説明

空気の品質調整制御方法、換気風量制御方法および換気風量制御システム

【課題】製造環境などといった略閉じた環境内で消費されるエネルギー量と、当該環境内の空気の最適な品質とを両立させることが可能な、空気の品質の調整および制御に関する技術を提供する。
【解決手段】制御部30は、FFU(ファンフィルタユニット)22の最適風量を製造環境24内に配備された製造装置26の稼動状態と予め関連付ける。製造装置26の現在の稼動状態は、電力センサ12およびエア流量センサ14によって検出される。制御部30は、FFU22の換気風量を、検出された稼動状態に予め関連付けられた最適風量へと切替える。その最適風量は、製造装置26が上記の稼動状態にあるときに目標の空気清浄度を達成するための換気風量と、当該換気風量でFFU22を運転させる場合のFFU22の消費電力との間の関係に基づいて予め決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気の品質調整制御方法、換気風量制御方法および換気風量制御システムに関し、特に、製造環境等のような略閉じた空間の内部の空気の品質を調整するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の微細化あるいは高精細化にともない、電子業界、電気業界をはじめとする多くの業界では製品の品質を維持するために、一般の環境よりも高レベルの空気清浄度を有する製造環境が構築されている。このような製造環境は、一般にクリーンルームあるいはクリーンブースなどと呼ばれている。
【0003】
一般に、クリーンブースあるいはクリーンルームでは、FFU(ファンフィルタユニット)と呼ばれる換気装置が、たとえば風量、台数、配置などの予め設計された条件にしたがって連続的に稼働している。これにより、製造環境における空気清浄度が維持されている。以下では「空気清浄度」を単に「清浄度」と説明する。
【0004】
特許文献1(特開2009−174776号公報)は、粉体の飛散をリアルタイムで検知して、粉体の換気を効率的に行なうことを目的とした換気風量制御方法が記載されている。具体的には、粉体の飛散量の測定結果が目標濃度以上である場合には、目標時間内に換気する風量が算出される。その算出された風量に基づいて送風機および排風機が制御される。さらに、粉体の飛散量の測定結果が目標濃度に低下した場合には、換気風量が減少する。
【0005】
また、特許文献2(特開2010−255898号公報)は、クリーンルームの設備に使用する消費電力を低コストかつ容易に削減するための送風制御パターン作成装置を開示する。この装置は、クリーンルームの清浄度を取得するための手段と、クリーンルームの風量を取得するための手段と、取得された清浄度および風量に基づいて必要風量を算出するための手段と、その必要風量に基づいて送風を制御するためのパターンデータを生成するための手段とを備える。
【0006】
また、特許文献3(特開2005−98661号公報)は、クリーンルームの適当な層流が確保されるように、クリーンルームに存在する複数個の空気清浄器の風量を制御することによって、クリーンルームのランニングコストを低減させるための風量制御システムを開示する。このシステムは、生産装置の稼動情報に基づいて空気清浄器ごとに風量を制御するための制御手段を備える。生産装置の稼動情報は、予定されている生産装置の稼動計画を示す情報と、現在の生産装置の稼動状況を示す情報との少なくとも1つである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−174776号公報
【特許文献2】特開2010−255898号公報
【特許文献3】特開2005−98661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された制御方法によれば、センサによって検出された粉体濃度が目標濃度(しきい値)を越えた場合には、送風機および排風機の回転数を増加させることによって換気回数を増加させる。しかしながら、このような制御によれば、たとえば以下のような場合において製造装置の使用者が許容できないほどに製造環境が汚染される可能性がある。
【0009】
まず、塵埃(パーティクル)の増加速度が著しく大きい場合には、塵埃の濃度が目標濃度を大幅に超過する可能性がある。この場合には、換気回数を増加させても、塵埃濃度はすぐには低下しにくい。
【0010】
また、微粒子計測の性格上、測定値は、ある程度の遅延時間(たとえば1分間)を経た後でなければ取得されない。換気風量を変更するための指令は、その測定値に基づいて生成される。したがって事実上、指令の生成は遅延している。さらに、その指令に応じて換気風量が変更されるものの、実際の風量が指令に対応した風量に到達するまでの応答時間も発生する。
【0011】
さらに特許文献1に記載された制御方法では、送風機および排風機の各々のインバータの周波数を変更することによって換気風量が変更される。製造環境あるいは設定等に依存する可能性はあるものの、このようなインバータの周波数の変化が製造装置のユーザにとって不快に感じる可能性も考えられる。たとえばインバータの周波数の変化にともなってインバータの動作音が変化した場合、その動作音の変化がユーザの不快感を生じさせる可能性がある。あるいは風量が変化することによってユーザの不快感が生じることも考えられる。このような問題は、リアルタイムでの換気風量の制御を製造環境に導入を妨げる要因となりうる。
【0012】
さらに、インバータの周波数が頻繁に変化することによって、インバータの消費電力(特にインバータでの電力の損失)が増大する可能性が考えられる。
【0013】
さらに、測定値が目標濃度よりも小さい場合には、換気風量を少なくする省エネ運転が実行される。しかしながら、たとえば排気風量の低下によって外部からクリーンルームに進入する微粒子の数が増える可能性がある。仮に、省エネ運転時に塵埃濃度が急上昇した場合、製造装置の使用者が許容できないほどに製造環境が汚染される可能性は高くなる。
【0014】
さらに、特許文献1の方法は、1つのしきい値のみに基づいて、換気風量を制御するものである。しかしながら、そのしきい値を、消費エネルギーおよび製造環境の清浄度が両立できるように最適に設定することは難しい。しきい値を低く設定するほど製造環境の清浄度が高く維持されることが期待できる一方で、換気風量が大きい期間が長いために製造環境で消費されるエネルギーの量が増大する。逆に、しきい値を高く設定するほど、エネルギーの消費量の抑制が期待できる一方で、製造環境の清浄度を高く維持することが難しくなる。
【0015】
特許文献2では、クリーンルームの清浄度と現在の風量とに基づいて風量が制御される点について開示されている。しかしながら、特許文献2には、風量の制御と装置の現在の稼動状況との関連性について具体的に開示されていない。
【0016】
また、特許文献3では、生産装置の稼動状況(稼動または停止)に基づいて風量が制御する点について開示されているが、その稼動状況と環境内で消費されるエネルギーとの関連性について具体的に開示されていない。
【0017】
本発明は、上述の課題を解決するものであって、製造環境などといった略閉じた環境内で消費されるエネルギー量と、当該環境内の空気の最適な品質とを両立させることが可能な、空気の品質の調整および制御に関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
ある局面では、本発明は空気の品質調整制御方法であって、略閉じた環境内に配備された装置で消費されたエネルギー量を取得して、略閉じた環境内の空気の品質を調整するための空気調整装置の調整量を、取得されたエネルギー量に基づいて決定される装置の稼動状態に予め関連付けるステップと、装置の現在の稼動状態を検出するステップと、調整量を、検出された稼動状態に予め関連付けられた最適な調整量へと切替えるステップとを備える。最適な調整量は、装置が稼動状態にあるときに目標の空気の品質を達成するための調整量と、当該調整量で空気調整装置を運転させる場合の空気調整装置の消費電力との間の関係に基づいて予め決定される。
【0019】
別の局面では、本発明は換気風量制御方法であって、製造環境内に配備された製造装置で消費されたエネルギー量を取得して、製造環境内を換気するための換気装置の最適風量を、取得されたエネルギー量に基づいて決定される製造装置の稼動状態に予め関連付けるステップと、製造装置の現在の稼動状態を検出するステップと、換気装置の換気風量を、検出された稼動状態に予め関連付けられた最適風量へと切替えるステップとを備える。最適風量は、製造装置が稼動状態にあるときに目標の空気清浄度を達成するための換気風量と、当該換気風量で換気装置を運転させる場合の換気装置の消費電力との間の関係に基づいて予め決定される。
【0020】
好ましくは、関連付けるステップは、単位期間の間のエネルギー量の分布に基づいて、製造装置の稼働状態を分類するためのエネルギー量の候補しきい値を演算して、候補しきい値を用いて最適風量と稼動状態との関連付けを行なうステップである。
【0021】
好ましくは、エネルギー量は、各製造装置で消費されたエネルギー量である。
好ましくは、エネルギー量は、製造環境の全体で消費されたエネルギー量である。
【0022】
好ましくは、製造装置は制御装置によって制御される。製造装置の現在の稼動状態を検出するステップは、制御装置の制御状態に基づいて製造装置の現在の稼動状態を識別するステップを含む。
【0023】
好ましくは、換気風量制御方法は、製造環境内のパーティクル量を測定するステップと、換気風量を最適風量に切替えることによる、換気装置の最大消費電力に対する消費電力の低減率と、測定されたパーティクル量と、パーティクル量の時系列データとを表示するステップと、換気風量に対するユーザの要求が発生した場合に、換気風量を要求に対応する風量へと変更するステップとをさらに備える。
【0024】
好ましくは、換気風量制御方法は、製造環境内のパーティクル量を測定するステップと、測定されたパーティクル量が予め設定された範囲から外れた場合には、製造装置の稼動状態と最適風量との間の関連付けを再度実行するステップとをさらに備える。
【0025】
好ましくは、換気風量制御方法は、製造環境内のパーティクル量を測定するステップと、測定されたパーティクル量が予め定められた範囲内において複数回連続して上昇することを、異常の予兆として検出するステップと、異常の予兆が検出された場合に、換気風量を最大風量に設定するステップとをさらに備える。
【0026】
好ましくは、換気風量制御方法は、製造環境内のパーティクル量を計測するステップと、測定されたパーティクル量が予め設定された範囲の上限を超えたことを異常として検出するステップと、異常が検出された場合に、換気風量を最大風量に設定するステップとを備える。
【0027】
好ましくは、予め関連付けるステップにおいて、換気風量を最大風量から段階的に低下させることによって最適風量を決定する。
【0028】
好ましくは、製造環境には、製造環境の内部から製造環境の外部へと通じる開口部が形成される。換気風量制御方法は、開口部における風速を測定するステップと、測定された風速に応じて換気風量を変更するステップとをさらに備える。
【0029】
別の局面では、本発明は、換気風量制御システムであって、製造装置が配備された製造環境の中を換気する換気装置と、製造装置の現在の消費エネルギー量を検出する検出装置と、換気装置の風量を変更する制御装置とを備える。制御装置は、換気装置の最適風量を、製造装置の消費エネルギー量に関連付けて決定する演算部と、換気装置の最適風量と製造装置の消費エネルギー量との間の対応関係を記憶する記憶部と、検出装置によって検出された製造装置の現在の消費エネルギー量と、記憶部に記憶された対応関係とに基づいて、換気装置の風量を最適風量へと切り替える切替部とを含む。演算部は、製造装置が消費エネルギー量を消費しているときに目標の空気清浄度を達成するための換気風量と、当該換気風量で換気装置を運転させる場合の換気装置の消費電力との間の関係に基づいて、最適風量を決定する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、製造環境などといった略閉じた環境内で消費されるエネルギー量と、当該環境内の空気の最適な品質とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る換気風量制御方法が適用される製造環境を模式的に示した図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る換気風量制御システムによって実行される換気風量の制御フローを説明した図である。
【図3】製造装置の消費電力量のしきい値の設定の第1の例を説明した図である。
【図4】製造装置の消費電力量のしきい値の設定の第2の例を説明した図である。
【図5】製造装置のエア消費量の候補しきい値の数が2つである例を説明した図である。
【図6】製造装置のエア消費量の候補しきい値の数が3つである例を説明した図である。
【図7】製造装置の複数の稼動パターンの例を示した図である。
【図8】異常の予兆および緊急状態の各々に対応するパーティクル量の推移を説明するための図である。
【図9】自己教示モードでの処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】図9に示したステップS11〜S13の処理ループによって得られた計測データの一例を示した図である。
【図11】教示後の制御データを説明するための図である。
【図12】ディスプレイの画面に表示された情報を説明するための図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る換気風量制御システムの第1の変形例を示した図である。
【図14】本発明の実施の形態に係る換気風量制御システムの第2の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0033】
本発明に係る空気の品質調整制御方法の一実施形態として、以下では、製造環境における換気風量調整方法を説明する。この実施の形態では、製造環境での空気の品質として、空気の清浄度が用いられる。換気風量制御方法は、清浄度が要求される個所に用いられることができる。以下の実施形態では、クラス10,000のクリーンブースを例にして説明する。「クラス10,000」は、粒径範囲が0.5μm〜5μmである微粒子の1立方フィート(1cf)あたりの最大許容数が10,000であることを意味する。
【0034】
図1は、本発明の実施の形態に係る換気風量制御方法が適用される製造環境を模式的に示した図である。図1を参照して、換気風量制御システム10は、電力センサ12と、エア流量センサ14と、パーティクルセンサ16と、風速・風向センサ18と、FFU(ファンフィルタユニット)22と、制御部30と、ディスプレイ32とを主に備える。
【0035】
電力センサ12およびエア流量センサ14は、製造装置26ごとに設けられる。電力センサ12は、製造装置26の消費電力量を測定して、その測定値を制御部30に送信する。エア流量センサ14は、配管を通じて製造装置26に供給される圧縮エアの流量を測定して、その測定値を制御部30に送信する。
【0036】
パーティクルセンサ16は、製造室24内の塵埃(パーティクル)の数を測定して、その測定値を制御部30に送信する。パーティクルセンサ16の設置台数は、製造室24の床面積(単位:平方メートル)の平方根に対応する台数である。パーティクルセンサ16には、空気を吸引するチューブが設けられる。チューブの口は、製造対象物のパスライン付近に位置することが望ましい。さらに、パスラインよりも床面15に近いところにパーティクルセンサ16を追加的に設置することが好ましい。これにより、パスラインにおけるパーティクルの数の増加を予測することができる。
【0037】
風速・風向センサ18は、製造室24の開口部28に設置される。製造室24の前面には透明シート(カーテン)が設けられており、そのシートの下端は床面15から所定の高さだけ離されている。透明シートの下端と床面15との間の部分が開口部28である。風速・風向センサ18は、製造室24の内部から外側へと流れる気流の流速および方向を測定して、その測定された流速および方向を制御部30に送信する。
【0038】
制御部30は、風速・風向センサ18により測定された風速から製造室24の換気回数を算出する。製造室24の換気回数は、1時間あたりに製造室24内の空気が入れ替わった回数であり、次の式に従って求められる。
【0039】
換気回数(回/h)=(風速(m/s)×延べ開口面積(m2)×3600)/製造室容積(m3
FFU22は、送風機を備え、HEPAフィルタを介して製造室24に清浄な空気を供給する。複数のFFU22によって、製造室24の天井全面から清浄な空気が製造室24内に流入され、製造室24内の空気が開口部28から流出される。このような換気によって製造室24の外部から製造室24の内部にパーティクルが進入することが防止されている。
【0040】
FFU22は制御部30に接続される。制御部30からの指令によって、FFU22が有する送風機の起動および停止ならびに送風機(ファン)の回転数が制御される。
【0041】
換気風量制御システム10は、風速・風向センサ18に加えて、あるいは風速・風向センサ18に代えて微差圧センサ20を備えてもよい。微差圧センサ20は、製造室24の内部の気圧と製造室24の外部の気圧との差を測定して、その測定値(差圧の値)を制御部30に送る。
【0042】
制御部30は、電力センサ12、エア流量センサ14、パーティクルセンサ16、風速・風向センサ18(および微差圧センサ20)の測定値に基づいて、複数のFFU22を制御する。具体的には、制御部30は、FFU22の換気風量を変化させる。
【0043】
制御部30は、入力部30aと、演算部30bと、データベース30cと、ファン制御部30dとを備える。入力部30aは、上記の各種のセンサの測定値を受付ける。演算部30bは、入力部30aに入力された計測値を用いて所定の演算を実行し、複数の製造装置26の状態を識別する。データベース30cは、演算部30bの演算結果に基づいて識別された装置稼働パターン、FFU20の駆動パターンごとのパーティクル数の測定結果などを格納する。ファン制御部30dは、データベース30cに記憶された情報、入力部30aに入力された情報(各センサの測定値)、演算部30bの演算結果等に基づいて、FFU22を制御する。
【0044】
なお、制御部30は、たとえばパーソナルコンピュータによって実現されることも可能であり、専用のコントローラによって実現されることも可能である。上記の機能を有する装置であれば、制御部30のハードウエア構成は特に限定されるものではない。
【0045】
制御部30は、電力センサ12の測定値およびエア流量センサ14の測定値に基づいて、製造装置26の状態を把握する。各製造装置26に電力センサ12およびエア流量センサ14を設置することによって、製造装置26ごとの稼動状態を把握できる。したがって換気風量のより精細な制御を可能とすることができる。
【0046】
ディスプレイ32は、制御部30が記憶する各種の情報、制御部30の演算結果等をユーザに表示するためのものである。なお、ディスプレイの種類は特に限定されるものではない。
【0047】
図2は、本発明の実施の形態に係る換気風量制御システムによって実行される換気風量の制御フローを説明した図である。図2を参照して、まず、製造装置26の消費エネルギーをモニタする(ステップS1)。具体的には、稼動中の製造装置26の消費電力およびエア消費流量が、電力センサ12およびエア流量センサ14によってそれぞれ測定される。複数の生産パターンの各々に対応した製造装置26の消費電力およびエア消費流量が測定される。たとえば複数日にわたり消費エネルギーの測定を実行することで、複数の生産パターンの各々に対応した製造装置26の消費電力およびエア消費流量を取得できる。電力センサ12およびエア流量センサ14の各々の測定結果は制御部30に送信され、制御部30は、その測定結果のデータを内部に蓄積する。
【0048】
次に、制御部30は、ステップS1において取得したデータに基づいて、製造装置26の複数の動作パターン(動作状態)を、稼動状態、待機状態および停止状態へと分類する(ステップS2)。分類は、ユーザが制御部30に入力するエネルギー量のしきい値に基づいて実行される。以下に、ステップS2の処理について詳細に説明する。
【0049】
図3は、製造装置の消費電力量のしきい値の設定の第1の例を説明した図である。図4は、製造装置の消費電力量のしきい値の設定の第2の例を説明した図である。図3および図4を参照して、制御部30は、その内部に蓄積された消費電力量のデータに基づいて、ある製造装置の消費電力量の度数分布を作成する。そして制御部30は、その度数分布に基づいて、消費電力量の候補しきい値を決定する。たとえば図3および図4に示されるように、候補しきい値は、度数分布の谷の部分に対応する消費電力量の値として選択される。図3は、2つの候補しきい値が決定される例を示し、図4は、3つの候補しきい値が決定される例を示している。
【0050】
制御部30は、さらに、ディスプレイ32の画面に、一定の時間ごとの消費電力量の測定値(時系列データ)を示したグラフと、候補しきい値とを重ねて示す。図3に示した例では、ディスプレイ32の画面に、2本の直線で表わされる2つの候補しきい値が表示される。ユーザは、ディスプレイ32の画面に表示された候補しきい値と実データの時系列データとを比較し、製造装置の状態を識別するためのしきい値を入力する。制御部30は、その入力されたしきい値を受付けるとともに、ディスプレイ32の画面に表示された候補しきい値を変化させる。たとえば候補しきい値を表現する直線がユーザの入力によって上下する。2つの候補しきい値によって、製造装置の状態は、消費電力が比較的小さい第1の状態(EP Status 1)、消費電力が中程度である第2の状態(EP Status 2)、および消費電力が比較的大きい第3の状態(EP Status 3)に大別される。候補しきい値の数が3つである場合には、消費電力量に応じた4つの状態(EP Status 1〜EP Status 4)が決定される。
【0051】
同じ方式に従って、制御部30は、エア消費量の度数分布を作成し、その度数分布に従って、エア消費量の候補しきい値を決定する。図5は、製造装置のエア消費量の候補しきい値の数が2つである例を説明した図である。図6は、製造装置のエア消費量の候補しきい値の数が3つである例を説明した図である。図5および図6に示されるように、ディスプレイ32の画面には、一定の時間ごとのエア消費量の測定値を示したグラフと、候補しきい値とが重ねて表示される。ユーザは、ディスプレイ32の画面に表示された候補しきい値と実データとを比較して、製造装置の状態を識別するためのしきい値を入力する。制御部30は、その入力されたしきい値を受付けるとともに、ディスプレイ32の画面に表示された候補しきい値を変化させる。2つのしきい値によって、製造装置の状態は、エア消費量が比較的小さい第1の状態(AV Status 1)、エア消費量が中程度である第2の状態(AV Status 2)、およびエア消費量が比較的大きい第3の状態(AV Status 3)に大別される。候補しきい値の数が4つである場合には、エア消費量に応じた4つの状態(AV Status 1〜AV Status 4)が決定される。
【0052】
制御部30は、消費電力量のしきい値から決定された複数の状態と、エア消費量のしきい値から決定された複数の状態とを組み合わせて、製造装置26の複数の稼動パターンを生成する。図7は、製造装置の複数の稼動パターンの例を示した図である。図7を参照して、消費電力量のしきい値の数が2つであり、エア消費量のしきい値の数が2つである場合には、消費電力量に応じた3つの状態とエア消費量に応じた3つの状態とを組み合わせることで9つの稼動パターン(Machine Status1−1〜3−3)が生成される。
【0053】
図2に戻り、制御部30は、リアルタイム(たとえば1分の周期)で電力センサ12から製造装置26の消費電力量の測定値を取得するとともに、エア流量センサ14から製造装置26のエア消費量の測定値を取得する。そして、これらの測定値に基づいて、制御部30は、図7に示された複数の稼動パターンの中から製造装置26の現在の状態に該当するパターンを識別する(ステップS3)。
【0054】
次に、制御部30は、識別された稼動パターンに対応するFFU動作パターンが教示済みであるかどうかを判定する(ステップS4)。当該稼動パターンと関連付けられたFFU動作パターンがデータベース30cに予め登録されている場合には、制御部30は、FFU動作パターンが教示済みであると判定する。この場合(ステップS4においてYES)、処理はステップS5に進む。一方、当該稼動パターンと関連付けられたFFU動作パターンがデータベース30cに未登録である場合には、FFU動作パターンが教示されていないと判定され(ステップS4においてNO)、処理は後述するステップS11に進む。この場合には、教示モード処理が実行される。
【0055】
まず、FFU動作パターンが教示済みである場合について説明する。ステップS5において、制御部30は、データベース30cを参照することによって、識別された稼動パターンに対応するFFU動作パターンを選択する。稼動パターンの識別およびFFU動作パターンの選択は所定の周期で実行される。この周期は特に限定されるものではないが、一例を示すと30分である。FFU動作パターンが選択されることにより、FFU22の換気風量は、FFUの動作パターンと予め関連付けられた最適風量へと切替えられる。
【0056】
ステップS6において、制御部30は、パーティクルセンサ16からパーティクル量の測定値を取得するとともに、風速・風向センサ18から風速の測定値を取得する。パーティクル量は、たとえば15秒単位の移動平均で計測される。したがってFFUの動作パターンが変更されるまでの間(すなわち30分間)に、浮遊するパーティクル量を示す120個の時系列データが得られる。パーティクル量の測定データと、風速の測定データとが対応付けられる。したがって、製造室24内のパーティクル状態と、そのパーティクル状態での換気回数(風速)が計測される。
【0057】
ステップS7において、制御部30は、パーティクル量の時系列データ(データ個数=120)を用いて、正規分布に従う統計処理を実行する。これにより制御部30は、パーティクル量の平均値(Ave)と、平均値+3σの値(Ave+3σ)とを算出する。そして制御部30は、パーティクル量の1分間の移動平均値が既定範囲内、すなわち教示時の平均値から±3σ内(特にAve+3σ以下)であるかどうかを判定する。
【0058】
パーティクル量の測定値が既定範囲内である場合(ステップS7においてYES)、処理はステップS8に進む。一方、パーティクル量の測定値が既定範囲を外れた場合(ステップS8においてNO)、後述するように、自己教示モードでの処理が実行される。測定値が既定範囲を外れた場合とは、具体的には、パーティクル量の測定値が(Ave+3σ値)を上回る場合である。
【0059】
さらに制御部30は、省エネ率(または削減電力値)を算出する。省エネ率は、最大換気風量時のFFU22の消費電力量と、現在の換気風量でのFFU22の消費電力量との比によって算出される。なお、両者の差分を削減電力値として算出してもよい。制御部30は、パーティクル量の平均値(Ave)および(Ave+3σ値)に加え、パーティクル量の120個の時系列データ、省エネ率(削減電力値でもよい)、製造室24(クリーンブース)の清浄度クラス管理値をディスプレイ32のモニタに表示する。
【0060】
ユーザは、ディスプレイ32の画面に表示された上記の情報に基づいて、換気風量を決定することができる。ユーザの指示が制御部30に入力された場合、制御部30は、ユーザの指示に従ってFFU22の換気風量を切替える。これにより装置状態に応じて換気風量が切替えられる。
【0061】
ステップS8において、制御部30は、製造環境の異常の予兆が見られるかどうかを判定する。具体的には、パーティクル量の1分間の移動平均値が教示時の(Ave+3σ値)以下の範囲内で3回連続して増加したことを検出した場合に、制御部30は、そのことを、パーティクル量の突発的な増加の予兆とみなす。この場合(ステップS8においてYES)、制御部30は、FFU22の動作パターンを切替える(ステップS10)。具体的には、ステップS10において、制御部30は、FFUの換気風量を、ステップS5によって設定された最適風量から最大風量へと切替える。
【0062】
一方、製造環境の異常の予兆が見られない場合(ステップS8においてNO)、処理はステップS9に進む。「製造環境の異常の予兆が見られない場合」とは、「パーティクル量の1分間の移動平均値が教示時の平均値+3σの範囲内で3回連続して増加した」という条件が成立しない場合である。ステップS9において、制御部30は、パーティクル量の上限しきい値THLimとパーティクル量の1分間の移動平均値PSとの間に、THLim≦PSという条件が成立するかどうかを判定する。上限しきい値THLimは、上記の(Ave+3σ値)である。
【0063】
たとえば外部からダスト源が製造環境に持ち込まれるなどの理由によって急激にパーティクル量が増加した場合には、パーティクル量が(Ave+3σ値)を予兆なく上回る可能性がある。この場合には、ステップS8の処理によって異常を検出することができない。したがって制御部30は、この状態を緊急状態とみなして、FFU22の動作パターンを切替える(ステップS10)。具体的にはTHLim≦PSという条件が成立した場合(ステップS9においてYES)、制御部30は、FFU22の換気風量を、ステップS5により設定された最適風量から最大風量へと切替える(ステップS10)。
【0064】
一方、THLim>PSである場合(ステップS9においてNO)、処理はステップS1に戻る。この場合には、異常の予兆が検出されず(ステップS8においてNO)、さらにパーティクル量の1分間の移動平均値PSが上限しきい値THLim(=+3σ値)を超えていない。したがって通常の換気風量の制御が実行される。
【0065】
ステップS10においてFFUの動作パターンが切替えられた後、処理はステップS6に戻る。パーティクル量の1分間の移動平均が(Ave+3σ)以下の範囲で3回連続下降した場合には、制御部30は、FFU22の換気風量を、最大風量から製造装置26の稼動パターンと予め関連付けられた最適風量へと戻す。
【0066】
図8は、異常の予兆および緊急状態の各々に対応するパーティクル量の推移を説明するための図である。図8を参照して、パーティクル計測値(1分間の移動平均値)が平均値(Ave)+3σより低い場合であるが、3回連続して上昇した場合、制御部30によって、このようなパーティクル計測値の推移が異常の予兆であると判定される。一方、パーティクル計測値の上昇回数が3回未満であっても、その計測値が(Ave+3σ値)を上回る、制御部30によって、このようなパーティクル計測値の推移が緊急状態であると判定される。
【0067】
図9は、自己教示モードでの処理を説明するためのフローチャートである。このフローチャートの処理は、図2に示した処理フローにおいて、ステップS4またはS7(図2参照)の判定結果がNOの場合に実行される。図9を参照して、ステップS11において、教示モードでのFFU動作パターンが設定される。具体的には、最大換気回数から最小換気回数へと換気回数を段階的に減少させるための複数の動作パターンが設定される。
【0068】
次にステップS12において、制御部30は、パーティクルセンサ16から、パーティクル量の測定値を取得するとともに、風速・風向センサ18から風速の測定値を取得する。続いてステップS13において、制御部30は、パーティクル量の上限しきい値THLimとパーティクル量の1分間の移動平均値PSとの間に、THLim≦PSという条件が成立するかどうかを判定する。THLim>PSである場合(ステップS13においてNO)、処理はステップS11に戻る。これにより、FFU22の換気回数が減少するようにFFU22の動作パターンが切替えられる。ステップS11〜S13の間のループが繰返して実行されることによってFFU22の換気回数が段階的に減少し、ある換気回数ではTHLim≦PSとなる。この場合には、処理は、ステップS11〜S13の間のループから抜ける。上記の処理ループによって、換気回数ごとに飽和領域データ(パーティクル量の平均値および+3σ値)が取得される。
【0069】
THLim≦PSである場合(ステップS13においてYES)、処理はステップS14に進む。ステップS14において、制御部30は、換気回数およびパーティクル状態(パーティクル量)を装置の稼働状態と相互に紐付ける。したがって、ある稼動状態において換気回数が変化したときにパーティクル状態がどのように変化するかのデータが得られる。
【0070】
図10は、図9に示したステップS11〜S13の処理ループによって得られた計測データの一例を示した図である。以下に説明する数値は、本発明の実施の形態の理解を容易にするために用いたものであり、以下の数値によって本発明が限定されるものではない。
【0071】
図10を参照して、「Machine Status1−1」に対応する稼動状態においてFFU22の動作パターン(「換気風量パターン」)が切替えられる。まず、最大換気回数が得られる換気風量パターンIが設定される。風速・風向センサ18による風速の測定値に基づいて、制御部30(演算部30b)は最大換気回数を算出する。この場合の換気回数は44(回/H)となる。さらに、その換気風量に対応するFFU22の消費電力量がデータベースに記憶される。最大換気回数の場合にはFFU22の消費電力量も最大となる。省エネ率は、FFU22の最大消費電力量に対する消費電力の削減量の比として求められる。最大換気回数でのパーティクル量が計測されて、平均値(Ave)および(Ave+3σ)値が求められ、それらの値がデータベース30cに記憶される。
【0072】
次に、換気回数を最大換気回数から1段階減少させたパターンIIが設定される。上記と同様の方法によって、換気回数およびFFU22の消費電力量がデータベース30cに記憶される。この換気回数でのパーティクル量が計測されて、平均値および3σ値が求められる。それらの値もデータベース30cに記憶される。
【0073】
同じようにFFU22の動作パターンIII〜VIが設定される。なおパターンVIは、最小換気回数を得るためのFFU22の動作パターンである。したがって省エネ率が最も大きくなる一方で、パーティクル量の平均値および3σ値も大きくなる。
【0074】
清浄度クラスの管理値が10000であるとすると、パターンVIに従ってFFU22を動作させた場合のパーティクル量の平均値(Ave)および(Ave+3σ)値は、管理値に対して十分に低いレベルにあると判断できる。
【0075】
自己教示モードの処理はは、製造装置が稼動しているときすなわち製品の製造中に実行されることがある。この処理(自己教示)によって製造環境の清浄度が悪化する(パーティクル量が増える)ことを防ぐ必要がある。このため、自己教示モードでは、換気回数は、最初に最大換気回数に設定されて、最大換気回数から段階的に減少される。これにより、自己教示が実行されることによって製造環境の清浄度が悪化する可能性を小さくすることができる。
【0076】
図9に戻り、ステップS15において、制御部30は、品質目標値と飽和領域とを比較して換気回数を決定する。品質目標値は、パーティクル数の目標値であり、(クラス)×N%で決定される。たとえば「クラス10000」の場合には、パーティクル数の目標値は10000×N%で決定される。N%の値は、ユーザによって設定可能である。したがって製造環境ごとに最適なパーティクル目標値を設定することができる。ステップS15の処理によって、製造装置26の稼動状態とFFU22の最適風量(最適な換気回数)とが対応付けられる。ステップS15の処理によって換気回数が選択されると自己教示モードの処理が終了する。この場合、図2のステップS5に処理が進む。
【0077】
図11は、教示後の制御データを説明するための図である。図11を参照して、最適風量が得られるFFU22の換気風量パターンが、装置状態(Machine Status)ごとに設定される。さらにその換気風量パターンに対応した換気回数およびパーティクル量(Ave,Ave+3σ)もデータベースに登録される。
【0078】
このように、本発明の実施の形態では、対象となる製造環境(クリーンブースあるいはクリーンルーム)内の製造装置の稼働状態に応じてFFU動作パターンが設定される。FFU動作パターンは、予め教示済みであり、装置の稼働状態と換気回数とパーティクル状態とが予め紐付けられたパターンである。さらに、そのパターンは、パーティクル目標値と飽和領域(パーティクル量の平均値および3σ値)に基づいて、複数の候補パターンから選択されたパターンである。したがって、装置の稼働状態に対応してパーティクル目標値を維持できる換気回数(最適風量)を設定できる。さらに、最大風量よりも換気風量が少なければ消費電力を削減できる。このため、その最適風量を得る動作パターンは、FFU22の消費電力を削減できる動作パターンともなりうる。したがって本発明の実施の形態によれば製造環境で消費されるエネルギー量と製造環境の清浄度とを両立させることができる。
【0079】
パーティクル量は、製造装置の稼働状態に依存する。すなわち製造装置が稼動状態である場合には装置が発塵しやすいためにパーティクル量が増加する。この場合には換気回数が大きくなるFFUの動作パターンが選択される。一方、製造装置が待機または停止状態であればパーティクル量は安定的に低く維持されるので、換気回数を低下させてもその状態に大きな変動はない。したがって換気回数が小さくなるFFUの動作パターンが選択される。
【0080】
このように本発明の実施の形態では、装置の状態に応じて換気回数(風量パターン)がダイナミックに制御される。これによりパーティクルの管理目標値に対する制御の遅延を抑制することができるので、パーティクル量を安定的に管理することができるだけでなく、省エネ運転が可能となる。
【0081】
さらに、装置状態毎に計測・教示されたパーティクル変動幅をユーザに示すことで、省エネ運転を実行していても品質の信頼度を高めることができる。
【0082】
図12は、ディスプレイの画面に表示された情報を説明するための図である。図12を参照して、ディスプレイ32の画面には、ある製造装置の稼動状態(Machine Status)、換気風量パターン、換気回数、消費電力量および省エネ率、パーティクル量(Ave,Ave+3σ)およびパーティクル量の管理値が示される。さらに、ディスプレイ32の画面にはパーティクル計測値(1分間の移動平均)の時系列データも示される。これにより、ユーザがパーティクル量の推移を監視できるとともに換気風量を変更することができる。これにより製造環境の清浄度を安定的に維持できるので、製造の品質の信頼度を高めることができる。
【0083】
さらに本発明は、省エネ運転時(低換気回数時)において、開口部での風速・風向をセンサによってリアルタイム計測する。これにより外部からの製造環境への塵挨の進入を監視・制御することができる。低換気回数においては、製造環境の内部と外部との間の気圧差が小さいことが考えられる。微差圧センサでは、このようなわずかな気圧差を十分に検知できない可能性がある。風速・風向センサを用いることによって、低換気回数時にも開口部での風速を精度よく検出できるので、外部からの製造環境への塵挨の進入を監視・制御することができる。
【0084】
さらに本発明の実施の形態によれば、制御部は自己教示モードを有する。この自己教示モードを利用することにより、たとえば現場の改善活動によってクリーンブース(またはクリーンルーム)内の塵挨濃度が低下された場合には、換気回数をその環境に応じて再設定できる。これによって、FFUの省エネ率を向上させることができる。一方で、FFUの機能低下などによって塵挨濃度が増加するような場合にも、再教示によって換気回数を再設定できるので、製造品質への悪影響を防ぐことができる。
【0085】
さらに、制御部30は、ディスプレイ32の画面上に換気風量設定の改定履歴をユーザに示してもよい。これにより、比較的長いスパンでの現場環境変動のトレンドをユーザが把握できる。その把握したトレンドを不良原因の推定や予防保全に活用することも可能となる。
【0086】
さらに本発明によれば、計測・教示された変動幅内でのパーティクル挙動を時系列監視することで突発的なパーティクル量の増加を予測することができる。そして、異常の予兆が見られた場合には、最大換気回数が得られるようにFFUの動作パターンを切替える。異常の予兆の段階でパーティクル量を低下させるようにFFUの動作パターンを切替えるので、パーティクル量が管理値を超える状態が生じる可能性を小さくできる。
【0087】
(変形例)
図1では、製造装置26ごとに電力センサ12およびエア流量センサ14を設置した構成が示される。しかしながら本発明の実施の形態は、このように限定されるものではなく種々の変形が可能である。
【0088】
図13は、本発明の実施の形態に係る換気風量制御システムの第1の変形例を示した図である。図13を参照して、製造室24内のすべての製造装置26に対して一括的に電力センサ12およびエア流量センサ14が設置される。この構成によれば、制御部30は、たとえば電力センサ12の測定値の度数分布およびエア流量センサ14の測定値の度数分布に基づいて、製造室24全体の稼動状態を識別する。
【0089】
また、図1および図13に示した構成では、製造装置の消費電力量およびエア消費量に基づいて当該装置の稼働状態が検出される。しかしながら製造装置の稼働時に消費されるエネルギー量として計測可能なものであれば製造装置の稼働状態のモニタに使用することができる。したがって、たとえばエア以外の気体(たとえば窒素など)あるいは水などの液体などの消費量を製造装置の稼動状態のモニタのために使用してもよい。
【0090】
さらに、製造装置の稼動状態を把握できる装置であれば、その装置を電力センサ12およびエア流量センサ14に代えて用いることができる。
【0091】
図14は、本発明の実施の形態に係る換気風量制御システムの第2の変形例を示した図である。図14を参照して、PLC(プログラマブル ロジック コントローラ)31が複数の製造装置26の各々を制御する。PLC31の内部には、各制御装置に対する制御情報(運転、待機、停止など)が生成される。制御部30は、PLC31から、その正常情報を取得することにより、各製造装置26の稼動状態を把握する。さらに、制御部30およびPLC31は別個に構成されてもよく一体化されてもよい。
【0092】
上記の実施の形態では、略閉じた環境の1つの例として製造環境(クリーンブースあるいはクリーンルーム)を示した。しかしながら、本発明の範囲は、製造環境に限定されるものではなく、たとえば、サーバルーム、冷凍ショーケースが配置された店舗を含む、エネルギーを消費する機器が設置された、略閉じた環境に適用可能である。そのような環境では、空気の品質を、空気の清浄度、温度、湿度等によって示すことができるとともに、空気の品質を調整するために、換気装置、空気清浄機、エアコン、加湿器、除湿機等の機器を用いて、風量、温度、湿度などを調整することができる。したがって、上記の環境において本発明が適用可能である。
【0093】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0094】
10 換気風量制御システム、12 電力センサ、14 エア流量センサ、15 床面、16 パーティクルセンサ、18 風速・風向センサ、20 微差圧センサ、22 FFU、24 製造室、26 製造装置、28 開口部、30 制御部、30a 入力部、30b 演算部、30c データベース、30d ファン制御部、31 PLC、32 ディスプレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略閉じた環境内に配備された装置で消費されたエネルギー量を取得して、前記略閉じた環境内の空気の品質を調整するための空気調整装置の調整量を、取得されたエネルギー量に基づいて決定される前記装置の稼動状態に予め関連付けるステップと、
前記装置の現在の稼動状態を検出するステップと、
前記調整量を、検出された稼動状態に予め関連付けられた最適な調整量へと切替えるステップとを備え、
前記最適な調整量は、前記装置が前記稼動状態にあるときに目標の空気の品質を達成するための前記調整量と、当該調整量で前記空気調整装置を運転させる場合の前記空気調整装置の消費電力との間の関係に基づいて予め決定される、空気の品質調整制御方法。
【請求項2】
製造環境内に配備された製造装置で消費されたエネルギー量を取得して、前記製造環境内を換気するための換気装置の最適風量を、取得されたエネルギー量に基づいて決定される前記製造装置の稼動状態に予め関連付けるステップと、
前記製造装置の現在の稼動状態を検出するステップと、
前記換気装置の換気風量を、検出された稼動状態に予め関連付けられた最適風量へと切替えるステップとを備え、
前記最適風量は、前記製造装置が前記稼動状態にあるときに目標の空気清浄度を達成するための前記換気風量と、当該換気風量で前記換気装置を運転させる場合の前記換気装置の消費電力との間の関係に基づいて予め決定される、換気風量制御方法。
【請求項3】
前記関連付けるステップは、単位期間の間の前記エネルギー量の分布に基づいて、前記製造装置の稼働状態を分類するための前記エネルギー量の候補しきい値を演算して、前記候補しきい値を用いて前記最適風量と前記稼動状態との関連付けを行なうステップである、請求項2に記載の換気風量制御方法。
【請求項4】
前記エネルギー量は、各製造装置で消費されたエネルギー量である、請求項3に記載の換気風量制御方法。
【請求項5】
前記エネルギー量は、前記製造環境の全体で消費されたエネルギー量である、請求項3に記載の換気風量制御方法。
【請求項6】
前記製造装置は制御装置によって制御され、
前記製造装置の前記現在の稼動状態を検出するステップは、
前記制御装置の制御状態に基づいて前記製造装置の前記現在の稼動状態を識別するステップを含む、請求項2に記載の換気風量制御方法。
【請求項7】
前記製造環境内のパーティクル量を測定するステップと、
前記換気風量を前記最適風量に切替えることによる、前記換気装置の最大消費電力に対する消費電力の低減率と、測定されたパーティクル量と、前記パーティクル量の時系列データとを表示するステップと、
前記換気風量に対するユーザの要求が発生した場合に、前記換気風量を前記要求に対応する風量へと変更するステップとをさらに備える、請求項2に記載の換気風量制御方法。
【請求項8】
前記製造環境内のパーティクル量を測定するステップと、
測定されたパーティクル量が予め設定された範囲から外れた場合には、前記製造装置の前記稼動状態と前記最適風量との間の関連付けを再度実行するステップとをさらに備える、請求項2に記載の換気風量制御方法。
【請求項9】
前記製造環境内のパーティクル量を測定するステップと、
測定されたパーティクル量が予め定められた範囲内において複数回連続して上昇することを、異常の予兆として検出するステップと、
前記異常の予兆が検出された場合に、前記換気風量を最大風量に設定するステップとをさらに備える、請求項2に記載の換気風量制御方法。
【請求項10】
前記製造環境内のパーティクル量を計測するステップと、
測定されたパーティクル量が予め設定された範囲の上限を超えたことを異常として検出するステップと、
前記異常が検出された場合に、前記換気風量を最大風量に設定するステップとを備える、請求項2に記載の換気風量制御方法。
【請求項11】
前記予め関連付けるステップにおいて、前記換気風量を最大風量から段階的に低下させることによって前記最適風量を決定する、請求項2に記載の換気風量制御方法。
【請求項12】
前記製造環境には、前記製造環境の内部から前記製造環境の外部へと通じる開口部が形成され、
前記開口部における風速を測定するステップと、
測定された風速に応じて前記換気風量を変更するステップとをさらに備える、請求項2に記載の換気風量制御方法。
【請求項13】
製造装置が配備された製造環境の中を換気する換気装置と、
前記製造装置の現在の消費エネルギー量を検出する検出装置と、
前記換気装置の風量を変更する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記換気装置の最適風量を、前記製造装置の前記消費エネルギー量に関連付けて決定する演算部と、
前記換気装置の最適風量と前記製造装置の前記消費エネルギー量との間の対応関係を記憶する記憶部と、
前記検出装置によって検出された前記製造装置の前記現在の消費エネルギー量と、前記記憶部に記憶された前記対応関係とに基づいて、前記換気装置の風量を前記最適風量へと切り替える切替部とを含み、
前記演算部は、前記製造装置が前記消費エネルギー量を消費しているときに目標の空気清浄度を達成するための前記換気風量と、当該換気風量で前記換気装置を運転させる場合の前記換気装置の消費電力との間の関係に基づいて、前記最適風量を決定する、換気風量制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−247078(P2012−247078A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116805(P2011−116805)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】