説明

空冷インフレーション積層フィルム

【課題】透明性が良好で、屈曲や衝撃等に対する耐ピンホール性に優れ、低カールであり、且つ空冷インフレーション法により製膜され比較的低コストで製造できる、空冷インフレーション積層フィルムを提供すること。
【解決手段】外層が下記(A)ポリアミド樹脂からなり、内層が(B)アイオノマー樹脂からなる少なくとも2層以上からなり、上記(A)ポリアミド樹脂が(a1)カプロアミド単位、(a2)ヘキサメチレンアジパミド単位、及び(a3)ドデカンアミドからなり、上記(a1)カプロアミド単位と(上記(a2)ヘキサメチレンアジパミド単位及び上記(a3)ドデカンアミド単位の合計量の割合が、(a1):((a2)+(a3))=50:50〜90:10質量%の範囲内であり、空冷インフレーション法により製造されることを特徴とする空冷インフレーション積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性が良好で、屈曲や衝撃等に対する耐ピンホール性に優れ、低カールであり、食品包装用に適する特定のポリアミド樹脂層とアイオノマー樹脂層よりなる空冷インフレーション積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリアミド樹脂からなるフィルムは、ガスバリア性、強靭性、耐ピンホール性、耐熱性あるいは耐油性などの諸特性が優れている。そのため、包装用フィルム、特に食品包装用分野で広く利用されている。こうした用途に利用するためのポリアミド樹脂フィルムの製造方法には、Tダイ成形法、水冷インフレーション法、空冷インフレーション法等があり、経済性、フィルムの要求性能等を勘案し適宜選択されている。
このうち、空冷インフレーション法は、設備が簡単な上、ブロー比の調整だけでフィルムの幅替えが容易に出来るので作業性が良く、生産性よくフィルムを製造できるという特徴を有する。しかしながら、空冷インフレーション法により製造されるフィルムは、Tダイ成形法、水冷インフレーション法により製造されるフィルムに比べ透明性に劣るといった問題があった。
【0003】
特許文献1には、特定のフィラーを特定量含有するポリアミド組成物よりなる空冷インフレーション法で成形してなるポリアミドフィルムが開示されているが、透明性が不十分であり、Tダイ成形法、水冷インフレーション法並みの透明性を有するフィルムを得ることは困難であった。また、特許文献2には、3元共重合体ポリアミドよりなる熱水収縮性に優れるポリアミドフィルムが開示されているが、同文献では、水冷インフレーション法に製造される延伸フィルムについてのみ開示されている。従って、空冷インフレーション法により製造されるフィルムの透明性の改良は不十分であり、Tダイ成形法、水冷インフレーション法並みの高透明フィルムは得られておらず、透明性を要求されない工業部品包装用やドラム内袋等の分野のみにその使用が限定されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−225386号公報
【特許文献2】特開2006−111763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、前述の問題点を解決する空冷インフレーション積層フィルムの開発を目的に鋭意検討した結果、外層が特定のポリアミド樹脂からなり、内層が特定のアイオノマー樹脂からなる少なくとも2層以上を有する積層フィルムが上記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
外層が下記(A)ポリアミド樹脂からなり、内層が(B)アイオノマー樹脂からなる少なくとも2層以上からなり、上記(A)ポリアミド樹脂が(a1)カプロアミド単位、(a2)ヘキサメチレンアジパミド単位、及び(a3)ドデカンアミドからなり、上記(a1)カプロアミド単位と(上記(a2)ヘキサメチレンアジパミド単位及び上記(a3)ドデカンアミド単位の合計量の割合が、(a1):((a2)+(a3))=50:50〜90:10質量%の範囲内であり、空冷インフレーション法により製造されることを特徴とする空冷インフレーション積層フィルム。
【0007】
本発明の空冷インフレーション積層フィルムの好ましい態様を以下に示す。好ましい態様は複数組み合わせることができる。
[1](A)ポリアミド樹脂において、(a1)カプロアミド単位と(a2)ヘキサメチレンアジパミド単位及び(a3)ドデカンアミド単位の合計量の割合が(a1):((a2)+(a3))=70:30〜85:15質量%の範囲内であること。
[2](A)ポリアミド樹脂において、(a2)ヘキサメチレンアジパミド単位と(a3)ドデカンアミド単位との割合が、(a2):(a3)=10:90〜90:10質量%の範囲内であること。
[3]空冷インフレーション積層フィルムのヘイズ値が8%以下であること。
[4]空冷インフレーション積層フィルムが食品包装用フィルムとして使用されること。
【発明の効果】
【0008】
本発明の空冷インフレーション積層フィルムは、透明性が良好で、屈曲や衝撃等に対する耐ピンホール性に優れ、低カールであり、且つ空冷インフレーション法により製膜され比較的低コストで製造できるため、食品用途をはじめ各種包装材として用途が拡大するため、その利用価値は極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における(A)ポリアミド樹脂は、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を含み、(a1)カプロアミド単位、(a2)ヘキサメチレンアジパミド単位、(a3)ドデカンアミド単位よりなる3元共重合体である。
【0010】
(A)ポリアミド樹脂中の全重合単位において、(a1)カプロアミド単位と(a2)ヘキサメチレンアジパミド単位及び(a3)ドデカンアミド単位の合計量の割合は、(a1):((a2)+(a3))=50:50〜90:10質量%の範囲内であり、70:30〜85:15質量%の範囲内であることが好ましい。(a1)カプロアミド単位の含有割合が、50重量%未満では、耐熱性が悪くなり、機械的性質が低下するため好ましくない。一方、90質量%を越えると、透明性が良好なフィルムが得られないので好ましくない。
【0011】
(a2)ヘキサメチレンアジパミド単位と(a3)ドデカンアミド単位との割合は、(a2):(a3)=10:90〜90:10質量%であることが好ましく、15:85〜85:15質量%であることがより好ましく、20:80〜80:20質量%であることがさらに好ましい。該組成比を調整することにより、(A)ポリアミド樹脂の融点を適宜調整することが可能であるとともに、ポリアミドが有する耐油性、延伸性、強靭性、耐寒性などを保持しつつ、耐熱水性に優れ、柔軟性に優れたフィルムを得ることが可能となる。
【0012】
(A)ポリアミド樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外のポリアミド反復重合単位を含有してもよい。また(A)ポリアミド樹脂以外のポリアミドを混合してかまわない。勿論、(A)ポリアミド樹脂を単独又は混合物の形で用いる事ができる。
【0013】
ポリアミドの製造において使用される製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0014】
(A)ポリアミド樹脂は、JIS K−6920に準拠測定した相対粘度が、2.0〜6.0であることが好ましく、2.5〜5.0であることが好ましい。(A)ポリアミド樹脂の相対粘度が2.0未満であると、インフレーション成形時のバブルの安定性が低下し良好なフィルムが得られない場合や、フィルムの機械的特性が不十分である場合がある。また、6.0を超えると、押し出し時のトルクが立ちすぎて製膜が困難になる場合がある。
【0015】
なお、(A)ポリアミド樹脂の末端基の種類及びその濃度や分子量分布には特別の制約は無く、分子量調節や成形加工時の溶融安定化のため、モノアミン、ジアミン、モノカルボン酸、ジカルボン酸のうちの1種あるいは2種以上を適宜組合せて添加することができる。例えば、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、ドデカンジアミン、メタキシリレンジアミン等のアミンや酢酸、ステアリン酸、安息香酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸が挙げられる。これら分子量調節剤の使用量は分子量調節剤の反応性や重合条件により異なるが、最終的に得ようとする(A)ポリアミド樹脂の相対粘度が前記の範囲になるように、適宜決められる。
【0016】
(A)ポリアミド樹脂については、更に、JIS K−6920に規定する低分子量物の含有量の測定方法に準じて測定した水抽出量は1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。水抽出量が多いと、ダイ付近へのオリゴマー成分の付着が著しく、これら付着物によるダイラインやフィッシュアイの発生により外観不良が生じ易い場合がある。また、空冷インフレーション成形においては発煙量が増えて作業環境が悪くなる場合がある。さらに、(A)ポリアミド樹脂は、オレフィン樹脂と比較して吸湿性が大きく、吸湿したものを使用すると、原料を溶融押出しする際、加水分解が起こるためオリゴマーが発生し、フィルムの製造が困難となるので事前に乾燥し、水分含有率が0.1重量%以下とすることが好ましい。
【0017】
(A)ポリアミド樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、無機フィラーや滑剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、染料、顔料、難燃剤、展着剤等を添加してもよい。
【0018】
本発明においては、結晶化温度を有しない非晶性ポリアミド樹脂を配合することがフィルム透明性向上やカール防止の観点から好ましい。非晶性ポリアミド樹脂とは、示差走査型熱量計を用いて測定される吸熱曲線がベースの変化と区別がつかず、明確な融点を示さないポリアミドを指す。
【0019】
非晶性ポリアミド樹脂としては、例えばパラアミノメチル安息香酸、パラアミノエチル安息香酸、メタアミノメチル安息香酸のような芳香族アミノ酸を主成分とするポリアミドまたはテレフタル酸、イソフタル酸のような芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンを主反復重合単位とする半芳香族ポリアミドがあり、脂肪族ジアミンとテレフタル酸及び/又はイソフタル酸をポリアミド反復重合単位とするポリアミドを配合することが好ましい。ここで使用される、脂肪族ジアミン単位としては、本発明の(A)ポリアミド樹脂との相溶性やコストを考慮した場合、1,6−ヘキサンジアミン単位が好ましく選択される。脂肪族ジアミンとテレフタル酸及び/又はイソフタル酸をポリアミド反復重合単位とするポリアミドは、上記ポリアミド反復重合単位が100重量%である重合体であってもよいが、他の成分、例えば、ラクタム、アミノカルボン酸、テレフタル酸及びイソフタル酸以外のジカルボン酸とジアミンにより導入されるポリアミド反復重合単位からなる共重合体であってもよい。他の共重合単位としては、特に、ヘキサメチレンアジパミド単位、カプロアミド単位、ドデカンアミド単位から構成されるポリアミドであることが好ましい。
【0020】
具体的には、ポリアミド6T/6I共重合体、ポリアミド6T/6I/66共重合体、ポリアミド6T/6共重合体、ポリアミド6I/6共重合体、ポリアミド6T/66共重合体、ポリアミド6I/66共重合体、ポリアミド6T/12共重合体、ポリアミド6I/12共重合体、ポリアミド6T/6I/12共重合体が挙げられる。
【0021】
非晶性ポリアミド樹脂の配合量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、1〜30質量部であることが好ましく、3〜25質量部であることがより好ましく、5〜20質量部であることがさらに好ましい。配合量が1質量部未満であると、得られるフィルムの透明性改良の効果が小さい場合があり、一方、配合量が30質量部を超えると、溶融粘度が高く、フィルムの製造が困難となる場合がある。
【0022】
また、(A)ポリアミド樹脂には、滑り性を向上させる目的で、無機フィラー粒子を添加することが好ましい。無機フィラー粒子の具体例として、ゲルタイプシリカ、沈降タイプシリカ、球状シリカ等のシリカ、タルク、カオリン、モンモリロナイト、ゼオライト、マイカ、ガラスフレーク、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、タルク、カオリン、ゼオライト、シリカが易分散性の点から好ましい。さらに、上記無機フィラー粒子はシランカップリング剤又はオルガノポリシロキサンにより表面処理された無機フィラー粒子であることがより好ましい。さらに、無機フィラー粒子の平均粒径は、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。10μm以上の粒径を有する粒子を実質的に含まないことが望ましい。10μm以上の粒径を有する粒子を多量に含有すると、フッシュアイゲルが発生しフィルム外観を損ねる場合がある。また、滑り性改良効果は発現するとしても、フィルムの透明性が悪くなる場合がある。一方、平均粒径が0.1μm未満であると、二次凝集し易くなり、逆にフッシュアイゲルを発生させる場合がある。また、凝集を防止できたとしても、フィルム表面の凹凸効果を得ることが難しく、滑り性が改良されない場合がある。
【0023】
無機フィラー粒子を(A)ポリアミド樹脂に添加する方法としては、ポリアミド樹脂の重合工程の任意の段階で添加する重合内添法や予め高濃度の無機フィラー粒子をポリアミド樹脂に1軸又は二軸の押出機を使用して練り込み、これを成形時に希釈して使用するいわゆるマスターバッチ法、成形に使用する添加剤濃度で無機フィラー粒子を予めポリアミド樹脂を練り込み使用する練り混み法、成形時に、ポリアミド樹脂に対して、所定量の無機フィラー粒子を添加するドライブレンド法等が挙げられる。これらの中でも、無機フィラー粒子の分散性やフィルム成形の安定性の観点から、重合内添法、マスターバッチ法が好ましい。
【0024】
無機フィラー粒子の配合量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.01〜0.5質量部であることが好ましく、0.03〜0.3質量部であることがより好ましく、0.05〜0.20質量部であることがさらに好ましい。配合量が0.01質量部未満であると、得られるフィルムの滑り性改良の効果が小さい場合があり、一方、配合量が0.5質量部を超えると、フィルムの透明性、外観等が損なわれる場合がある。
【0025】
また、(A)ポリアミド樹脂には、目脂発生防止のため、ヒドロキシ脂肪酸マグネシウム塩を添加することが好ましい。ヒドロキシ脂肪酸マグネシウム塩は、ヒドロキシ飽和又は不飽和脂肪酸カルボン酸とマグネシウムの塩であり、具体的には、ヒドロキシラウリン酸マグネシウム塩、ヒドロキシミリスチン酸マグネシウム塩、ヒドロキシパルミチン酸マグネシウム塩、ヒドロキシステアリン酸マグネシウム塩、ヒドロキシベヘン酸マグネシウム塩等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
ヒドロキシ脂肪酸マグネシウム塩の配合量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.003〜0.3質量部であることが好ましく、0.004〜0.2質量部であることがより好ましく、0.005〜0.1質量部であることがさらに好ましい。配合量が0.003質量部未満であると、目脂防止効果が見られない場合があり、一方、配合量が0.1質量部を超えると、フィルムの透明性や印刷性等が損なわれる場合がある。
【0027】
さらに、(A)ポリアミド樹脂には、ビスアミド化合物を配合することが透明性、滑り性を改良する観点から好ましい。ビスアミド化合物としては、N,N’−メチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスベヘン酸アミド、N,N’−ジオクタデシルアジピン酸アミド等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0028】
ビスアミド化合物の配合量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.01〜0.5質量部であることが好ましく、0.02〜0.3質量部であることがより好ましく、0.03〜0.2質量部であることがさらに好ましい。配合量が0.01質量部未満であると、得られるフィルムの透明性、滑り性改良効果が小さい場合があり、一方、配合量が0.5質量部を超えると、フィルムの印刷性やラミネート加工時の密着性が低下する場合がある。
【0029】
本発明において使用される(B)アイオノマー樹脂は、オレフィン単位と不飽和カルボン酸単位からなる主鎖の側鎖カルボキシル基を金属イオンで部分的に中和(金属イオンを介して架橋)したオレフィン/不飽和カルボン酸共重合体である。オレフィン単量体としてはエチレンが好ましく、不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。さらに任意に他の極性単量体を共重合することも可能である。
【0030】
その他の極性単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、不飽和カルボン酸エステルが好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルがより好ましい。オレフィン/不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸、さらに必要に応じて他の極性単量体を、高温、高圧下でラジカル共重合等の公知の重合法により得ることができる。
【0031】
オレフィン/不飽和カルボン酸共重合体中の不飽和カルボン酸単量体の含有量は、エチレン/不飽和カルボン酸共重合体100質量%に対し、10〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましい。 他の極性単量体の含有量は、エチレン/不飽和カルボン酸共重合体100質量%に対し、0〜40質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましく、0〜20質量%であることがさらに好ましい。一般に、他の極性単量体の含有量が前記の値を超えると、耐磨耗性、耐熱性に劣る場合がある。
【0032】
(B)アイオノマー樹脂とは、オレフィン単位と不飽和カルボン酸単位からなる主鎖の側鎖カルボキシル基を金属イオンで部分的に中和(金属イオンを介して架橋)したオレフィン/不飽和カルボン酸共重合体である。中和カルボキシル基の金属イオン成分としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の他、アルミニウム、スズ、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも亜鉛イオン、ナトリウムイオンであることが好ましいが、これに限定されるものではない。(B)アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度(全カルボキシル基数に対する中和カルボキシル基数の割合)は、20〜80%であることが好ましく、より好ましくは30〜70%であることがより好ましい。中和度が20%以上であると、得られるフィルムの透明性が良好となり好ましい。アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度が80%以下であると、アイオノマー樹脂の溶融流動性の低下が避けられ、得られたフィルムの透明性が良好であるので好ましい。
【0033】
また、(B)アイオノマー樹脂の190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR,ASTM D123準拠)は、0.1〜100g/10分であることが好ましく、0.2〜50g/10分であることがより好ましく、0.5〜10g/10分以下であることがさらに好ましい。
【0034】
(B)アイオノマー樹脂には、積層フィルムの透明性に悪影響を与えない範囲において、他の熱可塑性重合体を配合することができる。
このような熱可塑性重合体としては、オレフィン系重合体が挙げられる。オレフィン系重合体としては、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−1−オクテン、ポリ−1−デセン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン等の単独重合体、エチレン/炭素数3〜12のα−オレフィン共重合体、エチレン/ビニルエステル共重合体(ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピンオン酸ビニル等)、エチレン/不飽和カルボン酸共重合体(不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸等)、エチレン/不飽和カルボン酸エステル共重合体(不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸ジメチル等)、エチレン/不飽和カルボン酸/不飽和カルボン酸エステルの共重合体、エチレン/一酸化炭素共重合体、エチレン/一酸化炭素/不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン/一酸化炭素/ビニルエステル共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、エチレン系重合体が好ましく、ポリエチレンがより好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがさらに好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合体であって、密度が880〜930 kg/mであることが好ましく、890〜920 kg/mであることがより好ましく、190℃、2160g荷重におけるMFRが、0.1〜100g/10分であることが好ましく、0.2〜80g/10分であることがより好ましい。また、該共重合体における炭素数3以上のα−オレフィンとしては、炭素数4〜12であることが好ましく、炭素数5〜10であることがより好ましい。
【0035】
(B)アイオノマー樹脂へのその他熱可塑性重合体の配合量としては、(B)アイオノマー樹脂100質量部に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
本発明の空冷インフレ積層フィルムは、外層が(A)ポリアミド樹脂からなり、内層が(B)アイオノマー樹脂からなる少なくとも2層以上を有する、空冷インフレーション法により製膜された積層フィルムである。
【0037】
空冷インフレーション法は、広く樹脂フィルムの製造に用いられており、樹脂原料を別々の押出機により溶融させ、共押出積層環状ダイを通してチューブ状に溶融樹脂を押出し、ピンチロールでニップされるまでの間に、環状ダイの内側に設けられた穴を通してチューブ内部に気体を封入、あるいは、チューブ内部の気体の体積を一定(バブルの形状を一定)に保ちながら内部気体を循環し、製品サイズに合わせた大きさにブローアップしながら、ブロアーなどから供給される空気をエアリングから溶融チューブ外面に吹き付けて冷却固化させバブルを形成し、引取機にて引き取る方法である。
【0038】
空冷インフレーション積層フィルムを成形する条件としては、特に限定されないが、成形温度は使用する原料樹脂の融点以上から300℃未満であることが好ましい。また、ブローアップ比はダイスの径に対するバブル最大径の比をいい、ブローアップ比が1.1〜3.0であることが好ましく、1.2〜2.5であることがより好ましい。引取り速度はフィルム厚みと幅、押出量により決定され、製膜安定性を維持できる範囲で調整可能であるが、一般に、1〜150m/分であることが好ましく、5〜100m/分であることがより好ましい。
【0039】
さらに、本発明の空冷インフレーション積層フィルムは、印刷性、ラミネート、粘着剤付与性を高めるため、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理等の表面処理を行うことができる。また、必要に応じて、このような処理がなされた後、印刷、ラミネート、粘着剤塗布、ヒートシール等の二次加工工程を経てそれぞれの目的とする用途に使用することができる。
【0040】
本発明に係わる空冷インフレ法積層フィルムは、(A)ポリアミド樹脂からなる(a)層、(B)アイオノマー樹脂からなる(b)層の少なくとも2層以上を有する限り特に制限されない。さらに本発明の空冷インフレ法積層フィルムは、(a)層、(b)層の2層以外に、更なる機能を付与、あるいは経済的に有利な積層フィルムを得るために、他の熱可塑性樹脂からなる層を1層又は2層以上を有していてもよい。
【0041】
本発明の空冷インフレ法積層フィルムの層数は2層以上であるが、積層フィルム製造装置の機構から判断して8層以下、好ましくは2層〜7層である。
【0042】
空冷インフレーション積層フィルムにおいて、ポリアミド樹脂層及びアイオノマー樹脂層の間に、カルボキシル基、酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基、エポキシ基から選ばれる少なくとも1種類の官能基を含有するポリオレフィン重合体を含む接着層を設けることができる
【0043】
上記の官能基を含む化合物の例として、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸及びこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等が挙げられる。
【0044】
本発明の空冷インフレ法積層フィルムにおいて、ポリアミド樹脂層及びアイオノマー樹脂層、さらに上記接着層を除く他の層としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等の本発明に規定以外のポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリへキシレンテレフタラート(PCT)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)等のポリエステル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド6T(H))、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリトリメチルメキサメチレンテレフタラミド(ポリアミドTMHT)、ポリノナメチレンイソフタラミド(ポリアミド9I)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド10I)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド12I)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリイソホロンアジパミド(ポリアミドIPD6)、ポリイソホロンテレフタラミド(ポリアミドIPDT)やこれらポリアミド原料モノマーを数種用いた共重合体等の本発明に規定された以外のポリアミド系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等の熱可塑性樹脂を用いることができる。フィルム強度のバランス、ガスバリア性の観点からポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)やエチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)を積層することが好ましい。
【0045】
さらに、無延伸、一軸又は二軸延伸熱可塑性樹脂フィルム又はシートや熱可塑性樹脂以外の任意の基材、例えば、紙、金属系材料、織布、不織布、金属綿、木材等を積層することも可能である。金属系材料としては、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、金、銀、チタン、モリブデン、マグネシウム、マンガン、鉛、錫、クロム、ベリリウム、タングステン、コバルト等の金属や金属化合物及びこれら2種類以上からなるステンレス鋼等の合金鋼、アルミニウム合金、黄銅、青銅等の銅合金、ニッケル合金等の合金類等が挙げられる。
【0046】
また、本発明の空冷インフレーション積層フィルムの片面又は両面に他の基材をさらに積層することも可能である。その積層方法としては、押出ラミネート法、ドライラミネート法等が挙げられる。押出ラミネート法は、本発明の空冷インフレーション積層フィルムと熱可塑性樹脂等の基材に、それぞれアンカーコート剤を塗布し、乾燥後、その間に熱可塑性樹脂等を溶融押出しながらロール間で冷却し圧力をかけて圧着することによりラミネートフィルムを得る方法である。ドライラミネート法は、有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を本発明の空冷インフレーション積層フィルムに塗布し、乾燥後、熱可塑性樹脂等の基材と張り合わせることによりラミネートフィルムを得る方法である。ラミネート後のフィルムは、エージングすることで、接着強度を上げることができる。ラミネートする際には、空冷インフレーション積層フィルムの最内外層の片面又は両面をコロナ処理して使用することが好ましい。
【0047】
本発明の空冷インフレーション積層フィルムでは、各層の厚さは特に制限されず、各層を構成する種類、積層フィルムにおける全体の層数等は用途等に応じて調節し得るが、それぞれの層の厚みは、積層フィルムの透明性、耐衝撃性、耐摩耗性及び耐屈曲性等の特性、及びコストを考慮して決定され、一般には、ポリアミド樹脂層、アイオノマー樹脂層の厚さは、積層フィルム全体の厚みに対して、20〜95%であることが好ましく、25〜90%であることがより好ましく、30〜80%であることがさらに好ましい。
【0048】
本発明の積層フィルムの厚みは、用途により適宜決定すればよく特に制限されないが、3〜500μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましく、20〜150μmであることがさらに好ましい。全体の厚みが、前記の値未満であると、機械的強度に劣る場合があり、また、前記の値を超えると、フィルムが硬くなる場合がある。
【0049】
本発明の空冷インフレーション積層フィルムにおけるヘイズ値は、8%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましい。8%を越えると透明性が不十分になりやすく商品価値が下がる場合があり、Tダイ法や水冷インフレーション法並みの透明性を有するフィルムを得ることができないことがある。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例において用いた原料は次の通りである。尚、表1中の略号は、それぞれ、次のような意味を有する。
【0051】
(A)ポリアミド樹脂
(A−1)ポリアミド6/66/12の製造
70リットルのオートクレイブに、ε−カプロラクタム16.0 kg、AH塩水溶液(50質量%水溶液)4.0kg、12−アミノドデカン酸2.0kg及び蒸留水2.0kgを仕込み、重合槽内を窒素置換したのち、密封して180℃まで昇温し、次いで攪拌しながら重合槽内を1.75MPaGに調圧しながら、重合槽内温度を240℃まで昇温した。重合温度が240℃に達して2時間後に重合槽内の圧力を約2時間かけて常圧に放圧した。放圧後、窒素気流下で1時間重合した後、2時間減圧重合を行った。窒素を導入して常圧に復圧後、攪拌機を止めて、ストランドとして抜き出しペレット化した。このポリアミドペレットを沸騰水中に入れ、攪拌下に約12時間、洗浄して未反応モノマーを抽出除去した後、100℃で24時間減圧乾燥した。このようにして得たポリアミド樹脂の相対粘度は3.88であり、融点は188℃であった。このポリアミド樹脂を(A−1)と称す。
【0052】
(A−2)ポリアミド6/66/12の製造
70リットルのオートクレイブに、ε−カプロラクタム16.0 kg、AH塩水溶液(50質量%水溶液)2.4kg、12−アミノドデカン酸2.8kg及び蒸留水2.8kgを仕込み、(A−1)ポリアミドの製造と同様の方法にて、相対粘度3.89、融点188℃のポリアミド樹脂を得た。このポリアミド樹脂を(A−2)と称す。
【0053】
(A−3)ポリアミド6/66の製造
70リットルのオートクレイブに、ε−カプロラクタム16.0 kg、AH塩水溶液(50質量%水溶液)8.0kgを仕込み、(A−1)ポリアミドの製造と同様の方法にて、相対粘度3.92、融点189℃のポリアミド樹脂を得た。このポリアミド樹脂を(A−3)と称す。
【0054】
(A−4)ポリアミド6・I/6・T共重合体:三井・デュポンポリケミカル(株)製 商品名;シーラーPA 3426
【0055】
(B)アイオノマー樹脂
(B−1)エチレン/メタクリル酸共重合体のナトリウムアイオノマー:三井・デュポンポリケミカル(株)製 商品名;ハイミラン1707,MFR;0.9 g/10min, 密度;940 kg/m
(B−2)エチレン/メタクリル酸/メタクリル酸メチル共重合体の亜鉛アイオノマー:三井・デュポンポリケミカル(株)製 商品名;ハイミラン1855,MFR;1.0 g/10min, 密度;960 kg/m
【0056】
(C)オレフィン系樹脂
(C−1)低密度ポリエチレン:宇部興産(株)製 商品名;UBEポリエチレン F023 MFR;0.8 g/10min, 密度;923 kg/m
(C−2)低密度ポリエチレン:宇部興産(株)製 商品名;UBEポリエチレン V206 MFR;2.0 g/10min, 密度;920 kg/m
(C−3)接着性樹脂:宇部興産(株)製 商品名;UBE BOND F1100 MFR;5.0 g/10min ,密度;906 kg/m
【0057】
実施例および比較例における評価方法は次の通りである。
[相対粘度]
JIS K−6920に準じて、96質量%の濃硫酸を溶媒として、1重量/容量%のポリアミド濃度で、ウベローデ粘度計を用い、25℃の温度で測定した。
[融点]
セイコーインスツルメンツ(株)製DSC210型を用い、窒素ガス雰囲気下に試料を昇温速度10℃/minで250℃まで加熱し、その温度で10分間保持した後、10℃/minの速度で30℃まで冷却した直後、再度10℃/minで250℃まで加熱し、再度過熱した過程に得られた吸熱ピークに達した時の加熱温度を融点とした。
[ヘイズ]
ASTM D−1003に準じ、スガ試験機(株)製直読ヘイズコンピューター(HGM−2DP)を使用して、ヘイズを測定した。ヘイズ値が8.0%以下の場合、フィルムの透明性に優れていると判断した。
[グロス]
ASTM D−523に準じて、スガ試験機(株)製デジタル変角光沢度計を使用して、グロスを測定した。
[突刺強度]
JAS P−1019に準じて、TOYO BALDWIN(株)製テンシロンUTM−III―200を使用して、突刺速度50mm/min、23℃、50%RHの条件下で測定した。
[屈曲耐疲労試験(ゲルボフレックス)]
8インチ×11インチの大きさに切断したフィルムを、MIL B131Cに準じて、理学工業(株)製ゲルボフレックステスターを使用して、23℃、1000サイクルの屈曲テスト後発生したピンホール数を測定した。
[カール率]
積層フィルムを30mm(L1)×40mm(L2)の長さに切り出し、23℃、65%RHの条件下で24時間放置した後、フィルムの短辺L1側のカール後の幅(l)を測定し、カール率を次式により求めた。
カール率(%)=(30ー l)/30×100
【0058】
実施例1
プラボー(株)製3種3層共押出空冷インフレーション成形機(ダイス口径100mmφにて滑剤300ppmを配合した(A−1)、オレフィン系樹脂(C−3)、アイオノマー樹脂(B−1)を使用して、(A)を押出温度250℃、(B)を押出温度200℃、(C)を押出温度200℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、雰囲気温度25℃、ブローアップ比1.5の条件で、連続的に空冷インフレーション成形を行い、(A)ポリアミド樹脂(A−1)からなる(a)層(外層)、(B)アイオノマー樹脂(B−1)からなる(b)層(内層)、(C)オレフィン系樹脂(C−1)からなる(c)層(中間層)としたときの、(a)/(c)/(b)が25/15/30μmの積層フィルムを得た。該積層フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0059】
(実施例2〜4)及び(比較例1〜5)
実施例1において、外層に使用する(A)ポリアミド樹脂、内層に使用する(B)アイオノマー樹脂を、表1に示すように種々変化させた外は、実施例1と同様の方法にて、積層フィルムを得た。該積層フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1から明らかなように、内層材料として、アイオノマー樹脂を使用せず、本発明規定の以外のポリオレフィン系樹脂を使用した比較例1、2は、積層フィルムの透明性に劣る。外層材料として、本発明以外のポリアミド樹脂を使用した比較例5は、積層フィルムの透明性に劣る。外層材料として、本発明以外のポリアミド樹脂を、内層の材料として、本発明規定の以外のポリオレフィン系樹脂を使用した比較例3、4は、積層フィルムの透明性に劣り、透明性改良のためポリアミド樹脂にポリアミド6・I/6・T共重合体(非晶性ポリアミド)を配合した比較例4においても、積層フィルムのヘーズ値は8%を超えている。
一方、本発明に規定された材料を外層、内層に使用した実施例1から4は、積層フィルムの透明性は非常に良好で、屈曲や衝撃等に対する耐ピンホール性に優れ、低カールである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層が下記(A)ポリアミド樹脂からなり、内層が(B)アイオノマー樹脂からなる少なくとも2層以上からなり、
上記(A)ポリアミド樹脂が(a1)カプロアミド単位、(a2)ヘキサメチレンアジパミド単位、及び(a3)ドデカンアミドからなり、上記(a1)カプロアミド単位と(上記(a2)ヘキサメチレンアジパミド単位及び上記(a3)ドデカンアミド単位の合計量の割合が、(a1):((a2)+(a3))=50:50〜90:10質量%の範囲内であり、
空冷インフレーション法により製造されることを特徴とする空冷インフレーション積層フィルム。
【請求項2】
(A)ポリアミド樹脂において、(a1)カプロアミド単位と(a2)ヘキサメチレンアジパミド単位及び(a3)ドデカンアミド単位の合計量の割合が(a1):((a2)+(a3))=70:30〜85:15質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の空冷インフレーション積層フィルム。
【請求項3】
(A)ポリアミド樹脂において、(a2)ヘキサメチレンアジパミド単位と(a3)ドデカンアミド単位の割合が、(a2):(a3)=10:90〜90:10質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の空冷インフレーション積層フィルム。
【請求項4】
ヘイズ値が8%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空冷インフレーション積層フィルム。
【請求項5】
食品包装用フィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空冷インフレーション積層フィルム。

【公開番号】特開2010−89462(P2010−89462A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264210(P2008−264210)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】