説明

空回りロール及びブレーキ

運搬ロール及び運搬ロールを備えた運搬部分が開示される。運搬ロールは、被覆要素(20)、軸受(30)及び制動機構体(50)を有する。軸受(30)と被覆要素(20)は、運搬ロールを支承箇所(40)に対して回転軸線回りに回転させることができるような仕方で軸受(30)を介して被覆要素(20)を支承箇所(40)に取り付けることができるように互いに連結されている。制動機構体(50)は、支承箇所(40)と被覆要素(20)との間に運動幾何学的に設けられ、回転軸線回りの支承箇所(40)に対する被覆要素の回転を被覆要素(20)と支承箇所(40)の相対回転速度に従って困難にすることができるよう設計されている。本発明の運搬ロールは、支承箇所(40)と被覆要素(20)との間に位置する制動機構体の制動列中の箇所に設けられ、制動機構体が支承箇所(40)に対する被覆要素の相対回転方向に従って制動作用を有することができ又はこのような制動作用を有するのを阻止する妨害装置(60)を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬ローラ及び運搬ローラを有する運搬経路に関する。
【背景技術】
【0002】
ローラを利用したローラコンベヤが、先行技術として存在する。これらローラコンベヤは、例えば、ラック貯蔵システム又は倉庫に用いられ、この場合、ラックは、互いに上下に且つ互いに横に並んで配置された複数のローラコンベヤを有する場合がある。品物を載せた複数のパレットをローラコンベヤ上で相前後して取り付けることができ、これらパレットは、ローラ上を走行する。
【0003】
ローラコンベヤには、一方の側で荷積みが、他方の側で荷降ろしが行われ、その結果、最初にローラコンベヤに載った品物は、ローラコンベヤから再び最初に荷降ろしされるのが一般的である。これらラック貯蔵システムは、先入れ先出し(first-in/first-out)貯蔵システム又は“fifo”貯蔵システムと呼ばれている。これら“fifo”ローラコンベヤの中には、荷積み箇所から荷降ろし箇所まで傾斜した勾配を有するものがあり、その結果、ローラコンベヤ上に位置したパレットは、荷降ろし箇所の方向に重力で運搬される。
【0004】
別のシステムでは、ローラコンベヤは、一方の側で荷積みされ、同じ側で荷降ろしされ、その結果、最後にローラコンベヤに載った品物がローラコンベヤから最初に荷降ろしされる。これらラック貯蔵システムは、後入れ先出し(last-in/first-out)貯蔵システム又は“lifo”貯蔵システムと呼ばれている。これら貯蔵システムの中には、これ又荷積み箇所又は荷降ろし箇所の方向に勾配を有するものがある。さらに新たなパレットを例えばフォークリフトトラックによって荷積みする場合、既にローラコンベヤ上に位置しているパレットは、新たなパレットによって勾配とは逆の後方に押される。さらに、この勾配は、ローラコンベヤ上に位置しているパレットが重力を受けて荷降ろし箇所のところで常時整列するという作用効果を有する。
【0005】
ローラコンベヤで運ぶ品物を入れたパレットの速度を抑えるために、運搬経路のローラは、一部が、ローラ速度、つまりパレット速度を抑えることができるブレーキを備え、それにより、パレットが過度に高い速度で互いにぶつかった状態で走行するのが阻止している。この目的のため、ローラの内側に配置されたブレーキが用いられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなブレーキ付きローラは、例えばフォークリフトトラックによってパレットが過度に高い速度で押され、大きな押圧力がローラコンベヤに加わった場合に損傷を受け又は壊れる場合がある。というのは、ローラ及びこれらローラが備える制動装置をフォークリフトトラックの押圧力に耐えるのに十分に安定性があり、しかも妥当な経済的支出で設計することは非常な困難が伴う場合があるからである。その結果、追加の修理及び整備費が生じる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、好ましい仕方で製造でき、有効寿命が長く、しかも有効寿命全体にわたって必要とされる整備費及び(又は)修理費が少ない運搬ローラ及び少なくとも1つのこのような運搬ローラを有する運搬経路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、独立形式の請求項に記載された装置によって達成される。有利な実施形態は、従属形式の請求項に開示されている。
【0009】
本発明の一態様は、ケーシング要素と、軸受と、制動装置とを有する運搬ローラであって、軸受とケーシング要素が、運搬ローラを支承箇所に対して回転軸線回りに回転させることができるような仕方で軸受を介してケーシング要素を支承箇所に取り付けることができるように互いに連結され、制動装置が、支承箇所とケーシング要素との間に運動幾何学的に設けられ、回転軸線回りの支承箇所に対するケーシング要素の回転をケーシング要素と支承箇所の相対回転速度の関数として困難にすることができるよう設計されている、運搬ローラにおいて、支承箇所とケーシング要素との間に位置する制動装置の制動列上の箇所に設けられ、支承箇所に対するケーシング要素の相対回転方向の関数として制動装置の制動作用の発揮を可能にし又は阻止する妨害装置を有することを特徴とする運搬ローラに関する。これは、例えば作動中、フォークリフトトラックによってこのような運搬ローラに荷積み方向で荷積みした場合、これら運搬ローラは、この方向には制動されず、その結果、このような運搬ローラは、フォークリフトトラックの力に制動力によって対抗することはなく、したがって、荷積み中、フォークトラックの力によって損傷を受けることがないという利点を有している。これとは対照的に、逆方向における制動作用は、常時可能であり、その結果、逆行するパレットを制動することができる。特定の利用分野によれば、逆方向における制動作用の依存性は、不連続関数又は部分連続関数に相当する場合があり、例えば、回転速度と制動力との間の一次従属がもたらされ、この場合、制動力は、最小速度よりも高い速度でのみ作用する。
【0010】
このような運搬ローラでは、支承箇所は、少なくとも一方向に関してローラフレームに回転的に固定された仕方で締結できる心棒で構成されると共に(或いは)軸受は、転がり軸受及び(又は)滑り軸受で構成されると共に(或いは)制動装置は、遠心力ブレーキであると共に(或いは)妨害装置は、フリーホイールであるのが好ましい。フリーホイールは、作動中、これらフリーホイールが静かであり、空回り方向における摩擦抵抗が低いという利点を有している。これとは対照的に、弾性爪との係合によって一方の回転方向にロックでき、他方の回転方向には空回りする歯は、高いトルクを伝達できるという利点を有している。転がり軸受は、滑り軸受よりも摩擦抵抗が低い。ただし、滑り軸受は、衝撃荷重を受けた場合の強度が高い。遠心力ブレーキは、これが自己作動方式であり、その結果、遠心力、それに制動力が制動要素の回転速度に依存するという利点を有している。妨害装置の他の設計形態、例えばクラッチ、ブレーキ等も又想到できる。
【0011】
このような運搬ローラが、変換手段を更に有し、このような運搬ローラの制動装置が、制動要素付きの制動駆動装置を有し、変換手段が、ケーシング要素と支承箇所の相対運動を変換手段により制動駆動装置の駆動運動に変換できるような仕方で設計され、制動駆動装置が、駆動運動の関数として制動装置の制動要素の制動力を生じさせるような仕方で設計されていれば、有利である。このような設計の利点は、運搬ローラの運動を利用して制動作用を生じさせることができるということにある。この目的のため、例えば、駆動装置を介して歯車装置を遠心力により作動される遠心力ブレーキの制動要素に連結するのが良い。しかしながら、他の回転速度−力変換器を用いることも可能である。
【0012】
さらに、このような運搬ローラの変換手段が、二軸作動方式及び(又は)三軸作動方式及び(又は)多軸作動方式で作動できる遊星歯車装置であり、少なくとも第1の駆動装置が、ケーシング要素又はケーシング要素に回転的に固定された仕方で連結された部品で構成され、出力が、少なくとも一回転方向において実質的に回転的に固定された仕方で制動駆動装置に連結されると共に(或いは)第2の駆動装置が、支承箇所で構成されていれば、有利であると考えられる。この結果、例えば、ケーシング要素の比較的ゆっくりとした回転速度の状態であっても、遠心力ブレーキの制動要素の十分な遠心力を達成するために遠心力ブレーキの駆動装置の十分な回転速度を達成することが可能である。二軸作動方式又は多軸作動方式では単段又は多段遊星歯車装置を用いることが好ましい。この場合、支承箇所の駆動装置は、ローラフレーム内へのコンベヤローラの設置に対して回転的に固定された仕方で締結されるのが好ましい。しかしながら、支承箇所を例えば別個の仕方で外部から駆動することも可能であり、その結果、駆動装置相互間の相対速度を変化させることができ、この結果、制動作用を調節することができる。
【0013】
このような運搬ローラは、妨害装置が、支承箇所上のフレーム側に且つ(或いは)支承箇所と変換手段との間に且つ(或いは)変換手段の内側に且つ(或いは)変換手段と制動装置との間に且つ(或いは)制動装置とケーシング要素との間に設けられるように設計されるのが好ましい。妨害装置のフレーム側への設置は、妨害装置を例えば既存のローラコンベヤに容易にレトロフィットできるという利点を有している。さらに、妨害装置は、整備及び修理中、容易に接近できる。もう1つの利点は、運搬ローラの残りのコンポーネントが、そのまま存在することが可能であり、その結果、このような運搬ローラを妨害装置のある無しにかかわらず、互いに異なる運搬経路に利用することができるということにあり、このことは、同一の部品を用いる互いに異なる運搬ローラの製造が安価であるということを意味している。支承箇所、具体的に言えば心棒と変換手段、具体的に言えば遊星歯車装置との間への設置は、妨害装置がドライブトレーンのトルクを伝達すれば済み、パレットの荷重を受け持つ必要がないという利点を有している。他形式の設置法も又、この利点を有している。さらに、変換手段内部、又は制動装置と変換手段との間又は制動装置とケーシング要素との間への設置は、設置場所を直径、伝達されるべきトルク及び回転速度に応じて選択でき、その結果、設置の仕方を用途及び費用の面で最適に選択できるという利点を有している。
【0014】
このような運搬ローラでは、妨害装置を制動の際に最小限のトルクが妨害装置によって伝達されなければならない制動列上の箇所に設けることが好ましい。
【0015】
また、妨害装置が、制動の際の回転方向とは逆の方向における回転中、妨害装置の両側に位置する部品の回転速度の最小差が、妨害装置によって対応されなければならない制動列上の箇所に設けられたこのような運搬ローラが好ましい。
【0016】
このような運搬ローラでは、妨害装置は、作動中、運搬ローラに作用する衝撃荷重が、妨害装置には作用せず、運搬ローラの他の要素を介して支承箇所に伝達される制動列上の箇所に設けられていれば、有利である。
【0017】
また、このような運搬ローラでは、妨害装置は、ケーシング要素の内側に位置する箇所に設けられていれば、有利である。これは、妨害装置が環境の影響から保護されるという利点を有する。
【0018】
本発明のもう1つの態様は、フレームを有する運搬経路において、請求項1〜9のうちいずれか一に記載の運搬ローラが少なくとも1つフレーム内に設けられていることを特徴とする運搬経路に関する。
【0019】
運搬経路は、運搬方向において又は運搬方向とは逆の方向において水平に対して傾けられており、運搬ローラは、制動装置の制動作用が運搬経路に沿って下方に向いた方向に許容され、運搬経路に沿って上方に向いた方向では阻止されるような仕方で運搬方向に対して横方向の向きで設けられているのが好ましい。
【0020】
このような運搬経路では、運搬経路は、運搬経路に品物を荷積みできる起点としての荷積み箇所と品物を再び荷降ろしできる荷降ろし箇所の両方が、運搬経路の同一側に位置するよう設計されていれば、有利である。
【0021】
このような運搬経路は、妨害装置が各々、互いに異なる箇所に配置された運搬ローラ、特に、妨害装置が支承箇所上のフレーム側に配置された少なくとも1つの運搬ローラと、更に、少なくとも1つの運搬ローラであって、作動中に該運搬ローラに作用する衝撃荷重が妨害装置には作用しない箇所に妨害装置が配置されている少なくとも1つの運搬ローラを有するのが好ましい。これは、衝撃荷重が例えば荷積み箇所及び荷降ろし箇所のところで増大した程度まで生じる領域においては、妨害装置をこれらが衝撃荷重を受けるものとして設計される必要がないように構成でき、これに対し、費用効果の良い構成を他の運搬ローラについて選択できるという利点を有している。また、運搬ローラのうちの幾つかについてだけ制動すると共に(或いは)運搬ローラのうちの幾つかだけが妨害装置を備えることが想定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下において、本発明の個々の特に好ましい実施形態について説明する。この場合、説明する個々の実施形態は、或る程度まで、本発明を具体化するために絶対必要であるというわけではなく、一般的に好ましいと考えられる特徴部を有している。この結果、以下に説明する実施形態の特徴の全てを備えているわけではない実施形態も又、本発明の教示の範囲に含まれると考えられるべきである。互いに異なる実施形態に関して説明した特徴を互いに選択的に組み合わせることは、均等例として考えられる。
【0023】
図1は、本発明の運搬ローラの好ましい実施形態の等角分解組立て図である。図示の運搬ローラは、ケーシング要素20を有し、このケーシング要素は、その内側に設けられた内歯71を有する。この図の左下に示されているように、ケーシング要素20は、結合要素21に回転方向に固定され(即ち、結合要素21と一体的に回転するように)連結されており、この結合要素内には、軸受30が同心状に挿入されており、この軸受は、図示の好ましい実施形態では、転がり軸受で構成されている。図2から明らかなこととして、転がり軸受は、2つの溝付き玉軸受である。この場合、結合要素21は、ケーシング要素20と同一の外径を有し、その結果、運搬ローラの実質的に滑らかな円筒形外面が形成されている。また、運搬ローラの円筒形外面を一体形コンポーネントで構成すること又は外面を複数の部分で構成することが想定できる。また、軸受30が転がり軸受ではなく、他の形態の軸受から成り又は転がり軸受に加えて、例えば滑り軸受を有することが可能である。滑り軸受は、例えば、これらが衝撃の影響を受けにくく、高い荷重に耐えることができるという利点を有しており、これに対し、転がり軸受は、これらが特に低い摩擦抵抗を有するという点でこれとは区別される利点を有している。
【0024】
ケーシング要素20は、軸受30により支承箇所40に回転可能に取り付けられ、支承箇所は、好ましい実施形態では、転がり軸受により取り付けられた心棒で構成されている。心棒は、運搬ローラを図示されていないローラフレームに取り付けるために用いられている。支承箇所40、即ち、図示の実施形態では心棒は、一般に、ローラフレーム内に回転的に固定された仕方で設けられる。しかしながら、心棒が、ケーシング要素20と心棒の相対速度を可変的に制御できるような仕方で駆動されることも想到できる。
【0025】
心棒は、ケーシング要素20を実質的に貫通し、運搬ローラ100が組立て状態にある場合、他方の側が運搬ローラ100から突き出る。運搬ローラ100の内部では、妨害装置60、変換手段70及び制動装置50が、心棒に取り付けられている。図示の実施形態では、妨害装置60は、フリーホイールとして設計され、変換手段70は、遊星歯車装置から成り、この遊星歯車装置は、図示の実施形態では、二段遊星歯車装置である。制動装置50は、遠心力ブレーキとして設計されている。
【0026】
図3は、妨害装置60が支承箇所40に取り付けられた状態の妨害装置60の実施形態を示す断面図である。妨害装置60の内側要素62と心棒との間のシャフト−ハブ連結手段を構成するスプライン付きシャフト歯66が示されている。他形式の連結手段、例えば圧力嵌め、焼嵌め等も又想到できる。
【0027】
妨害装置60は、外側要素61及び係止ボール63を更に有し、これら係止ボールは、内側要素62の凹部64内に設けられており、これら係止ボールには、同様に内側要素62内に納められたばね要素65によりばね力が加えられ、これら係止ボールは、このばね力により係止方向に押圧されている。ばね力により、係止ボール63は各々、凹部64の表面と接触状態をなし、他方において、外側要素61の内側の表面と接触状態をなすようになる。外側要素61と内側要素62が係止方向に互いに対して回転させた場合、係止ボール63は、係止方向に上昇する凹部64の表面に沿って動く。その結果、係止ボール63と凹部64及び外側要素61の2つの表面との間における半径方向の押圧力が増大する。また、押圧力の増大により、伝達可能な摩擦力が増大し、その結果、内側要素と62と外側要素61は、係止方向において自動係止する。この係止方向とは逆の回転方向において、係止ボール63は、凹部64の一層深い領域に動き、その結果、凹部64の表面と外側要素61の内側の表面との間に十分な間隔が形成され、このことは、ばね力を受けた場合にのみ外側要素61の内側に当接することを意味している。この場合、係止ボール63と外側要素61の内面との間の接触力は、係止方向とは逆の回転方向において、潤滑膜が係止ボール63と外側要素61との間に生じることができるに足るほど小さい。したがって、この回転方向において、外側要素61は、内側要素62周りに実質的に摩擦が働かない状態で動く。
【0028】
上述した玉軸受(ボールベアリング)式フリーホイールは、市場で入手できる多くの適当なフリーホイールのうちの1つであるに過ぎない。また、ばね類が設けられておらず、ボールに代えて円筒形ローラを有するフリーホイール及び(又は)クランプ要素を備えたフリーホイールを利用できる。このようなクランプ要素は、回転対称結合部品と摩擦接触関係をなした状態で、規定されたクランプ角度をもたらす特定の形をした幾何学的形状を有する接触面に設けられる。クランプ要素は、荷重を受けると、そのクランプ面に沿って内面に転動し、ついには、生じるトルクとフリーホイール部品に加わる荷重との間に力の平衡状態が生じるようになる。
【0029】
或る場合には、このようなフリーホイールは、自動調心式のものではない。したがって、外側のクランプ軌道に対する内側のクランプ軌道の心出し走行は、適当な設置の仕方によって保証されなければならない。これに対応した設置方式による解決策及び個々のフリーホイールは、標準型部品として又は専用設計物として市場で入手できる。
【0030】
図1に示されているように、フリーホイールは、心棒に取り付けられ、このフリーホイールは、遊星歯車装置の遊星枠又はキャリヤ72を心棒に連結する。したがって、この遊星枠又はキャリヤ72は、心棒を中心として一方向に自由に回転することができ、これに対し、この遊星歯車枠又はキャリヤは、他方の方向においては回転的に固定された仕方で心棒に締結される。遊星枠又はキャリヤ72には、第1の遊星歯車73が取り付けられ、これら第1の遊星歯車は、一方の側がケーシング要素20に設けられた内歯71と噛み合い状態にあり、他方の側が第1の太陽歯車75と噛み合い状態にあり、この第1の太陽歯車は、第2の遊星枠又はキャリヤに回転的に固定されると共に心棒に回転可能に取り付けられるよう設計されている。第2の遊星枠又はキャリヤには、第2の遊星歯車74が回転可能に取り付けられ、これら第2の遊星歯車は、一方の側がケーシング要素20の内歯71と噛み合い、他方の側が第2の太陽歯車(図1には示されていない)と噛み合っており、この第2の太陽歯車は、制動装置50の駆動装置51に回転的に固定された仕方で連結されている。
【0031】
上述の機構により、フリーホイールの係止方向におけるケーシング要素20の回転は、変換手段70により制動装置50の駆動装置51の極めて迅速な回転に変換される。駆動装置51のこの回転速度の結果として、駆動装置51によって駆動される制動要素52には、遠心力が加えられ、この制動要素は、この遠心力によりケーシング要素の内面に押し付けられ、この内面(図1には示されていない)は、図1の右上に向かう方向に軸方向に見て内歯71の後ろに位置している。駆動装置51とケーシング要素20の回転速度の差及び制動要素52をケーシング20の内面に押し付ける押圧力により、ケーシング要素20の回転方向とは逆の方向に作用する制動力が生じる。
【0032】
これとは対照的に、フリーホイールの係止方向とは逆のケーシング要素20の回転方向においては、ケーシング要素20と制動装置50の摩擦係合が中断され、その結果、ケーシング要素20は、実質的にブレーキが効いていない状態で回転することができる。
【0033】
図1に示す実施形態では、フリーホイールは、図示のように、心棒と第1の遊星枠又はキャリヤ72との間で心棒に取り付けられている。フリーホイールがドライブトレーンに沿う他の箇所に取り付けられた別の実施形態を想到できる。例えば、小径のフリーホイールを2つの遊星歯車段のうちの一方又は両方の遊星歯車段の遊星歯車の内側に設けると共に(或いは)フリーホイールを内歯71とケーシング要素20との間に設けることが考えられる。別の実施形態では、このようなフリーホイールを心棒とローラフレームとの間で運搬ローラ100の外部に取り付けることができる。1つ又は2つ以上のフリーホイールの取り付け箇所は、運搬ローラを使用する場合の種々の作動条件で決まる。
【0034】
このような運搬ローラを例えばパレットがコンベヤ上に置かれている運搬経路の領域に用いられる場合、比較的大きな衝撃力がローラに作用する。この場合、運搬ローラの外部に取り付けられ、即ち、心棒ところ軸受との間に配置されたフリーホイールは、対応の衝撃荷重を受けるものとしてそれに合わせて設計されなければならない。したがって、フリーホイールをコンベヤローラの内側に配置して衝撃力がフリーホイールによっては吸収されず、転がり軸受を介してコンベヤローラの支承構造体によって吸収されるようにすることが有利であると考えることができる。
【0035】
他方、フリーホイールを、例えば衝撃力があったとしても比較的小さな衝撃力が運搬ローラ100に作用する領域で運搬ローラ100の外部に取り付けることが有利な場合がある。フリーホイールをこの箇所に接近容易な仕方で取り付けるのが良く、このことは、例えば、既存のシステムにこのようなフリーホイールをレトロフィットできるということを意味している。
【0036】
制動装置50のドライブトレーンに沿うフリーホイールの配置に関する別の判断基準は、入手できるフリーホイールの全体サイズ、伝達されるべきトルク及びフリーホイールの設計対象としての回転速度で決まる。この結果、例えば、図1に示されているような場所に設けられたフリーホイールは、比較的大きなトルクを低い回転速度で伝達しなければならず、これに対し、例えば、第2の太陽歯車段の太陽歯車と制動装置50の駆動装置51との間に設けられたフリーホイールは、小さなトルクを高い回転速度で伝達しなければならない。
【0037】
ケーシング要素20と内歯71との間に配置されたフリーホイールは、この設置箇所では利用可能な比較的大きな直径を有する。したがって、プラスチック要素で作られたフリーホイールは、場合によっては適当であるかもしれない。伝達できるフリーホイールのトルクは、一般に、妨害要素と外側要素61及び内側要素62の表面との間のヘルツ接触応力によって制限されるので、伝達されるべきトルクは、実質的に、用いられるべき材料、表面の曲率及び妨害要素の曲率で決まる。したがって、複数の妨害要素を十分なスペースが利用可能な設置箇所に設けることが可能であり、その結果、抵抗力の小さな材料、例えばプラスチックも又、部品に適している。
【0038】
図2は、図1の運搬ローラの好ましい実施形態の断面図及び運搬ローラの端面の平面図である。図2では、運搬ローラ100は、組立て状態で示されている。同じコンポーネントは、図1に記載したのと同一の参照符号で示されている。
【0039】
図3は、本発明の妨害装置の実施形態を示している。
【0040】
以下において、本発明の要旨をなす運搬経路について説明する。運搬経路については図面を参照しないで説明する。このような運搬経路は、多数のローラが全て収納されたフレームを有している。これらローラは、一部が、上述したようなブレーキ付きローラであるのがよい。他のローラは、非制動式であるのが良い。他のローラは、専用駆動装置を有するのが良い。
【0041】
本発明の運搬経路は、本発明の運搬ローラ100を少なくとも1つ有している。このような運搬ローラ100を運搬経路上に位置する品物が一方の移動方向において制動されるようになっており、他方の運搬方向には制動されない状態で動くことができるようになった運搬経路の領域に配置することが好ましい。このような領域は、例えば、運搬経路内及び流れ−貯蔵モジュール内に存在している。
【0042】
このような流れ−貯蔵モジュールは、パレットのための貯蔵スペースを有している。この場合、複数個のパレットが、運搬経路に相前後して取り付けられ、この場合、運搬経路は一方の側で荷積みされて荷降ろしされ、或いは、一方の側で荷積みされ、そして他方の側から荷降ろしされる。一方の側での荷積み及び荷降ろしが行われる運搬経路は、一般に、「後入れ先出し(last-in/first-out)」又は“lifo”運搬経路と呼ばれている。これら“lifo”運搬経路の場合、パレットは、例えばフォークリフトトラックによって供給され、フォークリフトトラックは、パレットを用いて既に運搬経路上に位置している他のパレットを勾配とは逆に上方に押し、新たなパレットを運搬経路上に置く。他のパレットは、重力を受けて再び荷降ろし箇所に向かって動く、この場合、パレットは、パレットが比較的高い速度で互いに当たるのを阻止するために下方に傾斜した方向において制動されるべきである。
【0043】
この構成では、フォークリフトトラックが運搬経路上に位置しているパレットを押すと、これらパレットは、過度の速度で押されることがあり得る。このような運搬経路の運搬ローラも又、この方向に制動される場合、運搬ローラは、このようなフォークリフトトラックの押圧力に耐えることができなければならない。したがって、このような運搬経路では、本発明の運搬ローラが用いられるのが好ましい。この場合、運搬ローラは、運搬ローラが運搬経路の上向きの勾配方向では制動されず、これに対し、運搬ローラの制動作用が運搬経路の逆の方向、即ち、下向きの傾斜方向で作用するように設置される。
【0044】
このような運搬経路では、回収領域又は荷積み領域に配置された運搬ローラに衝撃荷重が加わっている間、悪影響を受けない運搬ローラの領域に配置されたフリーホイールを備えるのが良い。これとは対照的に、荷降ろし領域から見て遠くに配置されたローラは、運搬ローラの心棒と運搬経路のフレームとの間に配置されたフリーホイールを備えるのが良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の運搬ローラの好ましい実施形態の等角分解組立て図である。
【図2】本発明の運搬ローラの好ましい実施形態の断面図及び運搬ローラの端面の平面図である。
【図3】本発明の妨害装置の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
20 ケーシング部材
21 結合部材
30 軸受
40 支承箇所又は心棒
50 制動装置
51 駆動装置
52 制動要素
60 妨害装置
61 外側要素
62 内側要素
63 係止ボール
64 凹部
65 ばね要素
66 スプライン付きシャフトの歯
70 変換手段
72 第1の遊星枠又はキャリヤ
73 第1の遊星歯車
74 第2の遊星歯車
75 第1の太陽歯車
100 運搬ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング要素(20)と、軸受(30)と、制動装置(50)とを有する運搬ローラ(100)であって、前記軸受(30)と前記ケーシング要素(20)が、前記運搬ローラを前記支承箇所(40)に対して回転軸線を中心に回転させることができるように前記軸受(30)を介して前記ケーシング要素(20)を前記支承箇所(40)に取り付けることができるように互いに連結され、前記制動装置(50)が、前記支承箇所(40)と前記ケーシング要素(20)との間に運動幾何学的に設けられ、前記回転軸線回りの前記支承箇所(40)に対する前記ケーシング要素の回転を前記ケーシング要素(20)と前記支承箇所(40)の相対回転速度の関数として困難にすることができるよう設計されている運搬ローラにおいて、
前記支承箇所(40)と前記ケーシング要素(20)との間に位置する前記制動装置の制動列上の箇所に設けられ、前記支承箇所(40)に対する前記ケーシング要素の相対回転方向の関数として前記制動装置(50)の制動作用の発揮を可能、又は阻止する妨害装置(60)を有する、
ことを特徴とする運搬ローラ(100)。
【請求項2】
前記支承箇所(40)は、ローラフレームに回転的に固定された仕方で締結できる心棒で構成されると共に(或いは)前記軸受(30)は、転がり軸受で構成されると共に(或いは)前記制動装置(50)は、遠心力ブレーキであると共に(或いは)前記妨害装置(60)は、フリーホイールである、
請求項1記載の運搬ローラ(100)。
【請求項3】
変換手段(70)を更に有し、前記制動装置(50)は、制動駆動装置を有し、前記変換手段(70)は、前記ケーシング要素(20)と前記支承箇所(40)の相対運動を前記変換手段(70)により前記制動駆動装置の駆動運動に変換できるように設計され、前記制動駆動装置は、該制動駆動装置が前記駆動運動の関数として前記制動装置(50)の制動力を生じさせるように設計されている、
請求項1又は2記載の運搬ローラ(100)。
【請求項4】
前記変換手段(70)は、二軸作動方式及び(又は)三軸作動方式及び(又は)多軸作動方式で作動できる遊星歯車装置であり、少なくとも第1の駆動装置が、前記ケーシング要素(20)で構成され、出力が、回転的に固定された仕方で前記制動駆動装置に連結されると共に(或いは)第2の駆動装置が、前記支承箇所(40)で構成されている、
請求項3記載の運搬ローラ(100)。
【請求項5】
前記妨害装置(60)は、前記支承箇所(40)上のフレーム側に且つ(或いは)前記支承箇所(40)と前記変換手段(70)との間に且つ(或いは)前記変換手段の内側に且つ(或いは)前記変換手段(70)と前記制動装置(50)との間に且つ(或いは)前記制動装置(50)と前記ケーシング要素(20)との間に設けられている、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の運搬ローラ(100)。
【請求項6】
前記妨害装置(60)は、制動の際に最小限のトルクが前記妨害装置(60)によって伝達されなければならない前記制動列上の箇所に設けられている、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の運搬ローラ(100)。
【請求項7】
前記妨害装置(60)は、制動の際の回転方向とは逆の方向における回転中、前記妨害装置(60)の両側に位置する部品の回転速度の最小差が、前記妨害装置(60)によって対応されなければならない前記制動列上の箇所に設けられている、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の運搬ローラ(100)。
【請求項8】
前記妨害装置(60)は、作動中、前記運搬ローラ(100)に作用する衝撃荷重が、前記妨害装置(60)には作用せず、前記運搬ローラ(100)の他の要素を介して前記支承箇所(40)に伝達される前記制動列上の箇所に設けられている、
請求項1なないし7のいずれか1項に記載の運搬ローラ(100)。
【請求項9】
前記妨害装置(60)は、前記ケーシング要素の内側に位置する箇所に設けられている、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の運搬ローラ(100)。
【請求項10】
フレームを有する運搬経路において、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の運搬ローラ(100)が少なくとも1つ前記フレーム内に設けられていることを特徴とする運搬経路。
【請求項11】
前記運搬経路は、運搬方向において又は運搬方向とは逆の方向において水平に対して傾けられ、前記運搬ローラ(100)は、前記制動装置(50)の制動作用が前記運搬経路に沿って下方に向いた方向に許容され、前記運搬経路に沿って上方に向いた方向では阻止されるような仕方で前記運搬方向に対して横方向の向きで設けられている、
請求項10記載の運搬経路。
【請求項12】
前記運搬経路は、前記運搬経路に品物を荷積みできる起点としての荷積み箇所と前記品物を再び荷降ろしできる荷降ろし箇所の両方が、前記運搬経路の同一側に位置するよう設計されている、
請求項10又は11記載の運搬経路。
【請求項13】
前記妨害装置が各々、互いに異なる箇所に配置された運搬ローラ、特に、前記妨害装置(60)が前記支承箇所(40)上のフレーム側に配置された少なくとも1つの運搬ローラと、更に少なくとも1つの運搬ローラであって、作動中に該運搬ローラに作用する衝撃荷重が前記妨害装置(60)には作用しない箇所に前記妨害装置(60)が配置されている少なくとも1つの運搬ローラとを有する、
請求項10ないし12のいずれか1項に記載の運搬経路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−534273(P2009−534273A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505792(P2009−505792)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003502
【国際公開番号】WO2007/121951
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(508314836)インテロール ホールディング アクチェンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】