割を有する位置Cys 142における上記3C配列の部位指向性変異誘発によってさらに低下させた(Sweeneyら(2007(上記のとおり))(図5)。
【0126】
(実施例3−切断されたVP1生成物およびFMDVの空のキャプシドの生成)
組換えバキュロウイルスにおける142Tのフレームシフトおよび変異の組み合わせは、所望のレベルのP1および3Cを生成し、他の切断生成物とアセンブリして、上記空のFMDVのキャプシドを形成する、上記切断されたVP1生成物の実施湯的な量を生じた。
【0127】
本明細書上記で言及されたすべての刊行物は、本明細書に参考として援用される。本発明の記載される方法およびシステムの種々の改変およびバリエーションは、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、当業者に明らかである。本発明は、具体的な好ましい実施形態とともに記載されてきたが、本願発明がこのような具体的実施形態に過度に限定されるべきでないことは、理解されるべきである。実際に、ウイルス学、分子生物学もしくは関連分野の当業者に明らかである本発明を実施するための記載される態様の種々の改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主細胞において発現される場合、空のウイルスキャプシドを生成し得る構築物であって、該構築物は、
(i)キャプシド前駆タンパク質をコードするヌクレオチド配列;
(ii)該キャプシド前駆タンパク質を切断し得るプロテアーゼをコードするヌクレオチド配列;および
(iii)該プロテアーゼの発現を制御する制御エレメント
を含み、ここで、該構築物が該宿主細胞において発現される場合、該制御エレメントは、該プロテアーゼを、該キャプシド前駆タンパク質を切断するのに十分であるが、該宿主細胞において顕著な毒性を誘導するには十分ではないレベルで発現させる、構築物。
【請求項2】
前記制御エレメントは、レトロウイルスに由来し得る、請求項1に記載の構築物。
【請求項3】
前記制御エレメントは、レトロウイルスフレームシフト部位である、請求項2に記載の構築物。
【請求項4】
前記制御エレメントは、前記HIV−1フレームシフト部位である、請求項3に記載の構築物。
【請求項5】
前記フレームシフト部位は、前記キャプシド前駆タンパク質をコードするヌクレオチド配列と前記プロテアーゼをコードするヌクレオチド配列との間に位置し、ここで、
前記構築物が翻訳されるとき:
リボソームがフレームシフトを受けない場合、該構築物は、該キャプシド前駆タンパク質を含むが該プロテアーゼを含まない短縮型生成物を生成する;
しかしリボソームがフレームシフトを受ける場合、該キャプシド前駆タンパク質および該プロテアーゼの両方が翻訳される、
請求項3または4に記載の構築物。
【請求項6】
前記制御エレメントは、翻訳されるmRNAのうちの約5%においてフレームシフトを引き起こす、請求項3〜5のいずれかに記載の構築物。
【請求項7】
前記プロテアーゼは、該プロテアーゼのキャプシド前駆タンパク質切断活性を低下させる少なくとも1個の変異を含む、前述の請求項のいずれかに記載の構築物。
【請求項8】
変異体である前記プロテアーゼは、野生型プロテアーゼの約3分の1のキャプシド前駆タンパク質切断活性を有する、請求項7に記載の構築物。
【請求項9】
宿主細胞において発現される場合、空のピコルナウイルスキャプシドを生成し得る、前述の請求項のいずれかに記載の構築物。
【請求項10】
宿主細胞において発現される場合、空の口蹄疫ウイルス(FMDV)キャプシドを生成し得る、請求項9に記載の構築物。
【請求項11】
前記キャプシド前駆タンパク質は、P1であり、前記プロテアーゼは、3Cである、請求項10に記載の構築物。
【請求項12】
Cys142において変異を有する変異体の3Cプロテアーゼを含む、請求項11に記載の構築物。
【請求項13】
前述の請求項のいずれかに記載の構築物を含むベクター。
【請求項14】
バキュロウイルス移入ベクター;DNAベクター、プラスミドもしくはウイルスベクターである、請求項13に記載のベクター。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の構築物を含む、宿主細胞。
【請求項16】
請求項13または14に記載のベクターを生成し得る、請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項17】
空のウイルスキャプシドを生成し得る、請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項18】
昆虫細胞もしくは哺乳動物細胞である、請求項16または17に記載の宿主細胞。
【請求項19】
空のウイルスキャプシドを生成するための方法であって、該方法は、以下:
(i)宿主細胞において請求項1〜12のいずれかに記載の構築物を発現させる工程;および
(ii)該宿主細胞によって生成される空のウイルスキャプシドを採取する工程、
を包含する、方法。
【請求項20】
ワクチンを生成するための方法であって、該方法は、請求項19に記載の方法によって空のウイルスキャプシドを生成する工程、および該空のウイルスキャプシドをワクチンに組み込む工程を包含する、方法。
【請求項21】
被験体における疾患を処置および/もしくは予防するための方法であって、該方法は、空のキャプシドがインビボで生成されるように、請求項1〜12のいずれかに記載の構築物を該被験体において発現させる工程を包含する、方法。
【請求項22】
前記構築物は、DNAワクチン接種によって、もしくはウイルスベクターを使用することによって、前記被験体に投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
疾患の予防および/もしくは処置において使用するための、請求項1〜12のいずれかに記載の構築物、請求項13または14に記載のベクター。
【請求項24】
疾患の予防および/もしくは処置のための医薬の製造における、請求項1〜12のいずれかに記載の構築物あるいは請求項13または14に記載のベクターの使用。
【請求項25】
ピコルナウイルスタンパク質の発現を制御するための、レトロウイルス制御エレメントの使用。
【請求項26】
レトロウイルス制御エレメントの制御下でピコルナウイルスタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む構築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−507948(P2013−507948A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534759(P2012−534759)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001807
【国際公開番号】WO2011/048353
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(512102405)インスティテュート フォー アニマル ヘルス (1)
【Fターム(参考)】