説明

空気バネ用補強繊維コード並びに該コードで補強された空気バネ

【課題】特に耐久性に優れた、空気バネ用補強繊維コード並びに該コードで補強された空気バネを提供する。
【解決手段】繰り返し単位の95モル%以上が、下記式(1)で示されるポリケトンで構成される繊維のマルチフィラメント糸の嵩高加工糸で構成された空気バネ用補強繊維コードであって、該嵩高加工糸が流体噴射加工糸であることを特徴とする空気バネ用補強繊維コード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気バネ用補強繊維コード並びに該コードで補強された空気バネに関するものであり、特に耐久性に優れた空気バネ用補強繊維コード並びに該コードで補強された空気バネに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に特許文献1において、ポリケトンで構成される繊維(以下、「ポリケトン繊維」という。)の捲縮糸を用いた伸縮性複合糸条が歯付きベルト用として好適であることを提案しているが、空気バネの特に耐久性の向上については、何ら検討されていなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2004−250825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特に耐久性に優れた、空気バネ用補強繊維コード並びに該コードで補強された空気バネを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1)繰り返し単位の95モル%以上が、下記式(1)で示されるポリケトンで構成される繊維のマルチフィラメント糸の嵩高加工糸で構成された空気バネ用補強繊維コードであって、該嵩高加工糸が流体噴射加工糸であることを特徴とする空気バネ用補強繊維コード。
【化1】

(2)嵩高加工糸の表層部にループ毛羽が形成されていることを特徴とする上記(1)記載の空気バネ用補強繊維コード。
(3)毛羽長0.6mm以上のループ毛羽の個数が5〜100個/mであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の空気バネ用補強繊維コード。
(4)上記(1)〜(3)いずれかに記載の空気バネ用補強繊維コードで補強されたことを特徴とする空気バネ。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、特に耐久性に優れた、空気バネ用補強繊維コード並びに該コードで補強された空気バネが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について以下に具体的に説明する。
本発明において、空気バネとは、ベローズ形、ダイヤフラム形および複合形が挙げられ、鉄道車両や各種産業機器、自動車(乗用車、トラック、バス等)用エアサスペンション等、例えば、自動車のサスペンション、トラックのキャビンのサスペンション、座席用シ
ートのサスペンション等に用いられるものである。
空気バネの具体例としては、トラック用では、上面板と下面板と、これらにそれぞれ上端と下端が固定されたゴム膜(ゴムベローズ)とで、空気室が画成されており、上面板の中央部に設けられた吸気孔より空気を注入し、所定の圧力に設定する。ピストンの上昇により空気室の内圧が高められ、空気バネとして作用するものが挙げられる。
【0008】
又、アッパーブレートとピストンとの間に筒状のゴム膜の両端を取り付けて、これら三者間内に空気が給排される空気室を設けたものが挙げられる。筒状のゴム膜としては、蛇腹状のベローズを用い、アッパーブレートの一部分に空気給排用の穴を形成してあり、ピストン側にはストッパゴムが設けられている。このストッパゴムは、空気バネがパンクした時に応急的に荷重を支え、車両であれば、空気バネを交換するまで走行できるようにし、又、空気バネの補助バネとして空気バネの撓みが大きくなった時にバネとして機能を果たしつつ荷重を支えるものである。
本発明の空気バネ用補強繊維コードは、かかる空気バネの空気室を構成するゴム膜を補強するために用いられるものであり、該コードで補強されたゴム膜で空気室が構成された空気バネを提供するものである。
【0009】
本発明のポリケトン繊維を構成するポリケトンは、繰り返し単位の95モル%以上、好ましくは98モル%以上、特に好ましくは99.6モル%以上が、上記式(1)で示されるものである。上記ポリケトンには、5モル%未満の範囲で、上記式(1)以外の繰り返し単位、例えば、下記式(2)に示すもの等を含有していても良い。
【化2】

但し、Rは、エチレン以外の炭素数1〜30の有機基であり、例えば、プロピレン、ブチレン、1−フェニルエチレン等の基であり、Rの水素原子の一部または全部が、ハロゲン基、エステル基、アミド基、水酸基、エーテル基で置換されていてもよい。もちろん、Rは二種以上であってもよく、例えば、プロピレン基と1−フェニルエチレン基が混在していてもよい。
【0010】
ポリケトンの固有粘度[η]は、好ましくは1dl/g以上、より好ましくは2dl/g以上、特に好ましくは4dl/g以上であり、好ましくは20dl/g以下、より好ましくは15dl/g以下、特に好ましくは10dl/g以下である。
尚、固有粘度[η]は次の定義式に基づいて求められる値である。
【数1】

式中のt及びTは、それぞれヘキサフルオロイソプロパノール(セントラル硝子(株)社製)及び該ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。Cは、上記希釈溶液の濃度であり、ヘキサフルオロイソプロパノール100ml中のポリケトンの質量(g)である。
【0011】
ポリケトンには必要に応じて、酸化防止剤、ラジカル抑制剤、他のポリマー、艶消し剤、紫外線吸収剤、難燃剤、金属石鹸等の添加剤を含有させてもよい。
ポリケトン繊維の形態は、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、扁平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、
ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
【0012】
次に、ポリケトン繊維の好ましい特性としては、引張強度は5cN/dtex以上、より好ましくは10cN/dtex以上、特に好ましくは15cN/dtex以上であり、30cN/dtex以下であり、引張伸度は3%以上、より好ましくは3.5%以上、特に好ましくは4%以上であり、15%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは8%以下、特に好ましくは6%以下であり、引張弾性率は100cN/dtex以上、より好ましくは200cN/dtex以上、特に好ましくは300cN/dtex以上であり、1000cN/dtex以下である。
ポリケトン繊維の糸条形態としては、マルチフィラメント糸であり、好ましい単糸繊度は、0.01〜10dtex、より好ましくは0.1〜3dtex、特に好ましくは0.5〜3dtexの範囲であり、好ましい総繊度は10〜3000dtex、より好ましくは30〜2500dtexの範囲である。
【0013】
本発明は、かかるポリケトン繊維マルチフィラメント糸の嵩高加工糸を用いた空気バネ用補強繊維コードであって、この嵩高加工糸が流体噴射加工糸であることに特徴を有する。
本発明では、かかる流体噴射加工糸の表層部には、ループ毛羽が形成されていることが好ましく、特に、かかるループ毛羽の内、毛羽長が0.6mm以上のループ毛羽の個数が5〜100個/mであることが好ましく、より好ましくは10〜80個/mの範囲である。
さらに、かかるループ毛羽の内、毛羽長が0.35mm以上のループ毛羽の個数が10〜1500個/mが好ましく、特に好ましくは50〜1300個/mの範囲である。
【0014】
本発明において、流体噴射加工糸を製造する方法は特に限定されるものではなく、例えば2対のニップローラー間に設置された流体噴射ノズルに、ポリケトン繊維マルチフィラメント糸を過供給し、空気等の流体を高速で噴射してポリケトン繊維マルチフィラメント糸をノズル外に噴出させると同時に急速に減速させることにより、ループ状の毛羽を形成しながらフィラメント同士を絡ませる方法によって製造することができる。尚、必要に応じて、2個以上の同種又は異種の流体噴射ノズルを直列に配置して、流体噴射加工を2回以上施してもよい。その際、各々の流体噴射加工条件は、同一条件でも異なる条件でもよい。
【0015】
流体噴射加工糸を製造する代表的な方法に、1フィード法と2フィード法がある。
1フィード法の場合はポリケトン繊維のマルチフィラメント糸100%からなる流体噴射加工糸となる。
2フィード法の場合は、2本のマルチフィラメント糸を供給して流体噴射加工を施すが、少なくともその一方のマルチフィラメント糸がポリケトン繊維であればよく、他方はポリケトン繊維でもポリケトン繊維以外の繊維(下記に詳述している本発明の流体噴射加工糸と混用する繊維が挙げられる。)でもよい。
【0016】
2本のマルチフィラメント糸のフィード率に差をつけるか否かは、必要とする流体噴射加工糸の糸構造により適宜選定すればよい。フィード率に差をつけなければ、得られる流体噴射加工糸は2本のマルチフィラメント糸が混ざり合った構造となり、フィード率の差を大きくすればするほど鞘芯構造が明確な流体噴射加工糸となり、必要に応じて、ポリケトン繊維マルチフィラメント糸を鞘部及び又は芯部に配置すればよい。その際、用いる繊維の単繊度や総繊度を変化例えば芯部に配置する繊維の単繊度を大きくしたりしてもよい。
【0017】
その他の流体噴射加工条件としては、加工速度は、50〜500m/分の範囲が好まし
く、100〜400m/分の範囲がより好ましい。また、流体噴射圧力は、ゲージ圧で250kPa〜1MPaが好ましく、特に400kPa〜1MPaの範囲が好ましい。さらに、流体噴射加工時に適量の水を、繊維に供給・付与することで、マルチフィラメント間の絡みを強固、かつより均一にすることができるので好ましい。フィード率としては、同時フィードの場合は+1%〜+30%、フィード率に差をつける場合は芯糸を+1%〜+20%、鞘糸を+3〜+40%、フィード率の差としては、+1〜+30%とすることが好ましい。さらに、流体噴射加工後に熱セットを施してもよく、熱セット温度はチューブヒーターのヒーター温度で130〜210℃が好ましく、特に好ましくは150〜190℃の範囲であり、熱セット時間は0.1〜0.5秒間が好ましく、特に好ましくは0.1〜0.3秒間の範囲である。
又、流体噴射加工に供給する前に、予め、供給糸条を例えば、チーズやコーンの糸条形態で熱処理(乾熱又は湿熱)してもよく、好ましい熱処理条件としては、温度は、110〜210℃が好ましく、より好ましくは130〜190℃の範囲であり、時間は、0.5〜3時間が好ましく、より好ましくは1〜2.5時間の範囲である。
【0018】
本発明では、かかる流体噴射加工糸は、ポリケトン繊維マルチフィラメント糸の流体噴射加工糸が50質量%以上占めておればよく、ポリケトン繊維マルチフィラメント糸100%の流体噴射加工糸が最適であるが、必要に応じて、好ましくは50質量%未満の範囲で、ポリケトン繊維以外の繊維との混用や、同種の繊維同志で異なる糸条形態と組み合わせてもよく、例えば、ポリケトン繊維以外の繊維のマルチフィラメント糸と2フィード等により流体噴射加工した流体噴射加工糸や、ポリケトン繊維マルチフィラメント糸の流体噴射加工糸とポリケトン繊維のマルチフィラメント糸原糸の組み合わせ等が挙げられる。
【0019】
ポリケトン繊維以外の繊維としては、例えば、綿、羊毛等の天然繊維、レーヨン繊維、ライオセル繊維等のセルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維(パラ系、メタ系)、ポリビニルアルコール繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、超高分子量ポリオレフィン繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、金属繊維等の公知の各種繊維(こられの繊維の糸条形態は、紡績糸、長繊維の原糸や捲縮加工糸等の嵩高加工糸があり、これらを、必要に応じて適宜選定、又は、組み合わせて用いても良い。)と引き揃え、交撚(双糸、三子等)、混繊、カバリング(シングル又はダブル)、流体噴射加工等公知の糸条複合手段により混用しても良い。
【0020】
本発明では、かかる流体噴射加工糸は、必要に応じて、追撚して用いてもよく、追撚の撚係数(K)としては1000〜10000の範囲で選定すればよい。又、常法によって、例えば、下撚、次いで上撚により双糸や三子にしたりできる。
ここで、撚係数(K)は、下記式で得られる値である。
撚係数(K)=追撚数×流体噴射加工糸の総繊度(dtex)1/2
【0021】
本発明の空気バネ用補強繊維コードは、かかるポリケトン繊維マルチフィラメント糸の流体噴射加工糸で構成されているものであるが、空気バネ用補強繊維コードとして用いるに際しては、RFL処理されていてもよい。
RFL処理とは、レゾルシンとホルマリンとラテックスを含む混合液で処理することをいい、RFL樹脂の好ましい付着量は、繊維に対して1〜10質量%、特に好ましくは2〜7質量%の範囲である。
【0022】
好ましいホルマリン(F)とレゾルシン(R)とのモル比(F/R)は1.0〜2.2、特に好ましくは1.0〜1.9であり、全ラテックスの固形分質量(L)に対するレゾルシンおよびホルマリン総質量(RF)の割合(RF/L)は5〜25質量%、特に好ましくは5〜17質量%であり、さらに、水酸化ナトリウムおよび水酸化アンモニウムの総
量とレゾルシン(R)とのモル比(NaOH+NHOH/R)は、0.21以下が好ましい。
【0023】
ラテックスの種類は、空気バネのゴム膜を構成するゴム組成物に対応したラテックスが好ましく、例えば、ゴム組成物としては、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロルスルホン化ポリエチレン(CSM)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンジエン系ゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エチレンアクリルゴム(AEM)、水素添加アクリロニトリルゴム(HNBR)、アクリロニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム(UR)等の1種又は2種以上のブレンドゴムが用いられるものであり、これらのゴム組成物に対応したラテックスが挙げられる。
又、RFL処理に先立って、エポキシやイソシアネート化合物で前処理してもよい。
RFL処理の方法としては、ポリケトン繊維マルチフィラメント糸の流体噴射加工糸に施してもよいし、又必要に応じて、流体噴射加工糸を撚糸した状態でRFL処理してもよい。
【0024】
撚数は、撚係数(K1)で100〜700が好ましいが、30000程度の中撚〜強撚でもよい。
ここで、撚係数(K)は、下記式で得られる値である。
T1=K1/D1/2
T1=撚数(T/m)、D=RFL処理に供給する糸条の繊度(dtex)
又、空気バネ用補強繊維コードや空気バネの繊維コード織物となした後、RFL処理してもよい。
【0025】
本発明は、かかる流体噴射加工糸を空気バネ用補強繊維コードとして用いるものであり、空気バネ用補強繊維コードの総繊度は、トラック、バス、鉄道用空気バネでは、1500〜5500dtexが好ましく、乗用車用空気バネでは、300〜1600dtexが好ましく、特に400〜1500dtexの範囲が好ましい。
補強繊維コードおよび補強繊維コード層は、本発明の空気バネ用補強繊維コード100%で構成するのが好ましいが、必要に応じて、50質量%未満の範囲で、他の補強繊維コード(上記した本発明の流体噴射加工糸と混用する繊維で構成された補強繊維コード)と引き揃え、交撚、交編織等により混用してもよく、例えば、混用する各補強繊維コードを下撚し、次いで、これらの下撚糸を上撚する方法があり、下撚数と上撚数の比は0.5〜1.5が好ましく、特に0.8〜1.2が好ましい。さらに、補強繊維コード層の経糸及び又は緯糸において、1〜数本交互に混用してもよく、又、同一の補強繊維コード又は異なる補強繊維コードのS撚糸とZ撚糸を1〜2本交互に混用してもよい。
【0026】
通常、空気バネの空気室を構成するゴム膜は、多数本の補強繊維コードをゴム膜本体の周方向に対して傾斜させ、互いに平行に配列してなる補強繊維コード層(繊維コード織物)で補強されており、補強繊維コード層は、2枚積層されており、1枚目と2枚目は補強繊維コード方向が左右対称に傾斜して配置されているものである。
従って、本発明の空気バネ用補強繊維コードは、一方向に対して所定の角度で並列配置される。この補強繊維コードの打ち込み本数は、トラック、バス、鉄道用空気バネでは、40〜80本/5cmが好ましく、乗用車用空気バネでは、90〜150本/5cmの範囲が好ましい。
【0027】
ゴム膜を構成するゴム組成物としては、前記したものが挙げられるが、特に高温加硫するには、エチレンプロピレンジエン系ゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)、エチレンアクリルゴム(AEM)、水素添加アクリロニトリルゴム(HNBR)等の耐熱ゴムの1種又は2種以上を主成
分とするものが好ましい。
かかるゴム組成物には、加硫剤(有機過酸化物、樹脂、アミン類)、促進剤(加硫促進剤)、補強剤としてのカーボン、酸化亜鉛等、可塑剤としてのアロマチック系オイル、老化防止剤、離型剤、分散剤、硬化剤、粘着性調整剤、増量剤、着色剤等が必要に応じて添加される。
【0028】
このようなゴム組成物よりなる未加硫ゴム間に、本発明の空気バネ用補強繊維コードを介在させ、常法に従い、加硫成形することによりゴム膜を製造することができる。
ゴム膜の厚さは、トラック、バス用空気バネでは4〜7mmが好ましく、鉄道用空気バネでは5〜12mmが好ましく、乗用車用空気バネでは、2〜3mmの範囲が好ましい。
ゴム膜の製法としては、本発明の空気バネ用補強繊維コードを用いて、通常は、経糸に用いてすだれ織物を作製する。すだれ織物の緯糸は、本発明の空気バネ用補強繊維コードを用いてもよいが、上記した本発明の流体噴射加工糸に混用する繊維例えばナイロン繊維や、必要に応じて50〜200%程度の高伸度の繊維等を用いてもよい。
補強繊維コードの太さは、トラック、バス、鉄道用空気バネでは、0.5〜1.2mm程度が好ましく、乗用車用空気バネでは、0.2〜0.4mm程度が好ましい。
【0029】
得られた織物(通常は、RFL処理された織物。)2枚を用い、各々CR系、NR/SBR系等の接着ゴムを両面コートし、コーティング反2枚をすだれ織物の経糸方向が所定の交叉角度で交叉するように、経糸方向が左右対称となるように積層し、さらに、この積層シートの両面にCR系、NR/SBR系等のカバーゴムを積層して所定条件下で加熱加硫する。接着ゴムの厚みは、トラック、バス、鉄道用空気バネでは、0.25〜0.35mm程度が好ましく、乗用車用空気バネでは、0.2〜0.25mm程度が好ましく、カバーゴムの厚みは、トラック、バス、鉄道用空気バネでは、2〜4mm程度が好ましく、乗用車用空気バネでは、0.6〜0.8mm程度が好ましい。
【0030】
尚、例えば屋外で強い紫外線を受けることによってポリケトン繊維の引張強度等の低下を抑制する目的で、繊維又は流体噴射加工糸や織物の形態で紫外線吸収剤(例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系の一種又は二種以上の組み合わせがある。)及び/又は紫外線遮蔽剤(例えば、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム等の微粒子があり、平均粒径は0.01〜0.6μmが好ましい。)を含有させることが好ましい。含有させる方法としては、例えば、繊維又は流体噴射加工糸や織物に紫外線吸収剤及び/又は紫外線遮蔽剤を含有した樹脂やフィルムを付与又は被覆する方法があり、紫外線吸収剤及び/又は紫外線遮蔽剤の含有量は、樹脂やフィルムの質量に対して0.001〜10質量%が好ましい。
【実施例】
【0031】
本発明を実施例などに基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
本発明における測定方法及び評価方法は以下の通りである。
(1)繊維の引張強度、引張伸度、引張弾性率
JIS−L−1013に準じて測定する。
サンプル長:20cm、引張速度:20cm/分で測定し、20回測定した時の平均値を求める。
【0032】
(2)ループ毛羽の個数
流体噴射加工糸の糸表面から0.35mm以上並びに0.6mm以上突出したル−プ毛羽の個数を光電型毛羽測定機(TORAY FRAY COUNTER)を用い、糸速度10m/分、走行糸張力0.1g/dの条件で測定する。
(3)ゴム膜の耐久性テスト(トラック、バス、鉄道用)
JIS−D−4101(空気バネ用ゴムベローズ試験方法)に基づいて測定した。
<測定条件>
内圧(MPa) ;0.7
ストローク(mm) ;±80
速度(回転数rpm);60
温度 ;常温
【0033】
(4)トラック、バス、鉄道用空気バネのゴム膜の作製
実施例で得られた流体噴射加工糸2本を合糸したものを、Z方向に40回/10cmの下撚を施し、次いで、得られた下撚糸を3本合糸してS方向に40回/10cmの上撚を施して補強繊維コードを得る。この補強繊維コードをRFL処理した後、すだれ織物の経糸に用い(打ち込み本数55本/5cm)、緯糸には300dtexのナイロン6繊維を用いて(打ち込み本数4本/5cm)、すだれ織物を作製する。
得られたすだれ織物2枚を用い、各々0.3mmのNR/SBR系接着ゴムを両面コートし、コーティング反2枚をすだれ織物の経糸方向が所定の交叉角度で交叉するように、経糸方向が左右対称となるように積層し、さらに、この積層シートの両面に各々2.5mmのNR/SBR系カバーゴムを積層して155℃、1.5MPaの条件で20分加硫してゴム膜を作製する。
【0034】
[実施例1]
280dtex/208fのポリケトン繊維マルチフィラメント糸(旭化成せんい(株)社製;商標サイバロン;引張強度18cN/dtex、引張伸度5%、引張弾性率350cN/dtex)を村田機械株式会社製のエア加工機335−IIに仕掛けて流体噴射加工糸を製造した。具体的な製造条件は以下の通りである。
エアノズル:Heberlein社製 Hema jet T−321K
加工速度:100m/分
エア圧力:588kPa(6.0kg/cm
フィード率:+8%
水付与:あり(200cc/分)
得られた流体噴射加工糸のループ毛羽の個数は、0.35mm以上が100個/m、0.6mm以上が50個/mであった。
得られた流体噴射加工糸を用いて補強繊維コードを得、該補強繊維コードを用いたゴム膜の耐久性テストの結果は、200万回以上と優れたものであった。
【0035】
[比較例1]
実施例1と同様のポリケトン繊維マルチフィラメント糸を下記条件で仮撚加工して1ヒーター仮撚糸を得た。
<仮撚加工条件>
仮撚機;LS−2(三菱重工社製;ピン仮撚機)
仮撚数T1;1500T/m(仮撚係数K1;25100)
仮撚温度;220℃
フィード率;+1%
仮撚速度;100m/分
この仮撚加工糸を用いて実施例1同様にして補強繊維コードを得、該補強繊維コードを用いたゴム膜の耐久性テストの結果は、120万回と実施例1と対比して劣ったものであった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、特に耐久性に優れた、空気バネ用補強繊維コード並びに該コードで補強された空気バネを提供するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位の95モル%以上が下記式(1)で示されるポリケトンで構成される繊維のマルチフィラメント糸の嵩高加工糸で構成された空気バネ用補強繊維コードであって、該嵩高加工糸が流体噴射加工糸であることを特徴とする空気バネ用補強繊維コード。
【化1】

【請求項2】
嵩高加工糸の表層部にループ毛羽が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気バネ用補強繊維コード。
【請求項3】
毛羽長0.6mm以上のループ毛羽の個数が5〜100個/mであることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気バネ用補強繊維コード。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の空気バネ用補強繊維コードで補強されたことを特徴とする空気バネ。

【公開番号】特開2009−155761(P2009−155761A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335889(P2007−335889)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】